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特許7359359MEMS装置及びMEMS装置を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】MEMS装置及びMEMS装置を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B81B 7/02 20060101AFI20231003BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20231003BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20231003BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20231003BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20231003BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20231003BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20231003BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20231003BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B81B7/02
B81B3/00
B81C1/00
G02B26/08 E
H01L27/04 E
H01L21/90 L
H01L21/90 P
H01L21/88 M
H01L21/90 A
H01L21/88 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021521938
(86)(22)【出願日】2019-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 US2019040543
(87)【国際公開番号】W WO2020010225
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】62/694,008
(32)【優先日】2018-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521005487
【氏名又は名称】IGNITE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】イシイ フサオ
(72)【発明者】
【氏名】ビクター ストーン
(72)【発明者】
【氏名】鳥飼 俊敬
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-528449(JP,A)
【文献】特表2018-508988(JP,A)
【文献】特開2018-085502(JP,A)
【文献】特開2016-167600(JP,A)
【文献】特開2015-188216(JP,A)
【文献】特表2010-528457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81B 7/02
B81B 3/00
B81C 1/00
G02B 26/08
H01L 21/822
H01L 21/768
H01L 21/3205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上の電子回路と、
前記電子回路に電気的に接続された電極と、
可動素子であって、前記電極と前記可動素子との間に電圧を印加することにより制御される可動素子と、
前記電極と前記電子回路との間に配置され、前記電極と前記電子回路とを電気的に接続するビアを備えた絶縁層と、
前記絶縁層に配置され、窒化アルミニウムまたは酸化アルミニウムのうちの少なくとも一方から形成されるエッチング停止層とを備え
前記可動素子は、前記基板の実装面の前記電極に直接実装された或いは実装面の前記電極に取り付けられた別の導電性支持構造に形成されて前記電極の実装面に対して垂直である垂直ヒンジを備えるミラーであり、
前記垂直ヒンジを備えたストッパをさらに備え、
前記ストッパは、前記基板の前記実装面に対して平行に前記導電性支持構造の前記電極よりも長く延在し、前記ミラーが傾斜した際に、前記ミラーと接触して前記ミラーがMEMS装置の他の部位に接触するのを防止するのに充分なサイズを有する、
ことを特徴とする、微小電気機械システム(MEMS)装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記エッチング停止層は、前記可動素子と前記電極との間に形成される、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記可動素子を支持する導電性支持体であって、前記電極に実装され、前記エッチング停止層を通って延在する導電性支持体をさらに備える、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記電極は、前記エッチング停止層に実装されている、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項5】
