(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】極端紫外光光源装置および受け板部材の保護方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20231003BHJP
G03F 1/84 20120101ALI20231003BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20231003BHJP
H05G 2/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F1/84
H05H1/24
H05G2/00 K
(21)【出願番号】P 2020171636
(22)【出願日】2020-10-12
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】藪田 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】宮川 展明
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-181353(JP,A)
【文献】特表2019-523438(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0094718(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
G03F 1/84
H05H 1/24
H05G 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極端紫外光を放射可能な原料の励起に基づいて前記極端紫外光を放射するプラズマを発生させる光源部と、
前記原料
を含む廃材料の融液および前記プラズマから放散されるデブリ
の融液を収容する収容容器と、
受け面を有する受け板部材と、
前記
廃材料の融液および
前記デブリ
の融液に対して前記受け板部材よりも耐蝕性が高く、前記受け板部材の受け面上に設けられる耐蝕材とを備え
、
前記耐蝕材が前記廃材料の融液および前記デブリの融液を受け止め、前記収容容器に導くことを特徴とする極端紫外光光源装置。
【請求項2】
前記光源部は、
互いに離隔して配置される一対の円盤状の放電電極と、
前記放電電極を各回転軸の周りに回転させるモータと、
前記放電電極の一部が前記原料の融液に浸された状態で前記原料の融液を貯留するコンテナと、
前記放電電極および前記コンテナを包囲する電極ハウジングと、
前記電極ハウジングを包囲し、前記極端紫外光を取り出す窓部が設けられたチャンバとを備え、
前記電極ハウジングは、
前記極端紫外光を取り出し可能な開口部と、
前記コンテナから漏出した原料
を含む前記廃材料の融液および前記電極ハウジングの内壁に付着したデブリ
の融液を排出する排出口とを備え、
前記受け板部材は、
前記
廃材料および
前記デブリの融点以上となるように加熱され、
前記排出口から排出される前記
廃材料の融液および
前記デブリ
の融液が前記収容容器に向かって下るような傾斜姿勢で支持されることを特徴とする請求項1に記載の極端紫外光光源装置。
【請求項3】
前記放電電極にパルス電力を供給するパルス電力供給手段と、
前記放電電極の回転時に外周面に付着した原料の融液にエネルギービームを照射して前記原料を気化させるエネルギービーム照射手段とをさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の極端紫外光光源装置。
【請求項4】
前記光源部は、
円盤状の原料供給板と、
前記原料供給板を回転軸の周りに回転させるモータと、
前記原料供給板の一部が前記原料の融液に浸された状態で前記原料の融液を貯留するコンテナと、
前記原料供給板および前記コンテナを包囲
する原料供給板ハウジングと、
前記原料供給板ハウジングを包囲し、前記極端紫外光を取り出す窓部が設けられたチャンバとを備え、
前記原料供給板ハウジングは、
前記極端紫外光を取り出し可能な開口部と、
前記コンテナから漏出した原料
を含む前記廃材料の融液および前記原料供給板ハウジングの内壁に付着したデブリ
の融液を排出する排出口とを備え、
前記受け板部材は、
前記
廃材料および
前記デブリの融点以上となるように加熱され、
前記排出口から排出される前記
廃材料の融液および
前記デブリ
の融液が前記収容容器に向かって下るような傾斜姿勢で支持されることを特徴とする請求項1に記載の極端紫外光光源装置。
【請求項5】
前記原料供給板の回転時に外周面に付着した原料の融液にエネルギービームを照射して前記原料をプラズマ化させるエネルギービーム照射手段をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の極端紫外光光源装置。
【請求項6】
前記
廃材料の融液および
前記デブリ
の融液が前記収容容器に向かって下るような傾斜姿勢で前記受け板部材を支持する支持部材を備え、
前記支持部材は、
前記支持部材の下方に配置される面に対して前記支持部材の下端部が線接触となる空間部を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の極端紫外光光源装置。
【請求項7】
前記窓部を介して放射される前記極端紫外光とともに飛散するデブリを捕獲するホイルトラップと、
前記窓部
からの前記ホイルトラップに対する
熱放射を低減させる遮熱板と、
前記ホイルトラップおよび前記遮熱板を包囲するように前記チャンバに接続され、前記収容容器に連通する貫通孔が設けられた接続チャンバとを備え、
前記受け板部材
の上の前記耐蝕材を介して導かれた前記
廃材料の融液および
前記デブリ
の融液と、前記ホイルトラップで捕獲されたデブリ
の融液と、前記遮熱板に付着したデブリ
の融液は、前記貫通孔を介して前記収容容器に収容されることを特徴とする請求項
2から
5のいずれか1項に記載の極端紫外光光源装置。
【請求項8】
前記耐蝕材は、前記受け板部材の受け面上に設置可能な耐蝕プレートまたは前記受け板部材の受け面を被覆する耐蝕膜であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の極端紫外光光源装置。
【請求項9】
前記耐蝕プレートの
下端部は、前記受け板部材の
下端部より突出していることを特徴とする請求項8に記載の極端紫外光光源装置。
【請求項10】
前記耐蝕プレートの
下端部が前記
廃材料の融液および
前記デブリ
の融液の落下方向に
沿って延びるように曲がっていることを特徴とする請求項8または9に記載の極端紫外光光源装置。
【請求項11】
前記耐蝕プレートの
下端部は、
前記
収容容器の上方に位置することを特徴とする請求項9または10に記載の極端紫外光光源装置。
【請求項12】
前記耐蝕プレートの
下端部は突出部を有し、前記突出部は、
下端に向かって徐々に狭くなっている
幅を有することを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の極端紫外光光源装置。
【請求項13】
前記耐蝕プレート
の下端部の上面は、前記耐蝕プレートの
下端部の周縁部に沿って伸びる溝を備えることを特徴とする請求項9から12のいずれか1項に記載の極端紫外光光源装置。
【請求項14】
前記耐蝕プレートの材料は、モリブデンまたはタングステンであることを特徴とする請求項8から13のいずれか1項に記載の極端紫外光光源装置。
【請求項15】
極端紫外光を放射可能な原料
を含む廃材料の融液またはデブリ
の融液を受け止める受け板部材の保護方法であって、
前記
廃材料の融液または
前記デブリ
の融液に対して前記受け板部材よりも耐蝕性が高い耐蝕材を前記受け板部材の受け面上に設けることにより、
前記耐蝕材が前記廃材料の融液または前記デブリの融液を受け止める時に、前記受け板部材の受け面を保護することを特徴とする受け板部材の保護方法。
【請求項16】
前記耐蝕材は、前記受け板部材の受け面上に設置可能な耐蝕プレートであり、
前記受け板部材の受け面上に設置された耐蝕プレート上で前記
廃材料の融液または
前記デブリ
の融液を受け止め、
前記耐蝕プレートを介し、前記
廃材料の融液または
前記デブリ
の融液を収容容器に案内することを特徴とする請求項15に記載の受け板部材の保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極端紫外光光源装置および受け板部材の保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の微細化および高集積化につれて、露光用光源の短波長化が進められている。次世代の半導体露光用光源としては、特に、波長13.5nmの極端紫外光(以下、「EUV(Extreme Ultra Violet)光」とも言う)を放射する極端紫外光光源装置(以下、「EUV光源装置」とも言う)の開発が進められている。
【0003】
EUV光源装置において、EUV光(EUV放射)を発生させる方法はいくつか知られている。それらの方法のうちの一つに極端紫外光放射種(以下、EUV放射種とも言う)を加熱して励起することによりプラズマを発生させ、プラズマからEUV光を取り出す方法がある。
【0004】
このような方法を採用するEUV光源装置は、プラズマの生成方式により、LPP(Laser Produced Plasma:レーザ生成プラズマ)方式と、DPP(Discharge Produced Plasma:放電生成プラズマ)方式とに分けられる。
【0005】
DPP方式のEUV光源装置は、EUV放射種(気相のプラズマ原料)を含む放電ガスが供給された電極間に高電圧を印加して、放電により高密度プラズマを生成し、そこから放射される極端紫外光を利用する。DPP方式としては、例えば、特許文献1に記載されているように、放電を発生させる電極表面にEUV放射種を含む液体状のプラズマ原料(例えば、スズ(Sn)またはリチウム(Li)等)を供給し、当該原料に対してレーザビーム等のエネルギービームを照射して当該原料を気化し、その後、放電によってプラズマを生成する方法が提案されている。このような方式は、LDP(Laser Assisted Gas Discharge Produced Plasma)方式と称されることもある。
【0006】
一方、LPP方式のEUV光源装置は、レーザ光をターゲット材料に照射し、当該ターゲット材料を励起させてプラズマを生成する。
【0007】
EUV光源装置は、半導体デバイス製造における半導体露光装置(リソグラフィ装置)の光源装置として使用される。あるいは、EUV光源装置は、リソグラフィに使用されるマスクの検査装置の光源装置として使用される。すなわち、EUV光源装置は、EUV光を利用する他の光学系装置(利用装置)の光源装置として使用される。
【0008】
EUV光は大気中では著しく減衰するので、プラズマから利用装置までのEUV光が通過する空間領域は、EUV光の減衰を抑制するために減圧雰囲気つまり真空環境におかれている。
【0009】
一方、EUV光源装置においては、プラズマからはデブリが高速で放散される。デブリは、プラズマ原料の粒子(プラズマ原料がスズの場合は、スズ粒子)を含む。また、DPP方式またはLDP方式でプラズマが生成される場合、デブリは、プラズマの発生に伴いスパッタリングされる放電電極の材料粒子を含む。
