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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】入浴剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20231003BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20231003BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/46
A61Q19/10
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019221207
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2021091615
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(72)【発明者】
【氏名】大島 伸二
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-069108(JP,A)
【文献】特開2008-031130(JP,A)
【文献】特開2008-081426(JP,A)
【文献】特開2017-114804(JP,A)
【文献】特開2018-043941(JP,A)
【文献】特開2010-168334(JP,A)
【文献】特開2010-083840(JP,A)
【文献】特開平07-285848(JP,A)
【文献】ビオレu家族みんなのすべすべバスミルク、花王、2006年9月26日、Cosmetic-Info.jp [online],[検索日 2023.06.14]、インターネット<URL:https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=4880>
【文献】Medicated Bath Additive, Bathclin, 2018年7月, Mintel GNPD [online],[検索日 2023.06.14], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID:5845279
【文献】Milk Rose Bath Milk, Kao, 2015年11月, Mintel GNPD [online],[検索日 2023.06.14], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID:3615117
【文献】Baby Bath Essence, Tsumura Lifescience, 2009年2月, Mintel GNPD [online],[検索日 2023.06.14], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID:1082906
【文献】Aromatherapy Chocolate Bath Oil, White Cottage, 2007年10月, Mintel GNPD [online],[検索日 2023.06.14], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID:796651
【文献】Bath Essence, Kose, 2007年9月, Mintel GNPD [online],[検索日 2023.06.14], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID:807031
【文献】Sooothing Honey Vanilla Moisturizing Bath Beads, Unilever, 2004年5月, Mintel GNPD [online], [検索日 2023.06.14], インターネット<URL:https://www.gnpd.com>, ID:10169793
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)流動パラフィン
成分(B)ワセリン
成分(C)セチル硫酸ナトリウム
を含有し、前記(A)成分の含有量が40~50質量%であり、前記(B)成分の含有量が2~4質量%であり、前記(C)成分の含有量が0.3~0.8質量%である入浴剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴後の肌にうるおい感を与え、さらに入浴後のさっぱり感も損なわない入浴剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
入浴は、身体を清潔にし、精神的にリラックスさせる効果を有する。かかる入浴に際し、浴水の感触や保湿効果を高めたり、入浴中および入浴後に肌に良好な感触をもたらすために、種々の水中油型入浴剤組成物が用いられており、様々な研究もなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、分子量の異なる複数の流動パラフィンと非イオン性界面活性剤とを特定の質量比で含有し、特定の炭素数を有する一価のアルコールをも併用し得る入浴剤組成物が開示されており、かかる入浴剤組成物は、肌のべたつきを抑制してすべすべ感を与え、保存安定性を高め得るものである。また、特許文献2には、常温で液状の炭化水素油に、HLBが異なる複数の非イオン性界面活性剤や特定の一価のアルコールを併用した入浴剤組成物が開示されており、入浴後の肌感触を良好なものとし、保存安定性等にも優れることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-240993号公報
