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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】自動運転システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/14 20200101AFI20231003BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20231003BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20231003BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B60W50/14
B60W60/00
B60W30/10
G08G1/16 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020176318
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2022067561
(43)【公開日】2022-05-06
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100180194
【弁理士】
【氏名又は名称】利根 勇基
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 広矩
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-90627(JP,A)
【文献】国際公開第2019/163121(WO,A1)
【文献】特開2017-97495(JP,A)
【文献】特開2019-182305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の速度を検出する車速検出装置と、
前記車両の走行車線及び隣接車線を表示可能な表示装置と、
前記表示装置の表示内容を制御する表示制御部と、
前記車両の自律的な車線変更を実施する車両制御部と
を備え、
前記車両制御部は、前記車両の速度が所定値未満であるときには該車両の自律的な車線変更を禁止し、
前記表示制御部は、前記自律的な車線変更が禁止されているときには前記隣接車線を非表示にするが、前記車両が前記自律的な車線変更のために前記所定値未満の速度から該所定値以上の速度まで加速することが予定されている場合には、該車両の速度が該所定値に達する前に、前記隣接車線の表示を開始する、自動運転システム。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記車両が前記自律的な車線変更のために前記所定値未満の速度から該所定値以上の速度まで加速することが予定されている場合には、該車両の速度が該所定値に達する前に、前記隣接車線のうち車線変更先の車線の表示を開始する、請求項1に記載の自動運転システム。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記走行車線の両側に前記隣接車線が存在する場合に前記自律的な車線変更が実施されるときには前記走行車線及び車線変更先の車線のみを表示する、請求項1又は2に記載の自動運転システム。
【請求項4】
前記車両の周囲に存在する他車両を検出する車両検出装置と、
前記車両検出装置によって検出された他車両の中から減速対象車両を設定する対象車両設定部と
を更に備え、
前記車両制御部は、前記車両が前記減速対象車両に接近しないように該車両の加減速を制御し、
前記表示制御部は、前記表示装置に表示されていない隣接車線上の他車両が前記減速対象車両に設定されたときには、該減速対象車両を表示する、請求項1から3のいずれか1項に記載の自動運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自律走行可能な車両のドライバに周囲の情報を与えるために、車両に搭載された車両検出装置によって検出された他車両等を車内の表示装置に表示することが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-187982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年開発されてきている自律走行可能な車両では、所定の条件下でのみ自律的な車線変更が許可されることが多い。例えば、車両の速度が所定値以上であるときには自律的な車線変更が許可され、車両の速度が所定値未満であるときには自律的な車線変更が禁止される。
【0005】
このため、車両の走行中にドライバが自律的な車線変更の実施の可否を視認できること望ましい。例えば、自律的な車線変更が許可されているときには表示装置に隣接車線を表示し、自律的な車線変更が禁止されているときには表示装置上で隣接車線を非表示にすることが考えられる。
