(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】転写基材再生装置及び転写基材再生方法
(51)【国際特許分類】
B65H 20/02 20060101AFI20231003BHJP
B65H 20/34 20060101ALI20231003BHJP
B65H 23/192 20060101ALI20231003BHJP
H01M 4/88 20060101ALN20231003BHJP
【FI】
B65H20/02
B65H20/34
B65H23/192
H01M4/88 K
(21)【出願番号】P 2020173202
(22)【出願日】2020-10-14
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】石津 誠二
(72)【発明者】
【氏名】高桑 佳央
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-084642(JP,A)
【文献】特開2005-334684(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1701917(CN,A)
【文献】特開2015-113196(JP,A)
【文献】特開2018-159567(JP,A)
【文献】特開2016-074490(JP,A)
【文献】特開平06-148094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/00-1/04
B08B 5/00-13/00
B65H 7/00-7/20
B65H 20/00-20/40
B65H 23/18-23/198
B65H 26/00-26/08
B65H 43/00-43/08
H01M 4/86-4/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻回された長尺帯状の転写基材を巻出して、搬送する第1パスラインと、
ロール状に巻回された長尺帯状の粘着材を巻出して、搬送する第2パスラインと、
前記転写基材の搬送を制御する制御部と、
前記第1パスラインに設けられ、前記転写基材に前記粘着材を接触させて、前記転写基材上の不純物を前記粘着材に転写して除去する第1除去部と、
前記第1パスラインにおいて、前記第1除去部の下流に設けられ、前記転写基材の表面を検査する検査部と、
前記第1パスラインに設けられ、前記検査部により検出された残存不純物を除去する第2除去部と、
を備える転写基材再生装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2除去部による前記残存不純物の除去後に、前記転写基材の前記残存不純物が検出された箇所が再度前記検査部を通過するように、前記転写基材の搬送を制御する、
請求項1に記載の転写基材再生装置。
【請求項3】
前記検査部は、前記第2除去部の下流に設けられ、
前記制御部は、前記検査部により前記残存不純物が検出された場合に、前記転写基材の前記残存不純物が検出された箇所が前記第2除去部に移動するように、前記転写基材を逆方向に搬送する、
請求項1又は2に記載の転写基材再生装置。
【請求項4】
前記検査部は、前記第2除去部の上流に設けられ、
前記制御部は、前記第2除去部で前記残存不純物が除去された後に、前記転写基材の前記残存不純物が検出された箇所が再度前記検査部に移動するように、前記転写基材を逆方向に搬送する、
請求項1又は2に記載の転写基材再生装置。
【請求項5】
前記第1パスラインにおいて、前記第1除去部の下流であり、前記検査部及び前記第2除去部の上流に設けられ、アキュームローラを備え、
前記転写基材が逆方向に搬送されたときに、前記アキュームローラを移動させることにより搬送経路長を変更して、前記転写基材を貯留する、
請求項3又は4に記載の転写基材再生装置。
【請求項6】
前記転写基材は透光性を有し、
前記第2除去部は、前記転写基材の前記残存不純物が付着した面の裏面側から光を照射する照明光源をさらに備える、
請求項1~5のいずれか1項に記載の転写基材再生装置。
【請求項7】
前記転写基材はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、前記不純物は触媒である、
請求項1~6のいずれか1項に記載の転写基材再生装置。
【請求項8】
ロール状に巻回された長尺帯状の転写基材を巻出して、第1パスラインを搬送させ、
