(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】細胞培養培地のためのサプリメントとしての安定化無定形炭酸カルシウム
(51)【国際特許分類】
C12N 5/07 20100101AFI20231003BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C12N5/07
C12N1/00 G
(21)【出願番号】P 2018536781
(86)(22)【出願日】2017-01-17
(86)【国際出願番号】 IL2017050058
(87)【国際公開番号】W WO2017125917
(87)【国際公開日】2017-07-27
【審査請求日】2019-12-18
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-11
(32)【優先日】2016-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515217694
【氏名又は名称】アモーフィカル リミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ベン,ヨセフ
(72)【発明者】
【氏名】シャハル,アブラハム
(72)【発明者】
【氏名】アラブ,アミール
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】飯室 里美
【審判官】牧野 晃久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/122658(WO,A1)
【文献】J.Mater.Chem.B,2016年,Vol.4,p.376-386
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N1/00-7/08
BIOSIS/MEDLINE/CAplus/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養培地であって、ここで当該細胞培養培地は少なくとも1種類の安定化剤によって安定化された無定形炭酸カルシウム(ACC)が補充され、ここで当該細胞培養培地はヒトまたは非ヒト哺乳動物の生殖体、胚および卵巣から選択される生物学的培養物の発達、または成熟に適しているおよび前記発達、または成熟を高めるものであり、当該安定化剤は2~10個のリン酸基を含むポリリン酸である、上記細胞培養培地。
【請求項2】
前記胚が、ヒト胚、または家畜動物、愛玩動物、およびげっ歯類胚から選択される非ヒト哺乳動物胚であり、前記生殖体の細胞が、卵母細胞または精子細胞から選択される、請求項1に記載の細胞培養培地。
【請求項3】
前記細胞培地が、DMEM/F12、分割培地、DMEM、RPMI1640、MEM、IMDM、L-15培地(Leibovitz)、MCDB培地、培地199、opti-MEM、ハムF-12、ハムF-10、GMEM、エイムス培地、イ-グル基礎培地(BME)、クレイコム、クリック培地、グラスゴ-最小必須培地(GMEM)、MegaCell培地、マッコイ5A改変培地、NCTC培地、ウィリアムズ培地E、ウェイマウス培地、TC-10、IPL-10培地、精子の分離、洗浄、または成熟用培地、受精用培地、および胚発達用培地から選択される、請求項1または2に記載の細胞培養培地。
【請求項4】
前記安定化剤が、三リン酸である、請求項1に記載の細胞培養培地。
【請求項5】
ヒトまたは非ヒト哺乳動物の生殖体、胚および卵巣から選択される動物細胞の培養培地へのサプリメントとしての使用のための、少なくとも1種類の安定化剤によって安定化された無定形炭酸カルシウム(ACC)であって、ここで当該安定化剤が2~10個のリン酸基を含むポリリン酸であり、得られた細胞培養培地が前記動物細胞の成熟、または発達を高める、上記無定形炭酸カルシウム(ACC)。
【請求項6】
少なくとも1種類の安定化剤によって安定化された無定形炭酸カルシウム(ACC)を含む、動物細胞培養培地サプリメントであって、ここで
、動物細胞が、ヒトまたは非ヒト哺乳動物の生殖体、胚または卵巣から選択され、当該
安定化剤が2~10個のリン酸基を含むポリリン酸で
あり、得られたサプリメントがヒトまたは非ヒト哺乳動物の生殖体、胚または卵巣から選択される動物細胞の培養物の発達、または成熟を高める、上記サプリメント。
【請求項7】
安定化された無定形炭酸カルシウム(ACC)を動物細胞培養培地のサプリメントとして使用するための、キットであって、
ここで、動物細胞が、ヒトまたは非ヒト哺乳動物の生殖体、胚または卵巣から選択され、
(i)請求項6に記載のサプリメント、または
(ii)塩化カルシウム、炭酸ナトリウム、安定化剤、および当該塩化カルシウム、炭酸ナトリウム、および安定化剤から安定化ACCを調製するための取扱説明書であって、ここで当該安定化剤は2~10個のリン酸基を含むポリリン酸である、上記塩化カルシウム、炭酸ナトリウム、安定化剤、および取扱説明書、
を含み、かつ
動物細胞培養培地を調製するための細胞培養培地と組み合わされる当該安定化ACCまたは当該サプリメントの使用のための取扱説明書を含み、
ここで得られたサプリメント培地はヒトまたは非ヒト哺乳動物の生殖体、胚および卵巣から選択される動物細胞の生物学的培養物の成熟、または発達を高め、
さらに任意選択で細胞培養培地を含む、キット。
【請求項8】
生物学的培養物の成長を高めるための方法であって、当該生物学的培養物を2~10個のリン酸基を含むポリリン酸によって安定化されたACCに暴露することを含み、前記生物学的培養物の成長が、ヒトまたは非ヒト哺乳動物の生殖体、胚および卵巣から選択される生物学的培養物の成熟、および発達の少なくとも1つから選択される、上記方法。
【請求項9】
インビトロでの胚発達を高めることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
卵母細胞および精子細胞から選択される生殖体の成熟を高めることを含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養培地のサプリメントとしての安定化無定形炭酸カルシウムを提供する。特に本ACCは細胞および組織培養の成長をインビトロで高めるために有用である。本発明のさらなる態様では、安定化ACCを含む細胞培養培地サプリメントが提供される。
発明の背景
【0002】
細胞培養技術は、適切な栄養素および条件を加えるとき、組織から取り出された動物、植物、または昆虫細胞をインビトロで成長させることができる。細胞培養技術は、細胞過程の検討、特定の細胞型に対する様々な化学化合物または薬剤の効果を評価すること、工業スケ-ルで価値ある生物製剤を合成すること、および移植目的のために拡張した細胞の産生を含む多くの応用を有する。細胞培養技術は体外受精、幹細胞研究、およびワクチン産生で有用である。
【0003】
細胞培養技術の最も重要な利用の一つは、モノクロ-ナル抗体のような特定タンパク質を含む生物製剤の大量生産である。このような商業的価値のある生物製剤の数は、ここ数十年にわたって急速に増加しており、哺乳動物細胞培養技術に現在の広範な興味をもたらしている。
【0004】
培養細胞に使用される培地の組成は、細胞生存、増殖、および目的の生物製剤の産生に対するその影響のため、非常に重要なものである。細胞培養に対して種々のレベルの特異性を有する多くの異なる細胞培養培地が開発された。培地のいくつかは異なる細胞培養の要求事項に従って補充され得る基礎培地であるが、他はより複雑な培地である。所望の効果を得るために、数百の個別化合物が細胞培養培地に加えられ得る。しかし培地サプリメントの概念は通常、細胞培養の確立および維持を全般的に促進する物質の添加に限られている。中でも最も使用されるサプリメントはミネラル、ビタミン、アミノ酸、ホルモン、および血清であり、最も頻繁なものはウシ胎児血清、ウマ血清、またはヒト血清である。しかし、血清の使用は多くの場合で望ましくない可能性があり、血清含量を低下した成長培地または無血清培地が使用される。
【0005】
培地、そして特に細胞および組織培養の維持および増殖を可能にし、特に効果的な大規模製造培養条件をもたらすことができる培地へのサプリメントの研究および開発が進行している。
【発明の概要】
【0006】
安定化無定形炭酸カルシウム(ACC)が補充された細胞培養培地は、他のカルシウム源が補充された培地で成長させた細胞と比べて、様々な細胞の高められた成長をもたらすことが、驚くべきことに発見されている。特に、安定化ACCは、デュシェンヌ型筋ジストロフィ-のモデルであるmdx細胞における筋管形成を高めたことが認められている。さらに、胚の高められたインビトロ発達が、「ワンステップ」の単一培養培地、または「逐次」(分割培地)のどちらかで、安定化ACCを含む培地で認められた。安定化ACCを補充された分割培地で成長させた胚は、迅速な卵割および高い孵化率を示したことが驚くべきことに認められている。他の場合では、ACCが補充された培地で成長させた神経細胞は高められた神経細糸再生を示し、ACC補充培地で成長させた幹細胞は速い増殖および分化を示した。さらに驚くべきことに、ACCの存在中でインキュベ-ションされた精子は、スイムアップ法後に著しく高い運動率を示し、上相(運動性精子)でACCとともにインキュベ-ションされた精子細胞の濃度は、未処置サンプルにおける濃度よりも7倍まで高かったことが認められた。さらに、ACCは精子サンプルへのCa2+の添加で認められている精子運動率への二相性効果を有さなかったことが示されている。これらすべての結果は、細胞培養培地へのサプリメントである安定化ACCが細胞成長を高めて促進し、優れた機能性を付与することを示す。
【0007】
一つの態様では、本発明は細胞培養培地を提供し、ここで細胞培養培地は少なくとも1種類の安定化剤によって安定化された無定形炭酸カルシウム(ACC)が補充され、ここで当該細胞培養培地は生物学的培養の成長に適している。いくつかの実施形態により、培地は細胞の培養、組織培養、器官培養、または器官を成長させるのに適している。他の実施形態により、安定化ACCが補充された細胞培養培地は、細胞、組織、および器官の成長を高めるまたは促進することができ、例えば、増殖、成熟、繁殖、再生、発達、凍結保存などの保存、および/または分化を高めることができる。一つの実施形態により、細胞は動物、植物、または昆虫細胞である。一つの実施形態により、安定化ACCが補充された細胞培養培地は、細胞培養、組織培養、器官培養の成長に適しており、任意に成長を高めることができ、ここで当該培養は動物、植物、または昆虫の細胞、組織、または器官培養である。一つの実施形態により、安定化ACCが補充された細胞培養培地は、胚性、絨毛性、羊水、造血性、間葉性、神経、グリア、鼻腔嗅粘膜(NOM)、成体組織特異的、および誘導多能性幹細胞のような幹細胞の成長、あるいはヒトまたは非ヒト哺乳動物胚のような胚の成長に適している。他の実施形態では、このような細胞培養培地は、幹細胞増殖、拡張、および/または分化を高めることができ、生殖体成熟を高めることができ、あるいは胚の発達を高めることができる。いくつかの実施形態により、安定化ACCが補充された細胞培養培地は成長に適しており、任意に、酵母または細菌の成長を高めることができる。いくつかの実施形態では、細菌は大腸菌またはビフィドバクテリウムおよびラクトバチルス属の細菌のようなプロバイオティック細菌である。前記実施形態のいずれか一つにより、本発明の細胞培養培地は、細胞の成長に適したいずれかの培地であり得、例えば、生物学的流体を含む天然培地、あるいは平衡化塩溶液、基礎培地、または複合培地のような人工培地などが挙げられる。本発明の細胞培養培地は、さらに従来技術で知られているように補充され得る。本発明により、細胞培養培地は、少なくとも1種類の安定化剤で安定化されたACCによって補充される。安定化剤は従来技術で知られているいずれかの物質であり得る。特定の実施形態では、安定剤は、無機ポリリン酸のようなポリリン酸、リン酸化アミノ酸、ビスホスホネ-ト、有機酸、およびそれらのいずれかの併用から選択される。いくつかの実施形態により、安定化剤は当該安定剤の組み合わせであり、例えば、クエン酸のような有機酸との無機ポリリン酸の併用、または有機酸とのリン酸化アミノ酸の併用などが挙げられる。
【0008】
別の態様により、本発明は細胞培養培地へのサプリメントとして使用するために、少なくとも1種類の安定化剤によって安定化された無定形炭酸カルシウム(ACC)を提供する。一つの実施形態により、安定化ACCは培地の調製の際に培地に加えられる。別の実施形態により、ACCは使用前に培地に加えられる。
【0009】
さらに別の態様により、本発明は少なくとも1種類の安定化剤によって安定化された無定形炭酸カルシウム(ACC)を含む細胞培養培地サプリメントを提供する。一つの実施形態により、細胞培養培地サプリメントは安定化されたACCを含み、安定化ACCは培地の調製の際に培地に加えられる。別の実施形態により、サプリメントは使用前に培地に加えられる。細胞培養培地サプリメントは、固体、液体、または半液体サプリメントであり得る。前記実施形態のいずれか一つにより、ACCは少なくとも1種類の安定化剤によって安定化される。このような細胞培養培地サプリメントは、細胞、組織、および器官の成長を高めることができ、例えば、増殖、成熟、繁殖、再生、発達、および/または分化を高めることができる。
【0010】
さらなる態様により、本発明は少なくとも1種類の安定化剤によって安定化され、細胞培養培地用のサプリメントとして製剤化される無定形炭酸カルシウム(ACC)を提供し、ここで当該ACCは少なくとも1種類の安定化剤によって安定化される。
【0011】
別の態様により、本発明は生物学的培養の細胞成長を高めるための方法を提供し、生物学的培養を少なくとも1種類の安定剤によって安定化されたACCに暴露することを含む。いくつかの実施形態により、生物学的培養は、細胞の培養、細胞培養、組織培養、器官培養、および細菌培養から選択される。一つの実施形態では、本方法は、細胞成長を高める、特に、筋管形成を高める、胚発達を高める、神経細胞の再生を高める、ならびに生殖体の成熟および/または保存を高めることを含む。
【0012】
一つの態様により、本発明は、本発明の細胞培養培地用のサプリメントとして使用するためのACC、または安定化ACCを含む細胞培養培地サプリメント、および細胞培養培地と組み合わせた当該ACCまたは当該サプリメントの使用のための取扱説明書を含むキットを提供する。特定の態様により、本発明は少なくとも1種類の安定剤によって安定化された無定形炭酸カルシウム(ACC)、および細胞培養培地と組み合わせる当該ACCの使用のための取扱説明書を含むキットを提供する。一つの実施形態により、ACCは細胞培養培地サプリメントとしての使用のためのものである。いくつかの実施形態により、本キットは少なくとも1種類の安定剤によって安定化されたACCを含む細胞培養培地サプリメント、および細胞培養培地と組み合わせる当該ACCの使用ための取扱説明書を含む。本発明のキットはさらに、細胞、組織、または器官の成長に適したいずれかの既知の培地を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】培養した脊髄-後根神経節(SC-DRG)スライスから得た神経発芽における異なるカルシウム源の効果を示す図である。下記のカルシウム化合物(2mMのCa
2+濃度)に暴露されたSC-DRGスライスから成長した神経線維の免疫蛍光染色(抗神経細糸抗体)。(A)ACC-エチドロン酸、(B)ACC-ホスホセリン、(C)胃石、(D)結晶炭酸カルシウム(CCC)、および(E)CaCl
2溶液(対照)。原倍率×100。
【
図2】キトサンマイクロキャリア(MC)で培養された脳細胞から得られる神経発芽における、(A)エチドロン酸によって安定化されたACC、および(B)CaCl
2溶液(対照)の効果を示す図である。ACC-エチドロン酸またはCaCl
2のどちらかの2mM存在下における培養30日後に、脳細胞-キトサンMC凝集物から成長した神経線維の免疫蛍光染色(抗神経細糸抗体)を示す。
【
図3】健全な骨格筋培養における筋管の形成に対するACCの効果を示す図である。原倍率×40。骨格筋培養は、下記のカルシウム化合物に暴露させた(2mMの最終Ca
2+濃度)。ACC-エチドロン酸、ACC-ADP、胃石、結晶炭酸カルシウム(CCC)、およびCaCl
2溶液(対照)。培養を4日および7日後に固定してギムザで染色した。骨格筋培養による筋管形成の向上がACC処理細胞で認められた。
【
図4】mdx細胞株培養における筋管の初期形成に対する培養培地中のACCの効果を示す図である。CaCl
2、ACC-ET、およびACC-ホスホセリン(ACC-PS)を含む培地に暴露された培養のギムザ染色を示す。原倍率×100。
【
図5】2種のACC調製物(ACC-ETおよびACC-PS)対CaCl
2に暴露されたmdx筋細胞株で測定されたクレアチニンキナ-ゼ(CK)量を示す図である。
【
図6】mdxマウス一次培養における筋管の形成に対するACC(ACC-PS、ACC-PP対対照(CaCl
2))の効果(ギムザ染色、原倍率×50)を示す図である。
【
図7】mdxマウス一次培養における筋管の形成に対するACCの効果を、ミオシンの免疫染色によって実証して示す図である。対照(CaCl
2)、ACC-PS、ACC-ポリリン酸(ACC-PP)。原倍率×100。
【
図8】インビトロでのマウス胚発達に対する安定化ACCの効果を示す図である。
【
図9】様々な培地処理の機能として培養10日後の骨芽細胞のアリザリンレッド染色を示す図である。培地はA-ACC、B-CaCl
2の1mMの追加Ca
2+が補充され、C-対照はCa
2+未補充だった。
【
図10】様々な培地処理の機能として培養10日後の骨芽細胞のアルカリホスファタ-ゼ染色を示す図である。培地はA-ACC、B-CaCl
2の1mMの追加Ca
2+が補充され、C-対照はCa
2+未補充だった。
【
図11】添加された1mMの追加Ca
2+の異なる供給源による培地で成長させたmdx細胞株のアリザリンレッド染色(A~C)およびアルカリホスファタ-ゼ(D~F)を示す図である。AおよびD-ACC、BおよびE-CaCl
2、またはCおよびF-対照(カルシウムの追加補充なし)。
【
図12】卵母細胞を囲む顆粒膜細胞が完全であるインビトロ培養された卵巣(A)の安定化ACCの効果を、不完全な顆粒膜細胞および卵母細胞が胚胞段階で観察される対照(B)(培地にACC無添加)に対して示す図である。本発明の詳細な説明
【0014】
細胞培養培地へのACCの添加が様々なタイプの細胞の成長を高めることが驚くべきことに発見されている。一つの態様により、本発明は無定形炭酸カルシウム(ACC)が補充された細胞培養培地を提供し、ここで当該ACCは少なくとも1種類の安定化剤によって安定化される。他の態様により、本発明は細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のための安定化ACCを提供する。特定の態様では、本発明は安定化ACCを含む細胞培養サプリメントを提供する。
【0015】
本発明の各態様のため、個別的および集合的に、次の用語が使用され、特定のパラメ-タが後述のように定められる。
【0016】
用語「細胞培養培地」、「成長培地」、および「培養培地」は本明細書において交換可能で使用され、細胞、組織、または器官のような生物学的培養の成長に使用される、適している、または維持することができ、当該細胞、組織、または器官に適切な環境をもたらす培地を意味する。異なる細胞培養培地は異なる特性を有して異なる成分を含み得るが、ほとんどすべての培地は等張性培地であり、細胞成長に適した浸透圧を有する。このため、細胞培養培地は等張性細胞培養培地である。本明細書で使用される用語「等張性」は、37℃で270~300mOsmol/kgの範囲である水溶液の浸透圧を有する細胞培養培地を意味する。このため、一つの実施形態では、水またはより特定的には脱イオン水は、それ自体は細胞培養培地として考えられない。いくつかの実施形態により、組織培養は塩化ナトリウム、塩化カルシウム、および第一または第二リン酸ナトリウムのような亜リン酸塩源を含む。いくつかの実施形態により、培地は細胞培養、組織培養、器官培養、または器官を成長させるのに適している。細胞は真核生物または原核生物であり得る。特に、細胞培養培地は、細胞の成長真核生物培養、組織培養、または器官培養に適している培地を意味する。いくつかの実施形態では、培地は完全培地、基礎培地、細胞培養培地サプリメントが補充された基礎培地、様々な量の血清を有する培地、または化学的に規定された培地であり得る。
【0017】
本明細書で使用される用語「補充された」は、少なくとも1種類の安定剤によって安定化ACCが加えられた培地を意味し、このため、培地は少なくとも1種類の安定剤によって安定化されたACCを含む。用語はACCとともに調製された培地およびACCが使用前に添加される培地を包含する。
【0018】
このため一つの態様では、本発明は細胞培養培地を提供し、ここで細胞培養培地は少なくとも1種類の安定化剤によって安定化された無定形炭酸カルシウム(ACC)が補充され、ここで当該細胞培養培地は生物学的培養の成長に適している。
【0019】
用語「培養」、「生物学的培養」、および「細胞の培養」は本明細書において交換可能で使用され、所定の条件においてインビトロで成長された細胞、組織、器官培養、または器官を意味する。いくつかの実施形態では、生物学的培養は動物、植物、または昆虫の細胞培養、動物、植物、または昆虫の組織培養、動物、植物、または昆虫の器官培養、酵母培養、および細菌培養から選択される。