【0010】
デブリは、利用装置に到達すると、利用装置内の光学素子の反射膜を損傷または汚染させ、その性能を低下させることがある。そのため、デブリが利用装置に侵入しないように、放散されたデブリを捕捉するデブリ低減装置(DMT(Debris Mitigation Tool)とも言う)が提案されている(特許文献1)。
【0011】
LDP方式のEUV光源装置においては、放電領域に生成されるプラズマからデブリがあらゆる方向に飛散する。利用装置側に飛散するデブリは、上述したデブリ低減装置により捕捉されるが、それ以外の方向に進行するデブリは、そのままだとEUV光源装置内部に付着する。
このようなデブリの内部付着を抑制するために、放電を発生させる電極は電極ハウジングにより包囲されている。電極ハウジングは、利用装置に向かうEUV光が通過する開口部以外は、前記電極を包囲する。
【0012】
上述したEUV光源装置内部に付着する可能性のあるデブリの大部分は、この電極ハウジング内部にて捕集される。また、放電領域に電極を介して供給されるプラズマ原料(スズ)の一部が漏出することがある。このような漏出原料は、プラズマ発生に寄与しないため廃原料となる。上述した漏出原料もまた、電極ハウジング内部にて捕集される。
【0013】
電極ハウジングは、プラズマの近傍に配置されるので、プラズマからのEUV等の放射により、デブリ(スズ)および廃材料(スズ)の融点以上に加熱される。よって、電極ハウジング内面に付着したデブリおよび廃材料は固化することなく液体状態に維持される。
電極ハウジング内面に付着したデブリおよび廃材料は、重力により電極ハウジング下部に集まり、電極ハウジング下部に設けられた排出口より外部に排出され、重力方向に落下する。
【0014】
重力方向に落下したデブリおよび廃材料は、受け板部材により受け取られ、この受け板部材を介してデブリ収容容器(プラズマ原料がスズの場合は、スズ回収容器(Tin Dump))に溜められる。デブリ収容容器には、当該デブリ収容容器をプラズマ原料の融点以上に加熱する加熱部が設けられている。すなわち、デブリ収容容器によって受け止められた廃原料は直ちに溶融され、液化した状態でデブリ収容容器に溜まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2017-219698号公報
【文献】特許6241407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述したように、液体状のデブリおよび廃材料は、電極ハウジングの排出口により外部に排出され、重力方向に落下する。受け板部材は、受け取ったデブリおよび廃材料が固化しないように、加熱手段にてスズの融点以上に加熱される。受け板部材は、耐熱性、加工性および経済性を考慮して、例えばステンレス材料により構成される。
【0017】
ここで、受け板部材が受け取るデブリおよび廃材料は液体状であるので、その温度はスズの融点以上である。受け板部材は、このようなスズを継続的に受け取ると、受け板部材の母材であるステンレスとスズとが反応し、スズによる腐食が進む。受け板部材の腐食が進むと、受け板部材に埋設された加熱手段が腐食部分から露出し、加熱手段自体がスズにより破損する。
【0018】
そこで、本発明の目的は、プラズマ原料またはデブリを受け止める受け板部材の受け面の耐蝕性を向上させることが可能な極端紫外光光源装置および受け板部材の保護方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様に係る極端紫外光光源装置は、極端紫外光を放射可能な原料の励起に基づいて前記極端紫外光を放射するプラズマを発生させる光源部と、前記原料を含む廃材料の融液および前記プラズマから放散されるデブリの融液を収容する収容容器と、受け面を有する受け板部材と、前記廃材料の融液および前記デブリの融液に対して前記受け板部材よりも耐蝕性が高く、前記受け板部材の受け面上に設けられる耐蝕材とを備える。前記耐蝕材が前記廃材料の融液および前記デブリの融液を受け止め、前記収容容器に導く。
【0020】
これにより、極端紫外光を放射可能な原料を含む廃材料の融液およびデブリの融液による腐食から受け板部材の受け面を保護しつつ、当該廃材料の融液およびデブリの融液を収容容器に導くことが可能となり、受け板部材の受け面の腐食を防止することができる。
【0021】
また、本発明の一態様に係る極端紫外光光源装置によれば、前記光源部は、互いに離隔して配置される一対の円盤状の放電電極と、前記放電電極を各回転軸の周りに回転させるモータと、前記放電電極の一部が前記原料の融液に浸された状態で前記原料の融液を貯留するコンテナと、前記放電電極および前記コンテナを包囲する電極ハウジングと、前記電極ハウジングを包囲し、前記極端紫外光を取り出す窓部が設けられたチャンバとを備え、前記電極ハウジングは、前記極端紫外光を取り出し可能な開口部と、前記コンテナから漏出した原料を含む前記廃材料の融液および前記電極ハウジングの内壁に付着したデブリの融液を排出する排出口とを備え、前記受け板部材は、前記廃材料および前記デブリの融点以上となるように加熱され、前記排出口から排出される前記廃材料の融液および前記デブリの融液が前記収容容器に向かって下るような傾斜姿勢で支持される。
【0022】
これにより、LDP方式におけるチャンバ外に収容容器が設置されている場合においても、極端紫外光を放射可能な原料を含む廃材料の融液およびデブリの融液による腐食から受け板部材の受け面を保護しつつ、当該廃材料の融液およびデブリの融液を収容容器に導くことが可能となる。このため、当該廃材料およびデブリが収容された収容容器を交換可能としつつ、受け板部材の受け面の腐食を防止することができる。
【0023】
また、本発明の一態様に係る極端紫外光光源装置は、前記放電電極にパルス電力を供給するパルス電力供給手段と、前記放電電極の回転時に外周面に付着した原料の融液にエネルギービームを照射して前記原料を気化させるエネルギービーム照射手段とをさらに備える。
【0024】
これにより、極端紫外光を放射可能な原料に対してレーザビーム等のエネルギービームを照射して当該原料を気化し、その後、放電によってプラズマを生成することができる。
【0025】
また、本発明の一態様に係る極端紫外光光源装置によれば、前記光源部は、円盤状の原料供給板と、前記原料供給板を回転軸の周りに回転させるモータと、前記原料供給板の一部が前記原料の融液に浸された状態で前記原料の融液を貯留するコンテナと、前記原料供給板および前記コンテナを包囲する原料供給板ハウジングと、前記原料供給板ハウジングを包囲し、前記極端紫外光を取り出す窓部が設けられたチャンバとを備え、前記原料供給板ハウジングは、前記極端紫外光を取り出し可能な開口部と、前記コンテナから漏出した原料を含む前記廃材料の融液および前記原料供給板ハウジングの内壁に付着したデブリの融液を排出する排出口とを備え、前記受け板部材は、前記廃材料および前記デブリの融点以上となるように加熱され、前記排出口から排出される前記廃材料の融液および前記デブリの融液が前記収容容器に向かって下るような傾斜姿勢で支持される。
【0026】
これにより、LPP方式におけるチャンバ外に収容容器が設置されている場合においても、極端紫外光を放射可能な原料を含む廃材料の融液およびデブリの融液による腐食から受け板部材の受け面を保護しつつ、当該廃材料の融液およびデブリの融液を収容容器に導くことが可能となる。このため、当該廃材料およびデブリが収容された収容容器を交換可能としつつ、受け板部材の受け面の腐食を防止することができる。
【0027】
また、本発明の一態様に係る極端紫外光光源装置は、前記原料供給板の回転時に外周面に付着した原料の融液にエネルギービームを照射して前記原料をプラズマ化させるエネルギービーム照射手段をさらに備える。
【0028】
これにより、極端紫外光を放射可能な原料にレーザ光を照射し、当該原料を励起させてプラズマを生成することができる。
【0029】
また、本発明の一態様に係る極端紫外光光源装置は、前記廃材料の融液および前記デブリの融液が前記収容容器に向かって下るような傾斜姿勢で前記受け板部材を支持する支持部材を備え、前記支持部材は、前記支持部材の下方に配置される面に対して前記支持部材の下端部が線接触となる空間部を備える。
【0030】
これにより、廃材料の融液およびデブリの融液が支持部材の下端部を介して支持部材の裏面に回り込むのを防止することができ、廃材料の融液およびデブリの融液が支持部材の周囲に漏出するのを防止することができる。
【0031】
また、本発明の一態様に係る極端紫外光光源装置は、前記窓部を介して放射される前記極端紫外光とともに飛散するデブリを捕獲するホイルトラップと、前記窓部からの前記ホイルトラップに対する熱放射を低減させる遮熱板と、前記ホイルトラップおよび前記遮熱板を包囲するように前記チャンバに接続され、前記収容容器に連通する貫通孔が設けられた接続チャンバとを備え、前記受け板部材の上の前記耐蝕材を介して導かれた前記廃材料の融液および前記デブリの融液と、前記ホイルトラップで捕獲されたデブリの融液と、前記遮熱板に付着したデブリの融液は、前記貫通孔を介して前記収容容器に収容される。
【0032】
これにより、受け板部材を介して導かれる廃材料の融液およびデブリの融液を収容容器に収容しつつ、接続チャンバ内で飛散するデブリも当該収容容器に収容することができる。このため、極端紫外光光源装置の大型化および複雑化を抑制しつつ、デブリによる極端紫外光の取り出し効率の低下を抑制することができる。
【0033】
また、本発明の一態様に係る極端紫外光光源装置によれば、前記耐蝕材は、前記受け板部材の受け面上に設置可能な耐蝕プレートまたは前記受け板部材の受け面を被覆する耐蝕膜である。
【0034】
ここで、耐蝕材として耐蝕プレートを用いることにより、受け板部材の構成を変更することなく、受け板部材の受け面を保護することが可能となるとともに、耐蝕プレートの交換を容易に行うことができる。一方、耐蝕材として耐蝕膜を用いることにより、受け板部材からの熱伝導性の低下を抑制することができ、融点以上となるように廃材料およびデブリを加熱するための効率の低下を抑制することができる。
【0035】
また、本発明の一態様に係る極端紫外光光源装置によれば、前記耐蝕プレートの下端部は、前記受け板部材の下端部より突出している。
【0036】
これにより、受け板部材の下端部を収容容器の内側に突出させることなく、受け板部材で受け止められた廃材料の融液およびデブリの融液を収容容器の内側に導くことができる。このため、収容容器に収容された廃材料の融液およびデブリの融液に受け板部材が浸漬されるのを防止しつつ、受け板部材で受け止められた廃材料の融液およびデブリの融液が受け板部材の周囲に溢れ出すのを防止することができる。
【0037】
また、本発明の一態様に係る極端紫外光光源装置によれば、前記耐蝕プレートの下端部が前記廃材料の融液および前記デブリの融液の落下方向に沿って延びるように曲がっている。
【0038】
