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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】ウレアーゼ阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20231003BHJP
   A23K 20/163 20160101ALI20231003BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 31/70 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 31/7004 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 31/7016 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 31/702 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231003BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20231003BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
A23L33/10
A23K20/163
A23L2/00 F
A23L2/52
A61K8/60
A61K8/73
A61K31/70
A61K31/7004
A61K31/7016
A61K31/702
A61P43/00 111
A61Q11/00
A61Q19/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019110178
(22)【出願日】2019-06-13
(65)【公開番号】P2020198852
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000210067
【氏名又は名称】池田食研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 裕子
【審査官】川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-139398(JP,A)
【文献】特開2009-155259(JP,A)
【文献】特開2007-332081(JP,A)
【文献】特開2001-017096(JP,A)
【文献】国際公開第2005/011671(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/00-33/29
A61K 31/00-33/44
A61K 36/00-36/9062
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラメルを有効成分とするウレアーゼ阻害剤であって、カラメルのK610が0.0005から0.015の範囲にあることを特徴とするウレアーゼ阻害剤。
【請求項2】
カラメルを有効成分とするウレアーゼ阻害剤であって、カラメルのDEが20から80であることを特徴とするウレアーゼ阻害剤。
【請求項3】
前記カラメルが砂糖、ブドウ糖、果糖、異性化糖及び水あめから選ばれる一種又は二種以上の食用炭水化物の熱処理である請求項1又は2に記載のウレアーゼ阻害剤。
【請求項4】
前記カラメルがカラメルIである請求項1~3のいずれか1項に記載のウレアーゼ阻害剤。
【請求項5】
飲料、食品、化粧品、医薬部外品もしくは医薬品、又は飼料の形態である請求項1~4のいずれか1項に記載のウレアーゼ阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレアーゼ阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレアーゼは、尿素を加水分解して二酸化炭素とアンモニアとに分解する酵素であり、細菌や糸状菌等の微生物、豆類等の種子植物、動物等に広く存在する。腸内細菌のウレアーゼは腸内の尿素をアンモニアに分解し、その細胞毒性によって腸内菌叢が悪化し下痢等の原因となることが知られている。また、代表的なウレアーゼ産生菌であるヘリコバクター・ピロリ菌(以下「ピロリ菌」とする)は、胃内で自身のウレアーゼによりアンモニアを発生して胃酸を中和して生息している。ピロリ菌は、胃粘膜を傷め、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん等の病気の主たる原因となる。ピロリ菌対策としては、抗生物質を抗菌薬とするピロリ菌除去が行われているが、薬剤等によるピロリ菌のウレアーゼ活性の抑制をすることも行われている。ところで、抗生物質の投与は、その人の常在細菌や本来有している腸内菌叢へ影響を与えるとともに、抗生物質に対する耐性菌の増加等の問題がある。
