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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/18 20060101AFI20231003BHJP
   B60R 21/20 20110101ALI20231003BHJP
   B60R 22/18 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B60R21/18
B60R21/20
B60R22/18
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021054263
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022094886
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2020207840
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】深浦 和実
(72)【発明者】
【氏名】中村 敦
(72)【発明者】
【氏名】山田 真史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐司
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰士
(72)【発明者】
【氏名】松崎 雄士
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/105639(WO,A1)
【文献】特開2000-185623(JP,A)
【文献】特開2012-056345(JP,A)
【文献】特開2012-020606(JP,A)
【文献】特開2004-050914(JP,A)
【文献】特開2008-290499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
B60R 22/00-22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに着座した乗員を、シートベルトとエアバッグとを併用して保護する乗員保護装置であって、
前記シートベルトが、
シートの左右方向の一方側において、背もたれ部の上端側に配設されたリトラクタから繰り出し可能とし、下端側を座部側に固定される固定端として、前記シートの左右方向の他方側における前記座部側に配設されたバックルに締結されるタングの挿通孔に挿通させて、
前記バックルに締結させた前記タングから前記リトラクタ側に延びる部位を、乗員の胸部の前面側に配置されるショルダーベルト部とし、前記バックルに締結させた前記タングから前記固定端側に延びる部位を、乗員の腰部の前面側に配置されるラップベルト部として、使用可能に配設され、
前記エアバッグが、前記固定端側の元部側から延びるバッグ用ベルトに、膨張可能に折り畳まれて保持され、
前記バッグ用ベルトが、前記元部側から延びる先端を、前記タングに連結させて、前記タングの前記バックルへの締結時に、前記ラップベルト部の上面側に配設されて、膨張完了時に前記エアバッグを前記乗員の胸部の前面側に配置可能とする構成として、
前記タングが、略板状として、
先端側に、前記バックルに締結可能な締結部を配設し、
元部側に、前記バッグ用ベルトの先端側を連結させる連結部を配設し、
前記シートベルトの前記挿通孔を、前記締結部と前記連結部との間に配設して構成されるとともに、
前記タングの前記連結部が、前記バッグ用ベルトの先端側の幅方向に貫通穴を設けたループ部を巻き掛ける連結杆部と、該連結杆部に隣接する前記挿通孔側に配置されて、前記バッグ用ベルトの前記ループ部の周壁を挿通させる挿通用開口と、を配設させて構成され、
前記タングが、
前記挿通孔の周縁の表面側を、前記シートベルトの前記ショルダーベルト部側とし、前記挿通孔の周縁の裏面側を、前記シートベルトの前記ラップベルト部側として、前記挿通孔に前記シートベルトを挿通させて、前記シートベルトの引っ張り前に、前記背もたれ部の上端側に待機される構成とするとともに、
前記挿通孔と前記挿通用開口との間の部位が、表面側を前記シートベルトの摺動部位とする摺動案内部として、
該摺動案内部が、前記連結部より表面側に隆起する凸形状として、前記連結部の表面側より、高く構成されていることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
前記タングの前記摺動案内部が、表面側を、前記連結部側にかけて、裏面側より角度を付けて高くする傾斜面として、構成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項3】
前記タングの前記摺動案内部の前記傾斜面が、傾斜角度を40~60°の範囲内として、構成されていることを特徴とする請求項2に記載の乗員保護装置。
【請求項4】
前記タングの前記摺動案内部が、前記連結部の表面側より高くする寸法をhとすると、前記バッグ用ベルトの厚さ寸法をtとした場合、t<h<3tの範囲内とした高さ寸法として、配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の乗員保護装置。
【請求項5】
前記バッグ用ベルトが、前記元部側を、前記バッグ用ベルトを繰り出し可能なリトラクタに連結させて、配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の乗員保護装置。
【請求項6】
折り畳まれた前記エアバッグを収納し、かつ、前記バッグ用ベルトと前記ラップベルト部とを挿通させて配設される形状保持性を有したケース、を備え、
該ケースが、
前記タングの前記バックルへの締結時における前記ラップベルト部を上面側に配置させる底壁部と、
前記タングの前記バックルへの締結時における前記バッグ用ベルトを上面側に配置させ、かつ、前記ラップベルト部を下面側に配置させる中間壁部と、
前記バッグ用ベルト及び折り畳まれた前記エアバッグを介在させて、前記中間壁部と対向するように配設される天井壁部と、
前記タングの前記バックルへの締結時における前記底壁部の前記ラップベルト部及び前記バッグ用ベルトの幅方向の前後両縁において、前記底壁部と前記天井壁部とを連結するように配設される前壁部及び後壁部と、
前記タングの前記バックルへの締結時における前記ラップベルト部と前記バッグ用ベルトとの挿通方向に沿った両端面側に配設されて、前記ラップベルト部と前記バッグ用ベルトとを挿通可能な挿通口と、
を備えて構成されるとともに、
前記ケースの両端面間における前記底壁部、前記中間壁部、前記前壁部、及び、前記後壁部で囲まれ部位を、前記ラップベルト部の断面形状と略同等の空間として、前記ラップベルト部を摺動可能に挿通させる挿通用通路、とし、
前記天井壁部側を、前記エアバッグの膨張時に、折り畳まれた前記エアバッグを突出させるように、開き可能なドア部、として構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の乗員保護装置。
【請求項7】
前記ケースが、合成樹脂から形成されるとともに、
前記天井壁部、前記前壁部と前記後壁部との上部側、前記中間壁部、及び、両端面側の前記挿通口の上側周縁、を構成する上側部材と、
前記底壁部、前記前壁部と前記後壁部との下部側、及び、両端面側の前記挿通口の下側周縁、を構成する下側部材と、
から構成されて、
前記上側部材と前記下側部材との前後の縁側に、相互に係合して、前記ケースを組み立て可能な組付用係合部が、配設され、
