(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】動物侵入防止シート
(51)【国際特許分類】
A01M 29/30 20110101AFI20231003BHJP
A01M 21/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
A01M29/30
A01M21/00 A
(21)【出願番号】P 2019235152
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】596045177
【氏名又は名称】株式会社白崎コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】弁理士法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐治 健介
(72)【発明者】
【氏名】小谷 智博
(72)【発明者】
【氏名】東山 真也
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-082624(JP,A)
【文献】特許第6219216(JP,B2)
【文献】特開2018-143175(JP,A)
【文献】特開2017-063780(JP,A)
【文献】特許第6620319(JP,B2)
【文献】特開2017-093415(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107339010(CN,A)
【文献】米国特許第4527150(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/30
A01M 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防護柵の下方からの動物の侵入を防ぐ動物侵入防止シートであって、
防護柵の下方の地面に敷設される敷設シート部と、前記敷設シート部に接合され、前記防護柵に固定される起立シート部とを備え、
前記敷設シート部が防草シート材から
成り、
前記敷設シート部と前記起立シート部との接合部において、前記敷設シート部の一の端縁側と前記起立シート部の一の端縁側とが同じ向きに重ねられて接合されていることを特徴とした動物侵入防止シート。
【請求項2】
前記防草シート材が不織布から成ることを特徴
とした請求項1に記載の動物侵入防止シート。
【請求項3】
前記起立シート部がネット材から成ることを特徴
とした請求項1または請求項2に記載の動物侵入防止シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物侵入防止シート、より詳しくは、防護柵の下方からの動物の侵入を防ぐ動物侵入防止シートに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、例えば山間地の高速道路等において、道路内への立ち入りや横断等を防ぐため、金網フェンスや格子フェンス等の各種の防護柵が道路に沿って設置されている。ところが、従来、これら防護柵の下方と地面との隙間からタヌキやイノシシ等の野生動物が侵入し、道路内で衝突事故等を引き起こす問題があった。
【0003】
そこで、現在までに、防護柵の下方の隙間を塞いで動物の侵入を防ぐ侵入防止ネットが提案されている(例えば、下記特許文献1、2参照)。この侵入防止ネットは、弾性網状体から構成され、防護柵に装着する際に、網状体自身をほぼ直角に曲げて上方の起立部を防護柵に固定するとともに、下方のスカート部を地面に接地させるものであり、網状体の曲げ弾性を利用してスカート部の接地圧を高めて防護柵の下方からの野生動物の侵入を防ごうとするものである。
【0004】
しかしながら、この従来の侵入防止ネットは、網状体から構成されていたため、防護柵への装着後、スカート部が接地する地面に雑草が繁茂することになり、其処に集まる昆虫やネズミ等の小動物や葛等の蔓性植物の根を餌とするイノシシやタヌキ等によって地面が掘り返され、その結果、スカート部と地面との間に一部隙間が生じ、野生動物の侵入を招く難点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5311198号公報
【文献】特許第6219216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の侵入防止ネットに上記のような難点があったことに鑑みて為されたもので、防護柵の下方に雑草が繁茂するのを抑制して確実に防護柵の下方からの動物の侵入を防ぐことができる動物侵入防止シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、防護柵の下方からの動物の侵入を防ぐ動物侵入防止シートであって、防護柵の下方の地面に敷設される敷設シート部と、前記敷設シート部に接合され、前記防護柵に固定される起立シート部とを備え、前記敷設シート部が防草シート材から成り、
