(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】光学シリコーンエラストマーに接着するシリコーン感圧接着剤を形成するヒドロシリル化反応硬化性組成物並びにフレキシブル表示装置における調製及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C09J 183/04 20060101AFI20231003BHJP
C09J 183/07 20060101ALI20231003BHJP
C09J 183/05 20060101ALI20231003BHJP
C09J 183/06 20060101ALI20231003BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231003BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20231003BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20231003BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20231003BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20231003BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20231003BHJP
C08K 5/55 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C09J183/04
C09J183/07
C09J183/05
C09J183/06
C09J11/06
C09J7/38
C08L83/04
C08L83/07
C08L83/05
C08L83/06
C08K5/55
(21)【出願番号】P 2022570431
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(86)【国際出願番号】 CN2021090223
(87)【国際公開番号】W WO2022226775
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-01-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カオ、チン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、イェン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、ポーチー
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-527268(JP,A)
【文献】特開2004-292714(JP,A)
【文献】特開2003-327833(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102181159(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104974711(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0045471(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン感圧接着剤を形成するためのヒドロシリル化反応硬化性組成物であって、前記組成物が、
(A)ポリジオルガノシロキサンガム成分であって、
出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて、32.2重量%~44.6重量%の(A-1)単位式(R
M
2R
USiO
1/2)
2(R
M
2SiO
2/2)
aの脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムであって、式中、各R
Mが、脂肪族不飽和を含まない炭素原子1~30個の独立して選択される一価炭化水素基であり、各R
Uが、炭素原子2~30個の独立して選択される一価脂肪族不飽和炭化水素基であり、下付き文字aが、前記ポリジオルガノシロキサンガムに20ミル(0.51mm)~80ミル(2.03mm)の可塑性を与えるのに十分な値を有し、可塑性が、ASTM D926に基づいて重量4.2gの球状試料に1kgの荷重を25℃で3分間加えることによって測定され、結果が1/1000インチ(ミル)で測定され、手順がASTM D926に基づく、脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムと、
0~<1.2重量%の(A-2)単位式((HO)R
M
2SiO
1/2)
2(R
M
2SiO
2/2)
a’のヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムであって、式中、各R
Mが、脂肪族不飽和を含まない炭素原子1~30個の独立して選択される一価炭化水素基であり、各下付き文字a’が、20ミル(0.51mm)~80ミル(2.03mm)の可塑性を有する前記ポリジオルガノシロキサンガムを与えるのに十分な値を有する、ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムと、を含み、
ただし、(A-1)前記脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガム:(A-2)前記ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムの重量比{(A-1):(A-2)比}≧37.4:1である、ポリジオルガノシロキサンガム成分と、
(B)ポリオルガノシリケート樹脂成分であって、
出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて、44.8重量%~58.9重量%の(B-1)単位式:(R
M
3SiO
1/2)
z(SiO
4/2)
oZ
pのキャップされた樹脂であって、式中、Zが、加水分解性基であり、下付き文字pが、0~前記キャップされた樹脂に最大2%の加水分解性基含有量を与えるのに十分な値であり、下付き文字z及びoが、z>4、o>1である値を有し、数量(z+o)が、前記キャップされた樹脂に500g/mol~2,700g/molの数平均分子量を与えるのに十分な値を有する、キャップされた樹脂と、
出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて、0~7重量%の(B-2)単位式(R
M
3SiO
1/2)
z’(SiO
4/2)
o’Z
p’のキャップされていない樹脂であって、式中、下付き文字p’が、前記キャップされていない樹脂に>3%~10%の加水分解性基含有量を与えるのに十分な値を有し、下付き文字z’及びo’が、z’>4、o’>1であるような値を有し、数量(z’+o’)が、前記キャップされていない樹脂に500g/mol~5,000g/molの数平均分子量を与えるのに十分な値を有する、キャップされていない樹脂と、を含み、(B-1)前記キャップされた樹脂及び(B-2)前記キャップされていない樹脂が、出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて44.8重量%~65.8重量%の合計量で存在し、ただし、(B-2)前記キャップされていない樹脂:(B-1)前記キャップされた樹脂の重量比{(B-2):(B-1)比}が0.032:1~0.125:1であり、
(A)前記ポリジオルガノシロキサンガム成分及び(B)前記ポリオルガノシリケート樹脂成分が、(B):(A)の重量比(樹脂:ガム比)≦2.0:1で存在する、ポリオルガノシリケート樹脂成分と、
出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて、0.01重量%~5重量%の(C)ヒドロシリル化反応触媒と、
(D)単位式:(R
M
2SiO
2/2)
e(HR
MSiO
2/2)
f(R
M
2HSiO
1/2)
g(R
M
3SiO
1/2)
hのポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、式中、下付き文字e≧0、下付き文字f≧0、数量(e+f)が4~500であり、下付き文字gが0、1、又は2であり、下付き文字hが0、1、又は2であり、数量(g+h)=2、及び数量(f+g)≧3であり、(D)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンが、ケイ素結合水素原子の(A)前記ポリジオルガノシロキサンガム成分の脂肪族不飽和炭化水素基に対するモル比{(D):(A)比}の20.8:1~57.7:1を与えるのに十分な量で存在する、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、
出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて、0.05重量%~4.64重量%の(E)ホウ酸トリアルキルと、
出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて、0重量%~5重量%の(F)ヒドロシリル化反応抑制剤と、
前記組成物中の全出発物質の合計重量に基づいて、>0重量%~90重量%の(G)溶剤と、
出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて、0~5重量%の(H)定着添加剤と、を含む、組成物。
【請求項2】
(A)前記ポリジオルガノシロキサンガム成分において、各R
Mが、炭素原子1~6個の独立して選択されるアルキル基であり、各R
Uが、ビニル、アリル、及びヘキセニルからなる群から独立して選択され、下付き文字aが、30ミル(0.76mm)~70ミル(1.778mm)の可塑性値を与えるのに十分である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(B)前記ポリオルガノシリケート樹脂成分において、各R
Mが、炭素原子1~6個の独立して選択されるアルキル基であり、各Zが、OHであり、前記数量(z+o)が、前記キャップされた樹脂に≦2,700g/molの数平均分子量を与えるのに十分な値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
(C)前記ヒドロシリル化反応触媒が、Karstedt触媒を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
(D)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンにおいて、各R
