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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】電力変換器の制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/493 20070101AFI20231003BHJP
【FI】
H02M7/493
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021575116
(86)(22)【出願日】2020-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2020003983
(87)【国際公開番号】W WO2021156923
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深澤 一誠
(72)【発明者】
【氏名】木下 雅博
(72)【発明者】
【氏名】山邉 健太
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-289775(JP,A)
【文献】特開平3-103076(JP,A)
【文献】特開2005-020947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の直流電源のそれぞれと共通の交流電源との間に接続された複数の電力変換器に対してそれぞれ設けられ、前記交流電源の交流電圧に基づいて、キャリア波をそれぞれ生成する複数のキャリア波生成部と、
前記複数の直流電源のそれぞれと共通の交流電源との間に接続された前記複数の電力変換器に対してそれぞれ設けられ、前記交流電源の交流電圧に基づいて、前記複数の電力変換器のそれぞれに対する電流制御用の交流電圧位相をそれぞれ生成する複数の電流制御用位相生成部と、
を備え、
前記複数の電流制御用位相生成部は、前記交流電源の交流電圧に対してフィルタを掛けたうえで前記複数の電力変換器のそれぞれに対する電流制御用の交流電圧位相をそれぞれ生成し、
前記複数のキャリア波生成部は、前記交流電源の交流電圧に対して前記複数の電流制御用位相生成部のそれぞれのフィルタよりも低速のフィルタを掛けたうえで前記複数の電力変換器のそれぞれに対するキャリア用交流電圧位相をそれぞれ生成する電力変換器の制御システム。
【請求項2】
複数の直流電源のそれぞれと共通の交流電源との間に接続された複数の電力変換器に対してそれぞれ設けられ、前記交流電源の交流電圧に基づいて、キャリア波をそれぞれ生成する複数のキャリア波生成部と、
前記複数の直流電源のそれぞれと共通の交流電源との間に接続された前記複数の電力変換器に対してそれぞれ設けられ、前記交流電源の交流電圧に基づいて、前記複数の電力変換器のそれぞれに対する電流制御用の交流電圧位相をそれぞれ生成する複数の電流制御用位相生成部と、
を備え、
前記複数のキャリア波生成部は、前記複数の電流制御用位相生成部のそれぞれが生成する電流制御用の位相を補正した位相に基づいてキャリア波をそれぞれ生成する電力変換器の制御システム。
【請求項3】
前記複数の電流制御用位相生成部は、前記交流電源の交流電圧に対してフィルタを掛けたうえで前記複数の電力変換器のそれぞれに対する電流制御用の交流電圧位相をそれぞれ生成し、
前記複数のキャリア波生成部は、前記複数の電流制御用位相生成部のそれぞれが生成する電流制御用の交流電圧位相に対してフィルタを掛けた信号に基づいて前記複数の電力変換器のそれぞれに対するキャリア波をそれぞれ生成する請求項に記載の電力変換器の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換器の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電力変換システムを開示する。当該電力変換システムによれば、複数の電力変換器のキャリア位相を同期させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本特開2019-24300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の電力変換システムにおいては、複数の電力変換器をそれぞれ制御する複数の制御装置の間で同期信号を通信する必要がある。このため、電力変換システムの構成が複雑になる。
【0005】