前記敷設シート部と前記起立シート部との接合部において、前記敷設シート部の一の端縁側と前記起立シート部の一の端縁側とが同じ向きに重ねられて接合されていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明は、前記防草シート材が不織布から成ることを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、前記起立シート部がネット材から成ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る動物侵入防止シートによれば、防護柵の下方の地面に敷設する敷設シート部が防草シート材から構成されているので、防護柵への装着後、敷設シート部が敷設された地面に葛等の蔓性植物その他の雑草が繁茂するのを抑制することができ、イノシシ等の野生動物が地面を掘り返して敷設シート部と地面との間に隙間が生じるのを未然に防ぐことができ、長期間に亘って確実に動物の侵入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の動物侵入防止シートの斜視図である。
【
図2】本実施形態の動物侵入防止シートの起立シート部を起立させた状態の斜視図である。
【
図3】本実施形態の動物侵入防止シートの起立シート部の部分拡大図である。
【
図4】本実施形態の動物侵入防止シートを防護柵に装着した状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の動物侵入防止シート10は、防護柵の下方の地面に敷設される敷設シート部1と、この敷設シート部1に接合され、防護柵に固定される起立シート部2とから構成されている。
【0014】
敷設シート部1は、長尺帯状の防草シート材から成り、本実施形態では、防草シート材として、ポリエステル長繊維から成る幅65cm×長さ25m×厚み約2mmの柔軟な黒色の不織布を使用している。この不織布は、遮光率99.5%以上の遮光性を有しており、主に日光等を遮光することによって雑草の成長・繁茂を抑制する。
【0015】
起立シート部2は、長尺帯状のネット材から成り、本実施形態では、ネット材として、幅60cm×長さ25m×厚み約0.6mmの柔軟な灰色のネット材を使用している。このネット材は、ポリエステル繊維から構成され、その表面にポリ塩化ビニールが被覆されており、
図3に示すように、一辺約6mmの略正方形状の通孔21が多数、縦横方向に並んで開設されている。
【0016】
本実施形態の動物侵入防止シート10は、これら敷設シート部1及び起立シート部2のそれぞれの片側の長辺部のみが互い接合されて構成されている。即ち、
図1及び
図2に示すように、敷設シート部1と起立シート部2との接合部3において、敷設シート部1の一の端縁12側と起立シート部2の一の端縁22側とが同じ向きになるように重ねられて接合されている。
【0017】
本実施形態では、敷設シート部1の一の端縁12と起立シート部2の一の端縁22とが揃えられた状態で、敷設シート部1と起立シート部2とが本縫いにより縫い合わされて接合されている。図中、符号31で指示するものは、計二列の縫い目である。
【0018】
図4に示すように、本実施形態の動物侵入防止シート10を既設の防護柵Fに装着する際には、まず、必要に応じて防護柵Fの下方の地面Gの雑草等を除去して整地した後、敷設シート部1及び起立シート部2を全体に重ねた状態(
図1参照)でロール巻きされた動物侵入防止シート10を、その接合部3を防護柵F側へ向けて地面G上に置き、防護柵Fに沿って展開し、敷設シート部1で防護柵Fの下方の地面Gを覆う。このとき、例えば、防護柵Fの設置状況等に応じて、敷設シート部1をその幅方向または長さ方向に適宜、切断し、地面Gを隙間なく覆う。
【0019】
次いで、起立シート部2を防護柵Fの金網面等に沿って起立させ、起立シート部2を防護柵Fに仮止めした後、敷設シート部1の所要位置にアンカーピン4を打ち込んで敷設シート部1を地面Gに固定する。打ち込んだアンカーピン4の頭部には、必要に応じて遮光性のテープ41を貼着する。
【0020】
そして、仮止めした起立シート部2を公知の結束バンド5を用いて防護柵Fの金網や支柱等に固定することによって、既設の防護柵Fに動物侵入防止シート10を装着する。こうして、防護柵Fの下方からの野生動物の侵入を防止するのである。
【0021】