【0020】
本明細書で使用される用語「細胞培養」は、インビトロ環境で人工的に維持、培養、または成長される多細胞真核細胞の細胞を意味する。細胞培養は、細胞が一定の撹拌によって、またはマイクロキャリアにおいて液体培地で培養される懸濁培養、あるいは接着または単層培養であり得る。
【0021】
本明細書で使用される用語「組織培養」は、インビトロで維持または成長される組織を意味する。
【0022】
本明細書で使用される用語「器官培養」は、インビトロで培養される器官の一部または全器官を意味する。
【0023】
用語「幹細胞」は、異なる細胞型に増殖および分化する能力を有する細胞を意味する。
【0024】
用語「無定形炭酸カルシウム」および「ACC」は本明細書において交換可能で使用され、少なくとも1種類の安定化剤によって安定化された炭酸カルシウムの非結晶型を意味する。ACCは天然源または化学的な合成から得ることが可能である。用語はまた、胃石から得られるACCのような自然に安定化されたACCも含む。
【0025】
本明細書で使用される用語「天然ACC」は、天然源から分離または派生されるいずれかのACCを意味する。ACCの天然源の非限定的な例には、淡水甲殻類の胃石が含まれる。
【0026】
本明細書で使用される用語「合成ACC」は、ヒトによって生体外で産生および/または派生されるいずれかのACCを意味する。
【0027】
いくつかの実施形態により、本発明による細胞培養培地は生物学的培養の成長に適している。一つの実施形態により、生物学的培養は真核細胞または原核細胞の培養である。本明細書で使用される用語「成長」は、増殖、成熟、繁殖、再生、維持、分化、発達、保存、凍結保存、およびそれらのいずれかの組み合わせのいずれかを包含し、細胞型に従って様々に使用され得る。一つの実施形態により、細胞培養培地は細胞を維持するため、増殖または繁殖のために適している。一つの例示的な実施形態では、細胞培養培地は真核細胞、例えば、単細胞生物または多細胞生物の細胞などの増殖または繁殖に適している。別の例示的な実施形態により、細胞培養培地は原核細胞の増殖または繁殖に適している。別の実施形態により、細胞培養は細胞の成熟および/または発達、例えば、胚の発達または生殖細胞の成熟などに適している。本明細書で使用される用語「胚」は、受精した哺乳動物卵母細胞、すなわち接合子、および発達のその初期段階でこの接合子から発達する多細胞生物を意味する。用語「生殖体」または「生殖細胞」は本明細書において交換可能で使用され、新しい二倍体個体の形成を開始することができるいずれかの雄または雌生殖細胞を意味する。生殖体の例は精子および卵母細胞である。本明細書において交換可能で使用される用語「精子(sperm)」および「精子(spermatozoa)」は、雄の生殖細胞を意味する。用語「精子サンプル」は、精子を含む1つ以上のサンプルを意味する。精子サンプルは、被験体から得られる精液または処理された精液、液化精液、沈殿化および任意に再懸濁化精液などであり得る。いくつかの実施形態により、細胞培養培地は細胞の再生、例えば神経細胞の再生などに適している。本明細書で使用される用語「ニュ-ロン再生」および「神経再生」は交換可能で使用され得、損傷した神経の機能の回復を意味する。具体的には、これは末梢または中枢神経系の損傷部位を修復すること、つまり軸索および樹状神経線維再成長による、神経を介したシグナル化の回復を含む。いくつかの実施形態では、神経再生は損傷した神経線維から発芽することを意味する。従って、本発明による細胞培養培地は、重大な神経線維再生を促進することができる。別の実施形態により、細胞培養培地は細胞の分化、例えば、幹細胞の分化、特に幹細胞の骨芽細胞への分化に適している。いくつかの実施形態により、細胞培養培地は組織培養および器官培養の増殖を維持するのに適している。いくつかの実施形態により、細胞培養培地は器官のインビトロ保存に適している。
【0028】
いくつかの実施形態により、本発明による安定化ACCが補充された細胞培養培地は、生物学的培養の本明細書において前記で定められた成長を高めることができる。本明細書で使用される用語「高める」は、成長パラメ-タを促進、改善、増大、改良、一般的には増加することを意味する。本発明のいくつかの実施形態により、用語「高めることができる」および「高める」は交換可能で使用される。高めることは、同一条件で成長されるがACCが添加されないコントロ-ルサンプルと比較して測定され得る。このため一つの実施形態では、本発明による安定化ACCで補充された細胞培養培地は、細胞、組織、または器官の増殖、成熟、繁殖、再生、発達、凍結保存、および/または分化を高めることができる。一つの実施形態により、細胞培養培地は幹細胞の分化を高めることができる。別の実施形態により、安定化ACCが補充された細胞培養培地は細胞の増殖を高めることができる。さらに別の実施形態により、安定化ACCが補充された細胞培養培地は細胞の成熟を高めることができる。さらなる実施形態により、安定化ACCが補充された細胞培養培地は細胞または組織の発達を高めることができる。特定の実施形態により、安定化ACCが補充された細胞培養培地は細胞の再生を高めることができる。細胞、組織、または器官の増殖、成熟、繁殖、再生、発達、および/または分化の向上は、前述で定められる対照との比較における向上の割合として測定され得る。従って、一つの実施形態により、安定化ACCが補充された細胞培養培地は、成長パラメ-タを約10%~約600%、約20%~約500%、約30%~約400%、約40%~約300%、約50%~約200%、約60%~約150%、または約70%~約100%高めることができる。100%の向上は2倍に増加したパラメ-タ、例えば増殖を意味し、200%の向上は3倍に増加したパラメ-タ、例えば胚発達を意味する、などである。いくつかの実施形態により、成長パラメ-タは約100%~約500%、約120%~約400%、約150%~約300%高められる。
【0029】
いくつかの実施形態により、安定化ACCが補充された細胞培養培地は成長に適しており、任意に、真核細胞の培養、例えば、真核細胞、組織、または器官培養の成長を高めるのに適している。いくつかの実施形態により、安定化ACCが補充された細胞培養培地は真核細胞の成長のためのものである。いくつかの実施形態により、真核細胞の培養は、動物、植物、および昆虫細胞の培養から選択される。
【0030】
一つの実施形態により、真核生物の細胞、組織、または器官培養の培養は、動物細胞、組織、または器官培養、幹細胞、胚、および器官である。いくつかの実施形態により、動物はヒトまたは非ヒト哺乳動物である。そのため一つの実施形態により、安定化ACCが補充された細胞培養培地は、哺乳動物細胞、組織、または器官培養、哺乳動物幹細胞、哺乳動物胚、または哺乳動物器官の成長、および任意に成長を高めるのに適している。
【0031】
一つの実施形態により、哺乳動物はヒトであり、そのため一つの実施形態により、本発明による細胞培養培地はヒト細胞、組織、または器官培養、幹細胞、胚、あるいは器官の培養の成長に適している。
【0032】
他の実施形態により、哺乳動物は非ヒト哺乳動物である。一つの実施形態により、非ヒト哺乳動物は、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラバ、ロバ、スイギュウ、またはラクダのような家畜動物である。別の実施形態では、非ヒト哺乳動物は、ネコまたはイヌなどの家庭用愛玩動物、マウス、ラット、モルモット、またはハムスタ-のようのげっ歯類、ウサギのようなウサギ目、あるいはサル(例えば、マカク)または類人猿(例えば、チンパンジ-)などの霊長類である。
【0033】
いくつかの実施形態により、本発明による細胞培養培地は哺乳動物細胞培養の成長に適している。いくつかの実施形態により、哺乳動物細胞培養、つまりヒトまたは非ヒト哺乳動物細胞培養のどちらかは、神経、筋肉、上皮、骨、脂肪、幹細胞、生殖体、および血液細胞の細胞培養から選択される。一つの実施形態により、細胞培養は筋細胞培養である。別の実施形態により、細胞培養は神経細胞培養である。さらなる実施形態により、細胞培養は骨または骨細胞の細胞培養である。一つの実施形態により、細胞培養は骨髄細胞培養である。別の実施形態により、細胞培養は腫瘍または癌細胞である。いくつかの実施形態により、本発明によるACCが補充された細胞培養培地は、当該細胞培養の成長を高めることができる。いくつかの実施形態により、細胞培養は懸濁または接着細胞培養である。
【0034】
いくつかの実施形態により、細胞培養は一次培養である。本明細書で使用される用語「一次培養」は、組織から分離されて、適切な条件下で増殖された細胞を意味する。
【0035】
別の実施形態により、細胞培養は細胞株である。用語「二次培養」および「細胞株」は本明細書において交換可能で使用され、継代培養された一次培養、すなわち、一つの培養容器から別の培養容器に移された一次培養を意味する。いくつかの実施形態により、細胞株は有限細胞株、すなわち、限定された寿命を有して限定された細胞世代数によって完了する細胞株である。別の実施形態により、細胞株は連続細胞株、すなわち、無限に分裂する能力を獲得した不死細胞株である。
【0036】
一つの特定の実施形態により、細胞株はFM3、HeLa、293、A-549、ALC、CHO、HB54、HL60、COS-7、HEK293、VERO、BHK、CVl、MDCK、3T3、C127 MRC-5、BAE-1、SH-SY5Y、L-929、HEP G2、NSO、U937、NAMALWA、WEHI231、YAC1、およびU266B1細胞株から選択される。いくつかの実施形態により、安定化ACCが補充された細胞培養培地は当該細胞株の成長を高めることができる。
【0037】
いくつかの実施形態により、本発明の細胞培養培地は哺乳動物組織培養の成長に適している。一つの実施形態により、哺乳動物組織培養はヒト組織培養である。別の実施形態により、組織培養は非ヒト哺乳動物組織培養である。一つの実施形態により、組織培養は上皮、結合、筋肉、および神経組織培養から選択される。一つの実施形態により、組織培養は神経組織培養である。別の実施形態により、組織培養は筋組織培養である。さらに別の実施形態により、組織培養は鼻腔嗅粘膜のような、上皮組織培養である。さらなる実施形態により、組織培養は骨組織培養である。
【0038】
いくつかのより特定的な実施形態により、組織培養は腎臓、肝臓、腺、脳、骨、眼、および筋肉組織培養から選択される。一つの実施形態により、上皮組織培養は皮膚、胃および腸内壁、腎臓、および腺組織培養から選択され、筋組織培養は、平滑、骨格、および心筋組織培養から選択され、神経組織培養は脳、脊髄、および神経組織から選択される。
【0039】
いくつかの実施形態により、安定化ACCが補充された細胞培養培地は当該組織培養の成長を高めることができる。一つの実施形態では、このような培地は神経組織培養の再生を高めることができる。いくつかの実施形態では、培地は神経培養の再生を約10%~約200%、約20%~約150%、約30%~約120%、または約40%~約100%高めることができる。他の実施形態では、このような培地は、筋管形成を高める、および/または筋細胞の収縮の発生を高めるまたは促進し、筋管の自発的収縮活動の発生までの時間を低下することもできる。一つの実施形態では、培地は筋管形成を約10%~約600%、約20%~約500%、約30%~約400%、約40%~約300%、約50%~約200%、約60%~約150%、または約70%~約100%高めることができる。本明細書で使用される用語「筋管形成」は、筋芽細胞が多核化線維である筋管に融合する過程を意味する。
【0040】
いくつかの実施形態により、本発明の細胞培養培地は幹細胞の成長に適している。いくつかの実施形態により、幹細胞はヒト幹細胞である。別の実施形態により、幹細胞は非ヒト哺乳動物幹細胞である。いくつかの実施形態により、幹細胞は胚性、絨毛性、羊水、造血性、間葉性、神経、グリア、成体、および誘導多能性幹細胞から選択される。一つの実施形態により、幹細胞は胚幹細胞である。別の実施形態により、幹細胞は造血幹細胞である。さらなる実施形態により、幹細胞は間葉性ヒト幹細胞である。さらに別の実施形態により、幹細胞は多能性幹細胞である。いくつかの実施形態により、幹細胞は成体幹細胞であり、例えば、間葉幹細胞、表皮幹細胞、上皮幹細胞、造血幹細胞、または神経幹細胞が挙げられる。一つの実施形態により、本発明の細胞培養培地は幹細胞の増殖、拡張、および/または分化に適している。別の実施形態により、本発明の細胞培養培地は幹細胞の増殖および/または分化を高めることができる。一つの特定の実施形態により、本発明の細胞培養培地は、幹細胞の骨芽細胞への分化を高める、すなわち、骨芽細胞分化を高めることができる。
【0041】
いくつかの実施形態により、本発明の細胞培養培地は胚の成長に適している。一つの実施形態により、本発明の細胞培養培地は胚の発達に適している。別の実施形態により、本発明の細胞培養培地は胚の発達を高めることができる。一つの実施形態では、培地は胚発達を約10%~約300%、約20%~約250%、約30%~約200%、約40%~約150%、約60%~約100%、または約70%~約90%高めることができる。用語「胚形成」および「胚発達」は本明細書において交換可能で使用され、従来技術で知られているように、胚が生じて接合子段階から発達して胚になる過程を意味し、分割、緊密化、胚盤胞形成、または胚盤胞孵化の期に達する段階を含む。本明細書で使用される用語「分割」、「緊密化」、「胚盤胞」、および「孵化」は、発生学で日常的に使用される用語を意味する。用語「分割」は、早期胚における細胞の分裂である。元の接合子と同様なサイズの細胞クラスタ-を生じる。分割から得られる異なる細胞は卵割球と呼ばれる。本明細書で使用される用語「緊密化」は、接合子から生じた分裂細胞が極性化および接着によってこれらの互いの接触を最大にして、堅い結合によって互いを保持する密着球を形成する段階を意味する。本明細書で使用される用語「胚盤胞」は、緊密化段階後に発達され、引き続き胚を形成する内細胞塊、ならびに内細胞塊および胞胚腔と呼ばれる流体が充満した孔を囲む胚盤胞の外層を含む構造を意味する。本明細書で使用される用語「孵化」は、胚がその外殻(透明帯)を通って出現する段階を意味する。
【0042】
本明細書で使用される用語「胚発達を高める」は、発達過程の速度および/または効率を促進、向上、または改善すること、ならびに順調に成長および発達した胚の割合を意味する。向上は、同一処理を実施するが、成長培地にACCが添加されていない対照サンプルと比較して測定される。一つの実施形態により、胚はヒト胚である。別の実施形態により、胚は非ヒト哺乳動物胚である。いくつかの実施形態により、非ヒト哺乳動物は、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラバ、ロバ、スイギュウ、またはラクダから選択される。いくつかの他の実施形態では、非ヒト哺乳動物は、ネコ、イヌ、マウス、ラット、モルモット、ハムスタ-、ウサギ、サル、または類人猿から選択される。
【0043】
いくつかの実施形態により、細胞培養培地は前述のように、胚または生殖体の凍結保存を改善または延長することができる。本明細書で使用されるとき、用語「凍結保存」は胚の生殖体のような細胞の、超低温、通常液体窒素(-196℃)での保存を意味する。
【0044】
いくつかの実施形態により、本発明の細胞培養培地は生殖細胞の成長に適している。一つの実施形態により、安定化ACCが補充された細胞培養培地は生殖細胞の成熟および/または保存に適している。一つの実施形態により、生殖細胞は卵母細胞である。別の実施形態により、生殖細胞は精子細胞である。前記実施形態のいずれか一つにより、生殖細胞はヒトまたは非ヒト哺乳動物の生殖細胞である。いくつかの実施形態により、非ヒト哺乳動物は、家畜動物、家庭用愛玩動物、げっ歯類、野生動物、および霊長類からなる群から選択される。一つの実施形態では、家畜動物は、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラバ、ロバ、スイギュウ、およびラクダから選択される。いくつかの他の実施形態では、家庭用愛玩動物はネコまたはイヌであり、げっ歯類はラット、マウス、モルモット、またはハムスタ-であり、ウサギ目はウサギであり、霊長類はマカクのようなサルまたはチンパンジ-のような類人猿である。
【0045】
別の実施形態により、生殖細胞は非哺乳動物の生殖細胞である。いくつかの実施形態により、非哺乳動物は魚類、昆虫、および鳥類からなる群から選択される。
【0046】
一つの実施形態により、生殖細胞はヒト精子細胞または卵母細胞である。
【0047】
いくつかの実施形態により、安定化ACCが補充された細胞培養培地は卵母細胞または精子の成熟を高めることができる。一つの実施形態により、安定化ACCが補充された細胞培養培地は精子の質を改善することができる。用語「精子の成熟を高める」および「精子の質を改善する」は本明細書において交換可能で使用され、精子の質を改良すること、例えば、精子運動率を高める、精子前進運動率を高める、精子数を増加する、およびそれらのいずれかの組み合わせなどを意味する。そのため、一つの実施形態では、安定化ACCが補充された細胞培養培地は、精子運動率を高める、精子前進運動率を高める、精子数を増加する、およびそれらのいずれかの組み合わせを可能にする。本明細書で使用される用語「精子運動率」は、所定の標本サンプルにおけるすべての精子の中で動く精子の割合を意味する。本明細書で使用される用語「前進運動率」は、おおよそ一定方向に移動する精子の割合を意味する。本明細書で使用される用語「精子運動率を高める」および「精子前進運動率を高める」は、それぞれ運動性精子および前進運動性を有する精子の割合を増加することを意味する。従って、一つの実施形態では、本発明は精子運動率を高めるための方法を提供する。別の実施形態により、本発明は精子前進運動率を高めるための方法を提供する。精子運動率、前進運動率、および精子成熟期は、従来技術で知られている方法によって評価され得る。例えば、運動率はコンピュ-タ支援精子分析(CASA)法(Amann&Waberski,2014,Theriogenology,81:5-17)によって評価され得る。用語「精子サンプル」は、精子を含む1つ以上のサンプルを意味する。精子サンプルは、被験体から得られる精液または処理された精液、液化精液、沈殿化および任意に再懸濁化精液などであり得る。いくつかの実施形態により、精子数を増加させることは、運動率または前進運動率処理における精子数を増加させることを含む。一つの実施形態により、運動率または前進運動率処理はスイムアップ法である。
【0048】
いくつかの実施形態により、本発明の細胞培養培地は器官組織または器官の成長に適している。いくつかの実施形態により、器官組織または器官は卵巣、角膜、心臓、腎臓、膵臓、肝臓、脾臓、肺、精巣、膀胱、および血液小胞から選択される。一つの特定の実施形態では、器官組織または器官は卵巣である。このため、本発明の細胞培養培地は器官組織または器官の保存を高める、または維持することができる。
【0049】
いくつかの実施形態により、本発明の細胞培養培地は植物細胞の成長に適している。いくつかの実施形態により、本発明の細胞培養培地は成長植物培養培地に適している。別の実施形態により、本発明の細胞培養培地は成長植物組織培養に適している。用語「植物細胞培養」は、植物の組織または細胞由来の植物細胞を意味し、容器またはレシピエントで培養される。用語「植物組織培養」は、カルス組織(カルス)、分化した培養組織、または培養した器官組織を含む。用語「カルス」は、植物組織(外植片)由来の未組織化柔細胞の塊を意味する。
【0050】
別の実施形態により、本発明の細胞培養培地は昆虫細胞の成長に適している。一つの実施形態により、昆虫細胞は昆虫細胞培養、例えば、昆虫細胞株などである。細胞型は前述の通りである。一つの特定の実施形態では、細胞株はSf9、Sf21、およびhigh-five細胞株から選択される。別の実施形態により、本発明の細胞培養培地は成長昆虫組織培養に適している。さらなる実施形態により、昆虫細胞は昆虫器官培養である。
【0051】
いくつかの実施形態により、細胞培養は懸濁または接着細胞培養である。
【0052】
一つの実施形態では、安定化ACCが補充された細胞培養培地は、植物細胞または組織培養の成長を高めることができ、あるいは昆虫細胞、組織、または器官培養の成長を高めることができる。
【0053】
前記実施形態のいずれか一つにより、動物、植物、または昆虫の細胞、組織、または器官培養の成長に適した本発明の細胞培養培地は、本発明で定められるように、少なくとも1種類の安定化剤によって安定化されたACCが補充された天然培地または人工培地であり得る。いくつかの実施形態により、培地は少なくとも1種類の安定化剤によって安定化されたACCが補充される天然培地である。いくつかの実施形態により、天然培地は血漿、血清、リンパ、ヒト胎盤臍帯血、および羊水から選択される生物学的流体を含む。別の実施形態により、天然培地は、肝臓、脾臓、腫瘍、リンパ球、および骨髄の抽出物のような組織抽出物、ウシ胚およびニワトリ胚の抽出物を含む。さらなる実施形態により、天然培地は凝固剤または血餅を含む。いくつかの実施形態により、培地は少なくとも1種類の安定化剤によって安定化されたACCが補充される人工培地である。一つの実施形態により、人工培地は平衡化塩溶液である。平衡化塩溶液の例は、PBS、DPBS、HBSS、EBSS、タイロ-ドT6、WM1、プ-ルP1、クインHTF、およびガ-ドナ-G1である。別の実施形態により、人工培地は基礎培地である。いくつかの実施形態により、培地はさらに従来技術で良く知られているように補充され得る。一つの実施形態により、培地は血清、例えば、ウシ胎児血清によって補充される。さらなる実施形態により、人工培地は複合培地である。