【0006】
しかしながら、自律的な車線変更が禁止されているときに隣接車線が常に非表示にされると、車両を加速させて車線変更を実施することが予定されている場合であっても、車両の速度が所定値に達するまで、隣接車線が非表示にされる。この結果、システムによる車線変更先の車線の認識結果をドライバに伝達するタイミングが遅れるおそれがある。
【0007】
上記課題に鑑みて、本発明の目的は、自律的な車線変更の実施の可否を適切な態様でドライバに伝えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0009】
(1)車両の速度を検出する車速検出装置と、前記車両の走行車線及び隣接車線を表示可能な表示装置と、前記表示装置の表示内容を制御する表示制御部と、前記車両の自律的な車線変更を実施する車両制御部とを備え、前記車両制御部は、前記車両の速度が所定値未満であるときには該車両の自律的な車線変更を禁止し、前記表示制御部は、前記自律的な車線変更が禁止されているときには前記隣接車線を非表示にするが、前記車両が前記自律的な車線変更のために前記所定値未満の速度から該所定値以上の速度まで加速することが予定されている場合には、該車両の速度が該所定値に達する前に、前記隣接車線の表示を開始する、自動運転システム。
【0010】
(2)前記表示制御部は、前記車両が前記自律的な車線変更のために前記所定値未満の速度から該所定値以上の速度まで加速することが予定されている場合には、該車両の速度が該所定値に達する前に、前記隣接車線のうち車線変更先の車線の表示を開始する、上記(1)に記載の自動運転システム。
【0011】
(3)前記表示制御部は、前記走行車線の両側に前記隣接車線が存在する場合に前記自律的な車線変更が実施されるときには前記走行車線及び車線変更後の車線のみを表示する、上記(1)又は(2)に記載の自動運転システム。
【0012】
(4)前記車両の周囲に存在する他車両を検出する車両検出装置と、前記車両検出装置によって検出された他車両の中から減速対象車両を設定する対象車両設定部とを更に備え、前記車両制御部は、前記車両が前記減速対象車両に接近しないように該車両の加減速を制御し、前記表示制御部は、前記表示装置に表示されていない隣接車線上の他車両が前記減速対象車両に設定されたときには、該減速対象車両を表示する、上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の自動運転システム。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、自律的な車線変更の実施の可否を適切な態様でドライバに伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る自動運転システムの構成を概略的に示す図である。
図2図2は、本発明の第一実施形態に係る自動運転システムが搭載された車両の構成の一部を概略的に示す図である。
図3図3は、第一実施形態におけるECUの機能ブロック図である。
図4図4は、表示装置に表示された画像の一例を示す図である。
図5図5は、車両の車線変更が禁止されているときに表示装置に表示された画像の一例を示す図である。
図6図6は、車両の速度が所定値未満であるときに車線変更先の車線の表示が開始された画像の一例を示す図である。
図7図7は、第一実施形態における車線表示処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図8図8は、第二実施形態におけるECUの機能ブロック図である。
図9図9は、表示されていない隣接車線上の他車両が減速対象車両に設定されたときに表示装置に表示された画像の一例を示す図である。
図10図10は、第二実施形態における車線表示処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0016】
<第一実施形態>
最初に、図1図7を参照して、本発明の第一実施形態について説明する。
【0017】
<自動運転システムの構成>
図1は、本発明の第一実施形態に係る自動運転システム1の構成を概略的に示す図である。自動運転システム1は、車両に搭載され、車両の自律走行を実施する。車両の自律走行では、車両の加速、操舵及び制動の一部又は全部が自動的に実行される。すなわち、自動運転システム1が搭載される車両は、運転支援機能を有する車両、又は車両の加速、操舵及び制動の全部を自動的に実行可能な自動運転車両である。
【0018】
