(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】制御装置、車両、プロブラム及び制御装置の動作方法
(51)【国際特許分類】
F01M 11/10 20060101AFI20231003BHJP
F01M 11/04 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
F01M11/10 B
F01M11/04 Z
(21)【出願番号】P 2020199038
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100187078
【氏名又は名称】甲原 秀俊
(74)【代理人】
【識別番号】100139491
【氏名又は名称】河合 隆慶
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 豊和
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-522888(JP,A)
【文献】特開昭62-55407(JP,A)
【文献】特開2011-196220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 11/04
F01M 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるセンサの情報に基づいて、前記車両のエンジンからエンジンオイルが排出されたことを示唆する第1の事象、又は前記エンジンにエンジンオイルが補給されたことを示唆する第2の事象を検出する制御部と、
前記制御部による検出結果をオイル交換の履歴として格納する記憶部と、
を有
し、
前記第1の事象は前記エンジンオイルの量の減少を含み、前記第2の事象は前記エンジンオイルの量の増加を含み、
前記制御部は、前記車両のボンネットが開けられると起動され、起動された後基準経過時間が経過すると、前記第1又は第2の事象を検出していなくても、電力を切断する、
制御装置。
【請求項2】
請求項
1において、
前記第2の事象は前記エンジンオイルの量の減少の後の増加を含み、
前記制御部は、当該第2の事象を検出した場合には、前記オイル交換の履歴の確からしさを示す情報を前記記憶部に格納する、
制御装置。
【請求項3】
請求項
2において、
前記第1の事象における前記エンジンオイルの量の減少は第1の基準量以下となることを条件とし、前記第2の事象における前記エンジンオイルの量の増加は第2の基準量以上となることを条件とする、
制御装置。
【請求項4】
請求項
3において、
前記第1の基準量より前記第2の基準量の方が大きい、
制御装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれかに記載の制御装置を搭載する車両。
【請求項6】
コンピュータにより実行されることで当該コンピュータを請求項1~
4のいずれかに記載の制御装置として動作させる、プログラム。
【請求項7】
制御装置の動作方法であって、
車両に搭載されるセンサを含む機器から情報を受けるステップと、
前記情報に基づいて、前記車両のエンジンからエンジンオイルが排出されたことを示唆する第1の事象、又は前記エンジンにエンジンオイルが補給されたことを示唆する第2の事象を検出するステップと、
検出結果をオイル交換の履歴として格納するステップと、
を含
み、
前記第1の事象は前記エンジンオイルの量の減少を含み、前記第2の事象は前記エンジンオイルの量の増加を含み、
前記車両のボンネットが開けられると起動されるステップと、
起動された後基準経過時間が経過すると、前記第1の事象又は第2の事象を検出していなくても、電力を切断するステップと、を更に含む、
制御装置の動作方法。
【請求項8】
請求項
7において、
前記第2の事象は前記エンジンオイルの量の減少の後の増加を含み、
当該第2の事象を検出した場合には、前記オイル交換の履歴の確からしさを示す情報を格納するステップを更に含む、
制御装置の動作方法。
【請求項9】
請求項
8において、
前記第1の事象における前記エンジンオイルの量の減少は第1の基準量以下となることを条件とし、前記第2の事象における前記エンジンオイルの量の増加は第2の基準量以上となることを条件とする、
制御装置の動作方法。
【請求項10】
請求項
9において、
前記第1の基準量より前記第2の基準量の方が大きい、