【0003】
また、ウレアーゼ活性を抑制することによりアンモニアの発生及びその臭いを抑制できるため、ウレアーゼ活性の抑制によってペットや家畜の臭気の防臭、口臭若しくは体臭抑制をすることが期待されている。
【0004】
ウレアーゼ活性の抑制、すなわち、ウレアーゼ阻害活性については、多くの報告があり、例えば、カルボスチリル誘導体、なかんずく、2-(4-クロルベンゾイルアミノ)-3-キノロン-4-イル)プロピオン酸又はその塩を有効成分とするウレアーゼ阻害剤を、胃粘膜障害や高アンモニア血症等の疾病の予防や治療に利用すること(特許文献1参照)が開示されている。また、例えば、フラボン類、フラボノール類、ジヒドロフラボノール類及びカテキン類からなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物を有効成分として含有させるウレアーゼ阻害剤、アンモニア臭抑制剤及びアンモニアに起因するおむつかぶれ防止剤(特許文献2参照)が開示されている。
植物抽出物を有効成分とするウレアーゼ阻害剤として、例えば、月見草の溶媒抽出物を含有することを特徴とするウレアーゼ阻害用組成物及びその組成物を含有する飲食品や薬品の提供(特許文献3参照)が開示され、レイシやランブータン等のムクロジ科植物の抽出物を含有することを特徴とするウレアーゼ活性阻害剤(特許文献4参照)が開示されている。
【0005】
一方、カラメルを有効成分とする酵素阻害剤については、カラメル色素を有効成分とするヒアルロニダーゼ阻害剤及びカラメル色素を有効成分とするエラスターゼ阻害剤が開示され、抗老化、皮膚老化防止、抗炎症等の目的でそれら酵素阻害剤の飲料、食品、化粧品、医薬部外品、医薬品等への利用(特許文献5参照)が開示されている。また、パラチノース(イソマルツロース)を加熱することにより得られるパラチノース加熱分解物(6-(α-D-グルコピラノシルオキシ)-1,3,4-トリヒドロキシヘキサ-5-エン-2-オン及び5-[(α-D-グルコピラノシルオキシ)メチル]-2-フランカルボックスアルデヒド)を有効成分とする消臭剤、及びその消臭剤を含む飲食品、口腔用組成物並びにトイレタリー製品に関する発明(特許文献6参照)が開示されている。
しかしながら、カラメルにウレアーゼ阻害活性があることは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-101862号公報
【文献】特開2004-91338号公報
【文献】特開2005-104888号公報
【文献】特開2011-6333号公報
【文献】特開2013-139398号公報
【文献】特開2001-521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、安全性が高くかつ優れたウレアーゼ阻害剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、安全性の高い物質に着目して鋭意研究した結果、カラメルが優れたウレアーゼ阻害活性を有することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の項(1)~項(5)に係るものである
項(1)
カラメルを有効成分とすることを特徴とするウレアーゼ阻害剤。
項(2)
前記カラメルのK610が、0.0001から1.0の範囲にある項(1)に記載のウレアーゼ阻害剤。
項(3)
前記カラメルが砂糖、ブドウ糖、果糖、異性化糖及び水あめのうちの一種又は二種以上を熱処理して得られたものである項(1)又は項(2)に記載のウレアーゼ阻害剤。
項(4)
前記カラメルがカラメルIである項(1)から項(3)のいずれか1項に記載のウレアーゼ阻害剤。
項(5)
