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特許7359554欠陥抑制を向上させた研磨組成物及び基板の研磨方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】欠陥抑制を向上させた研磨組成物及び基板の研磨方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20231003BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20231003BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231003BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20231003BHJP
【FI】
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
C09G1/02
H01L21/304 621D
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019044731
(22)【出願日】2019-03-12
(65)【公開番号】P2019163457
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】15/922,054
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】イ・グオ
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-216873(JP,A)
【文献】特開2004-247542(JP,A)
【文献】特開2009-054935(JP,A)
【文献】特開2016-215336(JP,A)
【文献】特開2005-045102(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0246724(US,A1)
【文献】特開2006-324639(JP,A)
【文献】特開2015-191966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
C09G 1/02
H01L 21/304
B24B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期成分として:
水;
0.1~40wt%の砥粒;
0.001~5wt%のアルカリ金属若しくはアンモニウムの無機塩又はこれらの混合物;
0.001~1wt%の、式(I):
【化11】

[式中、R、R及びRは、それぞれ独立に(C-C)アルキル基から選択される]を有するベンジルトリアルキル第4級アンモニウム化合物;
0.001~1wt%の、式(II):
【化12】

[式中、R、R、Rは、それぞれ独立にH及びアルキル基から選択され;Rは、アルキレン基である]を有するヒドロキシル含有第4級アンモニウム化合物、
場合により1種以上の緩衝剤、
場合により消泡剤、及び
場合により殺生物剤
からなりpHが>pH7である、化学機械研磨組成物。
【請求項2】
前記アルカリ金属が、1種以上のLi、Na、K及びCsから選択され、そして対アニオンは、1種以上の硝酸、炭酸、ハロゲン化物、重炭酸、リン酸、重リン酸、ピロリン酸、三リン酸、及び硫酸アニオンから選択され、式(I)中のアニオンは、1種以上の水酸化物、ハロゲン化物、硝酸、硫酸、リン酸、及び酢酸アニオンから選択され、式(II)のアニオンは、1種以上の水酸化物、ハロゲン化物、硝酸、硫酸、リン酸、及び酢酸アニオンから選択される、請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項3】
基板の化学機械研磨のための方法であって:
基板を提供すること[ここで、基板は、酸化ケイ素を含む];
初期成分として:
水;
0.1~40wt%の砥粒[ここで、砥粒は、20~200nmの平均粒径を有するコロイダルシリカ砥粒である]
0.001~5wt%のアルカリ金属若しくはアンモニウムの無機塩又はこれらの混合物;
0.001~1wt%の式(I):
【化13】

[式中、R、R及びRは、それぞれ独立に(C-C)アルキル基から選択される]を有するベンジルトリアルキル第4級アンモニウム化合物;及び
0.001~1wt%の式(II):
【化14】

