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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】布帛電極及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/26 20060101AFI20231003BHJP
   D04H 1/4374 20120101ALI20231003BHJP
   D04H 1/728 20120101ALI20231003BHJP
【FI】
B32B5/26
D04H1/4374
D04H1/728
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019037879
(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公開番号】P2020138517
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390014487
【氏名又は名称】住江織物株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮村 佳成
(72)【発明者】
【氏名】岸 達也
【審査官】福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-182755(JP,A)
【文献】特表2015-529475(JP,A)
【文献】特開2015-186868(JP,A)
【文献】国際公開第2018/101336(WO,A1)
【文献】特開2017-218690(JP,A)
【文献】特開2015-189224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
D04H 1/00-18/04
A61B 5/05-5/0538
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性布帛層と、前記導電性布帛層の上面に積層された第1非導電性布帛層と、該第1非導電性布帛層の上面に積層された第2非導電性布帛層、とを備え、
前記第2非導電性布帛層を構成する第2樹脂の融点が、前記第1非導電性布帛層を構成する第1樹脂の融点より20℃~300℃高く、
前記第1非導電性布帛層を構成する第1樹脂の繊維太さが、前記第2非導電性布帛層を構成する第2樹脂の繊維太さより太いことを特徴とする布帛電極。
【請求項2】
前記第1非導電性布帛層は繊維太さが10nm~10000nmの繊維で形成された不織布で構成されており、前記第2非導電性布帛層は繊維太さが10nm~2000nmの繊維で形成された不織布で構成されている請求項1に記載の布帛電極。
【請求項3】
エレクトロスピニング法により、第1樹脂及び溶媒を含有した紡糸液と、導電性布帛層との間に電圧を印加することにより、紡糸口から前記紡糸液を、導電性布帛層の上面に向けて噴射せしめて、前記導電性布帛層の上面に前記第1樹脂の繊維で形成された不織布からなる第1非導電性布帛層を積層一体化する工程と、
エレクトロスピニング法により、第2樹脂及び溶媒を含有した紡糸液と、前記導電性布帛層との間に電圧を印加することにより、紡糸口から前記紡糸液を、前記第1非導電性布帛層の上面に向けて噴射せしめて、前記第1導電性布帛層の上面に前記第2樹脂の繊維で形成された不織布からなる第2非導電性布帛層を積層一体化して積層体を得る工程と、
前記積層体を、第1樹脂の融点から該第1樹脂の融点プラス20℃の温度、かつ、前記導電性布帛層を構成する繊維の融点未満の温度で加熱する工程とを、備え、
前記第2非導電性布帛層を構成する第2樹脂の融点が、前記第1非導電性布帛層を構成する第1樹脂の融点より20℃~300℃高く、
前記第1非導電性布帛層を構成する第1樹脂の繊維太さが、前記第2非導電性布帛層を構成する第2樹脂の繊維太さより太いことを特徴とする布帛電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、生体用センサーの電極として使用できる、皮膚への密着性に優れていて装着した皮膚から剥がれ難い布帛電極及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「樹脂」の語は、樹脂のみならず、エラストマーをも含む意味で用いている。
【0003】
生体情報を取得するために生体の皮膚の表面に電極を装着して測定を行うことが行われているが、このような生体電極としては、導電性物質を板状に形成した電極体の表面に粘着層を積層した構成のものが公知である。例えば、何れかの面に粘着層が設けられたシート状の保持体と、該保持体の粘着層が設けられた面に設置された電極部分と、該電極部分を覆う、半流動性又は流動性を有する電解質層と、前記保持体を貫通して前記電極部分と電気的に接続された端子部分とからなり、保持体と電解質層との間には、布帛からなる電解質保持層が設けられてなる生体電極用パッドが知られている(特許文献1参照)。このような生体電極によれば、皮膚の表面に密着させて装着することができる。しかしながら、上記生体電極は、生体の皮膚の表面に粘着剤層を介して装着するものであり、密着性は良いものの、かゆみが生じたりする場合があるし、通気性がなく装着箇所で汗が付着しやすいという問題もあった。
【0004】
そこで、出願人は特許文献2を出願しており、導電性布帛層と、前記導電性布帛層の少なくとも一方の面に積層された非導電性布帛層と、を備えることを特徴とする布帛電極を開示している。近年、さらに皮膚への密着耐久性が向上した布帛電極が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-212800号公報