図1に示されるように、自動運転システム1は、車両検出装置2、車内カメラ3、GNSS受信機4、地図データベース5、ナビゲーション装置6、アクチュエータ7、車速検出装置8、表示装置9及び電子制御ユニット((Electronic Control Unit(ECU))10を備える。車両検出装置2、車内カメラ3、GNSS受信機4、地図データベース5、ナビゲーション装置6、アクチュエータ7、車速検出装置8及び表示装置9は、車両に設けられ、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内ネットワークを介してECU10に通信可能に接続される。
【0019】
車両検出装置2は、車両(自車両)の周囲に存在する他車両を検出する。具体的には、車両検出装置2は、車両の周囲の他車両の有無、車両から他車両までの距離、及び車両と他車両との相対速度を検出する。車両検出装置2の出力はECU10に送信される。本実施形態では、車両検出装置2は、車外カメラ、ライダ(LIDAR(Laser Imaging Detection And Ranging))、ミリ波レーダ若しくは超音波センサ(ソナー)、又はこれらの任意の組み合わせから構成される。
【0020】
図2は、本発明の第一実施形態に係る自動運転システム1が搭載された車両20の構成の一部を概略的に示す図である。図2に示されるように、車両20は、車外カメラ21、ライダ22、ミリ波レーダ23及び超音波センサ(ソナー)24を備える。
【0021】
車外カメラ21は車両20の周囲を撮影して車両20の周囲の画像を生成する。本実施形態では、車外カメラ21は車両20の前方を撮影するように車両20の前方(例えば、車内のルームミラーの背面、フロントバンパー等)に配置される。なお、車外カメラ21は測距可能なステレオカメラであってもよい。
【0022】
ライダ22は、車両20の周囲にレーザ光を照射し、レーザ光の反射光を受信する。このことによって、ライダ22は、車両20の周囲の物体の有無、車両20から物体までの距離、及び車両20と物体との相対速度を検出することができる。本実施形態では、ライダ22は、車両20の上部、具体的には車両20のルーフ上に設けられている。
【0023】
ミリ波レーダ23は、車両20の周囲にミリ波を発信し、ミリ波の反射波を受信する。このことによって、ミリ波レーダ23は、車両20の周囲の物体の有無、車両20から物体までの距離、及び車両20と物体との相対速度を検出することができる。本実施形態では、ミリ波レーダ23は、車両20の前部及び後部(例えば車両20のフロントバンパー及びリアバンパー)に設けられている。
【0024】
超音波センサ24は、車両20の周囲に超音波を発信し、超音波の反射波を受信する。このことによって、超音波センサ24は、車両20の周囲の物体の有無、車両20から物体までの距離、及び車両20と物体との相対速度を検出することができる。本実施形態では、超音波センサ24は、車両20の両側部(例えば車両20の左右のフロントフェンダー)に設けられている。
【0025】
なお、車外カメラ21、ライダ22、ミリ波レーダ23及び超音波センサ24の位置及び数は、上記に限定されない。また、これらの一部は省略されてもよい。
【0026】
車内カメラ3は、カメラ及び投光器を有し、車両20のドライバの顔を撮影してドライバの顔画像を生成する。カメラは、レンズ及び撮像素子から構成され、例えばCMOS(相補型金属酸化膜半導体)カメラ又はCCD(電荷結合素子)カメラである。投光器は、LED(発光ダイオード)であり、例えばカメラの両側に配置された二個の近赤外LEDである。車内カメラ3はドライバモニタカメラとも称される。車内カメラ3の出力はECU10に送信される。
【0027】
GNSS受信機4は、複数の測位衛星を捕捉し、測位衛星から発信された電波を受信する。GNSS受信機4は、電波の発信時刻と受信時刻との差に基づいて測位衛星までの距離を算出し、測位衛星までの距離及び測位衛星の位置(軌道情報)に基づいて車両20の現在位置(例えば車両20の緯度及び経度)を検出する。GNSS受信機4の出力はECU10に送信される。なお、GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)は、米国のGPS、ロシアのGLONASS、欧州のGalileo、日本のQZSS、中国のBeiDou、インドのIRNSS等の衛星測位システムの総称である。したがって、GNSS受信機4にはGPS受信機が含まれる。
【0028】
地図データベース5は地図情報を記憶している。地図データベース5に記憶された地図情報は、車両20の外部との通信、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術等を用いて更新される。ECU10は地図データベース5から地図情報を取得する。
【0029】
ナビゲーション装置6は、GNSS受信機4によって検出された車両20の現在位置、地図データベース5の地図情報、ドライバによる入力等に基づいて、目的地までの車両20の走行ルートを設定する。ナビゲーション装置6によって設定された走行ルートはECU10に送信される。なお、GNSS受信機4及び地図データベース5はナビゲーション装置6に組み込まれていてもよい。
