(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】測位システム、移動体、速度推定システム、測位方法、および速度推定方法
(51)【国際特許分類】
G01C 21/12 20060101AFI20231003BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
G01C21/12
G08G1/00 A
(21)【出願番号】P 2022519864
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(86)【国際出願番号】 JP2020018575
(87)【国際公開番号】W WO2021224970
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】515019537
【氏名又は名称】株式会社ナイルワークス
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139778
【氏名又は名称】栗原 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】末永 知宏
(72)【発明者】
【氏名】和氣 千大
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏記
【審査官】秋山 誠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/72988(WO,A1)
【文献】特開2019-184566(JP,A)
【文献】特開2008-128793(JP,A)
【文献】特開2010-60489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/12
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の座標を測位する測位システムであって、
互いに異なる少なくとも2個の基準点をそれぞれ基準として、前記移動体の位置を示す第1座標値および第2座標値を定期的に算出する座標取得部と、
前記座標取得部により前回以前に算出された少なくとも前記第1座標値の履歴値を記憶する座標記憶部と、
前記第1座標値と前記第1座標値の履歴値との差分を計算する比較部と、
前記差分が所定値を超える場合に、前記第2座標値を前記移動体の測位座標として確定する座標確定部と、
を備える、
測位システム。
【請求項2】
前記座標確定部は、前記差分が前記所定値以下であるとき、前記第1座標値を、前記移動体の測位座標として確定する、
請求項1記載の測位システム。
【請求項3】
前記座標取得部が算出の基準とする前記基準点を決定する基準点決定部をさらに備え、
前記基準点決定部は、単独測位で求めた前記移動体の座標に最も近い基準点を、前記算出の基準に決定する、
請求項1又は2記載の測位システム。
【請求項4】
第1の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第1速度を生成し、第2の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第2速度を生成する速度計測部と、 前記第1速度と前記第1速度の履歴値との差分が所定値を超える場合に、前記第2速度を前記移動体の速度として確定する速度確定部と、をさらに備える
請求項1乃至3のいずれかに記載の測位システム。
【請求項5】
衛星信号を受信する第1のアンテナと第2のアンテナを備え、
前記第1のアンテナが受信する前記衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第1速度を生成し、前記第2のアンテナが受信する前記衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第2速度を生成する速度計測部と、
前記第1速度と前記第1速度の履歴値との差分が所定値を超える場合に、前記第2速度を前記移動体の速度として確定する速度確定部と、をさらに備える
請求項1乃至3のいずれかに記載の測位システム。
【請求項6】
移動体の座標を測位する測位システムであって、
互いに異なる少なくとも2個の基準点をそれぞれ基準として、前記移動体の位置を示す第1座標値および第2座標値を定期的に算出する座標取得部と、
前記移動体の加速度に基づいて前記移動体の座標値を推定する座標推定部と、
前記第1座標値と前記第2座標値との差分を計算する比較部と、
前記差分が所定値を超える場合に、前記加速度に基づいて推定される座標値を移動体の測位座標として確定する座標確定部と、
を備える、
測位システム。
【請求項7】
第1の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第1速度を生成し、第2の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第2速度を生成する速度計測部と、
前記第1速度と前記第2速度の差分が所定値を超える場合に、前記加速度に基づいて推定される速度を前記移動体の速度として確定する速度確定部と、をさらに備える、
請求項6記載の測位システム。
【請求項8】
衛星信号を受信する第1のアンテナと第2のアンテナを備え、
前記第1のアンテナが受信する前記衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第1速度を生成し、前記第2のアンテナが受信する前記衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第2速度を生成する速度計測部と、
前記第1速度と前記第2速度の差分が所定値を超える場合に、前記第2速度を前記移動体の速度として確定する速度確定部と、を備える
請求項6又は7に記載の測位システム。
【請求項9】
移動中の位置座標を測位する測位システムを有する移動体であって、
前記測位システムは請求項1乃至8のいずれかに記載の測位システムである、
移動体。
【請求項10】
移動体の移動速度を推定する速度推定システムであって、
第1の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第1速度を定期的に生成し、第2の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第2速度を定期的に生成する速度計測部と、
前記速度計測部により前回以前に算出された前記第1速度の履歴値を記憶する速度記憶部と、
前記第1速度と前記第1速度の履歴値との差分を計算する比較部と、
前記差分が所定値を超える場合に、前記第2速度を前記移動体の速度として確定する速度確定部と、
を備える、
速度推定システム。
【請求項11】
衛星信号を受信する第1のアンテナと第2のアンテナを備え、
前記第1のアンテナが受信する前記衛星信号に基づいて移動体の速度を示す第1速度を生成し、前記第2のアンテナが受信する前記衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第2速度を生成する速度計測部と、
前記速度計測部により前回以前に算出された前記第1速度の履歴値を記憶する速度記憶部と、
前記第1速度と前記第1速度の履歴値との差分を計算する比較部と、
前記差分が所定値を超える場合に、前記第2速度を前記移動体の速度として確定する速度確定部と、
を備える、
速度推定システム。
【請求項12】
移動体の移動速度を推定する速度推定システムであって、
第1の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第1速度を定期的に生成し、第2の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第2速度を定期的に生成する速度計測部と、
前記移動体の加速度に基づいて前記移動体の速度を推定する速度推定部と、
前記第1速度と前記第2速度との差分を計算する比較部と、
前記差分が所定値を超える場合に、前記加速度に基づいて推定される速度を前記移動体の速度として確定する速度確定部と、
を備える、
速度推定システム。
【請求項13】
衛星信号を受信する第1のアンテナと第2のアンテナを備え、
前記第1のアンテナが受信する前記衛星信号に基づいて移動体の速度を示す第1速度を生成し、前記第2のアンテナが受信する前記衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第2速度を生成する速度計測部と、
前記移動体の加速度に基づいて前記移動体の速度を推定する速度推定部と、
前記第1速度と前記第2速度との差分を計算する比較部と、
前記差分が所定値を超える場合に、前記加速度に基づいて推定される速度を前記移動体の速度として確定する速度確定部と、
を備える、