【文献】特開2016-182755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる技術的背景を鑑みてなされたものであって、皮膚への密着耐久性が向上し、装着した皮膚から剥がれ難く、皮膚に非導電性布帛層が残りにくい布帛電極及びその製造方法を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
[1]導電性布帛層と、前記導電性布帛層の上面に積層された第1非導電性布帛層と、該第1非導電性布帛層の上面に積層された第2非導電性布帛層、とを備え、前記第2非導電性布帛層を構成する第2樹脂の融点が、前記第1非導電性布帛層を構成する第1樹脂の融点より高いことを特徴とする布帛電極。
【0009】
[2] 前記第2非導電性布帛層を構成する第2樹脂の融点が、前記第1非導電性布帛層を構成する第1樹脂の融点より20℃~300℃高い前項1に記載の布帛電極。
【0010】
[3] 前記第1非導電性布帛層を構成する第1樹脂の繊維太さが、前記第2非導電性布帛層を構成する第2樹脂の繊維太さより太い前項1又は2に記載の布帛電極。
【0011】
[4] 前記第1非導電性布帛層は繊維太さが10nm~10000nmの繊維で形成された不織布で構成されており、前記第2非導電性布帛層は繊維太さが10nm~2000nmの繊維で形成された不織布で構成されている前項1~3のいずれか1項に記載の布帛電極。
【0012】
[5] エレクトロスピニング法により、第1樹脂及び溶媒を含有した紡糸液と、導電性布帛層との間に電圧を印加することにより、紡糸口から前記紡糸液を、導電性布帛層の上面に向けて噴射せしめて、前記導電性布帛層の上面に前記第1樹脂の繊維で形成された不織布からなる第1非導電性布帛層を積層一体化する工程と、
エレクトロスピニング法により、第2樹脂及び溶媒を含有した紡糸液と、前記導電性布帛層との間に電圧を印加することにより、紡糸口から前記紡糸液を、前記第1非導電性布帛層の上面に向けて噴射せしめて、前記第1導電性布帛層の上面に前記第2樹脂の繊維で形成された不織布からなる第2非導電性布帛層を積層一体化して積層体を得る工程と、
前記積層体を、第1樹脂の融点から該第1樹脂の融点プラス20℃の温度、かつ、前記導電性布帛層を構成する繊維の融点未満の温度で加熱する工程とを、備え、
前記第2非導電性布帛層を構成する第2樹脂の融点が、前記第1非導電性布帛層を構成する第1樹脂の融点より高いことを特徴とする布帛電極の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
[1]の発明では、導電性布帛層と、導電性布帛層の上面に積層された第1非導電性布帛層と、第1非導電性布帛層の上面に積層された第2非導電性布帛層、とを備え、第2非導電性布帛層を構成する第2樹脂の融点が、第1非導電性布帛層を構成する第1樹脂の融点より高いから、皮膚への密着耐久性が向上し、装着した皮膚から剥がれ難く、布帛電極を剥がした時に皮膚に非導電性布帛層が残りにくい布帛電極を提供することができる。
【0014】
[2]の発明では、第2非導電性布帛層を構成する第2樹脂の融点が、第1非導電性布帛層を構成する第1樹脂の融点より20℃~300℃高いから、第1非導電性布帛層を構成する第1樹脂を溶融させて導電性布帛層との接着性を向上させることができる。第2非導電性布帛層を構成する第2樹脂がナノサイズの繊維形態を維持した状態であるため、皮膚への密着耐久性を向上させることができ、皮膚から布帛電極を剥がした時に皮膚に第2非導電性布帛層が残りにくい。
【0015】
[3]の発明では、第1非導電性布帛層を構成する第1樹脂の繊維太さが、第2非導電性布帛層を構成する第2樹脂の繊維太さより太いから、導電性布帛層を構成する繊維と第1非導電性布帛層とが絡み合い、導電性布帛層から第1非導電性布帛層が剥がれにくくなる。また、第2非導電性布帛層を構成する第2樹脂の繊維太さが細いため、皮膚への密着耐久性を向上させることができる。
【0016】
[4]の発明では、第1非導電性布帛層は繊維太さが10nm~10000nmの繊維で形成された不織布で構成されており、第2非導電性布帛層は繊維太さが10nm~2000nmの繊維で形成された不織布で構成されているから、導電性布帛層を構成する繊維と第1非導電性布帛層とが絡み合い、導電性布帛層から第1非導電性布帛層が剥がれにくくなる。また、第2非導電性布帛層を構成する第2樹脂の繊維太さが細いため、皮膚への密着性を向上させることができる。
【0017】
[5]の発明では、エレクトロスピニング法により、第1樹脂及び溶媒を含有した紡糸液と、導電性布帛層との間に電圧を印加することにより、紡糸口から紡糸液を、導電性布帛層の上面に向けて噴射せしめて、導電性布帛層の上面に第1樹脂の繊維で形成された不織布からなる第1非導電性布帛層を積層一体化する工程と、
エレクトロスピニング法により、第2樹脂及び溶媒を含有した紡糸液と、導電性布帛層との間に電圧を印加することにより、紡糸口から前記紡糸液を、第1非導電性布帛層の上面に向けて噴射せしめて、第1導電性布帛層の上面に第2樹脂の繊維で形成された不織布からなる第2非導電性布帛層を積層一体化して積層体を得る工程と、
積層体を、第1樹脂の融点から第1樹脂の融点プラス20℃の温度、かつ、導電性布帛層を構成する繊維の融点未満の温度で加熱する工程とを、備え、