この発明は、上述の課題を解決するためになされた。この発明の目的は、より簡易な構成で、複数の電力変換器のキャリア位相を同期させることができる電力変換器の制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電力変換器の制御システムは、複数の直流電源のそれぞれと共通の交流電源との間に接続された複数の電力変換器に対してそれぞれ設けられ、前記交流電源の交流電圧に基づいて、キャリア波をそれぞれ生成する複数のキャリア波生成部前記複数の直流電源のそれぞれと共通の交流電源との間に接続された前記複数の電力変換器に対してそれぞれ設けられ、前記交流電源の交流電圧に基づいて、前記複数の電力変換器のそれぞれに対する電流制御用の交流電圧位相をそれぞれ生成する複数の電流制御用位相生成部と、を備え、前記複数の電流制御用位相生成部は、前記交流電源の交流電圧に対してフィルタを掛けたうえで前記複数の電力変換器のそれぞれに対する電流制御用の交流電圧位相をそれぞれ生成し、前記複数のキャリア波生成部は、前記交流電源の交流電圧に対して前記複数の電流制御用位相生成部のそれぞれのフィルタよりも低速のフィルタを掛けたうえで前記複数の電力変換器のそれぞれに対するキャリア用交流電圧位相をそれぞれ生成する。
この発明に係る電力変換器の制御システムは、複数の直流電源のそれぞれと共通の交流電源との間に接続された複数の電力変換器に対してそれぞれ設けられ、前記交流電源の交流電圧に基づいて、キャリア波をそれぞれ生成する複数のキャリア波生成部と、前記複数の直流電源のそれぞれと共通の交流電源との間に接続された前記複数の電力変換器に対してそれぞれ設けられ、前記交流電源の交流電圧に基づいて、前記複数の電力変換器のそれぞれに対する電流制御用の交流電圧位相をそれぞれ生成する複数の電流制御用位相生成部と、を備え、前記複数のキャリア波生成部は、前記複数の電流制御用位相生成部のそれぞれが生成する電流制御用の位相を補正した位相に基づいてキャリア波をそれぞれ生成する。

【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、複数の電力変換器のそれぞれにおいて、キャリア波は、共通の交流電源の交流電圧に基づいて生成される。このため、より簡易な構成で、複数の電力変換器のキャリア位相を同期させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1における電力変換器の制御システムが適用される電力システムの構成図である。
図2】実施の形態1における電力変換器の制御システムによるキャリア波の生成方法の一例を説明するための図である。
図3】実施の形態1における電力変換器の制御システムが適用される電力変換器の構成図である。
図4】実施の形態1における電力変換器の制御システムが適用される制御装置の構成図である。
図5】実施の形態1における電力変換器の制御システムが適用される制御装置の要部の概念図である。
図6】実施の形態1における電力変換器の制御システムが適用される制御装置のハードウェア構成図である。
図7】実施の形態2における電力変換器の制御システムが適用される制御装置の要部の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における電力変換器の制御システムが適用される電力システムの構成図である。
【0011】
図1の電力システムにおいて、複数の直流電源1は、屋外に設けられる。例えば、直流電源1は、太陽電池である。図1においては、4台の直流電源1が図示される。交流電源2は、電力会社等により運用される。分散電源用変換システム3は、複数の直流電源1と交流電源2との間に接続される。
【0012】
分散電源用変換システム3は、複数の電力変換器4と複数の直流側遮断器5と複数の交流側遮断器7と交流電源側遮断器8と制御システム9とを備える。
【0013】
複数の電力変換器4の各々の入力部は、複数の直流電源1の各々の出力部に接続される。複数の電力変換器4の各々は、複数の直流電源1の各々からの直流電力を交流電力に変換し得るように設けられる。
【0014】
複数の直流側遮断器5の各々は、複数の直流電源1の各々と複数の電力変換器4の各々との間に接続される。複数の直流側遮断器5の各々は、複数の直流電源1の各々と複数の電力変換器4の各々との間において過電流が発生した際に複数の直流電源1の各々と複数の電力変換器4の各々との間の接続を遮断し得るように設けられる。
【0015】
複数の交流側遮断器7の各々は、複数の電力変換器4の各々と交流電源2との間に接続される。複数の交流側遮断器7の各々は、複数の電力変換器4の各々の交流側において過電流が発生した際に複数の電力変換器4の各々と複数の変圧器6の各々との間の接続を遮断し得るように設けられる。
【0016】