速度推定システム。
【請求項14】
移動体の座標を測位する測位方法であって、
互いに異なる少なくとも2個の基準点をそれぞれ基準として、前記移動体の位置を示す第1座標値および第2座標値を算出する座標取得ステップと、
前記第1座標値と前記第2座標値との差分を計算する比較ステップと、 前記差分が所定値以下である場合に、前記第1座標値を、前記移動体の測位座標として確定する、座標確定ステップと、
を含む、
測位方法。
【請求項15】
移動体の座標を測位する測位方法であって、
互いに異なる少なくとも2個の基準点をそれぞれ基準として、前記移動体の位置を示す第1座標値および第2座標値を定期的に算出する座標取得ステップと、
前記移動体の加速度に基づいて前記移動体の座標値を推定する座標推定ステップと、
前記第1座標値と前記第2座標値との差分を計算する比較ステップと、
前記差分が所定値を超える場合に、前記加速度に基づいて推定される座標値を前記移動体の測位座標として確定する座標確定ステップと、
を含む、
測位方法。
【請求項16】
移動体の移動速度を推定する速度推定方法であって、
第1の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第1速度を定期的に生成し、第2の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第2速度を定期的に生成する速度計測ステップと、
前記速度計測ステップにより前回以前に算出された前記第1速度の履歴値を記憶する速度記憶ステップと、
前記第1速度と前記第1速度の履歴値との差分を計算する比較ステップと、
前記差分が所定値を超える場合に、前記第2速度を前記移動体の速度として確定する速度確定ステップと、
を含む、
速度推定方法。
【請求項17】
移動体の移動速度を推定する速度推定方法であって、
第1の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第1速度を定期的に生成し、第2の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第2速度を定期的に生成する速度計測ステップと、
前記移動体の加速度に基づいて前記移動体の速度を推定する速度推定ステップと、
前記第1速度と前記第2速度との差分を計算する比較ステップと、
前記差分が所定値を超える場合に、前記加速度に基づいて推定される速度を前記移動体の速度として確定する速度確定ステップと、
を含む、
速度推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、測位システム、移動体、速度推定システム、測位方法、および速度推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にドローンと呼ばれる小型ヘリコプター(マルチコプター)の応用が進んでいる。その重要な応用分野の一つとして農地(圃場)への農薬や液肥などの散布が挙げられる(たとえば、特許文献1)。比較的狭い農地においては、有人の飛行機やヘリコプタではなくドローンの使用が適しているケースが多い。
【0003】
ドローンを使用して、圃場への散布作業を行う場合、電子基準点の座標を用いて基地局の座標値を測位し、当該基地局との相対測位によりドローンの位置を特定する。ここで、基地局の座標値を正確に測位するシステムが必要とされている。
【0004】
例えば、特許文献2には、GPS測位装置の位置情報と慣性測位装置の位置情報との偏差を求め、時系列偏差が設定値よりも大きい場合に異常と判定するハイブリッド型測位装置が開示されている。特許文献3には、複数の測位結果データについて、所定の閾値との比較に応じて、一の測位結果データを選択する測位装置が開示されている。特許文献4には、測位結果の差分と閾値との比較により、測位精度を判定すること、および衛星測位と慣性センサによる測位とを組み合わせる、複合測位による移動体の測位制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-120151号公報
【文献】特開平10-311734号公報
【文献】特開2006-258461号公報
【文献】特開2007-64853号公報
【文献】特開2016-57239号公報
【文献】特開2019-95278号公報
【文献】国際公開2014-132618号公報
【文献】国際公開2017-138502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
移動体の座標を精度よく測位する、測位システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る測位システムは、移動体の座標を測位する測位システムであって、互いに異なる少なくとも2個の基準点をそれぞれ基準として、前記移動体の位置を示す第1座標値および第2座標値を定期的に算出する座標取得部と、前記座標取得部により前回以前に算出された少なくとも前記第1座標値の履歴値を記憶する座標記憶部と、前記第1座標値と前記第1座標値の履歴値との差分を計算する比較部と、前記差分が所定値を超える場合に、前記第2座標値を前記移動体の測位座標として確定する座標確定部と、を備える。
【0008】
前記座標確定部は、前記差分が前記所定値以下であるとき、前記第1座標値を、前記移動体の測位座標として確定するものとしてもよい。
【0009】
前記座標取得部が算出の基準とする前記基準点を決定する基準点決定部をさらに備え、前記基準点決定部は、単独測位で求めた前記移動体の座標に最も近い基準点を、前記算出の基準に決定するものとしてもよい。
【0010】
第1の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第1速度を生成し、第2の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第2速度を生成する速度計測部と、前記第1速度と前記第1速度の履歴値との差分が所定値を超える場合に、前記第2速度を前記移動体の速度として確定する速度確定部と、をさらに備えるものとしてもよい。
【0011】
衛星信号を受信する第1のアンテナと第2のアンテナを備え、前記第1のアンテナが受信する前記衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第1速度を生成し、前記第2のアンテナが受信する前記衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第2速度を生成する速度計測部と、前記第1速度と前記第1速度の履歴値との差分が所定値を超える場合に、前記第2速度を前記移動体の速度として確定する速度確定部と、をさらに備えるものとしてもよい。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の別の観点に係る測位システムは、移動体の座標を測位する測位システムであって、互いに異なる少なくとも2個の基準点をそれぞれ基準として、前記移動体の位置を示す第1座標値および第2座標値を定期的に算出する座標取得部と、前記移動体の加速度に基づいて前記移動体の座標値を推定する座標推定部と、前記第1座標値と前記第2座標値との差分を計算する比較部と、前記差分が所定値を超える場合に、前記加速度に基づいて推定される座標値を移動体の測位座標として確定する座標確定部と、を備える。
【0013】
第1の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第1速度を生成し、第2の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第2速度を生成する速度計測部と、前記第1速度と前記第2速度の差分が所定値を超える場合に、前記加速度に基づいて推定される速度を前記移動体の速度として確定する速度確定部と、をさらに備えるものとしてもよい。
【0014】