前記第2非導電性布帛層を構成する第2樹脂の融点が、前記第1非導電性布帛層を構成する第1樹脂の融点より高いから、皮膚への密着耐久性が向上し、装着した皮膚から剥がれ難く、布帛電極を剥がした時に皮膚に非導電性布帛層が残りにくい布帛電極の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る布帛電極の一実施形態を示す断面図である。
図2】本発明の布帛電極の製造方法の一例を示す模式図である。
図3】本発明の布帛電極の製造方法の一例を示す模式図である。
図4】本発明に係る布帛電極の電子顕微鏡写真(平面図)である。
図5】本発明に係る布帛電極の電子顕微鏡写真(断面図)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る布帛電極の一実施形態について図1を用いて説明する。本実施形態の布帛電極1は、導電性布帛層2と、前記導電性布帛層2の上面に積層された第1非導電性布帛層3と、該第1非導電性布帛層3の上面に積層された第2非導電性布帛層4、とを備え、前記第2非導電性布帛層4を構成する第2樹脂の融点が、前記第1非導電性布帛層3を構成する第1樹脂の融点より高いことを特徴とする。
【0020】
本発明に係る布帛電極1は、導電性布帛層2と、前記導電性布帛層2の上面に積層された第1非導電性布帛層3と、該第1非導電性布帛層3の上面に積層された第2非導電性布帛層4、とを備えている必要がある。(図1参照)。
【0021】
前記導電性布帛層2としては、特に限定されるものではないが、例えば、金属メッキ繊維で構成された布帛、導電性高分子が含浸された又は表面に付着されてなる繊維で構成された布帛、金属糸で構成された布帛、炭素繊維で構成された布帛などが挙げられる。中でも、前記導電性布帛層2は、金属メッキ繊維で編成された編地で構成されているのが好ましい。なお、前記導電性布帛層2の形態としては、前記編地の他、織地、不織布等が挙げられる。
【0022】
前記金属メッキ繊維を構成する金属(メッキ材)としては、特に限定されるものではないが、例えば、銀、金、銅、ニッケル、アルミニウム等が挙げられる。また、前記金属メッキ繊維を構成する繊維(メッキされる芯繊維)としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、炭素繊維等が挙げられる。
【0023】
前記金属メッキ繊維としては、特に限定されるものではないが、例えば、表面が銀メッキされたナイロン繊維、表面が銀メッキされたポリエステル繊維、表面が銅メッキされたナイロン繊維等が挙げられる。
【0024】
前記金属メッキ繊維の太さは、特に限定されるものではないが、5dtex~300dtexに設定されるのが好ましい。
【0025】
前記導電性布帛層2としては、体積固有抵抗が10Ω・cm以下であるものを用いるのが好ましく、中でも、体積固有抵抗が10-3Ω・cm~10Ω・cmであるものを用いるのがより好ましい。
【0026】
非導電性布帛層5は、前記導電性布帛層2の上面に積層された第1非導電性布帛層3と、該第1非導電性布帛層3の上面に積層された第2非導電性布帛層4からなる。前記第1導電性布帛層3は、導電性布帛層2との密着性に寄与し、前記第2非導電性布帛層4は皮膚との密着性に寄与する。
【0027】
前記第1非導電性布帛層3を構成する樹脂を第1樹脂とし、前記第2非導電性布帛層4を構成する樹脂を第2樹脂としている。前記第1樹脂は1種類の樹脂を用いているという意味ではなく、第1非導電性布帛層3を構成する樹脂という意味で第1樹脂としており、前記第2樹脂は2種類の樹脂を用いているという意味ではなく、第2非導電性布帛層4を構成する樹脂という意味で第2樹脂としているだけである。
【0028】
前記第2非導電性布帛層4を構成する第2樹脂の融点が、前記第1非導電性布帛層3を構成する第1樹脂の融点より高いことが必要である。第2非導電性布帛層4を構成する第2樹脂の融点が、第1非導電性布帛層3を構成する第1樹脂の融点より高いから、第1非導電性布帛層3を構成する第1樹脂を溶融させて導電性布帛層2と第1非導電性布帛層3との接着性を向上させることができる。さらに、第2非導電性布帛層4を構成する第2樹脂は加熱しても溶融せずにナノサイズの繊維形態を維持した状態であるため、皮膚への密着耐久性を向上させることができると共に、布帛電極1を皮膚から剥がした時、皮膚に第2非導電性布帛層4が残りにくい。なお、融点の測定としては、セイコーインスツルメンツ株式会社製の示差走査熱量測定器(品番DSC6200)に測定試料をセットし、20℃から昇温速度10℃/分で280℃ まで昇温した後、この280℃ から降温速度10℃/分で40℃ まで降温して、その間のDSC曲線を測定して、このDSC曲線から融点を求めた。なお、昇温のときに吸熱ピークが2個以上現出した場合には、最も高い方の温度(十分に融解した方の温度)を融点とする。
【0029】
前記第2非導電性布帛層4を構成する第2樹脂の融点が、第1非導電性布帛層3を構成する第1樹脂の融点より20℃~300℃高いから、第2非導電性布帛層4を構成する第2樹脂がナノサイズの繊維形態を維持した状態であるため、皮膚への密着耐久性を向上させることができる。20℃以上であるから、第1非導電性布帛層3を構成する第1樹脂のみが溶融し、第2非導電性布帛層4を構成する第2樹脂がナノサイズの繊維形態を維持することができ、300℃以下であることから、第1非導電性布帛層3を構成する第1樹脂が熱分解することを抑制することができる。中でも、20℃~220℃であることが好ましく、さらに150℃~200℃であることが最も好ましい。
【0030】
