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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】シフトレバー装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 20/02 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
B60K20/02 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020024901
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021130314
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】591185423
【氏名又は名称】千代田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】鏡田 伸行
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-280349(JP,A)
【文献】特開2002-264679(JP,A)
【文献】特表2006-526739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に対してPレンジからDレンジへ揺動可能なシフトレバーと、
プッシュプルケーブルに連結され、前記筐体に対して揺動可能な揺動部材と、
前記シフトレバーと前記揺動部材とに回動可能に連結される連結部材と、
前記シフトレバーがPレンジからRレンジまでの範囲で揺動する際に、前記連結部材の前記揺動部材に対する回動を規制する規制部材と、
前記シフトレバーがRレンジからDレンジに向けて揺動する際に、前記揺動部材の前記筐体に対する揺動をロックするロック部材であって、前記揺動部材を前記筐体に対してロックするロック位置と、前記揺動部材のロックを解除する非ロック位置とに移動可能なロック部材と、
前記ロック部材を前記ロック位置に向けて付勢する付勢部材と、を備え、
前記シフトレバーがPレンジからRレンジまでの範囲で揺動する場合には、前記連結部材の前記揺動部材に対する回動が前記規制部材で規制されることで、前記シフトレバーと前記揺動部材が一体に揺動し、
前記シフトレバーがRレンジからDレンジに向けて揺動する場合には、前記連結部材が前記規制部材から外れることで前記シフトレバーが前記揺動部材に対して揺動することを特徴とするシフトレバー装置。
【請求項2】
前記筐体は、前記シフトレバーおよび前記揺動部材を揺動可能に支持するベース部材を有し、
前記規制部材は、前記ベース部材に一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシフトレバー装置。
【請求項3】
前記シフトレバーの揺動中心と、前記揺動部材の揺動中心が同じであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシフトレバー装置。
【請求項4】
前記規制部材は、前記揺動中心を中心とする円に沿った曲面を有し、
前記連結部材は、
前記揺動部材に所定の回動軸を中心に回動可能に支持され、
前記回動軸とは異なる位置に設けられる突起であって、前記シフトレバーがPレンジからRレンジまでの範囲で揺動する際に前記曲面に沿って摺動する突起を有することを特徴とする請求項3に記載のシフトレバー装置。
【請求項5】
前記シフトレバーは、前記シフトレバーのPレンジからRレンジへの揺動の規制および規制の解除を行うための規制ピンであって、前記シフトレバーの軸方向に移動可能な規制ピンを備え、
前記連結部材は、前記規制ピンと係合する係合長孔を有し、前記規制ピンを介して前記シフトレバーに連結されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のシフトレバー装置。
【請求項6】
前記筐体は、前記ロック部材が係合する係合部を有し、
