(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】操作子及び電子楽器
(51)【国際特許分類】
G10H 1/32 20060101AFI20231003BHJP
H01H 21/02 20060101ALI20231003BHJP
G10H 1/053 20060101ALN20231003BHJP
【FI】
G10H1/32 A
H01H21/02 A
G10H1/053 C
(21)【出願番号】P 2022039927
(22)【出願日】2022-03-15
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 乙也
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-067486(JP,A)
【文献】特開2009-135069(JP,A)
【文献】特開2018-054860(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0043104(KR,A)
【文献】中国実用新案第213150630(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/32-1/34
G06F 3/02
H01H 19/00-21/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光源部と、
回転可能な有軸部と、
前記有軸部に回転操作可能に取り付けられ、略円板状とされた操作部と、を備え、
前記操作部は、入射した前記光源部からの光を導光する導光部材、及び該導光部材の一方の板面側に配置されるホイール部材を有し、
前記有軸部は、
軸周りに回転可能な軸状の挟持部を有し、
前記導光部材は、前記挟持部が挿通される第1貫通孔を有し、
前記挟持部は、前記第1貫通孔の開口内において、前記導光部材を
自身と前記ホイール部材との間に挟持す
る、
操作子。
【請求項2】
前記挟持部は、
前記第1貫通孔の開口内において、前記導光部材と当接する第1当接面を有し、
前記導光部材は、
前記第1貫通孔の開口内において、前記第1当接面と当接する第2当接面を有する、
請求項1に記載の操作子。
【請求項3】
前記第1当接面は、
半月状の面であり、
前記第2当接面は、前記第1
当接面と当接する半月状の面である、
請求項2に記載の操作子。
【請求項4】
前記導光部材は、入射した前記光源部からの光をその径方向に導光し、
前記第2当接面は前記径方向において前記光源部と重ならない位置に設けられている、
請求項
2又は3に記載の操作子。
【請求項5】
前記第1当接面及び前記第2当接面は、前記
挟持部の軸方向と直交する、
請求項
2~4
のいずれか1項に記載の操作子。
【請求項6】
前記ホイール部材は、前記
挟持部が挿通される第2貫通孔を有し、
前記第2貫通孔に前記
挟持部が圧入されている、
請求項
1~5のいずれか1項に記載の操作子。
【請求項7】
前記導光部材と前記ホイール部材
とが両面テープを介して貼り合わされている、
請求項1~6のいずれか1項に記載の操作子。
【請求項8】
前記導光部材は、前記第1貫通孔の周囲において前記ホイール部材側へと隆起する隆起部を有し、
前記ホイール部材は、前記隆起部に対応して当接する嵌め込み凹部を有する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の操作子。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の操作子を備える電子楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作子及び電子楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子ピアノ等の電子楽器において、楽音にピッチベンド等の演奏効果を付与するための操作子を備えるものが知られている。この種の電子楽器において、発光部を有し、操作子の操作態様、即ち演奏効果の制御態様に応じて発光する光を導光する導光部材を備えるものが提案されている。例えば特許文献1には、演奏効果の制御態様に応じて発光する発光部と、演奏効果を制御するための回転操作可能なピッチベンダーホイールユニット(操作子)とを備えた電子鍵盤楽器が開示されている。この電子鍵盤楽器では、ピッチベンダーホイールユニットのピッチベンダーホイールに発光部からの光を導光する導光板が組付けられており、ピッチベンダーホイールの回転に伴って回転するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の電子鍵盤楽器では、導光板の一方の板面がピッチベンダーホイールに組付けられており、他方の板面は外部に露出した状態とされている。このため、ピッチベンダーホイールユニットの回転操作が繰り返し行われることにより、導光板の位置ずれや脱落等が発生する虞があり、導光板の信頼性を十分に確保することができなかった。