【0054】
本明細書で使用される用語「基礎培地」は、無機塩、糖、アミノ酸の栄養素混合物を意味し、任意にまたビタミン、有機酸、および/または緩衝剤を含む。サプリメントを伴う基礎培地は、細胞の生命、成長、および再生産を支持するのに必要な栄養素を提供する。使用される基礎培地の選択は、培養に適したものであるべきである。
【0055】
一つの実施形態により、人工培地は無血清培地である。さらなる実施形態により、人工培地は血清含量が低下した培地である。別の実施形態により、人工培地は無タンパク質培地である。
【0056】
少なくとも1種類の安定化剤によって安定化されたACCが補充され、本発明によって使用され得る細胞培地の例は、ダルベッコ改変イ-グル培地(DMEM)、最小必須培地(EMEM)、RPMI1640培地(ロズウェルパ-ク記念研究所で開発された)、およびイ-グル基礎培地(BME)である。本発明による培地のさらなる例は、ハム栄養混合物であり、ハムF-10、ハムF-12、DMEM/F-12(DMEMおよびハムF-12)が挙げられる。他の例は、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、opti-MEM、およびグラスゴ-MEM(GMEM)である。昆虫細胞成長に適した培地の例は、IPL-41昆虫培地、シュナイダ-ショウジョウバエ培地、グレ-ス昆虫培地、無血清昆虫培地、Sf-900、TC-10、Shields and Sang M3昆虫培地、TC-100昆虫培地、TMM-FH昆虫培地、およびIPL-10である。胚成長に適した培地の例は、SAGE1-Step(商標)のような単一培養培地、またはQuinns Advantage(商標)逐次培地(ORIGIO)のような逐次培地である。植物細胞成長に適した培地の例は、ムラシゲスク-グ(MS)、B5、N6、およびニッチ培地である。
【0057】
培地の他の例は、改変培地、NCTC培地、MegaCell培地、クレイコム、クリック培地、L-15培地、培地199、MCDB培地、エイムス培地、BGJb培地(フィットン-ジャクソン改変)、クリック培地、CMRL-1066培地、マッコイ5A改変培地、NCTC培地、スイムS-77培地、ウェイマウス培地、ウィリアム培地E、ならびに体外受精培地、例えば、global(登録商標)、GM501、SSM(商標)、分割K-SICM、胚細胞K-SIBM、Quinns Advantage(登録商標)分割、Quinns Advantage(登録商標)胚細胞、FERTICULT(商標)IVF培地、FERTICULT(商標)G3培地、IVC-TWO(商標)、IVC-THREE(商標)、ECM(登録商標)、MultiBlast(登録商標)、EmbryoAssist(商標)、BlastAssist(商標)、ISM1、ISM2、G-1(商標)PLUS、G-2(商標)PLUS、IVF(商標)、およびCCM(商標)である。培地のさらなる例は、精子分離用培地であるISolate(登録商標)、PureCeption(商標)、Multipurpose Handling Medium(登録商標)(MHM(登録商標))など、精子洗浄用培地であるQuinns(商標)Sperm Washing Medium、Multipurpose Handling Medium(登録商標)(MHM(登録商標))、またはゲンタマイシン添加改変HTF培地など、精子受精能獲得用培地であるビガ-ズ-ウィッテン-ウィッティンガム(BWW)培地、ハム-F10、および改変タイロ-ド培地(HSM)など、ならびに未成熟卵母細胞を移植に適した完全に発達した胚に培養することができる成熟用培地である。他の実施形態では、培地は卵母細胞成熟用の培地であるSAGE(商標)インビトロ成熟培地(IVM)およびBO-IVM卵母細胞成熟培地など、受精用培地、胚発達用培地、生殖体ハンドリング用培地、着床前遺伝子診断(PGD)用培地、あるいは胚および/または生殖体成熟、ハンドリング、および/または凍結保存用培地である。そのため、一つの実施形態により、細胞培養培地は、DMEM、RPMI1640、MEM、IMDM、L-15培地(Leibovitz)、MCDB培地、培地199、opti-MEMおよびDMEM/F-12、シュナイダ-ショウジョウバエ培地、グレ-ス昆虫培地、IPL-41昆虫培地、Sf-900、無血清昆虫培地、Shields and Sang M3昆虫培地、TC-100昆虫培地、TNM-FH昆虫培地、ハムF-12、ハムF-10、GMEM、エイムス培地、イ-グル基礎培地(BME)、クレイコム、クリック培地、グラスゴ-最小必須培地(GMEM)、MegaCell培地、マッコイ5A改変培地、NCTC培地、ウィリアムズ培地E、ウェイマウス培地、TC-10、およびIPL-10培地から選択される。別の実施形態により、細胞培養培地は、DMEM、RPMI1640、MEM、IMDM、opti-MEM、GMEM、ハムF-12およびDMEM/F-12、シュナイダ-ショウジョウバエ培地、グリ-ス昆虫培地、Sf-900、TC-10、IPL-10培地、精子分離、洗浄、または成熟用培地であるISolate(登録商標)、PureCeption(商標)、Multipurpose Handling Medium(登録商標)(MHM(登録商標))、Quinns(商標)精子洗浄培地、Multipurpose Handling Medium(登録商標)(MHM(登録商標))、ビガ-ズ-ウィッテン-ウィッティンガム(BWW)培地、ハムF-10、および改変タイロ-ド培地(HSM)、およびゲンタマイシン添加改変HTF培地など、受精用培地、胚発達用培地、ならびに胚および/または生殖体成熟、ハンドリングおよび/または凍結保存用培地から選択される。
【0058】
いくつかの実施形態により、本発明の安定化ACCが補充された細胞培養培地は単細胞真核生物の成長に適している。一つの実施形態により、単細胞真核生物はサッカロマイセス、より特定的にはサッカロマイセス・セレビシエのような酵母である。一つの実施形態により、サッカロマイセス・セレビシエなどの単細胞真核生物の成長に適している本発明の細胞培養培地は、酵母抽出物ペプトンデキストロ-ス(YPD)、酵母抽出物-ペプトン-グリセロ-ル(YPG)、および酵母抽出物-ペプトン-デキストロ-ス(YPAD)培地から選択される。一つの実施形態では、安定化ACCが補充された細胞培養培地は酵母の成長を高めることができる。
【0059】
いくつかの実施形態により、本発明の細胞培養培地は原核生物の成長に適している。特定の実施形態では、本発明の細胞培養培地は微生物の成長に適している。いくつかの実施形態では、本微生物は微生物叢微生物である。いくつかの実施形態では、本微生物は細菌である。このため、特定の実施形態では、本発明の細胞培養培地は細菌の成長に適している。いくつかの実施形態では、細菌は大腸菌またはビフィドバクテリウムおよびラクトバチルス属の細菌のようなプロバイオティック細菌である。プロバイオティック細菌種株のさらなる例は、ラクトバチルス・パラカセイ、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ラクトバチルス・ジョンソニ、ラクトバチルス・フェルメンタム、ペジオコックス・アシディラクティシィであり、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ラムノサスGG、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ラクチス、ラクトバチルス・ブルガリカス、ラクトバチルス・シリバリウス、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・カゼイ、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、サッカロマイセス・ブラウディ、ストレプトコッカス・サ-モフィルス、ビフィドバクテリウム・ブレ-ベ、バチルス・コアグランス、ラクトバチルス・ブレビスなどが挙げられる。いくつかの実施形態により、細菌の成長に適した培地はLBおよびM9から選択される。一つの実施形態では、安定化ACCが補充された細胞培養培地は細菌の成長を高めることができる。
【0060】
いくつかの実施形態により、本発明の細胞培養培地は古細菌の成長に適している。一つの実施形態では、安定化ACCが補充された細胞培養培地は古細菌の成長を高めることができる。
【0061】
本発明の態様および実施形態のいずれか一つにより、ACCは少なくとも1種類の安定化剤によって安定化される。用語「安定化剤」および「安定剤」は本明細書では交換可能で使用され、炭酸カルシウムをACC生産、製剤化、保存、および使用の際に無定形状態に維持するのに寄与するいずれかの物質を意味する。特定の実施形態では、安定化剤は単剤である。他の実施形態では、いくつかの安定化剤の使用が包含される。用語「安定化ACC」および「少なくとも1種類の安定化剤によって安定化されたACC」は、いくつかの実施形態では交換可能で使用され得る。
【0062】
安定剤は1つ以上の官能基を有する分子を含み得、限定されないが、ヒドロキシル、カルボキシル、エステル、アミン、ホスフィノ、ホスホノ、ホスフェ-ト、スルホニル、サルフェ-ト、またはスルフィン基から選択される。水酸化物と結合されるヒドロキシ含有化合物は、任意にカルボキシルなどの他の官能基も有するが、エステル化されないヒドロキシルを伴う。
【0063】
いくつかの実施形態により、安定剤は哺乳動物細胞または生物、特にヒトに対して毒性が低いまたは毒性を有さない。いくつかの実施形態により、安定剤は食品、栄養補助食品、または医薬品グレ-ドである。
【0064】
特定の実施形態では、ACC安定化剤は各存在において独立して、有機酸;リン酸化、ホスホン酸化、硫酸化、またはスルホン酸化有機化合物;ヒドロキシルカルボン酸のリン酸または硫酸エステル;有機アミン化合物;ヒドロキシルを含む有機化合物;有機亜リン酸化合物またはその塩;リン酸化アミノ酸およびその誘導体、ビスホスホネ-ト;有機リン酸化合物;有機ホスホン酸化合物;有機ポリリン酸、無機ポリリン酸、無機亜リン酸、前記で定められる複数官能基を有する有機化合物;無機リン酸およびポリリン酸化合物;ポリリン酸鎖を有する有機化合物;有機界面活性剤;生体必須無機イオン;サッカライドおよびその誘導体、タンパク質、リン酸化タンパク質、天然および合成バイオポリマ-およびそれらの誘導体、あるいはそれらのいずれかの組み合わせである。いくつかの実施形態により、安定剤はまた医薬品活性を有し得、例えばビスホスホネ-トまたはATPである。
【0065】
このため、一つの実施形態では、安定化剤は、無機ポリリン酸のようなポリリン酸、有機酸、リン酸化、ホスホン酸化、硫酸化、またはスルホン酸化有機化合物、ヒドロキシカルボン酸のリン酸または硫酸エステル、リン酸化アミノ酸、ビスホスホネ-ト、有機ポリリン酸、サッカライドおよびそれらの誘導体、タンパク質、ペプチド、リン酸化タンパク質、リン酸化ペプチド、およびそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態により、安定化剤は、ホスホセリン、アデノシン三リン酸、アデノシン二リン酸、フィチン酸、クエン酸、エチドロン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、三リン酸、エタノ-ル、ヘキサメタンリン酸、キチン、およびそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される。
【0066】
いくつかの実施形態により、安定剤は有機酸である。特定の実施形態により、有機酸はアスコルビン酸、クエン酸、乳酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、グルタコン酸、コハク酸、マレイン酸、乳酸、グルタミン酸、アコニット酸、および任意に少なくとも2つのカルボン酸を有して任意に250g/molを超えない分子量を有する化合物、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸などから選択される。一つの特定の実施形態により、安定剤はクエン酸である。
【0067】
別の実施形態では、ヒドロキシルカルボン酸のリン酸エステルはホスホエノ-ルピルビン酸である。別の実施形態では、ヒドロキシルカルボン酸のリン酸または硫酸エステルはアミノ酸を含む。このようなエステルの例はホスホセリン、ホスホトレオニン、スルホセリン、スルホトレオニン、およびホスホクレアチンである。
【0068】
別の実施形態では、安定剤はサッカライドである。一つの実施形態により、サッカライドは、モノ-、ジ-、トリ-、オリゴ-、およびポリサッカライドであり、スクロ-ス、マンノ-ス、グルコ-ス、キトサン、およびキチンなどである。安定剤は、いくつかの実施形態ではグリセロ-ルなどのポリオ-ルである。別の実施形態により、安定剤はアミノ酸であり、セリンまたはトレオニンなどである。それぞれの実現性は本発明の別々の実施形態を示す。
【0069】
天然および合成バイオポリマ-および誘導体の非限定例はポリヌクレオチドおよび糖タンパク質である。
【0070】
食品で承認されているようなACC安定剤におけるいくつかの具体的な非限定例は、自然食品またはヒトで認められており、フィチン酸、クエン酸、ピロリン酸ナトリウム二塩基性、アデノシン5’-一リン酸(AMP)ナトリウム塩、アデノシン5’-二リン酸(ADP)ナトリウム塩、およびアデノシン5’-三リン酸(ATP)二ナトリウム塩水和物、ホスホセリン、リン酸化アミノ酸、食品グレ-ド界面活性剤、ステアロイルラクチラ-トナトリウム、およびそれらの組み合わせを含む。
【0071】
いくつかの実施形態により、安定剤は、ホスホエノ-ルピルビン酸、ホスホセリン、ホスホトレオニン、スルホセリン、またはスルホトレオニンのようなヒドロキシルカルボン酸のリン酸または硫酸エステル、ならびに例えば、スクロ-ス、マンノ-ス、グルコ-スなどのモノ-、ジ-、トリ-、オリゴ-、およびポリサッカライドから選択されるサッカライドから選択される、少なくとも1種類の成分を含む。ヒドロキシ含有化合物はさらに、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのような、少なくとも1種類の水酸化アルカリを含み得る。リン酸化された酸は、オリゴペプチドおよびポリペプチドに存在し得る。本発明の別の実施形態では、安定剤はモノカルボン酸または多カルボン酸、例えば、ジカルボン酸またはトリカルボン酸から選択される有機酸である。それぞれの実現性は本発明の別々の実施形態を示す。有機酸は前記で定める通りであり得る。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態では、ACC安定剤はリン酸化アミノ酸、ポリオ-ル、およびそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、安定なACCは安定剤としてリン酸化化合物を含み、ここでリン酸化は有機化合物のヒドロキシル基で実施される。いくつかの実施形態では、安定なACCはクエン酸、ホスホセリン、ホスホトレオニン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。ホスフェ-ト、ホスファイト、ホスホネ-ト基、およびそれらの塩またはエステルを含む安定剤の非限定的な例は、フィチン酸、リン酸ジメチル、リン酸トリメチル、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸テトラエチル、リブロ-スビスホスフェ-ト、エチドロン酸、および他の医療用ビスホスホネ-ト、3-ホスホグリセリン酸塩、グリセルアルデヒド3-リン酸、1-デオキシ-D-キシルロ-ス-5-リン酸ナトリウム塩、ジエチレントリアミンペンタキス(メチルホスホン酸)、ニトリロトリ(メチルホスホン酸)、5-ホスホ-D-リボ-ス1-二リン酸五ナトリウム塩、アデノシン5’-二リン酸ナトリウム塩、アデノシン5’-三リン酸二ナトリウム塩水和物、α-D-ガラクトサミン1-リン酸、2-ホスホ-L-アスコルビン酸三ナトリウム塩、α-D-ガラクト-ス1-リン酸二カリウム塩五水和物、α-D-ガラクトサミン1-リン酸、O-ホスホリルエタノ-ルアミン,二ナトリウム塩水和物、2,3-ジホスホ-D-グリセリン酸五ナトリウム塩、ホスホ(エノ-ル)ピルビン酸一ナトリウム塩水和物、D-グリセルアルデヒド3-リン酸、sn-グリセロ-ル3-リン酸リチウム塩、D-(-)-3-ホスホグリセリン酸二ナトリウム塩、D-グルコ-ス6-リン酸ナトリウム塩、ホスファチジン酸、イバンドロン酸ナトリウム塩、ホスホノ酢酸、DL-2-アミノ-3-ホスホノプロピオン酸、またはそれらの組み合わせを含む。生体必須無機イオンは、とりわけ、Na、K、Mg、Zn、Fe、P、S、N、酸化物の相におけるPまたはS、あるいはアンモニアまたはニトロ基としてのNを含み得る。
【0073】
安定剤はさらにホスホン酸化合物を含み得、限定されないが、ビスホスホネ-ト、ポリリン酸など、限定されないがピロリン酸またはポリリン酸または有機ポリリン酸など、限定されないがアデノシン二リン酸(ADP)またはアデノシン三リン酸(ATP)などが挙げられる。
【0074】
任意にACCはホスホセリンおよびクエン酸の併用によって安定化される。別の実施形態では、ACCは三リン酸およびクエン酸によって安定化される。
【0075】
ACCは1種類を超える安定剤、例えば2種類の安定剤によって安定化され得る。安定なACCは2種類を超える安定剤を含むことができ、ここで1種類以上の安定剤はACCの形成および沈殿の際にACCに加えられ、そのため「内部」安定剤を構成し、別の1種類以上の安定剤はACC粒子表面にこれらの形成後に加えられ、そのため「外部」安定化剤を構成する。安定なACCおよびその調製のためのさらなる例は、国際特許出願番号WO2009/053967、WO2014/024191、およびWO2016/193982に認められ得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、安定化剤はタンパク質である。一つの実施形態では、タンパク質は天然に産生されて精製されたタンパク質である。別の実施形態では、タンパク質は合成によって産生されたタンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質はGAP65、GAP22、GAP21、およびGAP12タンパク質から選択される。別の実施形態では、タンパク質は、CqCDA1、キチナ-ゼ2、β-N-アセチルグルコサミニダ-ゼ、GAMP様タンパク質、キチン結合タンパク質、CqCBP、CAP10、GAP18.2、GAP02526、CqHc1、CqHc2、CqHc3、CqHc4、CqHc5、CqHc6、CqHc7、クリプトシアニン1、シクロフィリン、シスタチン1、シスタチン2、LPS-BP、LEAタンパク質、およびクリスタシアニンから選択され、任意に当該タンパク質はレッドクロウ由来である。特定の実施形態により、タンパク質はリン酸化タンパク質である。
【0077】
いくつかの実施形態では、安定化剤は、ポリリン酸、リン酸化アミノ酸、有機酸、リン酸化、ホスホン酸化、硫酸化、またはスルホン酸化有機化合物、ヒドロキシカルボン酸のリン酸または硫酸エステル、ビスホスホネ-ト、サッカライド、それらの誘導体、タンパク質、リン酸化タンパク質、天然および合成バイオポリマ-、およびそれらの誘導体、ならびにそれらのいずれかの組み合わせから選択される。他の実施形態では、安定化剤は、ホスホセリン、三リン酸、アデノシン三リン酸、アデノシン二リン酸、フィチン酸、クエン酸、エチドロン酸、ピロリン酸、エタノ-ル、ヘキサメタリン酸、キチン、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。
【0078】
いくつかの実施形態では、安定化剤は、有機酸、リン酸化有機酸、ヒドロキシカルボン酸のリン酸または硫酸エステル、リン酸化アミノ酸、ビスホスホネ-ト、有機ポリリン酸、サッカライド、それらの誘導体、タンパク質、ならびにそれらのいずれかの組み合わせから選択される。
【0079】
いくつかの実施形態により、少なくとも1種類の安定剤は、ポリリン酸、ビスホスホネ-ト、リン酸化アミノ酸、クエン酸、およびそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、1種類を超える安定剤、例えば、2、3、または4種類の安定剤が加えられる。
【0080】
いくつかの実施形態により、安定剤は、ポリリン酸または医薬品として許容可能なその塩である。いくつかの実施形態により、ポリリン酸は、ナトリウム、カリウム、およびポリリン酸の他の欠かせないカチオンからなる群から選択される、生理学的に適合性である水溶性ポリリン酸塩である。一つの実施形態では、ポリリン酸は有機または無機ポリリン酸である。本明細書で使用される用語「ポリリン酸」は、PO4の高分子量エステルを意味する。いくつかの実施形態により、ポリリン酸は、ポリリン酸ナトリウムおよびカリウムからなる群から選択される、生理学的に適合性である水溶性ポリリン酸塩である。いくつかの実施形態では、ポリリン酸は無機ポリリン酸またはその医薬品として許容可能な塩である。このような塩の非限定的な例は、Na、K、Mg、Mn、およびZnである。いくつかの実施形態により、無機リン酸は2~10個のリン酸基を含み、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のリン酸基である。いくつかの実施形態により、ポリリン酸はピロリン酸、三リン酸、およびヘキサメタリン酸から選択される。一つの実施形態により、安定剤はピロリン酸またはその医薬品として許容可能な塩であり、ピロリン酸ナトリウムなどが挙げられる。別の実施形態により、安定剤は三リン酸またはその医薬品として許容可能な塩であり、三リン酸ナトリウムなどが挙げられる。用語「三リン酸」および「トリポリリン酸」は本明細書において交換可能で使用される。さらなる実施形態により、安定剤はヘキサメタリン酸またはその医薬品として許容可能な塩であり、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0081】