これにより、前記耐蝕プレートの下端部において、耐蝕プレートによる廃材料の融液およびデブリの融液の案内方向と、耐蝕プレートから離脱する廃材料の融液およびデブリの融液の落下方向を一致させることができ、耐蝕プレートを介して案内される廃材料の融液およびデブリの融液を収容容器に効率的に収容することができる。
【0039】
また、本発明の一態様に係る極端紫外光光源装置によれば、前記耐蝕プレートの下端部は、前記収容容器の上方に位置する。
【0040】
これにより、受け板部材で受け止められた廃材料の融液およびデブリの融液が収容容器の貫通孔の周縁部に溢れ出すのを防止しつつ、廃材料の融液およびデブリの融液を収容容器に効率的に収容することができる。
【0041】
また、本発明の一態様に係る極端紫外光光源装置によれば、前記耐蝕プレートの下端部は突出部を有し、前記突出部は、下端に向かって徐々に狭くなっている幅を有する。
【0042】
これにより、耐蝕プレートを介して案内される廃材料の融液およびデブリの融液を突出部の下端に向かって集め、廃材料の融液およびデブリの融液が突出部の下端から離脱しやすくすることができる。このため、廃材料の融液およびデブリの融液が耐蝕プレートの突出部から周囲に溢れ出すのを抑制しつつ、廃材料の融液およびデブリの融液を収容容器に効率的に収容することができる。
【0043】
また、本発明の一態様に係る極端紫外光光源装置によれば、前記耐蝕プレートの下端部の上面は、前記耐蝕プレートの下端部の周縁部に沿って伸びる溝を備える。
【0044】
これにより、耐蝕プレートの下端部の周縁部に到達した廃材料の融液およびデブリの融液を溝で受け止め、溝を介して耐蝕プレートの下端の方向に導くことができる。このため、耐蝕プレートが硬度の高い材料から構成される場合においても、耐蝕プレートの困難な加工を回避しつつ、廃材料の融液およびデブリの融液が耐蝕プレートの下端部の周縁部から漏出するのを抑制することができる。
【0045】
また、本発明の一態様に係る極端紫外光光源装置によれば、前記耐蝕プレートの材料は、モリブデンまたはタングステンである。
【0046】
これにより、極端紫外光を放射可能な原料を含む廃材料の融液およびデブリの融液に対して耐蝕プレートに耐蝕性を持たせることができ、受け板部材の受け面の腐食を防止することができる。
【0047】
また、本発明の一態様に係る受け板部材の保護方法は、極端紫外光を放射可能な原料を含む廃材料の融液またはデブリの融液を受け止める受け板部材の保護方法であって、前記廃材料の融液または前記デブリの融液に対して前記受け板部材よりも耐蝕性が高い耐蝕材を前記受け板部材の受け面上に設けることにより、前記耐蝕材が前記廃材料の融液または前記デブリの融液を受け止める時に、前記受け板部材の受け面を保護する。
【0048】
これにより、極端紫外光を放射可能な原料を含む廃材料の融液またはデブリの融液による腐食から受け板部材の受け面を保護しつつ、当該廃材料の融液およびデブリの融液を収容容器に導くことが可能となる。このため、極端紫外光を発生させる光源部が収容されるチャンバの外部に収容容器を設置することを可能としつつ、受け板部材の受け面の腐食を防止することができる。
【0049】
また、本発明の一態様に係る受け板部材の保護方法によれば、前記耐蝕材は、前記受け板部材の受け面上に設置可能な耐蝕プレートであり、前記受け板部材の受け面上に設置された耐蝕プレート上で前記廃材料の融液または前記デブリの融液を受け止め、前記耐蝕プレートを介し、前記廃材料の融液または前記デブリの融液を収容容器に案内する。
【0050】
これにより、受け板部材の構成を変更することなく、受け板部材の受け面を保護することが可能となるとともに、極端紫外光を放射可能な原料を含む廃材料の融液またはデブリの融液を収容容器に収容することが可能となる。
【発明の効果】
【0051】
本発明の態様においては、プラズマ原料を含む廃材料またはデブリを受け止める受け板部材の受け面の耐蝕性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】第1実施形態に係る極端紫外光光源装置のチャンバ内および接続チャンバ内を水平方向に切断して示す断面図である。
【
図2】第1実施形態に係るデブリ低減部およびデブリ収容部の概略構成を示す断面図である。
【
図3】
図1の光源部をD0方向から見た矢視図である。
【
図4】
図2の回転式ホイルトラップの構成例を示す正面図である。
【
図5】
図2の固定式ホイルトラップの構成例を示す上面図である。
【
図6】
図2の固定式ホイルトラップの構成例を示す正面図である。
【
図7】
図2の受け板部材への耐蝕プレートの装着方法を示す斜視図である。
【
図8】
図7の耐蝕プレートが装着された受け板部材の構成例を示す平面図である。
【
図9】
図8の受け板部材の構成例を示す裏面図である。
【
図10】
図7の耐蝕プレートが取り外された受け板部材のデブリの受け止め方法を示す斜視図である。
【
図11】
図10の受け板部材の受け面の破損状態の一例を示す平面図である。
【
図12】
図7の耐蝕プレートが装着された受け板部材のデブリの受け止め方法を示す斜視図である。
【
図13】
図2の案内部の概略構成を示す断面図である。
【
図14】
支持台のその他の概略構成を示す断面図である。
【
図15】
支持台のさらにその他の概略構成を示す断面図である。
【
図16】
図13の受け板部材からのデブリの漏出状態の一例をD5方向から見た矢視図である。
【
図17】
図13の受け板部材からのデブリの漏出状態のその他の例をD5方向から見た矢視図である。
【
図18】第2実施形態に係る耐蝕プレートが装着された受け板部材の設置例を
図13のD5方向から見た矢視図である。
【
図19】第2実施形態に係る耐蝕プレートが装着された受け板部材のその他の設置例を
図13のD5方向から見た矢視図である。
【
図20】第2実施形態に係る耐蝕プレートが装着された受け板部材が設置された案内部の概略構成を示す断面図である。
【
図21】第3実施形態に係る耐蝕プレートが装着された受け板部材が設置された案内部の概略構成を示す断面図である。
【
図22】第4実施形態に係る耐蝕プレートが装着された受け板部材の設置例を
図21のD5方向から見た矢視図である。
【
図23】第4実施形態に係る耐蝕プレートが装着された受け板部材のその他の設置例を
図21のD5方向から見た矢視図である。
【
図24】第5実施形態に係る耐蝕プレートが装着された受け板部材の構成例を示す平面図である。
【
図25】
図24のA-A線で切断した構成を示す断面図である。
【
図26】第6実施形態に係る耐蝕プレートが装着された受け板部材の構成例を示す平面図である。
【
図27】第7実施形態に係る極端紫外光光源装置のチャンバ内および接続チャンバ内を水平方向に切断して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の構成に必須のものとは限らない。実施形態の構成は、本発明が適用される装置の仕様や各種条件(使用条件、使用環境等)によって適宜修正または変更され得る。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定され、以下の個別の実施形態によって限定されない。また、以下の説明に用いる図面は、各構成を分かり易くするため、実際の構造と縮尺および形状などと異なることがある。
【0054】
図1は、第1実施形態に係る極端紫外光光源装置のチャンバ内および接続チャンバ内を水平方向に切断して示す断面図、
図2は、第1実施形態に係るデブリ低減部およびデブリ収容部の概略構成を示す断面図、
図3は、
図1の光源部をD0方向から見た矢視図である。なお、第1実施形態では、LDP方式の極端紫外光光源装置(EUV光源装置)を例にとる。
【0055】
図1において、EUV光源装置1は、極端紫外光(EUV光)を放出する。この極端紫外光の波長は、例えば、13.5nmである。
具体的には、EUV光源装置1は、放電を発生させる一対の放電電極EA、EBの表面にそれぞれ供給された液相のプラズマ原料SA、SBにレーザビームLB等のエネルギービームを照射して当該プラズマ原料SA、SBを気化させる。その後、放電電極EA、EB間の放電領域Dの放電によってプラズマPを発生させる。プラズマPからはEUV光が放出される。
【0056】
EUV光源装置1は、例えば、半導体デバイス製造におけるリソグラフィ装置の光源装置またはリソグラフィに使用されるマスクの検査装置の光源装置として使用可能である。例えば、EUV光源装置1がマスク検査装置用の光源装置と使用される場合、プラズマPから放出されるEUV光の一部が取り出され、マスク検査装置に導光される。マスク検査装置は、EUV光源装置1から放出されるEUV光を検査光として、マスクのブランクス検査またはパターン検査を行う。ここで、EUV光を用いることにより、5~7nmプロセスに対応することができる。なお、EUV光源装置1から取り出されるEUV光は、
図2の遮熱板23に設けられた開口KAにより規定される。
【0057】
図1および
図2に示すように、EUV光源装置1は、光源部2、デブリ低減部3、デブリ収容部4およびデブリ案内部5を備える。光源部2は、LDP方式に基づいてEUV光を発生させる。デブリ低減部3は、光源部2から放射されるEUV光とともに飛散するデブリを捕獲する。デブリ収容部4は、光源部2で発生したデブリおよびデブリ低減部3で捕獲されたデブリなどを収容する。デブリ案内部5は、プラズマ原料SA、SBの融液およびプラズマPから放散されるデブリDBをデブリ収容部4に案内する。
【0058】
また、EUV光源装置1は、内部で発生されるプラズマPを外部と隔離するチャンバ11を備える。チャンバ11は、剛体、例えば、金属から形成される。チャンバ11は、真空筐体であり、その内部は、プラズマ原料SA、SBを加熱励起するための放電を良好に発生させ、その際に生成されるEUV光の減衰を抑制するために、減圧雰囲気にされる。
【0059】
光源部2は、チャンバ11内部に配置される。光源部2は、一対の放電電極EA、EBを備える。放電電極EA、EBは、同形同大の円板状部材であり、例えば、放電電極EAがカソードとして使用され、放電電極EBがアノードとして使用される。放電電極EA、EBは、例えば、タングステン、モリブデンまたはタンタル等の高融点金属から形成される。放電電極EA、EBは、互いに離隔した位置に配置され、放電電極EA、EBの周縁部が近接している。このとき、プラズマPが生成される放電領域Dは、放電電極EA、EBの周縁部が互いに最も接近した放電電極EA、EB間の間隙に位置する。
【0060】
パルス電力供給部13より放電電極EA、EBに電力を給電することにより、放電領域Dで放電が発生する。そして、各放電電極EA、EBの回転に基づいて放電領域Dに輸送されたプラズマ原料SA、SBは、放電時に放電電極EA、EB間に流れる電流により加熱励起され、EUV光を放出するプラズマPが発生する。
【0061】
放電電極EAは、モータMAの回転軸JAに連結され、放電電極EAの軸線周りに回転する。放電電極EBは、モータMBの回転軸JBに連結され、放電電極EBの軸線周りに回転する。モータMA、MBは、チャンバ11の外部に配置され、各モータMA、MBの回転軸JA、JBは、チャンバ11の外部から内部に延びる。回転軸JAとチャンバ11の壁の間の隙間は、シール部材PAで封止され、回転軸JBとチャンバ11の壁の間の隙間は、シール部材PBで封止される。シール部材PA、PBは、例えば、メカニカルシールである。各シール部材PA、PBは、チャンバ11内の減圧雰囲気を維持しつつ、回転軸JA、JBを回転自在に支持する。