[式中、R、R、Rは、それぞれ独立にH及びアルキル基から選択され;Rは、アルキレン基である]を有するヒドロキシル含有第4級アンモニウム化合物、
を含む化学機械研磨組成物を提供すること;
研磨面を持つ化学機械研磨パッドを提供すること;
化学機械研磨パッドの研磨面と基板との間の界面に0.69~69kPaのダウンフォースで動的接触を生じさせること;及び
化学機械研磨パッド上、化学機械研磨パッドと基板との間の界面又はその近くに化学機械研磨組成物を分注することを含み、
提供される化学機械研磨組成物が>7のpHを有しており;基板が研磨され;そして酸化ケイ素の少なくとも一部が基板から除去される、方法。
【請求項4】
請求項に記載の方法であって、基板が酸化ケイ素を含み、そして化学機械研磨組成物が1,000~6,000Å/minの酸化ケイ素除去速度を示す、方法。
【請求項5】
請求項に記載の方法であって、基板が酸化ケイ素を含み、そして化学機械研磨スラリー組成物が、ウェーハ当たりpst-HFスクラッチ欠陥<100を示す、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、良好な誘電体除去速度を持つ、欠陥減少を向上させた研磨組成物及び基板の研磨方法に関する。より具体的には、本発明は、良好な誘電体除去速度を持つ、欠陥減少を向上させた研磨組成物及び基板の研磨方法であって、酸化ケイ素の誘電体を含む基板上の欠陥の減少を向上させるために、研磨組成物がある種の第4級窒素化合物の組合せを含み、そして酸化ケイ素の少なくとも一部が基板から除去される、研磨組成物及び基板の研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
集積回路及び他の電子デバイスの作製において、導電性材料、半導体材料及び誘電材料の複数の層が、半導体ウェーハの表面上に堆積されるか又は表面から除去される。導電性材料、半導体材料及び誘電材料の薄層を、幾つかの堆積技術によって堆積させることができる。最新の加工における一般的な堆積技術は、スパッタリングとしても知られている物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、プラズマ増強化学蒸着法(PECVD)及び電気化学的めっき法(ECP)を含む。
【0003】
材料の層が順次堆積され除去されるにつれ、ウェーハの最上面は平坦でなくなる。後続の半導体加工(例えばメタライゼーション)は、ウェーハが平らな表面を有することを要求するため、ウェーハを平坦化する必要がある。平坦化は、望ましくない表面トポグラフィー及び表面欠陥(粗面、凝集した材料、結晶格子損傷、スクラッチ、及び汚染された層又は材料など)を除去するのに有用である。
【0004】
化学機械平坦化又は化学機械研磨(CMP)は、半導体ウェーハのような基板を平坦化するために使用される一般的な技術である。従来のCMPにおいて、ウェーハは、キャリアアセンブリに取り付けられ、CMP装置内で研磨パッドと接触して配置される。キャリアアセンブリは、ウェーハに調節可能な圧力を提供し、ウェーハを研磨パッドに押し付ける。パッドは、外部駆動力によってウェーハに対して移動(例えば回転)させられる。それと同時に、研磨組成物(「スラリー」)又は他の研磨溶液は、ウェーハと研磨パッドとの間に提供される。したがって、パッド表面及びスラリーの化学的及び機械的作用によって、ウェーハ表面は、研磨され、平坦化される。
【0005】
ある種の進歩したデバイス設計は、研磨プロセスの至るところの及び製品歩留まり%の改善のために、より低い使用時点(POU)研磨wt%での酸化ケイ素除去効率の向上、更にはスクラッチ欠陥の減少を提供する研磨組成物を要求する。半導体デバイス上の構造のサイズが縮小し続けるにつれて、平坦化及び誘電材料研磨の欠陥減少のためにかつて許容し得た性能基準は、ますます許容し得なくなってきている。かつて許容し得ると考えられていたスクラッチは、今日では歩留まりを制限するようになっている。
【0006】
したがって、スクラッチのような欠陥を最小化しながら、望ましい平坦化効率、均一性及び誘電体除去速度を示す、研磨組成物及び研磨方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、初期成分として:水;砥粒;アルカリ金属若しくはアンモニウムの無機塩又はこれらの混合物;式(I):
【化1】