請求項1または2において、
前記エッチング停止層はスパッタリングされた酸化アルミニウムである、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項6】
請求項1または2において、
前記エッチング停止層は、原子層堆積法によって形成された酸化アルミニウムからなる膜である、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項7】
請求項1または2において、
前記ビアに接続された前記電極および前記ビアのそれぞれはタングステンを含む、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項8】
請求項1または4において、
前記電極は、前記電極が実装される表面に沿った寸法が、前記電極が電気的に接続される前記ビアの半径の少なくとも2倍である、
ことを特徴とする、MEMS装置。
【請求項9】
請求項1記載の微小電気機械システム(MEMS)装置を製造する方法であって、
前記基板上に電子回路を形成する工程と、
前記基板上に絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層を貫通し、前記電子回路と電気的に接続される導電性材料が充填された貫通孔を含むビアを形成する工程と、
前記ビアに接続される電極を、前記絶縁層上に形成する工程と、
窒化アルミニウムまたは酸化アルミニウムの少なくとも一方からなるエッチング停止層を、前記絶縁層上に形成する工程と、
前記電極に接続される垂直ヒンジを形成する工程と、
前記絶縁層上に犠牲層を形成する工程と、
前記垂直ヒンジに結合された可動素子を形成する工程と、
前記犠牲層をフッ化水素酸の蒸気により除去する工程とを備える、
ことを特徴とする、基板上に微小電気機械システム(MEMS)装置を製造する方法。
【請求項10】
請求項において、
前記エッチング停止層は、前記電極を形成した後に、前記可動素子と前記電極との間に形成される、
ことを特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項1において、
前記電極は、ダマシンプロセスによって形成される、
ことを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項1において、
前記電極は、前記エッチング停止層を形成した後、前記エッチング停止層に形成される、
ことを特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項1または1において、
前記エッチング停止層の形成には、前記絶縁層に酸化アルミニウムをスパッタリングする工程が含まれている、
ことを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項1または1において、
前記エッチング停止層の形成には、原子層堆積法によって、前記絶縁層に酸化アルミニウムからなる膜を形成する工程が含まれている、
ことを特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項または1において、
前記電極がその実装面にそって延在する寸法が、前記ビアの半径rの2倍超である、
ことを特徴とする、方法。
【請求項16】
請求項または1において、
前記ビアの形成には、ダマシンプロセスによって前記ビアを形成する工程が含まれている、
ことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年7月4日に出願された米国仮特許出願第62/694008号に基づく優先権を主張するものであり、その開示内容をここに援用する。
【0002】
本開示は、微小電気機械システム(MEMS)の製造工程に関する。具体的に、本開示は、犠牲層を除去するためのリリースエッチングの際に、エッチング液による腐食(attacks)に耐え得る強力な保護層を有するMEMS装置の製造工程に関する。
【背景技術】
【0003】
MEMSの製造において、犠牲層の除去は重要な工程である。犠牲層をエッチングによって除去する場合、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)電子回路のように、MEMSの構造がエッチング液によって損傷することがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一態様は、フッ化水素酸(HFまたはVHF)などのエッチング液の蒸気を用いた犠牲層のエッチングにも耐えることのできる、MEMS装置用の強力な保護層を提供することである。
【0005】
本開示によるMEMS装置は、基板と、前記基板上の電子回路と、前記電子回路に電気的に接続された電極と、可動素子であって、前記電極と前記可動素子との間に電圧を印加することにより制御される可動素子と、前記電極と前記電子回路との間に配置され、前記電極と前記電子回路とを電気的に接続するビアを備えた絶縁層と、前記絶縁層上に配置され、窒化アルミニウムまたは酸化アルミニウムのうちの少なくとも一方から形成されるエッチング停止層と、を備える。前記エッチング停止層は、前記電極および前記電子回路を覆っていてもよく、または前記電極が、前記エッチング停止層に実装され、ビアによって前記エッチング停止層を介して前記電子回路に電気的に接続されていてもよい。