ロール状に巻回された長尺帯状の粘着材を巻出して、第2パスラインを搬送させ、
前記第1パスラインにおいて、第1除去部で前記転写基材に前記粘着材を接触させて、前記転写基材上の不純物を前記粘着材に転写して除去し、
前記第1パスラインにおいて、前記第1除去部による前記不純物の除去後に、前記転写基材の表面を検査し、
前記第1パスラインにおいて、残存不純物が検出された場合に、前記第1除去部と異なる第2除去部で前記残存不純物を除去する、
転写基材再生方法。
【請求項9】
前記第2除去部による前記残存不純物の除去後に、前記転写基材の前記残存不純物が検出された箇所が再度
検査されるように、前記転写基材の搬送を制御する、
請求項8に記載の転写基材再生方法。
【請求項10】
前記残存不純物が検出された場合に、前記転写基材の前記残存不純物が検出された箇所が前記第2除去部に移動するように、前記転写基材を逆方向に搬送する、
請求項8又は9に記載の転写基材再生方法。
【請求項11】
前記第2除去部で前記残存不純物が除去された後に、前記転写基材の前記残存不純物が検出された箇所が再度
検査されるように、前記転写基材を逆方向に搬送する、
請求項8又は9に記載の転写基材再生方法。
【請求項12】
前記第1パスラインにおいて、前記転写基材が逆方向に搬送されたときに、アキュームローラを移動させることにより搬送経路長を変更して、前記第1除去部に前記転写基材が戻らないように前記転写基材を貯留する、
請求項10又は11に記載の転写基材再生方法。
【請求項13】
前記第2除去部では、透光性を有する前記転写基材の裏面側から光を照射して、前記残存不純物を除去する、
請求項8~12のいずれか1項に記載の転写基材再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写基材再生装置及び転写基材再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、転写材上に印字された着色剤を一対の剥離ローラと加圧ローラのニップ部に挟持して、剥離ローラに着色剤を転写することによって、転写材から着色剤を除去する転写材再生装置が開示されている。剥離ローラと加圧ローラのニップ部の転写材の断面形状を剥離ローラ側に凸とすることで、分離爪がなくても転写材を剥離ローラから分離することができ、分離爪に蓄積した汚れによる転写材の汚れを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池の膜電極接合体の製造工程では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの転写基材に塗布された触媒を電解質膜に転写することによって、電解質膜上に触媒層を形成する。転写後、ロール状の転写基材には、転写されなかった触媒などが残存することがある。転写基材を再生するためには、粘着フィルムなどで転写基材上の触媒を剥離する必要がある。
【0005】
しかし、粘着フィルムにより触媒を転写基材から剥離する場合、転写基材上の触媒残りが酷いと、触媒を完全に取り除くことができないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、転写基材に残存する不純物を確実に除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る転写基材再生装置は、ロール状に巻回された長尺帯状の転写基材を巻出して、搬送する第1パスラインと、ロール状に巻回された長尺帯状の粘着材を巻出して、搬送する第2パスラインと、前記転写基材の搬送を制御する制御部と、前記第1パスラインに設けられ、前記転写基材に前記粘着材を接触させて、前記転写基材上の不純物を前記粘着材に転写して除去する第1除去部と、前記第1パスラインにおいて、前記第1除去部の下流に設けられ、前記転写基材の表面を検査する検査部と、前記第1パスラインに設けられ、前記検査部により検出された残存不純物を除去する第2除去部とを備えるものである。
【0008】
本発明の一態様に係る転写基材再生方法は、ロール状に巻回された長尺帯状の転写基材を巻出して、第1パスラインを搬送させ、ロール状に巻回された長尺帯状の粘着材を巻出して、第2パスラインを搬送させ、前記第1パスラインにおいて、第1除去部で前記転写基材に前記粘着材を接触させて、前記転写基材上の不純物を前記粘着材に転写して除去し、前記第1パスラインにおいて、前記第1除去部による前記不純物の除去後に、前記転写基材の表面を検査し、前記第1パスラインにおいて、残存不純物が検出された場合に、前記第1除去部と異なる第2除去部で前記残存不純物を除去する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、転写基材に残存する不純物を確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る転写基材再生装置の構成を示す概略図である。