[式中、R、R及びRは、それぞれ独立に(C-C)アルキル基から選択される]を有するベンジルトリアルキル第4級アンモニウム化合物;及び式(II):
【化2】

[式中、R、R、Rは、それぞれ独立にH及びアルキル基から選択され;そしてRは、アルキレン基である]を有するヒドロキシル含有第4級アンモニウム化合物を含む、化学機械研磨組成物を提供する。
【0008】
本発明はまた、化学機械研磨組成物であって、初期成分として:水;0.1~40wt%の砥粒;0.001~5wt%のアルカリ金属若しくはアンモニウムの無機塩又はこれらの混合物;0.001~1wt%の式(I)[ここで、式(I)のアニオンは、式(I)のカチオン上の+電荷と釣り合うアニオンである]を有するベンジルトリアルキル第4級アンモニウム化合物;及び0.001~1wt%の式(II)[ここで、式(II)中のアニオンは、式(II)中のカチオン上の+電荷と釣り合うアニオンである]を有するヒドロキシル含有第4級アンモニウム化合物を含む組成物を提供する。
【0009】
本発明は更に、化学機械研磨組成物であって、初期成分として:水;5~25wt%の砥粒[ここで、砥粒は、20~200nmの平均粒径を有するコロイダルシリカ砥粒である];0.01~2wt%のアルカリ金属若しくはアンモニウムの無機塩又はこれらの混合物[ここで、アルカリ金属は、1種以上のリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムから選択され、そして対アニオンは、1種以上の硝酸、炭酸、重炭酸、ハロゲン化物、リン酸、重リン酸、ピロリン酸、三リン酸及び硫酸アニオンから選択される];0.01~1wt%の式(I)[ここで、式(I)中のアニオンは、1種以上の水酸化物、ハロゲン化物、硝酸、炭酸、硫酸、リン酸及び酢酸アニオンから選択される]を有するベンジルトリアルキル第4級アンモニウム化合物;及び0.001~1wt%の式(II)[ここで、式(II)のアニオンは、1種以上の水酸化物、ハロゲン化物、硝酸、炭酸、硫酸、リン酸及び酢酸アニオンから選択される]を有するヒドロキシル含有第4級アンモニウム化合物を含む組成物を提供する。
【0010】
本発明は、基板の化学機械研磨のための方法であって:基板を提供すること[ここで、基板は、酸化ケイ素を含む];化学機械研磨組成物であって、初期成分として:水;砥粒;アルカリ金属若しくはアンモニウムの無機塩又はこれらの混合物;式(I):
【化3】

[式中、R、R及びRは、それぞれ独立に(C-C)アルキル基から選択される]を有するベンジルトリアルキル第4級アンモニウム化合物;及び式(II):
【化4】

[式中、R、R、Rは、それぞれ独立にH及びアルキル基から選択され;Rは、アルキレン基である]を有するヒドロキシル含有第4級アンモニウム化合物を含む組成物を提供することを含む、方法を提供する。
【0011】
本発明はまた、基板の化学機械研磨のための方法であって:基板を提供すること[ここで、基板は、酸化ケイ素を含む];化学機械研磨組成物であって、初期成分として:水;砥粒;アルカリ金属若しくはアンモニウムの無機塩又はこれらの混合物;式(I):
【化5】