前記ドア部が、前記上側部材の前記後壁部側に、該ドア部の回転中心となるインテグラルヒンジからなるヒンジ部位を設け、前記上側部材の前記前壁部側に、前記エアバッグの膨張時に解除可能に、前記前壁部側の部位に対応して係合されるドア用係合部、を設けて、配設されていることを特徴とする請求項6に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員保護装置としては、シートベルトに、膨張したエアバッグを配設させて、シートに着座した乗員を保護するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この乗員保護装置では、共用するタングに、二つのシートベルトを重ねて組み付けるようにして、各シートベルトのタングの部位で分かれるショルダーベルト部とラップベルト部とにおいて、それぞれ、一方側のショルダーベルト部若しくはラップベルト部に、膨張するエアバッグを保持させておく構成としていた。また、二つのシートベルトは、それぞれ、リトラクタから繰り出される構成としているものの、リトラクタの配置は、一方が、背もたれ部の上端側とし、他方が、座部の側方側としていた。そして、使用時には、共用されたタングを、リトラクタと左右方向の反対側のシート側方に配置されたバックルに締結させて、一方のシートベルトのショルダーベルト部に保持された折り畳まれた状態のエアバッグを、乗員の胸部の前面側に配置させ、他方のシートベルトのラップベルト部に保持された折り畳まれた状態のエアバッグを、腰部の前面側に配置させていた。そして、車両が衝突等すれば、各エアバッグが、膨張して、乗員の胸部と腰部とをそれぞれ受け止めて、乗員を保護することとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-290499公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の乗員保護装置では、二つのシートベルトをタングの対応する二つの挿通孔を挿通させるように構成させていたことから、タングを引っ張って、所定のバックルに締結させる際、二つのシートベルト相互が摺動し、シートベルトの摩擦抵抗により、タングのバックルへの締結作業時、タングの引張荷重が上昇して、タングの締結作業を円滑に行い難くしていた。このような二枚重ねとなるようなベルトを、1つのタングを共用して、使用する場合、二つのベルトに共にエアバッグを保持させている場合だけでなく、一方のベルトにだけ、腰部の前面側で膨張するエアバッグを保持させている場合でも、引張荷重の増加により、タングの引張作業が円滑に行ない難くなってしまう。換言すれば、タングに、通常のシートベルトとともに、エアバッグを保持するバッグ用ベルトを連結させる構成としても、バッグ用ベルトを連結させていないタングの引張荷重と略同等とするように、引張荷重の増加を抑制することが望まれる。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、エアバッグを保持したバッグ用ベルトとシートベルトとを、タングを共用して使用しても、タングの引張荷重の増加を抑制できて、円滑に両ベルトを乗員に装着可能な乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乗員保護装置は、シートに着座した乗員を、シートベルトとエアバッグとを併用して保護する乗員保護装置であって、
前記シートベルトが、
シートの左右方向の一方側において、背もたれ部の上端側に配設されたリトラクタから繰り出し可能とし、下端側を座部側に固定される固定端として、前記シートの左右方向の他方側における前記座部側に配設されたバックルに締結されるタングの挿通孔に挿通させて、
前記バックルに締結させた前記タングから前記リトラクタ側に延びる部位を、乗員の胸部の前面側に配置されるショルダーベルト部とし、前記バックルに締結させた前記タングから前記固定端側に延びる部位を、乗員の腰部の前面側に配置されるラップベルト部として、使用可能に配設され、
前記エアバッグが、前記固定端側の元部側から延びるバッグ用ベルトに、膨張可能に折り畳まれて保持され、
前記バッグ用ベルトが、前記元部側から延びる先端を、前記タングに連結させて、前記タングの前記バックルへの締結時に、前記ラップベルト部の上面側に配設されて、膨張完了時に前記エアバッグを前記乗員の胸部の前面側に配置可能とする構成として、
前記タングが、略板状として、
先端側に、前記バックルに締結可能な締結部を配設し、
元部側に、前記バッグ用ベルトの先端側を連結させる連結部を配設し、
前記シートベルトの前記挿通孔を、前記締結部と前記連結部との間に配設して構成されるとともに、
前記タングの前記連結部が、前記バッグ用ベルトの先端側の幅方向に貫通穴を設けたループ部を巻き掛ける連結杆部と、該連結杆部に隣接する前記挿通孔側に配置されて、前記バッグ用ベルトの前記ループ部の周壁を挿通させる挿通用開口と、を配設させて構成され、
前記タングが、
前記挿通孔の周縁の表面側を、前記シートベルトの前記ショルダーベルト部側とし、前記挿通孔の周縁の裏面側を、前記シートベルトの前記ラップベルト部側として、前記挿通孔に前記シートベルトを挿通させて、前記シートベルトの引っ張り前に、前記背もたれ部の上端側に待機される構成とするとともに、
前記挿通孔と前記挿通用開口との間の部位が、表面側を前記シートベルトの摺動部位とする摺動案内部として、
該摺動案内部が、前記連結部より表面側に隆起する凸形状として、前記連結部の表面側より、高く構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る乗員保護装置では、シートに乗員が着座した状態でシートベルトを装着するように、タングを引っ張ってバックルに締結させる際、タングを、締結部側を先頭に、背もたれ部の上端側の待機位置から、水平方向に前方移動させて、下向きに移動させたり、あるいは、乗員の肩口から斜め下向きに移動させて、バックルに締結させる。その際、タングの挿通孔の周縁における摺動案内部の表面側を、シートベルトが摺動しつつ、タングが移動することとなるが、摺動案内部の表面側が、連結部の表面側より、高いことから、摺動案内部を摺動するショルダーベルト部は、その高さ分、バッグ用ベルトと摺動することが抑制されて、シートベルトとバッグ用ベルトとの相互の摺動による摩擦抵抗を低減でき、タングの引張荷重の増加を抑制できて、タングをバックルに締結させて乗員にシートベルトとバッグ用ベルトとを円滑に装着することができる。そして、タングをバックルに締結すれば、シートベルトのショルダーベルト部を、乗員の胸部の前面側に配置させ、シートベルトのラップベルト部を、乗員の腰部の前面側に配置させ、さらに、バッグ用ベルトを、ラップベルト部の上面側に配置させることができ、その後、車両の衝突等によりエアバッグが膨張すれば、前方移動する乗員を、シートベルトと、バッグ用ベルトに支持されたエアバッグとにより、的確に受け止めて保護できる。
【0008】
したがって、本発明に係る乗員保護装置では、エアバッグを保持したバッグ用ベルトとシートベルトとを、タングを共用して使用しても、タングの引張荷重の増加を抑制できて、円滑に両ベルトを乗員に装着することができる。
【0009】
そして、本発明に係る乗員保護装置では、前記タングの前記摺動案内部が、表面側を、前記連結部側にかけて、裏面側より角度を付けて高くする傾斜面として、構成されていることが望ましい。
【0010】
このような構成では、両ベルトの装着時におけるタングの引張作業時、シートベルトが、タングの裏面側から表面側に挿通するように、挿通孔を通過する。その際、シートベルトは、タングの裏面側に、固定端側に延びるラップベルト部側を配設させ、タングの表面側に、リトラクタ側に延びるショルダーベルト部側を配設させて、摺動案内部の表面側の傾斜面における締結部側の先端側から連結部側の元部側にかけて、摺動する。この時、摺動案内部の表面側は、凸形状の高さを確保するための形態として、半円柱状等の曲面状とせずに、先端側から元部側に向かって立ち上るような平面状の傾斜面を設けた形態としている。そのため、凸形状の確保のための半円柱状等の曲面状の摺動面では、その略全面でシートベルトが摺動し易く、摺動抵抗が高くなるが、平面状の傾斜面自体では、その略全面でシートベルトが圧接した状態で摺動し難く、単に、傾斜面の先端側と元部側との二点の縁部位で、シートベルトがその幅方向で線状若しくは帯状に接触する状態となり易く、引張荷重の上昇を抑えて、タングを引っ張ることができる。