【文献】特開2005-281151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~2に記載の技術では、肌のしっとり感は得られるものの、入浴後の肌のさっぱり感については、満足できるものではなかった。
【0006】
本発明は、入浴後の肌にうるおい感を与え、うるおい感の持続があり、さらに入浴後のさっぱり感も損なわない入浴剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記問題を解決するため鋭意検討した結果、(A)常温で液体の炭化水素油、(B)常温でペースト状の半固形油、(C)陰イオン性界面活性剤を含有することで入浴後の肌のうるおい感を与え、さらに入浴後のさっぱり感も損なわない入浴剤組成物を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、入浴後の肌にうるおい感を与え、うるおい感の持続があり、さらに入浴後のさっぱり感も損なわない入浴剤組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、含有量を示す単位は、特に明記しない限り全て質量%である。また、常温とは、15℃~25℃の範囲である。特別に昇温又は降温しない温度領域を意味し、例えば、通常の作業環境である室温、又は、約18℃~約30℃である。特別に昇温又は降温しない温度領域を意味し、例えば、通常の作業環境である室温、又は、約18℃~約30℃である。
【0010】
本発明は、(A)常温で液体の炭化水素油、(B)常温でペースト状の半固形油、(C)陰イオン性界面活性剤を含有することを特徴とする入浴剤組成物である。
【0011】
本発明による入浴剤組成物にはうるおい感の観点から(A)常温で液体の炭化水素油を含有する。
【0012】
本発明に用いる前記(A)常温で液体の炭化水素油としては特に限定されないが、例えば、軽質イソパラフィン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン、スクワラン等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種または2種以上を含有することができる。これらのうち、うるおい感を向上する観点から流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワランが好ましく、中でも流動パラフィンがより好ましい。
【0013】
本発明で用いる前記(A)成分の含有量は、好ましくは35~55質量%、より好ましくは40~50質量%がよい。前記(A)成分の含有量が35質量%未満の場合、うるおい感が得られない恐れがあり、55質量%を超えた場合、さっぱり感の点で劣る恐れがある。
【0014】
本発明による入浴剤組成物にはうるおい感の持続の観点から(B)常温でペースト状の半固形油を含有する。
【0015】
本発明に用いる前記(B)常温でペースト状の半固形油とは、融点30℃~60℃、好ましくは30℃~55℃の油剤を指す。
【0016】
本発明に用いる前記(B)常温でペースト状の半固形油としては特に限定されないが、例えば、ワセリン等の炭化水素系半固形油;シア脂、カカオ脂、パーム油、モクロウ等の半固形の植物油;ラノリン等の半固形の動物油;水添ヤシ油、水添パーム油等の水添植物油;ホホバエステル、(マカデミア種子油/水添マカデミア種子油)エステルズ、(ヒマワリ種子油/水添ヒマワリ種子油)エステルズ、(ユチャ種子油/水添ユチャ種子油)エステルズ等の植物油と水添植物油のエステル交換反応により調製されるエステル交換油;ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル等のジペンタエリトリット脂肪酸エステル;ステアリン酸硬化ヒマシ油、イソステアリン酸硬化ヒマシ油、ヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油等の硬化ヒマシ油脂肪酸エステル;ヒドロキシステアリン酸コレステリル等のコレステロール脂肪酸エステル;オレイン酸フィトステリル、マカデミアンナッツ油脂肪酸フィトステリル等のフィトステロール脂肪酸エステル;ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)等のエステル系半固形油;ヒドロキシアルキルダイマーリシノレイルエーテル等のエーテル系半固形油;ジメチコンクロスポリマー、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー等のシリコーン系半固形油等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種または2種以上を含有することができる。このうち、水分の閉塞性が高くうるおい感の持続の優れる観点から、ワセリンが好ましい。
【0017】
本発明で用いる前記(B)成分の含有量は、好ましくは1~5質量%、より好ましくは2~4質量%がよい。前記(B)成分の含有量が1質量%未満の場合、うるおい感の持続が得られない恐れがあり、5質量%を超えた場合、さっぱり感の点で劣る恐れがある。
【0018】
本発明による入浴剤組成物にはさっぱり感の観点から(C)陰イオン性界面活性剤を含有する。
【0019】
本発明に用いる前記(C)陰イオン性界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、セトステアリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和または不飽和脂肪酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、ココイルグルタミン酸トリエタノールアミン(ココイルグルタミン酸TEA)等のN-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノまたはジエステル型界面活性剤、およびスルホコハク酸エステル等が挙げられる。これらの界面活性剤の陰イオン基の対イオンとしては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、およびトリエタノールアミン等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種または2種以上を含有することができる。これらのうち、さっぱり感の観点から、アルキル硫酸塩が好ましく、セチル硫酸ナトリウムがより好ましい。