衛星信号を受信する第1のアンテナと第2のアンテナを備え、前記第1のアンテナが受信する前記衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第1速度を生成し、前記第2のアンテナが受信する前記衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第2速度を生成する速度計測部と、前記第1速度と前記第2速度の差分が所定値を超える場合に、前記第2速度を前記移動体の速度として確定する速度確定部と、を備えるものとしてもよい。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に係る移動体は、移動中の位置座標を測位する測位システムを有する移動体であって、前記測位システムは上述のいずれかに記載の測位システムである。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に係る速度推定システムは、移動体の移動速度を推定する速度推定システムであって、第1の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第1速度を定期的に生成し、第2の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第2速度を定期的に生成する速度計測部と、前記速度計測部により前回以前に算出された前記第1速度の履歴値を記憶する速度記憶部と、前記第1速度と前記第1速度の履歴値との差分を計算する比較部と、前記差分が所定値を超える場合に、前記第2速度を前記移動体の速度として確定する速度確定部と、を備える。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に係る速度推定システムは、衛星信号を受信する第1のアンテナと第2のアンテナを備え、前記第1のアンテナが受信する前記衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第1速度を生成し、前記第2のアンテナが受信する前記衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第2速度を生成する速度計測部と、前記速度計測部により前回以前に算出された前記第1速度の履歴値を記憶する速度記憶部と、前記第1速度と前記第1速度の履歴値との差分を計算する比較部と、前記差分が所定値を超える場合に、前記第2速度を前記移動体の速度として確定する速度確定部と、を備える。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に係る速度推定システムは、移動体の移動速度を推定する速度推定システムであって、第1の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第1速度を定期的に生成し、第2の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第2速度を定期的に生成する速度計測部と、前記移動体の加速度に基づいて前記移動体の速度を推定する速度推定部と、前記第1速度と前記第2速度との差分を計算する比較部と、前記差分が所定値を超える場合に、前記加速度に基づいて推定される速度を前記移動体の速度として確定する速度確定部と、を備える。
【0019】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に係る速度推定システムは、衛星信号を受信する第1のアンテナと第2のアンテナを備え、前記第1のアンテナが受信する前記衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第1速度を生成し、前記第2のアンテナが受信する前記衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第2速度を生成する速度計測部と、前記移動体の加速度に基づいて前記移動体の速度を推定する速度推定部と、前記第1速度と前記第2速度との差分を計算する比較部と、前記差分が所定値を超える場合に、前記加速度に基づいて推定される速度を前記移動体の速度として確定する速度確定部と、を備える。
【0020】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に係る測位方法は、移動体の座標を測位する測位方法であって、互いに異なる少なくとも2個の基準点をそれぞれ基準として、前記移動体の位置を示す第1座標値および第2座標値を算出する座標取得ステップと、前記第1座標値と前記第2座標値との差分を計算する比較ステップと、前記差分が所定値以下である場合に、前記第1座標値を、前記移動体の測位座標として確定する、座標確定ステップと、を含む。
【0021】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に係る測位方法は、移動体の座標を測位する測位方法であって、互いに異なる少なくとも2個の基準点をそれぞれ基準として、前記移動体の位置を示す第1座標値および第2座標値を定期的に算出する座標取得ステップと、前記移動体の加速度に基づいて前記移動体の座標値を推定する座標推定ステップと、前記第1座標値と前記第2座標値との差分を計算する比較ステップと、前記差分が所定値を超える場合に、前記加速度に基づいて推定される座標値を前記移動体の測位座標として確定する座標確定ステップと、を含む。
【0022】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に係る速度推定方法は、移動体の移動速度を推定する速度推定方法であって、第1の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第1速度を定期的に生成し、第2の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第2速度を定期的に生成する速度計測ステップと、前記速度計測ステップにより前回以前に算出された前記第1速度の履歴値を記憶する速度記憶ステップと、前記第1速度と前記第1速度の履歴値との差分を計算する比較ステップと、前記差分が所定値を超える場合に、前記第2速度を前記移動体の速度として確定する速度確定ステップと、を含む。
【0023】
上記目的を達成するため、本発明のさらに別の観点に係る速度推定方法は、移動体の移動速度を推定する速度推定方法であって、第1の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第1速度を定期的に生成し、第2の衛星信号に基づいて前記移動体の速度を示す第2速度を定期的に生成する速度計測ステップと、前記移動体の加速度に基づいて前記移動体の速度を推定する速度推定ステップと、前記第1速度と前記第2速度との差分を計算する比較ステップと、前記差分が所定値を超える場合に、前記加速度に基づいて推定される速度を前記移動体の速度として確定する速度確定ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0024】
移動体の座標を精度よく測位することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本願発明に係る移動体の例であるドローンの平面図である。
【
図6】上記ドローンの飛行制御システムの全体概念図である。
【
図7】上記ドローンが有する機能ブロック図である。
【
図8】本願発明に係る測位システムの機能ブロック図である。
【
図9】上記測位システムが上記ドローンの座標を測位する流れを示すフローチャートである。
【
図10】本願発明の第2実施形態に係る測位システムの機能ブロック図である。
【
図11】上記測位システムが上記ドローンの座標を測位する流れを示すフローチャートである。
【
図12】本願発明に係る速度推定システムの機能ブロック図である。
【
図13】上記速度推定システムが上記ドローンの速度を推定する流れを示すフローチャートである。
【
図14】本願発明の第2実施形態に係る速度推定システムの機能ブロック図である。
【
図15】上記速度推定システムが上記ドローンの速度を推定する流れを示すフローチャートである。
【
図16】本願発明に係るドローンが、測位衛星からの衛星信号を受信する様子を示す模式図であって、(a)第3実施形態に係るドローン、(b)第4実施形態に係るドローン、(c)第5実施形態に係るドローンの様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図を参照しながら、本願発明を実施するための形態について説明する。図はすべて例示である。以下の詳細な説明では、説明のために、開示された実施形態の完全な理解を促すために、ある特定の詳細について述べられている。しかしながら、実施形態は、これらの特定の詳細に限られない。また、図面を単純化するために、周知の構造および装置については概略的に示されている。
【0027】
まず、本発明にかかる移動体の例である、ドローンの構成について説明する。本願明細書において、ドローンとは、動力手段(電力、原動機等)、操縦方式(無線であるか有線であるか、および、自律飛行型であるか手動操縦型であるか等)を問わず、複数の回転翼を有する飛行体全般を指すこととする。
【0028】
図1乃至
図5に示すように、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4b(ローターとも呼ばれる)は、ドローン100を飛行させるための手段であり、飛行の安定性、機体サイズ、および、電力消費量のバランスを考慮し、8機(2段構成の回転翼が4セット)備えられている。各回転翼101は、ドローン100の筐体110からのび出たアームにより筐体110の四方に配置されている。すなわち、進行方向左後方に回転翼101-1a、101-1b、左前方に回転翼101-2a、101-2b、右後方に回転翼101-3a、101-3b、右前方に回転翼101-4a、101-4bがそれぞれ配置されている。なお、ドローン100は