【0006】
本開示による、基板上にMEMS装置を製造する方法は、前記基板上に電子回路を形成する工程と、前記基板上に絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層を貫通し、前記電子回路と電気的に接続される導電性材料が充填された貫通孔を含むビアを形成する工程と、前記ビアに接続される電極を、前記絶縁層上に形成する工程と、窒化アルミニウムまたは酸化アルミニウムの少なくとも一方からなるエッチング停止層を、前記絶縁層上に形成する工程と、前記電極に接続される垂直ヒンジを形成する工程と、前記絶縁層上に犠牲層を形成する工程と、前記垂直ヒンジに接続された可動素子を形成する工程と、前記犠牲層をフッ化水素酸の蒸気により除去する工程と、を備える。前記エッチング停止層は、前記電極を形成した後に、前記可動素子と前記電極との間に形成されてもよい。或いは、前記電極は、前記エッチング停止層を形成した後に、前記エッチング停止層上に形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係る表示装置として利用可能なMEMS装置の断面図である。
図2図1に示すMEMS装置のミラーがオン状態に変位した際の断面図である。
図3】MEMS装置のミラー素子を示す断面図であって、図1に示す生産工程を説明するための図である。
図4】実施形態2に係るMEMS装置の断面図である。
図5図4に示すMEMS装置のミラーがオン状態に変位した際の断面図である。
図6】MEMS装置のミラーを示す断面図であって、図4に示す生産工程を説明するための図である。
図7】実施形態3に係るMEMS装置の断面図である。
図8】実施形態4に係るMEMS装置の断面図である。
図9図7に示すMEMS装置のミラーがオン状態に変位した際の断面図である。
図10】MEMS装置のミラーを示す断面図であって、図8に示す生産工程を説明するための図である。
図11】金属化プロセスの一例を示す図である。
図12】ダマシンプロセスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、添付の図面と併せて読まれるとき、以下の詳細な説明から最もよく理解される。一般的プラクティスによれば、図面の種々の特徴が実寸大ではないことを強調しておく。それどころか、様々な特徴の寸法は、明確にするために任意に拡大または縮小されている。さらに、特に明記しない限り、同様の参照番号は同様の要素を示す。
【0009】
図1および図2は、本開示の実施形態1におけるMEMS装置101の断面図である。これらの図や本明細書で参照される他の図は、本開示によるMEMS装置の単一の可動素子を説明するためのものである。しかしながら、本明細書に記載されるMEMS装置は、複数の可動素子を含んでいてもよい。例えば、MEMS装置が表示装置で使用され可動素子がミラーである場合、MEMS装置3が約2百万個のミラーを含む実施形態も可能である。
【0010】
MEMS装置101は、基板111を有する。基板111には、少なくとも1つの電子回路が形成されており、本実施形態において前記電子回路は1または複数のトランジスタ116、117である。また、基板111には、層間誘電体112、113、114が形成されている。具体的には、層間誘電体112は、基板111および電子回路の一部(ここではトランジスタ116、117)に形成されている。層間誘電体113は、層間誘電体112上に形成され、層間誘電体114は層間誘電体113上に形成されている。層間誘電体の数はこれよりも多くても少なくてもよい。本明細書において、層間誘電体を絶縁層と称することもある。層間誘電体114上、すなわち基板から最も遠い層(例えば、トップ)には、エッチング停止層115が形成されている。
【0011】
MEMS装置101は、層間誘電体112、113、114間の電気配線用に、金属層136、137、138、139、140、141と、電極121、122、123とを有する。また、MEMS装置101は、電気配線と電極とを接続するビア127、128、129、130、131、131、132、133、134、135を有する。つまり、MEMS装置101は、エッチング停止層115に実装された1または複数の電極を有しており、これら電極は、層間誘電体によって絶縁された金属層とビアを介して、MEMS装置101の1または複数の電子回路と電気的に接続される。本明細書に教示されるMEMS装置における電極、金属層、ビアの数はMEMS装置101内の電子回路およびこれらの配置に基づいて変更可能である。
【0012】
図1に示すように、ビア127は、エッチング停止層115上に形成される電極121から、層間誘電体114を通って、層間誘電体114上に形成される金属層136への導電経路を提供する。ビア128は、層間誘電体114上に形成される金属層136から、層間誘電体113を通って、層間誘電体112上に形成される金属層137への導電経路を提供する。ビア129は、層間誘電体112上に形成される金属層137から、層間誘電体112を通って、基板111への導電経路を提供する。ビア127、128、129および金属層136、137を介して、電極121は、基板111、層間誘電体113および層間誘電体114の接点において電子回路と電気的に配線または接続することができる。