【0005】
本発明は、操作態様に応じた光を導光する導光部材の信頼性が高められた操作子及びそのような操作子を備える電子楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の操作子は、光を出射する光源部と、回転可能な有軸部と、前記有軸部に回転操作可能に取り付けられ、略円板状とされた操作部と、を備え、前記操作部は、入射した前記光源部からの光を導光する導光部材、及び該導光部材の一方の板面側に配置されるホイール部材を有し、前記有軸部は、軸周りに回転可能な軸状の挟持部を有し、前記導光部材は、前記挟持部が挿通される第1貫通孔を有し、前記挟持部は、前記第1貫通孔の開口内において、前記導光部材を自身と前記ホイール部材との間に挟持する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、操作態様に応じた光を導光する導光部材の信頼性が高められた操作子及びそのような操作子を備える電子楽器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る電子鍵盤楽器の全体斜視図である。
【
図2】実施形態に係る電子鍵盤楽器における左ケースを右側から見た斜視図である。
【
図3】実施形態に係るピッチベンダーを右側前方から見た斜視図である。
【
図4】実施形態に係るピッチベンダーを左側前方から見た斜視図である。
【
図5】実施形態に係るピッチベンダーの分解斜視図である。
【
図6】実施形態に係るピッチベンダーの操作ホイールを右側から見た側面図であって、操作ホイールの回転態様を示す側面図である。
【
図7】実施形態に係るピッチベンダーの導光部材の斜視図であって、(a)は導光部材を前方右側から見た斜視図であり、(b)は導光部材を前方左側から見た斜視図である。
【
図8】実施形態に係るピッチベンダーにおいて固定金具に取り付けられた可変抵抗器に操作ホイールを取り付ける様子を示す斜視図である。
【
図9】実施形態に係るピッチベンダーの断面図であって、
図3におけるIX-IX断面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1に示す電子鍵盤楽器(電子楽器)10は、複数の白鍵と複数の黒鍵を有する鍵盤部20、及びケース30を備えている。ケース30の内部には、図示しない制御基板等が収納される。なお、各図には座標軸を示しており、以下では、各図におけるX軸方向を電子鍵盤楽器10の左右方向(X軸正方向を左方向とする)とし、各図におけるY軸方向を電子鍵盤楽器10の前後方向(Y軸正方向を前方向とする)とし、各図におけるZ軸方向を電子鍵盤楽器10の上下方向(Z軸正方向を上方向とする)として説明する。
【0010】
ケース30は、左右方向を長手方向とする横長矩形状であり、合成樹脂製とされ、上ケース32、下ケース34、左ケース36、及び右ケース38に分割される。上ケース32の上面の一部には、楽音のボリュームを制御するためのダイヤル12が設けられている。
図2に示すように、左ケース36は、その上面を構成する上面パネル36a、及びその側壁を構成するケース側壁36bを有している。上面パネル36aの前側部分には、楽音にピッチベンドを付与して制御するためのピッチベンダー(操作子)40の一部(後述する操作ホイール44)が露出する操作開口部36a1が設けられている。上面パネル36aの後側部分には、ピッチベンダー40に設けられた各LED43a~43c(
図5等参照)の発光を開始又は停止するための発光ボタン14、及び各種設定用の設定ボタン16が設けられている。また、ケース側壁36bの前面には、イヤホンジャック18が設けられている。
【0011】
左ケース36の内面側には、フレーム状の部材である内部フレーム37が設けられている。内部フレーム37の内側には、発光ボタン14及び設定ボタン16の押下動作等を受け付ける第1基板37a、イヤホンジャック18における挿抜動作を受け付ける第2基板37b、及びピッチベンダー40等が取り付けられている。第1基板37aと第2基板37bの間、及び第1基板37aとピッチベンダー40の間は図示しない接続配線により電気的に接続されている。また、第1基板37a及び第2基板37bは、図示しない接続配線により電子鍵盤楽器10の制御基板と電気的に接続されている。