図1における紙面下向きを進行方向とする。
【0029】
回転翼101の各セットの外周には、略円筒形を形成する格子状のプロペラガード115-1,115-2,115-3,115-4が設けられ、回転翼101が異物と干渉しづらくなるようにしている。
図2および
図3に示されるように、プロペラガード115-1,115-2,115-3,115-4を支えるための放射状の部材は水平ではなくやぐら状の構造である。衝突時に当該部材が回転翼の外側に座屈することを促し、ローターと干渉することを防ぐためである。
【0030】
回転翼101の回転軸から下方には、それぞれ棒状の足107-1,107-2,107-3,107-4が伸び出ている。
【0031】
モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、102-4a、102-4bは、回転翼101-1a、101-1b、101-2a、101-2b、101-3a、101-3b、101-4a、101-4bを回転させる手段(典型的には電動機だが発動機等であってもよい)であり、一つの回転翼に対して1機設けられている。モーター102は、推進器の例である。1セット内の上下の回転翼(たとえば、101-1aと101-1b)、および、それらに対応するモーター(たとえば、102-1aと102-1b)は、ドローンの飛行の安定性等のために軸が同一直線上にあり、かつ、互いに反対方向に回転する。
【0032】
ノズル103-1、103-2、103-3、103-4は、散布物を下方に向けて散布するための手段であり4機備えられている。なお、本願明細書において、散布物とは、農薬、除草剤、液肥、殺虫剤、種、および、水などの圃場に散布される液体または粉体を一般的に指すこととする。
【0033】
タンク104は散布物を保管するためのタンクであり、重量バランスの観点からドローン100の重心に近い位置でかつ重心より低い位置に設けられている。ホース105は、タンク104と各ノズル103-1、103-2、103-3、103-4とを接続する手段であり、硬質の素材から成り、当該ノズルを支持する役割を兼ねていてもよい。ポンプ106は、散布物をノズルから吐出するための手段である。
【0034】
図6に本願発明に係るドローン100の飛行制御システムの全体概念図を示す。本図は模式図であって、縮尺は正確ではない。同図において、ドローン100、操作器401、基地局404およびサーバ405が移動体通信網400を介して互いに接続されている。これらの接続は、移動体通信網400に代えてWi-Fiによる無線通信を行ってもよいし、一部又は全部が有線接続されていてもよい。また、構成要素間において、移動体通信網400に代えて、又は加えて、直接接続する構成を有していてもよい。
【0035】
ドローン100および基地局404は、GPS等のGNSSの測位衛星410と通信を行い、ドローン100および基地局404の座標を取得する。ドローン100および基地局404が通信する測位衛星410は複数あってもよい。
【0036】
操作器401は、使用者の操作によりドローン100に指令を送信し、また、ドローン100から受信した情報(たとえば、位置、散布物の貯留量、電池残量、カメラ映像等)を表示するための手段であり、コンピューター・プログラムを稼働する一般的なタブレット端末等の携帯情報機器によって実現されてよい。操作器401は、ユーザインターフェース装置としての入力部および表示部を備える。本願発明に係るドローン100は自律飛行を行なうよう制御されるが、離陸や帰還などの基本操作時、および、緊急時にはマニュアル操作が行なえるようになっていてもよい。携帯情報機器に加えて、緊急停止専用の機能を有する非常用操作器(図示していない)を使用してもよい。非常用操作器は緊急時に迅速に対応が取れるよう大型の緊急停止ボタン等を備えた専用機器であってもよい。さらに、操作器401とは別に、操作器401に表示される情報の一部又は全部を表示可能な小型携帯端末、例えばスマートホンがシステムに含まれていてもよい。小型携帯端末は、例えば基地局404と接続されていて、基地局404を介してサーバ405からの情報等を受信可能である。
【0037】
圃場403は、ドローン100による散布の対象となる田圃や畑等である。実際には、圃場403の地形は複雑であり、事前に地形図が入手できない場合、あるいは、地形図と現場の状況が食い違っている場合がある。通常、圃場403は家屋、病院、学校、他の作物圃場、道路、鉄道等と隣接している。また、圃場403内に、建築物や電線等の侵入者が存在する場合もある。
【0038】
基地局404は、RTK-GNSS基地局として機能し、ドローン100の正確な位置を提供できるようになっている。また、Wi-Fi通信の親機機能等を提供する装置であってもよい。Wi-Fi通信の親機機能とRTK-GNSSの基地局が独立した装置であってもよい。また、基地局404は、3G、4G、およびLTE等の移動通信システムを用いて、サーバ405と互いに通信可能であってもよい。基地局404およびサーバ405は、営農クラウドを構成する。
【0039】
また、基地局404は、基準点との相対測位によって正確な座標を取得することができる。ここでの、基準点は、いわゆる電子基準点である。電子基準点は、GNSS連続観測点であり、約20km間隔で設置されている。複数の電子基準点の相対的な位置関係は、相対測位を行うことで、100万分の1の精度で得られる。この精度は、隣接する2つの電子基準点の相対的な位置関係を2cmの誤差で得られることを意味する。同様に、基地局404と電子基準点との相対的な位置関係も、100万分の1の精度で得られる。
【0040】
ここで、相対測位は、2点で、同時に4個以上の同じGNSS衛星を観測し、GNSS衛星からの電波信号が2点に到達する時間差を測定して、相対的な位置関係を求める方法である。この基地局404を用いて、RTK-GNSS測位を行うことで、ドローン100の位置を、例えば、数cmの誤差で提供できるようになっている。
【0041】
図6においては、基地局404の座標は、周辺に配置される基準点D1およびD2の少なくとも1個の座標に基づいて算出される。また、ドローン100の位置座標は、基準点D1およびD2の少なくとも1個の座標、および基地局404の座標に基づいて相対測位により算出される。さらに、基準点D1およびD2の少なくとも1個の座標、および基地局404の座標に基づいて、ドローン100の速度が算出される。基準点は、例えば約20km間隔で設置されている。なお、基準点は、バーチャル基準点(仮想基準点)であってもよい。
【0042】
サーバ405は、典型的にはクラウドサービス上で運営されているコンピュータ群と関連ソフトウェアであり、操作器401と携帯電話回線等で無線接続されていてもよい。サーバ405は、ハードウェア装置により構成されていてもよい。サーバ405は、ドローン100が撮影した圃場403の画像を分析し、作物の生育状況を把握して、飛行ルートを決定するための処理を行ってよい。また、保存していた圃場403の地形情報等をドローン100に提供してよい。加えて、ドローン100の飛行および撮影映像の履歴を蓄積し、様々な分析処理を行ってもよい。
【0043】
小型携帯端末は例えばスマートホン等である。小型携帯端末の表示部には、ドローン100の運転に関し予測される動作の情報、より具体的にはドローン100が発着地点406に帰還する予定時刻や、帰還時に使用者が行うべき作業の内容等の情報が適宜表示される。また、小型携帯端末からの入力に基づいて、ドローン100の動作を変更してもよい。
【0044】
通常、ドローン100は圃場403の外部にある発着地点から離陸し、圃場403に散布物を散布した後に、あるいは、散布物の補充や充電等が必要になった時に発着地点に帰還する。発着地点から目的の圃場403に至るまでの飛行経路(侵入経路)は、サーバ405等で事前に保存されていてもよいし、使用者が離陸開始前に入力してもよい。発着地点は、ドローン100に記憶されている座標により規定される仮想の地点であってもよいし、物理的な発着台があってもよい。
【0045】
図7に本願発明に係る散布用ドローンの実施例の制御機能を表したブロック図を示す。フライトコントローラー501は、ドローン全体の制御を司る構成要素であり、具体的にはCPU、メモリー、関連ソフトウェア等を含む組み込み型コンピュータであってよい。フライトコントローラー501は、操作器401から受信した入力情報、および、後述の各種センサーから得た入力情報に基づき、ESC(Electronic Speed Control)等の制御手段を介して、モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの回転数を制御することで、ドローン100の飛行を制御する。モーター102-1a、102-1b、102-2a、102-2b、102-3a、102-3b、104-a、104-bの実際の回転数はフライトコントローラー501にフィードバックされ、正常な回転が行なわれているかを監視できる構成になっている。あるいは、回転翼101に光学センサー等を設けて回転翼101の回転がフライトコントローラー501にフィードバックされる構成でもよい。