交流電源側遮断器8は、複数の交流側遮断器7と交流電源2との間に設けられる。交流電源側遮断器8は、複数の交流側遮断器7と交流電源2との間において過電流が発生した際に複数の交流側遮断器7と交流電源2との接続を遮断し得るように設けられる。
【0017】
制御システム9は、複数の制御装置10を備える。複数の制御装置10の各々は、複数の電力変換器4の各々に設けられる。複数の制御装置10の各々は、電流制御用位相生成部11とキャリア波生成部12とを備える。
【0018】
電流制御用位相生成部11は、交流電源2の交流電圧に基づいて、対応した電力変換器4に対する電流制御用の交流電圧位相の計算結果をそれぞれ生成する。例えば、電流制御用位相生成部11は、交流電源2のU相電圧とV相電圧とW相電圧とに基づいてd軸電圧とq軸電圧とを算出した上で対応した電力変換器4に対する電流制御用の交流電圧位相の計算結果をそれぞれ生成する。
【0019】
キャリア波生成部12は、電流制御用位相生成部11とは別に、交流電源2の交流電圧に基づいて、対応した電力変換器4に対するキャリア波生成用の交流電圧位相の計算結果を生成する。キャリア波生成部12は、交流電圧位相の計算結果に基づいて、キャリア波を生成する。例えば、キャリア波生成部12は、交流電源2のU相電圧とV相電圧とW相電圧とに基づいてd軸電圧とq軸電圧とを算出した上で対応した電力変換器4に対するキャリア波生成用の交流電圧位相の計算結果をそれぞれ生成する。キャリア波生成部12は、キャリア波生成用の交流電圧位相の計算結果に、その位相が同期するようにキャリア波を生成する。
【0020】
次に、図2を用いて、キャリア波の生成方法の一例を説明する。
図2は実施の形態1における電力変換器の制御システムによるキャリア波の生成方法の一例を説明するための図である。
【0021】
図2おいて、θSは、キャリア波生成用の交流電圧位相の計算結果である。θは、時間とともに交流電源周期Tの間に0から2πの間でノコギリ波状に変化する周期信号となる。キャリア波cは、次の(1)式により計算される。
【0022】
c=mod(Nθs/(2π)、1) (1)
【0023】
ここで、Nは自然数である。mod(Nθs/(2π)、1)は、Nθs/(2π)を1で割った余りを表す。mod(Nθs/(2π)、1)は、次の(2)式を満たす。
【0024】
0≦mod(Nθs/(2π)、1)<1 (2)
【0025】
このとき、cは、0から1の間で時間とともに変化するノコギリ波となる。cの周期は、交流電圧の周期のN分の1となる。また、θS=0となる位相において、c=0となる。すなわち、cの位相は、交流電圧の位相に同期する。ここでは、cが交流電圧の位相の同期し、周期がN分の1となるノコギリ波となるキャリア波の生成方法を説明したが、交流電圧の位相に同期し、周期がN分の1となる三角波となるようにcを計算してもよい。
【0026】
次に、図3を用いて、電力変換器4の概要を説明する。
図3は実施の形態1における電力変換器の制御システムが適用される電力変換器の構成図である。
【0027】
図3に示されるように、電力変換器4は、U相上側スイッチング素子13aとU相下側スイッチング素子13bとV相上側スイッチング素子14aとV相下側スイッチング素子14bとW相上側スイッチング素子15aとW相下側スイッチング素子15bとを備える。
【0028】
U相上側スイッチング素子13aは、ゲート信号gupに基づいてスイッチング動作を行う。U相下側スイッチング素子13bは、ゲート信号gunに基づいてスイッチング動作を行う。V相上側スイッチング素子14aは、ゲート信号gvpに基づいてスイッチング動作を行う。V相下側スイッチング素子14bは、ゲート信号gvnに基づいてスイッチング動作を行う。W相上側スイッチング素子15aは、ゲート信号gwpに基づいてスイッチング動作を行う。W相下側スイッチング素子15bは、ゲート信号gwnに基づいてスイッチング動作を行う。
【0029】
次に、図4を用いて、ゲート信号の生成方法を説明する。
図4は実施の形態1における電力変換器の制御システムが適用される制御装置の構成図である。
【0030】
図4の(a)に示されるように、制御装置10は、電力制御部16と第1逆dq変換部17とU相比例制御部18とV相比例制御部19とW相比例制御部20とd軸ローパスフィルタ部21とq軸ローパスフィルタ部22と第2逆dq変換部23とを備える。
【0031】
電力制御部16は、交流電源2の有効電力Pと無効電力Qとに基づいてd軸電流指令値i とq軸電流指令値q とを算出する。第1逆dq変換部17は、電力制御部16からのd軸電流指令値i とq軸電流指令値i と電流制御用位相生成部11からの電流制御用の位相θとに基づいてU相電流指令値i とV相電流指令値i とW電流指令値i とを算出する。
【0032】