【0012】
ピッチベンダー40の構成について詳しく説明する。
図3~
図5に示すように、ピッチベンダー40は、可変抵抗器(有軸部)41と、固定金具42と、光源基板43と、操作ホイール(操作部)44と、トーションばね45と、保持部材46とを備えている。操作ホイール44は、略円板状をなしており、ホイール部材47、導光部材48、及びホイール部材47と導光部材48との間を貼り合わせるための両面テープ49を有している(
図5参照)。左ケース36の操作開口部36a1からは、操作ホイール44の上側部分が露出する。
【0013】
可変抵抗器41は、回転可能なロータリー式の可変抵抗器であり、センサ前部41a、センサ後部41b、軸状部(挟持部)41c、及びセンサ前部41aの下側から延びる3つの配線接続部41dを有している。センサ前部41aは略円柱状をなしており、センサ後部41bはセンサ前部41aより細い略円筒状をなしてセンサ前部41aの左側から左方に突出している。センサ前部41a及びセンサ後部41bは、回転角度センサを構成している。
【0014】
軸状部41cは、左右方向に沿って軸状に延びており、右側端部がセンサ後部41bの円筒内側に挿入され、その軸周りに回転可能とされている。軸状部41cは、センサ後部41bから露出する部分の断面がセンサ後部41bとの境界部近傍を除いて略半月状とされている。各配線接続部41dには、第1基板37aと接続された接続配線が接続される。可変抵抗器41は、センサ前部41a及びセンサ後部41bにおいて軸状部41cの回転に応じて変化する抵抗値から軸状部41cの回転角度を検出し、その回転角度を電気信号に変換して接続配線を介して第1基板37aに出力する。
【0015】
固定金具42は、ピッチベンダー40を構成する各部材を互いに固定するとともにピッチベンダー40を内部フレーム37に固定するための金具であり、その断面が略L字状となっている(
図9参照)。固定金具42は、両板面を上下方向に向けた姿勢で配置される平板状の平板部42a、平板部42aの右側端部から両板面を左右方向に向けた姿勢で平板状に立ち上がる立壁部42bを有している。また、固定金具42は、平板部42aの左側端部の一部から下方に延びる第1ネジ止め部42c、及び立壁部42bの立ち上がり先端部の前後両側からそれぞれ右方に平板状に延びる第2ネジ止め部42dを有している。固定金具42は、第1ネジ止め部42c及び第2ネジ止め部42dがそれぞれ内部フレーム37にネジ止めされることにより、内部フレーム37に対して固定される。
【0016】
両第2ネジ止め部42dが延びる立壁部42bの内側には、上方向に開放されて上下方向に沿って延びる一対のスリット42b1が設けられている。両スリット42b1の内側には、両第2ネジ止め部42dよりも上方に延びる平板状の抵抗固定部42b2が設けられている。抵抗固定部42b2のうち両第2ネジ止め部42dよりも上方に位置する部位には、円形状に開口し、可変抵抗器41のセンサ後部41bが挿通される固定開口部42b3が設けられている。可変抵抗器41は、センサ後部41bが固定開口部42b3に挿通された状態でボルト締めされることにより、抵抗固定部42b2に接続される。抵抗固定部42b2は、その両側にスリット42b1が設けられていることにより、固定金具42が内部フレーム37に固定された状態において、固定金具42の他の部位に比して左右方向(軸状部41cの軸方向)における可撓性を有している。
【0017】
光源基板43は、両板面を上下方向に向けた姿勢で配置される平板状のプリント基板である。光源基板43は、固定金具42の平板部42a上に配置され、ネジ止めにより平板部42aに対して固定される。光源基板43上には、それぞれ異なる波長帯域光を出射する3つのLED(光源部)43a,43b,43cが設けられている。各LED43a~43cは、前後方向に沿って直線状に等間隔で配置されており、光源基板43の上方に向けて光を出射する。また、光源基板43の下面には略直方体状の光源接続部43dが設けられている(
図9参照)。光源接続部43dには、第1基板37a側から延びる接続配線が接続される。なお、固定金具42における平板部42aと光源基板43との間には、両者の間を絶縁するための絶縁板IPが挟み込まれる。
【0018】
操作ホイール44は、可変抵抗器41の軸状部41cに取り付けられ、軸状部41cと共に軸状部41cの軸周りに回転する。操作ホイール44の上面の一部には、略円弧状に凹んでなる操作凹部44aが設けられている。操作凹部44aは、左ケース36の操作開口部36a1から露出しており、操作者が操作ホイール44を回転操作する際、指等を載せることで回転操作し易いように設けられている。