【0011】
この場合、前記タングの前記摺動案内部の前記傾斜面は、傾斜角度を40~60°の範囲内として、構成されていることが望ましい。
【0012】
傾斜角度が40°未満と小さいと、タングを、裏面側を略鉛直方向に沿わせて、下向きとして引き出す際、シートベルトが、挿通孔の締結部側の縁から延びて、傾斜面の先端から元部にかけての傾斜面の略全面を面接触させつつ摺動する事態を招き易く、タングの引張荷重を増加させ易くなる。また、傾斜角度が60°を越えるように大きいと、傾斜面が立ち上がりすぎて、タングの厚さが厚くなりすぎることから、挿通用開口との間に、厚さを小さくするように、頂部付近を、タングの裏面と略平行に切除したような天井面を広く形成する必要が生ずる。その結果、タングを、例えば、裏面側を略水平方向に沿わせて、前向きに引き出す際、シートベルトが、傾斜面の先端側では、縁部位に線接触するものの、傾斜面の元部側において、摺動案内部の元部側の天井面に対し、広い範囲で面接触させつつ摺動することとなって、その際、傾斜角度が大きければ、摺動抵抗を増加させる面接触の面積が広がることとなって、タングの引張荷重を増加させ易くなる。そのため、タングの摺動案内部の傾斜面は、傾斜角度を40~60°の範囲内として、構成されていることが望ましい。
【0013】
そして、本発明に係る乗員保護装置では、前記タングの前記摺動案内部が、前記連結部の表面側より高くする寸法をhとすると、前記バッグ用ベルトの厚さ寸法をtとした場合、t<h<3tの範囲内とした高さ寸法として、配設されていることが望ましい。
【0014】
このような構成では、摺動案内部の表面が、連結部より、バッグ用ベルトの厚さ寸法以上、高いことから、シートベルトが、摺動案内部の表面側からタングの裏面側に沿ってリトラクタ側に延びても、連結部に巻き掛けられたバッグ用ベルトと接触し難く、安定して、シートベルトとバッグ用ベルトとの相互の摺動による摩擦抵抗を低減できて、タングの引張荷重の増加抑制に寄与できる。また、タングの摺動案内部は、バッグ用ベルトの厚さ寸法の3倍を越えるような高さでないことから、タングの厚さを小さくできて、摺動案内部付近を把持して、タングを引き出す際、タングを、容易に把持して、引っ張ることができる。さらに、摺動案内部の高さが抑えられれば、既述した摺動案内部の元部側の天井面の面積も抑制できて、タングの引張荷重の増加を抑制できる。
【0015】
さらに、本発明に係る乗員保護装置では、前記バッグ用ベルトが、前記元部側を、前記バッグ用ベルトを繰り出し可能なリトラクタに連結させて、配設されていることが望ましい。
【0016】
このような構成では、タングを引っ張ってバックルに締結させる際、バッグ用ベルトを、シートベルトと同様に、繰り出して、そして、繰り出し過ぎても、リトラクタにより引き込ませることができて、乗員に的確にフィットするように、装着させることができる。
【0017】
さらにまた、本発明に係る乗員乗員保護装置では、折り畳まれた前記エアバッグを収納し、かつ、前記バッグ用ベルトと前記ラップベルト部とを挿通させて配設される形状保持性を有したケース、を備え、
該ケースが、
前記タングの前記バックルへの締結時における前記ラップベルト部を上面側に配置させる底壁部と、
前記タングの前記バックルへの締結時における前記バッグ用ベルトを上面側に配置させ、かつ、前記ラップベルト部を下面側に配置させる中間壁部と、
前記バッグ用ベルト及び折り畳まれた前記エアバッグを介在させて、前記中間壁部と対向するように配設される天井壁部と、
前記タングの前記バックルへの締結時における前記底壁部の前記ラップベルト部及び前記バッグ用ベルトの幅方向の前後両縁において、前記底壁部と前記天井壁部とを連結するように配設される前壁部及び後壁部と、
前記タングの前記バックルへの締結時における前記ラップベルト部と前記バッグ用ベルトとの挿通方向に沿った両端面側に配設されて、前記ラップベルト部と前記バッグ用ベルトとを挿通可能な挿通口と、
を備えて構成されるとともに、
前記ケースの両端面間における前記底壁部、前記中間壁部、前記前壁部、及び、前記後壁部で囲まれ部位を、前記ラップベルト部の断面形状と略同等の空間として、前記ラップベルト部を摺動可能に挿通させる挿通用通路、とし、
前記天井壁部側を、前記エアバッグの膨張時に、折り畳まれた前記エアバッグを突出させるように、開き可能なドア部、として構成されていてもよい。
【0018】
このような構成では、折り畳まれたエアバッグを収納するケースが、形状保持性を有して、底壁部側に、ラップベルト部の断面形状と略同等の空間を設けて、ラップベルト部を摺動可能に挿通させる挿通用通路を配設させていることから、タングをバックルに締結させたり、あるいは、締結後に、タングをバックルから外して、背もたれ部の上端側の待機位置に戻す際、ラップベルト部が、ケースの挿通用通路内を通過する。その際、挿通用通路が、ラップベルト部の断面形状と略同等の空間を設けて、構成されていることから、ラップベルト部がねじれずに、挿通用通路を挿通する。また、バッグ用ベルトも、下面側でラップベルト部を摺動させる中間壁部上で、ケースの両端面の挿通口から出る状態としていることから、ラップベルト部と平行に重なる状態を維持する。そのため、タングをバックルに締結させたり、あるいは、その後に、タングを背もたれ部の上端側の待機位置に戻す際、シートベルトのラップベルト部とバッグ用ベルトとが、タングの引張荷重の増加を招くような、ねじれて相互に干渉する状態、を防止することができる。そして勿論、折り畳んだエアバッグを収納したケースが、ラップベルト部を円滑に挿通させる形状保持性を有していても、エアバッグの膨張時には、天井壁部側のドア部を開かせて、エアバッグを円滑に突出させることができる。
【0019】
この場合、前記ケースは、合成樹脂から形成されるとともに、
前記天井壁部、前記前壁部と前記後壁部との上部側、前記中間壁部、及び、両端面側の前記挿通口の上側周縁、を構成する上側部材と、
前記底壁部、前記前壁部と前記後壁部との下部側、及び、両端面側の前記挿通口の下側周縁、を構成する下側部材と、
から構成されて、
前記上側部材と前記下側部材との前後の縁側に、相互に係合して、前記ケースを組み立て可能な組付用係合部が、配設され、
前記ドア部が、前記上側部材の前記後壁部側に、該ドア部の回転中心となるインテグラルヒンジからなるヒンジ部位を設け、前記上側部材の前記前壁部側に、前記エアバッグの膨張時に解除可能に、前記前壁部側の部位に対応して係合されるドア用係合部、を設けて、配設されていることが望ましい。
【0020】
このような構成では、ケースが、合成樹脂製として、バッグ用ベルトとエアバッグとを収納する中間壁部側の上側部材と、ラップベルト部を摺動させる底壁部側の下側部材と、の2部品として構成されて、上側部材と下側部材との対応する組付用係合部を相互に係合させれば、簡便に、ケースを組み立てることができる。さらに、上側部材に配設されるドア部も、ドア部側と前壁部側との対応するドア用係合部を相互に係合させれば、折り畳んだエアバッグを、円滑に、ケース内に収納しておくことができ、さらに、エアバッグの膨張時には、ドア部側と前壁部側との対応するドア用係合部の相互の係合を解除させて、インテグラルヒンジからなるヒンジ部位を撓ませて、円滑に、ドア部が開いて、ケースからエアバッグを突出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態である乗員保護装置を搭載したシートの斜視図である。