いくつかの実施形態により、安定剤はビスホスホネ-ト、またはその医薬品として許容可能なこの塩である。塩の非限定的な例は、Na、K、Mg、Mn、およびZnである。
【0082】
本明細書で使用される用語「ビスホスホネ-ト」は、2つのリン酸(PO(OH)2)基を有する有機化合物を意味する。用語はさらにPO3-有機-PO3の骨格を有する化合物を意味する。最も一般的なものは、骨粗鬆症を治療する医薬品として使用される一連のビスホスホネ-トである。いくつかの実施形態により、ビスホスホネ-トは、エチドロン酸、ゾレドロン酸、メドロン酸、アレンドロン酸、およびそれらの医薬品として許容可能な塩からなる群から選択される。いくつかの実施形態により、安定剤はエチドロン酸またはその医薬品として許容可能な塩である。別の実施形態により、安定剤はゾレドロン酸またはその医薬品として許容可能なこの塩である。さらなる実施形態により、安定剤はメドロン酸またはその医薬品として許容可能なこの塩である。いくつかの実施形態により、安定剤はアレンドロン酸またはその医薬品として許容可能な塩である。
【0083】
特定の実施形態により、安定剤はリン酸化アミノ酸である。一つの実施形態により、リン酸化アミノ酸はホスホセリンである。別の実施形態により、リン酸化アミノ酸はホスホトレオニンである。
【0084】
いくつかの実施形態により、ACC組成物は前記で開示される安定剤の組み合わせを含む。
【0085】
いくつかの実施形態により、安定剤は前述で定められるポリリン酸またはビスホスホネ-トであり、安定剤のP原子とACCのCa原子の間のモル比(P:Caモル比)は、約1:90~1:1である。一つの実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1である。さらなる実施形態では、P:Caモル比は約1:35~約1:2である。特定の実施形態では、P:Caモル比は約1:30~約1:3である。特定の実施形態では、P:Caモル比は約1:28~約1:31である。他の実施形態では、P:Caモル比は約1:25~約1:4である。さらなる実施形態では、P:Caモル比は約1:20~約1:5である。別の実施形態では、P:Caモル比は約1:20~約1:6である。特定の実施形態では、P:Caモル比は約1:15~約1:5である。別の実施形態では、P:Caモル比は約1:25~約1:5である。いくつかの実施形態により、このようなポリリン酸は、ピロリン酸、三リン酸、ヘキサメタリン酸、またはそれらの医薬品として許容可能な塩である。別の実施形態により、ビスホスホネ-トは、アレンドロン酸、エチドロン酸、ゾレドロン酸、またはメドロン酸であり、P:Caモル比は前述で定められた通りである。
【0086】
いくつかの実施形態により、ポリリン酸またはビスホスホネ-トを含む安定化ACCのカルシウム含量(Ca含量)は、約1wt%~約39wt%、約5wt%~約39wt%、約10wt%~約39wt%、約15wt%~約39%、約20wt%~約38wt%、約25wt%~約38wt%、または約30wt%~約38wt%である。用語「Ca含量」および「カルシウム含量」は、本明細書において交換可能で使用され、ACCの最終組成物におけるカルシウムの含量を意味する。
【0087】
特定の実施形態では、P:Caモル比は約1:40~約1:1であり、Ca含量は約20wt%~約39wt%である。いくつかの実施形態では、モル比は約1:28~約1:3であり、Ca含量は約30wt%~約38wt%である。別の実施形態では、モル比は約1:25~約1:5であり、Ca含量は約30wt%~約36wt%である。
【0088】
いくつかの実施形態により、安定剤は、ポリリン酸、リン酸化アミノ酸、ビスホスホネ-ト、クエン酸、酒石酸、およびそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される。一つの実施形態により、ポリリン酸は、三リン酸、ピロリン酸、およびヘキサメタリン酸からなる群から選択され、リン酸化アミノ酸はホスホセリンまたはホスホトレオニンであり、ビスホスホネ-トはアレンドロン酸、エチドロン酸、ゾレドロン酸、およびメドロン酸からなる群から選択される。
【0089】
いくつかの実施形態により、安定化ACCは安定化剤を20wt%未満、15wt%未満、10wt%未満、または5wt%未満含む。いくつかの実施形態では、安定化ACCは安定化剤を5wt%まで含む。
【0090】
一つの実施形態により、安定化ACC一次粒子の平均直径は約10nm~約5μmである。別の実施形態により、ACC一次粒子の平均直径は約30nm~約400nmである。さらに別の実施形態により、ACC一次粒子の平均直径は約30nm~350nmである。特定の実施形態により、ACC一次粒子の平均直径は、約35nm~300nm、40nm~約250nm、約45nm~約200nm、約50nm~約150nm、または約60nm~約100nmである。なお別の実施形態により、ACCの一次粒子は凝集され、凝集体の平均直径は0.5μm~300μmである。一つのさらなる実施形態により、ACC一次粒子の凝集体の直径は、約1~約100μm、約10~約50μm、または約20~約40μmである。別の実施形態により、ACC一次粒子の凝集体の平均直径は1μm~10μmである。
【0091】
前記実施形態のいずれか一つにより、細胞培養培地における安定化ACCの最終濃度は、約0.1~約20mM、約0.5~約15mM、約1~約10mM、約2~約8mM、約3mM~約6mM、または約4mM~約5mMである。より特定的な実施形態では、安定化ACCは、0.5~約4mM、約1~約3mM、約1.5~約2.5、あるいは約1、1.5、2、または2.5mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態により、細胞培養培地における安定化ACCの濃度は、約0.0001%w/v~約1%w/v、約0.0005%w/v~約0.5%w/v、約0.001%w/v~約0.1%w/v、約0.005%w/v~約0.05%w/v、約0.01%w/v~約0.03%w/vである。
【0092】
いくつかのより具体的な実施形態により、本発明は少なくとも1種類の安定化剤によって安定化されたACCが補充された細胞培養培地を提供し、ここで安定化剤は無機ポリリン酸のようなポリリン酸、リン酸化アミノ酸、ビスホスホネ-ト、有機酸、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され、細胞培養培地は(i)筋肉、神経、または骨の細胞または組織培養、(ii)ヒトまたは非ヒト哺乳動物胚、(iii)幹細胞、(iv)生殖細胞、または(v)卵巣の成長に適している。いくつかの実施形態により、安定化剤はホスホセリンである。別の実施形態により、安定化剤は三リン酸である。さらに別の実施形態により、安定化剤はホスホセリンと、クエン酸のような有機酸の併用である。さらなる実施形態により、安定化剤は三リン酸ナトリウムのような三リン酸と、クエン酸のような有機酸の併用である。一つの実施形態により、このような細胞培養培地は、筋肉、神経、または骨の細胞または組織培養に適している。より特定的な実施形態により、細胞培養培地は細胞の成長、例えば、増殖、成熟、発達、または分化を維持および高めることができる。一つの実施形態により、細胞は神経細胞、より特定的には損傷した神経細胞である。このため一つの実施形態により、このような細胞培養培地は損傷した神経の再生を高めることができる。別の実施形態により、細胞は筋細胞、特にデュシェンヌ型筋ジストロフィ-細胞のようなジストロフィ-筋細胞である。このため、一つの実施形態により、細胞培養培地は筋管形成および/または収縮発生を高めることができる。別の実施形態により、このような細胞培養培地は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物胚の成長に適している。一つの特定の実施形態では、細胞培養培地はヒト胚の成長に適している。さらにより特定的な実施形態では、細胞培養培地はヒト胚の発達を高めることができる。別の実施形態により、このような細胞培養培地は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物生殖細胞の成長に適している。一つの特定の実施形態では、細胞培養培地はヒト生殖細胞の成熟に適している。さらにより特定的な実施形態では、細胞培養培地はヒト生殖細胞の成熟を高めることができる。別の実施形態により、細胞培養培地はヒト精子の成熟を可能にし、例えば、ヒト精子運動率を高める、精子前進運動率を高める、精子数を増加する、およびそれらのいずれかの組み合わせを可能にする。さらなる実施形態により、このような細胞培地培養は、幹細胞、特にヒト幹細胞の成長に適している。いくつかの実施形態により、幹細胞は胚性、絨毛性、羊水、造血性、間葉性、神経、グリア、成体、および誘導多能性幹細胞から選択される。一つの実施形態により、このような細胞培養培地は幹細胞の増殖および/または分化に適している。一つの特定の実施形態により、このような細胞培養培地は、MBA13のような幹細胞の骨芽細胞への分化を高めることができる。いくつかの実施形態により、細胞培養培地における安定化ACCの最終濃度は、約0.1~約8mM、約0.5~約6mM、約1~約5mM、または約2~約4mMである。一つの実施形態により、安定化ACCが補充された細胞培養培地は、細胞の成長パラメ-タ、例えば、増殖、成熟、発達、または分化を、約10%~約600%、約20%~約500%、約30%~約400%、約40%~約300%、約50%~約200%、約60~約150%、または約70~約100%高めることができる。いくつかの実施形態により、成長パラメ-タは約100%~約500%、約120%~約400%、約150%~約300%高められる。
【0093】
いくつかの実施形態により、本発明は、少なくとも1種類の安定化剤によって安定化されたACCが補充された分割、単一培養、または逐次培地のような細胞培養培地を提供し、ここで本剤はホスホセリンまたは三リン酸ナトリウムであり、任意にクエン酸と併用され、細胞培養培地における安定化ACCの最終濃度は約0.1~約8mM、約0.5~約6mM、約1~約5mM、または約2~約4mMであり、細胞培養培地はヒト胚の発達のような成長を高めることができる。
【0094】
いくつかの実施形態により、本発明は少なくとも1種類の安定化剤によって安定化されたACCが補充された、ISolate(登録商標)、PureCeption(商標)、Multipurpose Handling Medium(登録商標)(MHM(登録商標))、Quinns(商標)精子洗浄培地、Multipurpose Handling Medium(登録商標)(MHM(登録商標))、およびゲンタマイシン添加改変HTF培地などの精子分離、洗浄、または成熟のための培地のような細胞培養培地を提供し、ここで本剤はホスホセリンまたは三リン酸ナトリウムであり、任意にクエン酸と併用され、細胞培養培地における安定化ACCの最終濃度は約0.1~約8mM、約0.5~6mM、約1~約5mM、または約2~約4mMであり、細胞培養培地は精子細胞の成熟を高めことができ、例えば、精子運動率を高める、精子前進運動率を高める、精子数を増加する、およびそれらのいずれかの組み合わせを可能にする。
【0095】
他の実施形態により、本発明は少なくとも1種類の安定化剤によって安定化されたACCが補充された細胞培養培地を提供し、ここで本剤はホスホセリン、エチドロン酸、または三リン酸ナトリウムであり、任意にクエン酸と併用され、細胞培養培地は神経細胞の再生を高めることができる。
【0096】
他の実施形態により、本発明は、DMEM/F12、または任意にウマ血清(HS)、L-グルタミン、ゲンタマイシン、およびインスリンが補充されたDMEM/F12のような細胞培養培地を提供し、ここで当該培地はホスホセリン、エチドロン酸、または三リン酸ナトリウムによって、任意にクエン酸と併用で安定化されたACCがさらに補充され、ここで細胞培養培地における安定化ACCの最終濃度は、約0.1~約8mM、約0,5~約6mM、約1~約5mM、または約2~約4mMであり、当該細胞培養培地は筋管形成および/またはデュシェンヌ型筋ジストロフィ-症例などの骨格筋細胞における収縮の発生を高めることができる。
【0097】
他の実施形態により、本発明は、ホスホセリン、エチドロン酸、または三リン酸ナトリウムによって、任意にクエン酸と併用で安定化されたACCが補充された細胞培養培地を提供し、当該細胞培養培地は幹細胞の分化、特にMBA13の骨芽細胞への分化を高めることができ、ここで細胞培養培地における安定化ACCの最終濃度は、約0.1~約8mM、約0.5~約6mM、約1~約5mM、または約2~約4mMである。
【0098】
他の実施形態により、本発明は、DMEM/F12、または10%ウシ胎児血清(FBS)、2mMグルタミン、25μg/mLゲンタマイシン、および0.3~0.5%NVR-Gelを有するDMEM/F12のような細胞培養培地を提供し、ここで当該培地はホスホセリン、エチドロン酸、または三リン酸ナトリウムによって、任意にクエン酸と併用で安定化されたACCがさらに補充され、ここで細胞培養培地における安定化ACCの最終濃度は、約0.1~約8mM、約0.5~約6mM、約1~約5mM、または約2~約4mMであり、当該細胞培養培地は卵巣の保存を高めることができる。
【0099】
別の態様により、本発明は細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のために、少なくとも1種類の安定化剤によって安定化された無定形炭酸カルシウム(ACC)を提供する。用語「サプリメント」および「細胞培養培地サプリメント」は本明細書において交換可能で使用され、細胞培養培地への添加のための1種類または複数種類の成分を意味する。一つの特定の実施形態において、本用語は細胞培養培地に加えられる、または加えられることが意図された安定化ACCを意味する。一つの実施形態により、安定化ACCは培地の調製の際に培地に加えられる。別の実施形態により、ACCは使用前に培地に加えられる。
【0100】
一つの実施形態により、安定化ACCは生物学的培養を成長させるのに適した細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のためのものである。
【0101】
いくつかの実施形態により、本発明の安定化ACCは細胞培養培地に加えられるとき、細胞の成長を高める。従って、一つの実施形態では、細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のための安定化ACCは、細胞の成長を高めることができる。一つの実施形態では、細胞培養培地へのサプリメントとして使用される安定化ACCは、細胞、組織、および器官の増殖、成熟、繁殖、再生、発達、および/または分化を高める。一つの実施形態により、本発明の細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のためのACCは、幹細胞の分化を高めることができる。別の実施形態により、細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のためのこのようなACCは、細胞の増殖を高めることができる。さらに別の実施形態により、細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のためのACCは、例えば生殖体などの成熟を高める、あるいは、例えば胚などの細胞の発達を高めることができる。特定の実施形態により、細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のためのACCは、細胞の再生を高めることができる。
【0102】
一つの実施形態により、安定化ACCが補充された細胞培養培地は、細胞の成長パラメ-タ、例えば、増殖、成熟、発達、または分化を、約10%~約600%、約20%~約500%、約30%~約400%、約40%~約300%、約50%~約200%、約60%~約150%、または約70%~約100%高めることができる。いくつかの実施形態により、成長パラメ-タは約100~約500%、約120~約400%、約150~約300%高められる。
【0103】
いくつかの実施形態により、細胞培養培地サプリメントは任意の既知細胞培養培地に加えられ得る。いくつかの実施形態により、培地は前述で定められる通りである。一つの実施形態により、細胞培養培地は天然培地または人工培地から選択される。一つの実施形態により、培地はいずれかの生物学的培養、例えば、細胞培養、組織培養、器官培養、単細胞真核生物、または細菌のような微生物の成長のために適している。一つの実施形態により、細胞培養培地は、動物、植物、または昆虫の細胞、組織、および/または器官の培養から選択される培養の成長に適している。別の実施形態により、細胞培養培地は、細菌または酵母の成長に適している。
【0104】
いくつかの実施形態により、動物細胞の培養は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物の細胞培養、組織培養、器官培養、幹細胞、生殖体、胚、および器官から選択される。別の実施形態により、哺乳動物は非ヒト哺乳動物であり、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラバ、ロバ、スイギュウ、またはラクダのような家畜動物、ネコまたはイヌなどの家庭用愛玩動物、マウス、ラット、モルモット、またはハムスタ-のようのげっ歯類、ウサギのようなウサギ目、あるいはサル(例えば、マカク)または類人猿(例えば、チンパンジ-)などの霊長類である。いくつかの実施形態により、安定化ACCは一次または二次培養の成長に適した細胞培養へのサプリメントとしての使用のためのものである。いくつかの実施形態により、安定化ACCは当該細胞株の成長を高めることができる。いくつかの実施形態により、安定化ACCは哺乳動物組織培養の成長に適した細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のためのものである。いくつかの実施形態により、安定化ACCは幹細胞の成長に適した細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のためのものである。別の実施形態により、幹細胞はヒトまたは非ヒト哺乳動物幹細胞である。
【0105】
いくつかの実施形態により、安定化ACCは胚の成長に適した細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のためのものである。一つの実施形態により、本発明の細胞培養培地は胚の成熟および発達に適している。別の実施形態により、細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のための安定化ACCは、胚の発達を高めることができる。一つの実施形態により、胚はヒト胚である。別の実施形態により、胚は非ヒト哺乳動物胚である。
【0106】
いくつかの実施形態により、安定化ACCは生殖体の成長に適した細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のためのものである。一つの実施形態により、本発明の細胞培養培地は生殖体の成熟または保存に適している。別の実施形態により、細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のための安定化ACCは、生殖体の成熟または保存、例えば、精子または卵母細胞の成熟または保存を高めることができる。
【0107】
別の実施形態により、細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のための安定化ACCは、前述のように、胚または生殖体の凍結保存を高めることができる、
【0108】
いくつかの実施形態により、精子の成熟を高めることは、精子運動率を高める、精子前進運動率を高める、精子数を増加する、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。一つの実施形態により、精子はヒト精子である。別の実施形態により、精子は非ヒト哺乳動物精子である。いくつかの実施形態により、安定化ACCは器官培養または器官の成長に適した細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のためのものである。いくつかの実施形態により、器官組織または器官は、卵巣、角膜、心臓、腎臓、膵臓、肝臓、脾臓、胚、精巣、膀胱、および血液小胞から選択される。一つの特定の実施形態では、器官組織または器官は卵巣である。
【0109】
いくつかの実施形態により、安定化ACCは植物または昆虫細胞の成長に適した細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のためのものである。
