(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/08 20060101AFI20231003BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20231003BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C08G18/08 038
C08G18/10
C09K3/10 Z
(21)【出願番号】P 2020554022
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2019042726
(87)【国際公開番号】W WO2020090958
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2018205362
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000167646
【氏名又は名称】広栄化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000103541
【氏名又は名称】オート化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【氏名又は名称】臼井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】新田 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】宮城 元嘉
(72)【発明者】
【氏名】菊池 正和
【審査官】山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-212239(JP,A)
【文献】特開平09-249727(JP,A)
【文献】特開2011-236312(JP,A)
【文献】Nucleic Acids Symposium Series No.52,2008年,431-432
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00 - 18/87
C08G 71/00 - 71/04
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C09J 1/00 - 5/10
C09J 9/00 - 201/10
C09D 1/00 - 10/00
C09D 101/00 - 201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基含有樹脂とシリルアミン化合物を含有
し、
前記シリルアミン化合物がN,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,9-ジオキサ-1,12-ドデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,7-ジオキサ-1,10-デカンジアミンおよびN,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミンから選択される1種以上のシリルアミン化合物であり、
前記シリルアミン化合物の配合量は前記イソシアネート基含有樹脂のイソシアネート基1モルに対し、前記シリルアミン化合物が加水分解して生成(再生)する第1級アミノ基および/または第2級アミノ基の合計量で0.5~1.0モルであることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
前記イソシアネート基含有樹脂が有機イソシアネート化合物とポリオキシアルキレン系ポリオールを含む活性水素含有化合物を反応して得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーであり、
前記ポリオキシアルキレン系ポリオールの数平均分子量が1,000~10,000、分散度(Mw/Mn)が1.6以下であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記有機イソシアネート化合物が芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートから選択される1種以上の有機ポリイソシアネートを含むことを特徴とする請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
さらに、酸性化合物を含有することを特徴とする請求項1~
3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記酸性化合物がリン酸エステル化合物、有機カルボン酸化合物、有機無水カルボン酸化合物、有機スルホン酸イソシアネート化合物および有機スルホン酸化合物から選択される1種以上の化合物であることを特徴とする請求項
4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記酸性化合物の配合量が前記イソシアネート基含有樹脂および
前記シリルアミン化合物の合計量の100質量部に対して0.05~5質量
部であることを特徴とする請求項
4または
5のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項7】
さらに、硬化促進触媒、可塑剤、耐候安定剤、充填剤、揺変性付与剤、接着性向上剤、貯蔵安定性向上剤(脱水剤)、着色剤および有機溶剤から選択される1種以上の添加剤を含有することを特徴とする請求項1~
6のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記硬化性組成物がシーリング材組成物、防水材組成物、コーティング材組成物または接着剤組成物であることを特徴とする請求項1~
7のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性、硬化性、硬化時の耐発泡性に優れ、硬化後のゴム物性が低モジュラスで高伸びとなる硬化性組成物に関する。
【0002】
イソシアネート基含有樹脂を含有する硬化性組成物は、作業性や接着性等に優れることから、建築用、土木用のシーリング材、防水材、接着剤、コーティング材として広く使用されている。イソシアネート基含有樹脂は、イソシアネート基濃度が高い場合や硬化を速めた場合に湿気等の水と反応して発泡を生じることがある。硬化時の発泡により、硬化物表面に膨れが生じ外観が悪化することや硬化物内部の気泡によりゴム物性が低下することがあるため、イソシアネート基含有樹脂にオキサゾリジン化合物等の潜在性硬化剤を配合した硬化性組成物が提案されている(例えば、特許文献1~4)。これらの文献に記載された硬化性組成物は、硬化性や硬化時の耐発泡性に優れた組成物となる。さらに、イソシアネート基含有樹脂を含有する硬化性組成物をシーリング材組成物として使用する場合、硬化後のゴム物性が低モジュラスで高伸びの性能となる要求も高く、これらの要求性能も満たす組成物の設計が必要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-63551号公報
【文献】特開2009-67917号公報
【文献】特開2009-179777号公報
【文献】特開2011-68806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、保存安定性、硬化性、硬化時の耐発泡性に優れ、硬化後のゴム物性が低モジュラスで高伸びとなる硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上述の課題を解決すべく鋭意検討した結果、イソシアネート基含有樹脂とシリルアミン化合物を含有する硬化性組成物が、保存安定性、硬化性、硬化時の耐発泡性に優れ、かつ、硬化後のゴム物性が低モジュラスで高伸びとなることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記の[1]~[12]に示すものである。
[1]イソシアネート基含有樹脂とシリルアミン化合物を含有することを特徴とする硬化性組成物。
[2]前記イソシアネート基含有樹脂が有機イソシアネート化合物とポリオキシアルキレン系ポリオールを含む活性水素含有化合物を反応して得られるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーであり、
前記ポリオキシアルキレン系ポリオールの数平均分子量が1,000~10,000、分散度(Mw/Mn)が1.6以下であることを特徴とする[1]に記載の硬化性組成物。
[3]前記有機イソシアネート化合物が芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートから選択される1種以上の有機ポリイソシアネートを含むことを特徴とする[2]に記載の硬化性組成物。
[4]前記シリルアミン化合物が下記式(1)で表される官能基を有する化合物であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の硬化性組成物。
-NR
4-SiR
1R
2R
3 (1)
(式中、R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基またはビニル基を示す。R
4は水素原子、炭素数1~15のアルキル基もしくはハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基もしくはハロゲン置換アリール基、炭素数7~20のアラルキル基、または-SiR
5R
6R
7基を示す。R
5、R
6、R
7はそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基またはビニル基を示す。)
[5]前記シリルアミン化合物がエーテル結合を有するシリルアミン化合物であることを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の硬化性組成物。
[6]前記シリルアミン化合物が下記式(2)で表されるシリルアミン化合物であることを特徴とする[1]~[5]のいずれかに記載の硬化性組成物。
【化1】
(式(2)中、R
1~R
3、R
5~R
13はそれぞれ独立して炭素数1~6のアルキル基、R
14は炭素数2~12のアルキレン基または炭素数6~12のアリーレン基、R
15~R
22はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~6のアルキル基である。y及びzはそれぞれ独立して1~11の整数、nは1~18の整数である。)
[7]前記シリルアミン化合物がN,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,9-ジオキサ-1,12-ドデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,7-ジオキサ-1,10-デカンジアミンおよびN,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミンから選択される1種以上のシリルアミン化合物であることを特徴とする[1]~[6]のいずれかに記載の硬化性組成物。