図2】実施形態の乗員保護装置を搭載したシートの側面図である。
図3】実施形態の乗員保護装置を搭載したシートの正面図であり、シートベルトとバッグ用ベルトとが乗員に装着された状態を示し、また併せて、エアバッグの膨張時を二点鎖線で示す。
図4】実施形態の乗員保護装置におけるタングを引き出す状態を説明する概略側面部である。
図5】実施形態の乗員保護装置において使用されるエアバッグを、単体で膨張させた状態を示す概略斜視図である。
図6】実施形態のタングの平面図である。
図7】実施形態のタングの拡大断面図であり、図6のVII-VII部位に対応する。
図8】実施形態のタングを、先端を前方に向けて、待機位置から水平に引き出した状態の概略断面図である。
図9】実施形態のタングを、先端を下方に向けて、待機位置から水平に引き出した状態の概略断面図である。
図10】実施形態のタングを、先端を前方に向けて、待機位置から斜め下方に引き出した状態の概略断面図である。
図11】実施形態のタングを、先端を下方に向けて、待機位置から斜め下方に引き出した状態の概略断面図である。
図12】折り畳んだエアバッグを収納するケース、を使用した実施形態の乗員保護装置の変形例を示すもので、シートの正面図として、シートベルトとバッグ用ベルトとが乗員に装着された状態を示し、また併せて、エアバッグの膨張時を二点鎖線で示す。
図13図12に示すケースの断面図であり、図12のXIII-XIII部位に対応する。
図14図12に示す変形例の乗員保護装置の側面図である。
図15図12に示すケースの分解斜視図である。
図16図12に示すケースの斜視図である。
図17図12に示すケースの変形例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の乗員保護装置10は、図1~3に示すように、車両のシート1に搭載されるもので、シートベルト11と、エアバッグ65を保持したバッグ用ベルト20と、エアバッグ65に膨張用ガスを供給するインフレーター57と、を備えて構成されている。シート1は、背もたれ部2と座部5とを備えている。
【0023】
シートベルト11は、シート1に着座した乗員MPを拘束するためのものであり、シート1の左右方向の一方側(実施形態では左方側)において、上端11a側を、背もたれ部2の上端3における左縁3a側の内部に配設されたリトラクタ15から繰り出し可能とし、下端11b側を、座部5の左側部6に配設されたアンカ部材17に固定される固定端として配設されるとともに、タング30の挿通孔39(図1,8~11参照)に挿通させて配設されている。なお、図1,2に示す符号18の部材は、ベルト11,20を、挿通可能として、座部5の左側部6から外れないように押えておく押え部材である。
【0024】
タング30は、シート1の左右方向の他方側(実施形態では右方側)における座部5の右側部7に配設されたバックル26に締結されることとなり、タング30をバックル26に締結させた状態のシートベルト11は、タング30からリトラクタ15側に延びる部位を、乗員MPの胸部MBの前面側に配置されるショルダーベルト部12とし、タング30から固定端11b側に延びる部位を、乗員MPの腰部MWの前面側に配置されるラップベルト部13として、使用するように、配設されている。なお、バックル26には、リリースボタン26aが配設されており、締結したタング30を締結解除する際、リリースボタン26aを押圧操作すれば、タング30をバックル26から取り外すことができる。
【0025】
エアバッグ65を収納保持するバッグ用ベルト20は、シートベルト11の固定端11b側の元部20bから延びる先端20aを、タング30の後述する連結部35の連結杆部36に巻き掛けて連結させている(図8~11参照)。先端20aは、連結杆部36を包むループ部21を設けて形成されている。ループ部21は、バッグ用ベルト20の幅方向に貫通する貫通穴22を設けた円筒状としている。バッグ用ベルト20は、タング30のバックル26への締結時に、ラップベルト部13の上面側に配設されて、膨張完了時にエアバッグ65を乗員MPの胸部MBの前面側に配置可能とするように、配設されている。
【0026】
また、バッグ用ベルト20の元部20bは、バッグ用ベルト20を繰り出し可能なリトラクタ24に連結させている。
【0027】
なお、シートベルト11とバッグ用ベルト20とにそれぞれ連結されるリトラクタ15,24は、ベルト11,20の急激な引き出しがあれば、引き出しを停止させ、さらに、車両の衝突等があれば、引き出したベルト11,20を巻き取り可能なプリテンショナーを配設させて構成されている。
【0028】
また、シートベルト11とバッグ用ベルト20とは、ポリエステル等の糸を編み込んで帯状に形成されており、実施形態の場合、共に、厚さ寸法tを1.2mmとしている。
【0029】
エアバッグ65は、図5に示すように、バッグ本体66と、インフレーター57からの膨張用ガスをバッグ本体66に流入させるための導管部71と、を備えて構成されている。バッグ本体66と導管部71とは、ポリエステル等の可撓性を有した織布から形成されている。
【0030】
なお、インフレーター57は、膨張用ガスを吐出する略円柱状のインフレーター本体58と、インフレーター本体58から突出して略L字状に屈曲するパイプ部59と、を備えて、シート1の座部5の後面側に取付固定されている(図1,2,4参照)。パイプ部59には、エアバッグ65の導管部71の元部71a側の接続筒部72が、外装され、さらに、クランプ60で締め付けられて、連結されている。
【0031】
エアバッグ65のバッグ本体66は、膨張完了時に、側方から見て略三角柱状に膨張して、底壁部67を乗員MPの大腿部MFに接するように配置させ、後壁部68を乗員MPの胸部MBを受止可能に配設させる。底壁部67には、導管部71からの膨張用ガスを流入させる流入口67aが開口されている。バッグ本体66の側面側には、ベントホール69が開口されている。膨張完了時のバッグ本体66は、乗員MPの胸部MB側が前方移動する際、胸部MB付近を後壁部68が受け止め、そして、底壁部67を大腿部MFに支持させて反力を確保できることから、後壁部68が底壁部67側に接近するように圧縮させる態様で、クッション性よく、乗員MPを受け止めて保護する。
【0032】
導管部71は、元部71a側に、インフレーター57のパイプ部59に接続される接続筒部72を設け、元部71aから離れた先端部71bに、内径形状を広げたガス貯留部74を設けて構成されている。ガス貯留部74には、バッグ本体66の流入口67aと連通するガス流出口74aが配設されている。ガス流出口74aの周縁は、バッグ本体66の流入口67a周縁に縫合等により結合されて、バッグ本体66が、導管部71に連結保持されている。そして、インフレーター57から供給される膨張用ガスは、ガス貯留部74で、一旦、滞留されて、ガス流出口74aと流入口67aとを経て、流入方向を左右にずらすことを抑えて、バッグ本体66内に流入することとなる。
【0033】
また、導管部71のガス貯留部74の外表面側には、バッグ用ベルト20を挿通させて、エアバッグ65をバッグ用ベルト20に連結させるベルト取付部76が配設されている。ベルト取付部76は、バッグ用ベルト20を挿通させる挿通孔76aを配設させた筒形状としている。そして、導管部71に取り付けられたベルト取付部76が、バッグ用ベルト20を挿通させて、バッグ用ベルト20に組み付けられることにより、エアバッグ65が、バッグ用ベルト20に保持されることとなる。
【0034】
このエアバッグ65は、バッグ本体66と導管部71とがバッグ用ベルト20の幅寸法より若干大きな幅寸法に折り畳まれて、カバー62に包まれて、バッグ用ベルト20におけるラップベルト部13から離れる面20c側に、配設されている(図3参照)。
