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特許7359261バッテリー固定装置、及びバッテリー固定装置に用いられるリテーナー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】バッテリー固定装置、及びバッテリー固定装置に用いられるリテーナー
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/04 20060101AFI20231003BHJP
   H01M 50/244 20210101ALI20231003BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20231003BHJP
【FI】
B60R16/04 H
H01M50/244 Z
H01M50/249
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022116527
(22)【出願日】2022-07-21
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞智 貞治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 陽平
(72)【発明者】
【氏名】荒城 隆之
【審査官】佐々木 智洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-329917(JP,A)
【文献】特開2011-126396(JP,A)
【文献】特開2017-052419(JP,A)
【文献】特開2022-053294(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106627404(CN,A)
【文献】中国実用新案第204452310(CN,U)
【文献】中国実用新案第204641627(CN,U)
【文献】中国実用新案第205202886(CN,U)
【文献】中国実用新案第205239408(CN,U)
【文献】中国実用新案第206317779(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/04
H01M 50/244
H01M 50/249
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられるとともに、バッテリーの底面及び側面に当接した状態で内部にバッテリーを収容するバッテリーキャリアと、
前記バッテリーキャリアに取り付け可能であり、前記バッテリーの上面の一部に当接することにより、前記バッテリーキャリア内での前記バッテリーの上下方向の動きを規制するリテーナーと、
を有するバッテリー固定装置であって、
前記バッテリーキャリアは、それぞれサイズの異なる第1及び第2のバッテリーを互いに隣り合った状態で収容し、
前記リテーナーは、
前記第1のバッテリーの互いに対向する第1及び第2の上縁部のそれぞれに係合する第1及び第2の係合部材と、
前記第1及び第2の係合部材を連結する棒状の連結部材と、
それぞれ、下端に前記バッテリーキャリアの底面に係合する折り返し部が形成され、前記バッテリーキャリアの底面と前記第1及び第2の係合部材との間に懸架される第1及び第2のJロッドと、
前記第1の係合部材から前記第2のバッテリーの方向に突出し、前記第2のバッテリーの側面のうち前記第1のバッテリーに対向する側面に当接することにより、前記第1のバッテリーと前記第2のバッテリーとの間に前記第1のJロッドが入る隙間を作る第1の突出部と、
前記第2のバッテリーの側面のうち前記第1のバッテリーに対向する側面に直交する2つの側面に沿って突出し、当該2つの側面に当接する、第2の突出部と、
を有するバッテリー固定装置。
【請求項2】
前記リテーナーの前記第1及び第2の突出部が前記第2のバッテリーの反対側を向くように前記リテーナーが前記第1のバッテリーに誤って取り付けられた場合には
前記第2の突出部が前記バッテリーキャリアに当接することにより、前記第1のバッテリーが所定位置よりも前記第2のバッテリーの方向にシフトして前記バッテリーキャリアの底面に形成された前記Jロッド用の係合孔を隠す、
請求項1に記載のバッテリー固定装置。
【請求項3】
前記第2のバッテリーは、前記第1のバッテリーの幅方向に配置された2つのバッテリーでなる、
請求項1に記載のバッテリー固定装置。
【請求項4】
車体に取り付けられるとともに、バッテリーの底面及び側面に当接した状態で内部にバッテリーを収容するバッテリーキャリアと、
前記バッテリーキャリアに取り付け可能であり、前記バッテリーの上面の一部に当接することにより、前記バッテリーキャリア内での前記バッテリーの上下方向の動きを規制するリテーナーと、
を有し、前記バッテリーキャリアは、それぞれサイズの異なる第1及び第2のバッテリーを互いに隣り合った状態で収容する、
バッテリー固定装置に用いられるリテーナーであって、