前記ロック部材は、前記揺動部材に移動可能に設けられ、前記ロック位置において前記係合部に係合することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のシフトレバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフトレバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シフトレバー装置として、シフトレバーと自動変速機をプッシュプルケーブルで連結し、シフトレバーの揺動によりプッシュプルケーブルを押し引きすることで、自動変速機のギヤを切り替えるものが知られている(特許文献1参照)。具体的に、この技術では、PレンジからDレンジまでプッシュプルケーブルによる機械的なギヤの切替が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-6957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、商用車などの分野では、シフトレバー装置として、PレンジからRレンジまでの範囲ではプッシュプルケーブルによる変速機のロック・解除を行い、PレンジからDレンジまでの範囲では、シフトレバーの位置を検出するセンサからの信号に基づく制御によってギヤの切替を行うものがある。このような構造では、Rレンジにおいてプッシュプルケーブルとシフトレバーの連結・切り離しを行う必要があるが、このような機能を達成するには構造が複雑化し、コストが高くなるという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、Rレンジにおいてプッシュプルケーブルとシフトレバーの連結・切り離しを行うための構造を、低コストで実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係るシフトレバー装置は、筐体と、前記筐体に対してPレンジからDレンジへ揺動可能なシフトレバーと、プッシュプルケーブルに連結され、前記筐体に対して揺動可能な揺動部材と、前記シフトレバーと前記揺動部材とに回動可能に連結される連結部材と、前記シフトレバーがPレンジからRレンジまでの範囲で揺動する際に、前記連結部材の前記揺動部材に対する回動を規制する規制部材と、前記シフトレバーがRレンジからDレンジに向けて揺動する際に、前記揺動部材の前記筐体に対する揺動をロックするロック部材であって、前記揺動部材を前記筐体に対してロックするロック位置と、前記揺動部材のロックを解除する非ロック位置とに移動可能なロック部材と、前記ロック部材を前記ロック位置に向けて付勢する付勢部材と、を備える。
前記シフトレバーがPレンジからRレンジまでの範囲で揺動する場合には、前記連結部材の前記揺動部材に対する回動が前記規制部材で規制されることで、前記シフトレバーと前記揺動部材が一体に揺動し、前記シフトレバーがRレンジからDレンジに向けて揺動する場合には、前記連結部材が前記規制部材から外れることで前記シフトレバーが前記揺動部材に対して揺動する。
【0007】
この構成によれば、Rレンジにおいてプッシュプルケーブルとシフトレバーの連結・切り離しを行うための構造を、比較的簡易な構造とすることができるので、低コスト化を図ることができる。
【0008】
また、前記筐体は、前記シフトレバーおよび前記揺動部材を揺動可能に支持するベース部材を有し、前記規制部材は、前記ベース部材に一体に形成されていてもよい。
【0009】
これによれば、例えば規制部材がベース部材とは別部材となる形態と比べ、構造をより簡易化することができる。
【0010】
また、前記シフトレバーの揺動中心と、前記揺動部材の揺動中心は、同じであってもよい。
【0011】
また、前記規制部材は、前記揺動中心を中心とする円に沿った曲面を有し、前記連結部材は、前記揺動部材に所定の回動軸を中心に回動可能に支持され、前記回動軸とは異なる位置に設けられる突起であって、前記シフトレバーがPレンジからRレンジまでの範囲で揺動する際に前記曲面に沿って摺動する突起を有していてもよい。
【0012】
また、前記シフトレバーは、前記シフトレバーのPレンジからRレンジへの揺動の規制および規制の解除を行うための規制ピンであって、前記シフトレバーの軸方向に移動可能な規制ピンを備え、前記連結部材は、前記規制ピンと係合する係合長孔を有し、前記規制ピンを介して前記シフトレバーに連結されていてもよい。
【0013】
これによれば、シフトレバーのPレンジからRレンジへの揺動の規制・解除を行うための規制ピンを利用して、連結部材をシフトレバーに連結させることができるので、例えば規制ピンとは別の部分でシフトレバーと連結部材を連結させる構造と比べ、構造をより簡易化することができる。
【0014】
また、前記筐体は、前記ロック部材が係合する係合部を有し、前記ロック部材は、前記揺動部材に移動可能に設けられ、前記ロック位置において前記係合部に係合してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、Rレンジにおいてプッシュプルケーブルとシフトレバーの連結・切り離しを行うための構造を、低コストで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るシフトレバー装置を示す斜視図である。