制御装置の動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、車両、プロブラム及び制御装置の動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の良好な状態を維持して再販価値を担保するためには、車両の各部位の定期的なメンテナンスが求められる。メンテナンスは、動作の点検、消耗品の交換・補充を含む。車両のメンテナンスを支援する技術が種々提案されており、例えば特許文献1には、エンジンの油圧を測定してオイルフィルタの交換の有無を判断する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃エンジンで動作する自動車の場合、車両の再販価値を維持するためには、メンテナンスの履歴として、例えば、エンジンオイルの交換を実施したことの履歴を完備することが望まれる。
【0005】
以下では、オイル交換の履歴管理を支援する制御装置等を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における制御装置は、車両に搭載されるセンサの情報に基づいて、前記車両のエンジンからエンジンオイルが排出されたことを示唆する第1の事象、又は前記エンジンにエンジンオイルが補給されたことを示唆する第2の事象を検出したときに、オイル交換の実施を判定する制御部と、前記制御部による検出結果をオイル交換の履歴として格納する記憶部と、を有する。
【0007】
本開示における制御装置の動作方法は、車両に搭載されるセンサを含む機器から情報を受けるステップと、前記情報に基づいて、前記車両のエンジンからエンジンオイルが排出されたことを示唆する第1の事象、又は前記エンジンにエンジンオイルが補給されたことを示唆する第2の事象を検出したときに、検出結果をオイル交換の履歴として格納するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示における制御装置等によれば、オイル交換の履歴管理を支援することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】制御装置の動作手順例を説明するフローチャート図である。
【
図3】制御装置の動作手順例を説明するフローチャート図である。
【
図4】制御装置の動作手順例を説明するフローチャート図である。
【
図5】制御装置の動作手順例を説明するフローチャート図である。
【
図6】制御装置の動作手順例を説明するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について説明する。
【0011】
図1は、一実施形態における制御装置の構成例を示す図である。制御装置10は、内燃エンジンにより動作する車両1に搭載され、車両1の各所に搭載される各種センサ16及び他の車載機器と情報通信可能に接続される情報処理装置である。制御装置10は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)であり、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内ネットワークによりセンサ16その他の車載機器と接続される。また、制御装置10は、車内ネットワークに対応する通信インタフェースを有する、ナビゲーション装置、スマートフォン、タブレット端末装置、パーソナルコンピュータ等の、情報端末装置であってもよい。センサ16は、エンジンオイルの残量を検知するオイルレベルセンサ、サスペンションの伸展量を検知するサスペンションセンサ、ボンネットの開閉を検知するボンネットセンサを含む。制御装置10は、電源回路14を介して車両のバッテリから電力供給を受けて動作する。電源回路14は、制御装置10に内蔵されてもよいし、制御装置10の外部に設けられてもよい。電源回路14は、ボンネットセンサから送られる、車両のボンネットが開かれたことを示す信号に応答して、制御装置10に電力を供給するよう構成される。車両1のイグニションがオフ状態のときでも、制御装置10は、ボンネットが開けられると電源回路14を介しての電力供給により起動して動作可能に構成される。
【0012】
制御装置10は、車両1に搭載されるセンサ16を含む機器から情報を受ける通信部11と、通信部11が受ける情報に基づいて、車両1のエンジンからエンジンオイルが排出されたことを示唆する第1の事象(以下、便宜的に排出示唆事象という)と、エンジンにエンジンオイルが補給されたことを示唆する第2の事象(以下、便宜的に補給示唆事象という)とを検出したときに、オイル交換の実施を判定する制御部13と、オイル交換の履歴を格納する記憶部12と、を有する。
【0013】