飲料、食品、化粧品、医薬部外品もしくは医薬品、又は飼料の形態である項(1)から項(4)のいずれか1項に記載のウレアーゼ阻害剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明のウレアーゼ阻害剤は、優れた酵素阻害活性を有し、安全性及び安定性に優れている。したがって、例えば、ピロリ菌等の微生物が産生するウレアーゼを阻害する目的で、又はアンモニアの発生を抑制することによる消臭目的で、飲料、食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料等として効果的に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、カラメルは、食用炭水化物を熱処理して得られたものである。カラメルには、食品としてのカラメルと着色料としてのカラメル(カラメル色素)が含まれる。
食品としてのカラメルは、例えば、プリンシラップ(シロップ)、プリン用カラメル、プリンソース(登録商標)、カラメルシラップ、カラメルソース、ローストシュガーシラップ、カラメルアロマ、ローストシュガー、カラメリゼ(キャラメリゼ)、焦糖シラップ、焦がし砂糖、焦糖、カラメルフレーバー、バーントシュガー、カラメル等といわれ、着色効果は低く、焦糖風味を有する食品として利用されている。
着色料としてのカラメル(カラメル色素)は、食品添加物公定書に成分規格が収載され、食品添加物として利用されている。
例えば、糖類を加熱すると、糖類本来の味が変化していき、甘味、にがみ、酸味が消長して、焦糖特有の風味が作りだされる。加熱度合いを調整することにより、上記プリンシラップ(シロップ)、カラメルシラップ、カラメルソース、バーントシュガーのような食品としてのカラメルから着色料としてのカラメル(カラメル色素)まで、様々な風味、色合いのカラメルを作ることができる。加熱処理度を強くすると、甘味はなくなり、にがみ、酸味ともに弱くなる。一般に、着色料としてのカラメル(カラメル色素)は、通常の使用量では食品の味を損なうことはない。食品としてのカラメルは、糖類の甘味がわずかに残り、にがみ、酸味がややあり、黄色から褐色を呈す。これら特有の焦糖風味を活かすとともに、かくし味、コク付け、ボディ感や保水性の付与、風味増強等にも利用することができる。
【0012】
本発明において、食用炭水化物は、でん粉加水分解物、糖類又はこれらの還元物、糖蜜が挙げられる。
でん粉加水分解物は、コーンスターチ、小麦でん粉、馬鈴薯でん粉、甘藷でん粉、タピオカでん粉、米等のでん粉を加水分解したものであり、例えば、水あめ、コーンシラップ、デキストリン、でんぷん糖等が挙げられる。
糖類は、例えば、ブドウ糖や果糖等の単糖、砂糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース等の二糖類、オリゴ糖、多糖、異性化糖、はちみつ、メープルシュガー、黒糖等が挙げられる。オリゴ糖には、例えば、マルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖等が挙げられる。多糖には、例えば、でん粉、加工でん粉、難消化性デキストリン、デキストラン、イヌリン、ポリデキストロース、マンナン等が挙げられる。還元物は、通常、糖アルコールであり、例えば、ソルビトール、マルチトール、還元水あめ等が挙げられる。
糖蜜は、精糖工程の副産物であり、ショ糖を分離した残液である。
本発明において、食用炭水化物は、好ましくは砂糖、ブドウ糖、果糖、異性化糖及び水あめのうちの一種又は二種以上である。
【0013】
本発明において、着色料としてのカラメル(カラメル色素)は、ウレアーゼ阻害活性の観点、ADI(一日許容摂取量)に基づく使用量上限がないという観点から、カラメルIに分類されるカラメルが好ましい。なお、FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会(JECFA)は、カラメルIについては、ADIの設定が必要ないと考察し、「ADIを特定しない(not specified)」とした。
第9版食品添加物公定書の成分規格には、着色料としてのカラメル(カラメル色素)が、カラメルI、カラメルII、カラメルIII、カラメルIVの名称で収載され、それぞれの定義は以下の通りである。
カラメルI
本品は、でん粉加水分解物、糖蜜又は糖類の食用炭水化物を、熱処理して得られたもの、又は酸若しくはアルカリを加えて熱処理して得られたもので、亜硫酸化合物及びアンモニウム化合物を使用していないものである。
カラメルII
本品は、でん粉加水分解物、糖蜜又は糖類の食用炭水化物に、亜硫酸化合物を加えて、又はこれに酸もしくはアルカリを加えて熱処理して得られたもので、アンモニウム化合物を使用していないものである。
カラメルIII
本品は、でん粉加水分解物、糖蜜又は糖類の食用炭水化物に、アンモニウム化合物を加えて、又はこれに酸もしくはアルカリを加えて熱処理して得られたもので、亜硫酸化合物を使用していないものである。