【0110】
いくつかの実施形態により、安定化ACCは、動物、植物、または昆虫細胞の成長に適した、生物学的流体、組織抽出物、および血餅から選択される天然培地、あるいは平衡化塩溶液、基礎培地、および複合培地から選択される人工培地である細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のためのものである。
【0111】
いくつかの実施形態では、安定化ACCは、DMEM、RPMI1640、MEM、IMDM、L-15培地(Leibovitz)、MCDB培地、培地199、opti-MEMおよびDMEM/F-12、シュナイダ-ショウジョウバエ培地、グレ-ス昆虫培地、IPL-41昆虫培地、Sf-900、無血清昆虫培地、Shields and Sang M3昆虫培地、TC-100昆虫培地、TNM-FH昆虫培地、ハムF-12、ハムF-10、GMEM、エイムス培地、イ-グル基礎培地(BME)、クレイコム、クリック培地、グラスゴ-最小必須培地(GMEM)、MegaCell培地、マッコイ5A改変培地、NCTC培地、ウィリアムズ培地E、ウェイマウス培地、TC-10、およびIPL-10培地から選択される細胞培地へのサプリメントとしての使用のためのものである。一つの実施形態により、安定化ACCは、Quinn’s Advantage(商標)(SAGE)培地1-Step(商標)のような単一培地、Quinn’s Advantage(商標)、逐次培地(ORIGIO)、MEDICULT、ユニバ-サルIVM、DMEM、RPMI1640、MEM、IMDM、opti-MEM、GMEM、ハムF-、DMEM/F-12、シュナイダ-ショウジョウバエ培地、グレ-ス昆虫培地、Sf-900、TC-10、IPL-10、B5、N6、およびニッチ培地のような逐次培地から選択される細胞培地へのサプリメントとしての使用のためのものである。いくつかの実施形態により、安定化ACCは、精子用培地、ISolate(登録商標)、PureCeption(商標)、Multipurpose Handling Medium(登録商標)(MHM(登録商標))、Quinns(商標)精子洗浄培地、Multipurpose Handling Medium(登録商標)(MHM(登録商標))、およびゲンタマイシン添加改変HTF培地のような精子または成熟用培地、受精用培地、胚発達用培地、ならびに胚および/または生殖体成熟、ハンドリングおよび/または凍結保存用培地から選択される細胞培地へのサプリメントとしての使用のためのものである。
【0112】
これらの実施形態により、細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のためのACCは、細胞培養培地に加えられたときに成長細胞培養、組織培養、または器官培養を高めることができる。
【0113】
いくつかの実施形態により、安定化ACCは単細胞真核生物の成長に適した細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のためのものである。一つの実施形態により、単細胞真核生物はサッカロマイセス、より特定的にはサッカロマイセス・セレビシエのような酵母である。一つの実施形態により、安定化ACCは、YPD、YPG、またはYPAD培地へのサプリメントとしての使用のためのものである。
【0114】
いくつかの実施形態により、安定化ACCは、原核生物、例えば細菌などの成長に適した細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のためのものである。いくつかの実施形態では、細菌は大腸菌またはビフィドバクテリウムおよびラクトバチルス属の細菌のようなプロバイオティック細菌である。一つの実施形態により、安定化ACCは、LBおよびM9培地へのサプリメントとしての使用のためのものである。
【0115】
これらの実施形態により、細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のための安定化ACCは、細胞培養培地に加えられたとき、当該酵母または当該細菌の成長を高めることができる。
【0116】
いくつかの実施形態により、安定化ACCは古細菌の成長に適した細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のためのものである。
【0117】
いくつかの実施形態により、安定剤は、三リン酸、ホスホセリンのようなリン酸化アミノ酸、ビスホスホネ-ト、クエン酸、ならびに三リン酸とクエン酸の併用またはホスホセリンとクエン酸の併用のようなそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される。
【0118】
いくつかの実施形態により、細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のための安定化ACCは、乾燥剤形における非晶相で少なくとも7日、少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、または少なくとも1年の期間、安定を維持する。他の実施形態では、安定化ACCは細胞培養培地に分散されるとき、少なくとも1時間、少なくとも4、6、8、12、または24時間、少なくとも7日間、または少なくとも1ヶ月間、非晶相で安定を維持する。
【0119】
前記実施形態のいずれか一つにより、細胞培養培地のためのサプリメントとしての使用のための安定化ACCは、固体、液体、または半液体剤形として製剤化され得る。いくつかの実施形態により、本発明の使用のための安定化ACCは、固体剤形、例えば、粉末、錠剤、カプセル、または顆粒などで製剤化される。一つの特定の実施形態では、サプリメントとしての使用のための安定化ACCは、粉末として製剤化される。いくつかの実施形態により、サプリメントとしての使用のための安定化ACCは、液体または半液体剤形として製剤化される。一つの実施形態により、液体剤形は懸濁液またはエマルションであり、半液体剤形はゲルまたはコロイド状懸濁液のような粘性懸濁液である。一つの特定の実施形態により、安定化ACCは懸濁液として製剤化される。従って一つの実施形態では、細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のための安定化ACCは、細胞培養培地の調製の間、またはこの培地の使用の前に粉末または懸濁液として、細胞培養培地に加えられる。一つのさらに具体的な実施形態により、安定化ACCは新たに調製された懸濁液として加えられる。
【0120】
一つの実施形態により、安定化ACC一次粒子の平均直径は約10nm~約5μmである。別の実施形態により、ACC一次粒子の平均直径は約30nm~約400nmである。さらに別の実施形態により、ACC一次粒子の平均直径は約30nm~350nmである。
【0121】
特定の実施形態により、ACC一次粒子の平均直径は、約35nm~300nm、40nm~約250nm、約45nm~約200nm、約50nm~約150nm、または約60nm~約100nmである。なお別の実施形態により、ACCの一次粒子は凝集され、凝集体の平均直径は0.5μm~300μmである。一つのさらなる実施形態により、ACC一次粒子の凝集体の直径は、約1~約100μm、約10~約50μm、または約20~約40μmである。別の実施形態により、ACC一次粒子の凝集体の平均直径は1μm~10μmである。
【0122】
前記実施形態のいずれか一つにより、細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のための安定化ACCは、約0.1~約20mM、約0.5~約15mM、約1~約10mM、約2~約8mM、約3mM~約6mM、または約4mM~約5mMの最終濃度で細胞培養培地に加えられる。より特定的な実施形態では、安定化ACCは、0.5~約4mM、約1~約3mM、約1.5~約2.5、あるいは約1、1.5、2、または2.5mMの濃度で存在する。
【0123】
いくつかのより具体的な実施形態により、本発明は、(i)筋肉、神経、または骨の細胞または組織培養、(ii)ヒトまたは非ヒト哺乳動物胚、(iii)幹細胞、(iv)生殖細胞、または(v)卵巣の成長に適している細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のために、有機ポリリン酸のようなポリリン酸、リン酸化アミノ酸、ビスホスホネ-ト、有機酸、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される、少なくとも1種類の安定化剤によって安定化されるACCを提供する。いくつかの実施形態により、安定化剤はホスホセリンである。別の実施形態により、安定化剤は三リン酸である。さらに別の実施形態により、安定化剤はホスホセリンと、クエン酸のような有機酸の併用である。さらなる実施形態により、安定化剤は三リン酸ナトリウムのような三リン酸と、クエン酸のような有機酸の併用である。一つの実施形態により、このような細胞培養培地は、筋肉、神経、または骨の細胞または組織培養に適している。一つの実施形態により、当該細胞培養培地を補充する安定化ACCは、細胞の成長、例えば、増殖、発達、成熟、または分化を高めることができる。一つの実施形態により、細胞は神経細胞、より特定的には損傷した神経細胞である。一つの実施形態により、細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のための安定化ACCは、損傷した神経細胞の再生を高めることができる。別の実施形態により、細胞は筋細胞、特にデュシェンヌ型筋ジストロフィ-細胞のようなジストロフィ-筋細胞である。一つの実施形態により、細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のための安定化ACCは、筋管形成および/または筋細胞の収縮の発生を高めることができる。一つの実施形態により、細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のための安定化ACCは、ヒト胚の発達を高めることができる。一つの実施形態により、細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のための安定化ACCは、生殖体、特に精子の成熟または保存を高めることができる。別の実施形態により、細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のための安定化ACCは、前述のように、胚または生殖体の凍結保存を高めることができる。一つの実施形態により、細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のための安定化ACCは、精子運動率を高める、精子前進運動率を高める、精子数を増加する、およびそれらのいずれかの組み合わせを可能にする。さらなる実施形態により、サプリメントとしての使用のための安定化ACCは、幹細胞、特にヒト幹細胞の成長、例えば、増殖、拡張、および/または分化を高めることができる。いくつかの実施形態により、幹細胞は胚性、絨毛性、羊水、造血性、間葉性、神経、グリア、成体、および誘導多能性幹細胞から選択される。一つの実施形態により、安定化ACCが補充された細胞培養培地は、細胞の成長パラメ-タ、例えば、増殖、成熟、発達、または分化を、約10%~約600%、約20%~約500%、約30%~約400%、約40%~約300%、約50%~約200%、約60%~約150%、または約70%~約100%高めることができる。いくつかの実施形態により、成長パラメ-タは約100%~約500%、約120%~約400%、約150%~約300%高められる。
【0124】
いくつかの実施形態により、本発明は分割、単一培養、または逐次培養培地へのサプリメントとしての使用のための安定化ACCを提供し、ここで安定化剤はホスホセリンまたは三リン酸ナトリウムであり、任意にクエン酸と併用され、当該安定化ACCはヒト胚の発達を高めることができる。
【0125】
いくつかの実施形態により、本発明は、細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のための安定化ACCを提供し、ここで本剤はホスホセリン、エチドロン酸、または三リン酸ナトリウムであり、任意にクエン酸と併用され、当該安定化ACCは神経細胞の再生を高めることができる。
【0126】
いくつかの実施形態により、本発明は、DMEM/F12、または任意にウマ血清(HS)、L-グルタミン、ゲンタマイシン、およびインスリンが補充されたDMEM/F12へのサプリメントとしての使用のための安定化ACCを提供し、ここで安定化剤はホスホセリン、エチドロン酸、または三リン酸ナトリウムから選択され、任意にクエン酸と併用され、当該安定化ACCは筋管形成および/または骨格筋細胞、デュシェンヌ型筋ジストロフィ-症例などの骨格筋細胞における収縮の発生を高めることができる。
【0127】
いくつかの実施形態により、本発明は細胞培養培地へのサプリメントとしての使用のために、ホスホセリン、エチドロン酸、または三リン酸ナトリウムによって、任意にクエン酸と併用で安定化されたACCを提供し、これによって幹細胞の分化、特にMBA13の骨芽細胞への分化を高めることができる。
【0128】
いくつかの実施形態により、本発明は、ISolate(登録商標)、PureCeption(商標)、Multipurpose Handling Medium(登録商標)(MHM(登録商標))、Quinns(商標)精子洗浄培地、Multipurpose Handling Medium(登録商標)(MHM(登録商標))、ゲンタマイシン添加改変HTFのような精子分離、洗浄、または成熟のための培地へのサプリメントとしての使用のため、ホスホセリン、エチドロン酸、または三リン酸ナトリウムによって、任意にクエン酸と併用で安定化されたACCを提供し、これによって、精子細胞の成熟を高めることができ、例えば、ヒト精子運動率を高める、精子前進運動率を高める、精子数を増加する、およびそれらのいずれかの組み合わせを可能にする。
【0129】
本発明は、DMEM/F12、または10%ウシ胎児血清(FBS)、2mMグルタミン、25μg/mLゲンタマイシン、および0.3~0.5%NVR-Gelを有するDMEM/F12のような培地へのサプリメントとしての使用のため、ホスホセリン、エチドロン酸、または三リン酸ナトリウムによって、任意にクエン酸と併用で安定化されたACCを提供する。
【0130】
いくつかの実施形態により、細胞培養培地における安定化ACCの最終濃度は、約0.1~約8mM、約0.5~約6mM、約1~約5mM、または約2~約4mMである。
【0131】
さらに別の態様により、本発明は少なくとも1種類の安定化剤によって安定化された無定形炭酸カルシウム(ACC)を含む細胞培養培地サプリメントを提供する。
【0132】
一つの実施形態により、安定化ACCを含む細胞培養培地サプリメントは、培地の調製の際に培地に加えられる。別の実施形態により、サプリメントは使用前に培地に加えられる。
【0133】
いくつかの実施形態により、細胞培養培地サプリメントは固体サプリメントである。他の実施形態により、サプリメントは液体または半液体サプリメントである。
【0134】
前記実施形態のいずれか一つにより、ACCは前述で定められる少なくとも1種類の安定化剤によって安定化される。いくつかの実施形態により、安定剤は、三リン酸のようなポリリン酸、ホスホセリンのようなリン酸化アミノ酸、ビスホスホネ-ト、クエン酸、ならびに三リン酸とクエン酸の併用またはホスホセリンとクエン酸の併用のようなそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される。
【0135】
安定化ACCを含む本発明の細胞培養培地サプリメントは、前述で説明されるいずれかの細胞培養培地に添加され得る。一つの実施形態では、安定化ACCを含む細胞培養培地サプリメントは、生物学的培養、例えば、細胞の培養、組織培養、器官培養、または器官を成長するのに適している細胞培養培地に加えられ得る。細胞は真核生物または原核生物であり得る。特に、細胞培養培地は、成長真核細胞培養、組織培養、または器官に適している培地を意味する。いくつかの実施形態により、細胞培養は懸濁または接着細胞培養である。いくつかの実施形態では、培地は完全培地、基礎培地、細胞培養培地サプリメントが補充された基礎培地、様々な量の血清を有する培地、または化学的に規定された培地であり得る。
【0136】
いくつかの実施形態により、安定化ACCを含む細胞培養培地サプリメントは、細胞または組織の成長を高めることができる。このため一つの実施形態では、安定化ACCを含む細胞培養培地サプリメントは、細胞、組織、または器官の増殖、成熟、繁殖、再生、発達、および/または分化を高めることができる。一つの実施形態により、サプリメントは幹細胞の分化を高めることができる。別の実施形態により、サプリメントは細胞の培養の増殖を高めることができる。さらに別の実施形態により、サプリメントは細胞または組織の成熟および/または発達を高めることができる。特定の実施形態により、サプリメントは細胞の再生を高めることができる。いくつかの実施形態により、細胞は真核細胞である。一つの実施形態により、真核細胞は動物、植物、または昆虫細胞である。さらなる実施形態により、動物細胞の培養は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物の細胞培養、組織培養、器官培養、幹細胞、生殖体、胚、および器官から選択される。いくつかの実施形態により、哺乳動物はヒトであり、ヒト細胞の培養はヒト細胞、組織培養、および器官培養から選択される。他の実施形態により、哺乳動物は非ヒト哺乳動物である。いくつかの実施形態により、ヒトまたは非ヒト哺乳動物細胞培養のどちらかである細胞培養は、神経、筋肉、上皮、骨、脂肪、幹細胞、生殖体、および血液細胞の細胞培養から選択される。一つの実施形態により、安定化ACCが補充された細胞培養培地は、細胞の成長パラメ-タ、例えば、増殖、成熟、発達、または分化を、約10%~約600%、約20%~約500%、約30%~約400%、約40%~約300%、約50%~約200%、約60%~約150%、または約70%~約100%高めることができる。いくつかの実施形態により、成長パラメ-タは約100%~約500%、約120%~約400%、約150%~約300%高められる。
【0137】
いくつかの実施形態により、安定化ACCを含む細胞培養培地サプリメントは、酵母の成長に適した細胞培養培地に加えられ得、当該細胞培養培地はYPD、YPG、およびYPADから選択される。
【0138】
いくつかの実施形態により、安定化ACCを含む細胞培養培地サプリメントは、原核生物の成長に適した細胞培養培地に加えられ得、当該培地はLBおよびM9から選択される。
【0139】
いくつかの実施形態により、安定化ACCを含む細胞培養培地サプリメントは、酵母および細菌の成長を高めることができる。
【0140】
いくつかのより具体的な実施形態により、本発明は少なくとも1種類の安定化剤によって安定化されたACCを含む細胞培養培地サプリメントを提供し、ここで本剤はリン酸化アミノ酸、ポリリン酸、ビスホスホネ-ト、有機酸、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態により、サプリメントは、(i)筋肉、神経、または骨の細胞または組織培養、(ii)ヒトまたは非ヒト哺乳動物胚、(iii)幹細胞、(iv)生殖体、または(v)卵巣の成長に適している細胞培養培地に加えられる。いくつかの実施形態により、安定剤はホスホセリンである。別の実施形態により、安定化剤は三リン酸である。さらに別の実施形態により、安定化剤はホスホセリンと、クエン酸のような有機酸の併用である。さらなる実施形態により、安定化剤は三リン酸ナトリウムのような三リン酸と、クエン酸のような有機酸の併用である。より特定的な実施形態により、細胞培養培地サプリメントは細胞の成長、例えば、増殖、分化、発達、または成熟を高めることができる。一つの実施形態により、このような細胞培養培地サプリメントは損傷した神経細胞の再生を高めることができる。別の実施形態により、このような細胞培養培地サプリメントは筋管形成を高める、および/または筋管の収縮の発生を促進することができる。さらなる実施形態により、このような細胞培養培地サプリメントは、ヒト胚のような胚の発達を高めることができる。さらなる実施形態により、このような細胞培養培地サプリメントは、生殖体、特に精子の成熟または保存を高めることができる。一つの特定の実施形態により、このような細胞培養培地サプリメントは、前述で説明されるような、胚または生殖体の凍結保存を高めることができる。一つの実施形態により、このような細胞培養培地は幹細胞の増殖および分化に適している。いくつかの実施形態により、幹細胞は胚性、造血性、間葉性、神経、グリア、成体、および誘導多能性幹細胞から選択される。別の実施形態により、このような細胞培養培地サプリメントは幹細胞の分化を高めることができる。一つの特定の実施形態により、細胞培養培地サプリメントは、MBA13のような幹細胞の骨芽細胞への分化を高めることができる。一つの実施形態により、安定化ACCが補充された細胞培養培地は、細胞の成長パラメ-タ、例えば、増殖、成熟、発達、または分化を、約10%~約600%、約20%~約500%、約30%~約400%、約40%~約300%、約50%~約200%、約60%~約150%、または約70%~約100%高めることができる。いくつかの実施形態により、成長パラメ-タは約100%~約500%、約120%~約400%、約150%~約300%高められる。
