(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】車両用空調制御装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20231003BHJP
B60H 1/34 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B60H1/00 101Q
B60H1/00 101Z
B60H1/34 671A
B60H1/34 671B
(21)【出願番号】P 2020175488
(22)【出願日】2020-10-19
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 禎子
(72)【発明者】
【氏名】大野 光由
【審査官】大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-111964(JP,A)
【文献】特開2019-048600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00- 3/06
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の室内にいる乗員が、当該乗員への化粧を行っているか否かを判定する化粧判定部と、
前記化粧判定部で前記乗員が化粧を行っていると判定した場合に、前記車両に搭載された空調装置で生成され、前記室内に設けられた吹出口から前記乗員に供給される空調風の風向き及び風量の少なくとも一方を変更する空調風変更部と
、
前記乗員が化粧を行っている部位に関する情報を取得する化粧部位取得部と、を有し、
前記空調風変更部は、前記化粧部位取得部で取得した情報を参照し、前記乗員が化粧をしている部位が目元以外の所定の部位である場合に、前記空調風の風向き及び風量の少なくとも一方を変更して前記室内の空調状態を第1空調状態にし、前記乗員が化粧をしている部位が目元である場合に、前記空調風の風向き及び風量の少なくとも一方を変更して、前記室内を前記第1空調状態と比較して前記乗員に供給される空調風が制限される第2空調状態に変更する、
車両用空調制御装置。
【請求項2】
前記乗員の顔面の位置を推定する顔面位置推定部を更に有し、
前記室内の前記第2空調状態では、前記空調風変更部は、前記顔面位置推定部で推定した前記乗員の顔面位置を回避する方向に前記空調風の風向きを変更する、
請求項1に記載の車両用空調制御装置。
【請求項3】
前記空調風変更部は、前記室内を前記第2空調状態にした後に、前記化粧部位取得部で取得した情報を参照して前記乗員が目元の化粧を終了したと判断した場合に、前記空調風の風向きを前記乗員の顔面位置方向に変更する、
請求項2に記載の車両用空調制御装置。
【請求項4】
前記化粧判定部で前記乗員が化粧を行っていると判定した場合に、前記室内に設けられた複数の前記吹出口の中から、化粧を行っている前記乗員の前方側に配置された所定の吹出口を選定する吹出口選定部を更に有し、
前記空調風変更部は、前記所定の吹出口から前記乗員に供給される空調風の風向き及び風量の少なくとも一方を変更する、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用空調制御装置。
【請求項5】
前記車両の前記室内には、前記乗員の前方側にサンバイザが配置されており、
前記化粧判定部は、前記サンバイザのミラー部が使用状態である場合に前記乗員が化粧を行っていると判定し、前記ミラー部が不使用状態である場合に前記乗員が化粧を行っていないと判定する、
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の車両用空調制御装置。
【請求項6】
前記車両の前記室内には、前記乗員の顔面を撮影可能な第1のカメラが配置されており、
前記化粧判定部は、前記第1のカメラで撮影された画像に基づいて前記乗員が顔面の所定の部位を化粧していると判定した場合に、前記乗員が化粧を行っていると判定する、
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の車両用空調制御装置。
【請求項7】
前記車両の前記室内には、前記乗員の顔面を撮影可能な第2のカメラが配置されており、
前記顔面位置推定部は、前記第2のカメラで撮影された画像に基づいて前記乗員の目の位置を認識することにより、前記顔面の位置を推定する、
請求項2又は請求項3に記載の車両用空調制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用空調制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車室内で化粧をする乗員を支援する車両が開示されている。この車両では、乗員による化粧を支援する化粧モードが起動されると、ウィンドガラスに設けられた調光フィルムに電圧が印加され、ウィンドガラスが遮蔽される。これにより、乗員は、車外の通行人等から見られることなく化粧を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両には、車室内の温度を快適に保つための空調装置が搭載されているところ、この空調装置の風が化粧中の乗員に当たることで、乗員に煩わしさを与える場合がある。例えば、空調装置の風によって目が乾燥することで、乗員に煩わしさを与えることがある。又は、空調装置の風によって、顔面の近傍で粉末状の化粧品が飛散して着衣が汚れたり、液状の化粧品が顔面に塗布される前に乾燥してしまったりすることで乗員に煩わしさを与えることがある。