前記第1のバッテリーの互いに対向する第1及び第2の上縁部のそれぞれに係合する第1及び第2の係合部材と、
前記第1及び第2の係合部材を連結する棒状の連結部材と、
それぞれ、下端に前記バッテリーキャリアの底面に係合する折り返し部が形成され、前記バッテリーキャリアの底面と前記第1及び第2の係合部材との間に懸架される第1及び第2のJロッドと、
前記第1の係合部材から前記第2のバッテリーの方向に突出し、前記第2のバッテリーの側面のうち前記第1のバッテリーに対向する側面に当接することにより、前記第1のバッテリーと前記第2のバッテリーとの間に前記第1のJロッドが入る隙間を作る第1の突出部と、
前記第2のバッテリーの側面のうち前記第1のバッテリーに対向する側面に直交する2つの側面に沿って突出し、当該2つの側面に当接する、第2の突出部と、
を有するリテーナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両のバッテリー固定装置、及びバッテリー固定装置に用いられるリテーナーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載されるバッテリーは、バッテリー固定装置によって車両の所定位置に固定される。バッテリー固定装置の一つとして、バッテリーキャリアとリテーナーとを有するものがある。このようなバッテリーキャリア及びリテーナーを有するバッテリー固定装置は、例えば特許文献1で開示されている。この種のバッテリー固定装置は、バッテリーキャリアとリテーナーとの間にバッテリーが配置され、この状態でバッテリーキャリアとリテーナーとをJロッドを介して締結する。これにより、バッテリーキャリアとリテーナーとの間にバッテリーが挟持され固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】再表2017/104034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、大型車両や電気自動車などでは、複数のバッテリーを搭載するものがある。このため、複数のバッテリーが搭載される車両に用いられるバッテリー固定装置は、複数のバッテリーを固定できる構造となっている。
【0005】
この際、例えば、第1のバッテリーを固定するために用いられるリテーナーのJロッドによって、第1のバッテリーに隣接する第2のバッテリーが損傷しないような工夫がなされている。
【0006】
しかしながら、複数のバッテリーを固定するバッテリー固定装置は、単数のバッテリーを固定するバッテリー固定装置と比較して、ユーザーによる組み付け作業が煩雑であり、リテーナーを本来の向きと逆向きに取り付けてしまうおそれがあった。リテーナーを逆向きに取り付けてしまうと、例えばバッテリー固定の信頼性が低下したり、バッテリーが損傷するおそれがある。
【0007】
本開示は、以上の点を考慮してなされたものであり、複数のバッテリーを固定するバッテリー固定装置において、リテーナーの誤取り付けを防止できるバッテリー固定装置、及びバッテリー固定装置に用いられるリテーナーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のバッテリー固定装置の一つの態様は、
車体に取り付けられるとともに、少なくともバッテリーの底面及び側面に当接した状態で内部にバッテリーを収容するバッテリーキャリアと、
前記バッテリーキャリアに取り付け可能であり、少なくとも前記バッテリーの上面の一部に当接することにより、前記バッテリーキャリア内での前記バッテリーの上下方向の動きを規制するリテーナーと、
を有するバッテリー固定装置であって、
前記バッテリーキャリアは、サイズの異なる少なくとも第1及び第2のバッテリーを横方向に並んだ状態で収容し、
前記リテーナーは、
前記第1のバッテリーの互いに対向する第1及び第2の上縁部のそれぞれに係合する第1及び第2の係合部材と、
前記第1及び第2の係合部材を連結する棒状の連結部材と、
それぞれ、下端に前記バッテリーキャリアの底面に係合する折り返し部が形成され、前記バッテリーキャリアの底面と前記第1及び第2の係合部材との間に懸架される第1及び第2のJロッドと、
前記第1の係合部材から前記第2のバッテリーの方向に突出し、前記第2のバッテリーの側面のうち前記第1のバッテリーに対向する側面に当接することにより、前記第1のバッテリーと前記第2のバッテリーとの間に少なくとも前記第1のJロッドが入る隙間を作る第1の突出部と、
前記第2のバッテリーにぶつからない位置で、前記第1の突出部からさらに前記第2のバッテリーの方向に突出する第2の突出部と、
を有する。
【0009】
本開示のバッテリー固定装置に用いられるリテーナーの一つの態様は、
車体に取り付けられるとともに、少なくともバッテリーの底面及び側面に当接した状態で内部にバッテリーを収容するバッテリーキャリアと、
前記バッテリーキャリアに取り付け可能であり、少なくとも前記バッテリーの上面の一部に当接することにより、前記バッテリーキャリア内での前記バッテリーの上下方向の動きを規制するリテーナーと、