Mが、炭素原子1~6個の独立して選択されるアルキル基であり、下付き文字g=0、及び下付き文字h=2である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
(E)前記ホウ酸トリアルキルが、ホウ酸トリエチルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、基部及び硬化剤部を含む多部型組成物であり、前記基部が、出発物質A)及びC)を含み、前記硬化剤部が、出発物質A)及びD)を含み、前記組成物が、前記基部、前記硬化剤部、又は別個の追加部のうちの1つ以上に出発物質B)、E)、及びF)を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
1)請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物を基材に適用することと、
2)前記組成物を硬化させて、前記基材上にシリコーン感圧接着剤を形成することと、を含む、ウェットキャスティング法。
【請求項9】
1)請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物を剥離ライナーに適用することと、
2)前記組成物を硬化させて、前記剥離ライナー上にシリコーン感圧接着剤を形成することと、
3)前記シリコーン感圧接着剤を基材に適用することと、を含む、ドライキャスティング法。
【請求項10】
前記基材が、光学シリコーンエラストマーである、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記シリコーン感圧接着剤が、光学的に透明である、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか一項に記載の方法によって調製された物品。
【請求項13】
前記物品が、フレキシブル表示装置の部分である、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
フレキシブル表示装置の部品であって、
I)光学シリコーンエラストマー層と、
II)前記光学シリコーンエラストマー層に接着されたシリコーン感圧接着剤層であって、前記シリコーン感圧接着剤層が、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物の生成物である、シリコーン感圧接着剤層と、を含む、部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
なし
【0002】
(発明の分野)
本発明は、シリコーン感圧接着剤並びにその調製及び使用方法に関する。特に、本発明は、硬化して、フレキシブル表示装置での使用に好適なシリコーン感圧接着剤を形成する、ヒドロシリル化硬化性組成物に関する。
【0003】
序論
例えば、曲げる、折る、巻く、巻き取る、又は伸ばすことによって、変形することができるフレキシブル表示装置が開発されている。フレキシブル表示装置は、消費者のニーズ又はフレキシブル表示装置の使用状況に応じて変形することができる。典型的には、表示装置の様々な部品は、複数の層で作製されており、フレキシブル表示装置が変形するとき、層が互いに接着しており、かつ部品の故障を引き起こす損傷を受けないことが重要である。
【0004】
光学シリコーンエラストマーは、フレキシブル表示装置において光透過(例えば、透明又は半透明)層を形成するのに有用であり得る。光学シリコーンエラストマーは、当技術分野において既知であり、市販されている。例えば、SILASTIC(商標)MS-1001、MS-1002、MS-1003、MS-4001、MS-4002、及びMS-4007は、成形可能な光学シリコーンエラストマーであり、SYLGARD(商標)182、184、及び186も光学シリコーンエラストマーであり、これらは全てDow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)から市販されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような光学シリコーンエラストマーは、フレキシブル表示装置において他の層に接着することが困難であるという欠点を有することがある。したがって、光学シリコーンエラストマーに接着することができ、かつフレキシブル表示装置において故障を引き起こさない、シリコーン感圧接着剤が産業上必要である。
【0006】
ヒドロシリル化反応硬化性組成物は、シリコーン感圧接着剤を形成することができる。組成物の製造方法、及び組成物を使用した物品の製作方法を提供する。物品は、フレキシブル表示装置の部品を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、フレキシブル表示装置の部品100の部分断面図を示す。
【0008】
参照番号
100 フレキシブル表示装置部品の部分
101 基材
101b 基材101の表面
102 シリコーン感圧接着剤
102a シリコーン感圧接着剤102の表面
102b シリコーン感圧接着剤102の反対側の表面
103 光学シリコーンエラストマー
103a 光学シリコーンエラストマー103の表面
【発明を実施するための形態】
【0009】
シリコーン感圧接着剤を形成するためのヒドロシリル化反応硬化性組成物は、
(A)ポリジオルガノシロキサンガム成分であって、
出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて、32.2重量%~44.6重量%の(A-1)単位式(RM
2RUSiO1/2)2(RM
2SiO2/2)aの脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムであって、式中、各RMは、脂肪族不飽和を含まない炭素原子1~30個の独立して選択される一価炭化水素基であり、各RUは、独立して選択される炭素原子2~30個の一価脂肪族不飽和炭化水素基であり、下付き文字aは、ポリジオルガノシロキサンガムに50~200の可塑性を与えるのに十分な値を有する、(A-1)脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムと、
0~<1.2重量%の(A-2)単位式((HO)RM
2SiO1/2)2(RM
2SiO2/2)a’のヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムであって、式中、各RMは、脂肪族不飽和を含まない炭素原子1~30個の独立して選択される一価炭化水素基であり、各下付き文字a’は、ポリジオルガノシロキサンガムに20ミル(0.51mm)~80ミル(2.03mm)の可塑性を与えるのに十分な値を有する、(A-2)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムと、を含み、
ただし、(A-1)脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガム:(A-2)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムの重量比{(A-1):(A-2)比}≧37.4:1である、(A)ポリジオルガノシロキサンガム成分と、
(B)ポリオルガノシリケート樹脂成分であって、
出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて、44.8重量%~58.9重量%の(B-1)単位式:(RM
3SiO1/2)z(SiO4/2)oZpのキャップされた樹脂であって、式中、Zは、加水分解性基であり、下付き文字pは、0~キャップされた樹脂に最大2%の加水分解性基含有量を与えるのに十分な値であり、下付き文字z及びoは、z>4、o>1である値を有し、数量(z+o)は、キャップされた樹脂に500g/mol~2,700g/molの数平均分子量を与えるのに十分な値を有する、(B-1)キャップされた樹脂と、
出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて、0~7重量%の(B-2)単位式(RM
3SiO1/2)z’(SiO4/2)o’Zp’のキャップされていない樹脂であって、式中、下付き文字p’は、キャップされていない樹脂に>3%~10%の加水分解性基含有量を与えるのに十分な値を有し、下付き文字z’及びo’は、z’>4、o’>1である値を有し、数量(z’+o’)は、キャップされていない樹脂に500g/mol~5,000g/molの数平均分子量を与えるのに十分な値を有する、(B-2)キャップされていない樹脂と、を含み、(B-1)キャップされた樹脂及び(B-2)キャップされていない樹脂は、出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて44.8重量%~65.8重量%の合計量で存在し、ただし、(B-2)キャップされていない樹脂:(B-1)キャップされた樹脂の重量比{(B-2):(B-1)比}が0.032:1~0.125:1であり、
(A)ポリジオルガノシロキサンガム成分及び(B)ポリオルガノシリケート樹脂成分は、(B):(A)の重量比(樹脂:ガム比)≦2.0:1で存在する、(B)ポリオルガノシリケート樹脂成分と、
出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて、0.01重量%~5重量%の(C)ヒドロシリル化反応触媒と、
(D)単位式:(RM
2SiO2/2)e(HRMSiO2/2)f(RM
2HSiO1/2)g(RM
3SiO1/2)hのポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、式中、下付き文字e≧0、下付き文字f≧0、数量(e+f)は4~500であり、下付き文字gは0、1、又は2であり、下付き文字hは0、1、又は2であり、数量(g+h)=2、及び数量(f+g)≧3であり、(D)ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、(A)ポリジオルガノシロキサンガムの脂肪族不飽和炭化水素基に対するケイ素結合水素原子のモル比{(D):(A)比}の20.8:1~57.7:1を与えるのに十分な量で存在する、(D)ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、
出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて、0.05重量%~4.64重量%の(E)ホウ酸トリアルキルと、
出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて、0~5重量%の(F)ヒドロシリル化反応抑制剤と、
組成物中の全出発物質の合計重量に基づいて、>0重量%~90重量%の(G)溶剤と、
出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて、0~5重量%の(H)定着添加剤と、を含む。