【0046】
フライトコントローラー501が使用するソフトウェアは、機能拡張・変更、問題修正等のために記憶媒体等を通じて、または、Wi-Fi通信やUSB等の通信手段を通じて書き換え可能になっている。この場合において、不正なソフトウェアによる書き換えが行なわれないように、暗号化、チェックサム、電子署名、ウィルスチェックソフト等による保護が行われている。また、フライトコントローラー501が制御に使用する計算処理の一部が、操作器401上、または、サーバ405上や他の場所に存在する別のコンピュータによって実行されてもよい。フライトコントローラー501は重要性が高いため、その構成要素の一部または全部が二重化されていてもよい。
【0047】
フライトコントローラー501は、通信機530を介して、さらに、移動体通信網400を介して操作器401とやり取りを行ない、必要な指令を操作器401から受信すると共に、必要な情報を操作器401に送信できる。この場合に、通信には暗号化を施し、傍受、成り済まし、機器の乗っ取り等の不正行為を防止できるようにしておいてもよい。基地局404は、移動体通信網400を介した通信機能に加えて、RTK-GNSS基地局の機能も備えている。RTK基地局404の信号とGPS等の測位衛星410からの信号を組み合わせることで、フライトコントローラー501により、ドローン100の絶対位置を数センチメートル程度の精度で測定可能となる。フライトコントローラー501は重要性が高いため、二重化・多重化されていてもよく、また、特定のGPS衛星の障害に対応するため、冗長化されたそれぞれのフライトコントローラー501は別の衛星を使用するよう制御されていてもよい。
【0048】
また、より具体的には、フライトコントローラー501が有するGPSモジュールRTK504により、RTK基地局の信号とGPS測位衛星からの信号を組み合わせることで、ドローン100の絶対位置を測位可能である。GPSモジュールRTK504は重要性が高いため、二重化・多重化されていてもよく、また、特定のGPS測位衛星の障害に対応するため、冗長化されたそれぞれのGPSモジュールRTK504-1、504-2は互いに別の測位衛星410a、410b(
図16(a)参照)を使用するよう制御されていてもよい。
【0049】
図16(a)に示すように、GPSモジュールRTK504-1、504-2は、それぞれアンテナ504a-1、504a-2を備えている。すなわち、
図16(a)に示すように、ドローン100は、2個のアンテナ504a-1、504a-2を備え、それぞれのアンテナ504a-1、504a-2は、互いに異なる測位衛星410a、410bからの衛星信号を受信する。また、
図16(b)に示す別の実施形態にかかるドローン100bのように、1個のアンテナ504a-1を備え、当該アンテナ504a-1により複数の測位衛星410a、410bからの衛星信号を受信してもよい。同図においては、アンテナ504a-1が受信する衛星の個数は2個であるが、3個以上あってもよい。さらに、
図16(c)に示すさらに別の実施形態にかかるドローン100cのように、複数のアンテナ504a-1、504a-2を備え、それぞれのアンテナ504a-1、504a-2が同じ測位衛星410aからの衛星信号を受信してもよい。
【0050】
6軸ジャイロセンサー505はドローン機体の互いに直交する3方向の加速度を測定する手段であり、さらに、加速度の積分により速度を計算する手段である。6軸ジャイロセンサー505は、上述の3方向におけるドローン機体の姿勢角の変化、すなわち角速度を測定する手段である。地磁気センサー506は、地磁気の測定によりドローン機体の方向を測定する手段である。気圧センサー507は、気圧を測定する手段であり、間接的にドローンの高度も測定することもできる。レーザーセンサー508は、レーザー光の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段であり、IR(赤外線)レーザーであってもよい。ソナー509は、超音波等の音波の反射を利用してドローン機体と地表との距離を測定する手段である。これらのセンサー類は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよい。また、機体の傾きを測定するためのジャイロセンサー(角速度センサー)、風力を測定するための風力センサーなどが追加されていてもよい。また、これらのセンサー類は、二重化または多重化されていてもよい。同一目的複数のセンサーが存在する場合には、フライトコントローラー501はそのうちの一つのみを使用し、それが障害を起こした際には、代替のセンサーに切り替えて使用するようにしてもよい。あるいは、複数のセンサーを同時に使用し、それぞれの測定結果が一致しない場合には障害が発生したと見なすようにしてもよい。
【0051】
流量センサー510は散布物の流量を測定するための手段であり、タンク104からノズル103に至る経路の複数の場所に設けられている。液切れセンサー511は散布物の量が所定の量以下になったことを検知するセンサーである。
【0052】
生育診断カメラ512aは、圃場403を撮影し、生育診断のためのデータを取得する手段である。生育診断カメラ512aは例えばマルチスペクトルカメラであり、互いに波長の異なる複数の光線を受信する。当該複数の光線は、例えば赤色光(波長約650nm)と近赤外光(波長約774nm)である。また、生育診断カメラ512aは、可視光線を受光するカメラであってもよい。
【0053】
病理診断カメラ512bは、圃場403に生育する作物を撮影し、病理診断のためのデータを取得する手段である。病理診断カメラ512bは、例えば赤色光カメラである。赤色光カメラは、植物に含有されるクロロフィルの吸収スペクトルに対応する周波数帯域の光量を検出するカメラであり、例えば波長650nm付近の帯域の光量を検出する。病理診断カメラ512bは、赤色光と近赤外光の周波数帯域の光量を検出してもよい。また、病理診断カメラ512bとして、赤色光カメラおよびRGBカメラ等の可視光帯域の少なくとも3波長の光量を検出する可視光カメラの両方を備えていてもよい。なお、病理診断カメラ512bはマルチスペクトルカメラであってもよく、波長650nm乃至680nm付近の帯域の光量を検出するものとしてもよい。
【0054】
なお、生育診断カメラ512aおよび病理診断カメラ512bは、1個のハードウェア構成により実現されていてもよい。
【0055】
障害物検知カメラ513はドローン侵入者を検知するためのカメラであり、画像特性とレンズの向きが生育診断カメラ512aおよび病理診断カメラ512bとは異なるため、生育診断カメラ512aおよび病理診断カメラ512bとは別の機器である。スイッチ514はドローン100の使用者402が様々な設定を行なうための手段である。障害物接触センサー515はドローン100、特に、そのローターやプロペラガード部分が電線、建築物、人体、立木、鳥、または、他のドローン等の侵入者に接触したことを検知するためのセンサーである。なお、障害物接触センサー515は、6軸ジャイロセンサー505で代用してもよい。カバーセンサー516は、ドローン100の操作パネルや内部保守用のカバーが開放状態であることを検知するセンサーである。注入口センサー517はタンク104の注入口が開放状態であることを検知するセンサーである。
【0056】
これらのセンサー類はドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。また、ドローン100外部の基地局404、操作器401、または、その他の場所にセンサーを設けて、読み取った情報をドローンに送信してもよい。たとえば、基地局404に風力センサーを設け、風力・風向に関する情報を移動体通信網400経由又はWi-Fi通信経由でドローン100に送信するようにしてもよい。
【0057】
フライトコントローラー501はポンプ106に対して制御信号を送信し、吐出量の調整や吐出の停止を行なう。ポンプ106の現時点の状況(たとえば、回転数等)は、フライトコントローラー501にフィードバックされる構成となっている。
【0058】