【0035】
なお、バッグ用ベルト20は、リトラクタ24に連結される元部20b側から延びる先端20aを、ループ部21を利用して、タング30の連結部35に連結させて、タング30のバックル26への締結時に、折り畳まれたエアバッグ65を上面21c側に配置させた状態で、ラップベルト部13の上面13a側に位置するように、配設されている。そのため、タング30のバックル26への締結後に、エアバッグ65のバッグ本体66が膨張する際には、バッグ本体66は、ラップベルト部13やバッグ用ベルト20と干渉せずに、バッグ用ベルト20の上面21c上で、膨張して、乗員MPの胸部MBの前面側に配置可能となる。
【0036】
タング30は、図6~8に示すように、鋼板等からなる略板状として、先端側の幅寸法の小さい細幅部31と元部側の幅寸法の広い広幅部32とを設けた形状としている。そして、細幅部31は、広幅部32から若干折曲されて、バックル26に締結可能な締結部33を構成している。締結部33には、締結孔33aが形成されている。
【0037】
タング30の元部側の幅寸法の広い広幅部32は、締結部33から離れた端部側に、バッグ用ベルト20の先端20a側のループ部21を連結させる連結部35を配設し、締結部33と連結部35との間にシートベルト11を挿通させる挿通孔39を、配設させている。
【0038】
連結部35は、バッグ用ベルト20の先端20a側のループ部21を巻き掛ける連結杆部36と、連結杆部36に隣接する挿通孔39側に配置されて、バッグ用ベルト20のループ部21の周壁21aを挿通させる挿通用開口37と、を配設させて構成されている。
【0039】
また、タング30は、挿通孔39の周縁の表面43a側を、シートベルト11のショルダーベルト部12側とし、挿通孔39の周縁の裏面43b側を、シートベルト11のラップベルト部13側として、挿通孔39にシートベルト11を挿通させる構成としている。
【0040】
そして、タング30は、シートベルト11の引っ張り前には、リトラクタ15に引っ張られたシートベルト11に押えられ、かつ、シートベルト11に設けられた図示しない位置決め凸部で位置規制されて、背もたれ部2の上端3側で、締結部33を前方に向け、連結部35を後方に向ける状態として、待機される状態としている。なお、タング30が、背もたれ部2の上端3側の待機位置WPで待機される際には、バッグ用ベルト20も、先端20a側を、タング30の連結部35に連結させた状態で、背もたれ部2の上端3側に配置させることとなる。
【0041】
また、タング30は、挿通孔39と挿通用開口37との間の部位が、表面43a側をシートベルト11の摺動部位とする摺動案内部43としている。この摺動案内部43は、連結部35より表面43a側に隆起する凸形状(断面三角形状)として、連結部35の表面35a側より、高く構成されている(図7,8参照)。
【0042】
実施形態の場合、タング30の摺動案内部43は、連結部35の表面35a側より高くする寸法hを、バッグ用ベルト20の厚さ寸法tより大きく、かつ、3倍未満、すなわち、t<h<3t、の範囲内の二倍強の2.5mmとして、配設されている。
【0043】
さらに、摺動案内部43は、表面43a側を、連結部35側にかけて、裏面43b側より角度を付けて高くする傾斜面46としている。
【0044】
実施形態の場合、この摺動案内部43の傾斜面46は、傾斜角度θを40~60°の範囲内の50°としている。
【0045】
なお、タング30の挿通孔39は、摺動案内部43の裏面43b側では、拡開する内周面40として、締結部33側の内周面側部位40aでは、締結部側縁41の表裏に角張った縁41a,41bが配設されている。
【0046】
また、挿通孔39の内周面40における摺動案内部43側の内周面側部位40bでは、摺動案内部43の先端44が配置され、摺動案内部43の表裏の角張った縁44a,44bが配設されている。表面43aの縁44aは、傾斜面46の先端46aとしている。
【0047】
摺動案内部43における連結部35側となる元部45側は、実施形態の場合、摺動案内部43の厚さ寸法Hの厚さを抑えるように、裏面43bと略平行となるように天井面50aを設けた天井面部50としている。平面状の傾斜面46の先端46aから離れた元部46bと天井面50aとの境界部48は、曲面によって、緩やかに連なっている。摺動案内部43の元部45側では、連結部35の挿通用開口37側を、天井面部50の境界部48から離れた端縁50bから平面状の端面52として、挿通用開口37側に向けて傾斜させている。
【0048】
実施形態の場合、摺動案内部43自体の高さ寸法Hは、裏面43bから天井面部50の天井面50aまでの寸法であり、8.8mmとしている。また、挿通孔39の開口幅Wbは、2.6mmとしている。さらに、広幅部32の厚さ寸法Tは、3.2mmとし、挿通孔39の内周面側部位40aの裏面43b側からの角度βは、145°としている。
【0049】
実施形態の乗員保護装置10では、シート1に乗員MPが着座すれば、シートベルト11を装着するように、タング30を待機位置WPから引っ張ってバックル26に締結させる。その際、タング30は、図4,8に示す軌跡A1のように、締結部33側を、先頭として前方へ向けた状態で、背もたれ部2の上端3側の待機位置WPから、水平方向に前方移動させて、その後、バックル26側に向けて下向きに移動させたり、あるいは、図4,9に示す軌跡A2のように、締結部33側を下向きにして、背もたれ部2の上端3側の待機位置WPから、水平方向に前方移動させて、その後、バックル26側に向けて下向きに移動させて、バックル26に締結させる。あるいは、図4,10に示す軌跡B1のように、締結部33側を先頭として前方へ向けた状態で、乗員MPの肩口MSから斜め下向きに移動させ、そしてさらに、バックル26側に向けて下向きに移動させたり、あるいは、図4,11に示す軌跡B2のように、締結部33側を下向きにして乗員MPの肩口MSから斜め下向きに移動させ、そしてさらに、バックル26側に向けて下向きに移動させたりして、バックル26に締結させる。その際、タング30の挿通孔39の周縁における摺動案内部43の表面43a側を、シートベルト11が摺動しつつ、タング30が移動することとなるが、摺動案内部43の表面43a側が、連結部35の表面35a側より、高いことから、摺動案内部43を摺動するショルダーベルト部12は、その高さ分、バッグ用ベルト20と摺動することが抑制されて(図8参照)、シートベルト11とバッグ用ベルト20との相互の摺動による摩擦抵抗を低減でき、タング30の引張荷重の増加を抑制できて、タング30をバックル26に締結させて乗員MPにシートベルト11とバッグ用ベルト20とを円滑に装着することができる(図3参照)。そして、タング30をバックル26に締結すれば、シートベルト11のショルダーベルト部12を、乗員MPの胸部MBの前面側に配置させ、シートベルト11のラップベルト部13を、乗員の腰部の前面側に配置させ、さらに、バッグ用ベルト20を、ラップベルト部13の上面13a側に配置させることができ、その後、車両の衝突等によりインフレーター57のインフレーター本体58から膨張用ガスが吐出されて、パイプ部59から導管部71を経てバッグ本体66内に膨張用ガスが流入されて、カバー62を破断して、エアバッグ65のバッグ本体66が膨張すれば、前方移動する乗員MPを、シートベルト11と、バッグ用ベルト20に支持されたエアバッグ65のバッグ本体66とにより、的確に受け止めて保護できる。
【0050】
したがって、実施形態の乗員保護装置10では、エアバッグ65を保持したバッグ用ベルト20とシートベルト11とを、タング30を共用して使用しても、タング30の引張荷重の増加を抑制できて、円滑に両ベルト20,11を乗員MPに装着することができる。
【0051】