を有し、前記バッテリーキャリアは、サイズの異なる少なくとも第1及び第2のバッテリーを横方向に並んだ状態で収容する、
バッテリー固定装置に用いられるリテーナーであって、
前記第1のバッテリーの互いに対向する第1及び第2の上縁部のそれぞれに係合する第1及び第2の係合部材と、
前記第1及び第2の係合部材を連結する棒状の連結部材と、
それぞれ、下端に前記バッテリーキャリアの底面に係合する折り返し部が形成され、前記バッテリーキャリアの底面と前記第1及び第2の係合部材との間に懸架される第1及び第2のJロッドと、
前記第1の係合部材から前記第2のバッテリーの方向に突出し、前記第2のバッテリーの側面のうち前記第1のバッテリーに対向する側面に当接することにより、前記第1のバッテリーと前記第2のバッテリーとの間に少なくとも前記第1のJロッドが入る隙間を作る第1の突出部と、
前記第2のバッテリーにぶつからない位置で、前記第1の突出部からさらに前記第2のバッテリーの方向に突出する第2の突出部と、
を有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、リテーナーが、第1の係合部材から第2のバッテリーの方向に突出し、第2のバッテリーの側面のうち第1のバッテリーに対向する側面に当接することにより、第1のバッテリーと第2のバッテリーとの間に少なくとも第1のJロッドが入る隙間を作る第1の突出部と、第2のバッテリーにぶつからない位置で、第1の突出部からさらに第2のバッテリーの方向に突出する第2の突出部と、を有するので、リテーナーの誤取り付けを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係るバッテリー固定装置の説明に供する斜視図
図2】実施の形態に係るリテーナーを示す斜視図
図3】バッテリー固定装置の上面図
図4】複数のバッテリーの境界付近を拡大して示した上面図
図5】リテーナーを正しい向きに取り付けた状態を示す上面図
図6】リテーナーを正しい向きに取り付けた状態を示す側面図
図7】リテーナーを逆向きに取り付けた状態を示す上面図
図8】リテーナーを逆向きに取り付けた状態を示す側面図
図9】比較例として、爪部を有さないバッテリー固定装置の取り付け状態を示す上面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本開示の実施の形態に係るバッテリー固定装置100の説明に供する斜視図である。図2は、本開示の実施の形態に係るリテーナー300を示す斜視図である。
【0014】
バッテリー固定装置100は、例えばトレーラーなどの大型車両に用いられる。ただし、バッテリー固定装置100は、これに限らず、複数のバッテリーを車両に固定する装置として広く適用可能である。
【0015】
バッテリー固定装置100は、大きく分けて、バッテリーキャリア200と、リテーナー300、400と、を有する。
【0016】
本実施の形態のバッテリー固定装置100は、外形サイズの異なるバッテリー10とバッテリー21、22とを固定する。大きなサイズのバッテリー10と小さなサイズのバッテリー21、22は車幅方向に並んで固定され、小さなサイズのバッテリー21、22は前後方向に並んで固定される。
【0017】
バッテリーキャリア200は、車体に取り付けられるとともに、少なくともバッテリー10、21、22の底面及び側面に当接した状態で内部にバッテリー10、21、22を収容する。バッテリーキャリア200は、キャリア本体201と、止め金具202とを有する。キャリア本体201はブラケット1にネジ止めにより固定される。キャリア本体201内にバッテリー10、21、22を収容した状態で、キャリア本体201に止め金具202をネジ止めにより取り付けることで、バッテリー10、21、22が固定される。
【0018】
リテーナー300は、バッテリーキャリア200に取り付けられ、少なくともバッテリー10の上面の一部に当接することにより、バッテリーキャリア200内でのバッテリー10の上下方向の動きを規制する。また、リテーナー300は、バッテリー10の車幅方向の動きを規制する。
【0019】
リテーナー400も同様に、バッテリーキャリア200に取り付けられ、少なくともバッテリー21、22の上面の一部に当接することにより、バッテリーキャリア200内でのバッテリー21、22の上下方向の動きを規制する。リテーナー400は、金属板401とロッド402とを有し、ロッド402の上端部に螺合されたナットを締結することにより、1つの金属板401によって2つのバッテリー21、22の上下方向の動きを規制するようになっている。
【0020】
リテーナー300は、図2に示したように、バッテリー10の互いに対向する第1及び第2の上縁部(上角部と言ってもよい)のそれぞれに係合するL字状の係合部材301、302を有する。また、リテーナー300は、係合部材301、302を連結する棒状の連結部材303を有する。係合部材301、302は、連結部材303の両端部に溶接により接続されている。