LED107は、ドローンの操作者に対して、ドローンの状態を知らせるための表示手段である。LEDに替えて、または、それに加えて液晶ディスプレイ等の表示手段を使用してもよい。ブザーは、音声信号によりドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるための出力手段である。通信機530は、3G、4G、およびLTE等の移動体通信網400と接続されており、移動体通信網400を介して基地局、サーバで構成される営農クラウド、操作器と通信可能に接続される。通信機に替えて、または、それに加えて、Wi‐Fi、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、NFC等の他の無線通信手段、または、USB接続などの有線通信手段を使用してもよい。スピーカー520は、録音した人声や合成音声等により、ドローンの状態(特にエラー状態)を知らせる出力手段である。天候状態によっては飛行中のドローン100の視覚的表示が見にくいことがあるため、そのような場合には音声による状況伝達が有効である。警告灯521はドローンの状態(特にエラー状態)を知らせるストロボライト等の表示手段である。これらの入出力手段は、ドローンのコスト目標や性能要件に応じて取捨選択してよく、二重化・多重化してもよい。
【0059】
●制御システムの概要
図8に示すように、測位システム1000は、例えばドローン100、ユーザインターフェース装置200、および測位装置600を含むシステムであり、これらはネットワークNWを通じて互いに通信可能に接続されている。測位装置600は、ハードウェア構成であってもよいし、サーバ405上に構成されていてもよい。ドローン100、ユーザインターフェース装置200、および測位装置600は、無線で互いに接続されていてもよいし、一部又は全部が有線により接続されていてもよい。
【0060】
なお、
図8に示した構成は例示であり、ある構成要素が別の構成要素を包含していてもよいし、各構成要素が有する機能部は、別の構成要素が有していてもよい。例えば、測位装置600の機能の一部および全部がドローン100に搭載されていてもよい。
【0061】
ユーザインターフェース装置200は、表示部を備えていればよく、操作器401の機能により実現されてもよい。また、ユーザインターフェース装置200は、パーソナルコンピュータであってもよく、パーソナルコンピュータにインストールされたWebブラウザを介して、Web上のUIに情報を入力し、表示させてもよい。
【0062】
●測位装置の機能部(1)
図8に示すように、測位装置600は、情報処理を実行するためのCPU(Central Processing Unit)などの演算装置、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの記憶装置を備え、これによりソフトウェア資源として少なくとも、基準点決定部610、座標取得部620、比較部630、座標確定部640、座標記憶部650および座標推定部660を有する。
【0063】
基準点決定部610は、ドローン100の座標値を取得するために用いる基準点を決定する機能部である。
【0064】
基準点決定部610は、互いに異なる少なくとも2個の基準点を選択する。基準点決定部610は、単独測位で求めたドローン100の座標から近い基準点を選択してもよい。基準点決定部610は、例えば単独測位で求められるドローン100の座標から最も近い基準点と、次いで近い基準点を選択してよい。なお、単独測位は、GNSS衛星から送信される衛星の情報を1台のアンテナで受信することにより、衛星から電波が発信されてから受信機に到達するまでに要した時間に基づいて距離を算出する測位手法である。
【0065】
基準点決定部610は、単独測位によらず、任意の基準点を座標値取得の基準点として決定してもよい。基準点決定部610は、操作器401などのユーザインターフェース装置を介してドローン100のおおよその位置を取得し、これに基づいて基準点を決定してもよい。また、測位システムの管理者が有する圃場の位置、例えば住所表示等があらかじめシステムに対応付けられていて、当該圃場の位置を参照して比較的近い基準点を決定してもよい。
【0066】
座標取得部620は、基準点決定部610により決定される基準点を基準としてドローン100の位置を示す座標値を取得する機能部である。座標取得部620は、決定される基準点の個数に対応する個数の座標値を算出する。本実施形態では、座標取得部620は、第1基準点D1および第2基準点D2(
図6参照)を基準として、それぞれ第1座標値および第2座標値を取得する。
【0067】
座標取得部620は、定期的に座標値を取得する。移動するドローン100の各時点における座標値を正確に把握するためである。
【0068】
座標取得部620により取得される座標値は、座標記憶部650に記憶される。座標記憶部650は、少なくとも座標取得部620により前回以前に算出された第1座標値、すなわち第1座標値の履歴値を記憶している。第1座標値の履歴値は、前回取得された第1座標値の前回値であってもよい。座標記憶部650は、次の第1座標値が取得されたとき、記憶されている第1座標値に上書きしてもよいし、複数の第1座標値を計測された順序とともに記憶してもよい。また、座標記憶部650は、第1座標値に加えて第2座標値を記憶してもよい。
【0069】
比較部630は、座標取得部620により取得した第1基準点を基準として得られる第1座標値と、座標記憶部650に記憶されている、第1座標値の履歴値と、を比較する機能部である。具体的には、比較部630は、第1座標値と、第1座標値の履歴値との差分を算出する。
【0070】
座標推定部660は、ドローン100の加速度に基づいてドローン100の座標を推定する機能部である。座標推定部660は、ドローン100に搭載されている加速度センサの計測値を2回積分することにより、ドローン100の座標を推定する。本実施形態では、6軸ジャイロセンサ505が加速度センサの機能を有する。例えば、座標推定部660は、第1座標値の前回値の取得時点から現在までに計測される加速度の2回積分値を、第1座標値の前回値に加算することで、現在の座標値を推定してもよい。なお、ドローン100の加速度は、ドローン100に搭載されるセンサによる計測に代えて、ドローン100の外部からドローン100を撮影すること等により計測してもよい。
【0071】
座標確定部640は、比較部630による比較の結果に基づいて、ドローン100の測位座標を確定する機能部である。座標確定部640は、当該差分が所定値以下であるとき、第1座標値をドローン100の測位座標とする。ドローン100の速度範囲はあらかじめ決まっているため、第1座標値の前回値からの変化量は、ある程度想定できる。当該変化量がこの想定範囲内にある場合は、反射によるマルチパスの発生、計測誤差および外乱の影響が少ないことが想定され、第1座標値の信頼性が第2座標値により担保される。
【0072】
座標確定部640は、比較部630により算出される第1座標値と第1座標値の履歴値との差分が所定値より大きい場合には、第2座標値をドローン100の測位座標とする。当該所定値は、ドローン100の移動速度に基づいて設定されていてもよい。第1座標値の変化が、ドローン100の移動速度を鑑みた想定範囲を超える場合、取得される第1座標値は、反射によるマルチパスの発生、計測誤差又は外乱により正しい位置を示していない蓋然性が高いためである。また、当該所定値は、ドローン100が発揮し得る移動速度に基づいて一律に設定されていてもよいし、第1座標値又は第2座標値の取得時における移動速度に基づいて算出されてもよい。
【0073】
また、比較部630により第2座標値と第1座標値の履歴値との差分が所定値以下であるか否かを判定し、座標確定部640は、当該差分が所定値以下であるときに、第2座標値をドローン100の測位座標としてもよい。この構成によれば、第2座標値の信頼性をより確実なものとすることができる。
【0074】
この構成によれば、複数の基準点を参照することで、計測誤差や外乱の影響を排除してドローンの座標を正確に測位することができる。
【0075】
さらに、座標確定部640は、第1座標値と第1座標値の履歴値との差分が所定値を超えるとき、座標推定部660により加速度に基づいて推定される座標をドローン100の測位座標として確定してもよい。ここで、加速度に基づいて座標を生成する場合、積分演算により加速度の検出誤差が蓄積されるため、加速度に基づいて生成される座標を長時間に渡って採用すると座標の誤差の原因になる。そこで、測位装置600は、第1座標値と第1座標値の履歴値との差分が所定値を超え、加速度に基づいて生成される座標を採用している時間を計測し、当該時間が所定期間以上続いた場合には、加速度に基づいて生成した座標を制御に利用することを停止して、ドローン100に退避動作を行わせてもよい。退避動作は、例えばホバリングであるが、その場に着陸する通常着陸動作、および直ちに回転翼を停止させ、ドローン100を落下させる緊急着陸動作であってもよい。また、当該時間が所定期間以上続いた場合には、別の方法により生成される座標を制御に利用してもよい。別の方法とは、例えば別の基準点を基準として求める方法であるが、この方法には限られない。このような構成によれば、ドローン100の位置制御および速度制御の精度が著しく劣化することを回避できる。
