IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 常盤工業株式会社の特許一覧 ▶ ウィルビー株式会社の特許一覧 ▶ シーゲイト株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-セルフレベリング材の施工方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】セルフレベリング材の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/12 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
E04F15/12 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019220959
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2021088904
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000189800
【氏名又は名称】常盤工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504365272
【氏名又は名称】ウィルビー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506238396
【氏名又は名称】シーゲイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】太田 雅久
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-257063(JP,A)
【文献】特開2013-049999(JP,A)
【文献】特開2014-122486(JP,A)
【文献】特開2014-066078(JP,A)
【文献】特開2016-196797(JP,A)
【文献】特開2008-133156(JP,A)
【文献】特開2002-138658(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0295346(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00-15/22
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床表面の下地処理工程と、該下地処理後の床表面にセルフレベリング材を打設して養生する工程とを含むセルフレベリング材の施工方法において、
前記養生後のセルフレベリング材表面を研磨し、該研磨後のセルフレベリング材表面に、着色料を混ぜた表面強化材を塗布して乾燥させる表面処理工程を含み、
前記表面処理工程の後に、前記表面強化材を塗布したセルフレベリング材表面を再度研磨し、該再研磨後のセルフレベリング材表面に、着色料を混ぜた表面強化材を塗布して乾燥させる2回目の表面処理工程を含む、ことを特徴とする、施工方法。
【請求項2】
前記打設するセルフレベリング材に着色料を混ぜてある、請求項1に記載の施工方法。
【請求項3】
前記2回目の表面処理工程の研磨には、1回目の前記表面処理工程の研磨に使用する研磨盤よりも目の細かい研磨盤を使用する、請求項1又は2に記載の施工方法。
【請求項4】
前記2回目の表面処理工程の後に、該2回目の前記表面処理工程の研磨に使用する研磨盤よりも目の細かい研磨盤を使用して表面研磨する磨き上げ工程を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の施工方法。
【請求項5】
前記磨き上げ工程の後、被膜材を塗布してバフ仕上げする仕上げ工程を含む、請求項4に記載の施工方法。
【請求項6】
前記磨き上げ工程又は前記仕上げ工程の後に、床に目地切りして該目地に樹脂材を充填する目地処理工程を含む、請求項4又は5に記載の施工方法。
【請求項7】
前記目地に充填する樹脂材がポリユリア樹脂系のものである、請求項6に記載の施工方法。
【請求項8】
前記表面強化材がケイ酸ナトリウム系又はケイ酸リチウム系のものである、請求項1~7のいずれか1項に記載の施工方法。
【請求項9】
床表面の下地処理工程と、該下地処理後の床表面にセルフレベリング材を打設して養生する工程とを含むセルフレベリング材の施工方法において、
前記養生後のセルフレベリング材表面を研磨し、該研磨後のセルフレベリング材表面に、着色料を混ぜたケイ酸ナトリウム系又はケイ酸リチウム系の表面強化材を塗布して乾燥させる表面処理工程を含むことを特徴とする、施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する発明は、セルフレベリング材を使用した床の仕上げに関する。
【背景技術】
【0002】
工場の床などコンクリート製の床(塗床)の仕上げに、セルフレベリング材を打設する工法が使用されている(例えば特許文献1)。セルフレベリング材を使用する場合、着色料を混ぜることで所望の色の床に仕上げることができ、この着色料を混ぜたセルフレベリング材による床仕上げは、コンクリート表面のレイタンス除去(必要に応じて)→下地処理→着色料を混ぜたセルフレベリング材の打設→養生(数日程度)の工程を経て実施される(例えば引用文献1の段落0094~0099)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-226575
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のセルフレベリング材の施工方法では、セルフレベリング材に黒色の着色料を混ぜて黒色の床に仕上げようとしても、打設後養生すると、黒色が退色して灰色に仕上がってしまい、きれいな黒色に仕上げることができないでいた。本発明はこの点を改良するものであり、所望の色、特に黒色をきれいに出すことのできるセルフレベリング材の施工方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
床表面の下地処理工程と、該下地処理後の床表面にセルフレベリング材を打設して養生する工程とを含むセルフレベリング材の施工方法において、本発明によれば、前記養生後のセルフレベリング材表面を研磨し、該研磨後のセルフレベリング材表面に、着色料を混ぜた表面強化材を塗布して乾燥させる表面処理工程を実施することを特徴とする。好ましくは、前記打設するセルフレベリング材にも着色料を混ぜておくのがよい。