このように放電電極EA、EBは、個別のモータMA、MBによって回転軸JA、JBを介してそれぞれ駆動される。これらのモータMA、MBの回転駆動は、制御部12によって制御される。
【0062】
チャンバ11内部には、液相のプラズマ原料SAが貯留されるコンテナCAと、液相のプラズマ原料SBが貯留されるコンテナCBが配置される。コンテナCA、CBには、加熱された液相のプラズマ原料SA、SBが供給される。液相のプラズマ原料SA、SBは、例えば、スズである。
【0063】
コンテナCAは、放電電極EAの下部が液相のプラズマ原料SAに浸されるようにプラズマ原料SAを収容する。コンテナCBは、放電電極EBの下部が液相のプラズマ原料SBに浸されるようにプラズマ原料SBを収容する。従って、各放電電極EA、EBの下部には、液相のプラズマ原料SA、SBが付着する。各放電電極EA、EBの下部に付着した液相のプラズマ原料SA、SBは、放電電極EA、EBの回転に伴って、プラズマPが発生される放電領域Dに輸送される。
【0064】
チャンバ11の外部には、レーザ源(エネルギービーム照射装置)14が配置される。レーザ源14は、放電領域Dに輸送された放電電極EAに付着したプラズマ原料SAにエネルギービームを照射して、プラズマ原料SAを気化させる。レーザ源14は、例えば、Nd:YVO4(Neodymium-doped Yttrium Orthovanadate)レーザ装置である。このとき、レーザ源14は、波長1064nmの赤外領域のレーザビームLBを発する。ただし、エネルギービーム照射装置は、プラズマ原料SAの気化が可能であれば、レーザビームLB以外のエネルギービームを発する装置であってもよい。
【0065】
レーザ源14によるレーザビームLBの照射タイミングは、制御部12によって制御される。レーザ源14から放出されたレーザビームLBは、例えば、集光レンズ15を含む集光手段を介して可動ミラー16に導かれる。集光手段は、放電電極EAのレーザビーム照射位置におけるレーザビームLBのスポット径を調整する。集光レンズ15および可動ミラー16は、チャンバ11の外部に配置される。
【0066】
集光レンズ15で集光されたレーザビームLBは、可動ミラー16により反射され、チャンバ11の壁に設けられた透明窓20を通過して、放電領域D付近の放電電極EAの周縁部に照射される。
ここで、可動ミラー16の姿勢が調整されることにより、放電電極EAにおけるレーザビームLBの照射位置が調整される。可動ミラー16の姿勢の調整は、作業員が手動で実施してもよいし、後述する監視装置43からのEUV光の強度情報に基づき、制御部12が可動ミラー16の姿勢制御を行ってもよい。この場合、可動ミラー16は、図示を省略した可動ミラー駆動部により駆動される。
【0067】
放電領域D付近の放電電極EAの周縁部にレーザビームLBを照射するのを容易にするため、放電電極EA、EBの軸線は平行ではない。回転軸JA、JBの間隔は、モータMA、MB側が狭く、放電電極EA、EB側が広くなっている。これにより、放電電極EA、EBの対向面側を接近させつつ、放電電極EA、EBの対向面側と反対側をレーザビームLBの照射経路から退避させることができ、放電領域D付近の放電電極EAの周縁部にレーザビームLBを照射するのを容易にすることができる。
【0068】
放電電極EBは、放電電極EAと可動ミラー16との間に配置される。可動ミラー16で反射されたレーザビームLBは、放電電極EBの外周面付近を通過した後、放電電極EAの外周面に到達する。このとき、レーザビームLBが放電電極EBで遮光されないように、放電電極EBは、放電電極EAよりも、モータMB側の方向(
図1の左側)に退避される。
放電領域D付近の放電電極EAの外周面に付着された液相のプラズマ原料SAは、レーザビームLBの照射により気化され、気相のプラズマ原料SAとして放電領域Dに供給される。
【0069】
放電領域DでプラズマPを発生させるため(気相のプラズマ原料SAをプラズマ化するため)、パルス電力供給部13は、放電電極EA、EBに電力を供給する。そして、レーザビームLBの照射により放電領域Dに気相のプラズマ原料SAが供給されると、放電領域Dにおける放電電極EA、EB間で放電が生じる。このとき、パルス電力供給部13は、パルス電力を周期的に放電電極EA、EBに供給する。
パルス電力供給部13は、チャンバ11の外部に配置される。パルス電力供給部13から延びる給電線は、フィードスルーFA、FBを通過して、チャンバ11の内部に延びる。フィードスルーFA、FBは、チャンバ11の壁に埋設されてチャンバ11内の減圧雰囲気を維持するシール部材である。なお、プラズマPを発生させるためのレーザ源14の動作およびパルス電力供給部13の動作は、制御部12により制御される。
【0070】
パルス電力供給部13から延びる2つの給電線は、フィードスルーFA、FBを介してそれぞれコンテナCA、CBに接続される。コンテナCA、CBは、導電性材料から形成され、コンテナCA、CBの内部に収容されるプラズマ原料SA、SBもスズなどの導電性材料である。各コンテナCA、CBの内部に収容されているプラズマ原料SA、SBには、放電電極EA、EBの下部がそれぞれ浸されている。従って、パルス電力供給部13からパルス電力がコンテナCA、CBに供給されると、そのパルス電力は、プラズマ原料SA、SBをそれぞれ介して放電電極EA、EBに供給される。放電電極EA、EB間で放電が発生すると、放電領域Dにおける気相のプラズマ材料SAが電流により加熱励起されて、プラズマPが発生する。
【0071】
プラズマPからはEUV光が放出される。EUV光は、他の光学系装置である利用装置(リソグラフィ装置またはマスク検査装置)で利用される。本実施形態においては、EUV光はマスク検査装置で利用される。
【0072】
チャンバ11と利用装置との間には、接続チャンバ21が配置される。接続チャンバ21は、剛体、例えば、金属から形成されている。接続チャンバ21は、真空筐体であり、その内部も、チャンバ11の内部と同様、EUV光の減衰を抑制するため減圧雰囲気にされる。
【0073】
接続チャンバ21の内部空間は、窓部17を介してチャンバ11と連通する。窓部17は、チャンバ11の壁に形成された貫通孔である。また、接続チャンバ21の内部空間は、接続チャンバ21の壁に形成された貫通孔である窓部27を介して利用装置(マスク検査装置)42と連通する。
図2では、利用装置42の一部のみを示す。放電領域DのプラズマPから放出されたEUV光は、窓部17、27を通じて利用装置(マスク検査装置)42に導入される。
【0074】
一方、プラズマPからは、EUV光とともにデブリDBが高速で様々な方向に放散される。デブリDBは、プラズマ原料SA、SBであるスズ粒子およびプラズマPの発生に伴いスパッタリングされる放電電極EA、EBの材料粒子を含む。これらのデブリDBは、プラズマPの収縮および膨張過程を経て、大きな運動エネルギーを得る。
【0075】
このようなデブリDBを捕捉させるために、デブリ低減部3が接続チャンバ21内に設けられる。そして、接続チャンバ21側に飛散したデブリDBの少なくとも一部は、デブリ低減部3により捕捉される。ただし、それ以外の方向に進行するデブリDBは、そのままだとEUV光源装置1内部(例えば、チャンバ11の内壁)に付着し、内部汚染を引き起こす。
【0076】
このようなデブリDBの飛散による内部汚染をできるだけ抑制するように、
図1に示すように、放電電極EA、コンテナCAおよび回転軸JAの一部は電極ハウジングHAにより包囲され、放電電極EB、コンテナCBおよび回転軸JBの一部は電極ハウジングHBにより包囲される。なお、各回転軸JA、JBは、例えば、電極ハウジングHA、HBに設けられる不図示の孔部をそれぞれ介して放電電極EA、EBと接続される。電極ハウジングHA、HBは、互いに隣り合うようにチャンバ11内に配置される。
【0077】
図3に示すように、電極ハウジングHA、HBには、プラズマPから放出されるEUV光が接続チャンバ21を介して利用装置42に向かうように、EUV光取出し用開口部KLが設けられる。EUV光取出し用開口部KLは、放電領域Dに輸送された放電電極EAに付着したプラズマ原料
SAに照射されるエネルギービームの入射口としても用いられる。また、各電極ハウジングHA、HBの下部には、電極ハウジングHA、HB内面に付着したデブリDBおよび廃材料を外部に排出する排出口QA、QBが設けられる。
【0078】
EUV光源装置1の内部に付着する可能性のあるデブリDBの大部分は、デブリ飛散方向D1、D2に飛散し、電極ハウジングHA、HB内部にて捕集される。また、放電領域Dに輸送された放電電極EAに付着したプラズマ原料SAのうち、エネルギービームが照射されて気化しプラズマ生成に利用される量は僅かである。このため、放電電極EAに付着したプラズマ原料SAの大部分は未使用のままコンテナCAに戻されるが、そのうちの一部は重力により落下してコンテナCAに戻らず、電極ハウジングHA内部にて捕集される。さらに、何等かの不具合により、コンテナCA、CBに貯留された液相のプラズマ原料SA、SBの一部がコンテナCA、CBより溢れる場合がある。この溢れたプラズマ原料SA、SBも、原料漏出方向D3に漏出し、廃原料として電極ハウジングHA、HB内部にて捕集される。
【0079】
電極ハウジングHA、HBは、プラズマPの近傍に配置されるので、プラズマPからのEUV光などの放射によりデブリDBおよび廃材料の融点以上に加熱される。なお、本明細書で融点というときは、スズなどのプラズマ原料SA、SBの融点を指す。このため、例えば、放電電極EA、EBがタングステン、モリブデン、タンタル等の高融点金属から形成されるときに、放電電極EA、EBの材料粒子がデブリDBに含まれる場合においても、デブリDBの融点は、放電電極EA、EBの融点に影響されない。よって、電極ハウジングHA、HB内面に付着したデブリDBおよび廃材料に含まれるスズは固化することなく液体状態に維持される。電極ハウジングHA、HB内面に付着したデブリDBおよび廃材料は、重力により電極ハウジングHA、HB下部に集まり、排出口QA、QBより外部に排出され、重力方向に落下する。
【0080】
排出口QA、QBより重力方向に落下したデブリDBおよび廃材料は、受け板部材18より受け取られる。
図2に示すように、受け板部材18は、接続チャンバ21内に設けられた支持台44により支持される。支持台44は、受け板部材18が傾斜姿勢となるように支持する。支持台44は、受け板部材18の排出部から排出されるデブリDBおよび廃材料が、接続チャンバ21の下方(
図2の下側)に配置されている廃原料(スズ)貯蔵部であるデブリ収容容器に溜められるように傾斜している。受け板部材18は、加熱手段により加熱され、その温度はスズの融点以上の温度に維持される。よって、排出口QA、QBより受け板部材18に落下したデブリDBおよび廃材料は液相のまま、傾斜した受け板部材18の受け面に沿って移動し、受け板部材18の排出部へ送られる。
【0081】