【0076】
また、座標取得部620は、座標値に代えて、又は加えて、測位衛星410a又は410b(
図16(a)参照)からの衛星信号に基づいてドローン100の速度を取得してもよい。例えば、座標取得部620は、所定時間内における座標値の推移に基づいて、当該所定時間内の速度を算出する。このとき、座標記憶部650は、第1測位衛星410aからの衛星信号に基づいて求めた第1速度の履歴値を記憶している。比較部630は、第1速度と、第1速度の履歴値との差分を算出する。座標確定部640は、当該差分が所定値以下である場合に、第1速度をドローン100の速度として確定する。座標確定部640は、当該差分が所定値を超える場合に、第2測位衛星410bからの衛星信号に基づいて求めた第2速度をドローンの速度として確定する。この構成によれば、ドローンの速度を正確に測定することができる。さらに、座標確定部640は、当該差分が所定値を超える場合に、加速度に基づいて速度を推定し、この推定値をドローン100の速度として確定してもよい。また、加速度に基づいて推定した速度を採用している時間を計測し、当該時間が所定期間以上続いた場合には、ドローン100に退避動作を行わせてもよい。また、別の方法により生成される速度を制御に利用してもよい。加速度に基づいて速度を推定する場合にも、積分演算により加速度の検出誤差が蓄積されるため、長時間に渡って採用することは速度の誤差の原因となるためである。
【0077】
●処理フロー(1)
図9を用いて、ドローン100の座標を測位する処理フローを説明する。まず、基準点決定部610により第1基準点D1および第2基準点D2(
図6参照)を決定する(S1)。次いで、座標取得部620により、第1基準点D1を基準としてドローン100の第1座標値を取得するとともに、第2基準点D2を基準としてドローン100の第2座標値を取得する(S2)。
【0078】
次いで、比較部630により、第1座標値と第1座標値の履歴値の差分を算出する(S3)。差分が所定値以下か否かを判別し(S4)、所定値以下である場合は、第1座標値をドローン100の座標に確定する(S5)。ステップS4において差分が所定値を超えるときは、第2座標値を測位座標に確定する(S6)。又は、ステップS6において、ドローン100の加速度に基づいてドローン100の座標を推定し、当該推定値を測位座標に確定してもよい。この構成において、加速度に基づいて推定した座標を測位座標として制御に利用している時間が所定時間以上続いているか判定し、該当する場合は、ドローン100に退避動作を行わせてもよい。また、別の方法で推定した座標を測位座標として利用するものとしてもよい。
【0079】
●測位装置の機能部(2)
図10を用いて、本願発明に係る測位システム1001の第2実施形態に関し、第1実施形態とは異なる部分を中心に説明する。第2実施形態においては、第1座標値と第2座標値との差分が所定以上であるとき、ドローンの加速度に基づいて座標を推定する。
【0080】
第2実施形態における測位装置601は、基準点決定部610、座標取得部620、比較部631、座標確定部641および座標推定部660を備える。なお、第1実施形態と同様の構成については、お同じ符号を付した。
【0081】
比較部631は、座標取得部620により取得した第1基準点を基準として得られる第1座標値と、第2基準点を基準として得られる第2座標値と、を比較する。具体的には、比較部630は、第1座標値と第2座標値との差分を算出する。
【0082】
座標確定部641は、当該差分が所定値以下である場合に、第1座標値をドローン100の測位座標とする。座標確定部640は、当該差分が所定値を超える場合に、座標推定部660により加速度から推定される推定座標値を、ドローン100の測位座標とする。
【0083】
なお、当該差分が所定値を超える場合に、比較部631により推定座標値と第1座標値又は第2座標値との差分を算出し、座標確定部641は、当該差分が所定値以下である場合に、推定座標値を測位座標としてもよい。推定座標値と第1座標値又は第2座標値との差が小さいことで、推定座標値の信頼性がより担保される。また、座標確定部641は、推定座標値と第1座標値又は第2座標値との差分が所定値以下である場合に、当該第1座標値又は第2座標値を測位座標に採用してもよい。
【0084】
また、座標取得部620は、座標値に代えて、又は加えて、基準点に基づいてドローン100の速度を取得してもよい。このとき、比較部630は、第1測位衛星410aから受信される第1衛星信号に基づいて求めた第1速度と、第2測位衛星410bから受信される第2衛星信号に基づいて求めた第2速度との差分を算出する。座標確定部640は、当該差分が所定値以下であるとき、第1速度をドローン100の速度として確定する。座標確定部640は、当該差分が所定値を超える場合に、座標推定部660により算出される速度を、ドローンの速度として確定する。例えば、座標推定部660は、ドローン100の加速度を1回積分することで、ドローン100の速度を算出することができる。この構成によれば、相対測位による速度の算出に誤差が生じた場合にも、ドローンの速度を正確に測定することができる。なお、加速度に基づいて推定した速度を採用している時間を計測し、当該時間が所定期間以上続いた場合には、ドローン100に退避動作を行わせてもよい。また、別の方法により生成される速度を制御に利用してもよい。
【0085】
このとき、
図16(a)に示すように、ドローン100は、複数のアンテナ504a-1、504a-2を備え、アンテナ504a-1、504a-2は、第1測位衛星410aからの第1衛星信号および第2測位衛星410bからの第2衛星信号をそれぞれ受信してもよい。また、
図16(b)に示すように、別の実施形態にドローン100bは、1個のアンテナ504a-1により複数の測位衛星410a、410bからの衛星信号を受信してもよい。さらに、
図16(c)に示すように、さらに別の実施形態にかかるドローン100cは、複数のアンテナ504a-1、504a-2を備え、アンテナ504a-1、504a-2は、1個の第1測位衛星410aから互いに異なる第1衛星信号および第2衛星信号をそれぞれ受信してもよい。
【0086】
●処理フロー(2)
図11に示すように、基準点決定部610により第1基準点D1および第2基準点D2(
図6参照)を決定する(S11)。次いで、座標取得部620により、第1基準点D1を基準としてドローン100の第1座標値を取得するとともに、第2基準点D2を基準としてドローン100の第2座標値を取得する(S12)。
【0087】
次いで、比較部630により、第1座標値と第2座標値の差分を算出する(S13)。差分が所定値以下か否かを判別し(S14)、所定値以下である場合は、第1座標値をドローン100の座標に確定する(S15)。ステップS14において差分が所定値を超える場合に、ドローン100の加速度に基づいてドローン100の座標を推定し、当該推定値を測位座標に確定する(S16)。この構成において、加速度に基づいて推定した座標を測位座標として制御に利用している時間が所定時間以上続いているか判定し、該当する場合は、ドローン100に退避動作を行わせてもよい。また、別の方法で推定した座標を測位座標として利用するものとしてもよい。
●速度推定装置の機能部(1)
図12を用いて、本願発明に係る速度推定システム1002の第1実施形態に関して説明する。速度推定システム1002は、ドローン100の座標に代えて、ドローン100の移動速度を推定するシステムである。なお、測位システム1000と同様の構成については同じ符号を付した。
【0088】
速度推定システム1002は、速度推定装置602を有する。速度推定装置602は、基準点決定部610、速度計測部622、比較部631、速度確定部642、速度記憶部652および速度推定部662を備える。なお、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付した。
【0089】
速度計測部622は、測位衛星410からの衛星信号に基づいてドローン100の速度を計測する機能部である。例えば、速度計測部622は、所定時間内における座標値の推移に基づいて、当該所定時間内の速度を算出する。このとき、速度記憶部652は、第1基準点D1を基準として求めた第1速度の履歴値を記憶している。比較部632は、第1速度と、第1速度の履歴値との差分を算出する。
【0090】
図16(a)に示すように、速度計測部622は、複数の測位衛星410a、410bから送信される第1衛星信号および第2衛星信号を、アンテナ504a-1、504a-2によりそれぞれ受信し、第1衛星信号に基づいて第1速度を生成し、第2衛星信号に基づいて第2速度を生成する。なお、