[8]さらに、酸性化合物を含有することを特徴とする請求項[1]~[7]のいずれかに記載の硬化性組成物。
[9]前記酸性化合物がリン酸エステル化合物、有機カルボン酸化合物、有機無水カルボン酸化合物、有機スルホン酸イソシアネート化合物および有機スルホン酸化合物から選択される1種以上の化合物であることを特徴とする[8]に記載の硬化性組成物。
[10]前記酸性化合物の配合量が前記イソシアネート基含有樹脂およびシリルアミン化合物の合計量の100質量部に対して0.05~5質量部であることを特徴とする[8]または[9]のいずれかに記載の硬化性組成物。
[11]さらに、硬化促進触媒、可塑剤、耐候安定剤、充填剤、揺変性付与剤、接着性向上剤、貯蔵安定性向上剤(脱水剤)、着色剤および有機溶剤から選択される1種以上の添加剤を含有することを特徴とする[1]~[10]のいずれかに記載の硬化性組成物。
[12]前記硬化性組成物がシーリング材組成物、防水材組成物、コーティング材組成物または接着剤組成物であることを特徴とする[1]~[11]のいずれかに記載の硬化性組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の硬化性組成物は、保存安定性、硬化性、硬化時の耐発泡性に優れ、硬化後のゴム物性が低モジュラスで高伸びの組成物となる。
【0007】
本発明の硬化性組成物は、イソシアネート基含有樹脂とシリルアミン化合物を含有するものである。以下、本発明を実施形態に即して詳細に説明する。
【0008】
イソシアネート基含有樹脂は、その樹脂中に1個以上のイソシアネート基を有する樹脂であり、イソシアネート基が活性水素(基)と反応し、ウレタン結合、ウレア結合等を形成して架橋硬化する。また、イソシアネート基含有樹脂は、本発明の硬化性組成物において硬化成分として働くとともに、硬化後の組成物に被着面との良好な接着性を付与する。イソシアネート基含有樹脂としては、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(以下、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーと、後述する光反応性不飽和結合を導入したイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを含めて単に「ウレタンプレポリマー」という場合もある。)を好適に挙げることができる。
【0009】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、有機イソシアネート化合物と活性水素含有化合物とを、イソシアネート基/活性水素のモル比が1.2~10、好ましくは1.2~5となる範囲で一括あるいは逐次に反応させて、ウレタンプレポリマー中にイソシアネート基が残存するようにして製造することができる。
【0010】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基含有量は、0.3~15質量%が好ましく、特に0.5~5質量%が好ましい。
【0011】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの数平均分子量は、1,500以上が好ましく、1,500~20,000がより好ましく、1,500~15,000がさらに好ましく、1,500~10,000が特に好ましい。本発明における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数値である。
【0012】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの製造方法としては、従来公知の方法で行うことができる。具体的には、ガラス製やステンレス製等の反応容器に有機イソシアネート化合物と活性水素含有化合物を仕込み、必要に応じて反応触媒や有機溶剤を使用し、50~120℃で攪拌しながら反応させる方法が挙げられる。この際、イソシアネート基が湿気等の水と反応するとウレタンプレポリマーが増粘するため、事前に容器内を窒素ガスで置換することや窒素ガス気流下で反応を行うことが好ましい。
【0013】
有機イソシアネート化合物としては、有機ポリイソシアネートを挙げることができる。有機ポリイソシアネートは、その化合物中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。具体的には、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート等のトルエンポリイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′-ジフェニルメタンジイソシアネート等のジフェニルメタンポリイソシアネート、1,2-フェニレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4,6-トリメチルフェニル-1,3-ジイソシアネート、2,4,6-トリイソプロピルフェニル-1,3-ジイソシアネート等のフェニレンポリイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート等のナフタレンポリイソシアネート、クロロフェニレン-2,4-ジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3′-ジメチルジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、3,3′-ジメトキシジフェニル-4,4′-ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。また、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ポリイソシアネート、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。さらに、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、クルードトルエンジイソシアネート等のポリメリックイソシアネートが挙げられる。またさらに、これらの有機ポリイソシアネートを変性して得られる、ウレトジオン結合、イソシアヌレート結合、アロファネート結合、ビュレット結合、ウレトンイミン結合、カルボジイミド結合、ウレタン結合またはウレア結合を1個以上有する変性ポリイソシアネートが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
これらのうち、硬化性組成物の耐候性に優れることから、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、およびこれらの有機ポリイソシアネートを変性して得られる変性ポリイソシアネートが好ましい。
【0015】
また、有機ポリイソシアネートとともに、有機モノイソシアネートを使用することができる。すなわち、有機ポリイソシアネートと有機モノイソシアネートの混合物を、上述の有機イソシアネート化合物として使用することができる。有機モノイソシアネートは、その化合物中に1個のイソシアネート基を有する化合物である。具体的には、n-ブチルモノイソシアネート、n-ヘキシルモノイソシアネート、n-ヘキサデシルモノイソシアネート、n-オクタデシルモノイソシアネート等の脂肪族モノイソシアネート、p-イソプロピルフェニルモノイソシアネート、p-ベンジルオキシフェニルモノイソシアネート、イソシアン酸フェニル、イソシアン酸p-トリル、イソシアン酸m-トリル、イソシアン酸o-トリル、イソシアン酸4-クロロフェニル、イソシアン酸3,5-ジメチルフェニル、イソシアン酸2,6-ジメチルフェニルが挙げられる。
【0016】
活性水素含有化合物は、その化合物中に1個以上の活性水素(基)を有する化合物である。具体的には、高分子ポリオール、高分子ポリアミン、低分子ポリオール、低分子ポリアミン、高分子や低分子のモノオールが挙げられる。これらの活性水素含有化合物は、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
高分子ポリオール、高分子ポリアミンの数平均分子量は、1,000~30,000が好ましく、さらに1,000~20,000が好ましく、特に1,000~10,000が好ましい。また、高分子モノオールの数平均分子量は5,000以下が好ましくさらに4,000以下が好ましく、特に1,000~4,000が好ましい。
【0018】
低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子モノオールの分子量は、1,000未満が好ましく、さらに50~900が好ましい。これらの分子量は、その構造から計算によって算出することができる。また、これらが重合物等で分子量分布を有している場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量として分子量を算出することができる。
【0019】
高分子ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオキシアルキレン系ポリオール、ポリ(メタ)アクリルポリオール、炭化水素系ポリオール、動植物系ポリオール、これらのコポリオールが挙げられる。本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味する。
【0020】
ポリエステルポリオールとしては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸や、これらの無水物あるいはメチルエステルやエチルエステル等のアルキルエステルを含むカルボン酸類の1種以上と、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類の1種以上との反応によって得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0021】
ポリカーボネートポリオールとしては、上述のポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子ポリオール類とホスゲンとの脱塩酸反応、あるいは上述の低分子ポリオール類とジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネートとのエステル交換反応で得られるものが挙げられる。
【0022】