一方、プラズマPからはEUV光とともにデブリDBが高速で様々な方向に放散される。プラズマPから発生するデブリDBは、高速で移動するイオン、中性原子および電子を含む。このようなデブリDBは、利用装置42に到達すると、利用装置42内の光学素子の反射膜を損傷または汚染させ、性能を低下させることがある。そのため、デブリ低減部3にてデブリDBを捕捉させることで、デブリDBが利用装置42に侵入するのを防止する。デブリ低減部3は、複数のホイルの位置が固定された固定式ホイルトラップ24と、ホイルがデブリと能動的に衝突する作用を加えた回転式ホイルトラップ22とを備える。固定式ホイルトラップ24は、接続チャンバ22から利用装置(マスク検査装置)42へと進行するEUV光の光路上において、回転式ホイルトラップ22と利用装置24と間に設けられる。
【0082】
図4は、
図2の回転式ホイルトラップの構成例を示す正面図である。
図4において、回転式ホイルトラップ22は、中心のハブ53、ハブ53に同心の外側リング52およびハブ53と外側リング52との間に配置された多数のホイル51を備える。各ホイル51は、薄膜または薄い平板である。ホイル51は、ほぼ等しい角間隔をおいて放射状に配置される。各ホイル51は、ハブ53の中心軸線を含む平面上にある。回転式ホイルトラップ22の材料は、例えば、タングステンおよび/またはモリブデンなどの高融点金属である。
【0083】
回転式ホイルトラップ22の複数のホイル51は、プラズマP(発光点)から窓部27に向かって進むEUV光を遮らないように、窓部27に向かって進むEUV光の光線方向に平行に配置される。
すなわち、
図2に示すように、各ホイル51がハブ53の中心軸線を含む平面上に配置された回転式ホイルトラップ22は、ハブ53の中心軸線の延長線上にプラズマPが存在するように配置される。これにより、ハブ53および外側リング52を除けば、EUV光は各ホイル51の厚みの分のみ遮光され、回転式ホイルトラップ22を通過するEUV光の割合(透過率とも言う)を最大にすることが可能となる。
【0084】
ハブ53は、モータ(回転駆動装置)MCの回転軸JCに連結され、ハブ53の中心軸線は、回転軸JCの中心軸線に合致する。このとき、モータMCの回転軸JCは、回転式ホイルトラップ22の回転軸とみなすことができる。回転式ホイルトラップ22は、モータMCに駆動されて回転し、回転するホイル51は、プラズマPから到来するデブリDBに衝突してデブリDBを捕捉し、当該デブリDBが利用装置42に侵入するのを阻止する。
【0085】
回転式ホイルトラップ22は、接続チャンバ21内に配置されるのに対して、モータMCは、接続チャンバ21の外に配置される。接続チャンバ21の壁には、回転軸JCが通過する貫通孔が形成される。回転軸JCと接続チャンバ21の壁の間の隙間は、例えば、メカニカルシールからなるシール部材PCで封止される。シール部材PCは、接続チャンバ21内の減圧雰囲気を維持しつつ、モータMCの回転軸JCを回転自在に支持する。
【0086】
また、プラズマPから回転式ホイルトラップ22への
熱放射を低減し、回転式ホイルトラップ22の過熱を防止するため、接続チャンバ21内には遮熱板23が配置される。遮熱板23は、プラズマPから放出されるEUV光の一部を取り出すための任意の形状(例えば、円形)の開口部KAを備える。遮熱板23は、プラズマPの近傍に配置されるため、例えば、モリブデンまたはタングステンなどの高融点材料から構成される。
開口部KAは、回転式ホイルトラップ22の回転軸JCから偏心した位置に設けられる。このとき、プラズマPから放出されるEUV光の一部は、開口部KAを介し、回転式ホイルトラップ22の回転軸方向(
図2における左右方向)に対して傾斜角度をもって所定の立体角で遮熱板23から取り出される。
【0087】
回転式ホイルトラップ22は、遮熱板23の開口部KAを通過したEUV光の光線束(以下、EUV取出光とも言う。)の主光線UL上にホイル51が位置するように配置されている。遮熱板23の開口部KAから取り出されたEUV光は、デブリ低減部3を通過して、窓部27を介して利用装置(マスク検査装置)42に導入される。
【0088】
回転式ホイルトラップ22は、プラズマPから放散されるデブリDBのうち比較的低速のデブリDBを捕捉するが、固定式ホイルトラップ24は、プラズマPから放散されるデブリDBのうち、回転式ホイルトラップ22で捕捉できなかった高速で進行するデブリDBを捕捉する。
図2に示すように、固定式ホイルトラップ24は、EUV取出光の主光線UL上に配置される。
また、固定式ホイルトラップ24は、遮熱板23の開口部KAにより進行方向が制限されたEUV光であるEUV取出光が通過する領域に対応させた形状を備える。
【0089】
図5は、
図2の固定式ホイルトラップの構成例を示す上面図、
図6は、
図2の固定式ホイルトラップの構成例を示す断面図である。
図5および
図6において、固定式ホイルトラップ24は、複数のホイル61と、ホイル61を支持する固定枠(固定部材)60とを備える。
ホイル61は、
図6に示すように、EUV取出光の主光線UL方向に直交する断面において、それぞれ等間隔に配置される。また、固定枠60は、例えば、正面から見て矩形状となっている。なお、固定枠60の外形は、任意の形状であってよい。さらに、複数のホイル61は、
図5に示すように、主光線UL方向に直交する方向から見ると、EUV取出光の光線方向に伸びるように放射状に配置される。
【0090】
固定式ホイルトラップ24の複数のホイル61は、固定式ホイルトラップ24が配置された空間を細かく分割することにより、その部分のコンダクタンスを下げて圧力を局所的に上げる働きをする。固定式ホイルトラップ24にガスを適宜供給することにより、固定式ホイルトラップ24における圧力を上げるようにする。言い換えると、接続チャンバ21内において、固定式ホイルトラップ24内にガスを局在化させて圧力が比較的高い部分を設定する。ここで、固定式ホイルトラップ24に供給するガスは、EUV光に対して透過率の高いガスが望ましく、例えば、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)などの希ガスまたは水素(H2)などが用いられる。
【0091】
回転式ホイルトラップ22で捕捉できなかった高速のデブリDBは、固定式ホイルトラップ24における圧力が上がった領域でガスとの衝突確率が上がるために速度が低下する。また、ガスとの衝突によりデブリDBの進行方向も変わる。固定式ホイルトラップ24は、このようにして速度が低下して進行方向が変わったデブリDBを、ホイル61または固定枠60により捕捉する。
【0092】
また、接続チャンバ21内には、カバー部材25が配置される。カバー部材25は、回転式ホイルトラップ22を包囲し、回転式ホイルトラップ22により捕捉されたデブリDBが接続チャンバ21の内部に飛散するのを防止する。カバー部材25は、入射側開口部KIおよび出射側開口部KOA、KOBを備える。入射側開口部KIは、回転式ホイルトラップ22に入射するEUV光が遮光されない位置に設けられる。出射側開口部KOAは、入射側開口部KIおよび回転式ホイルトラップ22を通過して固定式ホイルトラップ24に入射するEUV光が遮光されない位置に設けられる。出射側開口部KOBは、入射側開口部KIおよび回転式ホイルトラップ22を通過して監視装置43に入射するEUV光が遮光されない位置に設けられる。
【0093】
回転式ホイルトラップ22により捕捉されたデブリDBの少なくとも一部は、遠心力により回転式ホイルトラップ22のホイル51上を径方向に移動し、ホイル51の端部から離脱して、カバー部材25の内面に付着する。
カバー部材25は、図示を省略した加熱手段またはEUV放射を受ける遮熱板23からの二次輻射によって加熱され、当該加熱によりカバー部材25の内面に付着したデブリDBは固化せず、液相状態を保持する。カバー部材25の内面に付着したデブリDBは、重力によりカバー部材25の下部に集まり、カバー部材25の下部から排出管26を介してカバー部材25の外に排出されて廃原料となり、デブリ収容部4に収容される。これにより、カバー部材25は、回転式ホイルトラップ22のホイル51の端部から離脱したデブリDBが接続チャンバ21の内部に飛散するのを防止することができる。
【0094】
デブリ収容部4は、デブリ収容容器31を備える。デブリ収容容器31は、接続チャンバ21の外部に配置され、接続チャンバ21に取り付けられる。デブリ収容容器31は、デブリDBおよび廃原料を含む収容物SUを貯蔵する。
【0095】
接続チャンバ21の底壁には、デブリ収容容器31の内部空間と接続チャンバ21の内部空間を連通させる貫通孔37が形成されている。デブリ収容容器31は、上部にフランジ32を備える。フランジ32で囲まれたデブリ収容容器31の開口部は、接続チャンバ21の貫通孔37に重ねられる。そして、フランジ32が接続チャンバ21の底壁に、例えば、ネジで固定されることで、デブリ収容容器31が接続チャンバ21に取り付けられる。フランジ32と接続チャンバ21の底壁の間の間隙は、ガスケット33により封止される。遮熱板23は、直立した状態で貫通孔37の上方に配置される。排出管26の排出口は、貫通孔37の上方に配置される。このとき、遮熱板23および排出管26からのデブリDBの落下位置にデブリ収容容器31が配置される。
【0096】
排出管26を介してカバー部材25の外に排出された廃原料は、重力方向に落下し、接続チャンバ21の下方(
図2の下側)に配置されているデブリ収容容器31に溜められる。一方、プラズマPから様々な方向に放散されるデブリDBの一部は、チャンバ11の窓部17を通じて接続チャンバ21に侵入すると、窓部17と対面する遮熱板23の面に堆積する。遮熱板23に堆積したデブリDBは、プラズマPからの
熱放射により溶融し、ある程度の量に達すると、液滴となって重力により遮熱板23の下方に移動する。そして、遮熱板23の下方に移動したデブリDBが遮熱板23から離脱し、接続チャンバ21の下方へ落下することで、デブリ収容容器31に収容される。
【0097】
このように遮熱板23は、プラズマPから回転式ホイルトラップ22へのEUV放射を制限して回転式ホイルトラップ22の過熱を防止したり、開口部KAによりプラズマPから放出されるEUV光の一部を取り出し可能とするのみならず、回転式ホイルトラップ22に向けて進行するデブリDBをできるだけ少なくし、回転式ホイルトラップ22の負荷を減少させる。
【0098】
ここで、デブリDBの大部分はスズであり、廃材料もスズであるので、デブリ収容容器31は、スズ回収容器と呼ぶこともできる。デブリ収容容器31の周囲には、デブリ収容容器31を加熱する加熱手段としてのヒータ配線34が巻き付けられている。加熱手段は、デブリ収容容器31本体に埋設されていてもよい。
EUV光源装置1の稼働中では、ヒータ配線34に給電することによって、デブリ収容容器の内部は、スズの融点(約232℃)以上に加熱され、デブリ収容容器31内部に蓄積されたスズは液相にされる。
【0099】