【
図2】転写基材上の不純物を剥離する工程を説明する図である。
【
図3】実施の形態に係る転写基材再生方法を示すフロー図である。
【
図4A】
図3の各ステップにおける転写基材再生装置の動作を説明する図である。
【
図4B】
図3の各ステップにおける転写基材再生装置の動作を説明する図である。
【
図4C】
図3の各ステップにおける転写基材再生装置の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図における同等の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
燃料電池は、燃料電池セルを複数積層することにより製造される。燃料電池セルは、膜電極ガス拡散層接合体(MEGA)、カソード側セパレータ、アノード側セパレータを含む。MEGAは、膜電極接合体(MEA)、アノード側ガス拡散層(GDL)、カソード側GDLを有している。MEAは、電解質膜と、カソード側触媒層と、アノード側触媒層との接合体である。
【0013】
燃料電池のMEAを製造する際、触媒層を形成する工程では、ロール状の転写基材に触媒を間欠塗工して乾燥させ、電解質膜上に加熱ロールを用いて触媒媒を転写した後に冷却する。転写基材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が用いられる。なお、転写基材として、PTFEの表面に離型層が形成されたものであってもよい。離型層としては、ポリオレフィン系離型材が使用され得る。転写基材に対する触媒の塗布方法、乾燥方法は特に限定されない。
【0014】
転写後の転写基材には触媒が残ったり、転写時の加熱ロールにより転写基材の表面に凹凸できる場合がある。高額なPTFEの再利用化を図るために、転写基材再生工程を設け、粘着フィルムを貼り合わせて転写基材表面に残った触媒をフィルム側に転写して、除去することが考えられる。
【0015】
しかし、転写基材表面の触媒残りが酷い場合、粘着フィルムでは取り除けないことがあり、再生された転写基材の品質が確保できないという問題があった。このような粘着フィルムでも除去しきれない触媒残りは、触媒の転写工程で異常が発生し、設備が非常停止した場合に特に起こりやすい。
【0016】
具体的には、非常停止時に、加熱ロールの出口から転写基材が剥離されるまでの区間に滞留した部分において、設備の再起動後、触媒が転写基材から完全に剥がれずに、転写基材側に残留することが考えられる。また、転写工程において、間欠塗工された触媒の始端と、触媒が転写される電解質膜の始端とがずれると、転写基材に触媒が残ってしまう。
【0017】
そこで、本発明者らは、転写基材に残存する不純物を確実に除去する手法を考案した。ここでは、不純物として、電解質膜に転写した後の、転写基材に残存する触媒を除去する例について説明する。なお、ここで例示した転写基材や不純物は一例であり、これに限定されるものではない。また、転写基材に塗布された触媒は、ガス拡散層(GDL)に転写することも可能である。
【0018】
図1は、実施の形態に係る転写基材再生装置100の構成を示す概略図である。
図1に示すように、転写基材再生装置100は、転写基材10が搬送される第1パスライン1と、粘着フィルム20が搬送される第2パスライン2とを含む。転写基材再生装置100は、第1パスライン1の通紙経路順に、第1除去部3、第2除去部30、検査部4を備える。本実施の形態では、転写基材再生工程において、粘着フィルム20で転写基材10上の剥離残りを除去した後に、さらに転写基材10上に残存する触媒を確実に取り除くために、第2除去部30及び検査部4を設けている。
【0019】
なお、
図1において、図示しないサーボモータ等の駆動装置により回転駆動される駆動ローラについては、「M」の符号を付している。すなわち、転写基材巻出部11、貼り合せローラ12、送りローラ13、転写基材巻取部19、粘着フィルム巻出部21、粘着フィルム巻取部26が駆動ローラとなる。転写基材巻出部11、貼り合せローラ12、送りローラ13、転写基材巻取部19は、転写基材10の搬送を制御する制御部となる。また、粘着フィルム巻出部21、粘着フィルム巻取部26は、粘着フィルム20の搬送を制御する制御部となる。