ポリオキシアルキレン系ポリオールとしては、上述のポリエステルポリオールの合成に用いられるのと同様の低分子ポリオール類、低分子ポリアミン類、低分子アミノアルコール類;ソルビトール、マンニトール、ショ糖(スクロース)、グルコース等の糖類系低分子多価アルコール類;ビスフェノールA、ビスフェノールF等の低分子多価フェノール類の1種以上を開始剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物の1種以上を開環付加重合あるいは共重合させた、ポリオキシエチレン系ポリオール、ポリオキシプロピレン系ポリオール、ポリオキシブチレン系ポリオール、ポリオキシテトラメチレン系ポリオール、ポリ-(オキシエチレン)-(オキシプロピレン)-ランダムあるいはブロック共重合系ポリオール、さらに、上述のポリエステルポリオールやポリカーボネートポリオールを開始剤としたポリエステルエーテルポリオール、ポリカーボネートエーテルポリオールが挙げられる。また、これらの各種ポリオールと有機イソシアネート化合物とを、イソシアネート基に対し水酸基過剰で反応させて、分子末端を水酸基としたポリオールも挙げられる。ポリオキシアルキレン系ポリオールの水酸基の数は、1分子中に平均して2個以上が好ましく、さらに2~4個が好ましく、特に2~3個が好ましい。
【0023】
ポリオキシアルキレン系ポリオールの分散度[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]は、硬化性組成物の硬化物のゴム物性が低モジュラスで高伸びとなることから、1.6以下が好ましく、さらに1.0~1.5が好ましい。本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数値である。
【0024】
ポリオキシアルキレン系ポリオールを合成する際の触媒は、ナトリウム系触媒、カリウム系触媒等のアルカリ金属化合物触媒、カチオン重合触媒、亜鉛ヘキサシアノコバルテートのグライム錯体やジグライム錯体等の複合金属シアン化錯体触媒、ホスファゼン化合物触媒が挙げられる。これらのうち、アルカリ金属化合物触媒、複合金属シアン化錯体触媒が好ましい。また、複合シアン化錯体触媒を用いて合成したポリオキシアルキレン系ポリオールは、総不飽和度が低くポリオールの粘度が低いため好ましい。
【0025】
また、ウレタンプレポリマーの変性用として、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等の低分子モノアルコール類を開始剤として、上述のプロピレンオキシド等の環状エーテル化合物を開環付加重合させたポリオキシプロピレン系モノオール等のポリオキシアルキレン系モノオールを使用することもできる。
【0026】
上述のポリオキシアルキレン系ポリオールあるいはポリオキシアルキレン系モノオールの「系」とは、分子1モル中の水酸基を除いた部分の50質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上がポリオキシアルキレンで構成されていれば、残りの部分がエステル、ウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン等で変性されていてもよいことを意味する。本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味する。
【0027】
ポリ(メタ)アクリルポリオールは、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体とこれ以外のエチレン性不飽和化合物とを、溶剤の存在下、または不存在下に、バッチ式または連続重合等のラジカル重合の方法により共重合させて得られるものである。溶剤の不存在下に、150~350℃、さらに210~250℃の高温で連続塊状共重合反応させて得られるものが、反応生成物の分子量分布が狭く低粘度になるため好ましい。この共重合反応の際、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を、ポリ(メタ)アクリルポリオール1分子当たり平均水酸基官能数が1.2~4個含有するように使用するのが好ましい。ポリ(メタ)アクリルポリオールのガラス転移点(Tg)は、50℃以下が好ましく、さらに0℃以下が好ましく、よりさらに-70~-20℃が好ましく、特に-70~-30℃が好ましい。
【0028】
水酸基含有(メタ)アクリル系単量体は、分子内に1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体である。具体的には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の多価アルコールのモノ(メタ)アクリレート類または水酸基残存多価(メタ)アクリレート類が挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用できる。これらのうち、(メタ)アクリルポリオールの粘度が低く、イソシアネート基との反応性が良好な点で、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類が好ましく、さらにヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0029】
水酸基含有(メタ)アクリル系単量体以外のエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリル系単量体とこれ以外のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。(メタ)アクリル系単量体以外のエチレン性化合物としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、クロロプレン、スチレン、クロルスチレン、2-メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のビニル化合物が挙げられる。(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリシジルトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用できる。これらのうち、(メタ)アクリルポリオールの粘度が低い点で、(メタ)アクリル酸エステル系化合物のモノマーが好ましく、さらに(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが好ましい。本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸および/またはメタクリル酸」を意味する。
【0030】
炭化水素系ポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等のポリオレフィンポリオール;水素添加ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリイソプレンポリオール等のポリアルキレンポリオール;塩素化ポリプロピレンポリオール、塩素化ポリエチレンポリオール等のハロゲン化ポリアルキレンポリオールが挙げられる。
【0031】
動植物系ポリオールとしては、ヒマシ油系ポリオール、絹フィブロインが挙げられる。
【0032】
上述の高分子ポリオールは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、硬化性組成物の硬化後のゴム物性が良好な点で、ポリオキシアルキレン系ポリオール、ポリ(メタ)アクリルポリオールが好ましい。
【0033】
イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、耐候性を付与する目的でウレタンプレポリマー中に光反応性不飽和結合を導入することもできる。光反応性不飽和結合を導入したウレタンプレポリマーは、本発明の硬化性組成物において硬化成分として働くとともに、硬化後の組成物に被着面との良好な接着性、優れた耐候性を付与する。上述の光反応性不飽和結合とは、光に暴露されることにより比較的短時間に重合等の化学変化を起こす不飽和結合である。具体的には、ビニル基、ビニレン基、(メタ)アクリロイル基に由来する不飽和結合が挙げられる。本発明において、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基および/またはメタクリロイル基」を意味する。
【0034】
光反応性不飽和結合を導入したイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーのイソシアネート基は、活性水素含有化合物と反応して架橋硬化する。また、光反応性不飽和結合を導入したイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの光反応性不飽和結合は、光に暴露されると重合反応し硬化性組成物の表面に耐候性に優れた硬化皮膜を形成する。この硬化皮膜が硬化性組成物に優れた耐候性を付与するものと考えられる。光反応性不飽和結合は、耐候性付与効果が高い点で(メタ)アクリロイル基に由来する不飽和結合が好ましい。
【0035】
光反応性不飽和結合をイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに導入する方法としては、下記の方法が挙げられる。
(イ)有機イソシアネート化合物と、高分子の活性水素含有化合物(数平均分子量1,000以上)と、分子内に活性水素と光反応性不飽和結合とを有する低分子の活性水素含有化合物(数平均分子量1,000未満)とを、活性水素の合計量に対してイソシアネート基過剰の条件で反応させて得る方法;
(ロ)有機イソシアネート化合物と、分子内に活性水素と光反応性不飽和結合とを有する高分子(数平均分子量1,000以上)の活性水素含有化合物(例えば、ポリオキシアルキレントリオールのモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸のアルキレンオキシド付加物、ポリブタジエンポリオール)とを活性水素の合計量に対してイソシアネート基過剰の条件で反応させて得る方法;および
(ハ)有機イソシアネート化合物と、分子内に光反応性不飽和結合とイソシアネート基とを有する低分子(数平均分子量1,000未満)の活性水素含有化合物(例えば、(メタ)アクリロイルイソシアネート)と、高分子(数平均分子量1,000以上)の活性水素含有化合物とを活性水素の合計量に対してイソシアネート基過剰の条件で反応させて得る方法;
これらの方法のうち、前記(イ)の方法が原料の入手しやすさと反応のしやすさの点で好ましい。
【0036】
光反応性不飽和結合をイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに導入する反応は、原料を一括で仕込み反応させてもよいし、原料を逐次に仕込み反応させてもよい。有機イソシアネート化合物のイソシアネート基と、活性水素含有化合物(活性水素と光反応性不飽和結合とを有する化合物を含む)の活性水素とのモル比(イソシアネート基/活性水素)は、1.2~10が好ましく、さらに1.2~5が好ましい。光反応性不飽和結合を導入したイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基含有量は0.3~15質量%が好ましく、さらに0.5~5質量%が好ましい。
【0037】
光反応性不飽和結合を導入したイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー中の光反応性不飽和結合の濃度は、0.01ミリモル/g以上が好ましく、さらに0.03~1ミリモル/gが好ましく、特に0.05~0.5ミリモル/gが好ましい。