車両1のエンジンオイルの交換は、種々の態様によって実施される。例えば、車両1の販売事業者の施設で販売事業者の作業員によりオイル交換が実施される。この場合、販売事業者において、車両1のオイル交換の履歴を人為的に把握することが可能である。あるいは、オイル交換は、サードパーティによるサービス施設でサードパーティの作業員により実施されたり、車両1のユーザの自宅などでユーザにより実施されたりする。これらの場合には、販売事業者において、車両1のオイル交換の履歴を把握することが困難である。他方、車両1に標準装備されるオイルレベルセンサは、オイル残量の瞬時値を検知しうるものの、オイル残量からはオイル交換、すなわちオイルの排出とエンジンオイルの補給とが実施されたかは検知できない。本実施形態の制御装置10は、オイルの排出を高い蓋然性で示唆する排出示唆事象と、オイル補給を高い蓋然性で示唆する補給示唆事象の少なくともいずれかを検出することで、オイル交換の履歴を格納する。本実施形態の制御装置10によれば、オイルの排出と補給のいずれかを直接的に検知するための追加的構成を要せずに、オイル交換の履歴管理を支援することが可能となる。なお、排出示唆事象と補給示唆事象の具体例は、以下で詳述される。
【0014】
制御装置10の各部について説明する。
【0015】
通信部11は、車両1の車内ネットワークに接続するための、一以上の有線又は無線規格に対応する通信モジュールを有する。通信部11は、例えば、CAN(Controller Area Network)等の規格に対応した通信モジュールにより車内ネットワークに接続される。通信部11は、車両1のセンサ16からの検知結果を示す情報を受けて制御部13に渡す。また、通信部11は、1つ以上のGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を含むか、GNSS受信機と通信可能な通信モジュールを有する。GNSSには、例えば、GPS(Global Positioning System)、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)、BeiDou、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、及びGalileoの少なくともいずれかが含まれる。通信部11は、GNSS信号を受けて、制御部13に渡す。
【0016】
記憶部12は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等を有する。記憶部12は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部12は、制御部13の動作に用いられる任意の情報、制御・処理プログラム等を格納する。また、記憶部12は、制御部13が判定するオイル交換の履歴を格納する。
【0017】
制御部13は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の一以上の汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した一以上の専用のプロセッサを有する。あるいは、制御部13は、一以上の、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用回路を有してもよい。制御部13は、制御・処理プログラムに従って動作したり、回路として実装された動作手順に従って動作したりすることで、本実施形態にかかる動作を実行する。制御部13は、例えば、通信部11を介して車両1のセンサ16から情報を取得したり、GNSS信号を受けて車両1の現在地地を検出したりして、オイル交換実施を判定する。
【0018】
図2は、本実施形態における制御装置10の動作手順例を説明するためのフローチャート図である。
図2の動作手順は、ボンネットが開かれたことを示す信号をボンネットセンサから受けた電源回路14が制御装置10に電力を供給し、制御装置10が起動したときに、制御部13により実行される。
図2の手順は、制御部13が、オイル残量の減少を排出示唆事象として、オイル残量が増加に転じることを補給示唆事象として検出することで、オイル交換実施を判定する場合の手順である。
【0019】
ステップS200において、制御部13は、経過時間の計測を開始する。次いで、制御部13は、経過時間が基準経過時間以内の場合(ステップS202のYes)、ステップS204に進む。基準経過時間は、オイル交換作業に典型的に必要な所要時間であって、予め任意に設定され、記憶部12に格納される。一方、経過時間が基準経過時間を超過している場合(ステップS202のNo)、制御部13は、ステップS218に進む。ステップS218において、制御部13は、制御装置10の電力を切断し、
図2の手順を終了する。
【0020】