【0013】
同様に、ビア130は、エッチング停止層115上に形成される電極122から、層間誘電体114を通って、層間誘電体114上に形成される金属層138への導電経路を提供する。ビア131は、層間誘電体114上に形成される金属層138から、層間誘電体113を通って、層間誘電体112上に形成される金属層139への導電経路を提供する。ビア132は、層間誘電体112上に形成される金属層139から、層間誘電体112を通って、基板111への導電経路を提供する。ビア130、131、132および金属層138、139を介して、電極122は、基板111、層間誘電体113および層間誘電体114の接点において電子回路と電気的に配線または接続することができる。
【0014】
ここで、図1には、電極と電子回路との接続として、電極123と1または複数のトランジスタ116、117の接点との接続が示されている。ビア133は、エッチング停止層115上に形成される電極123から、層間誘電体114を通って、層間誘電体114上に形成される金属層140への導電経路を提供する。ビア134は、層間誘電体114上に形成される金属層140から、層間誘電体113を通って、層間誘電体112上に形成される金属層141への導電経路を提供する。ビア135は、層間誘電体112上に形成される金属層141から、層間誘電体112を通って、1または複数のトランジスタ116、117それぞれへの導電経路を提供する。ビア133、134、135および金属層140、141を介して、電極123は、層間誘電体113および層間誘電体114の接点において電子回路と電気的に配線または接続することができる。
【0015】
さらに、MEMS装置101は、電極122に直接実装された、或いは、電極122に取り付けられた別の導電性支持構造に形成されたヒンジ152を有する。導電性支持構造は、本実施例を示す各図に示すように、電極122と同じ材料から形成されていてもよい。MEMS装置101は、ヒンジ152の上側に形成されたミラー素子151を有する。本実施形態および他の実施形態において、ミラー素子は、ここに記載されるMEMS装置に組み込むことができる可動素子の一例である。一方、ヒンジ152の下部には機械的ストッパ153、154が形成されている。図示される機械的ストッパ153、154は、ヒンジ152と同一の材料から一体的に形成されており、既定の、または非励起位置にあるミラー素子151に平行であり、基板111の実装面および各層に対して平行に延在する。
【0016】
基板111は、単結晶シリコンで形成されている。本実施例において、トランジスタ116、117はCMOSトランジスタであるが、他の電子回路であってもよい。層間誘電体112、113、114は、二酸化シリコン(SiO)等の絶縁材料を含む層間絶縁膜である。
【0017】
金属層136、137、138、139、140、141は、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、またはアルミニウム銅合金(Al-Cu)からなる。
【0018】
電極121、122、123は、タングステン(W)またはビアと同じ材料からなる。各ビア127、128、129、130、131、131、132、133、134、135は、MEMS装置101の少なくとも一層を貫通して延在する貫通孔として形成されており、導電性材料(本実施例ではタングステン(W))が充填されている。さらに、製造工程において、ビア127、130、133およびエッチング停止層115との間にはギャップ124、125、126が形成されることがある。これらギャップは、後に使用されるエッチング液がこれらギャップに浸透し構造に損傷を与える可能性があり問題となる。この問題を軽減するために、ビア127の半径をrとした場合、エッチング停止層115が、電極121によって覆われる距離xが、rの2倍を超えていることが望ましい。エッチング停止層上に実装される各電極についても、エッチング停止層を貫通するビアの半径rとエッチング停止層に搭載される電極の長さ、または距離xとの関係が同様であることが望ましい。
【0019】
電極122などの電極がエッチング停止層115などのエッチング停止層に実装されている構造において、その関係は、上述のとおり電極がエッチング停止層を覆う距離xがrの2倍を超えている。これに代えて、本明細書に記載される他の実施形態(例:図7)のように、エッチング停止層が、電極の一部または全体を覆う構造としてもよい。つまり、電極は当該電極が実装される表面に沿った長さ、サイズまたは寸法(例えば、長さ、幅、半径)が、当該電極が電気的に接続されるビアの半径の少なくとも2倍であると言うこともできる。
【0020】
すなわち、例えば、エッチング停止層115を覆う電極121、122、123は、それぞれが接続されるビアの半径の2倍以上の大きさを有することが望ましい。これにより、エッチング液の蒸気が、(i)電極121、122、123およびエッチング停止層115を貫通すること、および(ii)ギャップ123、125、126を通して層間誘電体114を侵食することを防止する。
【0021】
ヒンジ152は、ミラー素子151を支持する変形可能な部材である。ヒンジ152は、例えば非晶質シリコンやポリシリコンなどの材料で形成される。