[式中、R、R及びRは、それぞれ独立に(C-C)アルキル基から選択される]を有するベンジルトリアルキル第4級アンモニウム化合物;及び式(II):
【化6】

[式中、R、R、Rは、それぞれ独立にH及び(C-C)アルキル基から選択され;Rは、(C-C)アルキレン基である]を有するヒドロキシル含有第4級アンモニウム化合物を含む組成物を提供すること;そして任意選択的に、化学機械研磨組成物のpHを>7に調整するために、組成物にpH調整剤を添加することを含む、方法を提供する。
【0012】
本発明はまた、基板を化学機械研磨するための方法であって:基板を提供すること[ここで、基板は、少なくとも1つの酸化ケイ素層を含む];上記の化学機械研磨組成物を提供すること;研磨面を持つ化学機械研磨パッドを提供すること;化学機械研磨パッドの研磨面と基板との間の界面に0.69~69kPaのダウンフォースで動的接触を生じさせること;及び化学機械研磨パッド上、化学機械研磨パッドと基板との間の界面又はその近くに化学機械研磨組成物を分注することを含み、提供される化学機械研磨組成物が>7のpHを有しており、そして基板が研磨される、方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化学機械研磨組成物及び方法によって、欠陥の減少を向上させることができ、良好な酸化ケイ素除去速度が可能になり、そして化学機械研磨組成物は、安定である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本明細書全体を通して使用されるとき、特に断りない限り、以下の略語は、以下の意味を有する:℃=セ氏温度;g=グラム;L=リットル;mL=ミリリットル;μ=μm=ミクロン;kPa=キロパスカル;Å=オングストローム;mm=ミリメートル;cm=センチメートル;nm=ナノメートル;min=分;rpm=毎分回転数;lb=ポンド;kg=キログラム;wt%=重量パーセント;RR=除去速度;PS=本発明の研磨スラリー;PC=比較研磨スラリー。
【0015】
「化学機械研磨」又は「CMP」という用語は、基板が化学的及び機械的な力だけによって研磨されるプロセスを指し、基板に電気的バイアスを印加する電気化学機械研磨(ECMP)とは区別される。「TEOS」という用語は、オルトケイ酸テトラエチル(Si(OC)の分解から形成される酸化ケイ素を意味する。「組成物」及び「スラリー」という用語は、本明細書全体を通して互換的に使用される。「ハロゲン化物」という用語は、塩化物、臭化物、フッ化物及びヨウ化物を意味する。「a」及び「an」という用語は、単数及び複数の両方を指す。全ての百分率は、特に断りない限り重量による。全ての数値範囲は、このような数値範囲が合計して100%になるように制約されることが論理的である場合を除いて、範囲の始めと終わりを含み、任意の順序で組合せ可能である。
【0016】
本発明の化学機械研磨方法は、酸化ケイ素を含む基板を研磨するのに有用である。本発明の方法に使用される化学機械研磨組成物は、水;酸化ケイ素除去速度を向上させるための、ある濃度のアルカリ金属又はアンモニウムの無機塩;及び欠陥を減少させるための式(I):
【化7】