【0020】
本発明で用いる前記(C)成分の含有量は、好ましくは0.1~1質量%、より好ましくは0.3~0.8質量%がよい。前記(C)成分の含有量が0.1質量%未満の場合、さっぱり感が得られない恐れがあり、1%を超えた場合うるおい感の点で劣る恐れがある。
【0021】
本発明の入浴剤組成物は前記必須成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、通常の化粧料、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種成分、例えば、(C)以外の界面活性剤、(A)および(B)以外の油性成分、保湿剤、増粘剤、キレート剤、薬効成分、蛋白誘導体、加水分解蛋白、アミノ酸類、安定化剤、酸化防止剤、植物性抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、香料、防腐剤、色素、顔料、粉体、pH調整剤等から選ばれる少なくとも1種以上を含有することができる。ただし、これら例示に限定されるものでない。
【0022】
本発明の入浴剤組成物は、特に限定されないが、肌のうるおいの観点から浴湯中で乳化白濁することが好ましい。
【0023】
本発明の入浴剤組成物の粘度は、浴湯中で乳化白濁させる観点より、好ましくは1000mPa・s~10000mPa・s、より好ましくは2000mPa・s~6000mPa・sがよい。粘度が1000mPa・s未満の場合、入浴剤組成物の安定性を損ねる恐れがあり、10000mPa・sを超えた場合、浴湯中で入浴剤組成物が均一に溶解しない恐れがある。
【0024】
本発明による20℃条件下における粘度は、常法にて調製して得られた入浴剤組成物をサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、20℃条件下で24時間静置した後に、ヘリカルスタンド付B型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)により、M4号ローターを用いて12rpmで1分間回転させた後の測定値である。
【0025】
本発明の入浴剤組成物は、例えば、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状等の形態で用いられるものとすることができる。
【実施例
【0026】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0027】
本明細書に示す評価試験において、入浴剤組成物に含まれる成分、およびその含有量を種々変更しながら実施した。各成分の含有量を示す単位は全て質量%であり、これを常法にて調製した。
【0028】
実施例1~21、比較例1~4に示す成分組成の入浴剤組成物を調製し、得られた入浴剤組成物を40g/180リットルの割合で溶解した40℃のお湯をはった浴槽に10分間入浴させた後、下記効果を4段階にて評価した。評価は専門のパネラー20名が実施例および比較例の入浴剤組成物を使用し評価を行った。
【0029】
(うるおい感)
◎:16名以上が入浴後の肌のうるおい感が良好と評価した。
○:11名以上15名以下が入浴後の肌のうるおい感が良好と評価した。
△:6名以上10名以下が入浴後の肌のうるおい感が良好と評価した。
×:5名以下が入浴後の肌のうるおい感が良好と評価した。
【0030】
(うるおい感の持続)
◎:16名以上が入浴後の肌のうるおい感の持続が良好と評価した。
○:11名以上15名以下が入浴後の肌のうるおい感の持続が良好と評価した。
△:6名以上10名以下が入浴後の肌のうるおい感の持続が良好と評価した。
×:5名以下が入浴後の肌のうるおい感の持続が良好と評価した。
【0031】
(さっぱり感)
◎:16名以上が入浴後の肌のさっぱり感が良好と評価した。
○:11名以上15名以下が入浴後の肌のさっぱり感が良好と評価した。
△:6名以上10名以下が入浴後の肌のさっぱり感が良好と評価した。
×:5名以下が入浴後の肌のさっぱり感が良好と評価した。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
表1~表3に示す実施例1~21から、うるおい感、うるおい感の持続、さっぱり感について良好な結果を得ることが確認された。
【0036】
実施例22の入浴剤組成物を使用して各種試験を行っても、うるおい感、うるおい感の持続、さっぱり感に関して良好な結果が得られた。
【0037】
(実施例22)
成 分 含有量(質量%)
(A)流動パラフィン 44.20
(B)ワセリン 3.00
(B)ジリノール酸ジ(フィトステリル/イソステアリル/
セチル/ステアリル/ベヘニル) 0.20
(C)セチル硫酸ナトリウム 0.50
香料 6.00
セチルアルコール 0.10
サラシミツロウ 0.50
親油型モノステアリン酸グリセリル 1.30
ポリオキシエチレンセチルエーテル(6E.O) 5.00
パラオキシ安息香酸ブチル 0.10
安息香酸ナトリウム 0.05
プロピレングリコール 2.00
パラオキシ安息香酸メチル 0.20
精製水 36.85
合計 100.00
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、入浴後の肌にうるおい感を与え、うるおい感の持続があり、さらに入浴後のさっぱり感も損なわない入浴剤組成物を提供することができる。