デブリ収容容器31の内部のスズを液相とする理由は、デブリ収容容器31の内部に蓄積されるデブリDBに含まれるスズが固化すると、デブリDBが落下しやすい地点での蓄積物が、あたかも鍾乳洞の石筍のように成長するからである。デブリDBの蓄積物が石筍状に成長すると、例えば、カバー部材25の排出管26がデブリDBにより封鎖されてカバー部材25内にデブリDBが蓄積される。このとき、カバー部材25内に蓄積されたデブリDBの少なくとも一部が回転式ホイルトラップ22に接触し、回転式ホイルトラップ22の回転を妨げたり、回転式ホイルトラップ22を損傷したりすることがある。
あるいは、カバー部材25に設けられている出射側開口部KOA、KOBの一部がカバー部材25内に蓄積されたデブリDBにより封鎖されて、出射側開口部KOA、KOBを通過するEUV光の一部が遮られることもある。
よって、デブリ収容容器31の内部の収容物であるスズを液相にすることで、デブリ収納容器31内でスズを平坦化し、石筍のような成長を回避しながらデブリ収納容器31内にスズを貯蔵することが可能となる。
【0100】
デブリ収容容器31に蓄積されたスズを回収する場合、ヒータ配線34への給電を止めてデブリ収容容器31内部の加熱を停止する。そして、デブリ収容容器31の温度が常温に到達してデブリ収容容器31に貯蔵されるスズを固化させた上で、接続チャンバ21内部を大気圧に戻す。その後、デブリ収容容器31を接続チャンバ21から取り外し、スズの溜まっていない新しいデブリ収容容器を接続チャンバ21に取り付ける。
接続チャンバ21から取り外されたデブリ収容容器31の内部のスズは固相になっているが、そのデブリ収容容器31を再加熱して内部のスズを再度液相とすることによって、デブリ収容容器31からスズを取り出すことができる。接続チャンバ21から取り外し、内部からスズを除去したデブリ収容容器31は再利用することができる。
【0101】
さらに、接続チャンバ21の外部には、EUV光を監視する監視装置43が配置される。監視装置43は、EUV光を検出する検出器またはEUV光の強度を測定する測定器である。接続チャンバ21の壁には、EUV光が通過する貫通孔であるEUV光案内孔28が形成され、EUV光案内孔28と監視装置43と間には、EUV光が接続チャンバ21の外に漏れずに通過する案内管29が設けられている。
【0102】
遮熱板23には、開口部KAとは別の位置に、プラズマPから放出されるEUV光の一部を取り出すための任意の形状(例えば、円形)の開口部KBが設けられる。
プラズマPと開口部KBの中心部を結ぶ直線の延長線上には、監視装置43、EUV光案内孔28および案内管29が配置されている。従って、プラズマPから放出されるEUV光の一部は、チャンバ11の窓部17、遮熱板23の開口部KB、カバー部材25の入射側開口部KI、回転式ホイルトラップ22の複数のホイル51の隙間、カバー部材25の出射側開口部KOB、接続チャンバ21の壁のEUV光案内孔28および案内管29の内腔を順次通過して、監視装置43に到達する。このようにして、EUV光を監視装置43によって監視することができる。
【0103】
図7は、
図2の受け板部材への耐蝕プレートの装着方法を示す斜視図、
図8は、
図7の耐蝕プレートが装着された受け板部材の構成例を示す平面図、
図9は、
図8の受け板部材の構成例を示す裏面図である。
図9に
示すように、図2のデブリ案内部5は、受け板部材18、制御部75および給電部76を備える。受け板部材18は、受け面71、排出部73および周縁壁部72を備える。受け面71は、デブリDBおよび廃材料を受ける。排出部73は、受け面71で受けたデブリDBおよび廃材料を排出する。受け面71の幅は、放電電極EA、EB側(受け板部材18の奥側)に比べて排出部73側(受け板部材18の手前側)の方が狭い。周縁壁部72は、排出部73を除く受け面71の周縁部を囲む壁である。周縁壁部72は、受け面71で受けた液状のデブリDBおよび廃材料が、排出部73以外から溢れるのを抑制する。受け板部材18は、耐熱性、加工性および経済性を考慮して、例えば、ステンレス材料により構成される。
【0104】
受け板部材18の受け面71の下側には、受け面71を加熱する加熱手段74が埋設される。制御部75は、図示を省略した受け板部材18の温度計測手段からの温度情報に基づいて、給電部76を制御して加熱手段74に給電し、受け板部材18の温度がデブリDBおよび廃材料の融点以上となるように維持する。給電部76は、加熱手段74を発熱させる電力を供給する。
【0105】
受け板部材18の受け面71上には、耐蝕プレートP1が設置される。耐蝕プレートP1は、液体状のデブリDBおよび廃材に対する耐蝕性が受け板部材18よりも高い。耐蝕プレートP1の材料は、耐蝕性に優れるだけでなく、耐熱性が良好であるのが好ましい。例えば、耐蝕プレートP1の材料は、モリブデンまたはタングステンを用いることができる。耐蝕プレートP1の平面形状は、受け面71の平面形状に一致させることができる。また、耐蝕プレートP1を受け面71上に設置したときの耐蝕プレートP1と受け面71の接触面積を大きくし、受け板部材18から耐蝕プレートP1に熱が伝わりやすくするために、耐蝕プレートP1と受け面71の対向面は、平坦化することができる。耐蝕プレートP1と受け面71とが接触する面の少なくとも一部は、研磨されていてもよい。
【0106】
受け板部材18は、受け面71上の耐蝕プレートP1が排出部73側に向かって下り傾斜となるように傾けて設置される。このとき、受け板部材18の受け面71の温度は、デブリDBおよび廃材の融点以上となるように維持される。このとき、受け板部材18の受け面71の熱は、耐蝕プレートP1を介してデブリDBおよび廃材料に伝わり、デブリDBおよび廃材料の液相状態を維持することができる。これにより、耐蝕プレートP1上に落下したデブリDBおよび廃材料が耐蝕プレートP1上で固化するのを防止することができ、耐蝕プレートP1にて受け面71を保護しつつ、デブリDBおよび廃材料を受け流すことができる。
【0107】
なお、受け板部材18を傾けて設置したときに、耐蝕プレートP1が受け板部材18の受け面71から離隔するのを防止するために、耐蝕プレートP1の側面が受け板部材18の周縁壁部72の内壁に接触するようにしてもよい。このとき、耐蝕プレートP1の側面と受け板部材18の周縁壁部72の内壁との間に働く摩擦力により、受け板部材18の受け面71上での耐蝕プレートP1の位置を安定させることができる。
【0108】
図10は、
図7の耐蝕プレートが取り外された受け板部材のデブリの受け止め方法を示す斜視図、
図11は、
図10の受け板部材の受け面の破損状態の一例を示す平面図である。
図10において、耐蝕プレートP1が受け面71上に設置されていない場合、融点以上に加熱されたスズなどのデブリDBおよび廃材料を受け面71で継続的に受け取ると、受け板部材18の母材であるステンレスとスズとが反応し、
図11に示すように、スズによる受け面71の腐食が進む。受け面71の腐食が進むと、受け面71に埋設された加熱手段74が腐食部分CRから露出し、加熱手段74自体がスズにより破損する。
【0109】
図12は、
図7の耐蝕プレートが装着された受け板部材のデブリの受け止め方法を示す斜視図である。
図12において、耐蝕プレートP1を受け面71上に設置した場合、融点以上に加熱されたスズなどのデブリDBおよび廃材料が受け板部材18の母材であるステンレスと反応するのを抑制することが可能となる。このため、受け面71の下部に埋設された加熱手段74が露出するのを防止することができ、加熱手段74自体がスズにより破損するという不具合を抑制することができる。
【0110】
図13は、
図2の案内部の概略構成を示す断面図である。
図13において、接続チャンバ21内には、支持台44および支持台サポート45が設けられる。受け板部材18は、耐蝕プレートP1が受け面71上に設置された状態で支持台44により支持される。支持台44の傾斜面と、受け板部材18の下面は平面状に形成される。支持台44の傾斜面は、窓部17から貫通孔37に向かって下り傾斜となるように構成される。このため、受け板部材18を支持台44上に設置することにより、支持台は、デブリ収容容器31に向かって傾斜した傾斜姿勢となるように受け板部材18を支持することができる。支持台44は、窓部17から貫通孔37に向かって下り傾斜となるように支持台サポート45によって支持される。支持台44の上流側(窓部17側)は、支持台サポート45によって支持し、支持台44の下流側(貫通孔37側)は、接続チャンバ21の底面によって支持することができる。
【0111】
なお、支持台44には、接続チャンバ21の底の上面に対して支持台44の下端部が線接触となる空間部M1を支持台44の下端側の裏面に設けてもよい。この線接触の位置は、受け板部材18の排出部73の近傍であって支持台44が接続チャンバ21の底の上面と接する位置とすることができる。支持台44の下端部の裏面に空間部M1を設けることにより、液体状のデブリDBおよび廃材料の排出部73の近傍の回り込みM2に対し、支持台44の下端部の裏面に上り傾斜が形成される。これにより、液体状のデブリDBおよび廃材料の回り込みM2の発生時に、液体状のデブリDBおよび廃材料を重力方向に引き戻すことができる。このため、支持台44の下端部に到達した液体状のデブリDBおよび廃材料の支持台44からの切れを向上させることができ、液体状のデブリDBおよび廃材料の回り込みM2を抑制することができる。
【0112】
図14は、
支持台のその他の概略構成を示す断面図である。
図14の支持台44Aでは、
図13の支持台44の空間部M1の代わりに空間部M1Aが設けられている。空間部M1Aは、
接続チャンバ21の底の上面に対して支持台44Aの下端部が線接触となるように構成される。また、
図13の支持台44の
下端は鋭角状であるのに対し、
図14の支持台44Aの
下端は平坦である。
【0113】
このとき、支持台44Aの下端部の線接触の位置における空間部M1Aの傾斜角θ2は、支持台44Aの傾斜角θ1より大きくすることができる。これにより、空間部M1Aにおける液体状のデブリDBおよび廃材料の回り込みM2にとっての上り傾斜の角度を増大させることができ、液体状のデブリDBおよび廃材料の回り込みM2をより効果的に抑制することができる。
【0114】
図15は、
支持台のさらにその他の概略構成を示す断面図である。
図15の支持台44Bでは、
図14の支持台44Aの空間部M1Aの代わりに空間部M1Bが設けられている。空間部M1Bは、支持台44Bの下端部が線接触となるように構成される。また、
図14の空間部M1Aの断面形状は円弧状であるのに対し、
図15の空間部M1Bの断面形状は三角状である。
支持台44Bの下端部の線接触の位置における空間部M1Bの傾斜角θ3は、支持台44Bの傾斜角θ1より大きくすることができ
る。
【0115】
このように、支持台の下端部を線接触とする空間部の断面形状は、
図13および
図14に示すように、曲線から構成されていてもよいし、
図15に示すように、直線から構成されていてもよいし、曲線と直線が混在していてもよい。
【0116】
各支持台44A、44Bの下端部の線接触の位置における空間部M1A、M1Bの傾斜角θ2、θ3が支持台44Aの傾斜角θ1より大きければ、空間部M1A、M1Bの断面形状は、任意の形状であってもよい。
【0117】
図16は、
図13の受け板部材からのデブリの漏出状態の一例をD5方向から見た矢視図、
図17は、