【0038】
上述の活性水素と光反応性不飽和結合とを有する(低分子および高分子の)活性水素含有化合物は、その化合物中に水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の活性水素(基)と、ビニル基、ビニレン基、(メタ)アクリロイル基等の光反応性不飽和結合の両方を有する化合物である。反応のしやすさや耐候性付与効果の高い点で、その化合物中に水酸基と(メタ)アクリロイル基とを有するものが好ましい。また、活性水素(基)と光反応性不飽和結合とを有する化合物の分子量は、反応しやすい点で数平均分子量1,000未満のものが好ましい。
【0039】
水酸基と(メタ)アクリロイル基とを有する活性水素含有化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステルである、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシネオペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート類、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上アルキレンポリオールと(メタ)アクリル酸とのモノエステルあるいはジエステル、トリエステル等のポリエステルである、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のモノヒドロキポリ(メタ)アクリレート類、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート等のポリヒドロキモノ(メタ)アクリレート類、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等のポリヒドロキポリ(メタ)アクリレート類が挙げられる。また、これら以外に、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ビスフェノールAやビスフェノールFにエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加したポリオール等のモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート類、ポリヒドロキシモノ(メタ)アクリレート類、ポリヒドロキシポリ(メタ)アクリレート類や(メタ)アクリル酸やヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの活性水素にエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加した化合物で水酸基を有するもの、ヒドロキシエチルアクリレートのカプロラクトン変性物等で水酸基を有している化合物も挙げられる。これらは、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、ウレタンプレポリマーの粘度を低く抑えることができ、かつ耐候性付与効果を高めることができる点で、モノヒドロキシポリ(メタ)アクリレート類およびジヒドロキシポリ(メタ)アクリレート類が好ましい。
【0040】
シリルアミン化合物について説明する。シリルアミン化合物は、湿気等の水と反応して加水分解し、第1級アミノ基および/または第2級アミノ基を生成(再生)することで、イソシアネート基含有樹脂の潜在性硬化剤として機能するため、硬化性組成物の硬化を速めることができる。イソシアネート基含有樹脂のイソシアネート基が湿気等の水と反応すると尿素結合を形成して硬化するが、この際、炭酸ガスも発生し、硬化物の表面や内部に炭酸ガスによる気泡が生じて外観の悪化、硬化物の破断、接着性の低下等の不具合を生じることがある。一方、イソシアネート基含有樹脂とシリルアミン化合物を併用した硬化性組成物を水と反応させた場合は、まず水とシリルアミン化合物が優先的に反応し、シリルアミン化合物のシリルアミノ基が第1級アミノ基および/または第2級アミノ基を生成する。次に生成したアミノ基がイソシアネート基含有樹脂のイソシアネート基と優先的に反応するため、水とイソシアネート基の反応による炭酸ガスの発生を抑制し、硬化性組成物の硬化時の発泡を防止することができる。また、シリルアミン化合物は、湿気等の水と反応して加水分解する際にアルデヒド化合物を生成しないため、硬化性組成物の硬化時にアルデヒド化合物の臭気が発生しない。さらにシリルアミン化合物をイソシアネート基含有樹脂と併用すると、その硬化物のゴム物性が低モジュラスで高伸びとなる。
【0041】
シリルアミン化合物は、アミン化合物の窒素原子にシリル基が結合した化合物であり、下記式(1)で表される官能基を有するものである。
-NR4-SiR1R2R3 (1)
(式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基またはビニル基を示す。R4は水素原子、炭素数1~15のアルキル基もしくはハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基もしくはハロゲン置換アリール基、炭素数7~20のアラルキル基、または-SiR5R6R7基を示す。R5、R6、R7はそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基またはビニル基を示す。)
【0042】
シリルアミン化合物は、硬化性組成物の保存安定性、硬化性に優れることから、分子内にエーテル結合を有するシリルアミン化合物が好ましい。
【0043】
シリルアミン化合物としてより好ましくは、下記式(2)で表されるシリルアミン化合物である。
【0044】
【化2】
(式(2)中、R
1~R
3、R
5~R
13はそれぞれ独立して炭素数1~6のアルキル基、R
14は炭素数2~12のアルキレン基または炭素数6~12のアリーレン基、R
15~R
22はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~6のアルキル基である。y及びzはそれぞれ独立して1~11の整数、nは1~18の整数である。)
【0045】
式(2)中、R1~R3、R5~R13はそれぞれ独立して炭素数1~6のアルキル基であり、好ましくは炭素数1又は2のアルキル基、特に好ましくは炭素数1のアルキル基である。R14は炭素数2~12のアルキレン基又は炭素数6~12のアリーレン基であり、好ましくは炭素数2~12のアルキレン基、より好ましくは炭素数2~6のアルキレン基である。nは1~18の整数であり、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~4の整数、特に好ましくは1又は2である。さらに、R15~R22はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、好ましくは水素原子である。y及びzはそれぞれ独立して1~11の整数であり、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1又は2である。
【0046】
シリルアミン化合物としては、具体的には、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,9-ジオキサ-1,12-ドデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,7-ジオキサ-1,10-デカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,7,10,13-テトラオキサ-1,16-ヘキサデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,7,10,13,16-ペンタオキサ-1,19-ノナデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,6,9-トリオキサ-1,11-ウンデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,6,9,12-テトラオキサ-1,14-テトラデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,6,9,12,15-ペンタオキサ-1,17-ヘプタデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,6-ジオキサ-1,9-ノナンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,6,9-トリオキサ-1,12-ドデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,6,9,12-テトラオキサ-1,15-ペンタデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,6,9,12,15-ペンタオキサ-1,18-オクタデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,8-ジオキサ-1,10-デカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,8-ジオキサ-1,11-ウンデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-ポリオキシエチレンビスアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-ポリオキシプロピレンビスアミン等が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,9-ジオキサ-1,12-ドデカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,7-ジオキサ-1,10-デカンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミンが好ましい。
【0047】
シリルアミン化合物は種々の方法で製造できるが、その代表的な方法としては、下記式(3)で表される官能基を有するアミン化合物と下記式(4)で表されるシラン化合物を反応させる方法が挙げられる。
-NHR4 (3)
X-SiR1R2R3 (4)
(式中、R1、R2、R3、R4は式(1)または式(2)の記載と同じである。また、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキルスルホニルオキシ基、パーフルオロアルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、パーフルオロアリールスルホニルオキシ基、アラルキルスルホニルオキシ基、シリル硫酸基、ビスパーフルオロアルキルスルホニルイミド基からなる群より選択される基である。)
【0048】
アミン化合物としては、エーテル基を有しているものが好ましく、下記式(3a)で表されるアミン化合物がより好ましい。