【0005】
本開示は、上記の点に鑑みてなされたものであり、空調装置から車室内に供給される空調風に考慮して、車室内で化粧を行う際の快適性を向上させる車両用空調制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る車両用空調制御装置は、車両の室内にいる乗員が、当該乗員への化粧を行っているか否かを判定する化粧判定部と、前記化粧判定部で前記乗員が化粧を行っていると判定した場合に、前記車両に搭載された空調装置で生成され、前記室内に設けられた吹出口から前記乗員に供給される空調風の風向き及び風量の少なくとも一方を変更する空調風変更部と、前記乗員が化粧を行っている部位に関する情報を取得する化粧部位取得部と、を有し、前記空調風変更部は、前記化粧部位取得部で取得した情報を参照し、前記乗員が化粧をしている部位が目元以外の所定の部位である場合に、前記空調風の風向き及び風量の少なくとも一方を変更して前記室内の空調状態を第1空調状態にし、前記乗員が化粧をしている部位が目元である場合に、前記空調風の風向き及び風量の少なくとも一方を変更して、前記室内を前記第1空調状態と比較して前記乗員に供給される空調風が制限される第2空調状態に変更する。
【0007】
請求項1に係る車両用空調制御装置では、車両の室内にいる乗員が、当該乗員への化粧を行っているか否かを判定する。そして、車両用空調制御装置は、乗員が化粧を行っていると判定した場合に、室内に設けられた吹出口から前記乗員に供給される空調風の風向き及び風量の少なくとも一方を変更する。これにより、例えば、乗員が化粧を行う際に乗員に向かって流れる空調風の空気流れを低減させることが可能になる。その結果、空調風により化粧中の乗員が感じる煩わしさを低減させて、車両の室内で化粧を行う際の快適性を向上させることができる。
また、乗員が化粧をしている部位に応じて前記空調風の風向き及び風量の少なくとも一方を変更することができるため、空調風による空気流れを化粧する部位に応じて最適化することができる。
また、乗員が目元の化粧をしている際に、室内の空調状態が、顔面の他の部位を化粧している場合に設定される第1空調状態から、第2空調状態に変更される。この第2空調状態では、第1空調状態と比較して、化粧をしている乗員に供給される空調風が制限される。従って、例えば、化粧中に瞬きすることができない目元の化粧を行う際に、乗員に向かって流れる空調風を充分に制限することで、目の乾燥を防ぐことができる。また、マスカラ等、目元に使用される液状の化粧品の乾燥を抑制することができる。これにより、乗員が、目元の化粧を行う際の快適性を向上させることができる。
【0012】
請求項2に係る車両用空調制御装置は、請求項1に記載の構成において、前記乗員の顔面の位置を推定する顔面位置推定部を更に有し、前記室内の前記第2空調状態では、前記空調風変更部は、前記顔面位置推定部で推定した前記乗員の顔面位置を回避する方向に前記空調風の風向きを変更する。
【0013】
請求項2に係る車両用空調制御装置では、乗員の顔面位置を推定する。そして、車両用空調制御装置は、乗員が目元の化粧を行う際に室内を第2空調状態とすることで、乗員に供給される空調風の風向きを、推定された顔面位置を回避する方向に変更する。これにより、乗員の顔面に、空調風が直接吹き付けられることを回避することで、目の乾燥や化粧品の飛散、乾燥等を効果的に抑制することできる。その結果、乗員が、目元の化粧を行う際の快適性を向上させることができる。
【0014】
請求項3に係る車両用空調制御装置は、請求項2に記載の構成において、前記空調風変更部は、前記室内を前記第2空調状態にした後に、前記化粧部位取得部で取得した情報を参照して前記乗員が目元の化粧を終了したと判断した場合に、前記空調風の風向きを前記乗員の顔面位置方向に変更する。
【0015】
請求項3に係る車両用空調制御装置では、乗員が目元の化粧を終了したと判断した場合に、空調風の風向きを、乗員の顔面位置を回避する第2空調状態の方向から、乗員の顔面位置方向に変更する。これにより、化粧が終了した後の目元に空調風が供給され、目元に塗布された液状の化粧品等を効率良く乾かすことができる。その結果、目元の化粧崩れを抑制することができる。
【0016】
請求項4に係る車両用空調制御装置は、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の構成において、前記化粧判定部で前記乗員が化粧を行っていると判定した場合に、前記室内に設けられた複数の前記吹出口の中から、化粧を行っている前記乗員の前方側に配置された所定の吹出口を選定する吹出口選定部を更に有し、前記空調風変更部は、前記所定の吹出口から前記乗員に供給される空調風の風向き及び風量の少なくとも一方を変更する。
【0017】
請求項4に係る車両用空調制御装置では、乗員が化粧を行う際に、乗員の前方側に配置された所定の吹出口から供給される空調風の風向き及び風量の少なくとも一方を変更する。これにより、化粧を行わない乗員に対する空調を、化粧を行う乗員に対する空調と区別して行うことができる。その結果、化粧を行っていない他の乗員は、空調を制限されることなく快適に過ごすことができる。