【0022】
ミラー素子151は、光源からの光を反射可能な部材である。ミラー素子151は、チタン、タングステン等からなる支持層と、アルミニウム、金、銀等の反射率の良い材料、またはこれらの組み合わせからなるミラー層とを有する。
【0023】
ミラー素子151は電極123に静電吸着され、ヒンジ152は変形することにより傾斜する。これは、可動素子(例えば、ミラー素子151)と電極123との間に電圧を印加することから生じ得る。電圧によって吸着力が発生する。図2に示すように、ミラー素子151は、ストッパ153と接触することによって、絶縁層で覆われていない電極123と接触しないようになっている。すなわち、機械的ストッパ153、154は、ヒンジ152の変形によってミラー素子151が電極123と接触することのないように、電極121、123上方(高さ)に実装され、充分なサイズ(例えば長さ)を有する。例えば、機械的ストッパ153、154の長さは、ミラー素子151が傾いた際に、ミラー素子151に接触し、MEMS装置のその他の部位にミラー素子151が接触することを防止する長さとなっている。ミラー素子151が、ヒンジ152の変形によって電極123に接触することを防止する。これにより、電気的な短絡を防止することができる。本実施例において、機械的ストッパ153、154は、ヒンジ152と同じ材料から形成されているため、わずかに変形する。しかし、当該変形は無視してもよく、或いは、機械的ストッパ153、154の長さや実装高さを決定する際に考慮してもよい。
【0024】
次に図3に示すように、ミラー素子151の形成に犠牲層181を使用する。犠牲層181は、無機または非晶質材料から形成され、例えばSiOからなっている。犠牲層181は、エッチング停止層115およびエッチング停止層115表面の構成部材の上に堆積される。犠牲層181の表面にミラー素子151を形成した後、犠牲層181はエッチング液の蒸気であるフッ化水素酸の蒸気(HF蒸気)によって除去される。このとき、ミラー素子151、ヒンジ152、電極121、122、123およびエッチング停止層115は、HF蒸気にさらされる。しかし、各材料はHF蒸気に対する耐性を有するため、腐食はわずかである。さらに、二酸化シリコン(SiO)からなる層間誘電体112、113、114は、電極121、122、123およびエッチング停止層115によって覆われているため、侵食は最小限に留められる。また、例えば、電極121が、ビア127の半径の2倍超である距離xだけ、エッチング停止層115を覆っており、電極122、123についても同様の特徴が盛り込まれている。距離xは、HF蒸気がエッチング停止層115および電極121、122、123の間に浸透し、層間誘電体112、113、114に到達するのを防止するのに充分な距離である。
【0025】
図4および図5は、本開示の実施形態2におけるMEMS装置201の断面図である。MEMS装置201は、基板211を有する。基板211には、少なくとも1つの電子回路が形成されており、本実施例において前記電子回路は1または複数のトランジスタ216、217である。図1図3に示すトランジスタ116、117と同様、トランジスタ216、217はCMOSトランジスタであってもよく、また別の電子部品や回路であってもよい。また基板211には層間誘電体212、213、214が形成されている。具体的には、層間誘電体212は、基板211および電子回路の一部(ここではトランジスタ216、217)に形成されている。層間誘電体213は、層間誘電体212上に形成され、層間誘電体214は層間誘電体213上に形成されている。層間誘電体の数はこれよりも多くても少なくてもよく、層間誘電体212、213、214は、層間誘電体112、113、114と同じ材料から形成されていてもよい。層間誘電体214上、すなわち基板から最も遠い層(例えば、トップ)には、エッチング停止層215が形成されている。
【0026】
MEMS装置201は、層間誘電体212、213、214間の電気配線用に、金属層236、237、238、239、240、241と、電極221、222、223とを有する。また、MEMS装置201は、電気配線と電極とを接続するビア227、228、229、230、231、232、233、234、235を有する。ビア227、228、229、金属層236、237、および電極221はそれぞれ、前述のビア127、128、129、金属層136、137、および電極121と同じ材料からなり、同様に配置されていてもよい。ビア230、231、232、金属層238、239、および電極222はそれぞれ、前述のビア130、131、132、金属層138、139、および電極122と同じ材料からなり、同様に配置されていてもよい。ビア233、234、235、金属層240、241、および電極223はそれぞれ、前述のビア133、134、135、金属層140、141、および電極123と同じ材料からなり、同様に配置されていてもよい。
【0027】
MEMS装置201は、電極222に直接形成された、或いは、電極122上に実装された別の電極に形成されたヒンジ252と、ヒンジ252の上側に形成されたミラー素子251とを有する。ヒンジ252は、前述のヒンジ152と同じ材料を用いて同様に形成されていてもよく、ミラー素子251は前述のミラー素子151と同一のものであってもよい。
【0028】