図2】シフトレバーがRレンジに位置した状態を示す斜視図(a)と、シフトレバーがDレンジに位置した状態を示す斜視図(b)である。
図3】シフトレバー装置を分解して示す斜視図である。
図4】シフトレバーがP,R,Dレンジに位置したときのシフトレバー、揺動部材および連結部材の関係を示す側面図(a)~(c)である。
図5】シフトレバーがP,R,Dレンジに位置したときのシフトレバー、揺動部材およびロック部材の関係を、シフトレバーの軸方向から見た図(a)~(c)である。
図6】第1変形例に係るロック部材周りの構造を示す分解斜視図である。
図7】シフトレバーがP,R,Dレンジに位置したときのロック部材の状態を示す側面図(a)~(c)である。
図8】第2変形例に係るロック部材周りの構造を示す分解斜視図である。
図9】ロック部材とシフトレバーの関係を示す断面図である。
図10】シフトレバーがP,R,Dレンジに位置したときのロック部材の状態を示す斜視図(a)~(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、シフトレバー装置1は、筐体10と、シフトレバー20と、揺動部材30と、ロック部材40とを主に備えている。なお、以下の説明において、前後、左右、上下は、シフトレバー20を操作する運転者を基準とする。
【0018】
筐体10は、車体に固定され、車体に対する位置が変わらない部材である。筐体10は、シフトレバー20および揺動部材30を揺動可能に支持するベース部材11を備えている。なお、図示は省略するが、筐体10は、ベース部材11に固定される部材、例えばシフトゲートを有するカバー部材なども備えている。
【0019】
シフトレバー20は、ベース部材11に対して前後方向に揺動可能となっている。詳しくは、シフトレバー20は、図1に示すPレンジから、図2(a)に示すRレンジと図示せぬNレンジを経て、図2(b)に示すDレンジまで前後方向に揺動可能となっている。
【0020】
揺動部材30は、図示せぬ変速機に連結されるプッシュプルケーブルPCを押し引きするための部材であり、プッシュプルケーブルPCに連結され、ベース部材11に対して前後方向に揺動可能となっている。揺動部材30は、シフトレバー20がPレンジからRレンジまでの範囲で揺動する場合には、シフトレバー20と一体に揺動可能となっている。また、シフトレバー20は、RレンジからDレンジまでの範囲で揺動する場合には、揺動部材30から切り離され、揺動部材30に対して揺動可能となっている。なお、シフトレバー20を揺動部材30から切り離す構造は、後で詳述する。
【0021】
シフトレバー装置1は、シフトレバー20がPレンジからRレンジまでの範囲で揺動する場合には、揺動部材30の揺動によりプッシュプルケーブルPCを介して変速機のロック機構を機械的に作動させている。また、シフトレバー装置1は、シフトレバー20がPレンジからDレンジまでの範囲で揺動する場合には、図示せぬポジションセンサによってシフトレバー20の位置を検出することで、図示せぬ制御部を介して変速機を作動させている。
【0022】
図3に示すように、シフトレバー装置1は、シフトレバー20と揺動部材30とに回動可能に連結される連結部材50と、シフトレバー20および揺動部材30を揺動可能に支持するシャフトSFと、シフトレバー20の位置を各レンジで保持するためのディテント部材DTとをさらに備えている。
【0023】
ベース部材11は、金属などからなり、シフトレバー20の左右に配置される左右の側壁11A,11Bと、左右の側壁11A,11Bの下端を連結する底壁11Cとを有している。左右の側壁11A,11Bは、シフトレバー20および揺動部材30の共通の揺動中心となるシャフトSFを支持する孔H1をそれぞれ有している。
【0024】
シフトレバー20は、レバー本体21と、摺動ピン22と、規制ピン23と、ディテントプランジャ24と、コイルバネSP1,SP2とを備えている。
【0025】
レバー本体21は、円筒状のパイプ21Aと、パイプ21Aを支持するパイプ支持部材21Bとを有している。パイプ21Aは、金属などからなっている。パイプ支持部材21Bは、樹脂などからなり、矩形の筒状の筒状部21Cと、筒状部21Cから後方に延びる延出部21Dとを有している。パイプ21Aは、筒状部21C内に挿入されている。
【0026】
筒状部21Cは、左右の側壁に、シフトレバー20の軸方向に長い長孔H2を有している。また、筒状部21C内に配置されるパイプ21Aにも、左右の長孔H2に対応した位置に、軸方向に長い長孔が形成されている。筒状部21Cの下端部は、シャフトSFに回動可能に支持されている。