【0018】
請求項5に係る車両用空調制御装置は、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の構成において、前記車両の前記室内には、前記乗員の前方側にサンバイザが配置されており、前記化粧判定部は、前記サンバイザのミラー部が使用状態である場合に前記乗員が化粧を行っていると判定し、前記ミラー部が不使用状態である場合に前記乗員が化粧を行っていないと判定する。
【0019】
請求項5に係る車両用空調制御装置では、サンバイザのミラー部が使用状態である場合に、乗員が化粧を行っていると判定する。従って、乗員が、化粧を行うためにサンバイザのミラー部を使用状態にすると、空調風が自動で変更される。このように、車両の室内で化粧を始める乗員の行動に基づいて、乗員が化粧を行っているか否かの判定を簡単に行うことができる。
【0020】
請求項6に係る車両用空調制御装置は、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の構成において、前記車両の前記室内には、前記乗員の顔面を撮影可能な第1のカメラが配置されており、前記化粧判定部は、前記第1のカメラで撮影された画像に基づいて前記乗員が顔面の所定の部位を化粧していると判定した場合に、前記乗員が化粧を行っていると判定する。
【0021】
請求項6に係る車両用空調制御装置では、第1のカメラで撮影された乗員の顔面の画像に基づいて、化粧を行っているか否かを判定するため、乗員の動作を詳細に把握することができ、化粧を行っているか否かを正確に判定することができる。また、車両用空調制御装置は、顔面の所定の部位に対して乗員が化粧を行っていると判定した場合にのみ、乗員が化粧を行っていると判定するため、例えば、空調風の影響をほとんど受けない部位の化粧を行っている場合には、空調風を制限せずに、室内の温度を快適に維持することができる。
【0022】
請求項7に係る車両用空調制御装置は、請求項2又は請求項3に記載の構成において、前記車両の前記室内には、前記乗員の顔面を撮影可能な第2のカメラが配置されており、前記顔面位置推定部は、前記第2のカメラで撮影された画像に基づいて前記乗員の目の位置を認識することにより、前記顔面の位置を推定する。
【0023】
請求項7に係る車両用空調制御装置では、第2カメラで撮影された乗員の顔面の画像に基づいて、乗員の目の位置を認識することにより、顔面の位置を推定する。これにより、多種多様な体格の乗員に対して、顔面の位置を正確に推定することができる。その結果、乗員の体格に応じて空調風の風向きを変更し、乗員が、目元の化粧を行う際の快適性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、請求項1に係る車両用空調制御装置によれば、空調装置から車室内に供給される空調風に考慮して、車室内で化粧を行う際の快適性を向上させることができる。
【0025】
請求項1に係る車両用空調制御装置によれば、空調風による空気流れ化粧を行う部位に応じて最適化することができる。
【0026】
請求項1及び請求項2に係る車両用空調制御装置によれば、乗員が、目元の化粧を行う際の快適性を向上させることができる。
【0028】
請求項3に係る車両用空調制御装置によれば、目元の化粧崩れを抑制することができる。
【0029】
請求項4に係る車両用空調制御装置によれば、車両に同乗する化粧を行っていない乗員も、快適に過ごすことができる。
【0030】
請求項5に係る車両用空調制御装置によれば、車両の室内で化粧を始める乗員の行動に基づいて、乗員が化粧を行っているか否かの判定を簡単に行うことができる。
【0031】
請求項6に係る車両用空調制御装置によれば、化粧を行っているか否かを正確に判定すると共に、空調風の影響をほとんど受けない部位の化粧を行っている場合には、空調風を制限せずに、室内の温度を快適に維持することができる。
【0032】
請求項7に係る車両用空調制御装置によれば、乗員の体格に応じて空調風の風向きを変更し、乗員が、目元の化粧を行う際の快適性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本実施形態に係る車両用乗員支援装置が適用された車両における車室内の前部を車両後方側から見た概略図である。
【
図2】本実施形態に係る車両用乗員支援装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る車両用乗員支援装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】車室内のカメラで撮影された映像の一例である。
【
図5】車室内のカメラで撮影された映像の一例である。
【
図6】車室内のカメラで撮影された映像の一例である。
【
図7】車両の室内の乗員に供給される空調風の風向きと風量を変更した一例を説明する図であって、(A)が変更前の状態であり、(B)が変更後の状態である。
【
図8】本実施形態における空調制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】本実施形態における第2変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