図2に示すように、前記第1非導電性布帛層3は、エレクトロスピニング法により前記導電性布帛層2に積層されたものであるのが好ましい。即ち、前記第1非導電性布帛層3は、第1樹脂及び溶媒を含有した紡糸液と、導電性布帛層2(陰極又はアース)との間に高電圧を印加することにより、紡糸口24から前記紡糸液が、導電性布帛層2の表面に向けて噴射されるエレクトロスピニング法(図2参照)により、前記導電性布帛層2の表面に前記第1樹脂の繊維で形成された不織布からなる第1非導電性布帛層3が積層されてなる構成であるのが好ましい。
【0031】
上記のようなエレクトロスピニング法により第1非導電性布帛層3を形成することによって、前記第1非導電性布帛層3は、前記第1樹脂の繊維で形成された不織布で構成されたものとなる。
【0032】
前記第1非導電性布帛層3を構成する繊維の繊維太さ(直径)は10nm~10000nm(10μm)であるのが好ましい。10nm以上であることで安定した連続繊維作製が可能になるし、10000nm(10μm)以下であることで、表面積効果、分子配列効果が得られる上に、装着している時の違和感等も低減できて装着感を向上できる。中でも、前記第1非導電性布帛層3を構成する繊維の繊維太さは500nm~5000nm(5μm)であるのがより好ましく、さらに700nm以上~1500nm(1.5μm)であるのが最も好ましい。
【0033】
前記第1非導電性布帛層3を構成する繊維の繊維太さは、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、走査型トンネル顕微鏡のいずれかの顕微鏡を用いて繊維をナノスケールで撮影した画像(写真を含む)を形態観察することによって測定されるものである。
【0034】
前記第1非導電性布帛層3の付着量(乾燥状態)は、0.5g/m~5g/mに設定されるのが好ましい。0.5g/m以上とすることで生体の皮膚等に対する密着性を十分に確保できると共に、5g/m以下とすることで布帛電極1として軽量性を確保できる。
【0035】
前記第1非導電性布帛層3の形態としては、エレクトロスピニング法により形成した場合には不織布になるが、特にこのような形態に限定されるものではなく、例えば、繊維で形成された織布、繊維で形成された編布等が挙げられる。
【0036】
また、前記第1非導電性布帛層3の形成方法としては、前記エレクトロスピニング法に限定されるものではなく、例えば、特殊なノズルから溶融樹脂を押出し、断面において海・島構造の繊維を得て、その繊維を分割して得た繊維で形成された布帛を使用することもできる。
【0037】
前記第1非導電性布帛層3を構成する第1樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンオキサイド(PEO)、エラストマー、ポリエステル樹脂、ポリ乳酸、ナイロン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカプロラクトン、酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリメタクリレート、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ゼラチン、コラーゲン、キチン、キトサン、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0038】
中でも、前記第1非導電性布帛層3を構成する繊維としては、エラストマー繊維が用いられるのが好ましい。前記エラストマー繊維としては、特に限定されるものではないが、例えば、トランスポリイソプレン繊維、シスポリイソプレン繊維、ポリウレタン繊維等が挙げられる。これらの中でも、トランスポリイソプレン繊維を用いるのが好ましく、この場合には、布帛電極1は、伸縮性により優れたものとなり、装着している皮膚等の動きに対する追従性をより向上させることができる。
【0039】
更に、前記トランスポリイソプレン繊維としては、特に限定されるものではないが、杜仲(トチュウ)由来のトランスポリイソプレン繊維を用いるのが特に好ましい。杜仲由来のトランスポリイソプレン繊維を用いることにより、布帛電極1の生体皮膚刺激性を低減することができる。前記杜仲由来のトランスポリイソプレンとしては、例えば、杜仲種子の果実を精製して得られた天然物由来のトランスポリイソプレン等が挙げられる。前記杜仲由来のトランスポリイソプレンは、例えば、特開2009-221306号公報に記載の製造方法により得ることができる。一例を挙げると、杜仲を生物学的に腐朽させて杜仲分解産物を得た後、該杜仲分解産物を洗浄することにより得ることができる。
【0040】
前記第2非導電性布帛層4は、エレクトロスピニング法により前記第1非導電性布帛層3の上面に積層されたものであるのが好ましい。即ち、前記第2非導電性布帛層4は、第2樹脂及び溶媒を含有した紡糸液と、導電性布帛層2(陰極又はアース)との間に高電圧を印加することにより、紡糸口24から前記紡糸液が、第1非導電性布帛層3の表面に向けて噴射されるエレクトロスピニング法(図3参照)により、前記第1非導電性布帛層3の表面に前記第2樹脂の繊維で形成された不織布からなる第2非導電性布帛層4が積層されてなる構成であるのが好ましい。
【0041】
上記のようなエレクトロスピニング法により第2非導電性布帛層4を形成することによって、前記第2非導電性布帛層4は、前記第2樹脂の繊維で形成された不織布で構成されたものとなる。
【0042】
前記第2非導電性布帛層4を構成する繊維の繊維太さ(直径)は10nm~2000nm(2μm)であるのが好ましい。10nm以上であることで安定した連続繊維作製が可能になるし、2000nm(2μm)以下であることで、表面積効果、分子配列効果が得られる上に、装着している時の違和感等も低減できて装着感を向上できる。中でも、前記第2非導電性布帛層4を構成する繊維の繊維太さは10nm~1000nm(1μm)であるのがより好ましく、さらに10nm~700nm未満であるのが最も好ましい。