電極221、222、223は、Al、Al-Cu合金等からからなる。電極221、222、223は、層間誘電体214上に形成されている。電極221、222、223は、層間誘電体214と段差を形成する。エッチング停止層115は層間誘電体114を覆っており、電極121、122、123がエッチング停止層115上に形成されている図1図3の配置とは対称的に、本実施形態においてエッチング停止層215は、電極221、222、223および層間誘電体214を覆うように段差構造となっている。
【0029】
実施形態2と実施形態1との主な差異は、エッチング停止層215が電極221、222、223を覆っている点にある。さらに、図1に示す機械的ストッパ153、154は、図4に示す本実施形態では形成されていない。
【0030】
ミラー素子251は電極223に静電吸着され、ヒンジ252は変形することにより傾斜する。図5から分かるように、ミラー素子251は、電極223を覆うエッチング停止層215に接触することによって、その傾斜が制限される。エッチング停止層215はまた、ミラー素子251が電極223に直接接触することを防止する。エッチング停止層215は、窒化アルミニウム(AlN)または酸化アルミニウム(Al)からなる絶縁膜であるため、電気的短絡を防止することができる。
【0031】
図6は、ミラー素子251を形成するための犠牲層281の断面図である。犠牲層281は、無機またはSiO等の非晶質材料からなり、エッチング停止層215およびエッチング停止層215表面から延在する構成部材の上に堆積される。ミラー素子251を形成した後、犠牲層281はエッチング液の蒸気であるフッ化水素酸の蒸気(HF蒸気)によって除去される。このとき、ミラー素子251、ヒンジ252、電極222、およびエッチング停止層215は、HF蒸気にさらされる。しかし、各材料はHF蒸気に対する耐性を有するため、侵食はわずかである。
【0032】
図7は、本開示の実施形態3に係るMEMS装置301の断面図である。MEMS装置301は、基板311と、MEMS装置301に形成し得る電子回路の例としてのトランジスタ316、317と、基板311上に形成される層間誘電体312、313、314と、層間誘電体314上に形成されるエッチング停止層315とを備える。
【0033】
MEMS装置301は、層間誘電体312、313、314間の電気配線用に、金属層336、337、338、339、340、341と、電極321、322、323とを有する。また、MEMS装置301は、電気配線と電極とを接続するビア327、328、329、330、331、332、333、334、335を有する。基板311、トランジスタ316、317、金属層336、337、338、339、340、341、およびビア327、328、329、330、331、332、333、334、335はそれぞれ、基板111、トランジスタ116、117、金属層136、137、138、139、140、141、およびビア127、128、129、130、131、131、132、133、134、135と同様の構成および配置を有するため、重複する説明は省略する。層間誘電体312、313、314は、層間誘電体112、113、114と同様の材料から形成されていてもよく、層間誘電体112、113、114がトランジスタ116、117、金属層136、137、138、139、140、141、およびビア127、128、129、130、131、132、133、134、135に対して提供する絶縁機能と同様に、トランジスタ316、317、金属層336、337、338、339、340、341、およびビア327、328、329、330、331、331、332、333、334、335に対して絶縁機能を提供してもよい。しかし、以下に詳述するとおり、電極321、322、323を有する層間誘電体314の配置は、前述の実施形態とは異なっている。
【0034】
また、MEMS装置301は、電極322に形成されたヒンジ352と、ヒンジ352の上側に形成されたミラー素子351とを有する。ヒンジ352は、前述のヒンジ251と同じ材料を用いて同様に形成されていてもよく、ミラー素子351は前述のミラー素子251と同一のものであってもよい。
【0035】
電極321、322、323は、銅(Cu)、タングステン(W)等からなる。電極321、322、323は、ダマシンプロセスによって層間誘電体314に埋め込まれるように形成されてもよい。以下に図12を参照してダマシンプロセスについて説明する。前述のとおり、電極321、322、323、および層間誘電体314は、同時に化学機械研磨(CMP)され、同一面上に位置合わせされる。エッチング停止層315は、電極321、322、323および層間誘電体314上に形成され、同一表面上で平坦化される。エッチング停止層315は、その製造方法により、段差構造のない均一で欠陥のない膜として形成される。したがって、エッチング停止層315は薄く形成されており、HF蒸気による層間誘電体314の侵食を防止する。
【0036】