実施形態に係る車両用空調制御装置10が適用された車両12について、図面を参照して説明する。なお、
図7に示す矢印UPは車両上方側を示しており、矢印FRは車両前方側を示している。また、以下において、単に前後、左右と記載した場合は、車両前後方向の前後、車両幅方向の左右を示すものとする。
図1に示されるように、車両12における車室内の前部には、インストルメントパネル14が設けられている。
【0035】
インストルメントパネル14は、車両幅方向に延在されており、このインストルメントパネル14の車両右側にはステアリングホイール16が設けられている。すなわち、本実施形態では一例として、右側にステアリングホイール16が設けられた右ハンドル車とされており、運転席が車両右側に設定されている。
【0036】
また、インストルメントパネル14において、ステアリングホイール16の右側には、空調装置44(
図2参照)に対応して吹出口17が設けられている。この吹出口17は、図示しないダクトを介して車両に搭載された空調装置44と連結されている。空調装置44で生成された冷風や温風などの空調風は、吹出口17を通って車室内部に供給される。
【0037】
一方、インストルメントパネル14の前端部にはウインドシールドガラス18が設けられている。ウインドシールドガラス18は、車両上下方向及び車両幅方向に延在されて車室内部と車室外部とを区画している。
【0038】
ウインドシールドガラス18の車両右側端部は、車両右側のフロントピラー20に固定されている。フロントピラー20は、車両上下方向に延在されており、このフロントピラー20の車両幅方向内側端部にはウインドシールドガラス18が固定されている。また、フロントピラー20の車両幅方向外側端部にはフロントサイドガラス22の前端部が固定されている。なお、ウインドシールドガラス18の車両左側端部は、図示しない車両左側のフロントピラーに固定されている。
【0039】
ここで、車室の天井を構成するルーフ(符号省略)の前端部には、カメラ24とサンバイザ26が左右方向に並んで設けられている。カメラ24は、本発明における「第1のカメラ」及び「第2のカメラ」に相当する。カメラ24は、ルーフの車両幅方向中央に取り付けられ、運転席と助手席に着座した乗員を撮影可能に設けられている。なお、このカメラ24は、運転席の前方及び助手席の前方に、それぞれ別個に配置してもよい。
【0040】
サンバイザ26は、ルーフの車両幅方向右側及び左側にそれぞれ設けられており、運転席と助手席の前方且つ上方にそれぞれ配置されている。このサンバイザ26は、略矩形の板状部材で構成され、ルーフに固定されたヒンジ部に外周部の一端が回動可能に支持されている。これにより、サンバイザ26は、ルーフを一部覆うように配置された収納位置S1と、サンバイザ26の他端を下方側に倒してルーフから吊り下げられた状態の使用位置S2との間を変位可能に構成されている。
【0041】
サンバイザ26が使用位置S2に配置された状態では、ミラー部27が乗員の顔面と対向して配置される。ミラー部27の鏡面側には、開閉可能な蓋部が取り付けられている。乗員は、ミラー部27の蓋部27Aを開放することにより、ミラー部27の鏡面で自身の顔を確認しながら化粧をすることができる。なお、本実施形態では、ミラー部27の蓋部が開放された状態をミラー部27の使用状態とし、ミラー部27の蓋部が閉塞された状態をミラー部27の不使用状態とする。
【0042】
(車両用空調制御装置10のハードウェア構成)
車両12には、制御部としてのECU(Electronic Control Unit)28が設けられている。
図2は、車両用空調制御装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。この
図2に示されるように、車両用空調制御装置10のECU28は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)30、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)34、ストレージ36、通信インタフェース38及び入出力インタフェース40を含んで構成されている。各構成は、バス42を介して相互に通信可能に接続されている。
【0043】
CPU30は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU30は、ROM32又はストレージ36からプログラムを読み出し、RAM34を作業領域としてプログラムを実行する。CPU30は、ROM32又はストレージ36に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0044】
ROM32は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM34は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ36は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。本実施形態では、ROM32又はストレージ36には、空調制御処理を行うためのプログラム、及び各種データなどが格納されている。
【0045】