【0020】
また、転写基材10又は粘着フィルム20を案内するフリーローラには、駆動源はなく、図中に特に符号を付していない。各ローラは、その軸がそれぞれ平行になるように設置されている。第2パスライン2におけるフリーローラのうち、非粘着ローラ22、非粘着ローラ25は、粘着フィルム20の粘着材が張り付かないようにローラ表面に特殊な表面処理が施されている。表面処理としては、例えば、ショットブラストによりローラ表面を梨地加工した後に、フッ素コーティングすることができる。
【0021】
ここでは、第1除去部3の貼り合せローラ12をマスターロールとする。各駆動ローラは、5つの張力区間(転写基材巻出部11と貼り合せローラ12との間、貼り合せローラ12と送りローラ13との間、送りローラ13と転写基材巻取部19との間、粘着フィルム巻出部21と剥離バー24との間、剥離バー24と粘着フィルム巻取部26との間)における、転写基材10又は粘着フィルム20の張力を制御しながら、その回転速度が変更される。
【0022】
転写基材巻出部11は、供給軸に、転写工程を経た後の、触媒が残存する長尺帯状の転写基材10をロール状に巻回した転写基材ロールを巻出し可能に軸支する。また、粘着フィルム巻出部21は、供給軸に、フィルム基材上に粘着材が設けられた長尺帯状の粘着フィルム20をロール状に巻回した粘着フィルムロールを巻出し可能に軸支する。
【0023】
転写基材巻出部11、粘着フィルム巻出部21の下流には、第1除去部3が設けられている。第1除去部3は、貼り合せローラ12、押圧ローラ23、剥離バー24を含む。貼り合せローラ12、押圧ローラ23は、転写基材巻出部11から巻出された転写基材10と、粘着フィルム巻出部21から巻出された粘着フィルム20とを貼り合わせるために設けられている。
【0024】
押圧ローラ23は、例えば、ゴム等の弾性体からなる。押圧ローラ23の押圧力により、転写基材10と粘着フィルム20との間に滞留する空気を追い出して、転写基材10と粘着フィルム20とを皺寄り状態とならずに貼り合わせることができる。剥離バー24は貼り合わせた転写基材10と粘着フィルム20とを分離するために設けられている。
【0025】
図2は、転写基材10上の不純物を剥離する工程を説明する図である。
図2に示すように、転写基材10に粘着フィルム20を接触させることで、転写基材10上の触媒を粘着フィルム20側に転写して除去することができる。分離された粘着フィルム20は、その後、粘着フィルム巻取部26に巻き取られる。
【0026】
本実施の形態では、第1除去部3を経た後に残った転写基材10上の残存不純物を除去するために、第2除去部30と検査部4とが設けられている。第1除去部3の下流には、第1パスライン1の通紙経路順に、送りローラ13、アキュームローラ15、ニップ16、第2除去部30、ニップ17、クリーナロール18、転写基材巻取部19が設けられている。送りローラ13は、ニップローラ14との間で転写基材10を挟み込み、粘着フィルム20から剥離された転写基材10を下流に搬送する。
【0027】
図1に示す例では、第1除去部3の下流に第2除去部30が設けられ、第2除去部30の下流に検査部4が設けられている。このため、転写基材10は、剥離バー24で粘着フィルム20から剥がした後に、第2除去部30を通過して、検査部4に到達する。したがって、検査部4で残存不純物が検出された場合、転写基材10の残存不純物が検出された箇所が30第2除去部に移動するように、転写基材10が逆方向に搬送される。
【0028】
転写基材10が逆方向に搬送されると、転写基材10と粘着フィルム20とを貼り合せる区間(第1除去部3が設けられた区間)も逆転搬送されることとなり、再生後の転写基材10に粘着フィルム20が再度貼り合わせられることとなる。そうすると、粘着フィルム20側に転写された触媒が転写基材10に再付着することが懸念される。
【0029】
そこで、本実施の形態では、第1除去部3の下流であり、検査部4及び第2除去部30の上流に、アキュームローラ15が設けられている。アキュームローラ15は、転写基材10が逆方向に搬送されたときに、移動することで搬送経路長を変更して、転写基材10を貯留する。
【0030】
すなわち、アキュームローラ15は、転写基材10が逆方向に搬送されたときに転写基材10の搬送経路長が長くなるように移動する。そして、長くなった搬送経路に、逆方向に搬送された分の転写基材10が貯留される。これにより、剥離した粘着フィルム20が再生後の転写基材10に再度貼り合わせられることを防ぐことが可能となる。