ステップS204において、制御部13は、オイル残量を検出し格納する。制御部13は、通信部11を介してオイルレベルセンサから受けた情報に基づきオイル残量を検出し、検出したオイル残量の情報を記憶部12に格納する。次いで、制御部13は、オイル残量が変動している場合(ステップS206のYes)、ステップS210に進む。制御部13は、例えば、記憶部12に格納されたオイル残量の情報から任意の経過時間における差分を算出し、差分が予め任意に設定される基準量以上の場合に変動有りと判定し、差分が基準量未満の場合に変動無しと判定する。オイル残量が変動していない場合(ステップS206のNo)、制御部13はステップS202に戻る。
【0021】
ステップS210において、制御部13は、オイル残量が減少基準量以下かを判定する。減少基準量は、オイル残量がその量以下となる場合に高い蓋然性でオイルタンクが空または空に近いことが示唆されるような基準量であって、例えば、検出可能なオイル残量の下限付近に設定される。制御部13は、オイル残量が減少基準残量以下の場合(ステップS210のYes)、ステップS212に進む。ステップS212において、制御部13は、オイルが排出されたことを判定し、ステップS214に進む。一方、オイル残量が減少基準残量を上回る場合(ステップS210のNo)、制御部13は、ステップS212を実行することなくステップS214に進む。
【0022】
オイル排出済みと判定されている場合(ステップS208のYes)、ステップS214において、制御部13は、オイル残量が増加基準量以上かを判定する。増加基準量は、その量にオイル残量が達すると高い蓋然性でオイルタンクにオイルが補給されたことが示唆されるような量であって、任意に設定される。増加基準量は、減少基準量と同じであってもよいし、異なってもよい。制御部13は、オイル残量が増加基準残量以上の場合(ステップS214のYes)、ステップS215に進む。ステップS215において、制御部13は、オイルが補給されたことを判定し、ステップS216に進む。一方、オイル残量が増加基準残量未満の場合(ステップS214のNo)、制御部13は、ステップS215を実行することなくステップS216に進む。
【0023】
ステップS216において、制御部13は、オイル残量が減少基準量を超えて減少し、つまり高い蓋然性でオイル排出が示唆される排出示唆事象が検出された場合、又は、オイル残量が増加基準量以上に増加し、つまり高い蓋然性でオイル補給が示唆される補給示唆事象が検出された場合、オイル交換実施と判定する。あるいは、制御部13は、オイル残量が減少基準量を超えて減少し、その後に、オイル残量が増加基準量以上に回復したことを検出した場合、つまり、排出示唆事象と補給示唆事象がともに検出される場合には、オイル交換実施と判定するとともに、オイル交換実施の確からしさが重み付けされた情報を生成する。この場合、各事象が単独で検出された場合より高い蓋然性でオイル交換が示唆される。オイル交換実施の確からしさが重み付けされた情報は、例えば、確からしさを数値の大きさで示すスコア等である。そして、ステップS217において、制御部13は、オイル交換の履歴、又はこれに加えて重み付けされた確からしさを示す情報を、記憶部12に格納する。オイル交換の履歴は、オイル交換実施を判定したときの日時を含む。
【0024】
ステップS218において、制御部13は、制御装置10の電力を切断し、
図2の手順を終了する。
【0025】
図2の動作手順によれば、制御装置10は、排出示唆事象としてオイル残量の減少を、、補給示唆事象としてオイル残量の増加を検出することで、オイル交換実施を判定し、オイル交換の履歴を格納することが可能となる。すなわち、オイルの排出と補給とを直接的に検知するための追加的構成を要せずに、オイル交換の履歴管理を支援することが可能となる。さらに、オイル残量の減少に対する減少基準量より、オイル残量の増加に対する増加基準量を大きくしてもよい。そうすることで、オイル残量が減少基準量を超えて減少した後に、オイル残量が増加基準量以上に回復したことを検出した場合に、外乱等に起因するオイル変動の誤差の影響を排除して、より正確にオイル交換実施を判定することができる。また、ボンネットが開かれて制御装置10が起動してからの経過時間が基準経過時間を超える場合、オイル交換以外の目的でボンネットが開けられた可能性があるが、かかる場合であっても、経過時間が基準時間を超えたときに制御装置10の電力を切断するステップS218を制御部13が実行することで、電力を節約することができる。また、経過時間が基準時間以内であっても、オイル交換実施を判定し履歴を格納したときは、制御装置10の電力を切断するステップS218を制御部13が実行することで、電力を節約することができる。
【0026】