通信インタフェース38は、車両用空調制御装置10が図示しないサーバ及び他の機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、イーサネット(登録商標)、LTE、FDDI、Wi-Fi(登録商標)などの規格が用いられる。
【0046】
入出力インタフェース40には、車室内の乗員を撮影するカメラ24、空調装置44、ファンアクチュエータ46及びフィンアクチュエータ48が接続されている。ファンアクチュエータ46は、空調装置44で生成された空調風を送風するための図示しない送風ファンの制御を行うものである。ファンアクチュエータ46は、送風ファンを制御することにより、吹出口17から供給される空調風の風量を増加及び減少を行うように構成されている。フィンアクチュエータ48は、吹出口17に設けられたフィン17A(
図1参照)の向きを上下左右に制御するものである。フィンアクチュエータ48は、フィン17Aの向きを制御することにより、吹出口17から供給される空調風の風向きを変更させるように構成されている。
【0047】
(車両用空調制御装置10の機能構成)
車両用空調制御装置10は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。車両用空調制御装置10が実現する機能構成について
図3を参照して説明する。
【0048】
図3に示されるように、車両用空調制御装置10は、機能構成として、化粧判定部50、化粧部位取得部52、顔面位置推定部54、吹出口選定部56及び空調風変更部58を含んで構成されている。なお、各機能構成は、CPU30がROM32又はストレージ36に記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0049】
化粧判定部50は、車両12の車室内にいる乗員が、当該乗員への化粧を行っているか否かを判定する機能を有する。一例として、化粧判定部50は、カメラ24で撮影された画像を取得し、取得された画像に基づいて、乗員が化粧を行っているか否かを判定する。
【0050】
具体的には、カメラ24で撮影された映像から、乗員が使用している化粧道具を識別し、識別された化粧道具の種類に応じて、乗員が顔面の口元、目元及びその他の顔全体の李領域の中からどの部位に対して化粧を行っているかを識別する。化粧判定部50の機能について
図4~
図6を参照して具体的に説明する。
【0051】
図4~
図6は、カメラ24で撮影された映像の一例である。例えば、
図4に示す画像V1に基づいて、化粧判定部50は、乗員が使用している化粧道具Q1が口紅であることを識別する。更に、化粧判定部50は、化粧道具Q1の少なくとも一部が口紅に対応する口元の領域L内に配置されていることを識別すると、乗員が口元の化粧を行っていると判定する。なお、単に、化粧道具Q1が口紅であることを識別した場合に乗員が口元の化粧をしていると判定してもよい。また、口紅が配置されている領域が顔面の近傍の所定の領域内であると判定した場合に、乗員が口元の化粧をしていると判定してもよい。また、化粧道具Q1が口紅であることは一例に過ぎず、リップライナペンシルや、リップブラシであってもよい。
【0052】
同様に、
図5に示す画像V2に基づいて、化粧判定部50は、乗員が使用している化粧道具Q2がマスカラであることを識別する。更に、化粧判定部50は、化粧道具Q2の少なくとも一部がマスカラに対応する目元の領域E内に配置されていることを識別した場合に、乗員が目元の化粧を行っていることを識別する。なお、単に、化粧道具Q2がマスカラであることを識別した場合に乗員が目元の化粧をしていると判定してもよい。また、マスカラが配置されている領域が顔面の近傍の所定の領域内であると判定した場合に、乗員が目元の化粧を行っていると判定してもよい。また、化粧道具Q2がマスカラであることは一例に過ぎず、アイライナペンシルや、アイブロウペンシルであってもよい。
【0053】
同様に、
図6に示す画像V3に基づいて、化粧判定部50は、乗員が使用している化粧道具Q3がスポンジであることを識別する。更に、化粧判定部50は、化粧道具Q3の少なくとも一部がスポンジに対応する口元及び目元の領域L,Eを除く顔面の領域C内に配置されていることを識別した場合に、乗員が口元及び目元を除くその他の顔全体の化粧を行っていると判定する。なお、単に、化粧道具Q3がスポンジであることを識別した場合に乗員が口元及び目元を除くその他の顔全体の化粧をしていると判定してもよい。また、スポンジが配置されている領域が顔面の近傍の所定の領域内であると判定した場合に、乗員が口元及び目元を除くその他の顔全体の化粧を行っていると判定してもよい。また、化粧道具Q3がスポンジであることは一例に過ぎず、フェイスブラシや、チークブラシであってもよい。
【0054】
化粧部位取得部52は、化粧判定部50の判定結果に基づいて、乗員が化粧をしている部位に関する情報を取得する。
【0055】
顔面位置推定部54は、乗員の顔面の位置を推定する。一例として、
図4等に示すカメラ24で撮影された乗員の顔面の画像に基づいて、乗員の目を識別し、識別された目の位置に基づいて、乗員の顔面の位置を推定する。
【0056】
なお、本実施形態における上記推定方法は一例に過ぎず、他の推定方法を用いることもできる。例えば、乗員の着座委する車両用シート100(
図7参照)のヘッドレスト110位置を乗員の顔面の位置と推定してもよい。又は、車両用シートに感圧センサを設けて、車両用シートの圧力分布を考慮して、乗員の顔面の位置を推定してもよい。