【0031】
検査部4の直前にはクリーナロール18が設けられている。クリーナロール18は、検査部4で検査される直前の転写基材10の裏表面に付着したチリ・ホコリを除去する。これにより、第2除去部30で除去すべき、転写基材10上に残存した触媒を見つけやすくすることができる。なお、クリーナロール18以外に、転写基材10に付着したチリ・ホコリの除去機構を設けてもよいし、不要な場合にはクリーナロール18を設けなくても構わない。
【0032】
検査部4は、転写基材10の表面に残存する触媒(残存不純物)の有無を検査する。検査部4は、カメラ40、照明41を含む。照明41により転写基材10の検査対象領域を照明し、カメラ40により該検査対象領域を撮像する。撮像された画像は、例えば、図示しない画像処理装置により画像処理され、残存不純物の有無が判定される。
【0033】
検査部4において残存不純物が検出された場合、一度通過した第2除去部30に残存不純物の付着箇所が移動するように、転写基材10は逆方向に搬送される。そして、第2除去部30では、残存した触媒が除去される。
【0034】
第2除去部30では、例えば、乾燥したウェスや、水やエタノール等のアルコールを含んだウェスで拭きとることで残存した触媒を除去することができる。なお、作業台の近傍に水を張ったトレーを設け、拭き取った触媒を回収するようにしてもよい。また、第2除去部30には、状態モニター31が設けられている。状態モニター31は、転写基材10残存不純物が付着した箇所を撮像した画像を表示する。作業者は、状態モニター31を見ながら残存不純物の除去を行うことができる。
【0035】
第2除去部30には、透光性を有するガラスや樹脂製の図示しない作業台が設けられている。逆方向に搬送された転写基材10は、残存不純物の付着箇所が作業台の上となる位置で停止する。残存不純物が付着した転写基材10の清掃面は、転写基材10の作業台に対向しない面側(表面側)に配置される。
【0036】
また、第2除去部30には、転写基材10の清掃面の裏面側から光を照射する照明光源(不図示)が設けられている。実施の形態では、転写基材10はPTFEであり、透光性を有している。このため、照明光源から光を照射することにより、転写基材10に残存した黒色の触媒を判別しやすくすることができる。なお、転写基材10が透光性を有していない場合には、転写基材10の表面側から光を照射してもよい。
【0037】
照明光源としては、作業台上の転写基材10の残存不純物を除去する領域に均一な光を照射するものを用いることができる。例えば、照明光源として、複数のライン上にそれぞれ複数の点光源をグリッド状に等間隔で配置したものや、一又は複数の光源と、この光源から発せられた光を乱反射する導光板等を備えた面光源などを用いることができる。光源の種類としては、例えば、蛍光灯、LED(発光ダイオード)、OLED(有機発光ダイオード)などが挙げられる。
【0038】
第2除去部30での残存不純物の除去後、転写基材10の残存不純物が検出された箇所が再度、クリーナロール18を経て検査部4を通過する。このように、再度検査部4による検査を実行することで、転写基材10に残存する不純物を確実に除去できたことを確認することが可能となる。
【0039】
以下、
図3、4A~4Cを参照して、実施の形態に係る転写基材再生方法について説明する。
図3は、実施の形態に係る転写基材再生方法を示すフロー図である。
図4A~4Cは、
図3の各ステップにおける転写基材再生装置の動作を説明する図である。
【0040】
図3のステップS10に示すように、通常搬送時には、転写基材10、粘着フィルム20は
図4A中に矢印で示す方向に搬送される。この時、第1除去部3において転写基材10上の触媒が除去される。
【0041】
その後、検査部4において転写基材10の表面を検査し、残存不純物が検出されたか否かが判断される(ステップS11)。残存不純物が検出されていない場合(ステップS11、NO)、ステップS10に戻り、通常搬送が継続される。一方、残存不純物が検出された場合(ステップS11、YES)、転写基材10の順方向の搬送を減速して停止し、予め設定した距離分、逆方向に転写基材10を搬送すると同時に、アキュームローラ15を移動させて搬送経路を長くして、転写基材10を貯留する(ステップS12)。
【0042】