【0010】
(A)ポリジオルガノシロキサンガム成分
ヒドロシリル化反応硬化性組成物は、(A)ポリジオルガノシロキサンガム成分を含む。ポリジオルガノシロキサンガム成分は、(A-1)脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガム及び(A-2)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムを含む。
【0011】
出発物質(A-1)である脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムは、単位式:(RM
2RUSiO1/2)2(RM
2SiO2/2)aを有し、式中、各RMは、脂肪族不飽和を含まない炭素原子1~30個の独立して選択される一価炭化水素基であり、各RUは、独立して選択される炭素原子2~30個の一価脂肪族不飽和炭化水素基であり、下付き文字aは、(A-1)脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムに20ミル(0.51mm)~80ミル(0.203mm)、あるいは30ミル(0.76mm)~70ミル(1.78mm)、あるいは55ミル(1.40mm)~65ミル(1.65mm)の可塑性を与えるのに十分な値を有し、その可塑性は、ASTM D926に基づいて重量4.2gの球状試料に1kgの荷重を25℃で3分間加えることによって測定され、結果は1/1000インチ(ミル)で測定され、手順はASTM D926に基づく。
【0012】
単位式(A-1)において、各RMは、脂肪族不飽和を含まない炭素原子1~30個の独立して選択される一価炭化水素基である。あるいは、各RMは1~12個の炭素原子、あるいは1~6個の炭素原子を有し得る。RMに好適な一価炭化水素基は、アルキル基並びにアリール基及びアラルキル基などの芳香族基によって例示される。「アルキル」は、環状、分岐状又は非分岐状の飽和一価炭化水素基を意味する。アルキルは、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソプロピル及び/又はn-プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル及び/又はsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル及び/又はtert-ペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシル、並びに炭素原子6個以上の分岐状アルキル基と、シクロペンチル及びシクロヘキシルなどの環状アルキル基と、によって例示されるが、これらに限定されない。「アリール」とは、完全に不飽和の環状炭化水素基を意味する。アリールは、シクロペンタジエニル、フェニル、アントラセニル及びナフチルによって例示されるが、これらに限定されない。単環式アリール基は、炭素原子5~9個、あるいは炭素原子6~7個、あるいは炭素原子5~6個を有し得る。多環式アリール基は、炭素原子10~17個、あるいは炭素原子10~14個、あるいは炭素原子12~14個を有し得る。「アラルキル」とは、ペンダント及び/若しくは末端アリール基を有するアルキル基、又はペンダントアルキル基を有するアリール基を意味する。例示的なアラルキル基としては、トリル、キシリル、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル及びフェニルブチルが挙げられる。あるいは、各RMは、アルキル及びアリールからなる群から独立して選択されてもよい。あるいは、各RMはメチル及びフェニルから独立して選択されてもよい。あるいは、各RMはアルキルであってもよい。あるいは、各RMはメチルであってもよい。
【0013】
単位式(A-1)において、各RUは、独立して選択される炭素原子2~30個の一価脂肪族不飽和炭化水素基である。あるいは、各RUは、2~12個の炭素原子、あるいは2~6個の炭素原子を有し得る。好適な一価脂肪族不飽和炭化水素基としては、アルケニル基及びアルキニル基が挙げられる。「アルケニル」とは、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する分岐状又は非分岐状の一価炭化水素基を意味する。好適なアルケニル基は、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、及びヘプテニル(炭素原子3~7個の分岐状及び直鎖状異性体を含む);及びシクロヘキセニルによって例示される。「アルキニル」とは、1つ以上の炭素-炭素三重結合を有する分岐状又は非分岐状の一価炭化水素基を意味する。好適なアルキニル基は、エチニル、プロピニル、及びブチニル(炭素原子2~4個の分岐状異性体及び直鎖状異性体を含む)によって例示される。あるいは、各RUは、ビニル、アリル、又はヘキセニルなどのアルケニルであってもよい。
【0014】
ポリジオルガノシロキサンガムは、当該技術分野において既知であり、対応するオルガノハロシランの加水分解及び縮合、又は環状ポリジオルガノシロキサンの平衡化などの方法により調製することができる。ヒドロシリル化反応硬化性組成物での使用に好適なポリジオルガノシロキサンガムの例は、
i)ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
ii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニル)シロキサン、
iii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニル)シロキサン、
iv)フェニル、メチル、ビニル-シロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
v)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
vi)ジメチルヘキセニル-シロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニル)シロキサン、
vii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニル)シロキサン、
viii)i)~vii)のうちの2つ以上の組み合わせによって例示される。あるいは、ポリジオルガノシロキサンガムは、i)ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
v)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、並びにi)及びv)の組み合わせ、からなる群から選択されてもよい。
【0015】
出発物質(A-1)である脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムは、ヒドロシリル化反応硬化性組成物中に、出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて、少なくとも32.2重量%、あるいは少なくとも34重量%、あるいは少なくとも34.2重量%の量で存在し、同時に、この量は、最大44.62重量%、あるいは最大35重量%、あるいは最大34.4重量%であってもよい。あるいは、(A-1)脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムの量は、出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて、32.2重量%~44.6重量%、あるいは34重量%~35重量%であってもよい。
【0016】
(A-1)脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガムに加えて、出発物質(A)ポリジオルガノシロキサン成分は、単位式:(RM
2RUSiO1/2)2(RM
2SiO2/2)a’の(A-2)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムを任意選択的に更に含んでもよく、式中、RM及びRUは、上記のとおりであり、下付き文字a’は、(A-2)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムに20ミル(0.51mm)~80ミル(2.03mm)、あるいは30ミル(0.76mm)~70ミル(1.78mm)、あるいは45ミル(1.14mm)~65ミル(1.65mm)の可塑性を与えるのに十分な値を有し、その可塑性は、ASTM D926に基づいて重量4.2gの球状試料に1kgの荷重を25℃で3分間加えることによって測定され、結果は1/1000インチ(ミル)で測定され、手順はASTM D926に基づく。
【0017】
出発物質(A-2)としての使用に好適なヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムは、当該技術分野において既知であり、対応するオルガノハロシランの加水分解及び縮合、又は環状ポリジオルガノシロキサンの平衡化などの方法によって調製することができる。ヒドロシリル化反応硬化性組成物における出発物質(A-2)としての使用に好適なヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムの例は、
i)ビス-ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン、
ii)ビス-ヒドロキシル末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、
iii)ビス-ヒドロキシル末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、
iv)フェニル、メチル、ヒドロキシル-シロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
v)i)~iv)のうちの2つ以上の組み合わせ、によって例示される。あるいは、出発物質(A-2)は、ビス-ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンを含む。
【0018】
出発物質(A-2)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムは、ヒドロシリル化反応硬化性組成物中に、出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて、0重量%~<1.2重量%の量で存在する。あるいは、(A-2)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムは、少なくとも0.1重量%、あるいは少なくとも0.13重量%の量で存在してもよく、同時に、この量は、同じ基準で、最大1.19%、あるいは最大0.5%であってもよい。
【0019】