【0057】
吹出口選定部56は、車室内に設けられた複数の吹出口17の中から、化粧を行っている乗員の前方側に配置された所定の吹出口17を選定する。具体的には、化粧判定部50の判定結果に基づいて、化粧をしている乗員を特定し、当該乗員の着座位置の前方側に配置された所定の吹出口17を選定する。
【0058】
空調風変更部58は、吹出口17から乗員に供給される空調風の風向き及び風量の少なくとも一方を変更する機能を有する。本実施形態では、化粧判定部50で所定の乗員について化粧を行っていることが判定された場合に、吹出口選定部56で選定された所定の吹出口17から供給される空調風の風向き及び風量を変更する。
【0059】
より具体的に説明すると、空調風変更部58は、乗員か化粧を行っている部位に応じて、車室内の空調状態を以下に説明する二つの空調状態の何れか一方に変更する。
【0060】
(第1空調状態)
図7には、車両12の運転席の車両用シート100に着座する乗員を側方から見た模式図である。この図に示すように、空調風変更部58は、化粧判定部50で乗員が目元以外の部位(口元及び口元及び目元を除くその他の顔全体)を化粧していると判定した場合に、
図7(A)に示す変更前の状態から、
図7(B)に示す第1空調状態に変更する。この第1空調状態では、空調風変更部58は、フィンアクチュエータ48でフィン17Aの傾きを変更し、空調風の風向きを、顔面位置推定部54で推定された乗員の顔面位置を回避する方向に変更する。また、空調風変更部58は、ファンアクチュエータ46の回転数を下げて吹出口17から供給される空調風の風量を低下させる。なお、第1空調状態の態様はこれに限らず適宜変更することができる。例えば、空調風の風向き及び風量のうち、一方を変更してもよい。
【0061】
(第2空調状態)
空調風変更部58は、化粧判定部50で乗員が目元の化粧をしていると判定した場合に、吹出口17から供給される空調風の風向き及び風量の少なくとも一方を変更して、第1空調状態から第2空調状態に変更する。この第2空調状態では、第1空調状態と比較して乗員に供給される空調風が制限される。本実施形態では、例えば、第2空調状態では、第1空調状態と比較して、空調風の風量が低下する。なお、第2空調状態において、空調風の供給を停止するように構成してもよいし、空調風の風向きを第1空調状態における風向きと比較して、乗員の顔面から遠ざかる方向に変更してもよい。
【0062】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0063】
(化粧支援処理)
車両12の車室内で化粧を行う乗員に配慮して、空調風を制御する空調制御処理の一例について、
図8に示されているフローチャートを用いて説明する。この空調制御処理は、CPU30がROM32又はストレージ36から表示プログラムを読み出して、RAM34に展開して実行することによって実行される。
【0064】
図8に示されるように、CPU30は、ステップS101で空調装置44がON(作動状態)になっているか否かについて判断する。
【0065】
CPU30は、ステップS101で空調装置44がONになっていると判断すると、ステップS102の処理に移行する。また、CPU30は、ステップS102で空調装置がONになっていないと判断すると、ステップS101の処理を繰り返す。
【0066】
CPU30は、ステップS102でカメラ24によって撮影された画像を取得して、ステップS103の処理に移行する。
【0067】
CPU30は、ステップS103で乗員の顔面の位置を推定する。具体的には、顔面位置推定部54の機能に基づいて、カメラ24で撮影された乗員の顔面の画像から目の位置を認識することにより、顔面の位置を推定する。CPU30は、その後、ステップS104の処理に移行する。
【0068】
CPU30は、ステップS104で乗員が、当該乗員への化粧を行っているか否かについて判定する。具体的には、化粧判定部50の機能により、カメラ24で撮影された画像に基づいて、乗員が口元、目元、及び口元及び目元を除くその他の顔全体に対応する部位のうち、何れか1つの部位の化粧を行っている判断した場合に、乗員が化粧を行っていると判定する。
【0069】
CPU30は、ステップS104で乗員が化粧を行っている判定すると、ステップS105の処理に移行する。また、CPU30は、ステップS104で乗員が化粧を行っていないと判断すると、ステップS101に戻って処理を繰り返す。
【0070】
CPU30は、ステップS105で車室内に設けられた複数の吹出口17の中から、化粧を行っている乗員の前方側に配置された所定の吹出口17を選定する。CPU30は、その後、ステップS106の処理に移行する。
【0071】
CPU30は、ステップS106において、化粧部位取得部52の機能に基づいて、乗員が化粧を行っている部位を取得し、ステップS107の処理に移行する。
【0072】
CPU30は、ステップS107で乗員が目元の化粧を行っているか否かについて判断する。具体的には、化粧部位取得部52の機能に基づいて、乗員が化粧を行っている部位が目元であるという情報が取得された場合に、乗員が目元の化粧を行っていると判断する。
【0073】
CPU30は、ステップS107で乗員が目元の化粧を行っていると判断すると、ステップS108の処理に移行して、空調風の風量及び風向きを変更し、車室内を第2空調状態に変更する。CPU30は、その後、ステップS110の処理に移行する。