【0043】
前記第1非導電性布帛層3を構成する第1樹脂の繊維太さが、前記第2非導電性布帛層4を構成する第2樹脂の繊維太さより太いことが好ましい。この場合、導電性布帛層2を構成する繊維と第1非導電性布帛層3とが絡み合い、導電性布帛層2から第1非導電性布帛層3が剥がれにくくなる。また、第2非導電性布帛層4を構成する第2樹脂の繊維太さが細いため、皮膚への密着耐久性を向上させることができ、皮膚から布帛電極1を剥がした際に、皮膚に第2非導電性布帛層4が残りにくくなる。
【0044】
前記第2非導電性布帛層4を構成する繊維の繊維太さは、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、走査型トンネル顕微鏡のいずれかの顕微鏡を用いて繊維をナノスケールで撮影した画像(写真を含む)を形態観察することによって測定されるものである。
【0045】
前記第2非導電性布帛層4の付着量(乾燥状態)は、0.5g/m~5g/mに設定されるのが好ましい。0.5g/m以上とすることで生体の皮膚等に対する密着性を十分に確保できると共に、5g/m以下とすることで布帛電極1として軽量性を確保できる。
【0046】
前記第2非導電性布帛層4の形態としては、エレクトロスピニング法により形成した場合には不織布になるが、特にこのような形態に限定されるものではなく、例えば、繊維で形成された織布、繊維で形成された編布等が挙げられる。
【0047】
また、前記第2非導電性布帛層4の形成方法としては、前記エレクトロスピニング法に限定されるものではなく、例えば、特殊なノズルから溶融樹脂を押出し、断面において海・島構造の繊維を得て、その繊維を分割して得た繊維で形成された布帛を使用することもできる。
【0048】
前記第2非導電性布帛層4を構成する第2樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエステル樹脂、ポリ乳酸、ナイロン、ポリカプロラクトン、酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリメタクリレート、ポリエチレングリコール、エラストマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ゼラチン、コラーゲン、キチン、キトサン、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0049】
中でも、前記第2非導電性布帛層4を構成する繊維としては、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレンオキサイド繊維が用いられるのが好ましい。この場合には、布帛電極1は、皮膚と接着する部分に親水性高分子を用いることになるから、皮膚との親和性が高く、皮膚への密着性をより向上させることができる。
【0050】
前記第1非導電性布帛層3はエレクトロスピニング法により前記導電性布帛層2の上面に積層されたものであり、前記第2非導電性布帛層4はエレクトロスピニング法により前記第1非導電性布帛層3の上面に積層されたものである。
【0051】
前記第1非導電性布帛層3は繊維太さが10nm~10000nmの繊維で形成された不織布で構成されており、前記第2非導電性布帛層4は繊維太さが10nm~2000nmの繊維で形成された不織布で構成されていることが好ましい。中でも、前記第1非導電性布帛層3は繊維太さが700nm以上~1500nmの繊維で形成された不織布で構成されており、前記第2非導電性布帛層4は繊維太さが10nm~700nm未満の繊維で形成された不織布で構成されていることがより好ましい。前記第2非導電性布帛層4を構成する繊維の繊維太さ(直径)と前記第1非導電性布帛層3を構成する繊維の繊維太さ(直径)とが一部数値範囲がかぶるものの、前記第1非導電性布帛層3を構成する第1樹脂の繊維太さが、前記第2非導電性布帛層4を構成する第2樹脂の繊維太さより太くなるように用いることが好ましい。
【0052】
布帛電極1の製造方法としては、エレクトロスピニング法により、第1樹脂及び溶媒を含有した紡糸液と、導電性布帛層2(陰極又はアース)との間に電圧を印加することにより、紡糸口から前記紡糸液を、導電性布帛層2の上面に向けて噴射せしめて、前記導電性布帛層2の上面に前記第1樹脂の繊維で形成された不織布からなる第1非導電性布帛層3を積層一体化する工程と、
エレクトロスピニング法により、第2樹脂及び溶媒を含有した紡糸液と、導電性布帛層2(陰極又はアース)との間に電圧を印加することにより、紡糸口から前記紡糸液を、前記第1非導電性布帛層3の上面に向けて噴射せしめて、前記第1導電性布帛層3の上面に前記第2樹脂の繊維で形成された不織布からなる第2非導電性布帛層4を積層一体化して積層体を得る工程と、
前記積層体を、第1樹脂の融点から該第1樹脂の融点プラス20℃の温度、かつ、導電性布帛層を構成する繊維の融点未満の温度で加熱する工程とを、備え、
前記第2非導電性布帛層4を構成する第2樹脂の融点が、前記第1非導電性布帛層3を構成する第1樹脂の融点より高いことが必要である。
【0053】
エレクトロスピニング法により、第1樹脂及び溶媒を含有した紡糸液と、導電性布帛層2(陰極又はアース)との間に電圧を印加することにより、紡糸口から前記紡糸液を、導電性布帛層2の上面に向けて噴射せしめて、前記導電性布帛層2の上面に前記第1樹脂の繊維で形成された不織布からなる第1非導電性布帛層3を積層一体化する工程を有する。