【0141】
いくつかの実施形態により、本発明は、ホスホセリン、エチドロン酸、または三リン酸ナトリウムから選択される少なくとも1種類の安定化剤によって、任意にクエン酸との併用で安定化されたACCを含む細胞培養培地サプリメントを提供する。一つの実施形態により、サプリメントは分割、単一培養、または逐次培地に加えられ、従ってヒト胚の発達を高める。一つの実施形態により、サプリメントは、ISolate(登録商標)、PureCeption(商標)、Multipurpose Handling Medium(登録商標)(MHM(登録商標))、Quinns(商標)精子洗浄培地、Multipurpose Handling Medium(登録商標)(MHM(登録商標))、またはゲンタマイシン添加改変HTF培地のような精子分離、洗浄、または成熟のための培地に加えられ、従って生殖体、特に精子の成熟または保存を高める。別の実施形態により、このようなサプリメントは神経細胞の成長に適した細胞培養培地に添加され、従って神経細胞の再生を高める。さらなる実施形態により、サプリメントはDMEM/F12培地、または任意にさらにウマ血清(HS)、L-グルタミン、ゲンタマイシン、およびインスリンが補充されたDMEM/F12培地に加えられ、従って、デュシェンヌ型筋ジストロフィ-症例などの骨格筋細胞における筋管形成を高める。さらに別の実施形態により、サプリメントは幹細胞の成長に適した細胞培養培地に加えられ、これによって幹細胞の分化、特にMBA13の骨芽細胞への分化を高める。他の実施形態により、サプリメントはDMEM/F12、または10%ウシ胎児血清(FBS)、2mMグルタミン、25μg/mLゲンタマイシン、および0.3~0.5%NVR-Gelを有するDMEM/F12のような培地に加えられ、これによって卵巣の保存を高める。いくつかの前記実施形態により、細胞培養培地における安定化ACCの最終濃度は、約0.1~約8mM、約0.5~約6mM、約1~約5mM、または約2~約4mMである。
【0142】
前記実施形態のいずれか一つにより、用語「含む」は「からなる」の意味を有し、従ってこのような実施形態により、細胞培養培地サプリメントは少なくとも1種類の安定剤によって安定化されたACCからなる。
【0143】
さらなる態様により、本発明は、少なくとも1種類の安定剤によって安定化され、細胞培養培地のためのサプリメントとして製剤化される無定形炭酸カルシウム(ACC)を提供する。
【0144】
特定の態様により、本発明は生物学的培養の成長を高めるための方法を提供し、当該方法は当該培養を少なくとも1種類の安定剤によって安定化されたACCに暴露することを含む。一つの実施形態により、生物学的培養は真核細胞、組織、または器官、および原核細胞から選択される。
【0145】
他の実施形態により、本方法は、細胞、組織、および器官のような生物学的培養の成長を高める、例えば、増殖、成熟、繁殖、再生、分化、および/または発達を高めることを含む。
【0146】
一つの実施形態により、細胞の培養は、動物、植物、または昆虫細胞培養から選択される。別の実施形態により、組織培養は動物、植物、または昆虫組織培養から選択される。さらなる実施形態により、器官培養は動物、植物、または昆虫器官培養から選択される。いくつかの実施形態により、動物はヒトまたは非ヒト哺乳動物である。特定の実施形態により、非ヒト哺乳動物は、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラバ、ロバ、スイギュウ、またはラクダのような家畜動物、ネコまたはイヌなどの家庭用愛玩動物、マウス、ラット、モルモット、またはハムスタ-のようのげっ歯類、ウサギのようなウサギ目、およびサル(例えば、マカク)または類人猿(例えば、チンパンジ-)などの霊長類から選択される。
【0147】
いくつかの実施形態により、哺乳動物細胞であるヒトまたは非ヒト哺乳動物細胞培養のどちらかは、神経、筋肉、上皮、骨、脂肪、幹細胞、生殖体、および血液細胞から選択される。一つの実施形態により、組織培養は上皮、結合、筋肉、および神経組織培養から選択される。いくつかのより特定的な実施形態により、組織培養は腎臓、肝臓、腺、脳、骨、眼、および筋組織培養から選択される。いくつかの実施形態により、器官組織または器官は、卵巣、角膜、心臓、腎臓、膵臓、肝臓、脾臓、胚、精巣、膀胱、および血液小胞から選択される。一つの特定の実施形態では、器官組織または器官は卵巣である。
【0148】
一つの実施形態により、本発明は筋細胞の成長を高めるための方法を提供する。別の実施形態により、筋細胞の成長を高めることは筋管形成を高めることを含む。いくつかの実施形態により、本発明はまた、当該筋管の自発的収縮活動の発生に対する時間を低下することを含む。自発的収縮活動の発生までの時間は、筋芽細胞が融合して自発的に収縮するまでに必要な時間として定められる。一つの実施形態では、当該筋芽細胞から形成される筋細胞は骨格筋細胞または心筋細胞から選択される。より特定的な実施形態では、筋細胞は骨格筋細胞である。いくつかの実施形態により、本方法は、例えばデュシェンヌ型筋ジストロフィ-症例などの骨格筋細胞における筋管形成および/または収縮の発生を高めることを含む。
【0149】
他の実施形態により、本方法は神経細胞の成長を高めることを含む。一つの実施形態では、神経細胞の成長を高めることは、神経細胞再生を高めるおよび促進することを含む。そのため一つの実施形態では、本方法は、末梢および中枢神経系の軸索および樹状神経線維の再成長を高める、および/または損傷した神経線維から発芽させることを含む。
【0150】
いくつかの実施形態により、本方法は生殖体の成熟または保存を高める、例えば、精子または卵母細胞のインビトロ成熟または保存を高めることを含む。いくつかの実施形態により、生殖体はヒト生殖体または非ヒト哺乳動物生殖体から選択される。一つの実施形態により、生殖体は精子である。このため一つの態様では、本発明は精子の成熟を高めるまたは質を改善する方法を提供し、当該方法は当該培養を少なくとも1種類の安定剤によって安定化されたACCに暴露することを含む。
【0151】
一つの実施形態により、精子の質を改善することは、精子運動率を高める、精子前進運動率を高める、精子数を増加する、およびそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される。
【0152】
いくつかの実施形態により、精子数を増加することは、運動率または前進運動率処理における精子数を増加することを含む。一つの実施形態により、運動率または前進運動率処理はスイムアップ法である。
【0153】
前記実施形態のいずれか1つにより、精子はヒトまたは非ヒト哺乳動物の精子である。いくつかの実施形態により、非ヒト哺乳動物は、家畜動物、家庭用愛玩動物、げっ歯類、野生動物、および霊長類からなる群から選択される。
【0154】
一つの実施形態では、家畜動物は、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラバ、ロバ、スイギュウ、およびラクダから選択される。いくつかの他の実施形態では、家庭用愛玩動物はネコまたはイヌであり、げっ歯類はラット、マウス、モルモット、またはハムスタ-であり、ウサギ目はウサギであり、霊長類はマカクのようなサルまたはチンパンジ-のような類人猿である。
【0155】
別の実施形態により、精子は非哺乳動物の精子である。いくつかの実施形態により、非哺乳動物は魚類、昆虫、および鳥類からなる群から選択される。
【0156】
一つの実施形態により、精子はヒト精子である。他の実施形態により、本方法はインビトロでの胚発達を高めることを含む。
【0157】
いくつかの実施形態により、本方法は幹細胞分化および/または増殖を高めることを含む。いくつかの実施形態により、幹細胞は胚性、絨毛性、羊水、造血性、間葉性、神経、グリア、成体、および誘導多能性幹細胞から選択される。一つの実施形態により、本方法はMBA13の骨芽細胞への分化のような幹細胞の分化を高めることを含む。
【0158】
一つの実施形態により、安定化ACCが補充された細胞培養培地は、細胞の成長パラメ-タ、例えば、増殖、成熟、発達、または分化を、約10%~約600%、約20%~約500%、約30%~約400%、約40%~約300%、約50%~約200%、約60%~約150%、または約70%~約100%高めることができる。いくつかの実施形態により、成長パラメ-タは約100%~約500%、約120%~約400%、約150%~約300%高められる。
【0159】
いくつかの実施形態により、細胞の培養は細菌または酵母の培養であり、そのためこのような実施形態により、本方法は酵母または細菌の成長を高めることを含む。いくつかの実施形態では、細菌は大腸菌またはビフィドバクテリウムおよびラクトバチルス属の細菌のようなプロバイオティック細菌である。前記実施形態のいずれか一つにより、少なくとも1種類の安定化剤によって安定化されたACCに細胞を暴露することは、当該ACCを細胞培養培地に加えることを含む。用語「に暴露する」および「と接触させる」は、本明細書において交換可能で使用され、安定化ACCのような対象の成分を含む培地に細胞を加えるまたは移す、あるいはACCなどの成分を細胞が成長または培養される培地に加えることを意味する。細胞培地は従来技術で知られている任意の培地であり得る。いくつかの実施形態により、培地は前述で定められる通りである。一つの実施形態により、細胞培養培地は天然培地または人工培地から選択される。いくつかの実施形態により、天然培地は血漿、血清、リンパ、ヒト胎盤臍帯血、および羊水から選択される生物学的流体を含む。別の実施形態により、天然培地は、肝臓、脾臓、腫瘍、リンパ球、および骨髄の抽出物のような組織抽出物、ウシ胚およびニワトリ胚の抽出物を含む。さらなる実施形態により、天然培地は凝固剤または血餅を含む。いくつかの実施形態により、培地は少なくとも1種類の安定化剤で安定化されたACCが補充された人工培地である。一つの実施形態により、人工培地は平衡化塩溶液である。平衡化塩溶液の例は、PBS、DPBS、HBSS、EBSS、タイロ-ドT6、WM1、プ-ルP1、クインHTF、およびガ-ドナ-G1である。別の実施形態により、人工培地は基礎培地である。いくつかの実施形態により、培地はさらに従来技術で良く知られているように補充され得る。一つの実施形態により、培地は血清、例えば、ウシ胎児血清によって補充される。さらなる実施形態により、人工培地は複合培地である。
【0160】
一つの実施形態により、人工培地は無血清培地である。さらなる実施形態により、人工培地は血清含量が低下した培地である。別の実施形態により、人工培地は無タンパク質培地である。
【0161】
一つの実施形態により、本法は、DMEM、EMEM、RPMI1640培地、イ-グル基礎培地(BME)、ハムF-10、ハム-12、DMEM/F-12、IMDM、opti-MEM、GMEM、IPL-41昆虫培地、シュナイダ-ショウジョウバエ培地、グリ-ス昆虫培地、無血清昆虫培地、Sf-900、TC-10、Shiekls and Sang M3昆虫培地、TC-100昆虫培地、TNM-FH昆虫培地、IPL-10、Quinn’s Advantage(商標)(SAGE)培地1-Step(商標)のような単一培地、Quinn’s Advantage(商標)分割培地のような逐次培地、ムラシゲスク-グ(MS)、B5、N6、ニッチ培地、NCTC培地、MegCell培地、クレイコム、クリック培地、L-15培地、199培地、MCDB培地、エイムス培地、BGJb培地、クリック培地、CMRL-1066培地、マッコイ5A改変培地、NCTC培地、スイムS-77培地、ウェイマウス培地、ウィリアム培地E、インビトロ成熟培地、Menezo B2およびB3培地、Behr胚盤胞培地、ガ-ドナ-G2ユニバ-サル培地IVM(ORIGIO)、および胚成長用逐次培地から選択される細胞培養培地に安定化ACCと加えることを含む。一つの実施形態により、本方法は、ISolate(登録商標)、PureCeption(商標)、Multipurpose Handling Medium(登録商標)(MHM(登録商標))、Quinns(商標)精子洗浄培地、Multipurpose Handling Medium(登録商標)(MHM(登録商標))、ゲンタマイシン添加改変HTF培地のような精子分離用培地、精子洗浄用培地、および成熟用培地から選択される細胞培養培地に安定化ACCを加えることを含む。一つの実施形態により、本方法は、受精用培地、胚発達用培地、あるいは胚および/または生殖体成熟、ハンドリング、および/または凍結保存用の培地から選択される細胞培養培地に安定化ACCを加えることを含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、細胞はCytodex1または3、Cytopore2、ポリスチレン、ゼラチン、デキストラン、ポリアクリルアミド、または他の代替担体のような担体に定着または固定化された培養として成長させる。
【0163】
いくつかの実施形態により、細胞培養培地は単細胞真核生物の成長に適している。一つの実施形態により、単細胞真核生物はサッカロマイセス、より特定的にはサッカロマイセス・セレビシエのような酵母である。一つの実施形態により、本方法は、サッカロマイセス・セレビシエなどの単細胞真核生物の成長に適している細胞培養培地に安定化ACCを加えることを含み、当該細胞培養培地は、酵母抽出物ペプトンデキストロ-ス(YPD)、酵母抽出物-ペプトン-グリセロ-ル(YPG)、および酵母抽出物-ペプトン-デキストロ-ス(YPAD)培地から選択される。
【0164】
いくつかの実施形態により、細胞培養培地は原核生物の成長に適しており、例えば、細菌は大腸菌あるいはビフィドバクテリウム属およびラクトバチルス属の細菌のようなプロバイオティック細菌である。一つの実施形態により、本方法はLBまたはM9のような細菌の成長に適した培地に安定化ACCを加えることを含む。
【0165】
前記実施形態のいずれか一つにより、安定化ACCは前記実施形態のいずれか一つによる細胞培養培地に、約0.1~約20mM、約0.5~約15mM、約1~約10mM、約2~約8mM、約3mM~約6mM、または約4mM~約5mMの最終濃度で加えられる。より特定的な実施形態では、安定化ACCは、0.5~約4mM、約1~約3mM、約1.5~約2.5、あるいは約1、1.5、2、または2.5mMの濃度で存在する。
【0166】
一つの実施形態により、ACCは固体、液体、または半液体の剤形で製剤化される。一つの特定の実施形態では、安定化ACCは懸濁液の剤形で加えられる。さらに別の実施形態では、懸濁液は新たに調製される懸濁液である。
【0167】
前記実施形態のいずれか一つにより、ACCは前述で定められる少なくとも1種類の安定化剤によって安定化される。特定の実施形態では、ACC安定化剤は各存在で独立して、有機酸;リン酸化、ホスホン酸化、硫酸化、またはスルホン酸化有機化合物;ヒドロキシルカルボン酸のリン酸または硫酸エステル;有機アミン化合物;ヒドロキシルを含む有機化合物;有機亜リン酸化合物またはその塩;リン酸化アミノ酸およびその誘導体、ビスホスホネ-ト;有機リン酸化合物;有機ホスホン酸化合物;有機ポリリン酸、無機ポリリン酸、無機亜リン酸、前記で定められる複数官能基を有する有機化合物;無機リン酸およびポリリン酸化合物;ポリリン酸鎖を有する有機化合物;有機界面活性剤;生体必須無機イオン;サッカライドおよびそれらの誘導体、タンパク質、リン酸化タンパク質、天然および合成バイオポリマ-およびそれらの誘導体、あるいはそれらの組み合わせである。別の実施形態により、安定化剤は、ホスホセリン、アデノシン三リン酸、アデノシン二リン酸、フィチン酸、クエン酸、エチドロン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、三リン酸、エタノ-ル、ヘキサメタンリン酸、キチン、およびそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される。本化合物は前述で定められる通りである。いくつかの実施形態により、ACCは1種類を超える安定化剤、例えば、2または3種類の安定化剤によって安定化される。
【0168】
いくつかの実施形態により、安定剤は、三リン酸、ホスホセリンのようなリン酸化アミノ酸、ビスホスホネ-ト、クエン酸、ならびに三リン酸とクエン酸の併用またはホスホセリンとクエン酸の併用のようなそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される。
【0169】
別の態様により、本発明は、少なくとも1種類の安定剤によって安定化された無定形炭酸カルシウム(ACC)を含む細胞培養培地の調製の方法を提供し、当該方法は細胞培養培地に安定化ACCを加えることを含む。
【0170】
特定の態様により、本発明は、少なくとも1種類の安定剤によって安定化された無定形炭酸カルシウム(ACC)、および細胞培養培地と組み合わせる当該ACCの使用のための取扱説明書を含むキットを提供する。一つの実施形態により、安定化ACCは細胞培養培地サプリメントとしての使用のためのACCである。一つの実施形態により、本発明は、塩化カルシウム、炭酸ナトリウム、少なくとも1種類の安定化剤、および塩化カルシウム、炭酸ナトリウム、少なくとも1種類の安定化剤から安定化ACCを調製するための取扱説明書、ならびに細胞培養培地と組み合わせた当該安定化ACCの使用のための取扱説明書を含むキットを提供する。一つの実施形態により、塩化カルシウム、炭酸ナトリウム、および/または少なくとも1種類の安定化剤は水溶液として存在する。
【0171】
別の実施形態により、キットは少なくとも1種類の安定剤によって安定化されたACCを含む細胞培養培地サプリメント、および細胞培養培地と組み合わせる当該サプリメントの使用ための取扱説明書を含む。一つの実施形態により、細胞培養培地サプリメントは、少なくとも1種類の安定剤によって安定化されたACCからなる。
【0172】
前記実施形態のいずれか一つにより、キットはさらに、前述で定められる細胞培養培地を含む。従って、一つの実施形態において、キットは少なくとも1種類の安定剤によって安定化されたACC、細胞培養培地、および使用のための取扱説明書を含む。他の実施形態では、キットは少なくとも1種類の安定剤によって安定化されたACCを含む細胞培養培地サプリメント、培地、および使用ための取扱説明書を含む。
【0173】
少なくとも1種類の安定剤によって安定化されたACCおよび細胞培養培地は前述で説明された通りである。
【0174】
いくつかの実施形態により、安定剤は、三リン酸、ホスホセリンのようなリン酸化アミノ酸、ビスホスホネ-ト、クエン酸、ならびに三リン酸とクエン酸の併用またはホスホセリンとクエン酸の併用のようなそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される。
【0175】
いくつかの実施形態により、ACC組成物は前記で開示される安定剤の組み合わせを含む。
【0176】
前記実施形態のいずれか一つにより、安定化ACCは、固体、液体、または半液体製剤として製剤化され得る。このため一つの実施形態では、細胞培養培地のサプリメントとしての使用のための安定化ACCは、固体、液体または半液体として製剤化される。いくつかの実施形態により、安定化ACCは、固体剤形、例えば、粉末、錠剤、カプセル、または顆粒などで製剤化される。このため一つの特定の実施形態では、細胞培養へのサプリメントとしての使用のための安定化ACCは、粉末として製剤化される。他の実施形態により、サプリメントとしての使用のための安定化ACCは、液体または半液体として製剤化される。一つの実施形態により、液体剤形は懸濁液またはエマルションであり、半液体剤形はゲルまたはコロイドである。一つの具体的な実施形態では、安定化ACCは懸濁液として製剤化される。従って一つの実施形態では、粉末としてまたは懸濁液として製剤化された安定化ACCが、細胞培養培地にその培地の使用前に加えられる。一つのさらに具体的な実施形態により、安定化ACCは新たに調製された懸濁液として加えられる。
【0177】
本発明のキットは、さらに細胞培養培地を含み得る。細胞培養培地は従来技術で良く知られており、任意の培地が使用され得る。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は生物学的培養を成長するのに適しており、当該培養は細胞の培養、組織培養、器官培養、または器官から選択される。細胞の培養は真核細胞または原核細胞の培養であり得る。特に、細胞培養培地は、成長真核細胞培養、組織培養、または器官に適している培地を意味する。いくつかの特定の実施形態では、培地は完全培地、基礎培地、細胞培養培地サプリメントが補充された基礎培地、様々な量の血清を有する培地、または化学的に規定された培地であり得る。
【0178】