【0074】
一方、CPU30は、ステップS107で乗員が目元以外の部位の化粧(口元又はその他の顔全体)を行っていると判断した場合は、ステップS109の処理に移行して空調風の風量及び風向きを変更し、車室内を第1空調状態に変更する。CPU30は、その後、ステップS113の処理に移行する。
【0075】
CPU30は、ステップS110で乗員が目元の化粧を終了したか否かについて判断する。具体的には、化粧部位取得部52の機能に基づいて、乗員が目元以外部位(口元又はその他の顔全体)の化粧をしていると判断される場合、又は、乗員が化粧を行っていないと判断される場合は、乗員が目元の化粧を終了したと判断する。
【0076】
CPU30は、ステップS110で乗員が目元の化粧を終了したと判断した場合、ステップS111の処理に移行する。また、CPU30は、ステップS110で乗員が目元の化粧を終了していない(継続している)と判断した場合、ステップS110の処理を繰り返す。
【0077】
CPU30は、ステップS111で空調風の風向きを乗員の顔面位置方向に変更する。具体的には、空調風変更部58の機能に基づいて、顔面位置推定部で推定された乗員の顔面位置方向へ吹出口17のフィン17Aの向きを変更し、空調風の風向きを変更する。CPU30は、その後、ステップS112の処理へ移行する。
【0078】
CPU30は、ステップS112で空調風の風向きを乗員の顔面位置方向に変更してから所定時間が経過したか否かについて判断する。具体的には、ステップS111の処理でタイマーを作動させ、当該タイマーの作動から所定時間が経過したか否かを判断する。CPU30は、ステップS112で所定時間が経過したと判断した場合、ステップS113の処理に移行する。また、CPU30は、ステップS112で所定時間を経過していないと判断した場合、ステップS112の処理を繰り返す。
【0079】
CPU30は、ステップS113で、空調装置44がOFF(停止状態)になっているか否かについて判断する。CPU30は、ステップS113で空調装置44がOFFになっていると判断した場合、処理を終了する。また、CPU30は、ステップS113で空調装置44がOFFになっていないと判断した場合、ステップS101に戻って処理を繰り返す。
【0080】
以上説明した本実施形態の車両用空調制御装置10では、車両12の車室内(室内)にいる乗員が、当該乗員への化粧を行っているか否かを判定する。そして、車両用空調制御装置10は、乗員が化粧を行っていると判定した場合に、車室内に設けられた吹出口17から乗員に供給される空調風の風向き及び風量の少なくとも一方を変更する。本実施形態の一例では、空調風の風向き及び風量の両方を変更して、乗員に向かって供給する空調風を制限する。これにより、空調風により化粧中の乗員が感じる煩わしさを低減させて、車両12の車室内で化粧を行う際の快適性を向上させることができる。
【0081】
また、本実施形態では、乗員が化粧をしている部位に応じて空調風の風向きや風量を変更することができるため、空調風による空気流れを化粧する部位に応じて最適化することができる。
【0082】
また、本実施形態では、乗員が目元の化粧をしている際に、車室内の空調状態が、顔面の他の部位を化粧している場合に設定される第1空調状態から、第2空調状態に変更される。この第2空調状態では、第1空調状態と比較して、化粧をしている乗員に供給される空調風が制限される。従って、化粧中に瞬きすることができない目元の化粧を行う際に、乗員に向かって流れる空調風を充分に制限することで、目の乾燥を防ぐことができる。また、マスカラ等、目元に使用される液状の化粧品の乾燥を抑制することができる。これにより、乗員が、目元の化粧を行う際の快適性を向上させることができる。
【0083】
また、本実施形態の車両用空調制御装置10では、乗員の顔面位置を推定可能に構成されている。そして、車両用空調制御装置10は、乗員が目元の化粧を行う際に車室内を第2空調状態とすることで、乗員に供給される空調風の風向きを、推定された顔面位置を回避する方向に変更する。これにより、乗員の顔面に、空調風が直接吹き付けられることを回避することで、目の乾燥や化粧品の飛散、乾燥等を効果的に抑制することできる。その結果、乗員が、目元の化粧を行う際の快適性を向上させることができる。
【0084】
また、本実施形態では、乗員が目元の化粧を終了したと判断した場合に、空調風の風向きを、乗員の顔面位置を回避する第2空調状態の方向から、乗員の顔面位置方向に変更する。これにより、化粧が終了した後の目元に空調風が供給され、目元に塗布されたマスカラ等の液状の化粧品を効率良く乾かすことができる。その結果、目元の化粧崩れを抑制することができる。
【0085】
また、本実施形態では、乗員が化粧を行う際に、車室内に設けられた複数の吹出口17の中から、乗員の前方側に配置された所定の吹出口17を選定し、当愛所定の吹出口17から供給される空調風の風向き及び風量の少なくとも一方を変更する。これにより、化粧を行わない乗員に対する空調を、化粧を行う乗員に対する空調と区別して行うことができる。その結果、化粧を行っていない他の乗員は、空調を制限されることなく快適に過ごすことができる。
【0086】