図16(b)に示すように、速度計測部622は、複数の測位衛星410a、410bから送信される第1衛星信号および第2衛星信号を1個のアンテナ504a-1により受信してもよい。さらに、
図16(c)に示すように、さらに別の実施形態にかかるドローン100cは、複数のアンテナ504a-1、504a-2を備え、アンテナ504a-1、504a-2は、1個の第1測位衛星410aから互いに異なる第1衛星信号および第2衛星信号をそれぞれ受信してもよい。
【0091】
速度計測部622は、定期的に速度を取得する。速度計測部622により取得される速度は、速度記憶部652に記憶される。速度記憶部652は、少なくとも速度計測部622により前回以前に算出された第1速度、すなわち第1速度の履歴値を記憶している。第1速度の履歴値は、前回取得された第1速度の前回値であってもよい。速度記憶部652は、次の第1速度が取得されたとき、記憶されている第1速度に上書きしてもよいし、複数の第1速度を計測された順序とともに記憶してもよい。また、速度記憶部652は、第1速度に加えて第2速度を記憶してもよい。
【0092】
比較部632は、速度計測部622により取得した第1衛星信号を基準として得られる第1速度と、速度記憶部652に記憶されている、第1速度の履歴値と、を比較する機能部である。具体的には、比較部632は、第1速度と、第1速度の履歴値との差分を算出する。
【0093】
速度推定部662は、ドローン100の加速度に基づいてドローン100の速度を推定する機能部である。速度推定部662は、ドローン100に搭載されている加速度センサの計測値を積分することにより、ドローン100の速度を推定する。本実施形態では、6軸ジャイロセンサ505が加速度センサの機能を有する。例えば、速度推定部662は、第1速度の履歴値の取得時点から現在までに計測される加速度の積分値を、第1速度の履歴値に加算することで、現在速度を推定してもよい。なお、ドローン100の速度は、ドローン100に搭載されるセンサによる計測に代えて、ドローン100の外部からドローン100を撮影すること等により計測してもよい。
【0094】
速度確定部642は、比較部630により算出される第1座標値と第1座標値の履歴値との差分が所定値より大きい場合には、第2速度をドローン100の測位速度とする。この構成によれば、ドローンの速度を正確に測定することができる。
【0095】
また、速度確定部642は、第1速度と第1速度の履歴値との差分が所定値を超える場合に、速度推定部662により加速度に基づいて推定される速度をドローン100の速度として確定してもよい。速度確定部642は、当該差分が所定値を超える場合に、加速度に基づいて速度を推定し、この推定値をドローン100の速度として確定してもよい。また、加速度に基づいて推定した速度を採用している時間を計測し、当該時間が所定期間以上続いた場合には、ドローン100に退避動作を行わせてもよい。また、別の方法により生成される速度を制御に利用してもよい。
【0096】
●処理フロー(3)
図13を用いて、ドローン100の速度を計測する処理フローを説明する。まず、速度計測部622により、第1測位衛星410aから受信される第1衛星信号に基づいてドローン100の第1速度を取得するとともに、第2測位衛星410bから受信される第2衛星信号に基づいてドローン100の第2速度を取得する(S21)。
【0097】
次いで、比較部632により、第1速度と第1速度の履歴値の差分を算出する(S22)。差分が所定値以下か否かを判別し(S23)、所定値以下である場合は、第1速度をドローン100の速度に確定する(S24)。ステップS23において差分が所定値を超える場合に、第2速度を速度として確定する(S25)。また、ステップS25において、ドローン100の加速度に基づいてドローン100の速度を推定し、当該推定値を測位座標に確定してもよい。この構成において、加速度に基づいて推定した速度を制御に利用している時間が所定時間以上続いているか判定し、該当する場合は、ドローン100に退避動作を行わせてもよい。また、別の方法で推定した速度を利用するものとしてもよい。
【0098】
●速度推定装置の機能部(2)
図14を用いて、本願発明の第2実施形態に係る速度推定システム1003に関し、第1実施形態に係る速度推定システム1002とは異なる部分を中心に説明する。速度推定システム1003は、互いに異なる少なくとも2つの衛星信号に基づいて第1速度および第2速度を算出し、その差分に応じてドローン100の速度を決定する。
【0099】
第2実施形態における速度推定装置603は、基準点決定部610、速度計測部623、比較部633、速度確定部643および速度推定部662を備える。なお、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付した。
【0100】
図16(a)に示すように、速度計測部622は、複数の測位衛星410a、410bから送信される第1衛星信号および第2衛星信号を、アンテナ504a-1、504a-2によりそれぞれ受信し、第1衛星信号および第2衛星信号に基づいて第1速度および第2速度をそれぞれ生成する。なお、
図16(b)に示すように、速度計測部622は、1個のアンテナ504a-1により複数の測位衛星410a、410bから送信される第1衛星信号および第2衛星信号を受信してもよい。
【0101】
比較部633は、速度計測部623により取得した第1衛星信号に基づいて得られる第1速度と、第2衛星信号に基づいて得られる第2速度と、を比較する。具体的には、比較部633は、第1速度と第2速度との差分を算出する。
【0102】
速度確定部643は、当該差分が所定値以下であるとき、第1速度をドローン100の速度とする。速度確定部643は、当該差分が所定値を超える場合に、速度推定部662により加速度から推定される推定速度を、ドローン100の速度とする。
【0103】
なお、当該差分が所定値を超える場合に、比較部633により推定速度と第1速度又は第2速度との差分を算出し、速度確定部643は、当該差分が所定値以下であるときに、推定速度を測位速度として確定してもよい。推定速度と第1速度又は第2速度との差が小さいことで、推定速度の信頼性がより担保される。また、速度確定部643は、推定速度と第1速度又は第2速度との差分が所定値以下であるとき、当該第1速度又は第2速度を測位速度に採用してもよい。
【0104】
速度確定部643は、第1速度と第2速度との差分が所定値を超える場合に、加速度に基づいて速度を推定し、この推定値をドローン100の速度として確定してもよい。また、加速度に基づいて推定した速度を採用している時間を計測し、当該時間が所定期間以上続いた場合には、ドローン100に退避動作を行わせてもよい。また、別の方法により生成される速度を制御に利用してもよい。
【0105】
●処理フロー(4)
図15に示すように、速度計測部623により、第1測位衛星410aからの衛星信号に基づいてドローン100の第1速度を取得するとともに、第2測位衛星410bからの衛星信号に基づいてドローン100の第2速度を取得する(S31)。
【0106】
次いで、比較部633により、第1速度と第2速度の差分を算出する(S32)。差分が所定値以下か否かを判別し(S33)、所定値以下である場合は、第1速度をドローン100の速度に確定する(S34)。ステップS33において差分が所定値を超えるとき、ドローン100の加速度に基づいてドローン100の速度を推定し、当該推定速度をドローン100の速度に確定する(S35)。この構成において、加速度に基づいて推定した速度を制御に利用している時間が所定時間以上続いているか判定し、該当する場合は、ドローン100に退避動作を行わせてもよい。また、別の方法で推定した速度を利用するものとしてもよい。
【0107】
(本願発明による技術的に顕著な効果)
本発明にかかる測位システムにおいては、ドローンを始めとする移動体の座標を精度よく測位することができる。また、本発明にかかる速度推定システムにおいては、ドローンを始めとする移動体の速度を精度よく推定することができる。特に、圃場において薬剤散布、又は作物の生育監視を行う農業用ドローンにおいては、散布および監視精度を担保するために、1乃至2cm程度の誤差で正確に飛行する必要がある。また、ドローンはバッテリの蓄電量により飛行するため、少ない充電回数で圃場内作業を完了させるために、陸上走行農機と比較して速い速度で移動する必要がある。したがって、ドローンの飛行には、高いリアルタイム性を有する高精度な測位が重要である。本発明にかかる測位システムにおいては、農業用ドローンの座標を精度よく測位することができるため、当該ドローンによる精密農業を実現することができる。
【0108】
なお、本説明ではドローンの座標を測位する測位システム、速度推定システムおよび測位方法について説明したが、本願発明に係る測位システム、速度推定システムおよび測位方法はドローンに限られず、陸上走行する機械にも適用可能である。