図6に示すように、操作ホイール44は、操作凹部44aが鉛直上方に向けられた姿勢が初期状態P0とされ、初期状態P0から軸状部41cの軸周りに前方側へ45度回転させた第1状態P1、後方側へ45度回転させた第2状態P2、の範囲内で回転操作することができる。
【0019】
操作ホイール44のホイール部材47は、合成樹脂製とされ、下側部分において円の1/4程度が欠けた略扇形状の板状部材である。ホイール部材47の端縁のうち下側部分を除いた部分には、右方に向けて壁状にわずかに延びる外壁部47aが設けられている(
図5参照)。外壁部47aの上側部分の前後方向中央部には、円弧状に凹んでなり、操作凹部44aの一部を構成するホイール側凹部47a1が設けられている。ホイール部材47の略中心部には、軸状部41cの断面形状に沿って略半月状に開口し、左右方向に貫通するホイール側貫通孔(第2貫通孔)47bが設けられている。ホイール部材47は、ホイール側貫通孔47bに軸状部41cが挿通されることにより、軸状部41cに対して固定される。
【0020】
また、ホイール部材47の左側板面におけるホイール側貫通孔47bの周りには、左方に張り出すホイール側張出部47cが設けられている。ホイール側張出部47cは、ホイール部材47を上方側から見たときにホイール側貫通孔47bが隠れるように左側から見て略L字状に設けられている。また、ホイール部材47の左側板面には、左方に向けて略円筒状に突出するばね固定部47dが設けられている(
図3参照)。上述したホイール側貫通孔47bは、ばね固定部47dの内側を貫通する形で設けられている。ばね固定部47dの下側には、両板面を上下方向に向けた姿勢で左方に略平板状に張り出す第1ばね当接部47eが設けられている。第1ばね当接部47eの板面は、下側に凸となるように緩やかに湾曲している。
【0021】
操作ホイール44の導光部材48は、略円板状をなしており、透光性に優れた材料(例えばアクリル樹脂)で設けられている。
図6に示すように、導光部材48は、各LED43a~43cとの間にわずかな隙間を設けた形で光源基板43の上方に配置され、各LED43a~43cから出射された光がその下側部分から入射するようになっている。導光部材48は、その左側板面がホイール部材47の外壁部47aの内側に位置する板面に両面テープ49を介して貼り付けられ、ホイール部材47と共に軸状部41cの軸周りに回転する。両面テープ49の略中央部には、軸状部41cが挿通されるテープ側貫通孔49aが設けられている。このようにホイール部材47は、導光部材48の一方の板面側に配置されて導光部材48を支持している。
【0022】
導光部材48の端縁48aには、その上側部分の前後方向中央部に、ホイール側凹部47a1と略同形状で略円弧状に凹んでなり、操作凹部44aの一部を構成する導光側凹部48a1が設けられている。導光部材48の略中央部には、左右方向に貫通する導光側貫通孔(第1貫通孔)48bが設けられている。導光部材48は、導光側貫通孔48bに軸状部41cが挿通され、ホイール部材47と共に軸状部41cの軸周りに回転する。導光部材48の右側板面における導光側貫通孔48bの周りには、右方に張り出す導光側張出部48cが設けられている。導光側張出部48cは、導光部材48を上方側から見たときに導光側貫通孔48bが隠れるように右側から見て略L字状に設けられている。なお後述するように、導光部材48はその一部が可変抵抗器41の一部と当接しており、これにより、導光部材48はホイール部材47と可変抵抗器41との間に挟持されている。
【0023】
トーションばね45は、コイルばね部45aと一対の付勢部45bを有している。コイルばね部45aは、コイルばねであり、ばね固定部47dの外周面周りに巻かれた状態でばね固定部47dに固定されている。コイルばね部45aの両端は、ばね固定部47dの下方まで延びている。一対の付勢部45bは、コイルばね部45aの両端に挿通された細長い円筒状のゴム部材によりなっている。一対の付勢部45bは、操作ホイール44が初期状態P0の位置とされている場合、その内側部分が第1ばね当接部47eを挟持する形で第1ばね当接部47eを付勢しながら第1ばね当接部47eと当接する。
【0024】