そして、実施形態の乗員保護装置10では、タング30の摺動案内部43が、表面43a側を、連結部35側にかけて、裏面43b側より角度を付けて高くする傾斜面46として、構成されている。
【0052】
そのため、実施形態では、両ベルト20,11の装着時におけるタング30の引張作業時、シートベルト11が、タング30の裏面43b側から表面43a側に挿通するように、挿通孔39を通過する。その際、シートベルト11は、タング30の裏面43b側に、固定端20b側に延びるラップベルト部13側を配設させ、タング30の表面43a側に、リトラクタ15側に延びるショルダーベルト部12側を配設させて、摺動案内部43の表面43a側の傾斜面46における締結部33側の先端46a側から連結部35側の元部46b側にかけて、摺動する。この時、摺動案内部43の表面43a側は、凸形状の高さを確保するための形態として、半円柱状等の曲面状とせずに、先端46a側から元部46b側に向かって立ち上るような平面状の傾斜面46を設けた形態としている。そのため、凸形状の確保のための半円柱状等の曲面状の摺動面では、その略全面でシートベルト11が摺動し易く、摺動抵抗が高くなるが、平面状の傾斜面46自体では、その略全面でシートベルト11が圧接した状態で摺動し難く、単に、傾斜面46の先端46a側と元部46b側との二点の縁部位で、シートベルト11がその幅方向で線状若しくは帯状に接触する状態となり易く、引張荷重の上昇を抑えて、タング30を引っ張ることができる。
【0053】
この場合、タング30の摺動案内部43の傾斜面46は、傾斜角度θを40~60°の範囲内の50°として、構成されている。
【0054】
すなわち、傾斜角度が40°未満と小さいと、例えば、タング30を、裏面43b側を略鉛直方向に沿わせて、下向きとして引き出す際(図4の軌跡B2、図11参照)、シートベルト11が、挿通孔39の締結部34側の縁41bから延びて、傾斜面46の先端46aから元部46bにかけての傾斜面46の略全面を面接触させつつ摺動する事態を招き易く、タング30の引張荷重を増加させ易くなる。また、傾斜角度が60°を越えるように大きいと、傾斜面46が立ち上がりすぎて、タング30の厚さ(高さ寸法)Hが厚くなりすぎることから、挿通用開口37との間に、厚さを小さくするように、頂部付近を、タング30の裏面43bと略平行に切除したような天井面50aを広く形成する必要が生ずる。その結果、タング30を、例えば、裏面43b側を略水平方向に沿わせて、前向きに引き出す際(図4の軌跡A1、図8参照)、シートベルト11が、傾斜面46の先端46a側では、縁44a部位に線接触するものの、傾斜面46の元部46b側において、摺動案内部43の元部45側の天井面50aに対し、広い範囲で面接触させつつ摺動することとなって、その際、傾斜角度θが大きければ、摺動抵抗を増加させる面接触の面積が広がることとなって、タング30の引張荷重を増加させ易くなる。そのため、実施形態では、タング30の摺動案内部43の傾斜面46の傾斜角度θを、40~60°の範囲内の50°として、タング30の引張荷重の増加が抑制されている。
【0055】
なお、シートベルト11のタング30との接触部位を説明すると、図4,8の軌跡A1では、傾斜面46の先端46a付近の接点A11と、天井面50a付近の接触面A12と、の二箇所で、接触している。また、シートベルト11は、ある程度の曲げ剛性を有しており、曲率半径を小さくして曲げることができず、傾斜面46との間に隙間eが発生している。
【0056】
図4,9の軌跡A2では、挿通孔39の締結部33側の縁41b付近の接点A21と、縁41a付近の接点A22と、傾斜面46の元部46b付近の接点A23と、天井面部50の端縁50b付近の接点A24と、連結部35に巻き掛けられたバッグ用ベルト20の外周側の接点A25,A26,A27と、の7箇所で接触している。
【0057】
図4,10の軌跡B1では、傾斜面46の先端46a付近の接点B11と、元部46b付近の接点B12と、の2箇所で接触している。
【0058】
図4,11の軌跡B2では、挿通孔39の締結部33側の縁41b付近の接点B21と、縁41a付近の接点B22と、傾斜面46の元部46b付近の接点B23と、天井面部50の端縁50b付近の接点B24と、連結部35に巻き掛けられたバッグ用ベルト20の外周側の接点B25,B26と、の6箇所で接触している。
【0059】
そしてまた、実施形態の乗員保護装置10では、タング30の摺動案内部43が、連結部35の表面35a側より高くする寸法をhとすると、バッグ用ベルト20の厚さ寸法をtとした場合、t<h<3tの範囲内とした高さ寸法として、配設されている。実施形態の場合、厚さ寸法tを約1.2mmとして、hは、約2,5mmとして、約2t分の高さとしている。
【0060】
そのため、実施形態では、摺動案内部43の表面43aが、連結部35より、バッグ用ベルト20の厚さ寸法t以上、高いことから、シートベルト11が、摺動案内部43の表面43a側からタング30の裏面43b側に沿ってリトラクタ15側に延びても、連結部35に巻き掛けられたバッグ用ベルト20と接触し難く、安定して、シートベルト11とバッグ用ベルト20との相互の摺動による摩擦抵抗を低減できて、タング30の引張荷重の増加抑制に寄与できる。また、タング30の摺動案内部43は、バッグ用ベルト20の厚さ寸法tの3倍を越えるような高さでないことから、タング30の厚さ(高さ寸法)Hを小さくできて、摺動案内部43付近を把持して、タング30を引き出す際、タング30を、容易に把持して、引っ張ることができる。さらに、摺動案内部43の高さが抑えられれば、既述した摺動案内部43の元部45側の天井面50aの面積も抑制できて、タング30の引張荷重の増加を抑制できる。
【0061】
また、実施形態の乗員保護装置10では、バッグ用ベルト20が、元部20b側を、バッグ用ベルト20を繰り出し可能なリトラクタ24に連結させて、配設されている。
【0062】
そのため、実施形態では、タング30を引っ張ってバックル26に締結させる際、バッグ用ベルト20を、シートベルト11と同様に、繰り出して、そして、繰り出し過ぎても、リトラクタ24により引き込ませることができて、乗員MPに的確にフィットするように、装着させることができる。
【0063】
なお、上記の点を考慮しなければ、バッグ用ベルト20の元部20b側は、リトラクタ24に連結させずに、シートベルト11の下端11b側と同様に、アンカ部材17等に連結固定させて、固定端としてもよい。
【0064】
また、実施形態では、バッグ用ベルト20に対し、エアバッグ65の導管部71に連結させたベルト取付部76を、取り付けて、エアバッグ65をバッグ用ベルト20に保持させるようにし、さらに、ベルト取付部76ごと、折り畳んだエアバッグ65をカバー62により包んだ構成を示した。しかし、図12~16に示すように、形状保持性を有したケース80を利用して、折り畳んだエアバッグ65をバッグ用ベルト20に保持させ、さらに、タング30のバックルへ26への締結時や締結後の待機位置WPに戻す際におけるバッグ用ベルト20とシートベルト11のラップベルト部13とのねじれを防止できるように、構成してもよい。
【0065】
このケース80は、形状保持性を有したポリプロピレン等の合成樹脂から形成されている。このケース80は、図12~16に示すように、底壁部81と、底壁部81に対して上下方向で対向するように配設される天井壁部83と、底壁部81と天井壁部83との前後の縁81b,83a相互と縁81c,83b相互とを連結するように配設される前壁部84及び後壁部85と、を備えた箱形状としている。さらに、このケース80では、左右の端面80b,80c側を、左右方向の中央80aより、下げて、乗員MPの大腿部MFの上面側にフィットするように、湾曲させた箱形状としている。なお、ケース80は、後述する中間壁部82と天井壁部83との間に、バッグ用ベルト20と折り畳んだエアバッグ65とを収納する収納部80dを配設し、中間壁部82の下面82b側に、ラップベルト部13を挿通させる挿通用通路80eを配設させて構成されている。