U相比例制御部18は、第1逆dq変換部17からのU相電流指令値i と交流電源2のU相電流実績値iとの偏差に対して比例制御を行う。V相比例制御部19は、第1逆dq変換部17からのV相電流指令値i と交流電源2のV相電流実績値iとの偏差に対して比例制御を行う。W相比例制御部20は、第1逆dq変換部17からのW相電流指令値i と交流電源2のW相電流実績値iとの偏差に対して比例制御を行う。
【0033】
d軸ローパスフィルタ部21は、交流電源2のd軸電圧実績値Vに対してローパスフィルタを掛ける。q軸ローパスフィルタ部22は、交流電源2のq軸電圧実績値Vに対してローパスフィルタを掛ける。
【0034】
第2逆dq変換部23は、d軸ローパスフィルタ部21からのd軸電圧実績値とq軸ローパスフィルタ部22からのq軸電圧実績値と電流制御用位相生成部11からの電流制御用の位相θとに基づいてU相電圧基準値vufとV相電圧基準値vvfとW相電圧基準値vwfとを算出する。
【0035】
U相電圧指令値v は、第2逆dq逆変換部からのU相電圧基準値vufとU相比例制御部18の出力値とを加算することで生成される。V相電圧指令値v は、第2逆dq逆変換部からのV相電圧基準値vvfとV相比例制御部19の出力値とを加算することで生成される。W相電圧指令値v は、第2逆dq逆変換部からのW相電圧基準値v とW相比例制御部20の出力値とを加算することで生成される。
【0036】
図4の(b)に示されるように、制御装置10は、U相比較部24とU相論理否定部25とU相デッドタイム生成部26とを備える。
【0037】
U相比較部24は、U相電圧指令値v とキャリア波生成部12に生成されたキャリア位相に基づいたキャリア波の値とを比較する。U相論理否定部25は、U相比較部24の比較結果を反転する。U相デッドタイム生成部26は、U相電圧指令値v がキャリア波の値よりも大きい場合にゲート信号gupを出力する。U相デッドタイム生成部26は、U相電圧指令値v がキャリア波の値よりも小さい場合にゲート信号gunを出力する。この際、U相デッドタイム生成部26は、ゲート信号gupの出力とゲート信号gunの出力との切り替えにデッドタイムを設ける。
【0038】
図4の(c)に示されるように、制御装置10は、V相比較部27とV相論理否定部28とV相デッドタイム生成部29とを備える。
【0039】
V相比較部27は、V相電圧指令値v とキャリア波生成部12に生成されたキャリア位相に基づいたキャリア波の値とを比較する。V相論理否定部28は、V相比較部27の比較結果を反転する。V相デッドタイム生成部29は、V相電圧指令値v がキャリア波の値よりも大きい場合にゲート信号gvpを出力する。V相デッドタイム生成部29は、V相電圧指令値v がキャリア波の値よりも小さい場合にゲート信号gvnを出力する。この際、V相デッドタイム生成部29は、ゲート信号gvpの出力とゲート信号gvnの出力との切り替えにデッドタイムを設ける。
【0040】
図4の(d)に示されるように、制御装置10は、W相比較部30とW相論理否定部31とW相デッドタイム生成部32とを備える。
【0041】
W相比較部30は、W相電圧指令値v とキャリア波生成部12に生成されたキャリア位相に基づいたキャリア波の値とを比較する。W相論理否定部31は、W相比較部30の比較結果を反転する。W相デッドタイム生成部32は、W相電圧指令値v がキャリア波の値よりも大きい場合にゲート信号gwpを出力する。W相デッドタイム生成部32は、W相電圧指令値v がキャリア波の値よりも小さい場合にゲート信号gwnを出力する。この際、W相デッドタイム生成部32は、ゲート信号gwpの出力とゲート信号gwnの出力との切り替えにデッドタイムを設ける。
【0042】
次に、図5を用いて、制御装置10の要部を説明する。
図5は実施の形態1における電力変換器の制御システムが適用される制御装置の要部の概念図である。
【0043】
図5の制御装置10において、電流制御用位相生成部11は、電流制御用dq変換部33と電流制御用フィルタ部34と電流制御用PLL制御部35とを備える。
【0044】
電流制御用dq変換部33は、交流電源2の交流電圧をdq変換する。電流制御用フィルタ部34は、電流制御用dq変換部33によりdq変換された交流電圧に対してフィルタを掛ける。電流制御用PLL制御部35は、電流制御用フィルタ部34によりフィルタを掛けられた交流電圧に基づいて電流制御用の位相を生成する。電流制御用の位相は、dq変換部にフィードバックされる。
【0045】
図5の制御装置10において、キャリア波生成部12は、キャリア用dq変換部36とキャリア用フィルタ部37とキャリア用PLL制御部38とを備える。
【0046】
