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  • 特許-立軸ポンプ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】立軸ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 13/00 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
F04D13/00 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019236393
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021105351
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000151058
【氏名又は名称】株式会社電業社機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】根岸 道明
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-203390(JP,A)
【文献】特開2001-090686(JP,A)
【文献】実開昭60-178397(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端に羽根車が取り付けられ回転駆動される主軸と、
軸受を介して前記主軸を回転可能に支持するケーシングとを備え、
前記ケーシングが、内部に前記羽根車よりも上の前記主軸及び前記軸受を内側に配して保護する保護管と、
前記保護管を前記主軸と共に内側に収納した外側ケーシング部とを備え、
前記保護管の内部の流体を前記保護管の内側と外側とで循環させて冷却する流体冷却機構が設けられ
前記流体冷却機構が、前記主軸に取り付けられ前記主軸の回転に伴って回転して前記保護管内の流体を上方に向けて流す回転羽根部と、
前記回転羽根部より上方の前記保護管内に一端が接続されていると共に他端が前記回転羽根部より下方の前記保護管内に接続され前記保護管と前記外側ケーシング部との間に延在して配された流体循環用配管とを備えていることを特徴とする立軸ポンプ。
【請求項2】
請求項に記載の立軸ポンプにおいて、
前記流体冷却機構が、前記主軸の延在方向に複数設けられていることを特徴とする立軸ポンプ。
【請求項3】
請求項又はに記載の立軸ポンプにおいて、
前記軸受が、少なくとも前記回転羽根部の上方と下方とにそれぞれ設けられ、
前記流体循環用配管の一端が、前記回転羽根部の上方に位置する前記軸受の下部近傍に配されていると共に、前記流体循環用配管の他端が、前記回転羽根部の下方に位置する前記軸受の上部近傍に配されていることを特徴とする立軸ポンプ。
【請求項4】
下端に羽根車が取り付けられ回転駆動される主軸と、
軸受を介して前記主軸を回転可能に支持するケーシングとを備え、
前記ケーシングが、内部に前記羽根車よりも上の前記主軸及び前記軸受を内側に配して保護する保護管と、
前記保護管を前記主軸と共に内側に収納した外側ケーシング部とを備え、
前記保護管の内部の流体を前記保護管の内側と外側とで循環させて冷却する流体冷却機構が設けられ、
前記流体が空気であることを特徴とする立軸ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下端部に羽根車が取り付けられた主軸を回転可能に支持する軸受を冷却可能な立軸ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
立軸ポンプは、下端部に羽根車が取り付けられた主軸を軸受で回転可能に支持しているが、通常、軸受の加熱を抑制するために潤滑水を軸受に供給して冷却している。従来、この潤滑水は、水道水等の他圧水であり、立軸ポンプの外部に他圧水用の外部ポンプを設置して供給を行っている。
【0003】
例えば、特許文献1には、保護管で被覆された主軸を支持する軸受に冷却水(潤滑水)を供給する冷却機構を備えている立軸ポンプ装置が記載されている。
この立軸ポンプ装置では、給水タンクと給水ポンプと給水管と冷却制御部とを備えており、給水タンクに貯水された冷却水が給水ポンプによって汲み上げられ、給水管及び給水路を経由して保護管の下端から供給されるようになっている。
【0004】