【0027】
延出部21Dは、ディテントプランジャ24を移動可能に支持する筒状の部位を有している。詳しくは、延出部21Dの筒状の部位内には、コイルバネSP1と、ディテントプランジャ24の一部が収容されている。ディテントプランジャ24は、コイルバネSP1によってディテント部材DTに付勢されている。
【0028】
ディテント部材DTは、ディテントプランジャ24と係合する波型の底面を有するディテント溝DT1を有している。ディテント部材DTは、ベース部材11に固定されている。
【0029】
摺動ピン22とコイルバネSP2は、パイプ21A内に収容されている。パイプ21Aの上端には、シフトノブSK(図4(a)参照)が設けられている。摺動ピン22は、パイプ21Aによって軸方向に移動可能に支持され、コイルバネSP2によってシフトノブSKに向けて付勢されている。シフトノブSKには、運転者によって操作される操作子SK1が設けられ、操作子SK1の操作によって、摺動ピン22がコイルバネSP2の付勢力に抗して下方に移動するようになっている。摺動ピン22には、規制ピン23が通る孔H3が形成されている。
【0030】
規制ピン23は、摺動ピン22の孔H3に取り付けられ、摺動ピン22とともにシフトレバー20の軸方向に移動可能となっている。規制ピン23は、パイプ21Aの図示せぬ長孔と筒状部21Cの長孔H2を通って筒状部21Cから突出し、ベース部材11の左の側壁11Aに形成された規制孔H4に係合している。
【0031】
規制孔H4は、シフトレバー20の揺動中心となる孔H1を中心とした円弧状に延び、シフトレバー20の各レンジに対応した位置で孔H1の径方向外側に向けて延びるように形成されている。規制孔H4は、シフトレバー20の揺動方向において規制ピン23と係合する第1規制面H41、第2規制面H42および第3規制面H43を有している。
【0032】
シフトレバー20がPレンジに位置するときには、規制ピン23が第1規制面H41と係合することで、シフトレバー20のPレンジからRレンジへの揺動が規制される。シフトレバー20がRレンジに位置するときには、規制ピン23が第2規制面H42と係合することで、シフトレバー20のRレンジからPレンジへの揺動が規制される。シフトレバー20がNレンジに位置するときには、規制ピン23が第3規制面H43と係合することで、シフトレバー20のNレンジからRレンジへの揺動が規制される。そして、シフトレバー20の揺動の規制は、シフトノブSKの操作子SK1の操作によって規制ピン23を規制面H41~H43から外すことで解除される。
【0033】
揺動部材30は、金属などからなり、左右の側壁31,32と、各側壁31,32の前端同士を連結する前壁33と、前壁33から前方および上方に膨出する膨出部34と、膨出部34から前方に突出する取付部35とを有している。左右の側壁31,32の下端部は、シャフトSFが通る孔H5を有しており、シャフトSFによって回動可能に支持されている。左右の側壁31,32の間には、シフトレバー20の筒状部21Cが配置されている。
【0034】
左の側壁31の上端には、連結部材50を回動可能に支持する第1支持軸31Aが設けられている。第1支持軸31Aは、側壁31の左右方向外側の側面から突出している。
【0035】
膨出部34の上面には、ロック部材40を回動可能に支持する第2支持軸34Aが設けられている。膨出部34の上面には、付勢部材の一例としてのトーションバネSP3が組み付けられている。取付部35には、プッシュプルケーブルPCを取り付けるための取付孔H6が形成されている。
【0036】
連結部材50は、樹脂などからなり、シフトレバー20の軸方向に延びる基部51と、基部51の左右方向外側の側面から突出する突起52およびリブ53とを有している。基部51は、下端部の後端に揺動部材30の第1支持軸31Aが通る孔H9を有しており、第1支持軸31Aによって回動可能に支持されている。
【0037】
基部51は、規制ピン23と係合する係合長孔H10とを有しており、規制ピン23を介してシフトレバー20に連結されている。係合長孔H10は、シフトレバー20の軸方向に長い長孔であり、孔H9よりも上に配置されている。係合長孔H10は、シフトレバー20がPレンジからRレンジまでの範囲に位置するときに、規制ピン23の軸方向から見て筒状部21Cの長孔H2と重なっている(図4(a)参照)。
【0038】
突起52は、円柱状の突起であり、孔H9(基部51の回動軸)とは異なる位置に配置されている。詳しくは、突起52は、基部51の下端部の前端に配置されている。リブ53は、突起52を補強するためのリブであり、突起52から孔H9に向けて基部51の下端に沿って延び、孔H9を下から囲うように孔H9の周囲に沿って延びている。突起52は、リブ53よりも上方に突出している。