出発物質(A-1)脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンガム及び(A-2)ビス-ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンは、重量比(A-1):(A-2)が≧37.4:1であり得るような量で存在し得る。あるいは、重量比(A-1):(A-2)は、少なくとも37.4:1、あるいは少なくとも50:1、あるいは少なくとも100:1、あるいは少なくとも150:1、あるいは少なくとも200:1、あるいは少なくとも250:1、あるいは少なくとも270:1であってもよく、同時に、重量比(A-1):(A-2)は、(A-2)ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサンガムが存在する場合、最大350:1、あるいは最大340:1、あるいは最大325:1、あるいは最大300:1、あるいは最大275:1であってもよい。
【0020】
(B)ポリオルガノシリケート樹脂成分
ヒドロシリル化反応硬化性組成物は、出発物質(B)であるポリオルガノシリケート樹脂成分を更に含み、ポリオルガノシリケート樹脂成分は、(B-1)キャップされた樹脂及び(B-2)キャップされていない樹脂を含む。式RM
3SiO1/2(式中、RMは上記のとおりである)の一官能性単位(「M」単位)、及び式SiO4/2の四官能性シリケート単位(「Q」単位)を含む、ポリオルガノシリケート樹脂。あるいは、RM基の少なくとも1/3、あるいは少なくとも2/3はアルキル基(例えば、メチル基)である。あるいは、M単位は(Me3SiO1/2)及び(Me2PhSiO1/2)により例示され得る。ポリオルガノシリケート樹脂は、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びヘプタンなどの液体炭化水素によって例示される下記のものなどの溶剤に、又は低粘度の直鎖状及び環状ポリジオルガノシロキサンなどの液体有機ケイ素化合物に可溶性である。
【0021】
調製された場合、ポリオルガノシリケート樹脂は、上記のM単位及びQ単位を含み、ポリオルガノシロキサンはケイ素結合ヒドロキシル基を有する単位を更に含み、式Si(OSiRM
3)4[式中、RMは上記のとおりである]のネオペンタマーを含んでもよく、例えば、ネオペンタマーはテトラキス(トリメチルシロキシ)シランであってもよい。29SiNMRスペクトル法を用いて、M単位及びQ単位のヒドロキシル含有量及びモル比を測定することができ、この比は、M単位及びQ単位をネオペンタマーから外した{M(樹脂)}/{Q(樹脂)}として表される。M:Q比は、ポリオルガノシリケート樹脂における樹脂性部分のトリオルガノシロキシ基(M単位)の総数の、樹脂性部分中のシリケート基(Q単位)の総数に対するモル比を表す。M:Q比は、0.5:1~1.5:1であってもよい。
【0022】
ポリオルガノシリケート樹脂のMnは、存在するRMによって表される炭化水素基の種類などの様々な要因によって異なる。ポリオルガノシリケート樹脂のMnは、ネオペンタマーを表すピークが測定値から除外されるとき、GPCを使用して測定される数平均分子量を指す。ポリオルガノシリケート樹脂のMnは、500g/mol~5,000g/mol、あるいは2,500g/mol~5,000g/mol、あるいは2,700g/mol~4,900g/mol、あるいは2,700g/mol~4,700g/molである。Mnを測定するための好適なGPC試験方法は、米国特許第9,593,209号第31欄の参考例1にて開示されている。
【0023】
米国特許第8,580,073号(第3欄5行目~第4欄31行目)、及び米国特許出願公開第2016/0376482号(段落[0023]~[0026])は、MQ樹脂を開示するために参照により本明細書に組み込まれ、このMQ樹脂は、本明細書に記載のヒドロシリル化反応硬化性組成物での使用に好適なポリオルガノシリケート樹脂である。ポリオルガノシリケート樹脂は、対応するシランの共加水分解又はシリカヒドロゾルキャッピング法などの任意の好適な方法によって調製することができる。ポリオルガノシリケート樹脂は、Daudtらの米国特許第2,676,182号、Rivers-Farrellらの米国特許第4,611,042号、及びButlerらの米国特許第4,774,310号に開示されるものなどのシリカヒドロゾルキャッピングプロセスによって調製され得る。上記のDaudtらの方法は、酸性条件下でシリカヒドロゾルを、トリメチルクロロシランなどの加水分解性トリオルガノシラン、ヘキサメチルジシロキサンなどのシロキサン又はこれらの混合物と反応させることと、M単位及びQ単位を有するコポリマーを回収することと、を伴う。得られるコポリマーは概して、2~5重量%のヒドロキシル基を含有する。
【0024】
ポリオルガノシリケート樹脂を調製するために使用される中間体は、トリオルガノシラン及び4つの加水分解性置換基を含むシラン又はアルカリ金属シリケートであることができる。トリオルガノシランは、式RM
3SiX1(式中、RMは上記のとおりであり、X1は、ハロゲン、アルコキシ、アシルオキシ、ヒドロキシル、オキシモ、又はケトキシモなどの加水分解性置換基、あるいはハロゲン、アルコキシ、又はヒドロキシルなどの加水分解性置換基を表す)を有し得る。4つの加水分解性置換基を有するシランは、式SiX2
4を有し得、式中、各X2は、ハロゲン、アルコキシ、又はヒドロキシルである。好適なアルカリ金属シリケートとしては、ナトリウムシリケートが挙げられる。
【0025】
上記のように調製されたポリオルガノシリケート樹脂はキャップされていない樹脂であり、この樹脂は典型的には、ケイ素結合ヒドロキシル基、すなわち式HOSi3/2及び/又はHORM
2SiO1/2のものを含有する。ポリオルガノシリケート樹脂は、NMR分光法による測定で>3%~10%であるケイ素結合ヒドロキシル基を含んでもよい。特定の用途では、ケイ素結合ヒドロキシル基の量は、≦2%、あるいは≦0.89%、あるいは<0.7%、あるいは0.3%未満、あるいは1%未満、あるいは0.3%~2%であることが望ましい場合がある。ポリオルガノシリケート樹脂の調製中に形成されるケイ素結合ヒドロキシル基は、キャッピングと呼ばれるプロセスにおいて、シリコーン樹脂を適切な末端基を含有するシラン、ジシロキサン又はジシラザンと反応させることで、トリ炭化水素シロキサン基又は異なる加水分解性基に変換することができる。加水分解性基を含有するシランは、ポリオルガノシリケート樹脂におけるケイ素結合ヒドロキシル基と反応させるのに必要な量よりもモル過剰で添加してよい。
【0026】
ポリオルガノシリケート樹脂がキャップされた樹脂である場合、キャップされた樹脂は、式HOSiO3/2及び/又はHORM
2SiO1/2(式中、RMは上記のとおりである)で表される単位を2%以下、あるいは0.7%以下、あるいは0.3%以下、あるいは0.3%~0.8%含んでもよい。ポリオルガノシロキサン中に存在するシラノール基の濃度は、上記のようにNMR分光法を使用して測定することができる。
【0027】
したがって、ポリオルガノシリケート樹脂成分は、(B-1)上記のようなキャップされた樹脂、及び(B-2)上記のようなキャップされていない樹脂を含む。キャップされた樹脂は、単位式:(RM
3SiO1/2)z(SiO4/2)oZpを有していてもよく、式中、RMは、上記のとおりであり、下付き文字z及びoは、o>1、下付き文字z>4である値を有し、数量(o+z)は、キャップされた樹脂に上記のMn(例えば、500g/mol~5,000g/mol、あるいは1,000g/mol~4,700g/mol、あるいは2,900g/mol~4,700g/mol、あるいは2,900g/mol~4,100g/mol)を与えるのに十分な値を有し、下付き文字pは、キャップされた樹脂に上記のような加水分解性基含有量(例えば、0~2%、あるいは0~0.7%、あるいは0~0.3%)を与えるのに十分な値を有する。出発物質(B-2)であるキャップされていない樹脂は、単位式(RM
3SiO1/2)z’(SiO4/2)o’Zp’を有していてもよく、式中、RMは、上記のとおりであり、下付き文字z’及びo’は、o’>1、下付き文字z’>4である値を有し、数量(o’+z’)は、キャップされた樹脂に上記のMn(例えば、500g/mol~5,000g/mol、あるいは1,000g/mol~4,700g/mol、あるいは2,700g/mol~4,700g/mol、あるいは2,700g/mol~4,300g/mol)を与えるのに十分な値を有し、下付き文字p’は、キャップされた樹脂に上記のような加水分解性基含有量(例えば、>3%~10%)を与えるのに十分な値を有する。
【0028】
ヒドロシリル化反応硬化性組成物は、出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて(例えば、ヒドロシリル化反応硬化性組成物中の溶剤を除く全出発物質の合計重量に基づいて)、44.8重量%~65.8重量%、あるいは46.2重量%~65.8重量%、あるいは61.5重量%~62.6重量%の量で(B)ポリオルガノシリケート樹脂を含む。出発物質(B)中のキャップされた樹脂及びキャップされていない樹脂の量は、キャップされていない樹脂:キャップされた樹脂の重量比{すなわち、(B-2):(B-1)比}が0.032:1~0.125:1、あるいは0.118:1~0.124:1、あるいは0.123:1~0.124:1を与えるのに十分であり得る。あるいは、(B-2):(B-1)比は、少なくとも0.032、あるいは少なくとも0.11、あるいは少なくとも0.118であってもよく、同時に、(B-2):(B-1)比は、最大0.125、あるいは最大0.124、あるいは最大0.12であってもよい。
【0029】
出発物質(A)ポリジオルガノシロキサンガム成分及び出発物質(B)ポリオルガノシリケート樹脂成分は、ヒドロシリル化反応硬化性組成物中に、(B)ポリオルガノシリケート樹脂成分:(A)ポリジオルガノシロキサンガム成分の重量比{すなわち、(B):(A)比}≦2.0:1を与えるのに十分な量で存在してもよい。あるいは、(B):(A)比は、少なくとも1.5:1、あるいは<1.8:1であってもよく、同時に、(B):(A)比は、最大2.0:1、あるいは最大1.8:1であってもよい。あるいは、(B):(A)比は、1.0:1~2.0:1、あるいは1.8:1~1.9:1であってもよい。
【0030】
(C)ヒドロシリル化反応触媒