【0030】
アクチュエータ7は車両20を動作させる。例えば、アクチュエータ7は、車両20の加速のための駆動装置(エンジン及びモータの少なくとも一方)、車両20の制動のためのブレーキアクチュエータ、車両20の操舵のためのステアリングモータ等を含む。ECU10は車両20の自律走行のためにアクチュエータ7を制御する。
【0031】
車速検出装置8は車両の速度を検出する。車速検出装置8は例えば車両の車輪の回転数を検出することによって車両の速度を検出する。車速検出装置8の出力はECU10に送信される。
【0032】
表示装置9は、文字、画像等のデジタル情報を表示するディスプレイを有し、車両20のドライバに各種情報を提示する。表示装置9は、車両20のドライバによって視認されるように車両20の内部に設けられる。表示装置9は、例えば、タッチスクリーン、ヘッドアップディスプレイ、デジタルメータパネル等の少なくとも一つから構成されたヒューマン・マシン・インターフェース(Human Machine Interface(HMI))である。なお、表示装置9は、音声等の音を発生させるスピーカ、ドライバが入力操作を行うための操作ボタン、ドライバから音声情報を受信するマイク等を備えていてもよい。
【0033】
ECU10は車両の各種制御を実行する。図1に示されるように、ECU10は、通信インターフェース11、メモリ12及びプロセッサ13を備える。通信インターフェース11及びメモリ12は信号線を介してプロセッサ13に接続されている。なお、本実施形態では、一つのECU10が設けられているが、機能毎に複数のECUが設けられていてもよい。
【0034】
通信インターフェース11は、ECU10を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。ECU10は、通信インターフェース11を介して、車両検出装置2、車内カメラ3、GNSS受信機4、地図データベース5、ナビゲーション装置6、アクチュエータ7、車速検出装置8及び表示装置9に接続される。
【0035】
メモリ12は、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ12は、プロセッサ13によって各種処理が実行されるときに使用されるプログラム、データ等を記憶する。
【0036】
プロセッサ13は、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。なお、プロセッサ13は、論理演算ユニット又は数値演算ユニットのような演算回路を更に有していてもよい。
【0037】
図3は、第一実施形態におけるECU10の機能ブロック図である。本実施形態では、ECU10は表示制御部15及び車両制御部16を有する。表示制御部15及び車両制御部16は、ECU10のメモリ12に記憶されたプログラムをECU10のプロセッサ13が実行することによって実現される機能モジュールである。
【0038】
表示制御部15は表示装置9の表示内容を制御する。本実施形態では、表示装置9は、車両20及び車両20の周囲の他車両と共に、車両20の走行車線及び隣接車線を表示する。車両20の周囲の他車両は車両検出装置2によって検出される。車両20の走行車線の形状並びに隣接車線の形状及び数は、地図データベース5に記憶された地図情報から特定される。すなわち、表示制御部15は、GNSS受信機4の出力等に基づいて特定された車両20の現在位置に対応する地図情報を地図データベース5から取得する。なお、車両20の走行車線及び隣接車線は車両検出装置2によって検出されてもよい。
【0039】
図4は、表示装置9に表示された画像の一例を示す図である。図4に示されるように、表示装置9は車両20(自車両)及び他車両30をそれぞれ車両アイコンとして表示する。本実施形態では、車両アイコンの大きさ及び形は予め定められている。
【0040】
図4に示されるように、表示装置9には、車両20の後方において車両20よりも高い位置から見たときの画像が表示される。車両20のドライバは、斯かる表示を視認することで車両20の周囲の他車両30の検出状態を把握することができる。
【0041】
車両制御部16は車両20を制御して車両20の自律走行を実施する。例えば、車両制御部16はアクチュエータ7を用いて車両20の操舵及び加減速を制御することによって車両20の自律的な車線変更を実施する。このとき、車両制御部16は、車両検出装置2によって検出された他車両との衝突を回避するように車両20の車線変更を実施する。
【0042】
しかしながら、車両20の速度が低いときには、車両20の速度が高いときに比べて、車両20に対する他車両の相対速度が高くなり、この結果、より後方の他車両が車線変更時に車両20に接近するおそれがある。すなわち、車両20の速度が低いときには、車両20の速度が高いときに比べて、車線変更のために監視すべき後方エリアが広くなる。