【0049】
【化3】
(式(3a)中、R
14~R
22は式(2)の記載と同じである。)
【0050】
式(2)で表されるシリルアミン化合物を製造する場合には、式(3a)で表されるアミン化合物と下記式(4a)~(4d)で表されるシラン化合物を反応させる方法が挙げられる。
X-SiR1R2R3 (4a)
X-SiR5R6R7 (4b)
X-SiR8R9R10 (4c)
X-SiR11R12R13 (4d)
式(4a)~(4d)中、R1~R3、R5~R13は式(2)で示すR1~R3、R5~R13と同じである。また、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルキルスルホニルオキシ基、パーフルオロアルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、パーフルオロアリールスルホニルオキシ基、アラルキルスルホニルオキシ基、シリル硫酸基、ビスパーフルオロアルキルスルホニルイミド基からなる群より選択される基である。
【0051】
アミン化合物としては、具体的には、4,9-ジオキサ-1,12-ドデカンジアミン、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジアミン、4,7-ジオキサ-1,10-デカンジアミン、4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン、4,7,10,13-テトラオキサ-1,16-ヘキサデカンジアミン、4,7,10,13,16-ペンタオキサ-1,19-ノナデカンジアミン、3,6,9-トリオキサ-1,11-ウンデカンジアミン、3,6,9,12-テトラオキサ-1,14-テトラデカンジアミン、3,6,9,12,15-ペンタオキサ-1,17-ヘプタデカンジアミン、3,6-ジオキサ-1,9-ノナンジアミン、3,6,9-トリオキサ-1,12-ドデカンジアミン、3,6,9,12-テトラオキサ-1,15-ペンタデカンジアミン、3,6,9,12,15-ペンタオキサ-1,18-オクタデカンジアミン、3,8-ジオキサ-1,10-デカンジアミン、3,8-ジオキサ-1,11-ウンデカンジアミン、ポリオキシエチレンビスアミン、ポリオキシプロピレンビスアミンが挙げられる。これらのうち、4,9-ジオキサ-1,12-ドデカンジアミン、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジアミン、4,7-ジオキサ-1,10-デカンジアミン、4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミンが好ましい。
【0052】
シラン化合物としては、クロロトリメチルシラン、ブロモトリメチルシラン、ヨードトリメチルシラン、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル、硫酸ビス(トリメチルシリル)等のトリメチルシラン化合物、クロロトリエチルシラン、ブロモトリエチルシラン、ヨードトリエチルシラン、トリフルオロメタンスルホン酸トリエチルシリル、硫酸ビス(トリエチルシリル)等のトリエチルシラン化合物、tert-ブチルジメチルクロロシラン、tert-ブチルジメチルブロモシラン、tert-ブチルジメチルヨードシラン、トリフルオロメタンスルホン酸tert-ブチルジメチルシリル等のtert-ブチルジメチルシリル化合物等が挙げられ、トリメチルシラン化合物が好ましく、特にクロロトリメチルシランが好ましい。
【0053】
シラン化合物の使用量としては、適宜調節すればよく、例えば、アミン化合物中のアミノ基の活性水素1molに対して、一般に1~2mol、好ましくは1~1.5molである。
【0054】
通常、反応は副生する酸を捕捉する為、塩基存在下で実施され、その塩基としては、本反応に影響を与えない塩基であれば特に限定されない。用いられる塩基としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン等のアミジン化合物、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン等のグアニジン化合物、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン等のアニリン化合物、tert-ブチルイミノ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホラン, N-tert-ブチル-N,N,N’,N’,N’’,N’’-ヘキサメチルホスホルイミド酸トリアミド等のホスフィン化合物、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン等のアミン化合物が挙げられ、アミジン化合物が好ましく、特に1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンが好ましい。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
反応は通常、溶媒の存在下で実施され、その溶媒としては、本反応に影響を与えない溶媒であれば特に限定されない。用いられる溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、酢酸エチルなどのエステル溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒、アセトニトリル等のニトリル溶媒が挙げられ、ニトリル溶媒が好ましく、アセトニトリルが特に好ましい。
【0056】
溶媒の使用量としては、適宜調節すればよく、例えばアミン化合物1質量部に対して一般に1~100質量部、好ましくは3~6質量部である。
【0057】
シリルアミン化合物およびシラン化合物の加水分解を防ぐ為、反応は無水条件下で実施されるのが好ましく、この場合、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが出来る。
【0058】
反応圧力は、特に制限はなく、常圧で反応を実施してもよいし、加圧下で反応を行ってもよい。
【0059】
反応温度は、特に制限はなく、通常0~100℃であり、好ましくは0~50℃であり、より好ましくは5~30℃である。
【0060】
アミン化合物、シラン化合物、溶媒、塩基の混合順序は特に限定されず、例えば溶媒、アミン化合物、塩基の混合物にシラン化合物を滴下する方法が挙げられる。
【0061】
反応終了後、蒸留、濾過、抽出等、公知の精製及び単離操作を経て、目的とするシリルアミン化合物を取り出すことが出来る。
【0062】
シリルアミン化合物の配合量は、イソシアネート基含有樹脂のイソシアネート基1モルに対し、シリルアミン化合物が加水分解して生成(再生)する第1級アミノ基および/または第2級アミノ基の合計量で0.5~1.0モルが好ましい。なお、シリルアミン化合物のシリルアミノ基の窒素原子に珪素原子が2つ結合している場合は、加水分解により第1級アミノ基が生成(再生)するものとして、イソシアネート基含有樹脂のイソシアネート基と生成したアミノ基との反応比を計算することができる。
【0063】
本発明の硬化性組成物は、さらに酸性化合物を配合することができる。酸性化合物は、シリルアミン化合物の加水分解を促進させ、硬化性組成物の硬化を速める目的で使用する。酸性化合物としては、リン酸エステル化合物、有機カルボン酸化合物、有機無水カルボン酸化合物、有機スルホン酸イソシアネート化合物、有機スルホン酸化合物を挙げることができる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0064】
リン酸エステル化合物としては、正リン酸エステル化合物、亜リン酸エステル化合物が挙げられる。これらのうち、正リン酸エステル化合物が好ましい。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0065】
正リン酸エステル化合物としては、正リン酸のトリアルキルエステル化合物、正リン酸のジアルキルエステル化合物、正リン酸のモノアルキルエステル化合物が挙げられる。
【0066】
正リン酸のトリアルキルエステル化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ2,6-キシレニルホスフェートが挙げられる。
【0067】
正リン酸のモノアルキルエステル化合物およびジアルキルエステル化合物(酸性リン酸エステル化合物)としては、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルピロホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、アルキル(C12,C14,C16,C18)アシッドホスフェート、イソトリデシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェートが挙げられる。モノアルキルエステル化合物としては、モノエチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノブトキシエチルホスフェート、モノn-オクチルホスフェート、モノ2-エチルヘキシルホスフェート、モノラウリルホスフェート、モノ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)ホスフェートが挙げられる。ジアルキルエステル化合物としては、ジエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジブチルピロホスフェート、ジブトキシエチルホスフェート、ジn-オクチルホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、ジイソトリデシルホスフェート、ジオレイルホスフェートが挙げられる。これらの正リン酸エステル化合物は、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0068】
亜リン酸エステル化合物としては、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、ジフェニルモノ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト等の亜リン酸トリエステル化合物、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト等の亜リン酸ジエステル化合物が挙げられる。これらの亜リン酸エステル化合物は、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0069】