いくつかの実施形態により、細胞培養培地は、DMEM、RPMI1640、MEM、IMDM、L-15培地(Leibovitz)、MCDB培地、培地199、opti-MEMおよびDMEM/F-12、シュナイダ-ショウジョウバエ培地、グレ-ス昆虫培地、IPL-41昆虫培地、Sf-900、無血清昆虫培地、Shields and Sang M3昆虫培地、TC-100昆虫培地、TNM-FH昆虫培地、ハムF-12、ハムF-10、GMEM、エイムス培地、イ-グル基礎培地(BME)、クレイコム、クリック培地、グラスゴ-最小必須培地(GMEM)、MegaCell培地、マッコイ5A改変培地、NCTC培地、ウィリアムズ培地E、ウェイマウス培地、TC-10、およびIPL-10培地から選択される。一つの特定の実施形態では、細胞培養培地は、Quinn’s Advantage(商標)(SAGE)培地1-Step(商標)のような単一培地、Quinn’s Advantage(商標)分割培地のような逐次培地、MEDICULT、ユニバ-サルIVM、DMEM、RPMI1640、MEM、IMDM、opti-MEM、GMEM、ハムF-、DMEM/F-12、シュナイダ-ショウジョウバエ培地、グレ-ス昆虫培地、Sf-900、TC-10、IPL-10、B5、N6、またはニッチ培地から選択される。培地のさらなる例は、ISolate(登録商標)、PureCeption(商標)、Multipurpose Handling Medium(登録商標)(MHM(登録商標))のような精子分離用の培地、ならびにQuinns(商標)Sperm Washing Medium、Multipurpose Handling Medium(登録商標)(MHM(登録商標))、およびゲンタマイシン-HEPES添加改変HTF培地のような精子洗浄用の培地である。他の実施形態は、培地はSAGE(商標)インビトロ成熟培地(IVM)およびBO-IVM卵母細胞成熟培地のような、卵母細胞成熟用の培地である。さらなる実施形態により、細胞培養培地は、受精用培地、胚発達用培地、生殖体ハンドリング用培地、着床前遺伝子診断(PGD)用培地、ならびに胚および/または生殖体成熟、ハンドリング、および/または凍結保存用の培地である。
【0179】
いくつかの実施形態により、細胞培養培地は、酵母の成長に適しており、当該細胞培養培地はYPD、YPG、およびYPADから選択される。
【0180】
いくつかの実施形態により、細胞培養培地は、原核生物の成長に適しており、当該培地はLBおよびM9から選択される。
【0181】
一つの実施形態により、本発明は、塩化カルシウム、炭酸ナトリウム、少なくとも1種類の安定化剤、および安定化ACCを調製するための取扱説明書、ならびに細胞培養培地と組み合わせた当該安定化ACCの使用のための取扱説明書を含むキットを提供する。いくつかの実施形態により、塩化カルシウムおよび炭酸ナトリウムが水溶液として存在する。一つの実施形態により、少なくとも1種類の安定化剤は、1つまた2つの別々の溶液として存在する。一つの実施形態により、ACCを調製するための取扱説明書は、塩化カルシウムおよび少なくとも1種類の安定剤を含む溶液を炭酸ナトリウムと混合し、さらに少なくとも1種類の安定化剤を含む溶液を加えるための取扱説明書を含む。
【0182】
本発明のいくつかの実施形態により、いくつかの実施形態における用語「高めることができる」および「高める」は、交換可能で使用される。
【0183】
前記実施形態のいずれか一つにより、用語「含む」は「からなる」の意味を含み、これによって置換され得る。
【0184】
本明細書で使用されるとき、用語「約」は、量、一時的期間などのような測定可能な値を意味する場合、特定された値から±10%、または±5%、±1%、またはさらに±0,1%の変動を包含することが意味される。
【0185】
本発明書はここで全般的に説明されているが、同様なことは、図によって示され、本発明を制限することが意図されない、後述の例を参考にしてさらに容易に理解されるであろう。
例
例1.SC-DRG共培養におけるACCの効果
【0186】
方法
【0187】
培養培地
【0188】
培養培地は、カルシウム枯渇した(カルシウムイオン無添加培地、特別調製)ダルベッコ改変イ-グル培地-栄養素混合物F-12(DMEM-F12)が90%、10%熱不活化ウシ胎児血清(FBS)、6g/LのD-グルコ-ス、2mMグルタミン、25μg/mLゲンタマイシン、および0.05ng/mLインスリン用増殖因子1(IGF-I)(すべてBiological-Industries、イスラエルから購入)から構成された。
【0189】
神経培養用の基材としてのNVR-Gel
【0190】
Neural and Vascular Reconstruction Gel(神経および血管再構成ゲル)(NVR-Gel、NVR Labs所有権)は、2種の主成分である高分子ヒアルロン酸(HA、3×106Da、BTG、イスラエル)およびラミニン(シグマ)からなる。神経細胞培養では、1%のNVR-Gelを0.3~0.5%の最終濃度まで培養培地で希釈した。ゲルは粘性液体の組成を有し、これは組み込まれた細胞または外植片をプラスチックまたはガラスの基底に容易に適切に付着させ、神経線維の3Dパタ-ンにおける神経線維成長を可能にした。
【0191】
神経組織培養の調製
【0192】
すべての実験は、動物実験に関してイスラエル当局によって承認された地域倫理委員会によって実施され認可された。後根神経節(DRG)および脊髄(SC)の静置組織培養、ならびに分離された脳細胞の培養を、ラット胎児(妊娠15日、ルイス同系交配、harlan、イスラエル)から調製した。切除後直ちに、分離した組織をMacwain組織チョッパ-で小切片(厚さ400μm)に切断した。これらの試験では、2種の組織培養法を使用した。第一の方法では、組織片を0.3~0.5%NVR-Gel含有の1mL培養培地を含む12ウェル培養プレ-トに直接的に播種した。第二の方法では、組織片をさらにトリプシン-EDTAによって30分間解離させ、培養培地で洗浄した。続いて、解離した細胞をキトサン粉末または胃石粉末(マイクロ担体、MC)の懸濁液に加え、懸濁液中で37℃、4日間インキュベ-ションした。そして形成された浮遊性細胞/MC凝集体を収集して、0.3~0.5%NVR-Gel含有の1mL培養培地を含む12ウェル培養プレ-トに播種した。
【0193】
Ca2+サプリメント源
【0194】
Ca2+源(下表に示す)を1または2mMの最終濃度で、播種段階でゲルに一度加え、そして各引き続く補給時に栄養培地に加えた。カルシウム源は、ACC-エチドロン酸、(ACC-ET)(新鮮な懸濁液)、ACC-ホスホセリン(ACC-PS)(新鮮な懸濁液)、胃石(0.1MのHClで溶解し、1MのNaOHで中和)、胃石粉末、CCC-結晶炭酸カルシウムの水性懸濁液(市販ナノ粒子粉末)、およびCaCl2溶液-対照だった。
【0195】
培養は、培養を進行設定した24時間後から開始した位相差顕微鏡観察によって毎日モニタリングした。
【0196】
新鮮なACC調製物の懸濁液は、安定な懸濁液を形成する粒子からなった。胃石はカニから分離された天然ACCであり、乾燥粉末としてのみ購入することができる。この剤形では、他の特徴的成分(カルシウムイオンおよびタンパク質など)は細胞に利用可能ではない。これらの生物利用能を高めるため、胃石粉末を0.1MのHCl(胃に存在する酸性を模倣する)に溶解してから1MのNaOHによって中和した。
【0197】
神経培養の免疫蛍光染色
【0198】
培養培地の除去後、後根神経節(DRG)培養をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で洗浄し、4%ホルムアルデヒドで15分間固定して、再度PBSで洗浄した。固定した細胞を0.1%トライトンX-100含有PBSで透過処理してから1%ウシ血清アルブミン(BSA)含有PBSによって室温で1時間、免疫ブロッキング(非特異染色を回避するため)した。そして標本を抗神経細糸ウサギ抗体(NF、Novus Biologicals、1:500)と共にインキュベ-ションして神経突起成長を可視化した。第一抗体を0.1%BSAおよび0.05%ツイ-ン20含有PBS(希釈緩衝液)で希釈し、標本とともに4℃で一昼夜インキュベ-ションした。0.05%ツイ-ン20含有PBS(洗浄緩衝液)ですすいだ後、DRG標本を第二抗体であるAlexa-Flour-594共役体化ロバ抗ウサギIgG(Jackson ImmunoResearch,米国、希釈緩衝液で1:800)とともに室温で1時間インキュベ-ションした。最後に、サンプルを洗浄緩衝液で再度すすいで、封入剤(Immco Diagnostic、米国)によって封入した。画像はすべてオリンパスIX70顕微鏡によって観察した。
【0199】
結果
【0200】
様々なカルシウム調製物の効果をSC-DRG共培養で試験した。一般的に、培養は400ミクロンのSC片を、接着または分離されたDRG片とともに含んだ。試験したACC調製物のすべて(ACC-ET、ACC-PS、および胃石)が、神経線維再生をCCCおよびCaCl
2と比べて有意に高めた。表1は、様々なカルシウム調製物(2mMのCa
2+濃度)の存在または安定化剤のみの存在における培養4日後に発芽する神経線維を表す外植片の一部(6例のうち)を示す(安定剤は各ウェルに(5%のストック溶液から)0.05%の濃度で添加された)。最も強い発芽はACC-ET(外植片の100%)に暴露された培養で観察され、ACC-PSおよび胃石(外植片の66.6%)が続いたことが認められた。CCCおよびCaCl
2は外植片の50%からのみの神経発芽を誘発し、安定化剤のみはさらに低い割合(0~33%)だった。培養の確立の間(培養の第一週の後)、神経ネットワ-クの形成まで、主に様々なACC調製物に暴露された場合、再生した神経線維はより長く、より厚く、そして分枝されるようになった(
図1)。
【0201】
【0202】
ACCの効果を、懸濁液における4日後にゲルに播種された脳細胞-MC凝集体の培養で試験した(例1の方法部分を参照する)。結果を
図2に示し、ACCが塩化カルシウムよりも有意に神経線維再生を高めたことを示す。このことは特に、2処置間で神経線維の数よび長さを比較したときに顕著である。
例3-健全な骨格筋細胞におけるACC調製物の効果
【0203】
方法
【0204】
骨格筋培養の調製
【0205】
静置骨格筋培養を健康な1日齢新生ラット(スプラグド-リ-、Harlan、イスラエル)から調製した。筋組織を後脚から切除し、完全に刻んだ。消化をトリプシン-EDTAによって、優しく粉砕しながら実施した。30分後、切除した細胞を含む上清を収集し、新鮮なトリプシン-EDTAを加えた。この手順を2回を超えて繰り返した。そして、すべての上清をプ-ルして遠心分離し、細胞ペレットを増殖培地に再懸濁させた。細胞をゼラチンコ-ティングした12ウェル培養培地プレ-トに、細胞1×105個/ウェルを含む増殖培地1mLで播種した。2日後、培地を融合培地に変更し、そして週に2回交換した。培養は、培養を設定して進行した24時間後から位相差顕微鏡観察によって毎日モニタリングした。所定の日に、培養をメタノ-ルで20分間固定し、そしてギムザによって染色して培養期間で形成された筋管の数を評価した。
【0206】
ゼラチンコ-ティング培養プレ-ト
【0207】
水に1%ブタゼラチンを含有するストック溶液を、オ-トクレ-ブで滅菌した。冷却後、溶液500μLを12ウェル培養プレ-トの各ウェルに加えた。室温で20分間インキュベ-ション後、過剰な溶液を取り除き、細胞を播種した。
【0208】
増殖培地
【0209】
増殖段階では、細胞はDMEM/F12(1mMのCa2+含有)+10%FBS、25μg/mLゲンタマイシン、および2mMのL-グルタミン中で培養した。
【0210】
融合培地
【0211】
融合段階では、増殖培地を融合培地に変更し、融合培地は、DMEM/F12(1mMのCa2+含有)、2%ウマ血清(HS)、2mMのL-グルタミン、25μg/mLゲンタマイシン、および4単位/100mLインスリン(すべてBiological-Industries、イスラエルから購入)によって調製した。
【0212】
試験したカルシウム調製物のリスト
【0213】
融合培地は表2にリスト化された様々なカルシウム調製物によって1mMのCa2+濃度で増加させた(培地は既に1mMのカルシウムイオンを含んだため、Ca2+の最終濃度は2mMだった)。対照培養はさらにカルシウムを加えることなく成長させる、または培養を遊離(可溶性)安定剤によって増加させた。実験は種々のカルシウム調製液に任意の番号のみを印すことによって盲検化した。
【0214】
成分は方法として、(i)乾燥材料の水性懸濁液、(ii)新鮮な材料(乾燥前)の水性懸濁液、または(iii)HClによる溶解(胃に存在する酸性度を模倣する。溶解が終了した後、生成された溶液を1MのNaOHで中和した。)の方法の一つで添加した。
【表2】
【0215】
結果
【0216】
健全な骨格筋における乾燥ACCの効果
【0217】
第一段階では、乾燥ACC粉末を使用した。粉末(これらの調製物で使用される安定化剤に従って表2に示す)を水に懸濁させ、ついで1mMの濃度で培養培地に加えた。培地は既に1mMのカルシウムイオンを含んだため、Ca
2+の最終濃度は2mMだった。結果は、そのいくつかを
図3(左図)で示すが、ACCに暴露された培養は、培養の4日以内で既に多くの筋管の初期形成を現わし、異なるACC調製物間で有意差はなかったことを示した。添加されたCCCまたはCaCl
2に暴露された対照培養では、筋管形成は遅れて観察された。7日後、ACCによって処理された培養は多数の長くて厚い筋線維を示したが、一方、CCCおよびCaCl
2によって処理された培養では、これよりも少ない薄く短い筋線維が発達した(
図3、右図)。
【0218】
ACC調製物に暴露された培養では、筋収縮が播種の7日後に既に観察されたが、一方、添加されたCCCまたはCaCl2に暴露された培養では、筋収縮は10日以降でのみ現れたことも留意する。
【0219】
前記インビトロ結果から、すべてのACC調製物が健全な横紋筋培養の筋管形成および初期筋収縮を高めると結論付けられた。
例4.デュシェンヌ型筋ジストロフィ-筋細胞株におけるACCの効果を評価する-インビトロ試験
【0220】
方法
【0221】
mdx細胞調製
【0222】
異なるカルシウム調製物の影響を、イスラエルのワイツマン科学研究所からDavid Yaffe教授(名誉)によって厚意により提供されたmdx細胞株(デュシェンヌ型筋ジストロフィ-モデル)について検討した。
【0223】
mdx細胞株由来の株をゼラチンコ-ティングした12ウェル培養プレ-トに、細胞3×10
4個/ウェルを含む増殖培地1mLで播種した。2日後(約66%の密集)、培地を融合培地に変更し、週に2回交換した。様々なカルシウム調製物を、表3に記載された処理に従って融合培地に別々に加えた。培養は様々なカルシウム調製物によって、1mMのCa
2+濃度で増加させた。培地は既に1mMのカルシウムイオンを含んだため、Ca
2+の最終濃度は2mMだった。
【表3】
【0224】
細胞増殖、筋管を形成する融合、および筋収縮に対する試験した炭酸カルシウム調製物の効果を、位相差顕微鏡観察によって毎日モニタリングした。所定の日に、培養をメタノ-ルで20分間固定し、そしてギムザによって染色して培養期間で形成された筋管の数を評価した。
【0225】
筋組織培養におけるクレアチニンキナ-ゼ(CK)分析
【0226】
筋細胞培養では、CKは筋管形成における指標であり、CK量は筋培養における筋管形成の発達と正の相関で(組織培養プレ-ト中で)増加する。所定の日に、細胞を培養ウェルから収集し(ラバ-ポリスマンを使用)、分析するまで1mLのPBS(Ca2+無添加)中で-70℃に維持した。CK測定のため、細胞サンプルを小分けして、超音波処理装置を用いて物理的に溶解させて、筋管からCKを放出させた。CK濃度をクレアチニンキナ-ゼ活性アッセイキット(CK-NAC REAGENT SET,CURTISS,CHEM-INDEX INC,Hialeah,FL,米国)を用いて測定した。
【0227】
結果
【0228】
前記実験の結果を
図4および5に示す。明確に示されるように、ACCの添加は、従来のカルシウム源(CaCl
2)の添加よりも筋管の細胞融合および形成を高めた。この驚くべき結果は、生化学的(CK活性)および形態学的(顕微鏡)分析の両方で実証された(
図4および5)。さらに、ACC調製物に暴露された培養では、筋収縮が播種の7日後に既に観察されたが、一方、対照では、これは10日以降でのみ現れた。従って、ACCサプリメント添加はDMD患者を治療する可能性を有すると結論付けられる。
例5.一次mdxマウス細胞におけるカルシウム源の効果
【0229】
方法
【0230】
一次細胞の抽出
【0231】
大腿筋を新生(1日齢)mdxマウスの後脚から無菌条件下で取り出し、PBSで洗浄して過剰な血液細胞を取り除いた。筋肉を小さい断片に切り刻んだ。酵素的解離のため、筋断片をトリプシン-EDTA溶液(0.25mM)を含むビ-カ-に加えた。細胞分離を確実にするため、混合物をスタ-ラ-に設置し、室温で20分間静かに撹拌した。混合物を収集して300×gで5分間遠心分離した。ペレットをDMEM含有PBSで再懸濁させた。トリプリン処理段階を3回を超える回数で繰り返した。すべての上清を1本の試験管に集めた。細胞分離を目視(位相差顕微鏡を使用)によって測定した。細胞密度を、血球計算機を用いて測定した。
【0232】
細胞を12ウェルプレ-トに2×10
5個/ウェルの濃度で加えた。使用した培地は、15%FBSおよび2mMのL-グルタミン、ゲンタマイシン(25μg/ml)を添加したDMEM/F12 W/O Ca
2+だった。カルシウムを表4に記載された処理に従って培地に別々に加えた。2日目(約66%密集)に、培地を融合培地(Ca
2+無添加、10%HS、インスリン(4単位/100mL)、およびゲンタマイシン(25μ/mL)の添加)に変更した。培地は3日毎に交換した。
【表4】
【0233】
細胞増殖および融合は質的に毎日モニタリングした。培養を2、3、4、5、および7日目に固定して、ギムザまたはミオシン抗体を用いて染色した。
【0234】
結果
【0235】
結果を
図6および7に示す。ACC製剤の有効な効果が対照と比べて、特に早い時点である3および4日目の筋管形成によって実証された。形成された筋管における差は、5および7日目で区別できなくなった。ギムザ染色とミオシンに対する染色の間に高い相関があった。
ACC補充培地における胚発達の向上
例6.
【0236】
材料および方法
【0237】
CBA雄マウスをBL C57雌マウスと交配させた。マウスを無制限の水および食餌供給によって、12時間の明暗サイクルで維持した。子を得た6~8週後、各雌マウスに妊馬血清性ゴナドトロピン(PMSG)の5IUを腹腔内注射した。
【0238】
48時間後、各雌マウスに5IUのヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を腹腔内注射した。繁殖力が証明されている雄マウスを、過排卵雌と一緒にした。次の朝、雌マウスを膣栓の存在について検査した。膣栓を有した雌を24時間後(性交後約36時間)に安楽死させ、卵管をQuinn’s Advantage分割培地(SAGE,Origio,デンマ-ク)中で切開し、胚をミネラルオイルで積層したQuinn’s Advantage分割培地(SAGE,Origio,デンマ-ク)による20μL液滴に移し、5%CO2および大気酸素下、37℃で培養することによって、2細胞期の胚を卵管から回収した。収集した胚は胚盤胞/孵化期まで成長、すなわちインビトロ培養(IVC)を続けた。無定形炭酸カルシウムの効果を試験するため、Quinn’s Advantage分割培地(以後、「分割培地」)を異なる添加剤、すなわち、ポリリン酸によって安定化された無定形炭酸カルシウム(ACC-PP)、結晶炭酸カルシウム(CCC)、ポリリン酸(PP)、ホスホセリン(PS)、または炭酸ナトリウム(NaCO3)で補充した。すべてのサプリメントは新たに調製した懸濁液として加え、ACCサプリメントの調製は無菌条件下で実施した。未処理分割培地(いずれの添加物の添加もない)を対照(ContQとして表示)として使用した。胚を、2細胞、緊密化期、胚盤胞形成、および孵化期の段階の検出のために顕微鏡観察によって毎日評価した。各期に到達した胚の割合(パ-セント)を計算した(2細胞胚の数を100%に設定した)。
【0239】
結果
【0240】
PPで安定化された無定形炭酸カルシウム(ACC-PP)の1.7mMが補充された分割培地における胚発達を、対照(ContQ-未処理培地における発達)と比較した。各発達期の胚数および最初の胚数に対するこれらの割合(後者は括弧で示す)を表5に示す。
【表5】
例7.
【0241】
ACC-PPまたは塩化カルシウム(CaCl
2)のどちらかが1.7mM補充された分割培地における胚発達を2つの別々の検査で試験した(AおよびB)。試験Aでは胚を胚盤胞期まで、試験Bでは孵化期まで成長させた。各発達期の胚数および最初の胚数に対するこれらの割合(括弧内)を表6(試験A)および表7(試験B)に示す。
【表6】
【表7】
例8.
【0242】
1.7mMのCaCl
2、1.7mMのACC-PP、または0.85mMのACC-PP(ACC-PPの最初の濃度の半分、ACC-PP0.85として識別)が補充された分割培地における胚発達。各発達期の胚数および最初の胚数に対するこれらの割合(括弧内)を表8に示す。
【表8】
例9.
【0243】
1.7mMのCaCl
2、1.7mMまたは0.85mMのACC-PP(ACC-PP0.85)が補充された分割培地における胚発達を試験し、未処理培地における発達と比較した。各発達期の胚数および最初の胚数に対するこれらの割合(括弧内)を表9に示す。
【表9】
例10.
【0244】
この実験では、4匹の5月齢雌マウスを安楽死させた。各マウスから得る胚を材料および方法で記載されたように収集したが、胚は一緒にプ-ルせず、各マウスの各卵管からの胚を1.7mMのCaCl
2または1.7mMのACC-PPが補充された分割培地のどちらかで成長させて、培養で別々に成長させた。この方法では、各雌から得る胚が同胞だったため、マウス間の差を評価することもできた。各発達期の胚数および最初の胚数に対するこれらの割合(括弧内)を表10に示す。
【表10】
例11.