ヒドロシリル化反応硬化性組成物中の出発物質(C)は、ヒドロシリル化反応触媒である。ヒドロシリル化反応触媒は、当該技術分野において既知であり、市販されている。ヒドロシリル化反応触媒としては、白金族金属触媒が挙げられる。このようなヒドロシリル化反応触媒は、(C-1)白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、及びイリジウムから選択される金属であり得る;あるいは白金、ルテニウム、及びイリジウムであり得る;あるいは、金属は白金であり得る。あるいは、ヒドロシリル化反応触媒は、(C-2)そのような金属の化合物、例えば、クロリドトリス(トリフェニルホスファン)ロジウム(I)(Wilkinsonの触媒)、[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ジクロロジロジウム若しくは[1,2-ビス(ジエチルホスピノ(diethylphospino))エタン]ジクロロジロジウムなどのロジウムジホスフィンキレート、塩化白金酸(Speierの触媒)、塩化白金酸六水和物、又は二塩化白金であってもよい。あるいは、ヒドロシリル化反応触媒は、(C-3)白金族金属化合物とアルケニル官能性オルガノポリシロキサンオリゴマーとの錯体、又は(C-4)マトリックス若しくはコアシェル型構造中にマイクロカプセル化された白金族金属化合物であってもよい。白金アルケニル官能性オルガノポリシロキサンオリゴマーの錯体としては、1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの白金錯体(Karstedt触媒)が挙げられる。あるいは、ヒドロシリル化触媒は、(C-5)樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化された錯体を含んでもよい。例示的なヒドロシリル化反応触媒は、Speierの米国特許第2,823,218号、Ashbyの同第3,159,601号、Lamoreauxの同第3,220,972号、Chalkらの同第3,296,291号、Willingの同第3,419,593号、Modicの同第3,516,946号、Karstedtの同第3,715,334号、Karstedtの同第3,814,730号、Chandraの同第3,928,629号、Leeらの同第3,989,668号、Leeらの同第4,766,176号、Leeらの同第4,784,879号、Togashiの同第5,017,654号、Chungらの同第5,036,117号、及びBrownの同第5,175,325号、並びにTogashiらの欧州特許第0347895(A)号に記載されている。ヒドロシリル化反応触媒は、市販されており、例えば、SYL-OFF(商標)4000 Catalyst及びSYL-OFF(商標)2700は、Dow Silicones Corporationから入手可能である。
【0031】
本明細書で使用されるヒドロシリル化反応触媒の量は、出発物質(D)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン及び(A)ポリジオルガノシロキサンガム成分の選択、並びにこれらそれぞれのケイ素結合水素原子(SiH)及び脂肪族不飽和基の含有量、並びに選択された触媒中の白金族金属の含有量などの様々な要因によって異なるが、ヒドロシリル化反応触媒の量は、SiHと脂肪族不飽和基とのヒドロシリル化反応に触媒作用を及ぼすのに十分であり、あるいは、触媒の量は、ケイ素結合水素原子及び脂肪族不飽和炭化水素基を含有する出発物質の合計重量に基づいて、1ppm~6,000ppmの白金族金属、あるいは、同じ基準の下で1ppm~1,000ppm、あるいは1ppm~100ppmの白金族金属を与えるのに十分である。あるいは、ヒドロシリル化反応触媒が白金-オルガノシロキサン錯体を含む場合、ヒドロシリル化反応触媒の量は、出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて(例えば、ヒドロシリル化反応硬化性組成物中の溶剤を除く全出発物質の合計重量に基づいて)、0.01%~5%であってもよい。
【0032】
(D)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン
ヒドロシリル化反応硬化性組成物中の出発物質(D)は、単位式:(RM
2SiO2/2)e(HRMSiO2/2)f(RM
2HSiO1/2)g(RM
3SiO1/2)hのポリオルガノハイドロジェンシロキサンであり、式中、RMは上記のとおりであり、下付き文字e≧0、下付き文字f≧0、数量(e+f)は4~500であり、下付き文字gは0、1、又は2であり、下付き文字hは0、1、又は2であり、数量(g+h)=2、及び数量(f+g)≧3である。あるいは、数量(f+g)は、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンに0.5%~2%、あるいは0.6%~1.5%のケイ素結合水素含有量を与えるのに十分であってもよく、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンのケイ素結合水素(Si-H)含有量は、ASTM E168に従って定量的赤外分析を使用して決定することができる。
【0033】
好適なポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、
(D-1)ビス-ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチルハイドロジェン)シロキサン、
(D-2)ビス-ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、
(D-3)ビス-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチルハイドロジェン)シロキサン、
(D-4)ビス-トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、及び
(D-5)(D-1)、(D-2)、(D-3)、及び(D-4)のうちの2つ以上の組み合わせによって例示される。ポリオルガノハイドロジェンシロキサンの調製方法、例えば、オルガノヒドリドハロシランの加水分解及び縮合は、当該技術分野において既知であり、例えば、Jeramらの米国特許第3,957,713号及びHardmanらの米国特許第4,329,273号を参照されたい。ポリオルガノハイドロジェンシロキサンはまた、例えば、Speierらの米国特許第2,823,218号に記載されるように調製することもでき、これは、オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマー及び直鎖状ポリマー、例えば、1,1,1,3,3-ペンタメチルジシロキサン、ビス-トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサンホモポリマー、ビス-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチルハイドロジェン)シロキサンコポリマー、及び環状ポリメチルハイドロジェンシロキサンを開示している。ポリオルガノハイドロジェンシロキサンも市販されており、例えば、Gelest,Inc.(Morrisville,Pennsylvania,USA)から入手可能なものなど、例えば、HMS-H271、HMS-071、HMS-993、HMS-301、HMS-301 R、HMS-031、HMS-991、HMS-992、HMS-993、HMS-082、HMS-151、HMS-013、HMS-053、HAM-301、HPM-502、及びHMS-HM271が挙げられる。
【0034】
ヒドロシリル化反応硬化性組成物中のポリオルガノハイドロジェンシロキサンの量は、出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて0.1%~5%である。あるいは、ヒドロシリル化反応硬化性組成物中のポリオルガノハイドロジェンシロキサンの量は、少なくとも0.1%、あるいは少なくとも0.25%、あるいは少なくとも0.3%であってもよく、同時に、この量は、同じ基準で、最大5%、あるいは最大2.5%、あるいは最大1.5%、あるいは最大1%であってもよい。
【0035】
ケイ素結合水素対脂肪族不飽和基の比は、ヒドロシリル化硬化プロセスに依存する場合に重要である。概ね、これは、組成物中の脂肪族不飽和基(例えば、ビニル[V])の総重量%と、組成物中のケイ素結合水素[H]の総重量%とを計算することによって決定され、ここで、水素の分子量を1、ビニルの分子量を27とすると、ビニルに対するケイ素結合水素のモル比は27[H]/[V]である。出発物質(A)ポリジオルガノシロキサンガム成分及び(D)ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、ヒドロシリル化反応硬化性組成物中に、ケイ素結合水素原子対脂肪族不飽和炭化水素基のモル比{(D):(A)比}が、少なくとも20.8:1、あるいは少なくとも28.7:1を与えるのに十分な量で存在してもよく、同時に、この比は、最大57.7:1、あるいは最大54.7:1であってもよい。あるいは、(D):(A)比は、20.8:1~57.7:1、あるいは28.7:1~54.7:1、あるいは20.8:1~28.8:1、あるいは28.7:1~57.7:1であってもよい。
【0036】
(E)ホウ酸トリアルキル
ヒドロシリル化反応硬化性組成物中の出発物質(E)は、式B(ORA)3のホウ酸トリアルキルであり、式中、各RAは、炭素原子1~30個、あるいは炭素原子1~12個、あるいは炭素原子1~6個の独立して選択されるアルキル基である。アルキル基は、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソプロピル若しくはn-プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル、若しくはsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル、若しくはtert-ペンチル)、ヘキシル、炭素原子6個の分岐状アルキル基、又はシクロペンチル若しくはシクロヘキシルなどの環状アルキル基であってもよい。好適なホウ酸トリアルキルの例としては、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリブチル、及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。あるいは、ホウ酸トリアルキルは、ホウ酸トリエチルであってもよい。
【0037】
ホウ酸トリアルキルは、当技術分野において既知であり、Stangeの米国特許第3,020,308号に記載されているような既知の方法によって製造することができる。ホウ酸トリアルキルも市販されており、例えば、ホウ酸トリエチルは、Meryer(Shanghai)Chemical Technology Co.,Ltd.,から入手可能であり、また、シリコーン組成物用のホウ酸トリアルキル添加剤も当技術分野において既知であり、例えば、Dow Silicones Corporationから入手可能なDOWSIL(商標)7429 PSA Additiveが挙げられる。
【0038】