有機カルボン酸化合物としては、具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、アクリル酸、メタクリル酸、乳酸、1-メチル酪酸、イソ酪酸、2-エチル酪酸、イソ吉草酸、ツベルクロステアリン酸、ピバル酸、ネオデカン酸、アジピン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、スペリン酸、セバシン酸、エチルマロン酸、グルタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、オキシ二酢酸、マレイン酸、フマル酸、アセチレンジカルボン酸、イタコン酸、安息香酸、9-アントラセンカルボン酸、アニス酸、イソプロピル安息香酸、トルイル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、カルボキシフェニル酢酸、ピロメリット酸、サリチル酸が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0070】
有機無水カルボン酸化合物としては、具体的には、無水マレイン酸、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、アルケニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物を挙げることができる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
有機スルホン酸イソシアネート化合物としては、具体的には、p-トルエンスルホニルイソシアネートを挙げることができる。
【0072】
有機スルホン酸化合物としては、具体的には、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロ-1-ブタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸、(+)-10-カンファースルホン酸、m-キシレン-4-スルホン酸無水物、p-キシレン-2-スルホン酸無水物を挙げることができる。
【0073】
酸性化合物の配合量は、イソシアネート基含有樹脂およびシリルアミン化合物の合計量の100質量部に対し0.05~5質量部が好ましく、さらに0.1~3質量部が好ましい。
【0074】
本発明の硬化性組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上述した各成分以外に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。添加剤は、硬化性組成物に配合して硬化性組成物の粘度調整、硬化促進、接着性等の各種の性能を向上させるために使用する。具体的には、硬化促進触媒、可塑剤、耐候安定剤、充填剤、揺変性付与剤、接着性向上剤、貯蔵安定性向上剤(脱水剤)、着色剤および有機溶剤を挙げることができる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0075】
硬化促進触媒は、イソシアネート基含有樹脂が活性水素含有化合物(例えば、湿気等の水)と反応して架橋硬化するのを促進させるために使用する。また、硬化促進触媒は、上述のウレタンプレポリマーの製造時の反応触媒としても使用することができる。なお、硬化促進触媒をウレタンプレポリマーの製造時の反応触媒として使用した場合は、それらに残存する反応触媒が硬化性組成物の硬化促進触媒として作用することもある。
【0076】
硬化促進触媒としては、金属系触媒、アミン系触媒を挙げることができる。
【0077】
金属系触媒としては、金属と有機酸との塩、有機金属と有機酸との塩、金属キレート化合物が挙げられる。金属と有機酸との塩としては、錫、ビスマス、ジルコニウム、亜鉛、マンガン等の各種金属とオクチル酸、ネオデカン酸、ステアリン酸、ナフテン酸等の有機酸との塩が挙げられる。具体的には、オクチル酸錫、ナフテン酸錫、オクチル酸ビスマス、オクチル酸ジルコニウムが挙げられる。有機金属と有機酸との塩としては、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物が挙げられる。金属キレート化合物としては、錫キレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、ビスマスキレート化合物、鉄キレート化合物等が挙げられる。具体的には、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、錫キレート化合物であるAGC社製EXCESTAR C-501S、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)、アセチルアセトンコバルト、アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン銅、アセチルアセトンマグネシウム、アセチルアセトンビスマス、アセチルアセトンニッケル、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンマンガンが挙げられる。
【0078】
アミン系触媒としては、3級アミンが挙げられる。3級アミンとしては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン-7(DBU)、1,4-ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン(DABCO)やこれら3級アミンと有機カルボン酸の塩が挙げられる。
【0079】
これらの硬化促進触媒は、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0080】
硬化促進触媒の使用量は、イソシアネート基含有樹脂100質量部に対して0.005~5質量部が好ましく、特に0.005~2質量部が好ましい。
【0081】
可塑剤は、硬化性組成物の粘度を下げて作業性を改善するとともに、硬化性組成物の硬化後のゴム物性を調節する目的で使用する。具体的には、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類が挙げられる。
【0082】
耐候安定剤は、硬化性組成物の酸化、光劣化、熱劣化を防止して耐候性や耐熱性を向上させる目的で使用する。耐候安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、紫外線吸収剤が挙げられる。これらの耐候安定剤は、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、具体的には、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1(オクチルオキシ)-4-ピペリジル)エステル、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、1-[2-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]-4-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル・1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ]-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物の他、ADEKA社製のアデカスタブLA-63P、LA-68LDが挙げられる。
【0084】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオアミド]、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸C7-C9側鎖アルキルエステル、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノールが挙げられる。
【0085】
紫外線吸収剤としては、具体的には、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール等のトリアジン系紫外線吸収剤;オクタベンゾン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0086】
これらのうち耐候性付与の効果が高い点で、ヒンダードアミン系光安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。耐候安定剤は、イソシアネート基含有樹脂100質量部に対して、0.01~30質量部、さらに0.1~10質量部使用するのが好ましい。
【0087】
充填剤は、硬化性組成物の増量や硬化物の物性補強を目的として使用する。充填剤としては、具体的には、マイカ、カオリン、ゼオライト、グラファイト、珪藻土、白土、クレー、タルク、スレート粉、無水ケイ酸、石英微粉末、アルミニウム粉末、亜鉛粉末、沈降性シリカ等の合成シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の無機粉末状充填剤;ガラス繊維、炭素繊維等の繊維状充填剤;ガラスバルーン、シラスバルーン、シリカバルーン、セラミックバルーン等の無機系バルーン状充填剤;木粉、クルミ殻粉、もみ殻粉、パルプ粉、木綿チップ、ゴム粉末、熱可塑性または熱硬化性樹脂の微粉末、ポリエチレン等の粉末や中空体、サランマイクロバルーン等の有機系バルーン状充填;水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の難燃性付与充填剤が挙げられる。
【0088】
揺変性付与剤は、硬化性組成物のタレ(スランプ)の防止を目的として使用する。揺変性付与剤としては、具体的には、微粉末シリカ、脂肪酸表面処理炭酸カルシウム等の無機揺変性付与剤;尿素化合物、有機ベントナイト、脂肪酸アマイド等の有機揺変性付与剤が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0089】
微粉末シリカとしては、具体的には、親水性シリカ、疎水性シリカを挙げることができる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0090】
親水性シリカとしては、石英や珪砂等を微粉砕した天然シリカ、乾式シリカや湿式シリカ等の合成シリカが挙げられる。乾式シリカは、四塩化珪素等のシラン系ガスを酸水素炎中で燃焼させて得られるものであり、ヒュームドシリカということもある。また、湿式シリカは、珪酸ソーダを鉱酸で中和することによって溶液中でシリカを析出させる沈降法シリカがあり、ホワイトカーボンということもある。
【0091】
疎水性シリカとしては、親水性シリカに反応性を有する有機ケイ素化合物を用いて親水性シリカの表面を化学的に処理し、疎水性にしたものが挙げられる。
【0092】
尿素化合物としては、その化合物内に尿素結合(-NHCONH-)を1個以上有する化合物であり、有機イソシアネート化合物とアミン化合物との反応生成物が挙げられる。
【0093】
脂肪酸表面処理炭酸カルシウムは、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、コロイド炭酸カルシウムの表面を脂肪酸、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸金属塩、脂肪酸有機塩等の脂肪酸類で処理したものである。脂肪酸としては、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の炭素数10~25の脂肪酸が挙げられる。金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、有機塩としては、アンモニウム塩が挙げられる。