[式中、R、R及びRは、それぞれ独立に(C-C)アルキル基から選択される]を有するベンジルトリアルキル第4級アンモニウム化合物;及び欠陥を減少させるための式(II):
【化8】

[式中、R、R、Rは、それぞれ独立にH及びアルキル基から選択され;Rは、アルキレン基である]を有するヒドロキシル含有第4級アンモニウム化合物;並びに任意選択的に、化学機械研磨組成物のpHを>7に調整するために、必要に応じて該組成物にpH調整剤を添加することを含有する(好ましくは、これらから成る)。
【0017】
化学機械研磨組成物への無機塩の添加により得られる酸化ケイ素の除去速度(Å/min単位で測定される除去速度)を記述するための、本明細書及び添付の特許請求の範囲に使用される「向上した酸化ケイ素除去速度」という用語は、少なくとも以下の表現を満たすことを意味する:
A>A
【0018】
ここで、Aは、実施例に明記される研磨条件下で測定されるとき、本発明の方法に使用される請求された無機塩を含有する化学機械研磨組成物の酸化ケイ素除去速度(Å/min)であり;Aは、シリカ砥粒だけが存在する同一条件下で得られた酸化ケイ素除去速度(Å/min)である。
【0019】
式(I)を有する化合物及び式(II)を有する化合物を一緒にして、本発明の化学機械研磨方法に使用される化学機械研磨組成物に含めることによって得られる欠陥性能を記述するための、明細書及び添付の特許請求の範囲に使用される「改善した研磨欠陥性能」という用語は、少なくとも以下の表現を満たすことを意味する:
X<X
【0020】
ここで、Xは、実施例に明記される研磨条件下で測定されるとき、本発明の方法に使用される物質を含有する化学機械研磨組成物の欠陥(即ち、CMP/フッ化水素(HF)後スクラッチ)であり;そしてXは、シリカ砥粒だけが存在する同一条件下で得られた欠陥(即ち、CMP/フッ化水素後スクラッチ)である。
【0021】
本発明の化学機械研磨方法に使用される化学機械研磨組成物に含有される水は、付随的な不純物を制限するために、好ましくは脱イオン水及び蒸留水の少なくとも一方である。
【0022】
本発明の化学機械研磨方法に使用される化学機械研磨組成物は、0.1~40wt%の砥粒;好ましくは5~25wt%の砥粒、より好ましくは8~12wt%の砥粒を含有する。使用される砥粒は、好ましくは<200nm;より好ましくは75~150nm;最も好ましくは100~150nmの平均粒径を有する。
【0023】
本発明の化学機械研磨方法に使用される化学機械研磨組成物に使用するための砥粒は、例えば、無機酸化物、無機水酸化物、無機水酸化酸化物、金属ホウ化物、金属炭化物、金属窒化物、ポリマー粒子及び上記の少なくとも1種を含む混合物を含む。適切な無機酸化物は、例えば、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、セリア(CeO)、酸化マンガン(MnO)、酸化チタン(TiO)又はこれらの組合せを含む。有機ポリマー被覆無機酸化物粒子及び無機被覆粒子のような、これらの無機酸化物の変形態様もまた、必要に応じて利用することができる。適切な金属炭化物、ホウ化物及び窒化物は、例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭窒化ケイ素(SiCN)、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化ジルコニウム、ホウ化アルミニウム、炭化タンタル、炭化チタン、又はこれらの組合せを含む。
本発明の化学機械研磨方法に使用される化学機械研磨組成物に使用するための好ましい砥粒は、コロイダルシリカである。好ましくは、使用されるコロイダルシリカは、沈降シリカ及び凝集シリカの少なくとも一方を含有する。好ましくは、使用されるコロイダルシリカは、<200nm、より好ましくは75~150nm、最も好ましくは100~150nmの平均粒径を有しており;そして化学機械研磨組成物の0.1~40wt%、好ましくは5~25wt%、より好ましくは8~12wt%を占める。市販されているコロイダルシリカの例は、平均粒径139nmのKlebosol(商標)II 1630コロイダルシリカ;平均粒径145nmのKlebosol(商標)II 1630コロイダルシリカ;及び粒径130nmのKlebosol(商標)II 1730コロイダルシリカであり、これらは全てMerck KgAA, Darmstadt, Germanyにより製造され、全てThe Dow Chemical Companyから入手可能である。
【0024】
化学機械研磨組成物は、アルカリ金属及びアンモニウムの1種以上の無機塩を含む。好ましくは、無機塩の量は、0.01~2wt%、好ましくは0.1~1wt%、より好ましくは0.1~0.5wt%、最も好ましくは0.2wt%~0.4wt%の量で化学機械研磨組成物に含まれるが、ここで、アルカリ金属は、1種以上のリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムから選択され、そして対アニオンは、1種以上の硝酸、炭酸、重炭酸、ハロゲン化物、リン酸、重リン酸、ピロリン酸、三リン酸及び硫酸アニオンから選択される。最も好ましい無機塩は、炭酸カリウムである。
【0025】
本発明の化学機械研磨方法に使用される化学機械研磨組成物は、好ましくは、初期成分として、0.001~5wt%の式(I):
【化9】