ヒドロシリル化硬化性組成物に添加される(E)ホウ酸トリアルキルの量は、出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて、0.05重量%~4.64重量%である。あるいは、(E)ホウ酸トリアルキルの量は、少なくとも0.05重量%、あるいは少なくとも0.5重量%、あるいは少なくとも0.8%であってもよく、同時に、この量は、同じ基準で、最大4.64重量%、あるいは最大4重量%、あるいは最大2重量%、あるいは最大1.5重量%、あるいは最大1.0重量%であってもよい。あるいは、(E)ホウ酸トリアルキルの量は、同じ基準で、0.5重量%~4.64重量%、あるいは0.8重量%~4.64重量%であってもよい。
【0039】
(F)ヒドロシリル化反応抑制剤
出発物質(F)は、任意選択のヒドロシリル化反応抑制剤(抑制剤)であり、これは、抑制剤を除いて同じ出発物質を含有する組成物と比べて、ヒドロシリル化反応の速度を変えるために使用することができる。出発物質(F)は、(F-1)アセチレン系アルコール、(F-2)シリル化アセチレン系アルコール、(F-3)エン-イン化合物、(F-4)トリアゾール、(F-5)ホスフィン、(F-6)メルカプタン、(F-7)ヒドラジン、(F-8)アミン、(F-9)フマル酸塩、(F-10)マレイン酸塩、(F-11)エーテル、(F-12)一酸化炭素、(F-13)アルケニル官能性シロキサンオリゴマー、及び(F-14)それらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されてもよい。あるいは、ヒドロシリル化反応抑制剤は、(F-1)アセチレン系アルコール、(F-2)シリル化アセチレン系アルコール、(F-9)フマル酸塩、(F-10)マレイン酸塩、(F-13)一酸化炭素、(F-14)それらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0040】
アセチレン系アルコールは、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-ブチン-3-オール、1-プロピン-3-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3-フェニル-1-ブチン-3-オール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、及び1-エチニル-1-シクロヘキサノール、及びそれらの組み合わせによって例示される。アセチレン系アルコールは、当該技術分野において既知であり、様々な供給元から市販されており、例えば、Kookootsedesらの米国特許第3,445,420号を参照されたい。あるいは、抑制剤は、シリル化アセチレン系化合物であってもよい。理論に束縛されるものではないが、シリル化アセチレン系化合物を添加すると、シリル化アセチレン系化合物を含有していない、又は上記したものなどの有機アセチレン系アルコール阻害剤を含有する出発物質のヒドロシリル化による反応生成物と比較して、ヒドロシリル化反応から調製される反応生成物の黄変が低減すると考えられる。シリル化アセチレン系化合物は、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリメチルシラン、((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シランメチルビニルシラン、ビス((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)ジメチルシラン、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シラン、メチル(トリス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ))シラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリエチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)メチルトリフルオロプロピルシラン、(3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オキシ)トリメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルビニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルビニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)トリメチルシラン、及びそれらの組み合わせによって例示される。本明細書における抑制剤として有用なシリル化アセチレン系化合物は、当該技術分野において既知の方法によって調製することができ、例えば、Bilgrienらの米国特許第6,677,407号は、酸受容体の存在下でクロロシランと反応させることによって上記のアセチレン系アルコールをシリル化することを開示している。
【0041】
あるいは、抑制剤は、エン-イン化合物、例えば、3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン、及びこれらの組み合わせであってもよい。あるいは、抑制剤は、ベンゾトリアゾールによって例示されるトリアゾールを含んでもよい。あるいは、抑制剤は、ホスフィンを含んでもよい。あるいは、抑制剤は、メルカプタンを含んでもよい。あるいは、抑制剤は、ヒドラジンを含んでもよい。あるいは、抑制剤は、アミンを含んでもよい。アミンは、テトラメチルエチレンジアミン、3-ジメチルアミノ-1-プロピン、n-メチルプロパルギルアミン、プロパルギルアミン、1-エチニルシクロヘキシルアミン、又はそれらの組み合わせによって例示される。あるいは、抑制剤は、フマル酸塩を含んでもよい。フマル酸塩としては、フマル酸ジエチルなどのフマル酸ジアルキル、フマル酸ジアリルなどのフマル酸ジアルケニル、フマル酸ビス-(メトキシメチル)エチルなどのフマル酸ジアルコキシアルキルが挙げられる。あるいは、抑制剤は、マレイン酸塩を含んでもよい。マレイン酸塩としては、マレイン酸ジエチルなどのマレイン酸ジアルキル、マレイン酸ジアリルなどのマレイン酸ジアルケニル、及びマレイン酸ビス-(メトキシメチル)エチルなどのマレイン酸ジアルコキシアルキルが挙げられる。あるいは、抑制剤は、エーテルを含んでもよい。
【0042】
あるいは、抑制剤は、一酸化炭素を含んでもよい。あるいは、抑制剤は、アルケニル官能性シロキサンオリゴマーを含んでもよく、これは、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、1,3-ジビニル-1,3-ジフェニル-1,3-ジメチルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、及びそれらの2つ以上の組み合わせによって例示されるメチルビニルシクロシロキサンなどの環状又は直鎖状であってもよい。上記の抑制剤として有用な化合物は、例えば、Sigma-Aldrich Inc.又はGelest,Inc.から市販されており、当技術分野において既知であり、例えば、Leeらの米国特許第3,989,667号を参照されたい。本明細書で使用するのに好適な抑制剤は、米国特許出願公開第20007/0099007号の段落[0148]~[0165]に安定剤Eとして記載されているものによって例示される。
【0043】
抑制剤の量は、所望のポットライフ、組成物が一部型組成物であるか多部型組成物であるか、使用される特定の抑制剤、及び(C)ヒドロシリル化反応触媒の選択及び量などの様々な要因によって異なる。しかしながら、存在する場合、(F)抑制剤の量は、ヒドロシリル化反応硬化性組成物中の出発物質(A)~(F)の合計重量に基づいて、0%~5%、あるいは0%~1%、あるいは0.001%~1%、あるいは0.01%~0.5%、あるいは0.0025%~0.025%の範囲であってもよい。
【0044】
(G)溶剤
ヒドロシリル化反応硬化性組成物は、出発物質(G)である溶剤を更に含む。溶剤は、炭化水素、ケトン、酢酸エステル、エーテル、及び/又は平均重合度が3~10の環状シロキサンなどの有機溶剤であってもよい。溶剤に好適な炭化水素は、(G-1)ベンゼン、ベンゼン、トルエン、若しくはキシレンなどの芳香族炭化水素、(G-2)ヘキサン、ヘプタン、オクタン、若しくはイソパラフィンなどの脂肪族炭化水素、又は(G-3)これらの組み合わせ、であり得る。あるいは、溶剤は、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテルなどのグリコールエーテルであってもよい。好適なケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトンが挙げられる。好適な酢酸エステルとしては、酢酸エチル又は酢酸イソブチルが挙げられる。好適なエーテルとしては、ジイソプロピルエーテル又は1,4-ジオキサンが挙げられる。重合度が3~10、あるいは3~6である好適な環状シロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、及び/又はデカメチルシクロペンタシロキサンが挙げられる。あるいは、溶剤は、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘプタン、エチルベンゼン、酢酸エチル、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0045】
溶剤の量は、選択された溶剤の種類、及びヒドロシリル化反応硬化性組成物に選択された他の出発物質の量及び種類などの様々な要因によって異なる。しかしながら、溶剤の量は、ヒドロシリル化反応硬化性組成物中の全出発物質の合計重量に基づいて、>0%~90%、あるいは0%~60%、あるいは20%~60%、あるいは45%~65%、あるいは50%~60%の範囲であってもよい。溶剤は、例えば、上記の1つ以上の出発物質の混合及び送達を補助するために、ヒドロシリル化反応硬化性組成物の調製中に添加することができる。溶剤の全て又は一部分を、他出発物質のうち1つ以上と共に添加してもよい。例えば、ポリオルガノシリケート樹脂及び/又はヒドロシリル化反応触媒を、ヒドロシリル化反応硬化性組成物中の他出発物質と組み合わせる前に溶剤に溶解させてもよい。溶剤の全て又は一部分を、任意でヒドロシリル化反応硬化性組成物の調製後に除去してもよい。
【0046】
(H)定着添加剤
ヒドロシリル化反応硬化性組成物中の出発物質(H)は、定着添加剤である。理論に束縛されるものではないが、定着添加剤は、本明細書に記載のヒドロシリル化反応硬化性組成物を硬化することによって調製されるシリコーン感圧接着剤による基材への結合を容易にすると考えられる。
【0047】