【0043】
このため、本実施形態では、車両制御部16は、車両20の速度が所定値以上であるときには車両20の自律的な車線変更を許可し、車両20の速度が所定値未満であるときには車両20の自律的な車線変更を禁止する。このことによって、隣接車線の監視負担を軽減することができる。
【0044】
車両20の自律的な車線変更が許可されているときには、ウィンカレバーの操作等を介してドライバによって車線変更が指示されると、例えば車内カメラ3の出力に基づいてドライバによる目視確認の実施が検知されることを開始条件として、自律的な車線変更が実施される。一方、車両20の自律的な車線変更が禁止されているときには、ドライバによって車線変更が指示されたとしても、自律的な車線変更が実施されない。
【0045】
このため、車両20の走行中にドライバが自律的な車線変更の実施の可否を視認できること望ましい。そこで、本実施形態では、表示制御部15は、自律的な車線変更が許可されているときには車両20の隣接車線を表示し、自律的な車線変更が禁止されているときには車両20の隣接車線を非表示にする。このことによって、ドライバは表示装置9の表示を介して自律的な車線変更の実施の可否を直感的に認識することができる。
【0046】
図5は、車両20の車線変更が禁止されているときに表示装置9に表示された画像の一例を示す図である。図5の画像では、実際の検出状況を示す図4の画像と異なり、隣接車線及び隣接車線上の他車両が非表示にされている。
【0047】
また、本実施形態では、表示制御部15は、車両20の両側に隣接車線が存在する場合に車両20の自律的な車線変更が実施されるときには車両20の走行車線及び車線変更先の車線のみを表示する。例えば、車両20が車線変更によって右側の隣接車線に移動するときには、車両20の走行車線及び右側の隣接車線のみが表示され、左側の隣接車線が非表示にされる。このことによって、ドライバが車線変更の方向を認識することが容易となる。なお、車両20の自律的な車線変更が実施されるときに、車線変更の方向を示す矢印等が追加で表示装置9に表示されてもよい。
【0048】
また、本実施形態では、表示制御部15は、車両20の自律的な車線変更が実施されている間、車両20の速度に関わらず、隣接車線を表示したままにする。言い換えれば、表示制御部15は、車両20の自律的な車線変更が開始された後に車両20の速度が所定値未満に低下したとしても、車線変更が完了し又は車線変更が中止されるまで隣接車線を表示したままにする。このことによって、ドライバが車線変更の制御に不安を抱くことを抑制することができ、車線変更中に不必要な手動操作が行われることを抑制することができる。
【0049】
上述したように、車両20の速度が所定値未満であるときには、車両20の自律的な車線変更が禁止される。このため、車両20の自律的な車線変更が禁止されているときに隣接車線が常に非表示にされると、車両20を加速させて車線変更を実施することが予定されている場合であっても、車両20の速度が所定値に達するまで、隣接車線が非表示にされる。この結果、システムによる車線変更先の車線の認識結果をドライバに伝達するタイミングが遅れるおそれがある。
【0050】
そこで、本実施形態では、表示制御部15は、自律的な車線変更が禁止されているときには隣接車線を非表示にするが、車両20が自律的な車線変更のために所定値未満の速度から所定値以上の速度に加速することが予定されている場合には、車両20の速度が所定値に達する前に、隣接車線の表示を開始する。このことによって、システムによる車線変更先の車線の認識結果を予めドライバに伝達することができる。したがって、本実施形態によれば、自律的な車線変更の実施の可否を適切な態様でドライバに伝えることができる。
【0051】
特に、本実施形態では、表示制御部15は、車両20が自律的な車線変更のために所定値未満の速度から所定値以上の速度に加速することが予定されている場合には、車両20の速度が所定値に達する前に、隣接車線のうち車線変更先の車線の表示を開始する。このことによって、複数の隣接車線が存在する場合であっても、ドライバが車線変更の方向を認識することが容易となる。
【0052】
図6は、車両20の速度が所定値未満であるときに車線変更先の車線の表示が開始された画像の一例を示す図である。図6の例では、自動車専用道路において車両20が加速車線70において加速されて本線車線80へ車線変更すること(いわゆる合流)が予定されており、車両20の速度が所定値に達する前に前方の本線車線80が表示されている。
【0053】
<車線表示処理>
以下、図7のフローチャートを用いて、上述した制御について詳細に説明する。図7は、第一実施形態における車線表示処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンはECU10によって所定の実行間隔で繰り返し実行される。所定の実行間隔は、例えば、車両検出装置2による他車両の検出結果が更新される間隔である。