保持部材46は、合成樹脂製とされ、トーションばね45の位置を保持するための部材である。保持部材46は、底部46a及び側板部46bを有している。底部46aは、光源基板43の上方に配置され、各LED43a~43cの光出射側を覆わないような形状とされている。底部46aの前後両側は上方に向けてブロック状にわずかに立ち上がっており、その内面が操作ホイール44の外周面に沿って曲面状に凹んでいる。側板部46bは、両板面を左右方向に向けた姿勢で底部46aの左側端部からホイール部材47のばね固定部47dに至るまで平板状に立ち上がっている。側板部46bの先端部には、ばね固定部47dの外周面に沿って略円弧状に切り欠かれたホイール受け部46b1が設けられている。ホイール受け部46b1は、ばね固定部47dとの間にわずかな隙間を設けて近接している。
【0025】
また、側板部46bの右側板面のうち第1ばね当接部47eより下側に位置する部分には、両板面を上下方向に向けた姿勢で右方に略平板状に張り出す第2ばね当接部46cが設けられている。第2ばね当接部46cの板面は、下側に凸となるように緩やかに湾曲しており、第1ばね当接部47eと略等しい幅とされている。トーションばね45の一対の付勢部45bは、操作ホイール44が初期状態P0の位置とされている場合、第1ばね当接部47eの下側において、その内側部分が第2ばね当接部46cを挟持する形で第2ばね当接部46cを付勢しながら第2ばね当接部46cと当接する。
【0026】
以上のような構成とされたピッチベンダー40では、操作ホイール44が回転操作されると、可変抵抗器41の軸状部41cが操作ホイール44と連動し、軸状部41cがその軸周りに回転する。軸状部41cが回転すると、可変抵抗器41がその回転角度を電気信号に変換し、当該電気信号を第1基板37aに出力する。第1基板37a側に出力された電気信号は、第1基板37aを介して電子鍵盤楽器10の制御基板に出力され、制御基板で解析制御されて、電子鍵盤楽器10の楽音に操作ホイール44の回転角度に応じたピッチベンド効果が付与される。
【0027】
また、ピッチベンダー40では、操作ホイール44が前方側に回転操作された場合、ホイール側張出部47cがトーションばね45の前方側の付勢部45bを間に挟む形で第2ばね当接部46cの前方側と間接的に当接し、操作ホイール44が初期状態P0から前方側に45度回転した第1状態P1で操作ホイール44の前方側への回転が規制される。同様に操作ホイール44が後方側に回転操作された場合、ホイール側張出部47cがトーションばね45の後方側の付勢部45bを間に挟む形で第2ばね当接部46cの後方側と間接的に当接し、操作ホイール44が初期状態P0から後方側に45度回転した第2状態P2で操作ホイール44の後方側への回転が規制される。なお、操作ホイール44を回転操作可能な範囲内では、操作ホイール44に設けられたホイール側張出部47c及び導光側張出部48cにより、操作開口部36a1から光源基板43等が視認されることが防止される。
【0028】
また、ピッチベンダー40では、操作ホイール44が回転操作されると、トーションばね45の一対の付勢部45bのうち一方側は第1ばね当接部47eと当接した状態で第2ばね当接部47eから離間して回転し、他方側は第2ばね当接部47eと当接した状態で第1ばね当接部47eから離間して、一対の付勢部45bの間隔が広がる。このため、操作ホイール44が初期状態P0から回転操作された状態では、操作ホイール44の操作凹部44aから指等を離すと、トーションばね45の弾性復帰力により、操作ホイール44が初期状態P0の位置まで戻るようになっている。即ち、保持部材46(第2ばね当接部47e)によりトーションばね45の位置が保持される。
【0029】
また、ピッチベンダー40では、制御基板により、楽音に付与されるピッチベンド効果や他の操作態様等に応じて各LED43a~43cの発光態様が制御される。具体的には、制御基板は、各LED43a~43cの発光色や発光間隔等を変化させる制御を行う。各LED43a~43cから出射された光は、導光部材48の端縁48aの下側部分から入射して拡散され、導光部材48内でその径方向に導光される。導光部材48内で導光された光は、導光部材48の端縁48aの上側部分から出射され、そのうち操作開口部36a1の外側に出射された光を演奏者が視認できるようになっている(
図9で示す光路L1参照)。これにより、演奏者は、電子鍵盤楽器10の楽音制御状態を知ることができる。
【0030】
次に、導光部材48と可変抵抗器41との当接部分に関する構成について詳しく説明する。
図7(b)に示すように、導光部材48の左側板面の略中央部には、左方に向けて略円錐台状に隆起する隆起部48dが設けられている。導光側貫通孔48bは、隆起部48dを貫通する形で設けられている。