図2では、ボンネットが開かれることで制御装置10に電力が供給されて動作手順が開始される場合を例として示した。しかしながら、例えば、制御部13が、イグニションがオフされる信号を通信部11を介して受けると、そのときの車両1の状態に応じて、必要最小限の電力を制御装置10に継続して供給するように制御装置10を構成してもよい。例えば、制御部13は、通信部11を介して、エンジン制御用のECUからエンジンフリクションを示す情報を受け取り、フリクションの大きさがエンジンオイルの劣化を示す程度に大きい場合に、電力供給を継続して受けるような制御を実行する。また、制御部13は、通信部11を介して、走行距離メータ制御用のECUから走行距離を受け取り、走行距離がオイル交換が推奨されるような走行距離(例えば、5000km超過)である場合に、電力供給を継続して受けるような制御を実行する。また、制御部13は、通信部11を介して、エンジンオイル系のアラート制御用のECUからオイル残量が少なすぎることを示すアラートを受け取った場合に、電力供給を継続して受けるような制御を実行する。あるいは、制御部13は、通信部11を介して受け取るGNSS信号と記憶部12から読み出す地図情報とから現在位置を導出し、車両メンテナンスが可能なサービス施設に車両1が位置する場合に、電力供給を継続して受けるような制御を実行する。そうすることで、ボンネットセンサからの信号に応答して電力供給を制御する電源回路14を省略することが可能となる。なお、この場合、ステップS200は、例えば、イグニションオフに応答して実行される。
【0027】
<変形例1>
図3は、変形例1における制御装置10の動作手順例を説明するためのフローチャート図である。
図3の手順は、車両1の販売事業者又はサードパーティのサービス施設において車両1のオイル交換を実施する場合を想定した手順である。サービス施設においてオイル交換を実施する際、車両1をジャッキ等の設備により挙上し、排出されるオイルを回収する容器を車体の下に設置した状態で、オイルの排出が行われる。このとき、車両1のサスペンションにかかる車重が一時的に軽減されるので、車両1を再び着地させたときにサスペンションがある程度伸展した状態にある。よって、制御部13は、サスペンションの伸展を排出示唆事象として検出する。また、車両1がサービス施設に滞在することは、車体の整備が実施されることを示唆する。ここで、オイル交換の所要時間は、例えば、タイヤ交換のための所要時間より短い傾向にある。よって、オイル交換の典型的な所要時間を基準滞在時間として用いることで、滞在時間が基準滞在時間以内の場合にオイル補給が、基準滞在時間を超える場合にタイヤ交換等が実施されたと判断できる。よって、制御部13は、サービス施設に基準時間を超えずに滞在することを補給示唆事象として検出する。このように、変形例1では、制御部13が、車両1のサスペンションの伸展を排出示唆事象とし、サービス施設に基準滞在時間を超えずに滞在することを補給示唆事象として検出することで、オイル交換実施を判定する。
【0028】
図3の動作手順は、サービス施設で車両1のメンテナンスが終了し、イグニションがオンされて、制御装置10に電力が供給されて制御装置10が起動したときに、制御部13により実行される。車両1がサービス施設においてメンテナンスを受ける際、一旦イグニションがオフされる。制御部13は、イグニションがオフされる信号を通信部11を介して受けると、そのときの現在時刻及び日時を予備電源を用いて記憶部12に格納してから、動作を終了する。そして、メンテナンス終了後にイグニションがオンされて制御装置10が起動すると、制御部13はステップS300を実行する。
【0029】
ステップS300において、制御部13は、現在位置、現在時刻及び日付、及びサスペンションの伸展量を検出する。制御部13は、通信部11からGNSS信号を受け取り、記憶部12から地図情報を読み出し、GNSS信号と地図情報を用いて現在位置を導出する。また、制御部13は、通信部11を介しサスペンションセンサから検知結果を受け取り、サスペンションの伸展量を検出する。
【0030】
ステップS302において、制御部13は、現在位置がサービス施設にあるかを判定する。地図情報にはオイル交換が可能なサービス施設の情報が予め含まれる。制御部13は、現在位置がサービス施設の位置に一致するかを判定する。制御部13は、サービス施設に位置する場合(ステップS302のYes)、ステップS304に進む。サービス施設に位置しない場合(ステップS302のNo)、ステップS304、S305を実行せずにステップS306に進む。
【0031】