【0054】
最初に、ステップS101において、表示制御部15は、車両20の自律的な車線変更が禁止されているか否かを判定する。車両20の自律的な車線変更が禁止されている場合、すなわち車速検出装置8によって検出された車両20の速度が所定値未満である場合、本制御ルーチンはステップS102に進む。
【0055】
次いで、ステップS102において、表示制御部15は、車両20が自律的な車線変更のために所定値未満の速度から所定値以上の速度まで加速することが予定されているか否かを判定する。所定値は、予め定められ、例えば40km/h~70km/h、好ましくは50km/hに設定される。
【0056】
例えば、自動車専用道路において本線車線に合流するための加速車線に車両20が存在しているときに、車両20が自律的な車線変更のために所定値未満の速度から所定値以上の速度まで加速することが予定されていると判定される。なお、加速車線の終端までの距離が所定距離以下になったとき又は加速車線の終端までの予測所要時間が所定時間以下になったときに、車両20が自律的な車線変更のために所定値未満の速度から所定値以上の速度まで加速することが予定されていると判定されてもよい。また、車線変更によって先行車両を追い越すことが走行計画に追加されたときに、車両20が自律的な車線変更のために所定値未満の速度から所定値以上の速度まで加速することが予定されていると判定されてもよい。
【0057】
ステップS102において車両20が自律的な車線変更のために所定値未満の速度から所定値以上の速度まで加速することが予定されていないと判定された場合、本制御ルーチンはステップS103に進む。ステップS103では、表示制御部15は表示装置9上で隣接車線を非表示にする。なお、複数の隣接車線が存在している場合には、全ての隣接車線が非表示にされ、車両20の走行車線のみが表示される。また、隣接車線に他車両が検出されている場合には、隣接車線だけでなく隣接車線上の他車両も非表示にされる。ステップS103の後、本制御ルーチンは終了する。
【0058】
一方、ステップS101において車両20の自律的な車線変更が許可されている場合、又はステップS102において車両20が自律的な車線変更のために所定値未満の速度から所定値以上の速度まで加速することが予定されていると判定された場合には、本制御ルーチンはステップS104に進む。ステップS104では、表示制御部15は表示装置9に隣接車線を表示する。なお、隣接車線上に他車両が検出されている場合には、隣接車線だけでなく隣接車線上の他車両も表示される。ステップS104の後、本制御ルーチンは終了する。
【0059】
<第二実施形態>
第二実施形態に係る自動運転システムは、以下に説明する点を除いて、基本的に第一実施形態に係る自動運転システムの構成及び制御と同様である。このため、以下、本発明の第二実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0060】
図8は、第二実施形態におけるECU10の機能ブロック図である。第二実施形態では、ECU10は、表示制御部15及び車両制御部16に加えて、対象車両設定部17を有する。表示制御部15、車両制御部16及び対象車両設定部17は、ECU10のメモリ12に記憶されたプログラムをECU10のプロセッサ13が実行することによって実現される機能モジュールである。
【0061】
対象車両設定部17は、車両検出装置2によって検出された他車両の中から減速対象車両を設定する。なお、本明細書において、減速対象車両とは、その挙動によって車両20(自車両)の速度を制限する他車両を意味する。
【0062】
まず、対象車両設定部17は、車両20の走行車線上の先行車両と、車両20の前方の走行車線に入ってきそうな隣接車線上の他車両とを減速対象候補に設定する。このとき、隣接車線上の他車両が車両20の前方の走行車線に入ってきそうか否かの判定は、例えば、他車両の横速度に基づいて行われる。この場合、例えば、他車両が車両20の走行車線に近付く方向の他車両の横速度が所定値以上であるときに、隣接車線上の他車両が車両20の前方の走行車線に入ってきそうと判定される。また、車両検出装置2の出力等に基づいて隣接車線上の他車両の前方に障害物(落下物、故障車両、工事現場等)が検出された場合には、隣接車線上の他車両が車両20の前方の走行車線に入ってきそうと判定される。また、車線の減少によって隣接車線が消滅して車両20の走行車線が被合流車線になる場合には、隣接車線上の他車両が車両20の前方の走行車線に入ってきそうと判定される。
【0063】