図7(a)及び(b)に示すように、導光側貫通孔48bの開口内のうち、隆起部48dに位置する部分の開口形状は略半月状とされ、その他の部分の開口形状は円形状とされている。このため、導光側貫通孔48bの開口内において隆起部48dに位置する部分とその他の部分との境界部には段差が設けられており、この段差を構成する段差面が可変抵抗器41の一部と当接する導光側当接面(第2当接面)48b1となっている。導光側当接面48b1は、軸状部41cの軸方向(左右方向)と直交する。
【0031】
ホイール部材47の略中央部には、ホイール部材47と導光部材48が重なる際に隆起部48dが嵌め込まれるように凹んでなる嵌め込み凹部47fが設けられている(
図5参照)。ホイール側貫通孔47bは、嵌め込み凹部47fを貫通する形で設けられている。また、両面テープ49に設けられたテープ側貫通孔49aは、両面テープ49が導光部材48の左側板面に貼り付けられた際にその開口端が隆起部48dの周りを囲むような大きさとされている。このため、ホイール部材47と導光部材48の間が両面テープ49を介して貼り合わされると、導光部材48の隆起部48dがホイール部材47の嵌め込み凹部47fに嵌め込まれ、隆起部48dの外面が嵌め込み凹部47fの内面と当接する(
図9参照)。
【0032】
なお、
図7(b)に示すように、導光部材48の端縁48aのうち左側略半分の領域には、ホイール部材47と導光部材48の間が貼り合わされた際にホイール部材47の外壁部47aの前後両端部とそれぞれ近接又は当接する回り止め部48eが設けられている。このため、ホイール部材47と導光部材48の間の粘着力が弱まった場合等に、導光部材48に対してホイール部材47から独立して回転する回転力が加わったとしても、回り止め部48eが外壁部47aと干渉し、導光部材48がホイール部材47から独立して回転することが防止される。
【0033】
一方、
図8に示すように、可変抵抗器41の軸状部41cは、センサ後部41bとの境界部近傍の断面が円形状とされ、他の部分の断面が略半月状とされている。このため、軸状部41cには、断面が円形状とされた部分と断面が略半月状とされた部分との境界部に段差が設けられており、この段差を構成する段差面が導光部材48の導光側当接面48b1と当接する抵抗側当接面(第1当接面)41c1となっている。抵抗側当接面41c1は、軸状部41cの軸方向(左右方向)と直交する。
【0034】
次に、可変抵抗器41と操作ホイール44の組付け態様について説明する。
図8に示すように、ピッチベンダー40の組付け工程では、可変抵抗器41、固定金具42、及び光源基板43が組付けられたユニット(以下、「抵抗器ユニットRU」という。)と、ホイール部材47、導光部材48、及びトーションばね45が組付けられたユニット(以下、「ホイールユニットWU」という。)と、が互いに組付けられ、その後に保持部材46が組付けられる。
【0035】
抵抗器ユニットRUとホイールユニットWUとを組み付ける場合、可変抵抗器41の抵抗側当接面41c1が導光部材48の導光側当接面48b1と当接するように抵抗器ユニットRUを位置決めする。そして、抵抗側当接面41c1が導光側当接面48b1と当接するまで、可変抵抗器41の軸状部41cを導光側貫通孔48b及びホイール側貫通孔47bに挿入する。このとき、ホイール側貫通孔47bには、軸状部41cを圧入により挿入する。以上の手順により、抵抗器ユニットRUとホイールユニットWUが組付けられる。その後、保持部材46のホイール受け部46b1にホイール部材47のばね固定部47dを保持させ、底部46aを固定金具42の平板部42aにネジ止めすることにより、本実施形態に係るピッチベンダー40を組付けることができる。
【0036】
以上のようにして組付けられたピッチベンダー40では、
図9に示すように、抵抗側当接面41c1と導光側当接面48b1とが当接することにより、可変抵抗器41の軸状部41cとホイール部材47の嵌め込み凹部47fとの間に導光部材48の隆起部48dが挟持される。換言すれば、可変抵抗器41は、ホイール部材47との間で導光部材48を挟持する。このように導光部材48が可変抵抗器41とホイール部材47との間に挟持されることにより、導光部材48が両者の間で保持されるため、導光部材48の位置ずれや脱落が発生することが防止されるようになっている。
【0037】