このように本実施形態の動物侵入防止シート10は、防護柵Fの下方の地面Gに敷設する敷設シート部1が防草シート材から構成されているので、防護柵Fへの装着後、敷設シート部1が敷設された地面Gに葛等の蔓性植物その他の雑草が繁茂するのを抑制することができ、例えばイノシシが大好物の葛の根を求めて地面Gを掘り返して敷設シート部1と地面Gとの間に隙間が生じるのを未然に防ぐことができ、長期間に亘って確実に動物の侵入を防止することができる。
【0022】
しかも、本実施形態の動物侵入防止シート10は、敷設シート部1の一の端縁12側と起立シート部2の一の端縁22側とが同じ向きに重ねられて接合されているので、起立シート部2を防護柵Fに沿って起立させたとき、この起立シート部2の起立に伴って敷設シート部1の一の端縁12が持ち上げられて地面Gとの間に隙間が生じることもなく、敷設シート部1の一の端縁12を確実に地面Gに接地させることができ、敷設シート部1の全面に亘って有効に雑草の繁茂を抑制することができる。
【0023】
また、このように敷設シート部1の一の端縁12側と起立シート部2の一の端縁22側とが同じ向きに重ねられて接合されているので、
図1に示すように、接合部3を含め、起立シート部2を敷設シート部1上に隙間なく重ねることができ、よりコンパクトにロール巻きすることができる。したがって、動物侵入防止シート10の防護柵Fへの装着作業性は勿論のこと、その搬送・保管作業性も格段に向上させることができる。
【0024】
また、本実施形態の動物侵入防止シート10は、敷設シート部1の防草シート材が不織布から構成されているので、例えば出芽時等の雑草の突き抜けや野生動物の踏み付けにも強く、長期間に亘って雑草の繁茂を抑制することができる。
【0025】
また、本実施形態の動物侵入防止シート10は、起立シート部2が多数の通孔21を有するネット材から構成されているので、これら通孔21に結束バンド等を差し通しながら起立シート部2を防護柵Fに固定することができ、防護柵Fへの装着作業性を向上させることができる。また、これら多数の通孔21により、起立シート部2の風圧を低減化することができ、長期間に亘って動物の侵入を防ぐことができる。
【0026】
以上、本実施形態の動物侵入防止シートについて説明したが、本発明は他の実施形態でも実施することができる。
【0027】
例えば、上記実施形態では、敷設シート部1と起立シート部2とを縫合により接合しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、敷設シート部1と起立シート部2とを例えば接着、溶着、ピン留め等の他の手段により直接的にまたは間接的に接合するようにしてもよい。
【0028】
また、上記実施形態では、敷設シート部1の一の端縁12と起立シート部2の一の端縁22とを揃えて接合しているが、例えば、起立シート部2の一の端縁22を、敷設シート部1の一の端縁12よりも中寄りの位置に接合してもよい。この接合位置については、装着すべき防護柵の構造や防護柵の設置環境等に応じて種々の設計変更が可能である。また、敷設シート部1及び起立シート部2の形状、サイズについても、状況に応じて種々の設計変更が可能である。
【0029】
また、上記実施形態では、敷設シート部1を構成する防草シート材として、高い遮光率を有する不織布を採用しているが、例えば、織布やフィルム材を採用してもよく、また、これらを複数層、積層させた複合シート材を採用してもよい。また、この敷設シート部1を構成する防草シート材は、必ずしも高い遮光率を有している必要はなく、例えば、所定の強度を有し、出芽・成長時等に上方へ伸びようとする雑草を上方から物理的に押さえることよって雑草の繁茂を抑制する防草シート材を採用してもよい。この防草シート材の材質、構造等については、雑草の種類等を含む防護柵の設置環境等に応じて種々の設計変更が可能である。
【0030】
本発明は、その他、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づいて種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内でいずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施してもよく、また、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成したり、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る動物侵入防止シートは、道路や歩道等に沿って設置されたガードレールやガードロープ等の防護柵に装着して利用することができるほか、例えば、田畑、果樹園、各種の施設等において、野生動物の侵入を防ぐために設置された防護柵に装着して利用することもできる。
【符号の説明】
【0032】
10 動物侵入防止シート
1 敷設シート部
12(敷設シート部の)一の端縁
2 起立シート部
21 通孔
22(起立シート部の)一の端縁
3 接合部
F 防護柵
G 地面