カラメルIV
本品は、でん粉加水分解物、糖蜜又は糖類の食用炭水化物に、亜硫酸化合物及びアンモニウム化合物を加えて、又はこれに酸もしくはアルカリを加えて熱処理して得られたものである。
また、上記の成分規格には、それぞれのカラメルについて確認試験及び純度試験が規定されている。
【0014】
本発明において、食用炭水化物の熱処理は、大気圧下、加圧下、減圧下のいずれでも行うことができる。そして、その熱処理は、カラメルが得られる温度・時間であればよい。通常、大気圧下及び加圧下では、100℃~300℃、加熱時間は達温又は0.01分から24時間の範囲にあり、任意に設定することができる。熱処理する温度と時間とは、加熱装置、目的とする加熱度合、又は、後述するカラメルの吸光度に応じて、適宜設定することができる。
【0015】
本発明において、食用炭水化物を熱処理する装置又は方法は、特に制限がなく、例えば、鍋、平釜、直火釜、開放焙焼釜、加圧加熱反応容器、エクストルーダー、コンベクションオーブン、ドラムドライヤー等の装置、減圧加熱、蒸気加熱、熱風加熱、マイクロ波加熱、赤外線加熱、高周波加熱、高周波誘電加熱、過熱蒸気加熱等の方法が挙げられ、適宜選択して設定することができる。
【0016】
本発明において、K610とは、カラメルの0.1%水溶液を波長610nm、10mmセルにて測定して得られた吸光度を固形物換算したものである。
本発明において、カラメルのK610は、ウレアーゼ阻害活性の観点から、好ましくは0.0001から2.0の範囲であり、より好ましくは、0.0001から1.0の範囲であり、より更に好ましくは、0.0001から0.6の範囲であり、特に好ましくは、0.0001から0.3の範囲であり、更に特に好ましくは0.0005から0.2の範囲である。なお、米国の第11版 フード・ケミカルズ・コーデックス(Food Chemicals Codex、米国食品化学物質規格集)収載のカラメル色素規格では、色力A610は、0.1%水溶液の波長610nm、10mmセルでの吸光度の固形物換算値として0.01~2.0が規定されている。
【0017】
また、本発明において、カラメルのDEは、ウレアーゼ阻害活性の観点から、好ましくは1から99の範囲であり、より好ましくは5から95の範囲であり、より更に好ましくは10から80の範囲であり、特に好ましくは、20から80の範囲である。カラメルは、熱処理によって食用炭水化物が分解されるが、残糖分は直接還元糖であるDE(%)として、レインエイノン法、ベルトラン法、ウィルシュテッター・シューデル法、HPLC法等の測定法で測定することができる。本発明において、カラメルのDEの測定法は、好ましくはベルトラン法である。
【0018】
後記実施例に示すように、カラメルは、優れたウレアーゼ阻害活性を有する。腸内細菌のウレアーゼは、尿素を加水分解してアンモニアを生成し、腸内においてその細胞毒性によって腸内菌叢の悪化、下痢等を引き起こす。また、胃内においてウレアーゼによりアンモニアを生成して生息するピロリ菌は、胃粘膜を傷め、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん等を引き起こす。さらに、ウレアーゼによるアンモニアの発生は、皮膚の炎症(おむつかぶれ等)、臭気の原因となる。
したがって、本発明のウレアーゼ阻害剤は、ピロリ菌等の微生物等が産生するウレアーゼを阻害することによって、ウレアーゼ及び発生したアンモニアに起因する疾患や症状の予防、改善又は治療が可能となる。好適には、胃粘膜保護、おむつかぶれ防止、アンモニア臭抑制、ペットや家畜の臭気の防臭、口臭や体臭の抑制のために用いることができる。
【0019】
本発明のウレアーゼ阻害剤は、少なくともカラメルを有効成分として含有していればよい。また、本発明のウレアーゼ阻害剤は、カラメルと他の成分との混合形態であってもよい。そのような成分としては、本発明のウレアーゼ阻害剤の効果を損なわないものであって、飲料、食品、化粧品、医薬部外品又は医薬品、飼料の加工やその機能等に対して好ましい効果を有するものを使用することができる。
本発明のウレアーゼ阻害剤において、有効成分であるカラメルは、目的とする効果、使用方法等から、添加量や濃度を適宜決定し使用すればよい。
【0020】
本発明のウレアーゼ阻害剤の形態は、常温(25℃)で固体状、半固形状、液体状のいずれでもよく、例えば、溶液、粉末、顆粒、ペースト又は乳化物等の形態であってよい。
また、本発明のウレアーゼ阻害剤は、飲料、食品、化粧品、医薬部外品もしくは医薬品、又は飼料の形態であってよい。