ステップS304において、制御部13は、滞在時間が基準時間内であるかを判定する。制御部13は、記憶部12に格納したイグニションオフ時点の時刻と現在時刻との差分を計算して滞在時間を求める。基準滞在時間は、オイル交換の典型的な所要時間であって(例えば、10分~20分)任意に設定されて予め記憶部12に格納される。制御部13は、基準滞在時間を記憶部12から読み出して、計算した滞在時間と比較する。制御部13は、滞在時間が基準滞在時間以内の場合(ステップS304のYes)ステップS305に進む。ステップS305において、制御部13は、オイルが補給されたことを判定し、ステップS306に進む。一方、滞在時間が基準滞在時間を超えている場合(ステップS304のNo)、制御部13は、ステップS305を実行せずに、ステップS306に進む。
【0032】
ステップS306において、制御部13は、サスペンション伸展量が基準伸展量以上であるかを判定する。基準伸展量は、車両1の車輪が着地しているときの標準的な伸展量に基づいて、車両の車体が一旦挙上された後に着地したことを示しうる伸展量であって、任意に設定されて記憶部12に予め格納される。制御部13は、基準伸展量を記憶部12から読み出して、検出したサスペンション伸展量と比較する。制御部13は、サスペンションの伸展量が基準伸展量以上の場合(ステップS304のYes)、ステップS307に進む。ステップS307において、制御部13は、オイルが排出されたことを判定し、ステップS308に進む。一方、サスペンションの伸展量が基準伸展量未満の場合(ステップS304のNo)、制御部13は、ステップS307を実行せずに、ステップS308に進む。
【0033】
ステップS308において、制御部13は、排出示唆事象として基準進展量を上回る差しペンションの進展を検出した場合、又は、補給示唆事象としてサービス施設に基準滞在時間を超えずに滞在することを検出した場合、オイル交換実施と判定する。あるいは、制御部13は、排出示唆事象と補給示唆事象をともに検出し、各事象が単独で検出された場合より高い蓋然性でオイル交換が示唆される場合には、オイル交換実施と判定するとともに、オイル交換実施の確からしさが重み付けされた情報を生成する。次いで、制御部13は、ステップS310において、オイル交換の履歴、又はこれに加えて確からしさを示す情報を記憶部12に格納する。
【0034】
ステップS312において、制御部13は、制御装置10の電力を切断し、
図3の手順を終了する。
【0035】
図3の動作手順によれば、制御装置10は、車両1のサスペンションの伸展を排出示唆事象とし、サービス施設に基準滞在時間を超えずに滞在することを補給示唆事象として検出することで、オイルの排出と補給とを直接的に検知するための追加的構成を要せずに、オイル交換の履歴管理を支援することが可能となる。
【0036】
<変形例2>
変形例2は、変形例1における排出示唆事象としてのサスペンションの伸展に代わり、現在日付が基準時期に属すことを判定する例である。基準時期は、例えば、スノータイヤ装着の必要が生ずる蓋然性が低い時期(例えば、日本の4月~10月)であって、任意に設定される。現在日付が基準時期に属すれば、サービス施設での滞在はオイルの補給を含むオイル交換を目的とする蓋然性が高く、現在日付が基準時期に属さなければ、サービス施設での滞在は通常のタイヤからスノータイヤへの交換を目的とする蓋然性が高い。よって、変形例2では、制御部13は、排出示唆事象として現在日付が基準時期に属すことを判定する。
【0037】
図4は、変形例2における制御装置10の動作手順例を説明するためのフローチャート図である。
図4の手順は、車両1の販売事業者又はサードパーティのサービス施設において車両1のオイル交換を実施する場合を想定した手順であって、
図3の手順と同じステップには同じ符号が付してある。
図4では、
図3のステップS306の代わりに、ステップS306aが、ステップS305の後に実行される。また、
図4ではステップS309が追加される。
【0038】
ステップS306aにおいて、制御部13は、現在日付が基準時期に属するかを判定する。基準時期は任意に設定されて記憶部12に予め格納される。制御部13は、基準時期を記憶部12から読み出す。制御部13は、現在日付が基準時期に属する場合(ステップS306aのYes)ステップS307に進む。ステップS307以降は
図3の手順と同じである。一方、現在日付が基準時期に属さない場合(ステップS306aのNo)、つまり、サービスステーションでの滞在が通常のタイヤからスノータイヤへの交換を目的とする蓋然性が高い場合、制御部13は、ステップS309においてタイヤ交換の実行を判定し、ステップS308に進む。
【0039】
図4の動作手順によれば、制御装置10は、現在日付が基準時期に属しておりタイヤ交換よりオイル補給のためにサービス施設に滞在することを、排出示唆事象とし、サービス施設に基準滞在時間を超えずに滞在することを補給示唆事象として検出することで、オイルの排出と補給とを直接的に検知するための追加的構成を要せずに、オイル交換の履歴管理を支援することが可能となる。