【0054】
エレクトロスピニング法により、第2樹脂及び溶媒を含有した紡糸液と、導電性布帛層2(陰極又はアース)との間に電圧を印加することにより、紡糸口から前記紡糸液を、第1非導電性布帛層3の上面に向けて噴射せしめて、前記第1導電性布帛層3の上面に前記第2樹脂の繊維で形成された不織布からなる第2非導電性布帛層4を積層一体化して積層体を得る工程を有する。
【0055】
前記積層体を、第1樹脂の融点から該第1樹脂の融点プラス20℃の温度、かつ、導電性布帛層2を構成する繊維の融点未満の温度で加熱する工程とを、備えている。前記積層体を第1樹脂の融点から該第1樹脂の融点プラス20℃の温度、かつ、導電性布帛層2を構成する繊維の融点未満の温度で加熱することで、第1非導電性布帛層3を構成する第1樹脂を溶融させて導電性布帛層2と第1非導電性布帛層3との接着性を向上させることができると共に、導電性布帛層2を構成する繊維を溶融することなく保持できる。第1樹脂の融点から該第1樹脂の融点プラス20℃の温度の範囲であっても、導電性布帛層2を構成する繊維の融点以上の温度で加熱すると、導電性布帛層2を構成する繊維を溶融してしまい、保持できなくなる。さらに、第2非導電性布帛層4を構成する第2樹脂は加熱しても溶融せずに繊維形態を維持した状態であるため、皮膚への密着耐久性を向上させることができると共に、布帛電極1を皮膚から剥がした際、皮膚に第2非導電性布帛層4が残りにくい。例えば、第1樹脂の融点が60℃の場合、第1樹脂の融点60℃から第1樹脂の融点プラス20℃、すなわち80℃の温度で、加熱することを意味する。第1樹脂の融点未満で加熱すると第1樹脂が溶融せず、皮膚に第2非導電性布帛層4が残りやすくなり、導電性布帛層2を構成する繊維の融点未満の温度であっても第1樹脂の融点プラス20℃を超えて加熱すると、皮膚に密着しにくくなるため、好ましくない。
【0056】
前記第2非導電性布帛層4を構成する第2樹脂の融点が、前記第1非導電性布帛層3を構成する第1樹脂の融点より高いことが必要である。この場合、第1非導電性布帛層3を構成する第1樹脂のみが溶融し、第2非導電性布帛層4を構成する第2樹脂がナノサイズの繊維形態を維持することができ、皮膚への密着性を向上させることができる。
【0057】
次に、布帛電極1の製造方法の一例について図2を参照しつつ説明する。この製造方法は、エレクトロスピニング法を利用した製造方法である。図2において、22はシリンジ、23は、シリンジ先端部の金属製針、24は、針の先端の紡糸口である。図2に示すように、シリンジ22内に、第1樹脂及び溶媒を含有した紡糸液(樹脂溶液)を収容し、該紡糸液を一定の速度で紡糸口24から押し出す。この時、前記紡糸液が吐出される金属製針(陽極)23と、導電性布帛層2(陰極又はアース)との間に高電圧を印加することにより、紡糸口24から前記紡糸液を、導電性布帛層2の表面に向けて噴射せしめて、前記導電性布帛層2の上面に前記第1樹脂の繊維で形成された不織布からなる第1非導電性布帛層3を積層一体化して、導電性布帛層2の上面に第1非導電性布帛層3を積層一体化する。
【0058】
次に、図3を参照しつつ説明する。この製造方法は、エレクトロスピニング法を利用した製造方法である。図3において、22はシリンジ、23は、シリンジ先端部の金属製針、24は、針の先端の紡糸口である。図3に示すように、シリンジ22内に、第2樹脂及び溶媒を含有した紡糸液(樹脂溶液)を収容し、該紡糸液を一定の速度で紡糸口24から押し出す。この時、前記紡糸液が吐出される金属製針(陽極)23と、導電性布帛層2(陰極又はアース)との間に高電圧を印加することにより、紡糸口24から前記紡糸液を、第1非導電性布帛層3の表面に向けて噴射せしめて、前記第1非導電性布帛層3の上面に前記第2樹脂の繊維で形成された不織布からなる第2非導電性布帛層4を積層一体化して、積層体を得る。
【0059】
上記エレクトロスピニング法では、紡糸口において電気引力が紡糸液(樹脂溶液)の表面張力を超えた時、紡糸液のジェット(噴霧物)が導電性布帛層2に向けて噴射されると考えられている。噴射された後、導電性布帛層2に到達するまでの間に、紡糸液中の溶媒は揮発していき、これに伴い、樹脂の繊維が形成されて導電性布帛層2の表面に積層される。
【0060】
前記印加電圧は、特に限定されるものではないが、10kV~40kVに設定するのが好ましい。前記紡糸口24の内径(開口径)は、0.07mm~1.8mmに設定するのが好ましい。また、前記紡糸口24と前記導電性布帛層2との距離(間隔)は、10cm~50cmに設定するのが好ましい。
【0061】
前記紡糸液を構成する溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、クロロホルム、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。前記紡糸液における樹脂の濃度は、0.5質量%~7質量%に設定されるのが好ましい。前記紡糸液の押出量(吐出量)は、0.01mL/分~0.5mL/分に設定するのが好ましい。
【0062】
上記エレクトロスピニング法を利用した製造方法において、前記第1非導電性布帛層3を構成する繊維の繊維太さは、例えば、紡糸液中の樹脂濃度、印加電圧、紡糸口24の内径(開口径)、紡糸口24と導電性布帛層2との距離等の各条件を調整することにより制御することができる。
【0063】
図4は、実施例1で作成した布帛電極1の第2非導電性布帛層4側からリアルサーフェスビュー顕微鏡VE-7800 (キーエンス株式会社製)を用いて倍率400倍で撮影した平面図を示している。
【0064】