【0039】
ベース部材11の左の側壁11Aには、規制部材の一例としての規制部11Dが一体に形成されている。規制部11Dは、シフトレバー20がPレンジからRレンジまでの範囲で揺動する際に、連結部材50の揺動部材30に対する回動を規制する部位である。
【0040】
規制部11Dは、側壁11Aの左右方向内側の面から突出している。図4(a)に示すように、規制部11Dは、シフトレバー20の揺動中心を中心とする円に沿った曲面F1を有している。曲面F1は、規制部11Dの下面を構成している。
【0041】
連結部材50の突起52は、図4(a),(b)に示すように、シフトレバー20がPレンジからRレンジまでの範囲で揺動する際に、規制部11Dの曲面F1に沿って摺動するようになっている。このように突起52が曲面F1と係合することで、PレンジからRレンジの範囲において、連結部材50の揺動部材30に対する回動が規制されている。そして、このように連結部材50の揺動部材30に対する回動が規制されることで、PレンジからRレンジの範囲において、シフトレバー20と揺動部材30が一体に揺動可能となっている。
【0042】
また、突起52は、図4(b),(c)に示すように、シフトレバー20がRレンジからDレンジに向けて揺動する際に、曲面F1から外れるようになっている。このように突起52が曲面F1から外れることで、連結部材50の揺動部材30に対する回動の規制が解除されて、シフトレバー20が揺動部材30に対して揺動可能となっている。
【0043】
図3に示すように、ロック部材40は、シフトレバー20がRレンジからDレンジに向けて揺動する際に、揺動部材30のベース部材11に対する揺動をロックする部材である。ロック部材40は、揺動部材30の第2支持軸34Aが通る孔H7を有しており、第2支持軸34Aを中心にして揺動部材30に回動可能に支持されている。
【0044】
ロック部材40は、当該ロック部材40の回動中心からベース部材11の右の側壁11Bに向けて延びる第1アーム部41と、回動中心からシフトレバー20の筒状部21Cに向けて延びる第2アーム部42とを有している。
【0045】
第1アーム部41の先端には、側壁11Bに形成された係合部の一例としての係止孔H8に係合可能なロック爪41Aが形成されている。第2アーム部42の先端は、筒状部21Cの前面に接触可能な接触部42Aとなっている。
【0046】
トーションバネSP3は、ロック部材40と揺動部材30の間に配置されている。トーションバネSP3は、ロック部材40を側壁11B(詳しくは、後述するロック位置)に向けて付勢している。
【0047】
図5に示すように、ロック部材40は、揺動部材30をベース部材11に対してロックするロック位置(図5(c)の位置)と、揺動部材30のロックを解除する非ロック位置(図5(a),(b)の位置)とに回動可能となっている。ロック部材40がロック位置に位置するときに、ロック爪41Aが係止孔H8に係合し、ロック部材40が非ロック位置に位置するときに、ロック爪41Aが係止孔H8から外れるようになっている。
【0048】
シフトレバー20は、PレンジからRレンジまでの範囲で揺動するとき、つまり揺動部材30と一体に揺動するときには、図5(a),(b)に示すように、筒状部21Cの前面でロック部材40の接触部42Aを支持することで、トーションバネSP3を変形させた状態でロック部材40を非ロック位置に保持している。また、シフトレバー20は、RレンジからDレンジに向けて揺動する際、つまり揺動部材30から切り離される際には、図5(c)に示すように、接触部42Aから離れることで、ロック部材40をトーションバネSP3の付勢力によって非ロック位置からロック位置に向けて回動させる。
【0049】
次に、シフトレバー20を操作したときの各部材の動きについて詳細に説明する。
図4(a)に示すように、Pレンジに位置するシフトレバー20をRレンジへ揺動させる場合には、運転者は、まず、シフトノブSKの操作子SK1を押す。これにより、規制ピン23が、連結部材50の係合長孔H10等に沿って下方に移動して、シフトレバー20の揺動の規制が解除される。
【0050】
その後、運転者がシフトレバー20を図4(b)に示すRレンジに向けて揺動させると、連結部材50の揺動部材30に対する回動が規制部11Dによって規制されることで、シフトレバー20と揺動部材30が一体に揺動する。これにより、変速機がプッシュプルケーブルPCを介して機械的に作動する。
【0051】