出発物質(H)に好適な定着添加剤としては、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、及びビス(トリメトキシシリルヘキサンなどのシランカップリング剤、並びに当該シランカップリング剤の混合物又は反応混合物が挙げられる。あるいは、定着添加剤は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、又は3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランであってもよい。
【0048】
他の好適な定着添加剤は、ビニルアルコキシシランとエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物;ビニルアルコキシシランとエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物;並びに1分子当たり少なくとも1個の脂肪族不飽和炭化水素基及び少なくとも1つの加水分解性基を有するポリオルガノシロキサンとエポキシ官能性アルコキシシランとの組み合わせ(例えば、物理的なブレンド及び/又は反応生成物)(例えば、ヒドロキシ末端ビニル官能性ポリジメチルシロキサンとグリシドキシプロピルトリメトキシシランとの組み合わせ)により例示される。
【0049】
例示的な定着添加剤は、当技術分野において既知であり、例えば、米国特許第9,562,149号、米国特許出願公開第2003/0088042号、米国特許出願公開第2004/0254274号、米国特許出願公開第2005/0038188号、米国特許出願公開第2012/0328863号の段落[0091]、及び米国特許出願公開第2017/0233612号の段落[0041]、並びに欧州特許第0 556 023号に開示されている。定着添加剤は、市販されている。例えば、SYL-OFF(商標)9250、SYL-OFF(商標)9176、SYL-OFF(商標)297、及びSYL-OFF(商標)397は、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)から入手可能である。他の例示的な定着添加剤としては、(G-1)ビニルトリアセトキシシラン、(G-2)グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、並びに(G-3)(G-1)及び(G-2)の組み合わせが挙げられる。この組み合わせ(G-3)は、混合物及び/又は反応生成物であってもよい。
【0050】
定着添加剤の量は、シリコーン感圧接着剤を接着させる基材の種類などの様々な要因によって異なる。しかしながら、存在する場合、定着添加剤の量は、ヒドロシリル化反応硬化性組成物中の溶剤を除く全出発物質の合計重量に基づいて、0.5~5%、あるいは0.5%~3%、あるいは0.5%~2.5%であってもよい。
【0051】
ヒドロシリル化反応硬化性組成物の製造方法
ヒドロシリル化反応硬化性組成物は、周囲温度又は高温における混合といった任意の都合のよい手法で上記の全出発物質を組み合わせることを含む方法により、調製することができる。ヒドロシリル化反応抑制剤は、ヒドロシリル化反応触媒の前、例えば、ヒドロシリル化反応硬化性組成物を高温で調製する、及び/又はヒドロシリル化反応硬化性組成物を一部型組成物として調製する際に添加してもよい。
【0052】
本方法は、溶剤中に1つ以上の出発物質(例えば、ヒドロシリル化反応触媒及び/又はポリオルガノシリケート樹脂)を送達することを更に含んでもよく、これら出発物質はヒドロシリル化反応硬化性組成物中の1つ以上の他出発物質と組み合わせる際に溶剤中に溶解させてもよい。当業者であれば、結果として得られるヒドロシリル化反応硬化性組成物が無溶剤である(すなわち、溶剤を含まない、又は出発物質の送達に由来する微量の残留溶剤を含み得る)ことが望ましい場合、出発物質のうち2つ以上を混合した後で溶剤を除去してもよく、この場合、ヒドロシリル化反応硬化性組成物に溶媒を意図的に添加しないことを理解するであろう。
【0053】
あるいは、ヒドロシリル化反応硬化性組成物は、例えば、ヒドロシリル化反応硬化性組成物が使用前に長期間、例えば、ヒドロシリル化反応硬化性組成物を光学シリコーンエラストマー又は他の基材に適用する前に最大6時間保存される場合、多部型組成物として調製され得る。多部型組成物では、ヒドロシリル化反応触媒は、ケイ素結合水素原子を有する任意の出発物質、例えば、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンとは別の部分に保存され、これらの部分は、ヒドロシリル化反応硬化性組成物の使用直前に組み合わされる。
【0054】
例えば、多部型組成物は、混合といった任意の都合のよい手法により、ポリジオルガノシロキサンガム成分、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、及び任意選択的に、1つ以上の他の上記出発物質(ヒドロシリル化反応触媒以外)のうち少なくともいくつかを含む出発物質を組み合わせて基部を形成することにより調製してもよい。硬化剤は、混合といった任意の都合のよい手法により、ポリジオルガノシロキサンガム、ヒドロシリル化反応触媒、及び任意選択的に、1つ以上の他の上記出発物質(ポリオルガノハイドロジェンシロキサン以外)のうち少なくともいくつかを含む出発物質を組み合わせることにより調製してもよい。出発物質は、周囲温度又は高温で混合され得る。ヒドロシリル化反応抑制剤は、基部、硬化剤部、又は別個の追加部のうちの1つ以上に含まれてもよい。ポリオルガノシリケート樹脂を、基部、硬化剤部、又は別個の追加部に添加することができる。あるいは、ポリオルガノシロキサン樹脂を基部に添加してもよい。溶剤を基部に添加してもよい。あるいは、ポリオルガノシリケート樹脂を含む出発物質、及び溶剤の一部又は全てを、別個の追加部に添加してもよい。2部型組成物が使用される場合、基部の量の、硬化剤部に対する重量比は、1:1~10:1の範囲とすることができる。ヒドロシリル化反応硬化性組成物は、ヒドロシリル化反応により硬化して、シリコーン感圧接着剤を形成する。
【0055】
使用方法
上述の方法は、1つ以上の追加の工程を更に含んでもよい。上記のように調製したヒドロシリル化反応硬化性組成物を使用して、基材上に接着剤物品、例えば、シリコーン感圧接着剤(上記のヒドロシリル化反応硬化性組成物を硬化させることにより調製する)を形成してもよい。したがって、本方法は、ヒドロシリル化反応硬化性組成物を基材に適用することを更に含んでもよい。
【0056】
ヒドロシリル化反応硬化性組成物を基材に適用することは、任意の都合のよい手段によって実施することができる。例えば、ヒドロシリル化反応硬化性組成物は、グラビアコーター、コンマコーター、オフセットコーター、オフセットグラビアコーター、ローラーコーター、リバースローラーコーター、エアナイフコーター、カーテンコーター、又はスロットダイによって基材に適用することができる。
【0057】
基材は、ヒドロシリル化反応硬化性組成物を硬化させて基材上にシリコーン感圧接着剤を形成するために使用される硬化条件(後述)に耐えることができる任意の材料であり得る。例えば、120℃以上、あるいは150℃以上の温度での熱処理に耐えることができる任意の基材が好適である。このような基材に好適な材料の例としては、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリアリレート、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルスルフィド(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエチレン(PE)、又はポリプロピレン(PP)などのポリマーフィルムが挙げられる。あるいは、基材はガラスであることができる。あるいは、基材は、例えば、シリコーン感圧接着剤がドライキャスティング法で使用される場合、剥離ライナーであってもよい。基材の厚さは重要ではないが、厚さは、5μm~300μm、あるいは10μm~200μmであってもよい。あるいは、基材は、PI、PET、TPU、PMMA、及び光学シリコーンエラストマーからなる群から選択されてもよい。
【0058】
光学シリコーンエラストマーは、当該技術分野において既知であり、例えば、Hasegawaらの米国特許第8,859,693号及びAkitomoらの米国特許第8,853,332号に記載されている。光学シリコーンエラストマーは市販されている。例えば、光学シリコーンエラストマーのSILASTIC(商標)MS-1001、MS-1002、MS-1003、MS-4002、及びMS-4007は、成形可能な光学シリコーンエラストマーであり、SYLGARD(商標)182、184、及び186は、他の光学シリコーンエラストマーであり、これらは全てDow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)から市販されている。
【0059】
シリコーン感圧接着剤の基材への結合を向上させるために、接着剤物品の形成方法は、ヒドロシリル化反応硬化性組成物を適用する前に基材を処理することを任意選択的に更に含んでもよい。基材の処理は、ヒドロシリル化反応硬化性組成物を基材に適用する前に、プライマーを適用すること、又は基材をコロナ放電処理、エッチング、若しくはプラズマ処理に供することなどの任意の都合のよい手法により実施してもよい。
【0060】
本明細書で記載される方法は、任意選択的に、例えば、接着剤物品の使用前のシリコーン感圧接着剤を保護するために、基材の反対側のシリコーン感圧接着剤に取り外し可能な剥離ライナーを適用すること、を更に含み得る。剥離ライナーは、ヒドロシリル化反応硬化性組成物の硬化前、硬化中、又は硬化後に、あるいは硬化後に、適用することができる。接着剤物品は、光学部品などの、フレキシブル表示装置で使用するための部品であってもよい。
【0061】
フレキシブル表示装置の部品におけるシリコーン感圧接着剤の使用
図1は、フレキシブル表示装置部品(100)の部分断面図を示す。部品(100)は、表面(102a)及び反対側の表面(102b)を有するシリコーン感圧接着剤(102)を含む。シリコーン感圧接着剤(102)の反対側の表面(102b)は、光学シリコーンエラストマー(103)の表面(103a)に、以下の実施例に記載する試験方法によって測定する場合に>500g/inの剥離接着力で接着している。シリコーン感圧接着剤(102)は、10μm~200μmの厚さを有し得る。シリコーン感圧接着剤(102)は、表面(101a)及び反対側の表面(101b)を有する基材(101)に接着している。シリコーン感圧接着剤(102)の表面(102a)は、基材(101)の反対側の表面(101b)に接触している。基材(101)は、PI、PET、TPU、PMMA、及び光学シリコーンゴム(光学シリコーンゴム(103)と同じでも異なっていてもよい)からなる群から選択されてもよく、10μm~200μmの厚さを有し得る。
【0062】