図5は、実施例1で作成した布帛電極1を断面側からリアルサーフェスビュー顕微鏡 VE-7800 (キーエンス株式会社製)を用いて倍率1000倍で撮影した断面図を示している。
【実施例
【0065】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0066】
<実施例1>
融点が60℃である日立造船株式会社製の杜仲由来のエラストマー(杜仲種子の果実を精製して得られた天然物由来のトランスポリイソプレン)1質量部およびシクロヘキサン(85%)/ジメチルホルムアミド(15%)の混合溶媒99質量部を混合し、この混合液を約18時間常温(25℃)で撹拌した後、50℃で1時間加熱撹拌することによって、エラストマーをシクロヘキサン(85%)/ジメチルホルムアミド(15%)の混合溶媒に溶解せしめて、エラストマーの濃度が1質量%の紡糸液(樹脂溶液)を得た。
【0067】
次に、図2に示すように、温度25℃、湿度40%の室内において、前記エラストマーの濃度が1質量%の紡糸液をシリンジ22内に収容した後、紡糸液を0.10mL/分の押出速度(吐出速度)でシリンジ22の金属製針23の先端の内径(開口径)0.40mmの紡糸口24から押出しつつ、金属製針23(紡糸液)と、該金属製針23の下方に略水平状態に配置された導電性布帛層2(陰極又はアース)との間に20kVの電圧を印加することにより、金属製針23の先端の紡糸口24から紡糸液を、導電性布帛層2の表面(上面)に向けて噴射せしめて(電界紡糸せしめて)、導電性布帛層2の上面に杜仲由来のエラストマー(トランスポリイソプレン)の繊維で形成された不織布からなる第1非導電性布帛層3を積層一体化した。
【0068】
次に、純水92.5質量部に融点が240℃であるポリビニルアルコール(PVA)粉末7.5質量部を常温(25℃)で少量ずつ添加しながら撹拌し、純水中にポリビニルアルコール粉末を分散させた。次に、この分散液を90℃まで昇温させ、約2時間加熱撹拌することでポリビニルアルコールを純水に溶解せしめて、ポリビニルアルコールの濃度が7.5質量%の溶液を得た。
【0069】
次に、純水92.5質量部に融点が70℃であるポリエチレンオキサイド(PEO)粉末7.5質量部を常温(25℃)で少量ずつ添加しながら撹拌し、純水中にポリエチレンオキサイド粉末を分散させた。次に、この分散液を約2時間常温(25℃)で撹拌することでポリエチレンオキサイドを純水に溶解せしめて、ポリエチレンオキサイドの濃度が7.5質量%の溶液を得た。
【0070】
次に、ビーカーにポリビニルアルコールの濃度が7.5質量%の溶液とポリエチレンオキサイドの濃度が7.5質量%の溶液とが重量比1:1になるように混合し、28℃に設定したホットプレートの上にビーカーを置き、スターラーで2時間撹拌し、ポリビニルアルコールの濃度が7.5質量%及びポリエチレンオキサイドの濃度が7.5質量%の紡糸液(樹脂溶液)を得た。
【0071】
次に、図3に示すように、温度25℃、湿度40%の室内において、前記ポリビニルアルコールの濃度が7.5質量%及びポリエチレンオキサイドの濃度が7.5質量%の紡糸液をシリンジ22内に収容した後、紡糸液を0.10mL/分の押出速度(吐出速度)でシリンジ22の金属製針23の先端の内径(開口径)0.30mmの紡糸口24から押出しつつ、金属製針23(紡糸液)と、該金属製針23の下方に略水平状態に配置された導電性布帛層2(陰極又はアース)との間に15kVの電圧を印加することにより、金属製針23の先端の紡糸口24から紡糸液を、第1非導電性布帛層3の表面(上面)に向けて噴射せしめて(電界紡糸せしめて)、第1非導電性布帛層3の上面にポリビニルアルコール及びポリエチレンオキサイドの繊維で形成された不織布からなる第2非導電性布帛層4を積層し、積層体を得た。次に、積層体を80℃で2分加熱して、図1に示す布帛電極1を得た。
【0072】
なお、紡糸口24と導電性布帛層2との距離(間隔)は20cmに設定した。また、前記導電性布帛層2として、表面が銀メッキされたナイロン6・6繊維(融点265℃)で編成された厚さ0.11mm、幅38mmの短冊状の平織布を用いた。得られた布帛電極1において、第1非導電性布帛層3の付着量(乾燥状態)は、3.0g/mであり、第2非導電性布帛層4の付着量(乾燥状態)は2.0g/mであった。第1非導電性布帛層3を構成する第1樹脂の繊維太さ(直径)は800nm(最小値)~1500nm(最大値)の範囲で、平均値は960nmであった。第2非導電性布帛層4を構成する第2樹脂の繊維太さ(直径)は、300nm(最小値)~650nm(最大値)の範囲であり、平均値は455nmであった。
【0073】
<実施例2>
導電性布帛として表面が銀メッキされたポリエステル繊維(融点255℃)を用い、第2非導電性布帛層の第2樹脂として、ポリビニルアルコールの濃度が7.5質量%の紡糸液(樹脂溶液)を用い、加熱温度を70℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、布帛電極1を得た。
【0074】
<実施例3>
第1非導電性布帛層の第1樹脂として、ポリエチレンオキサイドの濃度が7.5質量%の紡糸液(樹脂溶液)を用い、第2非導電性布帛層の第2樹脂として、ポリビニルアルコールの濃度が7.5質量%の紡糸液(樹脂溶液)を用い、加熱温度を90℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、布帛電極1を得た。
【0075】
<実施例4>
導電性布帛として表面が銅メッキされたポリエステル繊維(融点255℃)を用い、第1非導電性布帛層の付着量を2g/m、第2非導電性布帛層の付着量を4g/m、加熱温度を第1樹脂の融点と同じ温度(60℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、布帛電極1を得た。