【0040】
<変形例3>
車両1の使用者がオイル交換後の走行距離を把握することを望む場合、車両1のオイル交換を実施する際に車両1のトリップメータをクリアしてリセットすることがある。ある程度以上の確からしさでトリップメータのクリアとオイル交換とが対応付けられて行われる場合、トリップメータがクリアされたときにオイル交換実施を判定することが可能である。変形例2の制御装置10では、記憶部12が、車両1のトリップメータがクリアされたときのトリップメータクリアの履歴をオイル交換の履歴とともに格納する。そして、制御部13は、トリップメータがクリアされたことを検出したときに、基準頻度以上で過去におけるトリップメータクリアの履歴とオイル交換の履歴が対応付けられているときには、排出示唆事象、補給示唆事象を検出していなくても、オイル交換実施を判定する。
【0041】
図5は、変形例3における制御装置10の動作手順例を説明するためのフローチャート図である。制御部13は、例えば、任意の周期(数秒~数時間ごと)で実行される。
【0042】
ステップS500において、制御部13は、トリップメータ値を取得して記憶部12に格納する。制御部13は、例えば、通信部11を介してトリップメータ又は走行制御用のECUから、その時点でのトリップメータ値を受け取る。そして、制御部13は、受け取ったトリップメータ値を記憶部12に格納する。
【0043】
ステップS502において、制御部13は、トリップメータがクリアされたかを判定する。制御部13は、過去の最近のトリップメータ値を記憶部12から読み出して、ステップS500で取得したトリップメータ値と比較する。制御部13は、取得したトリップメータ値がゼロ又は最近のトリップメータ値より減少している場合にはトリップメータがクリアされたと判定する。トリップメータがクリアされた場合(ステップS502のYes)、制御部13はステップS504に進んで、トリップメータクリアの履歴を記憶部12に格納する。トリップメータクリアの履歴は、例えば、トリップメータクリアを判定した日時を含む。一方、トリップメータがリセットされていない場合(ステップS502のNo)、制御部13はステップS512に進む。ステップS512において、制御部13は、制御装置10の電力を切断し、
図5の手順を終了する。
【0044】
ステップS506において、制御部13は、基準頻度以上の頻度でトリップメータクリアとオイル交換が同時実施されたかを判定する。ここでは、トリップメータクリアとオイル交換が同一日付に実施される場合を、同時実施に含む。また、頻度は、例えば、オイル交換の実施回数に対する同時実施の回数の割合である。制御部13は、過去のトリップメータクリアの履歴と、オイル交換の履歴とを記憶部12から読み出し、トリップメータクリアとオイル交換とが同一日付になされた同時実施の回数をカウントする。そして、制御部13は、同時実施の頻度を求め、同時実施の頻度と基準頻度を比較する。基準頻度は、トリップメータクリアが行われれば十分な確からしさでオイル交換が実施されるとみなされる程度の頻度(例えば90%又はそれ以上)である。制御部13は、同時実施の頻度が基準頻度以上の場合(ステップS506のYes)、ステップS508に進んでオイル交換実施を判定する。そして、制御部13は、ステップS510において、オイル交換の履歴を記憶部12に格納する。一方、同時実施の頻度が基準頻度未満の場合(ステップS506のNo)、制御部13はステップS512に進んで制御装置10の電力を切断し、
図5の手順を終了する。
【0045】
図5の動作手順によれば、制御装置10は、排出示唆事象、補給示唆事象を検出していなくても、オイル交換実施を判定することができる。
【0046】
<変形例4>
図2で示した手順では、制御装置10は、排出示唆事象としてオイル残量の減少を、補給示唆事象としてオイル残量が減少の後に増加に転じたことを検出するので、オイル残量の増減といった比較的直接的な事象の検出に基づきオイル交換を判定する。一方、
図3~5で示した変形例1~3では、制御装置10は、オイル残量の増減に対し比較的非間接的な事象に基づきオイル交換を判定する。よって、
図2の手順と
図3~5の手順を比較すると、オイル交換判定の確からしさに差がある。変形例4では、
図3~
図5の手順を組み合わせつつ、オイル交換の判定の確からしさを向上させる。
【0047】
図6の手順は、
図3~5の手順を組み合わせた手順である。ステップS600、S602、S604のサブルーチンがそれぞれ
図3~5の手順に対応する。ただし、ここでは、
図3、
図4のステップS308、