飲料又は食品の形態は任意であり、例えば、清涼飲料水、アルコール飲料、乳飲料、保健飲料、漬物、醤油、ソース、みそ、生菓子、菓子、デザート食品、乳製品、加工食品、調味料、いわゆる健康食品、特定保健用食品、機能性表示食品、栄養補助食品等が挙げられ、いずれであってもよい。
これらの飲料又は食品には、カラメルの他、ビタミン類、動植物抽出物、抗酸化成分等の機能性成分、生理活性物質又は既知の他のウレアーゼ阻害成分等を適宜配合して用いることができる。
【0021】
化粧品の形態は、任意であり、例えば、乳液、クリーム、化粧水、美容液、パック、洗浄料、メーキャップ化粧料、分散液、軟膏、液剤、エアゾール、貼付剤、プラスター剤、パップ剤、リニメント剤、皮膚洗浄料、消臭剤等が挙げられ、いずれであってもよい。
化粧品には、カラメルの他、植物油等の油脂類、ラノリンやミツロウ等のロウ類、植物抽出物、炭化水素類、脂肪酸、高級アルコール類、エステル類、種々の界面活性剤、色素、香料、ビタミン類、動物抽出物、抗酸化剤、防腐・殺菌剤等、通常の化粧料原料として使用されているものを適宜配合して用いることができる。さらに、消臭効果を有するものとして既知の他の成分を併用することで、効果を高めることもできる。
【0022】
医薬部外品又は医薬品の形態は、任意であり、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、トローチ剤、シロップ剤等による経口投与;注射剤、坐剤、吸入薬、経皮吸収剤、外用剤等による非経口投与が挙げられ、いずれであってもよい。
医薬部外品又は医薬品には、カラメルの他、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、pH調節剤・緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、矯味・矯臭剤、安定化剤等、薬学的に許容される担体を適宜配合して用いることができる。
【0023】
飼料の形態は、任意であり、例えば、牛、豚、鶏、羊、馬等に用いる家畜用飼料、ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料、犬、猫、小鳥等に用いるペットフード等が挙げられ、いずれであってもよい。
飼料には、カラメルの他、肉類、タンパク質、穀物類、糠類、粕類、糖類、野菜、ビタミン類、ミネラル類、ゲル化剤、保型剤、pH調整剤、調味料、防腐剤、栄養補強剤等、他の飼料材料を適宜配合して用いることができる。
【0024】
本発明のウレアーゼ阻害剤を、飲料、食品、化粧品、医薬部外品もしくは医薬品、又は飼料等として用いる場合、これらへのカラメルの配合量は、その純度や剤形等を考慮して、また、カラメルのウレアーゼ阻害活性のIC50に基づいて定めるとよいが、通常、全量中の0.001~100質量%、好ましくは0.001~50質量%、より好ましくは、0.01~20質量%、特に好ましくは、0.05~10質量%である。
【0025】
本発明のウレアーゼ阻害剤を生体(ヒト又は非ヒト動物)に投与する場合、その量は、
対象者の状態、体重、性別、年齢又はその他の要因に従って変動し得るが、食品としてのカラメル及び着色料としてのカラメル(カラメル色素)のうちのカラメルIについては特
に制限がなく、カラメルI以外のカラメル色素については、ADI(一日許容摂取量)を
考慮して、成人1人(60kg)に対して1日あたり12グラムまでとするのが好ましい。本発明では斯かる量を1日に1回~複数回に分けて、1日間以上反復・継続して投与又は摂取するのが好ましい。摂取にあたっては、本発明のウレアーゼ阻害剤を配合された物を摂取するか、又は本発明のウレアーゼ阻害剤であるカラメルそのものを直接的に摂取することができる。
また、本発明のウレアーゼ阻害剤を非生体に使用する場合、その使用量は、使用形態により変動し得るが、通常、対象物全量中の0.001~100質量%、好ましくは0.001~50質量%、より好ましくは、0.01~20質量%、特に好ましくは、0.05~10質量%である。
【実施例
【0026】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の例によって限定されるものではない。なお、本発明において、各原料及び素材の配合%は、全て質量%である。
【0027】
本発明品である、カラメルを有効成分とするウレアーゼ阻害剤を以下のようにして得た。そして、これらを検体として、ウレアーゼ阻害活性を測定した。
【0028】