上記のヒドロシリル化反応硬化性組成物及び方法は、ウェットキャスティングによってフレキシブル表示装置部品(100)の製造に使用することができる。例えば、ヒドロシリル化反応硬化性組成物を、基材(101)の反対側の表面(101b)に適用し、硬化して、シリコーン感圧接着剤(102)を形成してもよい。あるいは、本明細書に記載のヒドロシリル化反応硬化性組成物を、光学シリコーンエラストマー(103)の表面(103a)に適用し、硬化して、シリコーン感圧接着剤(102)を形成してもよい。あるいは、ヒドロシリル化反応硬化性組成物を、剥離ライナーの表面に適用し、硬化して、シリコーン感圧接着剤(102)を形成してもよい。その後、光学シリコーンゴム(103)をシリコーン感圧接着剤(102)の反対側の表面(102b)に接触させてもよく、基材(101)をシリコーン感圧接着剤(102)の表面(102a)に接触させてもよい。
【実施例】
【0063】
以下の実施例は、当業者に本発明を例示するために提供されるものであり、請求項に記載の本発明を制限するものとして解釈すべきではない。本明細書で使用した出発物質を表1に記載する。
【0064】
【0065】
表1において、DOWSIL(商標)、SILASTIC(商標)、及びSYL-OFF(商標)ブランドの出発物質は、Dow Silicones Corporationから市販されていた。
【0066】
この参考例1では、ヒドロシリル化反応硬化性組成物の試料を、以下の表2に示す出発物質及び量を使用して、以下のように調製した。量は、特に断らない限り重量部である。出発物質(A)ポリジオルガノシロキサンガム成分及び出発物質(B)ポリオルガノシリケート樹脂成分を、得られる混合物が均質になるまで混合しながら(G)溶剤に溶解した。次に、出発物質(F)ヒドロシリル化反応抑制剤を上記の混合物に完全にブレンドした。次に、出発物質(E)ホウ酸トリアルキルを上記の混合物に完全にブレンドした。次に、出発物質(D)ポリオルガノハイドロジェンシロキサンを上記の混合物に完全にブレンドした。次に、任意選択的に、出発物質(H)定着添加剤(使用する場合)を上記の混合物に完全にブレンドした。最後に、出発物質(C)ヒドロシリル化反応触媒を添加し、均質になるまで混合した。全ての出発物質をRTで混合した。出発物質及びその量(重量による)を以下の表2に示す。
【0067】
【0068】
表2のヒドロシリル化反応硬化性組成物は、出発物質と共に取り込まれた少量の残留溶剤1を含有していた。
【0069】
ヒドロシリル化反応硬化性組成物を基材上にコーティングする前に、DOWSIL(商標)7499 PSA Primerを、120℃のオーブンで0.5分間加熱後に0.20gsmの乾燥コート重量を与えるのに十分な厚さで、基材上にコーティングした。基材上のプライマー層により、基材と硬化したシリコーン感圧接着剤との間に十分な結合がもたらされた。この参考例2では、ヒドロシリル化反応硬化性組成物を、以下の手順に従って基材上にコーティングして硬化させた。上記のように調製した各試料を、140℃のオーブンで2分間加熱後に50μm厚の乾燥コート重量を与えるのに十分な厚さで、50μm厚のPETフィルム上に適用した。硬化後、テープ試料を、以下のステップの剥離接着力試験のために1インチ幅に切断した。
【0070】
得られたテープ試料を、シリコーン感圧接着剤が基材と接触するようにして基材に適用した。基材はSUS及びSiゴムBであり、シリコーン感圧接着剤を基材と接触させた後、試験前に、試料をRTで20分間保持した。この試験を繰り返したが、試料は試験前に70℃で1日保持した。
【0071】
【0072】
この参考例3では、参考例2に記載したように調製した試料を以下のように試験した。上記のように調製した各テープ試料を、各テープを基材から剥離させ、PETフィルムから基材上に移動したシリコーン感圧接着剤がいくらかでも存在するかを確認することにより、SUS及びSiゴムB基材への接着力について試験した。接着力/剥離試験機AR-1500を使用した。各PETシートの幅は1インチであった。剥離速度及び剥離角度は、それぞれ0.3m/分及び180°であった。単位はグラム/inであった。結果を下の表4に示す。
【0073】
SUSに対する接着力の試験方法は、試験規格ASTM D3330を参照する。ステンレス鋼板を溶剤で洗浄する。テープ試料(幅1インチ)をステンレス鋼板に適用する。標準的な2kgの試験ローラーを用いて10mm/秒の速度で各方向に2回回転させる。20分の静止時間後に、AR-1500を用いて剥離角度180°、速度300mm/分で鋼板から試料を剥離する。
【0074】
シリコーンゴムBに対する接着力の試験方法は、試験規格ASTM D3330を参照する。シリコーンゴムシートを溶剤で洗浄する。テープ試料(幅1インチ、25.4mm)をシリコーンゴムシートに適用する。標準的な2kgの試験ローラーを用いて10mm/秒の速度で各方向に2回回転させる。20分の静止時間後に、AR-1500を使用して剥離角度180°、速度300mm/分でシリコーンゴムシートから試料を剥離する。
【0075】
シリコーンゴムに対する接着力(70℃-1日)の試験方法は、試験規格ASTM D3330を参照する。シリコーンゴムシートを溶剤で洗浄する。テープ試料(幅1インチ、25.4mm)をシリコーンゴムシートに適用する。標準的な2kgの試験ローラーを用いて10mm/秒の速度で各方向に2回回転させる。試料を70℃で1日(24時間)エージングした後、AR-1500を使用して剥離角度180°、速度300mm/分でシリコーンゴムシートから試料を剥離する。
【0076】
レオロジーデータ(Tg、-20℃、25℃及び100℃でのG’)の試験方法は、試験規格ASTM D4440-15を参照する。
【0077】
それぞれ0.5mm~1.5mmの厚さを有する硬化した純粋シリコーン感圧接着剤フィルム(基材なし)を、レオロジー特性試験のためにレオメーター(TA DHR-2又はARES-G2のいずれか)の直径8mmの平行プレート上に調製した。異なる温度(すなわち、200℃~-80℃)での損失弾性率G’’及び貯蔵弾性率G’を、1Hz及び歪み0.25%で冷却速度3℃/分において振動モードを用いた温度ランププログラムによって測定した。G’’/G’によってtanδを計算した。ガラス転移温度は、tanδのピーク点における温度として定義した。結果を以下の表4に示す。
【0078】
【0079】
産業上の利用可能性
上記の実施例は、ステンレス鋼に対する接着力が>500g/インチ、光学シリコーンエラストマーに対する接着力がRTで>500g/インチ、及びシリコーン感圧接着剤を光学シリコーンゴム上で70℃で1日エージングした後の光学シリコーンエラストマーに対する接着力が>800g/インチの望ましい接着性を有するシリコーン感圧接着剤を形成するように硬化する、ヒドロシリル化反応硬化性組成物を調製することができることを示す。高い接着力により、シリコーン感圧接着剤と基材(被着体)との接合面は、フレキシブル表示装置の繰り返し変形試験(例えば、折る、曲げる、巻く、又は伸ばす試験による)にわたって層間剥離に耐えるのに十分な強度になる。シリコーン感圧接着剤はまた、Tg≦0℃、-20℃でのG’<1MPa、25℃でのG’<50kPa、及び100℃でのG’<50kPaを有し得る。広い温度範囲での低いTg及び低いG’により、シリコーン感圧接着剤は、繰り返し変形試験(例えば、折る、曲げる、巻く、及び伸ばす試験による)中に他の層にかかる応力が低く、広い温度範囲での使用に好適となる。この特性の組み合わせにより、シリコーン感圧接着剤は、フレキシブル表示装置、特にフレキシブル表示装置の光学部品での使用に好適となる。繰り返し折る、曲げる、巻く、及び伸ばすことに耐えるシリコーンエラストマーの優れた特性のために、本明細書に記載したように調製されたシリコーン感圧接着剤と光学シリコーンエラストマーとの組み合わせは、繰り返し変形試験(例えば、折る、曲げる、巻く、及び伸ばす試験)に供されたときに優れた信頼性試験を有するフレキシブル表示装置で使用するための物品をもたらす。
【0080】
用語の定義及び使用
全ての量、比率、及び百分率は、特に指示しない限り、重量に基づく。「発明の概要」及び「要約書」は、参照により本明細書に組み込まれる。明細書の文脈により別途指定がない限り、冠詞「a」、「an」、及び「the」は、それぞれ1つ以上を指す。「~を含む(comprising)」、「~から本質的になる(consisting essentially of)」、及び「~からなる(consisting of)」の移行句はManual of Patent Examining Procedure Ninth Edition,Revision 08.2017,Last Revised January 2018のセクション§2111.03 I.、II.、及びIIIに記載されているように使用される。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば/など(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書で使用される略語は、表5における定義を有する。
【0081】
【0082】
本発明は例示的な様式で記載されており、使用されている用語は、限定というよりむしろ説明語の性質であるように意図されることを理解されたい。本明細書で個々の特徴又は態様の記述が依拠している任意のマーカッシュ群に関して、異なる、特殊な及び/又は不測の結果が、全ての他のマーカッシュ群の要素から独立して、それぞれのマーカッシュ群の各要素から得られる場合がある。マーカッシュ群の各々の要素は、個々にかつ又は組み合わされて依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態に適切な根拠を提供し得る。
【0083】
更に、本発明を説明する際に依拠される任意の範囲及び部分範囲は、独立して及び包括的に、添付の特許請求の範囲内に入り、本明細書にその中の全部及び/又は部分の値が明記されていなくても、その中の全部及び/又は部分の値を包含する全範囲を説明及び想到するものと理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、そのような範囲及び部分範囲は、更に関連性がある2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、及び範囲内に含まれる任意の他の部分範囲に更に線引きされ得ることを容易に認識する。ほんの一例として、ホウ酸トリアルキルの量に関する「0.05~4.64」の範囲は、下3分の1、すなわち「0.05~1.58」、中3分の1、すなわち「1.59~3.11」、及び上3分の1、すなわち「3.12~4,64」に更に線引きされてもよく、あるいは、範囲「0.05~4.64」は、部分範囲「0.05~0.98」、「0.78~0.98」、及び「0.98~4.64」、並びに個々の値0.05、0.78、0.98、及び4.64を含み、これらの各々は、個別的及び集合的に添付の特許請求の範囲内にあり、個別的及び/又は集合的に依拠され、添付の特許請求の範囲内で特定の実施形態に適切な根拠を提供し得る。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。