また、ピッチベンダー40では、各LED43a~43cから出射された光は、導光部材48の下側部分から入射し、導光部材48の板面内をその径方向に導光されて導光部材48の上側部分から出射される。ここで、ピッチベンダー40では、隆起部48dが導光部材48の左側板面から左方に隆起しており、可変抵抗器41の抵抗側当接面41c1と当接する導光側当接面48b1が隆起部48dの内側に設けられている。即ち、導光部材48と可変抵抗器41との当接部分が導光部材48の板面から左側にずれた位置に設けられ、導光側当接面48b1が導光部材48の径方向において各LED43a~43cと重ならないようになっている。このため、導光部材48の板面内をその径方向に導光される光の光路L1上に導光部材48と可変抵抗器41との当接部分の構造に起因する凹凸が存在せず、当該当接部分の構造が導光部材48内の光の導光に影響を及ぼすことが防止されている。
【0038】
以上説明したように本実施形態に係るピッチベンダー40は、光を出射する複数のLED43a~43cと、回転可能な可変抵抗器41と、可変抵抗器41に回転操作可能に取り付けられ、略円板状とされた操作ホイール44と、を備えている。そして、操作ホイール44は、入射した各LED43a~43cからの光を導光する導光部材48、及び導光部材48の左側の板面側に配置されるホイール部材47を有しており、可変抵抗器41は、導光部材48を挟持する軸状部41cを有する。
【0039】
ピッチベンダー40が上記のような構成とされていることにより、導光部材48は、可変抵抗器41の軸状部41cにより挟持されて保持され、導光部材48が軸状部41cの軸方向(左右方向)やその板面方向(上下方向及び前後方向)に移動することが防止ないし抑制される。その結果、操作ホイール44の回転操作が繰り返し行われることによる導光部材48の位置ずれや脱落等が発生することを防止することができる。このため、ピッチベンダー40では、軸状部41cの軸周りの回転角度に応じて各LED43a~43cの発光態様が制御される構成において、操作ホイール44の操作態様に応じた光を導光する導光部材48の信頼性を高めることができる。
【0040】
また、ピッチベンダー40では、可変抵抗器41は、導光部材48と当接する抵抗側当接面41c1を有し、導光部材48は、抵抗側当接面41c1と当接する導光側当接面48b1を有している。これにより、可変抵抗器41の一部を導光部材48の一部に当接させることができ、可変抵抗器41とホイール部材47との間で導光部材48を挟持するための具体的な構成を提供することができる。
【0041】
また、ピッチベンダー40では、軸状部41cは、軸周りに回転可能であり、抵抗側当接面41c1は、軸状部41cに設けられ、導光部材48は、軸状部41cが挿通される導光側貫通孔48bを有し、導光側当接面48b1は、導光側貫通孔48bの開口内に設けられている。これにより、軸状部41cが導光側貫通孔48bに挿通された状態で、軸状部41cの一部と導光部材48の一部とを当接させるための具体的な構成を提供することができる。
【0042】
また、ピッチベンダー40では、導光部材48は、入射した各LED43a~43cからの光をその径方向に導光し、導光側当接面48b1は導光部材48の径方向において各LED43a~43cと重ならない位置に設けられている。これにより、導光部材48の板面内をその径方向に導光される光の光路L1上に導光部材48と可変抵抗器41との当接部分の構造に起因する凹凸が生じることを防止することができる。このため、導光部材48と可変抵抗器41との当接部分の構造が導光部材48内の光の導光に影響を及ぼすことを防止することができ、導光部材48から出射される光について良好な視認性を維持しつつ、導光部材48の信頼性を確保することができる。
【0043】
また、ピッチベンダー40では、抵抗側当接面41c1及び導光側当接面48b1は、軸状部41cの軸方向と直交する。これにより、抵抗側当接面41c1と導光側当接面48b1が軸状部41cの軸方向に沿って当接するため、導光部材48を軸状部41cとホイール部材47との間で軸状部41cの軸方向に沿って挟持することができ、導光部材48を強固に保持することができる。このため、導光部材48の位置ずれや脱落等が発生することをより効果的に防止することができる。
【0044】
また、ピッチベンダー40では、ホイール部材47は、軸状部41cが挿通されるホイール側貫通孔47bを有し、ホイール側貫通孔47bに軸状部41cが圧入されている。これにより、軸状部41cがホイール部材47に対して強固に固定され、ホイール部材47が軸状部41cから脱落等することを防止することができる。このため、導光部材48を軸状部41cとホイール部材47との間で確実に保持することができ、導光部材48の位置ずれや脱落等が発生することをより効果的に防止することができる。
【0045】