ウレアーゼ阻害剤(試験品No.1):砂糖を160℃に加熱処理することによりプリンシラップを得た。その吸光度を測定したところ、K610は0.001であり、固形物換算DEは72であった。
ウレアーゼ阻害剤(試験品No.2):砂糖を190℃に加熱処理することによりカラメルシラップを得た。その吸光度を測定したところ、K610は0.005であり、固形物換算DEは46であった。
ウレアーゼ阻害剤(試験品No.3):砂糖を210℃に加熱処理することによりバーントシュガーを得た。その吸光度を測定したところ、K610は0.008であり、固形物換算DEは41であった。
ウレアーゼ阻害剤(試験品No.4):ブドウ糖を140℃、3時間、加熱処理することによりバーントシュガーを得た。その吸光度を測定したところ、K610は0.007であり、固形物換算DEは45であった。
ウレアーゼ阻害剤(試験品No.5):水あめを140℃、4時間、加熱処理することによりバーントシュガーを得た。その吸光度を測定したところ、K610は0.008であり、固形物換算DEは54であった。
ウレアーゼ阻害剤(試験品No.6):果糖42%含有の異性化糖を130℃、2時間、加熱処理することによりバーントシュガーを得た。その吸光度を測定したところ、K610は0.008であり、固形物換算DEは59であった。
ウレアーゼ阻害剤(試験品No.7):ブドウ糖と果糖とを1:1に混合して130℃、2時間、加熱処理することによりバーントシュガーを得た。その吸光度を測定したところ、K610は0.009であり、固形物換算DEは55であった。
ウレアーゼ阻害剤(試験品No.8):砂糖を加熱処理して得たカラメル色素について、吸光度を測定したところ、K610は0.015であり、固形物換算DEは58であった。
ウレアーゼ阻害剤(試験品No.9):砂糖を加熱処理して得たカラメル色素について、その吸光度を測定したところ、K610は0.060であり、固形物換算DEは16であった。
ウレアーゼ阻害剤(試験品No.10):砂糖を加熱処理して得たカラメル色素について、その吸光度を測定したところ、K610は0.101であり、固形物換算DEは14であった。
【0029】
ウレアーゼ阻害剤の試験品No.8、No.9及びNo.10について、第9版食品添加物公定書収載のカラメルの定義及び確認試験にしたがって試験したところ、これらはカラメルIに分類された。
【0030】
[ウレアーゼ阻害活性の測定]
ウレアーゼ阻害活性の測定は、以下の方法で行った。
ナタ豆由来ウレアーゼ溶液40μL(0.8U/mL、100mMリン酸緩衝液(pH6.9)に溶解)に、各種濃度の試料40μLを加えて、37℃15分間放置した。続いて、基質である尿素溶液60mM(前記リン酸緩衝液に溶解)80μLを加え、37℃で15分間放置した後、1N 硫酸40μLを加えて反応を停止させた。得られた反応液に、溶液Aの1mLと溶液Bの1mLとを加え、65℃で20分間放置後、630nmにおける吸光度(A)を測定した。上記と同様の酵素反応と吸光度測定とを、試料溶液の代わりに前記リン酸緩衝液を添加して行った吸光度(C)の測定を行った。上記とさらにそれぞれの場合について酵素を添加せずに前記リン酸緩衝液を加えて同様にして吸光度(B)、(D)の測定を行った。試薬は、全て富士フィルム和光純薬株式会社製を使用した。
溶液A:フェノール5.0g及びニトロプルシドナトリウム25mgを蒸留水500mlに溶解した。
溶液B:蒸留水300mLにリン酸水素二ナトリウム2.2g及び水酸化ナトリウム2.5gを溶解し、有効塩素10%以上の次亜塩素酸ナトリウム3.0mLを添加し、蒸留水で500mLとした。
試料は、それぞれ前記リン酸緩衝液に溶解し、固形物換算で0.5mg/mL、0.25mg/mL、0.05mg/mLの終濃度となるように作成した。
阻害率(%)は、次式により算出しその結果を表1に示した。それぞれの阻害曲線から50%阻害濃度(IC50)を求め、その結果を表2に示した。
【0031】
ウレアーゼ阻害率(%)=100-100×[(A-B)/(C-D)]
【0032】
A:試料溶液添加、酵素溶液添加時の吸光度
B:試料溶液添加、酵素溶液無添加時の吸光度
C:試料溶液無添加、酵素溶液添加時の吸光度
D:試料溶液無添加、酵素溶液無添加時の吸光度
【0033】
【表1】
表中の数字は、ウレアーゼ阻害率(%)を示す。
【0034】
表1に示す通り、本発明による固形物換算濃度でのウレアーゼ阻害率は、0.5(mg/mL)(500ppm)で45~95%であり、有効に作用することを示した。特に、試験品No.1~No.8は、69~95%で、0.25(mg/mL)(250ppm)でも56~89%であり、顕著な阻害活性を示した。