図8および図9は、本開示の実施形態4におけるMEMS装置401の断面図である。MEMS装置401は、基板411を有する。基板411には、少なくとも1つの電子回路が形成されており、本実施例において電子回路は1または複数のトランジスタ416、417である。図1図3に示すトランジスタ116、117と同様、トランジスタ416、417はCMOSトランジスタであってもよく、また基板411上に形成される別の電子部品や回路の層間誘電体412、413、414であってもよい。具体的には、層間誘電体412は、基板411および電子回路の一部(ここではトランジスタ416、417)に形成されている。層間誘電体413は、層間誘電体412上に形成され、層間誘電体414は層間誘電体413上に形成されている。層間誘電体の数はこれよりも多くても少なくてもよく、層間誘電体412、413、414は、層間誘電体112、113、114と同じ材料から形成されていてもよい。
【0037】
MEMS装置401は、層間誘電体412、413、414間の電気配線用に、金属層436、437、438、439、440、441と、電極421、422、423とを有する。また、MEMS装置401は、電気配線と電極とを接続するビア427、428、429、430、431、432、433、434、435を有する。ビア427、428、429、金属層436、437、および電極421はそれぞれ、実施形態1において説明したビア127、128、129、金属層136、137、および電極121と同じ材料からなり、同様に配置されていてもよい。ビア430、431、432、金属層438、439、および電極422はそれぞれ、実施形態1において説明したビア130、131、132、金属層138、139、および電極122と同じ材料からなり、同様に配置されていてもよい。ビア433、434、435、金属層440、441、および電極423はそれぞれ、実施形態1において説明したビア133、134、135、金属層140、141、および電極123と同じ材料からなり、同様に配置されていてもよい。実施形態1とは異なり、電極421、422、423は実施形態2のように、基板411から最も離れた層である層間誘電体414(すなわち、トップ層)に段差を形成し、エッチング停止層415は、電極421、422、423、および層間誘電体414を覆うように段差構造を有する。エッチング停止層415は、AlNまたはAlからなる絶縁膜であってもよい。
【0038】
MEMS装置401は、電極422上に直接実装された、或いは、電極422上に搭載された別の電極に形成されたヒンジ452と、ヒンジ452の上側に形成されたミラー素子451とを有する。ヒンジ452は、前述のヒンジ152と同じ材料を用いて同様に形成されていてもよく、ミラー素子451は実施形態1で説明したミラー素子151と同一のものであってもよい。ヒンジ452の下部には、本実施形態1のストッパ153、154と同様に機械的ストッパ453、454が形成されている。
【0039】
実施形態4と実施形態2との主な差異は、ヒンジ452の下部が機械的ストッパ453、454からなる点にある。
【0040】
図9に示すように、ミラー素子451は電極423に静電吸着され、ヒンジ452は変形することにより傾斜する。ミラー素子451が、ストッパ453に接触することで、電極423上のエッチング停止層415に接触することを防止する。したがって、電気的な短絡に加えて、ミラー素子451がエッチング停止層415に接触することも防止できる。
【0041】
図10は、ミラー装置におけるミラー素子を示す断面図であって、図8に示す生産工程を説明するための図である。犠牲層481は、ミラー素子451を形成するためのベースである。犠牲層481は、無機またはSiO等の非晶質材料からなり、エッチング停止層415およびエッチング停止層415表面から延在する構成要素の上に堆積される。ミラー素子451を形成した後、犠牲層481はエッチング液の蒸気であるフッ化水素酸の蒸気(HF蒸気)によって除去される。このとき、ミラー素子451、ヒンジ452、電極422、およびエッチング停止層415は、HF蒸気にさらされる。しかし、各材料はHF蒸気に対する耐性を有するため、侵食はわずかである。
【0042】
次に、基板上にMEMS装置を製造する方法について説明する。説明の便宜上、実施形態1に対応する参照番号を使用する。しかし、他の実施形態の製造方法も同様である。この方法では、電子回路が基板111上に形成される。図1図3の例において、前記電子回路は、1または複数の金属層136、137、138、139、140、141のうちの一層以上に接続されるトランジスタ116、トランジスタ117、またはその他の電子回路を含む。絶縁層(ここでは、層間誘電体とも称される)112もまた基板111に形成される。絶縁層112を貫通する貫通孔を有し、導電性材料が充填されたビア132などのビアが形成される。ビア132は、前記電子回路と電気的に接続する。電極122などの電極が絶縁層112上に形成され、電極112はビア132に電気的に接続される。
【0043】
図示されるように、複数の絶縁層または層間誘電体112、113、114を形成してもよい。したがって、基板111上の電子回路の配置に応じて、絶縁層112、113、114のそれぞれに、1または複数の金属層を堆積させてもよく、絶縁層112、113、114を貫通する1または複数のビアを形成して電極を前記電子回路に電気的に接続させてもよい。例えば、電極112は、金属層139、ビア131、金属層138、およびビア130を介してビア132に電気的に接続されていてもよい。
【0044】