また、ピッチベンダー40では、導光部材48とホイール部材47の間が両面テープ49を介して貼り合わされている。これにより、導光部材48をホイール部材47により支持することができ、導光部材48を軸状部41cとホイール部材47との間で強固に保持することができる。さらに、貼り合わせ後に固化する接着剤を用いる場合に比して、貼り合わせ後も半固化状態で粘性を保つ両面テープ49を用いることにより、ホイール部材47と導光部材48との間で急な剥離等が発生することを防止することができる。このため、導光部材48の信頼性を十分に確保することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る電子鍵盤楽器10は、ピッチベンダー40を備えている。これにより、演奏者が電子鍵盤楽器10の演奏操作中に操作ホイール44の回転操作を繰り返し行った場合に、導光部材48の位置ずれや脱落等が発生することを防止することができる。このため、ピッチベンダー40の耐久性を高めることができ、電子鍵盤楽器10の信頼性を高めることができる。
【0047】
なお、以上説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。例えば上記の実施形態では操作子としてピッチベンダーを例示したが、モジュレーションホイール等のような他の操作子であってもよい。また、例えば上記の実施形態では電子楽器として電子鍵盤楽器を例示したが、鍵盤を備えない他の電子楽器であってもよい。
【0048】
以下に、本願出願の最初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]光を出射する光源部と、
回転可能な有軸部と、
前記有軸部に回転操作可能に取り付けられ、略円板状とされた操作部と、を備え、
前記操作部は、入射した前記光源部からの光を導光する導光部材、及び該導光部材の一方の板面側に配置されるホイール部材を有し、
前記有軸部は、前記導光部材を挟持する挟持部を有する、
操作子。
[2]前記挟持部は、前記導光部材と当接する第1当接面を有し、
前記導光部材は、前記第1当接面と当接する第2当接面を有する、
前記[1]に記載の操作子。
[3]前記挟持部は、軸周りに回転可能な軸状部であり、
前記第1当接面は、前記軸状部に設けられ、
前記導光部材は、前記軸状部が挿通される第1貫通孔を有し、
前記第2当接面は、前記第1貫通孔の開口内に設けられている、
前記[2]に記載の操作子。
[4]前記導光部材は、入射した前記光源部からの光をその径方向に導光し、
前記第2当接面は前記径方向において前記光源部と重ならない位置に設けられている、
前記[3]に記載の操作子。
[5]前記第1当接面及び前記第2当接面は、前記軸状部の軸方向と直交する、
前記[3]又は[4]に記載の操作子。
[6]前記ホイール部材は、前記軸状部が挿通される第2貫通孔を有し、
前記第2貫通孔に前記軸状部が圧入されている、
前記[3]から[5]のいずれかに記載の操作子。
[7]前記導光部材と前記ホイール部材の間が両面テープを介して貼り合わされている、
前記[1]から[6]のいずれかに記載の操作子。
[8]前記[1]から[7]のいずれかに記載の操作子を備える電子楽器。
【符号の説明】
【0049】
10 電子鍵盤楽器 12 ダイヤル
14 発光ボタン 16 設定ボタン
18 イヤホンジャック 20 鍵盤部
30 ケース 32 上ケース
34 下ケース 36 左ケース
36a 上面パネル 36a1 操作開口部
36b ケース側壁 37 内部フレーム
37a 第1基板 37b 第2基板
38 右ケース 40 ピッチベンダー
41 可変抵抗器 41a センサ前部
41b センサ後部 41c 軸状部
41c1 抵抗側当接面 41d 配線接続部
42 固定金具 42a 平板部
42b 立壁部 42b1 スリット
42b2 抵抗固定部 42b3 固定開口部
42c 第1ネジ止め部 42d 第2ネジ止め部
43 光源基板 43a LED
43b LED 43c LED
43d 光源接続部 44 操作ホイール
44a 操作凹部 45 トーションばね
45a コイルばね部 45b 付勢部
46 保持部材 46a 底部
46b 側板部 46b1 ホイール受け部
46c 第2ばね当接部 47 ホイール部材
47a1 ホイール側凹部 47b ホイール側貫通孔
47c ホイール側張出部 47d ばね固定部
47e 第1ばね当接部 47f 嵌め込み凹部
48 導光部材 48a 端縁
48a1 導光側凹部 48b 導光側貫通孔
48b1 導光側当接面 48c 導光側張出部
48d 隆起部 49 両面テープ
49a テープ側貫通孔 IP 絶縁板
L1 光路 P0 初期状態
P1 第1状態 P2 第2状態
RU 抵抗ユニット WU ホイールユニット