また、本実施形態では、カメラ24で撮影された乗員の顔面の画像に基づいて、化粧を行っているか否かを判定するため、乗員の動作を詳細に把握することができ、化粧を行っているか否かを正確に判定することができる。また、車両用空調制御装置10は、顔面の所定の部位に対して乗員が化粧を行っていると判定した場合にのみ、乗員が化粧を行っていると判定する。すなわち、乗員が、所定の条件を満たし、口元、目元、その他の顔全体に対応する部位の化粧を行っていると判断された場合に、乗員が化粧を行っていると判断する。従って、例えば、空調風の影響をほとんど受けない部位の化粧を行っている場合には、空調風を制限せずに、室内の温度を快適に維持するように制御することが可能である。
【0087】
また、本実施形態では、カメラ24で撮影された乗員の顔面の画像に基づいて、乗員の目の位置を認識することにより、顔面の位置を推定する。これにより、多種多様な体格の乗員に対して、顔面の位置を正確に推定することができる。その結果、乗員の体格に応じて空調風の風向きを変更し、乗員が、目元の化粧を行う際の快適性を向上させることができる。
【0088】
(第1変形例)
ところで、上記本実施形態の化粧判定部50の機能では、カメラ24で撮影された画像に基づいて乗員が化粧を行っているか否かを判断する構成としたが、本発明はこれに限らない。例えば、
図1に示すサンバイザ26のミラー部27が使用状態である場合に、乗員が化粧を行っていると判断するように構成してもよい。この場合、乗員が、化粧を行うためにサンバイザ26のミラー部27を使用状態にすると、空調風が自動で変更される。このように、車両12の車室内で化粧を始める乗員の行動に基づいて、乗員が化粧を行っているか否かの判定を簡単に行うことができる。
【0089】
なお、乗員の自発的な操作に応じて、乗員が化粧を行っていると判定されるように化粧判定部を構成してもよい。例えば、車両の操作部に乗員が所定の操作を行うことで、乗員が化粧を行っていることや、化粧している部位が判断されるように構成してもよい。
【0090】
(第2変形例)
また、上記本実施形態の化粧判定部50の機能によれば、カメラ24で撮影された画像に基づいて、乗員が使用している化粧道具の種類を識別し、化粧道具乗員が化粧を行っているか否かを判断する構成としたが、本発明はこれに限らない。
図9に示す本実施形態の第2変形例のように、カメラ24で撮影された画像に基づいて顔面の所定の部位を移動する乗員の指先又は乗員が使用している化粧道具の移動速度に基づいて、乗員が当該所定の部位に対して化粧を行っているか否かを判定するように構成してもよい。
図9には、カメラ24で撮影された乗員の顔面の画像の一例として、画像V4が部分的に示されており、乗員が、目元の領域Eで使用する化粧道具Q2は、マスカラとされている。また、マスカラの先端側の移動速度を矢印Aで模式的に示している。この第2変形例2では、化粧道具Q2の移動速度Aが所定の閾値より小さい場合に、乗員が化粧を行う動作であると判断し、化粧判定部で乗員が化粧を行っていると判定する。一方、乗員お指先又は化粧道具Qの移動速度Aが所定の閾値より大きい場合には、乗員が目をこする動作や、化粧を行う以外の動作であると推定し、乗員が化粧を行っていないと判断する。
【0091】
上記構成によれば、例えば、乗員が指先を使用して化粧を行う場合に、目をこする動作と誤認することなく化粧を行っている動作であることを正確に判定することができるため、化粧判定部の精度を高めることができる。
【0092】
また、同様に化粧判定部の判定精度を向上させるという観点では、カメラ24で撮影された画像に基づいて、顔面の所定の部位を移動する乗員の指先又は乗員が使用している化粧道具の移動軌跡に基づいて、乗員が当該所定の部位に対して化粧を行っているか否かを判定するように構成してもよい。この場合においても、一般的に目をこする動作における指先の移動軌跡と、化粧行為における指先の移動軌跡との違いを判別することで、乗員が化粧を行っているか否かを正確に判定することができる。
【0093】
なお、上記各実施形態及び各変形例では、乗員が運転席の車両用シート100に着座した場合について説明したが、本発明はこれに限らない。乗員が、助手席や後部座席に着座していてもよい。また、
図1では、インストルメントパネル14に設けられた吹出口17のみを図示したが、車両12の車室内に設けられる吹出口は、これに限らない。例えば、コンソールボックスや、ルーフサイドレール、前席のシートバックの後面等に空調装置の吹出口が設けられる構成としてもよい。
【0094】
なお、上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した空調制御処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、空調制御処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
また、上記各実施形態では、空調制御処理のプログラムがROMまたはストレージに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0095】
10 車両用乗員支援装置
12 車両
24 カメラ(第1のカメラ,第2のカメラ)
26 サンバイザ
27 ミラー部
17 吹出口
44 空調装置
50 化粧判定部
52 化粧部位取得部
54 顔面位置推定部
56 吹出口選定部
58 空調風変更部