【0094】
接着性向上剤は、硬化性組成物の接着性の向上を目的として使用する。具体的には、シラン系、アルミニウム系、ジルコアルミネート系等の各種カップリング剤およびその部分加水分解縮合物を挙げることができる。このうち、シラン系カップリング剤およびその部分加水分解縮合物が接着性に優れているため好ましい。
【0095】
シラン系カップリング剤としては、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシリル基を含有する数平均分子量500以下の化合物が挙げられる。また、これらのシラン系カップリング剤の1種または2種以上の部分加水分解縮合物で数平均分子量200~3,000の化合物が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0096】
貯蔵安定性向上剤(脱水剤)は、硬化性組成物の貯蔵安定性を向上させる目的で使用する。具体的には、硬化性組成物中に存在する水と反応して脱水剤の働きをするビニルトリメトキシシラン、酸化カルシウムが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0097】
着色剤は、硬化性組成物を着色し、硬化物に意匠性を付与する目的で使用する。具体的には、酸化チタンや酸化鉄等の無機系顔料、銅フタロシアニン等の有機系顔料、カーボンブラックが挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0098】
有機溶剤は、硬化性組成物の粘度を下げ、押出し性、打設時や塗布時の作業性を向上させる目的で使用する。有機溶剤としては、硬化性組成物中の他の成分との相溶性が良好で、かつ、他の成分と反応しない有機溶剤であれば特に制限なく使用することができる。具体的には、ジメチルカーボネート等のカーボネート系溶剤、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル系溶剤、n-ヘキサン等の脂肪族系溶剤、シクロヘキサン等の脂環式系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ミネラルスピリットや工業ガソリン等の石油留分系溶剤等の有機溶剤が挙げられる。これらは、いずれも1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0099】
本発明の硬化性組成物は、活性水素含有化合物等(例えば、湿気等の水)と反応して架橋硬化するため、一液型硬化性組成物として使用することができる。また、イソシアネート基含有樹脂を主剤とし、これにポリオール、ポリアミン等の活性水素含有化合物を含む硬化剤を混合して二液型硬化性組成物として使用することができる。シリルアミン化合物は、主剤または硬化剤のいずれにも配合することができる。
【0100】
二液型硬化性組成物の混合方法としては、具体的には、ハンドミキサー、真空脱泡混合機、ドラム回転式ミキサー等の混合機を用いて各成分を均一に混合する方法が挙げられる。
【0101】
本発明の硬化性組成物の製造方法は、特に限定されず公知の方法で行うことができる。一液型硬化性組成物の製造方法としては、具体的には、イソシアネート基含有樹脂およびシリルアミン化合物、必要に応じて酸性化合物、添加剤をガラス製、ステンレス製、鉄製等の攪拌装置付き混合(混練)容器に仕込み、湿気等の水を遮断し、乾燥窒素気流下で攪拌、混合して製造する方法が挙げられる。二液型硬化性組成物の製造方法としては、具体的には、主剤と硬化剤に分けて上述の各成分を攪拌装置付き混合(混練)容器に仕込み、湿気等の水を遮断し、乾燥窒素気流下で攪拌、混合して製造する方法が挙げられる。
【0102】
本発明の硬化性組成物は、一液型硬化性組成物として使用する場合、イソシアネート基含有樹脂およびシリルアミン化合物が湿気等の水と反応して増粘したり、硬化したりすることもあるので、湿気等の水を遮断できる容器に詰め密封して貯蔵するのが好ましい。容器としては、湿気等の水を遮断できる容器であれば特に制限はない。具体的は、金属製や樹脂製の缶、アルミ製の袋、紙製や樹脂製のカートリッジが挙げられる。二液型硬化性組成物として使用する場合でも、主剤や硬化剤の各成分を湿気等の水を遮断できる容器に詰め密封して貯蔵するのが好ましい。
【実施例】
【0103】
以下に本発明の実施例等を示すが、本発明が実施例等に限定されて解釈されるものではない。
【0104】
[合成例1](イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの合成)
攪拌機、温度計、窒素シール管、加熱・冷却装置付き反応容器に、窒素ガスを流しながら、ポリオキシプロピレンジオール(数平均分子量3,300、分散度Mw/Mn1.03、エクセノール3021、AGC社製)を581.8g、ポリオキシプロピレントリオール(数平均分子量4,000、分散度Mw/Mn1.32、アクトコールMN-4000、三井化学SKCポリウレタン社製)を160.0g、ポリオキシプロピレンモノオール(数平均分子量3080、分散度Mw/Mn1.17、プレミノール1003、AGC社製)を100.0g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(分子量298)を30.0g仕込み、攪拌しながらイソホロンジイソシアネート(分子量222.3、エボニックジャパン社製)128.2g、ジブチル錫ジラウレート(ネオスタンU-100、日東化成社製)を0.2g仕込み、加温して75~85℃で4時間反応させた。イソシアネート基含有量が理論値(2.3質量%)以下になった時点で反応を終了させ、イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを合成した。イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーの分岐密度(理論値)は0.04ミリモル/g、アクリロイル基の含有量(理論値)は0.3ミリモル/gである。
[合成例2](ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物の合成)
攪拌機、温度計、窒素シール管、エステル管、加熱・冷却装置付き反応容器に、ジエタノールアミン(分子量105)を435.0gとトルエンを183.0g仕込み、攪拌しながらイソブチルアルデヒド(分子量72.1)を328.0g仕込み、窒素ガスを流しながら、加温して110~150℃で還流脱水反応を続け、副生する水(74.5g)を系外に取り出した。反応終了後、さらに減圧下(50~70hPa)で加熱し、トルエンと未反応のイソブチルアルデヒドを除去し、中間の反応生成物であるN-ヒドロキシエチル-2-イソプロピルオキサゾリジンを得た。
次いで、得られたN-ヒドロキシエチル-2-イソプロピルオキサゾリジン659.0gに、さらにヘキサメチレンジイソシアネート(分子量168)を348.0g加え、80℃で8時間加熱し、滴定による実測NCO含有量が0.0質量%になった時点で反応終点とし、分子内にオキサゾリジン環を2個有するウレタン結合含有オキサゾリジン化合物を得た。ウレタン結合含有オキサゾリジン化合物は常温で液体であった。
[合成例3](シリルアミン化合物Aの合成)
窒素置換した3L四つ口フラスコに4,9-ジオキサ-1,12-ドデカンジアミン160.0g(783mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン477.2g(3135mmol)、アセトニトリル810mLを仕込み、得られた混合物を10℃以下に冷却し、クロロトリメチルシラン343.1g(3158mmol)を滴下後、得られた反応混合物を25℃で24時間撹拌した。反応混合物に対してヘプタン150mLによる抽出操作を3回行った。ヘプタン層を減圧下濃縮後、窒素下にて濾過し、上記式で表されるシリルアミン化合物Aを339.1g得た(収率87.9%)。
1H-NMR分析結果を以下に示す。
1H-NMR(C
6D
6)δ(ppm)=3.28-3.25(m,4H)、3.23-3.21(m,4H)、2.98-2.94(m,4H)、1.68-1.65(m,8H)、0.17(s,36H)
[合成例4](シリルアミン化合物Bの合成)
窒素置換した500mL四つ口フラスコに3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジアミン20.3g(137mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン83.6g(549mmol)、アセトニトリル155mLを仕込み、得られた混合物を10℃以下に冷却し、クロロトリメチルシラン58.9g(548mmol)を滴下後、反応混合物を25℃で21時間撹拌した。反応混合物に対してヘプタン50mLによる抽出操作を4回行った。ヘプタン層を減圧下濃縮後、窒素下にて濾過し、上記式で表されるシリルアミン化合物Bを52.8g得た(収率88.3%)。
1H-NMR分析結果を以下に示す。
1H-NMR(C
6D
6)δ(ppm)=3.43(s,4H)、3.29(t,J=7.0Hz,4H)、2.98-2.94(m,4H)、0.15(s,36H)
[合成例5](シリルアミン化合物Cの合成)
窒素置換した400mL四つ口フラスコに4,7-ジオキサ-1,10-デカンジアミン15.3g(87mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン52.4g(344mmol)、アセトニトリル155mLを仕込み、得られた混合物を10℃以下に冷却し、クロロトリメチルシラン37.4g(344mmol)を滴下後、反応混合物を25℃で14時間撹拌した。反応混合物に対してヘプタン50mLによる抽出操作を4回行った。ヘプタン層を減圧下濃縮後、窒素下にて濾過し、上記式で表されるシリルアミン化合物Cを36.4g得た(収率90.1%)。
1H-NMR分析結果を以下に示す。
1H-NMR(C
6D
6)δ(ppm)=3.42(s,4H)、3.29-3.26(m,4H)、2.98-2.94(m,4H)、1.72-1.65(m,4H)、0.15(s,36H)
[合成例6](シリルアミン化合物Dの合成)
窒素置換した500mL四つ口フラスコに4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン15.0g(68mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン41.5g(273mmol)、アセトニトリル190mLを仕込み、得られた混合物を10℃以下に冷却し、クロロトリメチルシラン30.0g(276mmol)を滴下後、反応混合物を25℃で23時間撹拌した。反応混合物に対してヘプタン50mLによる抽出操作を5回行った。ヘプタン層を減圧下濃縮後、窒素下にて濾過し、上記式で表されるシリルアミン化合物Dを29.5g得た(収率85.2%)。