キャリア用dq変換部36は、交流電源2の交流電圧をdq変換する。キャリア用フィルタ部37は、キャリア用dq変換部36によりdq変換された交流電圧に対してフィルタを掛ける。キャリア用PLL制御部38は、キャリア用フィルタ部37によりフィルタを掛けられた交流電圧に基づいてキャリア用の交流電圧位相の計算結果を生成する。キャリア用の交流電圧位相の計算結果は、dq変換部にフィードバックされる。
【0047】
以上で説明した実施の形態1によれば、複数の電力変換器4のそれぞれにおいて、キャリア波は、共通の交流電源2の交流電圧に基づいて生成される。それぞれのキャリア波の位相は、共通の交流電圧の位相に同期する。その結果、それぞれのキャリア波同士の位相は同期する。このとき、それぞれの電力変換器4に対応する制御装置間での通信を必要としない。このため、より簡易かつ安価な構成で、複数の電力変換器4のキャリア位相を同期させることができる。その結果、複数の電力変換器4の間において、横流を防止することができる。
【0048】
なお、キャリア波生成用の交流電圧位相の計算結果は、交流電源2の交流電圧に対してより低速のフィルタを掛けたうえで生成すればよい。この場合、交流電源2の位相、周波数、振幅変化等の影響を極力受けないようにすることができる。その結果、交流電源2の擾乱等により、複数の電力変換器4の間での交流電源2の交流電圧の観測結果において、過渡的な差が発生しても、複数の電力変換器4に対してキャリア位相の同期を保つことができる。また、交流電源2の周波数、電圧等が一時的に変動しても、ある程度の時間において安定したキャリア波を生成することができる。
【0049】
これに対し、電流制御用の交流電圧位相の計算結果は、交流電源2の交流電圧に対してより高速のフィルタを掛けたうえで生成すればよい。例えば、電流制御用の交流電圧位相の計算結果は、交流電源2の交流電圧に対してキャリア波生成用の交流電圧位相の計算結果を生成する際のフィルタよりも高速のフィルタを掛けたうえで生成すればよい。この場合、電流制御性をより良くすることができる。その結果、交流電源2の位相、周波数等の変化に対して素早く追従することができる。
【0050】
次に、図6を用いて、制御装置10の例を説明する。
図6は実施の形態1における電力変換器の制御システムが適用される制御装置のハードウェア構成図である。
【0051】
制御装置10の各機能は、処理回路により実現し得る。例えば、処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える。例えば、処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える。
【0052】
処理回路が少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える場合、制御装置10の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、少なくとも1つのメモリ100bに格納される。少なくとも1つのプロセッサ100aは、少なくとも1つのメモリ100bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、制御装置10の各機能を実現する。少なくとも1つのプロセッサ100aは、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。例えば、少なくとも1つのメモリ100bは、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD等である。
【0053】
処理回路が少なくとも1つの専用のハードウェア200を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。例えば、制御装置10の各機能は、それぞれ処理回路で実現される。例えば、制御装置10の各機能は、まとめて処理回路で実現される。
【0054】
制御装置10の各機能について、一部を専用のハードウェア200で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。例えば、電流制御用位相生成部11の機能については専用のハードウェア200としての処理回路で実現し、電流制御用位相生成部11の機能以外の機能については少なくとも1つのプロセッサ100aが少なくとも1つのメモリ100bに格納されたプログラムを読み出して実行することにより実現してもよい。
【0055】
このように、処理回路は、ハードウェア200、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせで制御装置10の各機能を実現する。
【0056】
実施の形態2.