【0021】
連結部材303は、両端が折り曲げられることで形成された挿通孔を有し、この挿通孔にJロッド304、305の上端部を挿通できるようになっている。Jロッド304、305の上端部にはネジ山が形成されている。また、Jロッド304、305の下端には、バッテリーキャリア200の底面の係合孔201a(図7)に係合する折り返し部が形成されている。連結部材302の挿通孔にJロッド304、305を挿通した状態で、Jロッド304、305にナットを螺合させることにより、バッテリーキャリア200の底面と係合部材301、302との間にバッテリー10が挟持される。
【0022】
換言すれば、Jロッド304、305はそれぞれ、下端にバッテリーキャリア200の底面に係合する折り返し部が形成されており、バッテリーキャリア200の底面と係合部材301、302との間に懸架され、バッテリーキャリア200と係合部材301、302とを互いに近接する方向に引っ張る。なお、このような、係合部材301、302とJロッド304、305とを用いた構成は従来から良く知られた構成である。
【0023】
かかる構成に加えて、リテーナー300は、係合部材301から両側に延在する腕部306を有する。腕部306は、係合部材301からバッテリー21、22の方向に突出する形状となっており、バッテリー21、22の側面のうちバッテリー10に対向する側面に当接することにより、バッテリー10とバッテリー21、22との間に少なくともJロッド304が入る隙間を作る。本明細書では、腕部306を第1の突出部と呼ぶこともある。
【0024】
さらに、リテーナー300は、バッテリー21、22にぶつからない位置で、腕部306からさらにバッテリー21、22の方向に突出する爪部307a、307bを有する。爪部307a、307bは、腕部306の先端を略直角に折り曲げられることで形成されている。本実施の形態の場合、爪部307a、307bは、バッテリー21、22の側面のうちバッテリー10に対向する側面に直交する2つの側面に沿って突出し、当該2つの側面に当接する。本明細書では、爪部307a、307bを第2の突出部と呼ぶこともある。
【0025】
図3はバッテリー固定装置100の上面図であり、図4はバッテリー10とバッテリー21、22との境界付近を拡大して示した上面図である。
【0026】
図3及び図4から分かるように、腕部306によってバッテリー10とバッテリー21、22との間に隙間が作られ、この隙間にJロッド304が配置される。これにより、Jロッド304が干渉することに起因する、より具体的にはJロッド304の下端の折り返し部が干渉することに起因する、バッテリー10に隣接するバッテリー21、22の損傷を防止できる。
【0027】
また、爪部307a、307bがバッテリー21、22の側面に当接することにより、バッテリー21、22の前後方向への移動が規制される。
【0028】
次に、図5図8を用いて、本実施の形態のバッテリー固定装置100のリテーナー300の取り付けについて説明する。図5及び図6はそれぞれ、リテーナー300を正しい向きに取り付けた状態を示す上面図及び側面図である。図7及び図8はそれぞれ、リテーナー300を逆向きに取り付けた状態を示す上面図及び側面図である。
【0029】
図5及び図6に示したように、リテーナー300を正しい向きに取り付けた場合には、爪部307a、307bがバッテリー21、22(図示せず)側を向き、バッテリー21、22(図示せず)の側面に沿って延在するようになる。
【0030】
これに対して、図7及び図8に示したように、リテーナー300を逆向きに取り付けた場合には、爪部307a、307bがバッテリー21、22(図示せず)の反対側を向く。このとき、爪部307a、307bが車両本体のブラケット1(図1)或いはバッテリーキャリア200にぶつかる(干渉する)ので、バッテリー10及びリテーナー300の位置が図7及び図8に示したような正規の位置から、太い矢印で示したようにバッテリー21、22(図示せず)の方向にシフトする。すると、キャリア本体201の底面に形成された係合孔201aがバッテリー10によって隠れ、Jロッド305を係合孔201aに係合できない状態となる。これにより、ユーザーは、リテーナー300を逆向きに取り付けようとしていたことを認識でき、正しい向きに取り付け直すことができる。なお、そもそも、Jロッド305を係合孔201aに係合させることができないので、逆向きの取り付けが物理的に不可能となる。
【0031】
一方、図9は、比較例として、爪部307a、307bを有さないバッテリー固定装置の取り付け状態を示す上面図である。図は、リテーナーが正しい向きに取り付けられた状態を示したものである。もしも、リテーナーが矢印aで示すように逆向き、つまり、係合部材301が図中上側に係合部材302が図中下側に取り付けられた場合には、係合部材302には腕部が存在しないので、腕部306によってバッテリー10とバッテリー21、22との間に間隔を作れなくなる。その結果、Jロッド305に、より具体的にはJロッド305の下端の折り返し部に、バッテリー21、22がぶつかり、バッテリー21、22が損傷するおそれがある。