図13の受け板部材からのデブリの漏出状態のその他の例をD5方向から見た矢視図である。なお、
図16では、
図13の貫通孔37の平面形状が四角形である貫通孔37Aを示した。
図17では、
図13の貫通孔37の平面形状が円形である貫通孔37Bを示した。
図13に示すように、
接続チャンバ21の底の上面に対して支持台44の下端部が線接触となる空間部M1を支持台44の
下端部の裏面に設けることにより、液体状のデブリDBおよび廃材料が支持台44の裏面に回り込むのを抑制することができる。しかしながら、
図16に示すように、排出部73の近傍であって、デブリ収容容器31へ連通する接続チャンバ21の貫通孔37Aの周縁に液体状のスズなどのデブリDBおよび廃材料が漏出する場合がある。平面形状が四角形である貫通孔37Aの場合は、受け板部材18の排出部73の端部と貫通孔37Aの端部とをほぼ一致させることができるので、漏出した液体状のデブリDBおよび廃材料の影響は比較的小さい。
【0118】
一方、
図17に示すように、平面形状が円形である貫通孔37Bの場合は、受け板部材18の排出部73の端部と貫通孔37Bの端部とは一致しないので、漏出した液体状のデブリDBおよび廃材料の影響は比較的大きい。
【0119】
図18は、第2実施形態に係る耐蝕プレートが装着された受け板部材の設置例を
図13のD5方向から見た矢視図、
図19は、第2実施形態に係る耐蝕プレートが装着された受け板部材のその他の設置例を
図13のD5方向から見た矢視図、
図20は、第2実施形態に係る耐蝕プレートが装着された受け板部材が設置された案内部の概略構成を示す断面図である。なお、
図18では、
図13の貫通孔37の平面形状が四角形である貫通孔37Aを示した。
図19では、
図13の貫通孔37の平面形状が円形である貫通孔37Bを示した。
【0120】
図18~
図20において、受け板部材18の受け面71上には、耐蝕プレートP2が設置される。耐蝕プレートP2の
下端部は、受け板部材18の受け面71の
下端部より突出している。具体的には、耐蝕プレートP2の
下端部には、突出部R2が設けられる。耐蝕プレートP2の突出部R2の幅は、受け板部材18の排出部73の幅と等しくすることができる。耐蝕プレートP2が突出部R2を備えることにより、受け板部材18を支持台44に設置した場合、
図20のD5方向から見たとき、耐蝕プレートP2の
下端部が貫通孔37の周縁部を超えて貫通孔37の
上方に位置する。
【0121】
このとき、
図20に示すように、受け板部材18に設置された耐蝕プレートP2が受けるデブリDBおよび廃材料は、貫通孔37の周縁部を越えて貫通孔37に連通するデブリ収容容器31に導かれる。このため、
図16および
図17に示すように、受け板部材18の受け面71上に耐蝕プレートP1を設置した場合は、貫通孔37A、37Bの周縁に液体状のデブリDBおよび廃材料が漏出するのに対し、
図18および
図19に示すように、受け板部材18の受け面71上に耐蝕プレートP2を設置した場合は、貫通孔37A、37Bの周縁に液体状のデブリDBおよび廃材料が漏出するのを防止することができる。
【0122】
図21は、第3実施形態に係る耐蝕プレートが装着された受け板部材が設置された案内部の概略構成を示す断面図である。
図21において、受け板部材18の受け面71上には、耐蝕プレートP3が設置される。耐蝕プレートP3
の下端部は、
液体状のデブリDBおよび廃材料の落下方向に
沿って延びるように曲がっている。耐蝕プレートP3の
下端部
の面が重力方向と平行となるように耐蝕プレートP3を曲げてもよい。
【0123】
具体的には、耐蝕プレートP3の
下端部には、屈曲部R3が設けられる。受け板部材18を支持台44に設置した場合、屈曲部R3は、
図21のD5方向から見たとき、貫通孔37の周縁部を超えて貫通孔37の
上方に位置する。このとき、屈曲部R3は、突出部R2を介して耐蝕プレートP3に設けてもよい。これにより、耐蝕プレートP3の
下端部において、耐蝕プレートP3によるデブリDBおよび廃材料の案内方向と、デブリDBおよび廃材料の落下方向を一致させることができ、耐蝕プレートP3が受けるデブリDBおよび廃材料を、貫通孔37の周縁部を越えてデブリ収容容器31内により確実に導くことが可能となる。
【0124】
図22は、第4実施形態に係る耐蝕プレートが装着された受け板部材の設置例を
図21のD5方向から見た矢視図、
図23は、第4実施形態に係る耐蝕プレートが装着された受け板部材のその他の設置例を
図21のD5方向から見た矢視図である。なお、
図22では、
図13の貫通孔37の平面形状が四角形である貫通孔37Aを示した。
図23では、
図13の貫通孔37の平面形状が円形である貫通孔37Bを示した。
【0125】
図22および
図23に
示すように、受け板部材18の受け面71上には、耐蝕プレートP4が設置される。耐蝕プレートP4
は突出部R4を有し、突出部
R4は、受け板部材18の受け面71の端部より突出している。ただし、
図18および
図19の耐蝕プレートP2
の突出部R2の幅は一定であるのに対し、
図22および
図23の耐蝕プレートP4の
突出部R4の幅は、耐蝕プレートP4の
下端に向かって徐々に狭くなる。受け板部材18を支持台44に設置した場合、
図20のD5方向から見たとき、突出部R4の
下端は、貫通孔37A、37Bの周縁部を超えて貫通孔37A、37Bの
上方に位置する。
【0126】
このとき、耐蝕プレートP4は、耐蝕プレートP4上に落下したデブリDBおよび廃材料を突出部R4の下端に集めることができる。このため、耐蝕プレートP4の下端に到達したデブリDBおよび廃材料の耐蝕プレートP4からの切れを向上させることができ、貫通孔37A、37Bの周縁部を越えてデブリ収容容器31により確実に導くことができる。
【0127】
図24は、第5実施形態に係る耐蝕プレートが装着された受け板部材の構成例を示す平面図、
図25は、
図24のA-A線で切断した構成を示す断面図である。
図24および
図25において、受け板部材18の受け面71上には、耐蝕プレートP5が設置される。耐蝕プレートP5の
下端には、突出部R5が設けられる。耐蝕プレートP5の表面側において、突出部R5の周縁部近傍には、溝Z5が設けられる。溝Z5は、突出部R5の周縁部に沿って突出部R5の
下端に達する。溝Z5は、受け板部材18の排出部73から奥の方向に延伸されてもよい。
【0128】
耐蝕プレートP5の表面側に溝Z5を設けることにより、耐蝕プレートP5の突出部R5の周縁部を移動する液体状のデブリDBおよび廃材料を溝Z5に導かせながら耐蝕プレートP5の下端部に到達させ、より確実にデブリ収容容器31に導くことができる。このため、受け板部材18の周縁壁部72によって突出部R5の周縁部が包囲されない場合においても、液体状のデブリDBおよび廃材料が突出部R5の周縁部から落下するのを抑制することが可能となる。
【0129】
このとき、液体状のデブリDBおよび廃材料が突出部R5の周縁部から落下するのを抑制するために、耐蝕プレートの突出部の周縁部に周縁壁部を設ける必要がなくなる。このため、耐蝕プレートP5の突出部R5の周縁部に周縁壁部を形成するための曲げ加工等を耐蝕プレートP5に施す必要がなくなり、タングステンのように硬度が高い材料またはモリブデンのように硬度が高く、かつ脆い材料で耐蝕プレートP5が構成されている場合においても、耐蝕プレートP5の困難な加工を回避しつつ、液体状のデブリDBおよび廃材料が突出部R5の周縁部から落下するのを抑制することが可能となる。
【0130】
図26は、第6実施形態に係る耐蝕プレートが装着された受け板部材の構成例を示す平面図である。
図26において、受け板部材18の受け面71上には、耐蝕プレートP6が設置される。耐蝕プレートP6の
下端には、突出部R6が設けられる。
図24の耐蝕プレートP5の幅は一定であるのに対し、
図26の耐蝕プレートP6の幅は、耐蝕プレートP6の
下端に向かって徐々に狭くなる。耐蝕プレートP6の表面側において、突出部R6の周縁部近傍には、溝Z6が設けられる。溝Z6は、突出部R6の周縁部に沿って突出部R6の
下端に達する。
溝Z6は、突出部R6の
下端付近で二股に分かれ突出部R6の周縁部に沿って受け板部材18の排出部73
よりも上
流側に達することができる。
【0131】
耐蝕プレートP6の表面側に溝Z6を設けることにより、耐蝕プレートP6の突出部R6の周縁部を移動する液体状のデブリDBおよび廃材料を溝Z6に導かせながら、貫通孔37A、37Bの周縁部を越えて耐蝕プレートP6の下端部に集中させ、より確実にデブリ収容容器31に導くことができる。
【0132】
なお、
図21に示すように、
図22、
図24および
図26のそれぞれの各耐蝕プレートP4~P6の突出部R4~R6の
下端部をデブリDBおよび廃材料の落下方向に向けて曲げてもよい。
【0133】
上述した実施形態では、LDP方式のEUV光源装置を例にとったが、上述した耐蝕プレートが設置された受け板部材は、LPP方式のEUV光源装置に用いるようにしてもよい。
以下、耐蝕プレートが設置された受け板部材をLPP方式のEUV光源装置に用いた例を説明する。
【0134】
図27は、第7実施形態に係る極端紫外光光源装置のチャンバ内および接続チャンバ内を水平方向に切断して示す断面図、
図28は、
図27の光源部をD0´方向から見た矢視図である。
図27および
図28に
示すように、LPP方式ではプラズマ生成用ドライバレーザ
ビームをターゲットに照射することでプラズマP´を生成し、プラズマPからはEUV光が放出される。ターゲット材料は、EUV発生用プラズマ原料として、例えば、スズが用いられる。ターゲット材料は、液滴として供給されてもよい。
【0135】
プラズマ生成用ドライバレーザは、パルスレーザシステム、例えば、高電力および高パルス繰返し数で作動するガス放電エキシマレーザ、CO2レーザまたは分子フッ素レーザを含むことができる。
【0136】
LPP方式のEUV光源装置は、例えば、特許6241062号公報に開示されているように、ターゲット材料(プラズマ原料)を円盤状の回転体で供給する構造を備える。
具体的には、
図27に示すように、EUV光源装置101は、内部で発生されるプラズマP´を外部と隔離するチャンバ111を備える。チャンバ111は、剛体、例えば、金属から形成されている。チャンバ111は真空筐体であり、その内部は、プラズマ原料SA´を加熱励起させ、その際に生成されるEUV光の減衰を抑制するために、減圧雰囲気にされる。
【0137】
チャンバ111内部には、EUV光を放出するプラズマP´を発生させる光源部112が配置される。光源部112は、円板状部材である原料供給板EA´を備える。原料供給板EA´は、例えば、タングステン、モリブデン、タンタル等の高融点金属から形成される。
【0138】
原料供給板EA´は、モータMA´の回転軸JA´に連結され、原料供給板EA´の軸線周りに回転する。モータMA´は、チャンバ111の外部に配置され、モータMA´の回転軸JA´は、チャンバ111の外部から内部に延びる。回転軸JA´とチャンバ111の壁の間の隙間は、例えば、メカニカルシールなどのシール部材PA´で封止される。シール部材PA´は、チャンバ111内の減圧雰囲気を維持しつつ、回転軸JA´を回転自在に支持する。モータタMA´の回転駆動は、制御部113によって制御される。