1H-NMR分析結果を以下に示す。
【0105】
1H-NMR(C6D6)δ(ppm):3.54-3.52(m,4H),3.44-3.42(m,4H),3.27-3.24(m,4H),2.97-2.93(m,4H),1.70-1.66(m,4H),0.19(s,36H)
【0106】
[実施例1]
攪拌機、加熱、冷却装置、窒素シール管付き混練容器に、窒素ガスを流しながら、合成例1のイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを100g仕込み、攪拌しながら予め100~110℃の乾燥機中で乾燥して水分含有量を0.05質量%以下にした重質炭酸カルシウム(ホワイトンB、白石カルシウム社製)を20g、脂肪酸表面処理炭酸カルシウム(白艶華CCR-S、白石カルシウム社製)を100g、酸化チタンを10g、フタル酸ジイソノニル(DINP)を10g仕込み、内容物が均一になるまで混合した。次いで、ジメチルカーボネート5gにヒンダードアミン系光安定剤(アデカスタブLA-63P、ADEKA社製)を1g、ヒンダードフェノール系酸化防止剤{ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]}(イルガノックス1010、BASF社製)を1g加えた溶液、合成例3のシリルアミン化合物A(N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,9-ジオキサ-1,12-ドデカンジアミン)を10.8g、リン酸エステル化合物(2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、城北化学工業社製)を0.6g仕込み、内容物が均一になるまでさらに混合した。次いで、50~100hPaで減圧脱泡し、容器に充填、密封して硬化性組成物を調製した。
[実施例2]
実施例1において、リン酸エステル化合物を使用する替わりに有機カルボン酸化合物(アクリル酸、富士フイルム和光純薬社製)を0.6g使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、硬化性組成物を得た。
[実施例3]
実施例1において、シリルアミン化合物Aを使用する替わりに合成例4のシリルアミン化合物B(N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジアミン)を9.6g使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、硬化性組成物を調製した。
[実施例4]
実施例1において、シリルアミン化合物Aを使用する替わりに合成例4のシリルアミン化合物Bを9.6g使用し、リン酸エステル化合物を使用する替わりに有機カルボン酸化合物を0.6g使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、硬化性組成物を調製した。
[実施例5]
実施例1において、シリルアミン化合物Aを使用する替わりに合成例5のシリルアミン化合物C(N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,7-ジオキサ-1,10-デカンジアミン)を10.2g使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、硬化性組成物を調製した。
[実施例6]
実施例1において、シリルアミン化合物Aを使用する替わりに合成例5のシリルアミン化合物Cを10.2g使用し、リン酸エステル化合物を使用する替わりに有機カルボン酸化合物を0.6g使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、硬化性組成物を調製した。
[実施例7]
実施例1において、リン酸エステル化合物を1.0g使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、硬化性組成物を調製した。
[実施例8]
実施例1において、シリルアミン化合物Aを使用する替わりに合成例6のシリルアミン化合物D(N,N,N’,N’-テトラキス(トリメチルシリル)-4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン)を11.1g使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、硬化性組成物を調製した。
[実施例9]
実施例1において、シリルアミン化合物Aを使用する替わりに合成例6のシリルアミン化合物Dを11.1g使用し、リン酸エステル化合物を使用する替わりに有機カルボン酸化合物を0.6g使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、硬化性組成物を調製した。
[比較例1]
実施例1において、シリルアミン化合物Aを使用する替わりに合成例2のウレタン結合含有オキサゾリジン化合物を10.6g使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、硬化性組成物を調製した。
[比較例2]
実施例1において、シリルアミン化合物Aを使用する替わりに合成例2のウレタン結合含有オキサゾリジン化合物を10.6g、リン酸エステル化合物を使用する替わりに有機カルボン酸化合物を0.6g使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、硬化性組成物を調製した。
[比較例3]
実施例1において、シリルアミン化合物Aを使用する替わりに合成例2のウレタン結合含有オキサゾリジン化合物を10.6g、リン酸エステル化合物を0.2g使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、硬化性組成物を調製した。
[比較例4]
実施例1において、シリルアミン化合物Aおよびリン酸エステル化合物を使用する替わりに金属系触媒(アセチルアセトン第二鉄(ナーセム第二鉄)、日本化学産業社製)を0.6g使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、硬化性組成物を調製した。
【0107】
実施例1~6の硬化性組成物および比較例1~2の硬化性組成物を用いて下記の保存安定性試験、耐発泡性試験、引張接着性試験を行った。評価結果を表1に示す。
実施例7の硬化性組成物および比較例3~4の硬化性組成物を用いて下記の保存安定性試験、指触乾燥時間試験、耐発泡性試験を行った。評価結果を表2に示す。
実施例8~9の硬化性組成物の硬化性組成物を用いて下記の保存安定性試験、耐発泡性試験を行った。評価結果を表3に示す。
【0108】
[保存安定性試験]
50℃10日保存前粘度:硬化性組成物を調製後、直ちにE型粘度計(30倍コーン、1rpm、25℃)を用いて硬化性組成物の粘度を測定した。
50℃10日保存後粘度:硬化性組成物を空気が入らないようにガラス製の容器に入れ密封し、50℃の恒温器の中に10日間入れた。10日後、この容器を恒温器から取出し23℃の室内に6時間置いた後、E型粘度計(30倍コーン、1rpm、25℃)を用いて硬化性組成物の粘度を測定した。
[指触乾燥時間試験]
JIS A 1439:2016建築用シーリング材の試験方法の5.19の手順に従って指触乾燥時間試験(23℃50%RH)を行った。
[耐発泡性試験]
厚さ3mmのラワン合板上に硬化性組成物を幅20mm×高さ10mm×長さ100mmのビード状に塗布し、23℃50%RHで14日間硬化させた。次に、カッターを使用して硬化物の幅の中心付近を長さ方向に50mm切断し、切断面の気泡の数を目視で観測した。
[引張接着性試験]
養生後
JIS A 1439:2016建築用シーリング材の試験方法の5.20引張接着性試験に準拠し引張接着性試験を行い、硬化性組成物の50%引張応力(M50)、最大引張応力(Tmax)および最大荷重時の伸び率(Emax)を求めた。試験体は、50mm×50mm×25mmのモルタルを使用した。硬化性組成物との被着面には予め一液型ウレタン系プライマー(OP-2019、オート化学工業社製)を塗布し、乾燥硬化させた。試験体は、23℃50%RHで14日間および30℃で14日間養生し硬化させた。
水浸せき後
JIS A 1439:2016建築用シーリング材の試験方法の5.20引張接着性試験に準拠し引張接着性試験を行い、硬化性組成物の50%引張応力(M50)、最大引張応力(Tmax)および最大荷重時の伸び率(Emax)を求めた。試験体は、50mm×50mm×25mmのモルタルを使用した。硬化性組成物との被着面には予め一液型ウレタン系プライマー(OP-2019、オート化学工業社製)を塗布し、乾燥硬化させた。試験体は、23℃50%RHで14日間および30℃で14日間養生し硬化させた後、さらに23℃の水中に7日間入れて水浸せき処理を行った。
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
表1の結果より、本発明の硬化性組成物(実施例1~6)は、保存安定性試験において粘度変化率が比較例1~2よりも小さく、耐発泡性試験において硬化物の内部に発泡は認められないことが分かる。また、本発明の硬化性組成物は、引張接着性試験において、比較例1~2の硬化性組成物と比較し、50%引張応力が小さく(低モジュラス)、最大荷重時の伸び率が大きく(高伸び)であることが分かる。特に、本発明の硬化性組成物は、引張接着性試験において、水浸せき後の最大荷重時の伸び率が比較例1~2の硬化性組成物よりも大きく、耐水性に優れていることが分かる。
【0113】
表2の結果より、本発明の硬化性組成物(実施例7)は、比較例3の硬化性組成物と比較し、保存安定性試験の粘度変化率は同程度であるが、指触乾燥時間は大幅に短縮できることから、良好な保存安定性を維持しつつ、硬化性に優れることが分かる。また、本発明の硬化性組成物は、硬化を速めても、耐発泡性試験において硬化物の内部に発泡は認められないことが分かる。比較例4の硬化性組成物は、シリルアミン化合物の替わりに金属系触媒を使用し指触乾燥時間(硬化性)を速めると、保存安定性試験において粘度変化率が大きく、耐発泡性試験においても硬化物の内部に多数の気泡が認められた。
【0114】
表3の結果より、本発明の硬化性組成物(実施例8~9)は、保存安定性試験において粘度変化率が表1の比較例1~2よりも小さく、耐発泡性試験において硬化物の内部に発泡は認められないことが分かる。
【0115】
本発明の硬化性組成物は、保存安定性、指触乾燥時間(硬化性)、硬化時の耐発泡性に優れ、硬化後のゴム物性が低モジュラスで高伸びであるから、建築用、土木用の硬化性組成物として好適に使用することができる。また、本発明の硬化性組成物は、シーリング材組成物、防水材組成物、コーティング材組成物、接着剤組成物として好適に使用することができる。
【0116】
この出願は2018年10月31日に出願された日本国特許出願番号第2018-205362からの優先権を主張するものであり、その内容を引用してこの出願の一部とするものである。