その後、運転者がシフトレバー20を図4(c)に示すDレンジに向けて揺動させると、連結部材50の突起52が規制部11Dから外れることで、揺動部材30からシフトレバー20が切り離されて、シフトレバー20が揺動部材30に対して揺動する。これにより、プッシュプルケーブルPCを動かすことなく、シフトレバー20のみを揺動させることができ、図示せぬポジションセンサを利用して変速機を作動させることができる。
【0052】
揺動部材30に対してシフトレバー20が揺動すると、図5(c)に示すように、ロック部材40の接触部42Aからシフトレバー20が離れることで、ロック部材40が、トーションバネSP3の付勢力によって非ロック位置からロック位置に回動する。つまり、ロック部材40は、シフトレバー20がRレンジから僅かに後方に揺動すると、ロック位置に回動する。これにより、揺動部材30の位置が、シフトレバー20がRレンジに対応したR対応位置にロックされる。そのため、揺動部材30が、Dレンジに向けて揺動するシフトレバー20に引っ張られて揺動することが抑制される。
【0053】
なお、RレンジからDレンジまでの範囲において、運転者がシフトノブSKの操作子SK1の操作・解除を行うことで規制ピン23が上下動しても、連結部材50が揺動部材30に対して回動することで、規制ピン23の上下動は許容される。
【0054】
運転者がシフトレバー20の位置をDレンジからRレンジに戻すと、図5(b)に示すように、シフトレバー20によってロック部材40の接触部42AがトーションバネSP3の付勢力に抗して押されることで、ロック部材40がロック位置から非ロック位置に回動する。これにより、揺動部材30のベース部材11に対するロックが解除される。
【0055】
また、この際、図4(b)に示すように、連結部材50の突起52が、規制部11Dに再び係合する。これにより、シフトレバー20と揺動部材30が、PレンジからRレンジの範囲において、再び一体に揺動可能となる。
【0056】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
RレンジにおいてプッシュプルケーブルPCとシフトレバー20の連結・切り離しを行うための構造を、比較的簡易な構造とすることができるので、低コスト化を図ることができる。
【0057】
規制部材としての規制部11Dをベース部材11に一体に形成したので、例えば規制部材がベース部材とは別部材となる形態と比べ、構造をより簡易化することができる。
【0058】
シフトレバー20の揺動の規制・解除を行うための規制ピン23を利用して、連結部材50をシフトレバー20に連結したので、例えば規制ピンとは別の部分でシフトレバーと連結部材を連結させる構造と比べ、構造をより簡易化することができる。
【0059】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。以下の説明においては、前記実施形態と略同様の構造となる部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0060】
前記実施形態では、ロック部材として、回動するロック部材40を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。ロック部材は、例えば、図6に示すように、略上下方向に移動するロック部材60であってもよい。
【0061】
具体的に、この形態では、揺動部材30の上面に、円筒状のボス36が形成されている。ロック部材60は、円筒状のピンであり、ボス36によってボス36の軸方向に移動可能に支持されている。ボス36内には、付勢部材としてのコイルバネSP4が収容されている。コイルバネSP4は、ロック部材60を、筐体10を構成するカバー部材12に向けて付勢している。
【0062】
カバー部材12は、シフトレバー20を案内するシフトゲート12Aを有しており、前述したベース部材11に固定されている。図7(a)に示すように、カバー部材12は、係合部としての係合凹部12Bを有している。
【0063】
係合凹部12Bは、カバー部材12の下面に設けられている。ロック部材60は、係合凹部12Bに係合するロック位置(図7(b)の位置)と、係合凹部12Bから外れた非ロック位置(図7(a)の位置)との間を移動可能となっている。
【0064】
係合凹部12Bの前側の面は、シフトレバーがRレンジからPレンジに向けて揺動する際に、コイルバネSP4の付勢力に抗してロック部材60をロック位置から非ロック位置に移動させる第1カム面F2となっている。また、カバー部材12は、ロック部材60を非ロック位置で保持する保持面F3を有し、保持面F3は、第1カム面F2に繋がっている。
【0065】