【0076】
<実施例5>
第1非導電性布帛層の第1樹脂として、シス型ポリイソプレン(融点30℃)の濃度が1質量%の紡糸液(樹脂溶液)を用い、第2非導電性布帛層の第2樹脂として、溶媒にアセトンを用いて室温で終夜撹拌し、酢酸セルロース(融点310℃)の濃度が15質量%の紡糸液(樹脂溶液)を用い、加熱温度を50℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、布帛電極1を得た。
【0077】
<実施例6>
導電性布帛として表面が銅メッキされたポリエステル繊維(融点255℃)を用い、第1非導電性布帛層の第1樹脂として、溶媒にジメチルホルムアミドを用いて室温で終夜撹拌し、ポリ乳酸(融点180℃)の濃度が5質量%の紡糸液(樹脂溶液)を用い、第2非導電性布帛層の第2樹脂として、溶媒にジメチルホルムアミドを用いて室温で終夜撹拌し、ポリウレタン(融点230℃)の濃度が10質量%の紡糸液(樹脂溶液)を用い、第1非導電性布帛層の付着量を1g/m、第2非導電性布帛層の付着量を4g/m、加熱温度を200℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、布帛電極1を得た。
【0078】
<比較例1>
第1非導電性布帛層を積層しない以外は、実施例1と同様にして、布帛電極を得た。
【0079】
<比較例2>
第2非導電性布帛層を積層しない以外は、実施例1と同様にして、布帛電極を得た。
【0080】
<比較例3>
第1非導電性布帛層の第1樹脂として、ポリビニルアルコールの濃度が7.5質量%の紡糸液(樹脂溶液)を用い、第2非導電性布帛層の第2樹脂として、エラストマーの濃度が1質量%の紡糸液(樹脂溶液)を用い、加熱温度を250℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、布帛電極を得た。
【0081】
【表1】
【0082】
上記のようにして得られた布帛電極に対して、下記評価方法に基づいて評価を行った。これらの評価結果を表1に示す。
【0083】
<繊維太さの測定法>
第1非導電性布帛層3及び第2非導電性布帛層4を構成する繊維の繊維太さは、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、走査型トンネル顕微鏡のいずれかの顕微鏡を用いて繊維をナノスケールで撮影した画像(写真を含む)を形態観察し、繊維太さを測定する際、顕微鏡の倍率は特に限定しないが、例えば、2000倍で合計30か所の繊維の繊維太さ(直径)を測定し、最小値、最大値、平均値を算出する。
【0084】
<密着性評価法>
まず、人の左腕の下腕部内側に作成した布帛電極を貼り付ける前に、ウェットティッシュで汚れ等を取り除いた。次に、実施例1~6、比較例1~3で作成した布帛電極を2cm角のサイズにカットし、人の左腕の下腕部内側に布帛電極を貼り付けた。3時間以上貼り付いたものを「〇」、3時間未満で剥がれ落ちたものを「×」とし、「〇」以上を合格とした。
【0085】
<密着耐久性評価法>
人の左腕の下腕部内側に作成した布帛電極を貼り付ける前に、ウェットティッシュで汚れ等を取り除いた。次に、実施例1~6、比較例1~3で作成した布帛電極を2cm角のサイズにカットし、人の左腕の下腕部内側に布帛電極を貼り付けた。次に、貼り付けた布帛電極の端部を皮膚から少し剥がし、布帛電極の端部をワニ口形状のクリップ(荷重5g)で挟んだ。ワニ口形状のクリップを挟んでから1分以上貼り付いた状態であったものを「〇」、ワニ口形状のクリップを挟んでから1分未満で剥がれ落ちたものを「×」とし、「〇」以上を合格とした。
【0086】
<密着性評価後の皮膚残り性評価法>
密着性評価法を行った後、布帛電極を剥がし、皮膚に全く非導電性布帛層が残らなかったものを「〇」、皮膚にわずかでも非導電性布帛層が残ったものを「×」とし、「〇」以上を合格とした。
【0087】
<密着性耐久性評価後の皮膚残り性評価法>
密着性耐久性評価法を行った後、布帛電極を剥がし、皮膚に全く非導電性布帛層が残らなかったものを「〇」、皮膚にわずかでも非導電性布帛層が残ったものを「×」とし、「〇」以上を合格とした。
【0088】
表1から明らかなように、本発明の実施例1~6の布帛電極は、密着性及び密着耐久性に優れ、密着性評価後及び密着耐久性評価後に皮膚残りしなかった。
【0089】
これに対して比較例1は、密着耐久性、密着性評価後の皮膚残り性、密着耐久評価後の皮膚残り性が劣っていた。
比較例2は、密着性、密着耐久性が劣っており、作成した布帛電極が皮膚に貼り付かないため、密着性評価後の皮膚残り性評価法及び密着耐久評価後の皮膚残り性評価法が評価できなかった。
比較例3は、密着性、密着耐久性が劣っており、作成した布帛電極が皮膚に貼り付かないため、密着性評価後の皮膚残り性評価法及び密着耐久評価後の皮膚残り性評価法が評価できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係る布帛電極は、例えば、人の皮膚への密着性が優れていて装着した皮膚から剥がれにくいので、例えば、心電図測定、体圧分布測定等の生体用センサーの電極として使用できる他、面状発熱体等として好適である。
【符号の説明】
【0091】
1・・・布帛電極
2・・・導電性布帛層
3・・・第1非導電性布帛層
4・・・第2非導電性布帛層
5・・・非導電性布帛層
22・・・シリンジ
23・・・シリンジ先端部の金属製針
24・・・紡糸口
図1
図2
図3
図4
図5