を有する化合物を含有する。
【0026】
式中、R、R及びRは、それぞれ独立に(C-C)アルキル基、好ましくは(C-C)アルキル基、最も好ましくはメチル基から選択され;そしてアニオンは、ベンジルトリメチルアンモニウムカチオンの+電荷を中和するための対アニオンであり、アニオンは、水酸化物、ハロゲン化物、硝酸、炭酸、硫酸、リン酸又は酢酸アニオンであり、好ましくは、アニオンは、水酸化物又はハロゲン化物アニオンである。本発明の化学機械研磨組成物はまた、初期成分として、0.001~1wt%、より好ましくは0.1~1wt%、最も好ましくは0.1~0.3wt%の式(I)を有する化合物を含有する。最も好ましくは、式(I)を有する化合物は、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムである。
【0027】
本発明の化学機械研磨方法に使用される化学機械研磨組成物は、初期成分として、式(II):
【化10】

[式中、R、R、Rは、それぞれ独立にH及びアルキル基、好ましくは(C-C)アルキル基、より好ましくは(C-C)アルキル基、最も好ましくはメチル基から選択され;Rは、アルキレン基であり;Rは、好ましくは(C-C)アルキレン基から選択され、より好ましくは、Rは、メチレン及びエチレンの一方から選択され、最も好ましくは、Rは、エチレンであり;そしてアニオンは、ヒドロキシル含有第4級アンモニウムカチオンの+電荷を中和し、アニオンは、水酸化物、ハロゲン化物、硝酸、炭酸、硫酸、リン酸又は酢酸アニオンであり、好ましくは、アニオンは、水酸化物又はハロゲン化物アニオンであり、最も好ましくは、アニオンは、塩化物アニオンである]を有する化合物を更に含有する。
【0028】
本発明の化学機械研磨方法に使用される化学機械研磨組成物中に式(II)を有する化合物を含めることにより、酸化ケイ素上の欠陥の減少が容易になり、酸化ケイ素上の除去速度の向上の観点からの研磨性能が改善し、そして無機塩の存在下でのコロイダルシリカの安定化が助けられる。本発明の化学機械研磨組成物はまた、初期成分として、0.001~1wt%、より好ましくは0.1~1wt%、最も好ましくは0.2~0.3wt%の式(II)を有する化合物を含有する。
【0029】
任意選択的に、本発明の化学機械研磨方法に使用される化学機械研磨組成物は、1種以上の緩衝剤、消泡剤及び殺生物剤から選択される追加の添加剤を更に含有する。
【0030】
本発明の化学機械研磨方法に使用される化学機械研磨組成物は、>7、好ましくは7~12、より好ましくは10~11のpHを有する。使用される化学機械研磨組成物は、好ましい範囲にpHを維持するために1種以上のpH調整剤を任意選択的に含むことができる。好ましくは、pH調整剤は、1種以上の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びアンモニアから選択される。
【0031】
本発明の化学機械研磨方法において研磨される基板は、酸化ケイ素を含む。基板中の酸化ケイ素は、ホウリンケイ酸(borophosphosilicate)ガラス(BPSG)、プラズマエッチングオルトケイ酸テトラエチル(PETEOS)、熱酸化物、非ドープケイ酸塩ガラス、高密度プラズマ(HDP)酸化物を含むが、これらに限定されない。
【0032】
任意選択的に、本発明の化学機械研磨方法において研磨される基板は、更に窒化ケイ素を含む。基板中の窒化ケイ素は、存在する場合は、Siのような窒化ケイ素材料を含むが、これらに限定されない。
【0033】
本発明の化学機械研磨方法に使用される化学機械研磨パッドは、当技術分野において公知の任意の適切な研磨パッドであってよい。化学機械研磨パッドは、場合により、織布及び不織布の研磨パッドから選択され得る。化学機械研磨パッドは、種々の密度、硬度、厚さ、圧縮率及び弾性率の任意の適切なポリマーで作られていてよい。化学機械研磨パッドは、必要に応じて溝が刻まれていたり穴が開けられていてもよい。
【0034】
本発明の化学機械研磨方法に使用される本発明のスラリー組成物は、酸化ケイ素の除去速度(毎分オングストローム、Å/min単位で測定されるとおり)を向上させる。我々は、酸化ケイ素の除去速度の相対的向上(ΔA)をΔA=(A-A)/A[式中、A及びAは、化学機械研磨組成物に少なくとも式(I)及び式(II)の化合物並びに無機塩(好ましくは炭酸カリウム)を添加した(A)及び添加しない(A)研磨組成物を用いて、Å/min単位で測定された酸化ケイ素の除去速度を表す]として定義する。本発明の方法に使用される化学機械研磨組成物に、式(I)及び式(II)の化合物並びに無機塩(好ましくは炭酸カリウム)を含めると、酸化ケイ素除去速度の好ましくは>5%、より好ましくは>10%の向上が提供される。即ち、以下の式の少なくとも一方を好ましくは満たす:
(i) (((A-A)/A)×100) > 5;及び
(ii) (((A-A)/A)×100) > 10
[全て実施例に明記される研磨条件下で測定される]。
【0035】
本発明の化学機械研磨方法に使用される化学機械研磨組成物に含まれる式(I)を有する化合物(最も好ましくは塩化ベンジルトリメチルアンモニウム)及び式(II)を有する化合物(最も好ましくは塩化コリン)によって、研磨欠陥性能が改善する。好ましくは、初期成分として、化学機械研磨組成物に式(I)及び式(II)を有する化合物を含めると、実施例に明記される研磨条件下で測定されるとき、研磨欠陥(即ち、CMP/フッ化水素後スクラッチ)の>50%;より好ましくは>60%;最も好ましくは>70%の減少が提供される。即ち、以下の式の少なくとも一方を好ましくは満たす:
【0036】
(i) (X-X)/X × 100 > 50;
【0037】
(ii) (X-X)/X × 100 > 60;及び
【0038】
(iii) (X-X)/X × 100 > 70;
【0039】
ここで、Xは、実施例に明記される研磨条件下で測定されるとき、本発明の方法に使用される式(I)及び式(II)の物質を含有する化学機械研磨組成物の研磨欠陥(即ち、CMP/フッ化水素後スクラッチ)であり;そしてXは、シリカ砥粒だけ;又はシリカと無機塩;又はシリカと無機塩と共に式(I)の化合物が存在する、同一条件下で得られた研磨欠陥(即ち、CMP/フッ化水素後スクラッチ)である。
【0040】
本発明の化学機械研磨方法に使用される化学機械研磨組成物によって、低い公称研磨パッド圧、例えば3~35kPaでの操作が可能になる。低い公称研磨パッド圧は、スクラッチング及び他の望ましくない研磨欠陥を減少させることにより研磨性能を改善し、そして壊れやすい材料への損傷を最小限にする。
【実施例
【0041】
以下の実施例は、本発明を説明することを目的とするが、その範囲を限定するものではない。
以下の実施例において、特に断りない限り、温度及び圧力の条件は、周囲温度及び標準圧力である。
以下の材料が後述の実施例に使用された:
PC=炭酸カリウム、99.9wt%(Aldrich)。
CC=塩化コリン、99%(Aldrich)
BTMAC=塩化ベンジルトリメチルアンモニウム(60%、Starchem. Inc.)
【0042】
研磨除去速度実験は、8インチブランケットウェーハで行われた。全ての実施例にApplied Materials Mirra(登録商標)研磨機を使用した。全ての研磨実験は、VisionPad 5000(商標)ポリウレタン研磨パッド(Rohm and Haas Electronic Materials CMP Inc.から市販されている)を用い、34.5kPa(5psi)のダウンフォース、125mL/minの化学機械研磨スラリー組成物流量、93rpmのテーブル回転速度及び87rpmのキャリア回転速度で行われた。除去速度は、KLA-Tencor FX200計測ツールを用いて、研磨の前後の膜厚を測定することによって決定された。実施例に報告される欠陥性能は、フッ化水素研磨後洗浄(a hydrogen fluoride post polishing wash)(「Pst HF」)後に走査型電子顕微鏡を用いて決定された。Pst-HF洗浄後の全てのTEOSウェーハは、KLA-Tencorから入手可能なSurfscan(登録商標)SP2欠陥検査システムを用いて検査された。ウェーハ上のその座標を含む欠陥情報は、KLARF(KLA Results File)に記録され、次にこれがKLA-Tencorから入手可能なeDR-5200欠陥点検システムに転送された。100個の欠陥画像のランダム試料を選択して、eDR-5200システムにより再検討した。これらの100個の画像は、種々の欠陥タイプ、例えば、チャターマーク(スクラッチ)、粒子及びパッドくずに分類された。これらの100個の画像からの分類結果に基づいて、ウェーハ上のスクラッチの総数が決定された。
【0043】
実施例1
本発明の化学機械研磨組成物
以下の本発明の化学機械研磨組成物は、研磨スラリーであり、そして以下の表1に開示された成分及び量を含むように調製された。更にpHの調整をすることなく、成分を残部である脱イオン水と合わせた。
【表1】
【0044】
実施例2
比較化学機械研磨組成物
以下の比較化学機械研磨組成物は、研磨スラリーであり、そして以下の表2に開示された成分及び量を含むように調製された。更にpHの調整をすることなく、成分を残部である脱イオン水と合わせた。
【表2】
【0045】
実施例3
TEOS除去速度及び欠陥性能
実施例1の上記の表1の本発明の化学機械研磨スラリー組成物のTEOS除去速度及び欠陥性能を、実施例2の上記の表2に開示された比較スラリーのTEOS除去速度及び欠陥性能と比較した。性能結果は、以下の表3である。
【表3】