また、特許文献2には、回転軸を支える水中軸受を内包して固定する保護管と、保護管と立軸ポンプの外部とを連通する連通管とを備え、連通管から保護管内に潤滑水を送水する水中軸受構造が記載されている。この水中軸受構造でも、潤滑水は立軸ポンプの外部の据付床に備えた水槽に蓄えられ、水中ポンプで連通管に送水されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-190207号公報
【文献】特開2016-17420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術において、以下の課題が残されている。
従来の特許文献1及び2に記載の技術では、潤滑水を水道水等の他圧水として供給するために外部にポンプを設置する必要があり、高コストになってしまうという不都合があった。また、ポンプを水中モータとの一体構造とする方法もあるが、水中モータは耐久性に劣り、高価であるため、やはりコストが増大してしまう。さらに、水道管が設置されていないところでは、水道水を潤滑水として供給することが困難であった。
【0007】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、外部にポンプを設置する必要が無く、低コストで軸受を冷却可能な立軸ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る立軸ポンプは、下端に羽根車が取り付けられ回転駆動される主軸と、軸受を介して前記主軸を回転可能に支持するケーシングとを備え、前記ケーシングが、内部に前記羽根車より上の前記主軸及び前記軸受を内側に配して保護する保護管と、前記保護管を前記主軸と共に内側に収納した外側ケーシング部とを備え、前記保護管の内部の流体を前記保護管の内側と外側とで循環させて冷却する流体冷却機構が設けられていることを特徴とする。
【0009】
この立軸ポンプでは、保護管の内部の流体を保護管の内側と外側とで循環させて冷却する流体冷却機構が設けられているので、保護管の内側と原水が流れる保護管の外側との間で流体冷却機構で循環されて冷やされた流体により、外部ポンプを用いずに保護管内部の軸受を冷却することができる。
【0010】
第2の発明に係る立軸ポンプは、第1の発明において、前記流体冷却機構が、前記主軸に取り付けられ前記主軸の回転に伴って回転して前記保護管内の流体を上方に向けて流す回転羽根部と、前記回転羽根部より上方の前記保護管内に一端が接続されていると共に他端が前記回転羽根部より下方の前記保護管内に接続され前記保護管と前記外側ケーシング部との間に延在して配された流体循環用配管とを備えていることを特徴とする。
すなわち、この立軸ポンプでは、流体冷却機構が、主軸に取り付けられた回転羽根部と、保護管と外側ケーシング部との間に延在して配された流体循環用配管とを備えているので、回転羽根部と流体循環用配管とにより流体が保護管内外で循環されると共に冷却される。まず、主軸の回転により保護管内の回転羽根部が回転すると、保護管内の流体が回転羽根部の上方へと送り出される。保護管内を上方に流れる流体は、流体循環用配管の一端から保護管と外側ケーシング部との間に配された流体循環用配管内を流れる。このとき、外側ケーシング部内を流れる原水に放熱することで流体循環用配管内の流体が冷やされる。流体循環用配管内で冷却された流体は、再び流体循環用配管の他端から保護管内に戻されることで、保護管内の軸受を冷却することができる。
【0011】
第3の発明に係る立軸ポンプは、第2の発明において、前記流体冷却機構が、前記主軸の延在方向に複数設けられていることを特徴とする。
すなわち、この立軸ポンプでは、流体冷却機構が、主軸の延在方向に複数設けられているので、複数の流体冷却機構により、さらに効果的に保護管内の流体を冷却すると共に軸受も冷却することができる。
【0012】
第4の発明に係る立軸ポンプは、第2又は第3の発明において、前記軸受が、少なくとも前記回転羽根部の上方と下方とにそれぞれ設けられ、前記流体循環用配管の一端が、前記回転羽根部の上方に位置する前記軸受の下部近傍に配されていると共に、前記流体循環用配管の他端が、前記回転羽根部の下方に位置する前記軸受の上部近傍に配されていることを特徴とする。