本実施例において電極、ビア、金属層は、Al等の容易にエッチング可能な金属の金属化プロセス1100によって形成されてもよい。金属化プロセス1100の一例を図11に示す。図11において、金属層1104が誘電層1102上に堆積される。誘電層1102は、Siウエハなどのウエハ上に配置してもよい。フォトレジスト1106は、金属層1104の一部を保護するポジ型のパターンで塗布される。次いで、フォトレジスト1106のパターンに応じてエッチング液で金属層1104をエッチングすることによって、ここでいうビア、電極、金属層に対応する金属部1108が残る。誘電層1110は、誘電層1102および金属部1108上に堆積される。最後に、余分な誘電体がエッチングされる。例えば、誘電層1110は、化学機械研磨(CMP)によって平坦化される。金属層1104は、このプロセス1100においてエッチングされるので、サブトラクティブ法(Subtractive Process)と称することができる。
【0045】
電極、ビア、金属層が代わりに銅(Cu)、タングステン(W)等のエッチングに対してより耐性を有する材料からなる場合、図12に示すダマシンプロセス1200によって金属化してもよい。このダマシンプロセス1200では、エッチング停止層1204が誘電層1202上に形成される。誘電層1202は、Siウエハなどのウエハ上に配置してもよい。エッチング停止層1204の材料は、使用される金属材料に応じて異なっていてもよい。エッチング停止層1204上には、別の誘電層1206が形成される。フォトレジスト1208は、誘電層1206の一部を保護するネガ型のパターンで塗布される。次いで、フォトレジスト1208のパターンに応じてエッチング液で、誘電層1206をエッチングすることによって、ここでいうビア、電極、金属層に対応するトレンチまたは孔1210が残る。残存する誘電層1206および露出されたエッチング停止層1204に、金属層1212を堆積させてトレンチまたは孔1210を充填する。例えば、銅(Cu)は電気メッキによって堆積させてもよい。その後、CMPによって余剰な金属層1212が除去され、ここでいう電極、ビア、金属層に対応する金属部1214が形成される。金属部1214と残存する誘電層1206に、誘電層1216が堆積される。上述のプロセス1200は、金属層1212を追加するためにトレンチや孔1210をエッチングで形成するのでアディティブ法と称することができる。
【0046】
上述のシングルダマシンプロセスに代えて、デュアルダマシンプロセスを行ってもよい。デュアルダマシンプロセスでは、ビアおよび配線(ここでは電極または金属線とも称す)は、誘電層に孔およびトレンチをエッチングすることによって形成されてもよく、これら形成された孔やトレンチの両方に金属が堆積される。単一のフォトレジストおよびエッチング工程で、下にある金属と接続する孔を誘電層に形成し、別のフォトレジストおよびエッチング工程によって金属線用のトレンチを形成してもよい。金属を堆積させる前に、トレンチを形成し、孔を形成する、或いは、孔を形成し、トレンチを形成するといった2つの順序のいずれかを2つのフォトレジストおよびエッチング工程によって行ってもよい。
【0047】
絶縁層の数、金属化プロセスの如何に関わらず、最も外側の絶縁層や層層間誘電体11に、エッチング停止層115を形成してもよい。エッチング停止層115は、窒化アルミニウム(AlN)または酸化アルミニウム(Al)のうちの少なくとも一方から形成されてもよい。エッチング停止層115の形成には、適切な酸素分圧下で絶縁層114上に酸化アルミニウムをスパッタリングする工程が含まれていてもよい。酸化アルミニウムをスパッタリングすることによって、膜を形成することができる。エッチング停止層115の形成には、原子層堆積法によって、絶縁層114に酸化アルミニウムからなる膜を形成する工程が含まれていてもよい。
【0048】
次いで、垂直ヒンジ152が形成される。垂直ヒンジ152とは、すなわち、基板111などの基板の実装面に対して垂直に延在するヒンジである。垂直ヒンジ152は、電極122に接続される。絶縁層114上には無機または非晶質材料からなる犠牲層181が形成され、絶縁層114、電極およびエッチング停止層の配置によってはエッチング停止層上に形成することもある。ミラーまたはミラー素子151などの可動素子は、ヒンジ152上に形成される。垂直ヒンジ152およびミラー素子151の形成には、任意の数の技法を用いてもよい。そのような技法の一例として、米国特許7876488に詳細が記載されており、その内容全体をここに援用する。続いて、犠牲層181がフッ化水素酸の蒸気により除去される。
【0049】
特定の実施形態に基づいて本発明を説明してきたが、この開示を限定として解釈されるべきでないことを理解されたい。開示を読んだ後、技術に熟練した人には、様々な変更や修正が明らかになります。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内にあるすべての変更および修正を包含するものと解釈されることが意図される。
図1
図2
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図5
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図8
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図10
図11
図12