図5のステップS508において、それぞれ、オイル交換を判定する代わりに、制御部13は、オイル交換の確からしさを示す評価点を加点する。評価点は、任意の離散的な数値である。また、
図3、
図4のステップS308、
図5のステップS508において、評価点の大きさが異なってもよい。さらに、ステップS508において、制御部13は、トリップメータクリアとオイル交換の同時実施の頻度に応じた大きさの評価点を加点してもよい。
【0048】
制御部13は、ステップS600、S602、及びS604を順次実行する。更に、ステップS606において、制御部13は、エンジンフリクションの大きさが基準フリクション値以内かを判定する。車両1がハイブリッド車両の場合、制御部13は、通信部11を介してエンジン制御用のECUから、トルクの大きさを示す情報を取得し、トルクの大きさからエンジンフリクションを算出する。エンジンフリクションは、エンジンオイルが新しければ小さい。基準値は、オイル交換が実施され新しいエンジンオイルがエンジンに充填されたときの任意のフリクション値に設定され、予め記憶部12に格納されている。制御部13は、記憶部12から基準フリクション値を読み出して検出したエンジンフリクションと比較する。エンジンフリクションが基準フリクション値以内の場合(ステップS506のYes)、ステップS608に進んで、オイル交換の確からしさを示す評価点を加点する。一方、エンジンフリクションが基準フリクション値を超える場合(ステップS506のNo)、制御部13はステップS608を省略する。
【0049】
ステップS610において、制御部13は、評価点に基づいてオイル交換実施を判定する。例えば、制御部13は、加点された評価点の合計が予め設定される基準評価点を上回る場合にオイル交換実施を判定し、加点された評価点の合計が基準評価点以下の場合にオイル交換が実施されなかったと判定する。あるいは、制御部13は、評価点に応じた確からしさを示す情報を付してオイル交換実施を判定してもよい。例えば、確からしさの順にA、B、Cとランク分けし、ランク分けによる留保付きでオイル交換実施を判定することができる。そして、ステップS612において、制御部13は、オイル交換の履歴を記憶部12に格納する。
【0050】
ステップS614において、制御部13は、制御装置10の電力を切断し、
図6の手順を終了する。
【0051】
図6において、ステップS600、S602、S604、及びS606は例示であり、これらの1つ以上を任意の順序で実行することが可能である。また、
図2~
図5で示した手順は、上述の説明以外にも、適宜組み合わせて実行したり、それぞれにおけるステップの順序を入れ替えて実行したりすることが可能である。
【0052】
図6で示した手順によれば、比較的非間接的な事象に基づきオイル交換を判定する場合であっても、オイル交換の判定の確からしさを向上させることが可能となる。
【0053】
上述の実施形態において、記憶部12に格納されるオイル交換の履歴、又はこれに加えてオイル交換実施の確からしさを示す情報は、任意のユーザインタフェースを用いて適宜読み出すことが可能である。例えば、車両1の車内ネットワークに接続可能な端末装置をユーザが操作することで、車内ネットワークを介して制御装置10の記憶部12からオイル交換の履歴を読み出すことが可能である。また、制御装置10がナビゲーション装置その他の、ユーザインタフェースを備えた情報処理装置で構成される場合は、情報処理装置のユーザインタフェースをユーザが操作することで、に付随する記憶部12からオイル交換の履歴等を読み出すことが可能である。あるいは、記憶部12の一部をクラウドサーバが有する構成であってもよい。その場合、制御装置10の制御部13は、オイル交換の履歴等を通信部11を介してクラウドサーバへ送り、クラウドサーバにて履歴が集約的に格納される。そして、クラウドサーバにネットワーク経由で接続されるパーソナルコンピュータ等の情報処理装置をユーザが操作することで、クラウドサーバからオイル交換の履歴等を読み出してもよい。
【0054】
制御装置10の動作を規定する処理・制御プログラムは、任意のサーバ装置の記憶部に記憶されていて、制御装置10にダウンロードされてもよいし、制御装置10に読取り可能な可搬型で非一過性の記録・記憶媒体に格納され、制御装置10が媒体から読み取ってもよい。
【0055】
上述において、実施形態を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段、ステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 車両
10 制御装置
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
14 電源回路
16 センサ