【0066】
詳しくは、ケース80は、タング30のバックル26への締結時における図12に示す配置状態を基準とすれば、ラップベルト部13を上面81a側に配置させる底壁部81と、バッグ用ベルト20を上面82a側に配置させ、かつ、ラップベルト部13を下面82b側に配設させた中間壁部82と、を備えている。そして、天井壁部83が、バッグ用ベルト20及び折り畳まれたエアバッグ65を介在させて、すなわち、収納部80dを介在させて、中間壁部82と対向するように配設されている。前壁部84と後壁部85とは、底壁部81のラップベルト部13及びバッグ用ベルト20の幅方向の前後両縁において、底壁部81と天井壁部83とを連結するように配設されている。また、ケース80は、ラップベルト部13とバッグ用ベルト20との挿通方向(図例では、左右方向)に沿った左右の両端面80b,80c側となる端面壁部86,87に配設されて、ラップベルト部13とバッグ用ベルト20とを挿通可能な挿通口86a,87aを、備えている。各挿通口86a,87aは、中間壁部82の部位で上下に区画されて、上部側が、バッグ用ベルト20を通す上開口部86a1,87a1とし、下部側が、ラップベルト部13を通す下開口部86a2,87a2としている。
【0067】
さらに、このケース80では、左右の両端面80b,80c間における底壁部81、中間壁部82、前壁部84、及び、後壁部85で囲まれ部位を、ラップベルト部13の断面形状と略同等の空間88として、ラップベルト部13を摺動可能に挿通させる既述の挿通用通路80e、としている。
【0068】
なお、前壁部84と後壁部85とは、バッグ用ベルト20とエアバッグ65を収納する上部側の本体部84a,85aと、下部側の左右方向に沿って断続的に配設されて後述する組付用係合部97からなる脚部84b,85bと、から構成され、挿通用通路80eの部位では、前壁部84と後壁部85とが、隙間84c,85cを明けた脚部84b,85bから形成される構成としている。
【0069】
また、このケース80は、天井壁部83、前壁部84と後壁部85との上部側(本体部84a,85a側)、中間壁部82、及び、両端面80b,80c側の挿通口86a,87aの上側周縁、を構成して、収納部80dを形成している上側部材95と、底壁部81、前壁部84と後壁部85との下部側(脚部84b,85b側)、及び、両端面80b,80c側の挿通口86a,87aの下側周縁、を構成する下側部材96と、から構成されている。上側部材95と下側部材96との前後の縁側には、相互に係合して、ケース80を組み立て可能な組付用係合部97が、配設されている。組付用係合部97は、下側部材96に設けられて、前後方向に突出する係合突起97bと、上側部材95に設けられて、前後方向に屈曲しつつ突出して、係合突起97bを外方側から覆って係止する係合凹部97aと、から構成されている。これらの組付用係合部97は、上側部材95と下側部材96の前後の両縁付近に、左右方向に沿って、複数(図例では、3個)配設されている。これらの組付用係合部97は、既述したように、前壁部84と後壁部85との下部側の脚部84b,85bを構成しており、上側部材95が、脚部84b,85bを構成する組付用係合部97の係合凹部97aを備え、下側部材96が、脚部84b,85bを構成する組付用係合部97の係合突起97bを備えることとなる。
【0070】
そして、下側部材96の底壁部81を構成する部位の上面81aに、ラップベルト部13を載せた状態で、上側部材95の下方から、下側部材96を当て、そして、左右方向にスライドさせて、各係合凹部97a内に、係合突起97bを係合させれば、組付用係合部97を構成する係合凹部97aと係合突起97bとが係合されて、上側部材95と下側部材96とが相互に組み付けられて、挿通用通路80e内にラップベルト部13を摺動可能に収納させた状態で、ケース80が組み立てられることとなる。
【0071】
また、ケース80は、天井壁部83側を、エアバッグ65の膨張時に、折り畳まれたエアバッグ65を突出させるように、開き可能なドア部91、として構成されている。ドア部91は、天井壁部83の後縁83b側となる上側部材95の後壁部85側に、ドア部91の回転中心となるインテグラルヒンジからなるヒンジ部92を設け、天井壁部83の前縁83a側となる上側部材95の前壁部84側に、エアバッグ65の膨張時に解除可能に、前壁部84側に対応して係合されるドア用係合部93、を設けて、配設されている。ドア用係合部93は、左右方向に沿って、複数(図例では5個)配設され、それぞれ、前壁部84側に前方へ突出するように配設される係合突起93bと、ドア部91側に設けられて、係合突起93bを挿入させて係止する係合環部93aと、から構成されている。
【0072】
そして、ドア用係合部93は、開いたドア部91における中間壁部82の上面82a側に、左右の挿通口86a,87aの上開口部86a1,87a1からバッグ用ベルト20を突出させつつ、折り畳んだエアバッグ65を収納し、そして、ドア部91を閉じて、係合環部93aに係合突起93bを挿入させ、ドア用係合部93を構成する係合環部93aと係合突起93bとを係合させれば、ドア部91が係合されて、上開口部86a1,87a1からバッグ用ベルト20を突出させた状態で、折り畳んだエアバッグ65とバッグ用ベルト20とを収納部80d内に収納することができる。
【0073】
なお、ドア部91には、天井壁部83が中央80aを左右の端面80b,80c側より高くしている湾曲形状としていても、円滑に開けるように、すなわち、左右方向に沿って分割されて開けるように、下面側に、前後方向に沿い、かつ、左右方向に並設された複数の薄肉の破断予定部94が、配設されている。図例の場合には、破断予定部94は、ドア用係合部93の間に、計4個配設されている。そのため、ドア部91が、エアバッグ65の膨張に伴なって、ヒンジ部92を回転中心として開く際、各破断予定部94を破断させて、五枚の分割体91aとして開くこととなる(図12の二点鎖線参照)。
【0074】
また、ケース80のシートベルト11への配設時には、まず、予め、導管部71を結合させたバッグ本体66を折り畳んで、折り崩れしないように、破断可能なテープ状のラッピング材99で包んでおき、その状態で、バッグ用ベルト20を左右の端面壁部86,87の挿通口86a,87aの上開口部86a1,87a1から突出させ、さらに、導管部71の元部71a側を左側の端面壁部86の挿通口86aの上開口部86a1から突出させて、上側部材95側のドア部91を閉じれば、ケース80の収納部80dに、折り畳んだエアバッグ65とバッグ用ベルト20とを収納することができる。
【0075】
なお、折り畳んだエアバッグ65のバッグ本体66は、ケース80の収納部80d内に収納されて、バッグ用ベルト20を中間壁部82の上面82a上でずらしても、端面壁部86,87の挿通口86a,87aの周縁86b,87bで位置規制されて、収納部80dから飛び出さない。また、折り畳まれたバッグ本体66は、バッグ用ベルト20を中間壁部82の上面82a側に押し付けることなって、その圧接力により、バッグ本体66と導管部71の先端部71bとを収納したケース80が、エアバッグ65ごと、バッグ用ベルト20に保持される態様となる。但し、バッグ用ベルト20は、折り畳まれたバッグ本体66によって、中間壁部82側に押し付けられているだけであり、ケース80に対して、挿通口86a,87aを挿通させて、相対的にずれ可能としている。そのため、タング30を利用してバッグ用ベルト20を、ラップベルト部13とともに、乗員MPの腰部MWの前方側に配置させた際、ケース80の左右方向の中央80aを、乗員MPの正面の中央に配置させるように、ケース80をバッグ用ベルト20に対してずらして調整することが可能となる。
【0076】