【0245】
この実験では、7匹の6月齢雌マウスを安楽死させた。各マウスから、胚を材料および方法で記載されたように収集したが、マウスNo.1および2からは、胚は一緒にプ-ルせず、例5のように別々に成長させた。マウスNo.1から得る胚は、未処理分割培地または2.6mMのACC-PPを補充した培地(ACC-PP2.6)のどちらかで成長させた。マウスNo.2から得る胚は、ACC-PPの1.3mMまたは0.6mMが補充された分割培地(それぞれ、ACC-PP1.3およびACC-PP0.6で表す)で成長させた。マウスNo.3~7から得る胚はすべて一緒にプ-ルし、ポリリン酸の1.6mM添加で成長させた(PP)。さらに、胚盤胞の直径および容積を計算した。各発達期の胚数および最初の胚数に対するこれらの割合(括弧内)を表11に示す。
【表11】
【0246】
ACC-PPの2.6mM添加で成長させて孵化した胚盤胞は、対照よりも28%大きい直径および2倍大きい容積を有した。
例12.
【0247】
この実験では、7匹の6月齢雌マウスを安楽死させた。各マウスから得る胚を材料および方法(例6)に記載されたよう収集した。胚を一緒にプ-ルし、5群に分けて、未処理分割培地(ContQ)、または2.6mM、1.3mM、0.6mMのACC-PP(それぞれ、ACC-PP2.6、ACC-PP1.3、およびACC-PP0.6として表す)、または1.6mMのポリリン酸(PP)が補充された培地で成長させた。各発達期の胚数および最初の胚数に対するこれらの割合(括弧内)を表12に示す。
【表12】
例13.
【0248】
この実験では、6匹の6月齢雌マウスを安楽死させた。各マウスから得る胚を材料および方法に記載されたよう収集した。胚を一緒にプ-ルして3つの群に分け、1つの群は対照(ContQ)として使用し、他の2つの群では胚はACC-PPの3.3mM(ACC-PP3.3)または3.3mMの市販ナノメ-タ-結晶炭酸カルシウム(CCC)が補充された分割培地で成長させた。すべての培地は無菌条件下で調製した。各発達期の胚数および最初の胚数に対するこれらの割合(括弧内)を表13に示す。
【表13】
例14.
【0249】
この実験では、6匹の7月齢雌マウスを安楽死させた。各マウスから、胚を材料および方法(例6)に記載されたよう収集した。胚は一緒にプ-ルし、1.7mMのCaCl
2、1.7mMのACC-PP、0.8mMのACC-PP(ACC-PP0.8)、または1.7mMのホスホセリン(PS)が補充された分割培地において成長させた。各発達期の胚数および最初の胚数に対するこれらの割合(括弧内)を表14に示す。
【表14】
【0250】
この特定の実験では、塩化カルシウムを加えることは、胚発達に負の影響を及ぼし、胚盤胞および孵化胚盤胞の低い割合をもたらした。
例15.
【0251】
この実験では、6匹の6月齢雌マウスを安楽死させた。各マウスから得る胚を材料および方法(例6)に記載されたように収集したが、マウスNo.1および2から得る胚は一緒にプ-ルせず、同胞実験としてむしろ別々に成長させた(例10を参照)。雌No.1から得る胚を未処理分割培地または1.7mMのナノメ-タ-結晶炭酸カルシウム(CCC)が補充された培地で成長させた。マウスNo.2から得る胚を1.7mMのACC-PPまたは1.7mMの炭酸ナトリウム(NaCO
3)が補充された培地で成長させた。マウスNo.3~6から得る胚はすべて一緒にプ-ルし、未処理培地、あるいは1.7mMのNaCO
3または1.7mMのACC-PPが補充された培地で成長させた。さらに、胚盤胞の直径および容積を計算した(表15を参照)。
【表15】
【0252】
炭酸ナトリウムを添加することは、対照またはACC-PPの添加と比べて非常に乏しい胚発達をもたらしたことが認められる。ACC-PPの2.6mM補充した分割培地で成長させて孵化した胚盤胞は、対照よりも28%大きい直径および2倍大きい容積を有したことも認められた。
例16.細胞培養培地サプリメントとして製剤化された10%TP-1%クエン酸ACC(10%三リン酸および1%クエン酸によって安定化されたACC)の調製
【0253】
3%塩化カルシウム溶液36mlを0.27%クエン酸溶液4mLおよび0.5406%三リン酸溶液10mLと混合した。1.9485%炭酸ナトリウム溶液40mLを加えてACCを沈殿させた。0.5406%三リン酸を含む安定化溶液10mLをACC懸濁液に加えて安定化ACC懸濁液を得た。得られた懸濁液をQuinn’s(商標)分割培地またはQuinn’s(商標)1-Step培地にサプリメントとして使用した。懸濁液を1.7または3.4mMのACC最終濃度まで加えた。あるいは、懸濁液をブフナ-漏斗によってろ過し、固体物を水で洗浄し、固体物をさらにオ-ブンなどで乾燥させる。粉末を1.7または3.4mMの最終濃度まで分割培地に加える。
例17.
【0254】
この実験では、4匹の6~8月齢雌マウスを安楽死させた。各マウスから得る胚を材料および方法に記載されたように収集した。安定化ACC(10%三リン酸および1%クエン酸によって安定化されたACC)を例16で説明したように調製した。各雌から得る胚を分離し、第一部分を未処理SAGE1-Step(商標)培地で、第二部分を1.7mMのACC-PPまたは3.4mMのACC-PPが補充されたSAGE1-Step(商標)培地で成長させた。
図8から認められるように、安定化ACCの添加は胚発達に正の効果を有し、特に3.4mMのACCによって胚盤胞および孵化胚盤胞の高い割合がもたらされた。安定化ACCが補充された分割培地で成長させた胚は、迅速な卵割および高い孵化率を示したことが驚くべきことに認められている。
例18.細胞培養培地サプリメントとして製剤化されたACCの調製
【0255】
異なる安定化剤(三リン酸(TP)、ヘキサメタリン酸(HMP)、ピロリン酸(Pyr)、ホスホセリン(PS)、エチドロン酸(ET)、ゾレドロン酸(ZA)、またはメドロン酸(MA)を調製した)によって安定化されたACCの組成物を調製した。典型的な手順では、カルシウム溶液(水300mL、塩化カルシウム24g、および安定剤)および炭酸溶液(水200mLおよび炭酸ナトリウム17.3g)を一緒に混合してACCを沈殿させた。安定剤溶液(水100mLおよび安定剤、表16にカルシウムおよび安定剤溶液における安定剤の含量を示す)をACC懸濁液に加えて安定化ACC懸濁液を得た。懸濁液はサプリメントとして使用され得る。ついでACCをブフナ-漏斗によってろ過し、固体物を水で洗浄した。懸濁液を乾燥させて粉末を得た。粉末は細胞培養培地サプリメントとして加える、または水性培地に再懸濁させて懸濁液として加え得る。
【表16】
【0256】
他の例では、組成物は前述のように、最終組成物で1%クエン酸を得るように、カルシウム溶液へのクエン酸の添加によって調製した。懸濁液それ自体が培養培地サプリメントとして使用される。あるいは、懸濁液はさらに水で洗浄して乾燥させて粉末を得た。粉末は任意の細胞培養培地に加え得る、または水性培地で再懸濁させ得る。
例19.MBA13幹細胞(骨髄間質細胞)の骨芽細胞への成長
【0257】
材料および方法
【0258】
解凍の2日後、MBA-13細胞(ワイツマン科学研究所、Dov Zipori教授から入手)を組換えトリプシン溶液に再懸濁し、MSC Nutristem(登録商標)XF基礎培地(Biological Industries、cat No.05-200-1A)に間葉幹細胞(MSC)補充混合培地(Biological Industries cat No.05-201-06)を50ml:300μLの割合で補充して用いて、96ウェルプレ-トに細胞1×104個/ウェルの濃度で播種した(0日目)。96ウェルプレ-トの1~4列のA~H行を、細胞播種のためにPBS(Ca2+、Mg2+イオン無添加)で1:100の比に希釈したMCS接着溶液によってプレコ-ティングした。96ウェルプレ-トの5~8列のA~H列を、0.1%ゼラチンによって室温、30分間プレコ-ティングした。
【0259】
2日目に、80%を超える細胞密集が達成されたとき(約48時間)、培地を骨芽細胞分化を促進する因子を含むMSCgo rapid osteogenic medium(迅速骨形成培地)(cat No.05-442-1B)に交換した。培地交換後、A~C行に10%三リン酸+1%クエン酸によって安定化された無定形炭酸カルシウム(ACC)由来の1mM追加カルシウム(全2.488mMカルシウム)を補充し、D~F行に塩化カルシウム由来の1mM追加カルシウム(全2.488mMカルシウム)を補充し、プレ-トのG行はMSCgo培地(全1.488mMカルシウム)で処理した。プレ-トのH行はMSC NutriStem(登録商標) XF栄養基礎培地+サプリメント混合物(全1.488mMカルシウム)で処理した。
【0260】
4日目に、培地をACCの新鮮な調製物に交換した。
【0261】
並行して、対照プレ-トもMDXマウスの損傷した筋肉由来のMDX細胞株で播種した。これらの細胞の染色を使用して、細胞本来のカルシウムのバックグランド染色を設定し、またACC処理のカルシウム沈着が染色される可能性を排除した。播種前に、ウェルをゼラチンでコ-ティングし、これはMDX細胞接着用の標準的基材として使用される。MDX細胞を24ウェルプレ-トに3×104個/ウェルの濃度で加えた。播種日を「0日」として定める。
【0262】
2日目に、ウェルの培地を次のように交換した。
【0263】
1および2列は施設内で調製する脊髄(SC)培地(0.6wt%D-グルコ-ス、2mMのL-グルタミン、25μg/mLゲンタマイシン、B27、N2、0.1 mg/mLのBSA、Hepes、10%FBS、DMEM/F12、および50ng/mLのIGF-Iを含む培地)+ACC由来の1mMカルシウム(2mMの全カルシウム濃度)で処理した。3および4列はSC培地+CaCl2由来の1mMで処理した。5および6列はSC培地で処理した。細胞の両タイプ(MBA13およびMDX)を10日目まで培養した。
【0264】
各タイプについて数ウェルの固定(4%ホルムアルデヒドで20分間)を、培地交換後の5、7、および10日目、すなわち試験の7、9、および12日目に実施した。
【0265】
細胞を固定してから、2種の染色試薬を使用して細胞外カルシウムまたは骨沈着を染色して骨芽細胞機能性を評価した。(i)アリザリンレッド(シグマ、A55333)および(ii)アルカリホスファタ-ゼ(DAKO、BCIP/NBT基質システムK0598)は次の通りだった。
【0266】
アリザリンレッド染色手順-pHを4.2に調整した。細胞をPBSで2回洗浄し、冷却エタノ-ルで5分間固定し、ついでPBSで再度洗浄した。アリザリン溶液を2%の濃度で15~20分間使用した。染色インキュベ-ション後、サンプルを水で2~3回洗浄して非特異的染色を取り除いた。
【0267】
アルカリホスファタ-ゼ染色-細胞をPBSで1または2回洗浄し、ついで4%パラホルムアルデヒドで20分間固定した。そしてPBSで3回洗浄し、残存PBSを除去後、BCIP/NBTキット溶液の3滴を使用して細胞を覆い、対照としていずれの細胞も含まない空ウェルを測定の質を高めるために含めた。アルカリホスファタ-ゼキットのインキュベ-ションを1時間実施し、ついで蒸留水ですすいだ。
【0268】
結果
【0269】
10日間培養し、アリザリンおよびアルカリホスファタ-ゼによって染色された細胞の結果を示す。10日前に実施された観察は、両染色法においていずれのカルシウム沈着もほとんど検出されなかった。
【0270】
細胞状態を2日および4日の2時点で光学顕微鏡(固定なし)によって観察した。両観察において、MSC接着溶液によってプレコ-ティングしたウェルに播種された細胞は、良好な状態でなく、細胞は丸みを帯びた。これに対し、ゼラチンでプレコ-ティングしたウェルに播種された細胞は良好な状態だった。だが、両タイプのプレコ-ティングで継続することにした。次の結果および染色手順は、接着基材として使用されたゼラチンにおける細胞成長に関するものである。
【0271】
アリザリンレッド染色では、カルシウム沈着はオレンジレッド色によって検出される。
【0272】
アリザリンレッド染色は、ACCが補充された骨芽細胞における非常に強いシグナルを、弱いシグナルのみを示したCaCl
2が補充されたものと比較して実証した(
図9)。シグナルに加え、大きいカルシウム沈着が染色され、これは対照処理のいずれでも観察されないことが図で認められる。
【0273】
MSCgo迅速培地で成長させた細胞のアリザリンレッド染色もまたカルシウム沈着のいくつかの染色を示したが、沈着のサイズおよびその量は有意に低く、CaCl2が補充された細胞で認められた形態学および量と類似する。カルシウム沈着はMSC NutriStem+サプリメント(MSCsup、テ-タは示さず)で成長させた細胞では認められなかった。MSC NutriStem+サプリメント培地は通常、細胞分化よりもむしろ細胞増殖を誘発するために使用される。実際、観察される細胞の数は多いが、カルシウム沈着は観察されない。
【0274】
観察は、ACC処理が骨芽細胞へのMBA13細胞分化を高め、細胞カルシウム沈着を増加させる、すなわちこれらの機能性を高めることを示唆する。
【0275】
骨芽細胞分化に関する別の独立したマ-カ-はアルカリホスファタ-ゼである。この酵素は、細胞のマトリックス成熟期が生じるとき、最大限に発現される。アルカリホスファタ-ゼ染色は、骨芽細胞分化および機能性を検出する補足的方法として使用し、アリザリン染色によって得られた結果を検証した。
【0276】
アルカリホスファタ-ゼ染色は黒色として示され、結果を
図10に示す。ACCによって処理されたMBA13細胞は、他の処理と比べて強いシグナルを示した。実際、アルカリホスファタ-ゼ染色は、骨芽細胞分化がACCによって処置された培養で優れていることを裏付ける。
【0277】
ACC添加培地によって播種後10日間処理されたMDX細胞のアリザリン染色は、処理間で染色に大きな差のないことを示した(
図11A~Cを参照)。これらの結果は、骨芽細胞のアリザリンレッド染色が、骨芽細胞によるカルシウム沈着に起因しており、処理それ自体によって生じたACC沈着によるものではないことを裏付ける(すなわち、実験上の人為的結果ではない)。
【0278】
MDX細胞株のアルカリホスファタ-ゼ染色(
図11D~E)は、骨形成が生じなかったことを示した。興味深いことに、アルカリホスファタ-ゼ染色では、高められた筋管形成が、CaCl
2補充された培地または対照で成長された細胞と比べてACC処理細胞で観察された。
【0279】
結論
【0280】
異なる培地における播種の10日後のアリザリンレッドおよびアルカリホスファタ-ゼ染色である独立した両染色は、使用された対照と比べてACCが補充された培地で成長した骨芽細胞沈着のかなり強い染色を示した。
【0281】
細胞をACCの存在中で成長させるとき、大きいカルシウム沈着プラ-クが観察されたが、このような沈着はCaCl2が補充された培地で成長させた細胞では観察されなかった。染色がより多くのプラ-ク沈着を示したため、強いシグナルは高い機能性について示している可能性がある。MDX細胞染色によって得られる結果は、プラ-クがACC添加によるものではなく、骨芽細胞の機能による直接的な結果であることを示唆する。
例20.精子運動率向上のためのACC
【0282】
材料および方法
【0283】
ACCサプリメント調製
【0284】
3%塩化カルシウム溶液36mlを0.3%クエン酸溶液4mLおよび0.5%三リン酸溶液10mLと混合した。2%炭酸ナトリウム溶液40mLを加えてACCを沈殿させた。0.5%三リン酸を含む安定化溶液10mLをACC懸濁液に加えて安定化ACC懸濁液を得た。得られる懸濁液のカルシウム元素濃度は75mMだった。
【0285】
精子収集
【0286】
精子を同一ヒツジから3回(実験1)または3頭のヒツジから2回(実験2および3)採取し、室温で濃度および運動率を評価した。精子を、ミリQ水に107.70mMのNaCl、7.16mMのKCl、1.19mMのKH2PO4、1.71mMのCaCl2、0.49mMのMgCl2、25.07mMのNaHCO3、3.30mMの乳酸ナトリウム、および1.50mMグルコ-ス(10)を含む合成卵管液(SOF)で5千万個/mLの濃度に希釈した。モル浸透圧濃度は270mOsmolおよびpH7.55となる。
【0287】
そして精子についてCASA(The riogenology,2014,Volume81,Issue1,Pages5-17)を用いで運動率を評価し、4℃まで1℃/分で冷却した。
【0288】
スイムアップ法
【0289】
スイムアップ法は38℃で実施し、原精子(10μL)をエッペンドルフ1mLバイアルに加え、0.25mLストロ-(CBS、フランス)に挿入されたSOF培地中で約1時間インキュベ-ションした。40~60分後、ストロ-に入った精子をスライドに加え、CASAによって評価した。
【0290】
結果
【0291】
新たに収集された精子の運動率を材料および方法セクションで説明されたように、無定形炭酸カルシウムの添加または無添加で試験した。結果を表17に示す。
【表17】
【0292】
ACCが補充された精子は未処理精子と比べて非常に高い前進運動率を有したことが認められる。
例21.スイムアップ実験における精子運動率に対するACCの効果
【0293】
精子運動率におけるACCの効果を評価するため、標準的なスイムアップ実験をACC懸濁液の17μL/mLおよび34μL/mL(それぞれ1.3および2.6mMのCa元素)の存在中で実施した。生存可能な精子を1時間後に計数し、結果を表18にまとめて示す。
【表18】
【0294】
ACCの添加はすべての実験において生存可能な精子の数を有意に増加したことが明確に認められる。ACCが補充されたサンプルでは、生存可能な精子の数は未処理サンプルよりも2~7倍高かった。
例22.スイムアップ実験における精子運動率に対するACC濃度の効果
【0295】
精子の運動率におけるACC濃度の効果を、各ACCについて3種の異なるサンプルを用いてスイムアップ実験によって試験した。結果を表19にまとめて示す。
【表19】
【0296】
卵管液(SOF)溶液への17μL/mLのACC懸濁液の添加および38℃で1時間のインキュベ-ションは、運動性精子の濃度を少なくとも3倍増加した。興味深いことに、ACCの濃度が高くなるとスイムアップ後の移動性精子の濃度を低下させなかった。ACCはスイムアップ法後の精子濃度を高め、イオン性カルシウムにおけるいずれの二相性効果も有さなかった。最小の効果的用量を超えるいずれのACC濃度も運動率を増加させる。
例23.ACCはインビトロで卵巣を維持する。
【0297】
材料および方法
【0298】
卵巣をマウス(6週齢)から収集して0.4mm×0.4mm片に切断した。卵巣を12ウェルプレ-トで培養した。培養培地は、カルシウム枯渇した(カルシウムイオン無添加培地、特別調製)ダルベッコ改変イ-グル培地-栄養素混合物F-12(DMEM-F12)が90%、10%ウシ胎児血清(FBS)、2mMグルタミン、25μg/mLゲンタマイシン、および0.3~0.5%NVR-Gelから、3.4mM安定化ACC-PPの添加または無添加で構成された。培養の48時間後、妊馬血清性ゴナドトロピン(PMSG)の5IUを培養皿に加えた。
【0299】
結果
【0300】
二次卵胞が安定化ACCの存在下でインビトロ培養の2週後に発達し、卵母細胞を囲む顆粒膜細胞は完全なものだったことが、
図12で認められる。これに反し、対照群における二次卵胞は、不完全な顆粒膜細胞および胚胞卵母細胞を示す。かなり多くの卵胞がACC群で観察され、培養培地におけるACCの添加が卵胞の迅速で優れた成長および卵巣の改善された保存を可能にすることを意味した。
【0301】
本発明はその好ましい実施形態の手段によって本明細書で前述されているが、添付の請求で定められる本発明の精神および性質から逸脱することなく変更され得る。