【0035】
【表2】
【0036】
表2に示す通り、本発明によるウレアーゼ阻害剤のIC50(50%阻害率)は、0.01~0.55mg/mL(10~550ppm)であり、少量で有効なウレアーゼ阻害活性を有すること示した。特に、No.1~No.8では、0.01~0.16mg/mL(10~160ppm)であり顕著な阻害活性を示した。当該試験品を使用する場合、例えば、使用量が通常0.05%(500ppm)~5%(50000ppm)が挙げられ、この場合、有効なウレアーゼ阻害活性を得ることができる。したがって、本発明品であるウレアーゼ阻害剤を飲料、食品、化粧品、医薬部外品もしくは医薬品、又は飼料等として効果的に利用することができる。
【0037】
本発明品のウレアーゼ阻害剤を、飲料、食品、医薬部外品、化粧品として用いた例を以下に示す。
【0038】
[配合例1]
次の配合例で、清涼飲料水を常法により製造した。本飲料を喫食することで、ピロリ菌抑制や口臭抑制が期待できる。
ステビア(ハイステビアRA-700M
池田糖化工業株式会社製) 0.018g
エリスリトール 2.0g
アスコルビン酸 0.1g
アスコルビン酸ナトリウム 0.04g
香料 適量
本発明品(試験品No.4) 1.0g
水 97mL
【0039】
[配合例2]
次の配合例で、カスタードプリンを常法により製造した。本プリンを喫食することで、ピロリ菌抑制や口臭抑制が期待できる。
牛乳 110g
全卵 40g
砂糖 25g
バニラ香料 適量
本発明品(試験品No.1) 4g
【0040】
[配合例3]
次の配合例で、パウンドケーキを常法により製造した。本ケーキは、焦糖感を有する風味豊かなものであり、同時に、ピロリ菌抑制や口臭抑制が期待できる。
全卵 100g
砂糖 50g
サラダ油 30g
小麦粉(薄力粉) 100g
牛乳 20g
ベーキングパウダー 4g
塩 0.08g
本発明品(試験品No.6) 5g
【0041】
[配合例4]
次の配合例で、キャンデーを常法により製造した。本キャンデーは、焦糖感を有す風味豊かなものであり、同時に、ピロリ菌抑制や口臭抑制が期待できる。
砂糖 300g
水あめ 250g
コーヒーエキス 適量
香料 適量
本発明品(試験品No.3) 5g
【0042】
[配合例5]
次の配合例で、ガムを常法により製造した。本ガムは、焦糖感を有す風味豊かなものであり、同時に、ピロリ菌抑制や口臭抑制が期待できる。
ガムベース 20g
砂糖 45g
ブドウ糖 21g
水あめ 10g
香料 適量
本発明品(試験品No.2) 3g
【0043】
[配合例6]
本発明品(試験品No.7)500mgをゼラチンカプセルに充填し、キャップ部を結合し、ピロリ菌抑制用や口臭抑制用食品とするカプセル剤を調製した。
【0044】
[配合例7]
本発明品(試験品No.5(固形分75%))100質量部にデキストリン60質量部を配合してスプレードライヤーにより粉末化し、次いで、次の配合例により造粒後、打錠をして1粒1gの錠剤として健康食品を得た。
試験品No.5のスプレードライヤー粉末品 350g
乳糖 470g
結晶セルロース 140g
ヒドロキシプロピルセルロース 30g
ステアリン酸マグネシウム 1g
タルク 9g
【0045】
[配合例8]
次の配合例で、医薬部外品の洗口液を常法により製造した。
(成分及び質量%)
エタノール 18.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
グリセリン 8.0
ソルビトール 7.0
クエン酸ナトリウム 0.5
本発明品(試験品No.6) 2.0
香料 適量
水 63.5
【0046】
[配合例9]
次の配合例で、化粧水を常法により製造した。
(成分及び質量%)
グリセリン 5.0
オレイルアルコール 0.1
ポリオキシエチレン(20)
ソルビタンモノラウリルリン酸エステル 0.3
本発明品(試験品No.8) 0.5
エチルアルコール 10.0
香料 適量
精製水 83.7
【0047】
[配合例10]
次の配合例で、O/W型クリームを常法により製造した。
(成分及び質量%)
本発明品(試験品No.9) 0.5
ステアリルアルコール 6.0
ステアリン酸 2.0
水添ラノリン 4.0
スクワラン 9.0
オクチルドデカノール 10.0
1,3-ブチレングリコール 6.0
PEG1500 4.0
ポリエキシエチレン(25)
セチルアルコールエーテル 3.0
モノステアリン酸グリセリン 2.0
防腐剤 適量
酸化防止剤 適量
香料 適量
精製水 53.5