図7は実施の形態2における電力変換器の制御システムが適用される制御装置の要部の概念図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0057】
実施の形態2の制御装置10において、キャリア波生成部12は、電流制御用位相生成部11が生成する電流制御用の位相を補正することでキャリア波生成用の交流電圧位相の計算結果を生成する。
【0058】
キャリア波生成部12は、キャリア用ゼロクロス検出部39とキャリア用比例制御部40とキャリア用フィルタ部41とを備える。
【0059】
キャリア用ゼロクロス検出部39は、交流電源2の交流電圧におけるゼロクロス点を検出する。キャリア用比例制御部40は、キャリア用ゼロクロス検出部39によるゼロクロス点の検出結果とキャリア波とに基づいてキャリア位相の補正量を算出する。キャリア用フィルタ部41は、電流制御用PLL制御部35により生成された電流制御用の交流電圧位相の計算結果に対してフィルタを掛ける。キャリア波生成用の交流電圧位相の計算結果は、キャリア用フィルタによりフィルタを掛けられた交流電圧位相の計算結果に対してキャリア用比例制御部40からの補正量を加算することで生成される。
【0060】
以上で説明した実施の形態2によれば、キャリア波生成部12は、電流制御用位相生成部11が生成する電流制御用の位相を補正することでキャリア位相を生成する。このため、実施の形態1と同様に、より簡易かつ安価な構成で、複数の電力変換器4のキャリア位相を同期させることができる。その結果、複数の電力変換器4の間において、横流を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、この発明に係る電力変換器の制御システムは、電力システムに利用できる。
【符号の説明】
【0062】
1 直流電源、 2 交流電源、 3 分散電源用変換システム、 4 電力変換器、
5 直流側遮断器、 6 変圧器、 7 交流側遮断器、 8 交流電源側遮断器、 9 制御システム、 10 制御装置、 11 電流制御用位相生成部、 12 キャリア波生成部、 13a U相上側スイッチング素子、 13b U相下側スイッチング素子、 14a V相上側スイッチング素子、 14b V相下側スイッチング素子、 15a W相上側スイッチング素子、 15b W相下側スイッチング素子、 16 電力制御部、 17 第1逆dq変換部、 18 U相比例制御部、 19 V相比例制御部、 20 W相比例制御部、 21 d軸ローパスフィルタ部、 22 q軸ローパスフィルタ部、 23 第2逆dq変換部、 24 U相比較部、 25 U相論理否定部、
26 U相デッドタイム生成部、 27 V相比較部、 28 V相論理否定部、 29 V相デッドタイム生成部、 30 W相比較部、 31 W相論理否定部、 32 W相デッドタイム生成部、 33 電流制御用dq変換部、 34 電流制御用フィルタ部、 35 電流制御用PLL制御部、 36 キャリア用dq変換部、 37 キャリア用フィルタ部、 38 キャリア用PLL制御部、 39 キャリア用ゼロクロス検出部、 40 キャリア用比例制御部、 41 キャリア用フィルタ部、 100a プロセッサ、 100b メモリ、 200 ハードウェア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7