【0139】
チャンバ111内部には、液相のプラズマ原料SA´が貯留されたコンテナCA´が配置される。コンテナCA´には、加熱された液相のプラズマ原料SA´が供給される。液相のプラズマ原料SA´は、例えば、スズである。
コンテナCA´は、放電電極EA´の下部が液相のプラズマ原料SA´に浸されるようにプラズマ原料SA´を収容する。従って、原料供給板EA´の下部には、液相のプラズマ原料SA´が付着する。放電電極EA´の下部に付着した液相のプラズマ原料SA´は、放電電極EA´の回転に伴って、プラズマP´が発生されるレーザビーム照射領域に輸送される。
【0140】
チャンバ111の外部には、レーザ源114が配置される。レーザ源114は、レーザビーム照射領域に輸送された原料供給板EA´に付着したプラズマ原料SA´にエネルギービームを照射して、プラズマP´を発生させる。レーザ源114は、例えば、CO2レーザ装置である。レーザ源114は、波長10.6μmの赤外領域のレーザビームLB´を発する。ただし、レーザ源114は、プラズマ原料SA´を加熱してプラズマP´を発生させることが可能であれば、CO2レーザ光以外のレーザビームを発する装置であってもよい。
【0141】
レーザ源114によるレーザビームLB´の照射タイミングは、制御部113によって制御される。レーザ源114から放出されたレーザビームLB´は、チャンバ111の外部に配置された可動ミラー116により反射され、チャンバ111の壁に設けられた透明窓118を通過して、原料供給板EA´の外周面に照射される。
ここで、可動ミラー116の姿勢が調整されることにより、原料供給板EA´におけるレーザビームLB´の照射位置が調整される。可動ミラー116の姿勢の調整は、作業員が手動で実施してもよいし、監視装置からのEUV光の強度情報に基づき、制御部113が可動ミラー116の姿勢制御を行ってもよい。この場合、可動ミラー116は、図示を省略した可動ミラー駆動部により駆動される。
【0142】
LPP方式のEUV光源装置では、特開2005-17274公報および特表2010-514214号公報に記載されているように、1つの原料に対して複数回レーザビームを照射するプリパルス・プロセスが採用されている。この手法では、第1のエネルギービーム(プリパルス:例えば、YAGレーザ)をプラズマ原料に照射して弱いプラズマを生成し、当該プラズマ原料の密度を低減する。次に、密度が低減されたプラズマに第2のエネルギービーム(メインパルス:例えば、CO2レーザ)を照射する。
プリパルスの照射によりプラズマ原料の密度を低減させることで、このプラズマ原料へのメインパルスの吸収が改善され、EUV放射強度が増加する。また、プラズマが低密度化され、EUV放射の再吸収が低減されるため、EUV発生効率を向上させ、デブリを低減させることができる。
【0143】
すなわち、上述したように、液体状のプラズマ原料SA´を照射するエネルギービームは、少なくとも2つのエネルギービームを含むことが好ましい。エネルギービームを照射する装置としては、例えば、CO2ガスレーザ源またはYAGレーザ等の固体レーザ源の他に、ArFレーザ、KrFレーザまたはXeClレーザ等のエキシマレーザ源等を採用することができる。
【0144】
なお、以下の説明では、簡易化のため、1つのレーザ源を使用する場合を例にとる。また、本実施形態では、プラズマ原料SA´に照射するエネルギービームとしてレーザビームLB´を照射しているが、レーザビームLB´の代わりに、イオンビームまたは電子ビームを回転体の側面(平面状表面)に塗布されている液体状のプラズマ原料に照射するようにしてもよい。
【0145】
原料供給板EA´の外周面に供給されているプラズマ原料料SA´にレーザビームLB´が照射されると、プラズマ原料SA´が加熱励起され、プラズマP´が発生する。プラズマP´からはEUV光が放出される。EUV光は、他の光学系装置である利用装置(リソグラフィ装置またはマスク検査装置)で利用される。本実施形態においては、EUV光はマスク検査装置で利用される。
【0146】
チャンバ111と利用装置との間には、接続チャンバ121が配置されている。接続チャンバ121は、剛体、例えば、金属から形成されている。接続チャンバ121は、真空筐体であり、その内部も、チャンバ111の内部と同様、EUV光の減衰を抑制するため減圧雰囲気にされる。
【0147】
接続チャンバ121には、デブリDBを捕捉する回転式ホイルトラップ122と、プラズマP´から回転式ホイルトラップ122への熱放射を低減する遮熱板123が配置される。回転式ホイルトラップ122は、接続チャンバ121の外部に設けられたモータMC´の回転軸JC´に連結される。
【0148】
接続チャンバ121の内部空間は、窓部117を介してチャンバ111と連通する。窓部117は、チャンバ111の壁に形成された貫通孔である。また、接続チャンバ121は、利用装置(マスク検査装置)に空間的に連通する。
【0149】
一方、プラズマP´からは、EUV光とともにデブリが高速で様々な方向に放散される。デブリは、プラズマ原料SA´であるスズ粒子およびプラズマP´の発生に伴いスパッタリングされる原料供給板EA´の材料粒子を含む。これらのデブリは、プラズマP´の膨張過程を経て、大きな運動エネルギーを得る。
【0150】
接続チャンバ121側に飛散したデブリの少なくとも一部は、LDP方式のEUV光源装置と同様、回転式ホイルトラップ122などのデブリ低減装置により捕捉される。ただし、それ以外の方向に進行するデブリは、そのままだとEUV光源101内部(例えば、チャンバ111の内壁)に付着し、内部汚染を引き起こす。
【0151】
このようなデブリの飛散による内部汚染をできるだけ抑制するように、原料供給板EA´、コンテナCA´およびモータMA´の回転軸JA´の一部は、原料供給板ハウジングHA´により包囲される。なお、回転軸JA´は、例えば、原料供給板ハウジングHA´に設けられる不図示の孔部を介して原料供給板EA´と接続される。
【0152】
図28に示すように、原料供給板ハウジン
グHA´には、プラズマP´から放出されるEUV光が接続チャンバ121を介して利用装置に向かうように、EUV光取出し用開口部KL´が設けられる。EUV光取出し用開口部KL´は、レーザビーム照射領域に輸送された原料供給板EA´に付着したプラズマ原料SA´に照射されるエネルギービームの入射口としても用いられる。また、原料供給板ハウジン
グHA´の下部には、原料供給板ハウジン
グHA´内面に付着したデブリDBおよび廃材料を外部に排出する排出口QA´が設けられる。
【0153】
EUV光源装置101内部に付着する可能性のあるデブリDBの大部分は、デブリ飛散方向D1´、D2´に飛散し、原料供給板ハウジングHA´内部にて捕集される。また、レーザビーム照射領域に輸送された原料供給板EA´に付着したプラズマ原料SA´のうち、エネルギービームが照射されて加熱されプラズマ生成に利用される量は僅かである。このため、原料供給板EA´に付着したプラズマ原料SA´の大部分は未使用のままコンテナCA´に戻るが、そのうちの一部は重力により落下してコンテナナCA´に戻らず、原料供給板ハウジングHA´内部にて捕集される。さらに、何等かの不具合により、コンテナCA´に貯留された液相のプラズマ原料SA´の一部がコンテナCA´より溢れる場合がある。この溢れたプラズマ原料SA´も原料漏出方向D3´に漏出し、廃原料として原料供給板ハウジングHA´内部にて捕集される。
【0154】
原料供給板ハウジングHA´は、プラズマP´の近傍に配置されるので、プラズマP´からのEUVなどの放射によりデブリDBおよび廃材料の融点以上に加熱される。なお、本明細書で融点というときは、スズなどのプラズマ原料SA´の融点を指す。このため、例えば、原料供給板EA´がタングステン、モリブデン、タンタル等の高融点金属から形成されるときに、原料供給板EA´の材料粒子がデブリDBに含まれる場合においても、デブリDBの融点には、原料供給板EA´の融点は含まない。よって、原料供給板ハウジングHA´内面に付着したデブリDBおよび廃材料に含まれるスズは固化することなく液体状態に維持される。原料供給板ハウジングHA´内面に付着したデブリDBおよび廃材料は、重力により原料供給板ハウジングHA´下部に集まり、排出口QA´より外部に排出され、重力方向に落下する。
【0155】
LPP方式のEUV光源装置101においても、光源部112で発生したデブリDBおよびデブリ低減装置で捕獲されたデブリDBなどを収容するために、
図2のデブリ収容部4を備える。また、LPP方式のEUV光源装置101においても、原料供給板ハウジングHA´内面に付着したデブリDBおよび廃材料をデブリ収容部4に導くために、デブリ案内部5を備える。
【0156】
排出口QA´より重力方向に落下したデブリDBおよび廃材料は、デブリ案内部5の受け板部材18により受け取られる。受け板部材18は、接続チャンバ121に設けられた支持台により支持される。支持台は、受け板部材18が傾斜姿勢となるように支持する。受け板部材18は、加熱手段により加熱され、その温度はスズの融点以上の温度に維持される。よって、排出口QA´より受け板部材18に落下したデブリDBおよび廃材料は液相のまま、傾斜した受け板部材18の受け面71に沿って移動し、受け板部材18の排出部73へ送られ、デブリ収容容器31に溜められる。
【0157】
このとき、LPP方式のEUV光源装置101においても、
図7に示すように、受け板部材18の受け面71上には、耐蝕プレートP1が設置される。これにより、融点以上に加熱されたスズなどのデブリDBおよび廃材料が受け板部材18の母材であるステンレスと反応するのを抑制することが可能となり、受け板部材18の腐食を防止することができる。
【0158】
なお、LPP方式のEUV光源装置101においても、受け板部材18の受け面71上には、
図18の耐蝕プレートP2、
図21の耐蝕プレートP3、
図22の耐蝕プレートP4、
図24の耐蝕プレートP5または
図26の耐蝕プレートP6を設置してもよい。
【0159】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0160】
例えば、上述した実施形態では、耐蝕材で構成された耐蝕プレートを受け板部材の受け面上に設置する例を示した。この方法以外にも、受け板部材の受け面を保護するために、受け板部材の受け面上に耐蝕膜を形成するようにしてもよい。この耐蝕膜の材料は、タングステンまたはモリブデンであってもよいし、窒化チタン、SiCまたは酸化膜であってもよい。あるいは、耐蝕プレートをアルミニウムなどの熱伝導性がよい材料で構成し、不動態膜などの耐蝕膜で耐蝕プレートを被覆するようにしてもよい。受け板部材の受け面上に耐蝕膜を形成する場合、スパッタで成膜してもよいし、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)で成膜してもよい。
【符号の説明】
【0161】
1 極端紫外光光源装置
2 光源部
3 デブリ低減部
4 デブリ収容部
5 デブリ案内部
11 チャンバ
18 受け板部材
P1~P7 耐蝕プレート
DB デブリ
SU 収容物
21 接続チャンバ
31 デブリ収容容器