そして、折り畳んだエアバッグ65とバッグ用ベルト20とを、収納部80dに収納した後には、中間壁部82の下面82b側に、タング30から延びるラップベルト部13を配置させ、さらに、ラップベルト部13の下方から、底壁部81を構成する下側部材96を上側部材95に接近させ、相互の組付用係合部97の係合凹部97aと係合突起97bとを係合させて、下側部材96を上側部材95に組み付ければ、挿通用通路80eを設けたケース80を組み立てることができるとともに、挿通用通路80e内に、摺動可能にラップベルト部13を収納することができる。
【0077】
このような組み立ては、シート1上で行うこととなり、そして、導管部71の元部71aを、クランプ60を利用して、インフレーター57のパイプ部59に接続させ、タング30を、背もたれ部2の上端3側の待機位置WP側に配置させておく。
【0078】
そして、シート1に着座した乗員MPが、シートベルト11を装着するように、タング30を、バックル26に締結させたり、その後、締結を解除して、待機位置WP側に戻す際、ラップベルト部13が、ケース80の挿通用通路80e内を摺動して、ねじれを防止される。
【0079】
すなわち、このようなケース80を設けた乗員保護装置10Aでは、折り畳まれたエアバッグ65を収納するケース80が、形状保持性を有して、底壁部81側に、ラップベルト部13の断面形状と略同等の空間88を設けて、ラップベルト部13を摺動可能に挿通させる挿通用通路80eを配設させていることから、タング30をバックル26に締結させたり、あるいは、締結後に、タング30をバックル26から外して、背もたれ部2の上端3側の待機位置WPに戻す際、ラップベルト部13が、ケース80の挿通用通路80e内を通過する。その際、挿通用通路80eが、ラップベルト部13の断面形状と略同等の空間88を設けて、構成されていることから、ラップベルト部13がねじれずに、挿通用通路80eを挿通する。また、バッグ用ベルト20も、下面82b側でラップベルト部13を摺動させる中間壁部82の上面82a上で、ケース80の両端面80b,80cの挿通口86a,87aから出る状態としていることから、ラップベルト部13と平行に重なる状態を維持する。そのため、タング30をバックル26に締結させたり、あるいは、その後に、タング30を背もたれ部2の上端3側の待機位置WPに戻す際、シートベルト11のラップベルト部13とバッグ用ベルト20とが、タング30の引張荷重の増加を招くような、ねじれて相互に干渉する状態、を防止することができる。そして勿論、折り畳んだエアバッグ65を収納したケース80が、ラップベルト部13を円滑に挿通させる形状保持性を有していても、エアバッグ65の膨張時には、天井壁部83側のドア部91を開かせて、エアバッグ65のバッグ本体66を円滑に突出させることができる(図12,14の二点鎖線参照)。
【0080】
さらに、ケース80は、ポリプロピレン等の合成樹脂から形成されて、天井壁部83、前壁部84と後壁部85との上部側、中間壁部82、及び、両端面80b、80c側の挿通口86a,87aの上側周縁、を構成する上側部材95と、底壁部81、前壁部84と後壁部85との下部側、及び、両端面80b,80c側の挿通口86a,87aの下側周縁、を構成する下側部材96と、から構成されている。そして、上側部材95と下側部材96との前後の縁側に、相互に係合して、ケース80を組み立て可能な組付用係合部97が、配設されている。また、ドア部91が、上側部材95の後壁部85側に、ドア部91の回転中心となるインテグラルヒンジからなるヒンジ部92を設け、上側部材95の前壁部84側に、エアバッグ65の膨張時に解除可能に、前壁部84側の部位に対応して係合されるドア用係合部93、を設けて、配設されている。
【0081】
そのため、このような構成では、ケース80が、形状保持性を有した合成樹脂製として、バッグ用ベルト20とエアバッグ65のバッグ本体66とを収納する中間壁部82側の上側部材95と、ラップベルト部13を摺動させる底壁部81側の下側部材96と、の2部品として構成されて、上側部材95と下側部材96との対応する組付用係合部97を相互に係合させれば、簡便に、ケース80を組み立てることができる。さらに、上側部材95に配設されるドア部91も、ドア部91側と前壁部84側との対応するドア用係合部93を相互に係合させれば、折り畳んだエアバッグ65を、円滑に、ケース80内に収納しておくことができ、さらに、エアバッグ65の膨張時には、ドア部91側と前壁部84側との対応するドア用係合部93の相互の係合を解除させて、インテグラルヒンジからなるヒンジ部92を撓ませて、円滑に、ドア部91が開いて、ケース80からエアバッグ65のバッグ本体66を突出させることができる。
【0082】
なお、図例のケース80は、中央80aを左右の端面80b,80c側より高くした湾曲形状とした場合を示したが、図17に示すように、中央80aを左右の端面80b,80c側と同等の高さとして、直方体形状のケース80Aとしてもよい。このような構成では、湾曲していないことから、ドア部91の開き時、左右方向に直線状に延びるヒンジ部92を撓ませて、ドア部91が円滑に開くことができる。
【0083】
また、図例のケース80では、インテグラルヒンジからなるヒンジ部92を設けてドア部91を配設したが、ヒンジ部を設けずに、天井壁部83の前後の縁83a,83b側に、前壁部84と後壁部85とに対応させて、ドア用係合部93を配設して、天井壁部83側から構成されるドア部を、エアバッグ65の膨張時、前壁部84と後壁部85とから、外れるようにして、開かせるようにしてもよい。
【0084】
あるいは、天井壁部83の前後の縁83a,83b側に、前壁部84と後壁部85とに対応させて、係合解除し難いように、ドア用係合部93を配設して、天井壁部83側から構成されるドア部を、前壁部84と後壁部85とに連結させるとともに、そのドア部に、左右方向に延びる薄肉の破断予定部を配設し、エアバッグ65の膨張時、この薄肉の破断予定部を破断させて、前後に開く観音扉タイプとして、ドア部を構成してもよい。
【符号の説明】
【0085】
1…シート、2…背もたれ部、3…上端、3a…左縁、5…座部、6…左側部、7…右側部、10,10A…乗員保護装置、11…シートベルト、11a…上端、11b…(固定端)下端、12…ショルダーベルト部、13…ラップベルト部、15…(シートベルト用)リトラクタ、20…バッグ用ベルト、20a…先端、20b…(固定端側)元部、20c…(エアバッグ側の)面・上面、21…ループ部、21a…周壁、24…(バッグベルト用)リトラクタ、26…バックル、30…タング、33…締結部、35…連結部、35a…(連結部の)表面、36…連結杆部、37…挿通用開口、39…挿通孔、43…摺動案内部、43a…表面、43b…裏面、44…先端、45…元部、46…傾斜面、46a…先端、46b…元部、50a…天井面、65…エアバッグ、
80…ケース、80d…収納部、80e…挿通用通路、81…底壁部、81a…上面、82…中間壁部、82a…上面、82b…下面、83…天井壁部、83a…前縁、83b…後縁、84…前壁部、85…後壁部、86…(左)端面壁部、86a…挿通口、87…(右)端面壁部、87a…挿通口、91…ドア部、92…ヒンジ部、93…ドア用係合部、93a…係合環部、93b…係合突起、95…上側部材、96…下側部材、97…組付用係合部、97a…係合凹部、97b…係合突起、
θ…(傾斜面の)傾斜角度、WP…(タングの)待機位置、t…(ベルトの)厚さ寸法、h…(摺動案内部の連結部からの)高さ寸法、MP…乗員、MW…腰部、MB…胸部、MS…肩口。
図1
図2
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図4
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