すなわち、この立軸ポンプでは、流体循環用配管の一端が、回転羽根部の上方に位置する軸受の下部近傍に配されていると共に、流体循環用配管の他端が、回転羽根部の下方に位置する軸受の上部近傍に配されているので、上方の軸受の下部近傍で熱くなった流体を流体循環用配管の一端から保護管の外側に導くと共に原水に放熱して冷やし、この流体を再び下方の軸受の上部近傍に戻すことで、上下の軸受間の流体を効率的に循環させ、軸受を効果的に冷やすことができる。
【0013】
第5の発明に係る立軸ポンプは、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記流体が空気であることを特徴とする。
すなわち、この立軸ポンプでは、流体が空気であるので、特殊な潤滑水等を容易する必要が無く、低コストであると共にメンテナンスも容易となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明の立軸ポンプによれば、保護管の内部の流体を保護管の内側と外側とで循環させて冷却する流体冷却機構が設けられているので、保護管の内側と原水が流れる保護管の外側との間で流体冷却機構で循環されて冷やされた流体により、外部ポンプを用いずに保護管内部の軸受を冷却することができる。
したがって、本発明の立軸ポンプでは、外部ポンプが不要で低コストで構成でき、水道管が配設されていない場所でも軸受を冷却することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る立軸ポンプの一実施形態を示す断面図である。
図2】本実施形態において、立軸ポンプの要部を示す断面図である。
図3】本実施形態において、保護管下部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明における立軸ポンプの一実施形態を、図1から図3に基づいて説明する。
【0017】
本実施形態における立軸ポンプ1は、例えば河川の救急排水ポンプであり、図1から図3に示すように、下端に羽根車2が取り付けられ回転駆動される主軸3と、軸受4を介して主軸3を回転可能に支持するケーシング5とを備えている。
上記ケーシング5は、内部に羽根車2よりも上の主軸3及び軸受4を内側に配して保護する保護管10Aと、保護管10Aを主軸3と共に内側に収納した外側ケーシング部10Bとを備えている。
【0018】
また、本実施形態の立軸ポンプ1には、保護管10Aの内部の流体を保護管10Aの内側と外側とで循環させて冷却する流体冷却機構15が設けられている。
上記流体冷却機構15は、主軸3に取り付けられ主軸3の回転に伴って回転して保護管10A内の流体を上方に向けて流す回転羽根部15aと、回転羽根部15aより上方の保護管10A内に一端が接続されていると共に他端が回転羽根部15aより下方の保護管10A内に接続され保護管10Aと外側ケーシング部10Bとの間に延在して配された流体循環用配管15bとを備えている。
【0019】
また、流体冷却機構15は、主軸3の延在方向に複数設けられている。本実施形態では、流体冷却機構15が主軸3の延在方向に並んで5箇所に設けられている。
上記軸受4は、少なくとも回転羽根部15aの上方と下方とにそれぞれ設けられている。すなわち、本実施形態では、主軸3に互いに間隔を空けて5つの回転羽根部15aが取り付けられている。
【0020】
上記流体循環用配管15bの一端は、回転羽根部15aの上方に位置する軸受4の下部近傍に配されていると共に、流体循環用配管15bの他端は、回転羽根部15aの下方に位置する軸受4の上部近傍に配されている。
上記流体は、空気である。すなわち、保護管10A内の軸受4と軸受4との間の空間は、流体循環用配管15bと共に気密な空気室となっている。
【0021】
上記回転羽根部15aは、例えばステンレス等で形成されており、主軸3の外周面に取り付けられている。この回転羽根部15aは、主軸3の回転方向と同じ方向に回転すると、流体を下方から上方へと押し出し可能なプロペラ形状とされている。
上記流体循環用配管15bは、例えばステンレス等の耐蝕性の高い金属等で形成されている。
【0022】
本実施形態の立軸ポンプ1は、羽根車2から吐出される流れが主軸3の中心線を軸とする円錐面内にある斜流ポンプである。
ケーシング5は、下端に水の吸込口5aを有する筒状であり、上部側に吐出管14が接続されている。
【0023】
従来の救急排水ポンプでは、「ポンプ+水中モータ」一体構造であり、上部よりターンバックルや鎖等で吊り下げてコラム内部が据え付けられているが、本実施形態では、保護管10Aが、軸受4を介して主軸3を回転可能に支持しており、吊り下げ状態で据え付けされた主軸3の荷重を支える強度に設定されている。