次いで、対象車両設定部17は所定条件に基づいて減速対象候補の中から減速対象車両を設定する。例えば、対象車両設定部17は、マップ等を用いて、車両20と減速対象候補との間の距離及び車両20と減速対象候補との相対速度に基づいて、減速対象候補が減速対象車両の要件を満たすか否かを判定する。また、車両20の走行車線が被合流車線になる場合には、対象車両設定部17は、合流前の所定地点において車両20と隣接車線上の減速対象候補との間の距離が所定距離以上になるように定められた要件を用いて、隣接車線上の減速対象候補が減速対象車両の要件を満たすか否かを判定する。なお、複数の減速対象候補が減速対象車両の要件を満たす場合、車両20の速度の制限量(例えば車両20の減速度合い)が最も大きくなる減速対象候補が減速対象車両に設定される。また、減速対象車両の要件を満たす他車両が存在しない場合には、減速対象車両は設定されない。
【0064】
対象車両設定部17によって減速対象車両が設定されると、車両制御部16は、車両20が減速対象車両に接近しないように車両20の加減速を制御する。具体的には、車両制御部16は、車両20が減速対象車両に接近しないように、車両20の減速を行い又は目標車速への車両20の加速を抑制する。
【0065】
上述したように、表示制御部15は、車両20の自律的な車線変更が禁止されているときには隣接車線及び隣接車線上の他車両を非表示にする。しかしながら、隣接車線上の他車両が減速対象車両に設定されたときには減速対象車両の存在をドライバに通知することが望ましい。
【0066】
このため、第二実施形態では、表示制御部15は、表示装置9に表示されていない隣接車線上の他車両が減速対象車両に設定されたときには、この減速対象車両を表示する。このことによって、自律的な車線変更の可否をドライバに示唆しつつ、車両20が減速した場合にドライバが減速理由を理解することができる。
【0067】
図9は、表示されていない隣接車線上の他車両が減速対象車両に設定されたときに表示装置9に表示された画像の一例を示す図である。図9の画像では、車両20の走行車線に隣接する隣接車線が非表示にされ、隣接車線上の減速対象車両40のみが表示されている。
【0068】
<車線表示処理>
図10は、第二実施形態における車線表示処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンはECU10によって所定の実行間隔で繰り返し実行される。所定の実行間隔は、例えば、車両検出装置2による他車両の検出結果が更新される間隔である。
【0069】
ステップS201~S204は、図7のステップS101~S104と同様であることから説明を省略する。ステップS203において隣接車線が非表示にされた後、本制御ルーチンはステップS205に進む。
【0070】
ステップS205では、表示制御部15は、車両検出装置2によって隣接車線に他車両が検出されたか否かを判定する。隣接車線に他車両が検出されなかったと判定された場合、本制御ルーチンは終了する。一方、隣接車線に他車両が検出されたと判定された場合、本制御ルーチンはステップS206に進む。
【0071】
ステップS206では、表示制御部15は、隣接車線上の他車両が減速対象車両に設定されているか否かを判定する。隣接車線上の他車両が減速対象車両に設定されていると判定された場合、本制御ルーチンはステップS207に進む。
【0072】
ステップS207では、表示制御部15は、減速対象車両に設定されている隣接車線上の他車両を表示する。ステップS207の後、本制御ルーチンは終了する。
【0073】
一方、ステップS206において隣接車線上の他車両が減速対象車両に設定されていないと判定された場合、本制御ルーチンはステップS208に進む。ステップS208では、表示制御部15は隣接車線上の他車両を非表示にする。ステップS208の後、本制御ルーチンは終了する。
【0074】
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。
【0075】
例えば、自動運転システム1の表示装置9は、車両20に加えて又は車両20の代わりに、オペレータ(遠隔ドライバ)が車両20の自律走行を遠隔制御するために車両20の外部のサーバに設けられていてもよい。この場合、車両検出装置2及び車速検出装置8の出力等が車両20からサーバに送信され、サーバのプロセッサが表示制御部として機能してもよい。
【0076】
また、他車両を示す車両アイコンとして、複数の種類の車両アイコンが用いられてもよい。例えば、車両検出装置2によって検出された他車両が乗用車又はトラックとして識別され、他車両を示す車両アイコンとして、乗用車の車両アイコン及びトラックの車両アイコンが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 自動運転システム
8 車速検出装置
9 表示装置
10 電子制御ユニット(ECU)
15 表示制御部
16 車両制御部
20 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10