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  • 特許-電動圧縮機 図1
  • 特許-電動圧縮機 図2
  • 特許-電動圧縮機 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20231003BHJP
   H05K 7/14 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
F04B39/00 106Z
H05K7/14 D
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018177608
(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公開番号】P2020045894
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-03-17
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】伊東 亨
(72)【発明者】
【氏名】吉田 浩
(72)【発明者】
【氏名】栗原 沙織
(72)【発明者】
【氏名】松田 将宜
(72)【発明者】
【氏名】下田 真之
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】八木 敬太
【審判官】関口 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-181989(JP,A)
【文献】国際公開第2012/042971(WO,A1)
【文献】特開2016-34205(JP,A)
【文献】特表2016-535437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B39/00
H05K7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機に内蔵された電動モータを駆動制御するために設けられた基板を備え、
前記基板の両面には、夫々、台座が付いた複数のコンデンサが密集して表面実装され、且つ前記コンデンサを表面実装するためのランドが形成され、
前記コンデンサは、平面視で一方の面の実装領域と他方の面の実装領域とが重なるように配置され
前記圧縮機と一体的に形成されており、前記基板が収容され固定される筐体と、
前記基板のうち前記圧縮機に近い側の面に実装された前記コンデンサと前記筐体との間に挟み込まれた第一の緩衝材と、
前記基板のうち前記圧縮機から遠い側の面に実装された前記コンデンサと前記筐体との間に挟み込まれた第二の緩衝材と、を備え、
前記第一の緩衝材は、前記第二の緩衝材よりも厚いことを特徴とする電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、電動圧縮機のインバータ収容部内において、パワー基板を複数の固定座面にネジ止め固定することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-114961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板の耐振性を向上させるためには、厚銅基板を用い、曲げ剛性を確保することが考えられる。しかしながら、厚銅基板は高価であり、コストの増大を招く。
本発明の課題は、安価に耐振性の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る電動圧縮機は、
圧縮機に内蔵された電動モータを駆動制御するために設けられた基板を備え、
基板の両面には、夫々、台座が付いた複数のコンデンサが表面実装されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、基板の両面に、複数のコンデンサを表面実装するためのランドが形成されるため、断面係数の増加によって曲げ剛性を確保できる。したがって、厚銅基板を用いる場合と比べて、安価に耐振性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】圧縮機の外観図である。
図2】基板を示す図である。
図3】基板の収容状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
《一実施形態》
《構成》
図1は、圧縮機の外観図である。
圧縮機11(電動圧縮機)は、例えばカーエアコンの冷媒回路で用いられる電動型のスクロール圧縮機である。すなわち、車両に搭載され、内蔵した電動モータによって駆動されるときに、冷媒を吸入し、圧縮してから排出する。
軸方向の前側には、インバータ収容部12(筐体)が一体的に形成されており、フロントカバー13によって封止されている。インバータ収容部12の外壁には、低電圧回路のコネクタ14と、高電圧回路のコネクタ15と、が設けられている。