【0006】
この施工方法においては、前記表面処理工程の後に、前記表面強化材を塗布したセルフレベリング材表面を再度研磨し、該再研磨後のセルフレベリング材表面に、着色料を混ぜた表面強化材(1回目の前記表面処理工程と同じものがよい)を塗布して乾燥させる2回目の表面処理工程を実施するのが好ましく、この場合、該2回目の表面処理工程の研磨には、1回目の前記表面処理工程の研磨に使用する研磨盤よりも目の細かい研磨盤を使用する。前記表面強化材は、ケイ酸ナトリウム系又はケイ酸リチウム系のものを使用するのがよい。特に、ケイ酸リチウム系の表面強化材が好ましい。
【0007】
前記2回目の表面処理工程の後には、さらに(2回目のものより)目の細かい研磨盤を使用して表面研磨する磨き上げ工程を実施することができ、好ましくはこの磨き上げ工程の後、被膜材を塗布してバフ仕上げする仕上げ工程を実施する。これら磨き上げ工程又は仕上げ工程の後に、床に目地切りして該目地に樹脂材を充填する目地処理工程を実施してもよい。その充填する樹脂材は、ポリユリア樹脂系のものを使用するのがよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るセルフレベリング材の施工方法によれば、所望の色の着色料を混ぜた表面強化材を塗布することにより、退色が抑止されて発色が良くなり、セルフレベリング材を使用した床において、所望の色、特に黒色をきれいに出すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るセルフレベリング材の施工方法を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に、本実施形態に係る施工方法のフローチャートを示し、以下、これに沿って説明する。本実施形態の施工方法は、黒色の塗床を得ることを目的とする。ただし、黒色に限らず、その他の色であっても従来に比べて発色の良好な塗床を得ることができる。
【0011】
工程1において、工場等のコンクリート製の床表面のレイタンス除去を行う。レイタンス除去には、施工面積その他の条件に応じて、液剤の塗布式や散布式、あるいは乾式(はつり、ブラッシング等)を使用する。レイタンス除去は、床表面の状態によっては不要の場合もある。
【0012】
レイタンス除去が終わると、工程2で、ひび割れの処理やセルフレベリング材の接着性向上などを目的とした下地処理を実施する(下地処理工程)。本実施形態においては、ポリウレタン樹脂系補修材(ひび割れ処理)を床表面に塗布して珪砂(接着性向上)を散布する。これに加えて研磨やショットブラストを実施してもよい。
【0013】
下地処理後、工程3で、セルフレベリング材を床表面に打設して均す。このときのセルフレベリング材は、セメント系のセルフレベリング材で、本来灰色であるが、黒色の着色料(カーボンブラック組成物)を1%ほど混ぜ黒くして使用する。この着色料を混ぜたセルフレベリング材を水で溶いて打設し、硬化前に粗く均す。軽く均しておけば、後はセルフレベリングで平らになる。
【0014】
セルフレベリング材の打設後、工程4で、数日~1週間程度養生する。
【0015】
養生後、工程5~工程7の表面処理工程を実施する。まず工程5で、硬化したセルフレベリング材の表面を研磨する。この工程5での表面研磨は、ダイヤモンド砥粒の研磨盤を使用した乾式で、後述の2回目以降の研磨に比較して粗く研磨する。例えば、Substrate Technology Inc.のEGT Diamond SystemでEGT#1~EGT#3の研磨盤を使用する。研磨後、工程6で、研磨したセルフレベリング材表面に、着色料を混ぜた表面強化材をローラーで塗布する。着色料は、例えば、表面強化材:着色料=5:1の割合で混ぜる。このときの着色料は、上記セルフレベリング材に混ぜた着色料と同じカーボンブラック組成物の黒色である。表面強化材は、ケイ酸ナトリウム系又はケイ酸リチウム系の浸透性コンクリート表面強化材を使用するのが好ましく、ここではケイ酸リチウム系表面強化材を使用する。表面強化材の塗布後、工程7で、数時間~数日程度乾燥させる。ここまでの工程でも黒色の発色は十分に得られる。より見栄え良くするために、以下の工程をさらに実施する。
【0016】
工程7の乾燥後、工程8~10の2回目の表面処理工程を実施する。工程8で、工程7で乾燥させた表面強化材塗布後のセルフレベリング材表面を再研磨する。この再研磨では、工程5の1回目の表面処理工程の研磨に使用した研磨盤よりも目の細かいダイヤモンド砥粒の研磨盤を使用して、同じく乾式研磨でどちらかというと表面をつるつるにする。例えば、Substrate Technology Inc.のEGT Diamond SystemでEGT#4~EGT#5の研磨盤を使用する。研磨後、工程9で、研磨したセルフレベリング材表面に、着色料を混ぜた表面強化材をローラーで塗布する。着色料は、例えば1回目と同様に表面強化材:着色料=5:1の割合で混ぜる。このときの着色料、表面強化材は共に、1回目の工程6のものと同じである(同じでなくともよい場合もある)。表面強化材の塗布後、工程10で、数時間~数日程度乾燥させる。
【0017】
工程8~10の2回目の表面処理工程を実施した後、工程11で、2回目の研磨時よりもさらに目の細かいダイヤモンド砥粒の研磨盤を使用して乾式研磨し、床表面を磨き上げる。例えば、Substrate Technology Inc.のEGT Diamond SystemでEGT#6~EGT#8の研磨盤を使用する。
【0018】
磨き上げの後、工程12で、被膜材を床表面に塗布し、そして工程13でバフ仕上げする。被膜材は、アクリル系シール材を使用し、これをローラー塗布する。乾いたらバフで仕上げ磨きを行う。被膜材により紫外線劣化を抑え、経時的な退色を抑制する効果が得られる。
【0019】
工程11の磨き上げの後、工程12の被膜材塗布までの間、あるいは、工程13でバフ仕上げした後に、床に目地切りして該目地に樹脂材を充填する目地処理工程14~15を実施してもよい。目地切りは収縮目地を床に入れるものであり、その目地に、ポリユリア樹脂系の樹脂材を充填する。
【0020】
以上のセルフレベリング材の施工方法によれば、所望の色の着色料を混ぜた表面強化材を表面に塗布することにより、退色が抑止されて発色が良くなり、セルフレベリング材を使用した床において、所望の色、特に黒色がきれいに出る。
図1