【0032】
また、リテーナーが正しい向きに取り付けられたとしても、爪部307a、307bを有しないので、実施の形態の構成と比較して、バッテリー21、22の前後方向(矢印bの方向)への保持の信頼性が劣る。
【0033】
因みに、図1から分かるように、キャリア本体201の前後方向の側壁は、バッテリー21、22の取り付け及び取り外しを容易にするために、バッテリー21、22の上面よりも低くされている。このため、バッテリー21、22は、例えばリテーナー400のロッド402に螺合されたナットが緩んだ場合に、前後方向にガタツクおそれがある。この対策として、例えば金属板401から前後方向に延びる腕部を形成し、この腕部の両端から下方に折れ曲がる爪部を形成し、この爪部によってバッテリー21、22の前後方向の動きを規制することが考えられる。しかし、このようにしたとしても、リテーナー400のロッド402に螺合されたナットが緩んだ場合に爪部が外れてしまうおそれがある。また、バッテリー21、22の上面の補水栓を腕部によって覆うことはメンテナンス上好ましくないといった事情がある。
【0034】
これに対して、本実施の形態では、リテーナー300の爪部307a、307bによって、バッテリー21、22の補水栓を覆うことなく、バッテリー21、22の前後方向の動きを確実に規制することができる。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態によれば、係合部材301からバッテリー21、22の方向に突出し、バッテリー21、22の側面のうちバッテリー10に対向する側面に当接することにより、バッテリー10とバッテリー21、22との間に少なくともJロッド301が入る隙間を作る第1の突出部(腕部306)と、バッテリー21、22にぶつからない位置で、第1の突出部(腕部306)からさらにバッテリー21、22の方向に突出する第2の突出部(爪部307a、307b)と、を設けたことにより、リテーナー300の誤取り付けを防止できるバッテリー固定装置100及びリテーナー300を実現できる。
【0036】
また、本実施の形態によれば、第2の突出部(爪部307a、307b)は、バッテリー21、22の側面のうちバッテリー10に対向する側面に直交する2つの側面に沿って突出し、当該2つの側面に当接するように形成されている。これにより、リテーナー300が保持するバッテリー10に隣接するバッテリー21、22の前後方向の動きを確実に規制することができる。
【0037】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【0038】
上述の実施の形態では、第2の突出部(爪部307a、307b)は、バッテリー21、22の側面のうちバッテリー10に対向する側面に直交する2つの側面に沿って突出し、当該2つの側面に当接するように形成した場合について述べたが、これに限らず、単に、バッテリー21、22にぶつからない位置で、第1の突出部(腕部306)からさらにバッテリー21、22の方向に突出するように形成してもよい。この構成によれば、バッテリー21、22の前後方向の動きを確実に規制することはできないが、リテーナー300の誤取り付けを防止することはできる。
【0039】
上述の実施の形態では、3つのバッテリー10、21、22を固定するバッテリー固定装置100に本発明を適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、複数のバッテリーを固定するバッテリー固定装置として広く適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本開示の技術は、車両に複数のバッテリーを固定するバッテリー固定装置及びリテーナーとして有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 ブラケット
10、21、22 バッテリー
100 バッテリー固定装置
200 バッテリーキャリア
201 キャリア本体
201a 係合孔
202 止め金具
300、400 リテーナー
301、302 係合部材
303 連結部材
304、305 Jロッド
306 腕部
307a、307b 爪部
401 金属板
402 ロッド
【要約】
【課題】複数のバッテリーを固定するバッテリー固定装置において、リテーナーの誤取り付けを防止できるバッテリー固定装置及びリテーナーを提供すること。
【解決手段】リテーナーは、第1の係合部材から第2のバッテリーの方向に突出し、第2のバッテリーの側面のうち第1のバッテリーに対向する側面に当接することにより、第1のバッテリーと第2のバッテリーとの間に少なくとも第1のJロッドが入る隙間を作る第1の突出部と、第2のバッテリーにぶつからない位置で、第1の突出部からさらに第2のバッテリーの方向に突出する第2の突出部と、を有する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9