【0010】
図2は、基板を示す図である。
インバータ収容部12の内部には、電動モータを駆動制御するためのインバータが形成された基板21が収容されている。基板21の板厚は、例えば1.6~1.8mm程度である。
図中の(a)は基板21の一方の面を示し、(b)は基板21の側面を示し、(c)は基板21の他方の面を示す。基板21の一方の面には、複数のコンデンサ22が表面実装されている。ここでは7個を実装した例を示し、密集させて配置している。基板21の他方の面には、複数のコンデンサ22が表面実装されている。ここでは11個を実装した例を示し、密集させて配置している。コンデンサ22は、電源ラインに対して並列に接続された平滑・フィルタ回路を構成し、例えばアルミ固体電解コンデンサである。コンデンサ22は、平面視で一方の面の実装領域と他方の面の実装領域とが重なるように配置されている。
【0011】
図3は、基板の収容状態を示す断面図である。
基板21は、インバータ収容部12に収容され、ネジ止めによって固定されている。基板21の両面には、コンデンサ22を表面実装するためのランド23が形成されている。ランド23は、一つのコンデンサ22に対して二つずつ設けられている。コンデンサ22は台座24付きであり、台座24の裏面に形成された二つの端子が、対応するランド23に半田付けされる。コンデンサ22は、一方の面の実装領域と他方の面の実装領域とが重なるように配置されているため、一方の面のランド23と他方の面のランド23とが重なることになる。したがって、コンデンサ22が実装された位置では、基板21の厚さtbは、二枚のランド分だけ増加している。
【0012】
インバータ収容部12と圧縮機11との間には隔壁16があり、隔壁16の圧縮機11側は、冷媒が流入する区画となっている。基板21のうち圧縮機11に近い側の面に実装されたコンデンサ22と隔壁16(筐体)との間には、緩衝材31(第一の緩衝材)が圧縮した状態で挟み込まれている。基板21のうち圧縮機11から遠い側の面に実装されたコンデンサ22とフロントカバー13(筐体)との間には、緩衝材32(第二の緩衝材)が圧縮した状態で挟み込まれている。緩衝材31、32は、高い熱伝導率を有するゲルによって成形されている。緩衝材31の厚さt1が、緩衝材32の厚さt2よりも厚くなるように設定されている。緩衝材31、32は、放熱シートとしても機能する。コンデンサ22には、押圧できる許容荷重があるため、緩衝材31、32の反力が、コンデンサ22の許容荷重未満となるように設定されている。
【0013】
《作用》
次に、一実施形態の主要な作用効果について説明する。
基板の耐振性を向上させるためには、厚銅基板を用い、曲げ剛性を確保することが考えられる。しかしながら、厚銅基板は高価であり、コストの増大を招く。
そこで、厚銅基板を用いる代わりに、基板21の両面には、夫々、台座が付いた複数のコンデンサ22を表面実装している。具体的には、平面視で一方の面の実装領域と他方の面の実装領域とが重なるようにコンデンサ22を配置している。これにより、基板21の両面には、複数のコンデンサ22を表面実装するためのランド23が形成されるため、断面係数の増加によって曲げ剛性を確保できる。したがって、厚銅基板を用いる場合と比べて、安価に耐振性の向上を図ることができる。
【0014】
従来、コンデンサを収容すると共に、樹脂を注型したフィルタケースを基板に設け、耐振対策を施しているものがあった。
本実施形態では、基板21のうち圧縮機11に近い側の面に実装されたコンデンサ22と隔壁16との間に、緩衝材31を挟み込んでいる。また、基板21のうち圧縮機11から遠い側の面に実装されたコンデンサ22とフロントカバー13との間に、緩衝材32を挟み込んでいる。これら緩衝材31、32によって、コンデンサ22の耐振性を確保することができる。また、緩衝材31、32を挟み込むだけの構成であるため、フィルタケースや、樹脂を注型する工程を省略できる。
【0015】
また、緩衝材31の厚さt1を緩衝材32の厚さt2よりも厚くしている。そのため、主に緩衝材31により、基板21における面直角方向の寸法誤差や組付け誤差を吸収することができる。緩衝材31は、隔壁16を隔てて冷媒によって冷却されるが、緩衝材32は、フロントカバー13を隔てて外気温によって冷却される。緩衝材は薄い方が放熱性は高いが、隔壁16はフロントカバー13よりも冷却能力が高い分、緩衝材31の厚さt1を厚くすることができる。したがって、基板21のうち圧縮機11に近い側の面に実装されたコンデンサ22と、基板21のうち圧縮機11から遠い側の面に実装されたコンデンサ22とは、放熱性能が同等である。
【0016】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0017】
11…圧縮機、12…インバータ収容部、13…フロントカバー、14…コネクタ、15…コネクタ、16…隔壁、21…基板、22…コンデンサ、23…ランド、24…台座、31…緩衝材、32…緩衝材
図1
図2
図3