シフトレバー20がRレンジに位置するときにロック部材60が係合凹部12Bに係合するように、係合凹部12B等の位置が決められている。以上、図7の形態でも、前記実施形態と同様に、ロック部材60によって揺動部材30の揺動をロックすることができる。
【0066】
また、ロック部材は、例えば、図8に示すように、左右方向(揺動部材30の揺動軸に沿った方向)に移動するロック部材70であってもよい。具体的に、この形態では、揺動部材30の上部に、ロック部材70を移動可能に支持するガイド部37が設けられている。
【0067】
ロック部材70は、左右方向に長い矩形の基部71と、基部71から左に突出する係合突起72と、基部71から右に延びる延出軸73と、基部71から上および下に突出する一対の抜け止め部74とを有している。基部71には、矩形の四角孔H11が形成されている。係合突起72は、ベース部材11の左の側壁11Aに形成された係止孔H13と係合可能となっている。延出軸73は、ベース部材11の右の側壁11Aに形成されたガイド孔H14に移動可能に支持されている。
【0068】
ロック部材70は、係合突起72が係止孔H13と係合するロック位置(図10(c)参照)と、係合突起72が係止孔H13から外れた非ロック位置(図10(a),(b)参照)との間で移動可能となっている。
【0069】
ガイド部37は、ロック部材70を前後方向で挟む後壁37Aおよび前壁37Bと、後壁37Aおよび前壁37Bの下端同士を連結する下壁37Cと、後壁37Aおよび前壁37Bの上端の左側部分同士を連結する上壁37Dと、後壁37Aおよび前壁37Bの右端同士を連結する右壁37Eと有している。
【0070】
後壁37Aには、矩形の孔H12が形成されている。前壁37Bと下壁37Cには、切欠きC1が前壁37Bと下壁37Cとに跨るように形成されている。上壁37Dは、切欠きC1の左に配置されている。
【0071】
ロック部材70の下側の抜け止め部74は、下壁37Cの切欠きC1内に配置されている。これにより、ロック部材70が左へ移動したときに、一対の抜け止め部74が上壁37Dおよび下壁37Cに当接することで、ロック部材70の左への移動が規制される。また、ロック部材70が右へ移動したときに、下側の抜け止め部74が下壁37Cに当接することで、ロック部材70の右への移動が規制される。
【0072】
右壁37Eには、ロック部材70の延出軸73が通るスリットSLが形成されている。右壁37Eとロック部材70の基部71との間には、付勢部材としてのコイルバネSP5が設けられている(図9参照)。コイルバネSP5は、ロック部材70をロック位置に向けて付勢している。
【0073】
シフトレバー20は、筒状部21Cから前方に突出する突出部21Eを有している。突出部21Eの先端は、シフトレバー20をDレンジからRレンジに向けて揺動する際に、ロック部材70をロック位置から非ロック位置に向けて移動させる第2カム面F4を有している。
【0074】
図9に示すように、突出部21Eは、ガイド部37の孔H12とロック部材70の四角孔H11とに入ることが可能となっている。第2カム面F4は、ロック部材70の四角孔H11の縁と係合することで、ロック部材70をコイルバネSP5の付勢力に抗して非ロック位置に向けて押圧可能となっている。
【0075】
この形態では、図10(b),(c)に示すように、Rレンジにおいて揺動部材30から切り離されたシフトレバー20をDレンジに向けて揺動させると、突出部21Eがロック部材70の四角孔H11(図9参照)から外れることで、コイルバネSP5の付勢力によってロック部材70が非ロック位置からロック位置に移動する。また、シフトレバー20をDレンジからRレンジに戻すと、突出部21Eがロック部材70の四角孔H11の縁を押圧することで、ロック部材70がコイルバネSP5の付勢力に抗してロック位置から非ロック位置に移動する。以上、図10の形態でも、前記実施形態と同様に、ロック部材60によって揺動部材30の揺動をロックすることができる。
【0076】
前記実施形態では、突起52を円柱状としたが、本発明はこれに限定されず、突起は、規制部との接触部位が円弧状であれば、どのような形状であってもよい。
【0077】
前記実施形態では、突起52に接続されるリブ53を設けたが、本発明はこれに限定されず、リブ53はなくてもよい。
【0078】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 シフトレバー装置
10 筐体
11D 規制部
20 シフトレバー
30 揺動部材
40 ロック部材
50 連結部材
PC プッシュプルケーブル
SP3 トーションバネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10