【0024】
このため、強度の高い保護管10Aで主軸3下部のポンプ本体部分を吊り下げ支持しているので、既設の立軸ポンプを本実施形態の立軸ポンプ1に改造する際、既設の吐出管を流用改造して再利用することが可能になる。また、既設の下部のコラムも流用可能である。
なお、本実施形態の立軸ポンプ1では、水中モータを使用せず、吐出管14の上部に屋外立軸全閉外扇電動機Mを設置して主軸3を回転駆動している。このように地上型設置の電動機Mを採用することで、水中モータに比べて信頼性と寿命とが向上する。
【0025】
上記外側ケーシング部10Bは、複数の筒状体が軸線方向に連結されて構成されている。
また、本実施形態の立軸ポンプ1では、軸受4が、分割された外側ケーシング10Bに挟まれた輪切り状の複数の中間軸受胴4aを備え、これら中間軸受胴4aで荷重等の強度や主軸3の振動等を支えている。
なお、保護管10Aの上部は、吐出管14の上部に貫通状態で支持されている。
【0026】
また、保護管10Aは、ケーシング5内の排水(原水)が保護管10A内へ侵入することを防いでいる。
すなわち、図3に示すように、保護管10Aの下部に主軸3の下端を支持するメカニカルシール18が設けられており、メカニカルシール18による気密・水密構造となっている。したがって、メカニカルシール18により、保護管10A外の排水(原水)が保護管10A内に入ることを防いでいる。
【0027】
本実施形態の立軸ポンプ1は、吸込水槽の上部の据付床19に形成された据付孔19aに取り付けられたポンプベース(ベースプレート)19bにケーシング5上部のフランジ部5bが固定されて吊り下げ設置されている。
【0028】
このように本実施形態の立軸ポンプ1では、保護管10Aの内部の流体を保護管10Aの内側と外側とで循環させて冷却する流体冷却機構15が設けられているので、保護管10Aの内側と原水が流れる保護管10Aの外側との間で流体冷却機構15で循環されて冷やされた流体により、外部ポンプを用いずに保護管10A内部の軸受4を冷却することができる。
特に、流体が空気であることで、特殊な潤滑水等を容易する必要が無く、低コストであると共にメンテナンスも容易となる。
【0029】
また、流体冷却機構15が、主軸3に取り付けられた回転羽根部15aと、保護管10Aと外側ケーシング部10Bとの間に延在して配された流体循環用配管15bとを備えているので、回転羽根部15aと流体循環用配管15bとにより流体が保護管10A内外で循環されると共に冷却される。まず、主軸3の回転により保護管10A内の回転羽根部15aが回転すると、保護管10A内の流体が回転羽根部15aの上方へと送り出される。
【0030】
保護管10A内を上方に流れる流体は、流体循環用配管15bの一端から保護管10Aと外側ケーシング部10Bとの間に配された流体循環用配管15b内を流れる。このとき、外側ケーシング部10B内を流れる原水に放熱することで流体循環用配管15b内の流体が冷やされる。流体循環用配管15b内で冷却された流体は、再び流体循環用配管15bの他端から保護管10A内に戻されることで、保護管10A内の軸受を冷却することができる。
【0031】
また、流体冷却機構15が、主軸3の延在方向に複数設けられているので、複数の流体冷却機構15により、さらに効果的に保護管10A内の流体を冷却すると共に軸受4も冷却することができる。
さらに、流体循環用配管15bの一端が、回転羽根部15aの上方に位置する軸受4の下部近傍に配されていると共に、流体循環用配管15bの他端が、回転羽根部15aの下方に位置する軸受4の上部近傍に配されているので、上方の軸受4の下部近傍で熱くなった流体を流体循環用配管15bの一端から保護管10Aの外側に導くと共に原水に放熱して冷やし、この流体を再び下方の軸受4の上部近傍に戻すことで、上下の軸受4間の流体を効率的に循環させ、軸受4を効果的に冷やすことができる。
【0032】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述したように、空気を流体として用いていることが好ましいが、より高い冷却効果を得る必要がある場合、不凍液等の潤滑水を流体として採用しても構わない。
【符号の説明】
【0033】
1…立軸ポンプ、2…羽根車、3…主軸、4…軸受、5…ケーシング、10A…保護管、10B…外側ケーシング部、15…流体冷却機構、15a…回転羽根部、15b…流体循環用配管
図1
図2
図3