図4Bに示すように、転写基材10は実線の矢印で示す逆方向に搬送される。また、アキュームローラ15を破線で示した位置から実線で示した位置に、破線の矢印に従って移動させることで、転写基材10の搬送経路を長くすることができる。これにより、転写基材10を逆方向に戻した分をアキュームローラ15に貯留することが可能となる。このとき、転写基材巻出部11及び粘着フィルム巻出部21は停止状態となる。
【0043】
そして、転写基材10の残存不純物が付着した箇所が第2除去部30に到着した後、転写基材10の逆方向搬送を停止する(ステップS13)。そして、第2除去部30において、残存不純物の除去が行われる(ステップS14)。残存不純物の除去完了後、転写基材10を順方向に搬送開始すると同時に、アキュームローラ15を戻す(ステップS15)。
【0044】
図4Cに示すように、転写基材10は実線の矢印で示す順方向に搬送される。また、アキュームローラ15を破線で示した位置から実線で示した位置に、破線の矢印に従って移動させることで、転写基材10の搬送経路を短くすることができる。これにより、アキュームローラ15に貯留した転写基材10を繰り出すことができる。順方向の搬送は、例えば、作業者が残存不純物の除去完了を示すボタンを押下することにより開始され得る。このとき、転写基材巻出部11及び粘着フィルム巻出部21は停止状態のままである。
【0045】
アキュームローラ15が原点に戻ったら、転写基材巻出部11、粘着フィルム巻出部21からそれぞれ転写基材10、粘着フィルム20の搬送を開始する(ステップS16)。ステップS16では、具体的には、アキュームローラ15が原点に戻ったときに、転写基材10の搬送が一時停止される。そして、各張力区間の張力を設定値に合わせた後に、転写基材巻出部11、粘着フィルム巻出部21から転写基材10、粘着フィルム20をそれぞれ繰り出す。
【0046】
転写基材10の残存不純物が検出された箇所は、第2除去部30による残存不純物の除去後に、再度クリーナロール18、検査部4を通過して、検査部4による検査が実行される(ステップS17)。なお、再検査で再度残存不純物が検出された場合(ステップS17、YES)には、再度ステップS12に戻り、同様の動作が繰り返される。
【0047】
再検査では残存不純物が検出されなかった場合(ステップS17、NO)、転写基材再生工程が終了するか否かが判断される(ステップS18)。転写基材再生工程は、例えば、以下の2つのパターンでの終了が考えられる。1つ目は、転写基材巻取部19のエンコーダ値から、不純物が除去された転写基材10の長さを演算し、演算された転写基材10の長さが目標値に達したときである。2つ目は、転写基材巻出部11、粘着フィルム巻出部21のロール径を測定し、いずれか一方のロール径が所定値よりも小さくなったときである。ステップS18、YESで転写基材再生工程は終了し、ステップS18、NOで転写基材再生工程が終了しない場合は、通常搬送(ステップS10、
図4A)に戻る。
【0048】
以上説明したように、実施の形態では、転写基材再生工程において、粘着フィルムで転写基材に残った触媒を剥離した後に、検査部4で検査し残存不純物がある場合、逆搬送する。そして、残存不純物の除去後に、再度転写基材10の表面の検査することで確実に触媒を取り除き、再生した転写基材10の品質を向上させることが可能となる。
【0049】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施の形態では、第2除去部30の下流に検査部4を設けたが、第2除去部30の上流に検査部4を設けてもよい。クリーナロール18を設ける場合は、検査部4の直前に設けられる。
【0050】
この場合、検査部4で検査された転写基材10は、順方向に搬送され、第2除去部30に送られる。そして、第2除去部30で残存不純物を除去した後に、転写基材10が逆方向に搬送され、残存不純物が検出された箇所が再度検査部4へと移動する。また、例えば、触媒を除去した後に、転写基材の凹凸を2本の加熱ロールでプレスし、熱と加圧力で均す、整形工程を設けてもよい。
【符号の説明】
【0051】
100 転写基材再生装置
1 第1パスライン
2 第2パスライン
3 第1除去部
4 検査部
10 転写基材
11 転写基材巻出部
12 貼り合せローラ
13 送りローラ
14 ニップローラ
15 アキュームローラ
16 ニップ
17 ニップ
18 クリーナロール
19 転写基材巻取部
20 粘着フィルム
21 粘着フィルム巻出部
22 非粘着ローラ
23 押圧ローラ
24 剥離バー
25 非粘着ローラ
26 粘着フィルム巻取部
30 第2除去部
31 状態モニター
40 カメラ
41 照明