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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】給電装置
(51)【国際特許分類】
   B60M 7/00 20060101AFI20231003BHJP
   B60L 5/00 20060101ALN20231003BHJP
【FI】
B60M7/00 X
B60L5/00 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019076440
(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公開番号】P2020172223
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】横山 大祐
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭吾
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-175583(JP,A)
【文献】特開2011-167020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 7/00
B60L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の走行路に配置される給電コイルと、
前記給電コイルに交流電流を供給する電源と、
を備える給電装置であって、
前記給電コイルは、
U相の電流が流れる第1ループ線と、
前記第1ループ線と直列に接続されると共に、V相の電流が流れる第2ループ線と、
を有し、
前記第1ループ線は、前記移動体の走行方向と平行な方向にU字状に折り返された第1折り返し部を有し、
前記第2ループ線は、前記走行方向と平行な方向にU字状に折り返されると共に、前記走行方向と垂直な方向において前記第1折り返し部に重なるように配置された第2折り返し部を有し、
前記第1折り返し部及び前記第2折り返し部は、前記走行路のうち前記移動体の進路を変更するように移動する分岐区間に配置され、
前記第1折り返し部及び前記第2折り返し部それぞれの折り返し端部は、前記分岐区間の両端部のうち、進路変更時の移動量が大きい可動側端部に配置される、給電装置。
【請求項2】
請求項に記載の給電装置であって、
前記第1ループ線は、
前記走行路のうち前記分岐区間の前記可動側端部に接続される被接続区間に配置された第1被接続区間部と、
前記第1折り返し部と前記第1被接続区間部とを接続する第1アプローチ部と、
をさらに有し、
前記第2ループ線は、
前記被接続区間に配置された第2被接続区間部と、
前記第2折り返し部と前記第2被接続区間部とを接続する第2アプローチ部と、
をさらに有する、給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄道車両等の移動体において、動力としての電力を非接触給電によって供給する給電システムが知られている(特許文献1参照)。この給電システムでは、移動体の走行路に給電コイルが配置され、移動体に集電コイルが配置される。
【0003】
給電コイルは、送電用の電線を用い、移動体の走行路に沿って複数のループを構成することで形成される。また、給電コイルは、U相の電流が流れる第1ループ線と、V相の電流が流れる第2ループ線とから構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-125974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
給電コイルのループにおいて第1ループ線と第2ループ線との長さが異なると、電気的な不平衡によってコモンモード電流が給電コイルに流れ、誘導障害が発生するおそれがある。そのため、第1ループ線と第2ループ線との長さを均等にする配置が望まれる。
【0006】
ところで、図4に示すように、本区間111に対し移動体の進路を切り替えるために移動する分岐区間112が走行路110に設けられる場合がある。このような分岐区間112では、ループ線の折り返しが必要となる。
【0007】
図4では、分岐区間112に一方のループ線(例えば第2ループ線122)のみでループL1が形成され、分岐区間112の手前に他方のループ線(例えば第1ループ線121)のみでループL2が形成されることによって、分岐区間112でループ線が折り返されている。これにより、各ループの自己インダクタンス及び電線の数を変更することなく、第1ループ線121と第2ループ線122との長さを均等にできる。
【0008】
しかし、図4の構成では、分岐区間112に配置されたループL1の長さが分岐区間112の手前に配置されたループL2の長さによって制限される。そのため、分岐区間112の長さ(つまり分岐区間112の設置可能位置)に制約が発生する。
【0009】
また、ループ線が構成するループの長さは、分岐区間以外のループ線が設置される構造物(例えば、走行路の内外でループ線が通線される管路の位置)においても制約される。つまり、走行路全体の長さや、走行路における構造物の配置にもループ線による制約が発生する。
【0010】
本開示の一局面は、給電コイルにおける電気的な不平衡を抑制しつつ、走行路の設計自由度を高められる給電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様は、移動体の走行路に配置される給電コイルと、給電コイルに交流電流を供給する電源と、を備える給電装置である。給電コイルは、U相の電流が流れる第1ループ線と、第1ループ線と直列に接続されると共に、V相の電流が流れる第2ループ線と、を有する。
【0012】
また、第1ループ線は、移動体の走行方向と平行な方向にU字状に折り返された第1折り返し部を有し、第2ループ線は、走行方向と平行な方向にU字状に折り返されると共に、走行方向と垂直な方向において第1折り返し部に重なるように配置された第2折り返し部を有する。
【0013】
このような構成によれば、第1折り返し部及び第2折り返し部において、第1ループ線及び第2ループ線が走行方向と垂直な方向に並びながら走行方向に延伸することで、第1ループ線及び第2ループ線の長さが均等に保たれる。そのため、走行路においてループ線の折り返しが必要な箇所に第1折り返し部及び第2折り返し部を配置することで、走行路の設計自由度が高められる。
【0014】
本開示の一態様では、第1折り返し部及び第2折り返し部は、走行路のうち移動体の進路を変更するように移動する分岐区間に配置されてもよい。第1折り返し部及び第2折り返し部それぞれの折り返し端部は、分岐区間の両端部のうち、進路変更時の移動量が大きい可動側端部に配置されてもよい。このような構成によれば、給電コイルにおける電気的な不平衡を抑制するために発生する分岐区間の長さ制約を解消することができる。
【0015】
本開示の一態様では、第1ループ線は、走行路のうち分岐区間の可動側端部に接続される被接続区間に配置された第1被接続区間部と、第1折り返し部と第1被接続区間部とを接続する第1アプローチ部と、をさらに有してもよい。第2ループ線は、被接続区間に配置された第2被接続区間部と、第2折り返し部と第2被接続区間部とを接続する第2アプローチ部と、をさらに有してもよい。このような構成によれば、1つの電源から分岐区間前後の複数のループに電流を供給できる。その結果、分岐区間の長さ制約を解消しつつ、設備コストが低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態における給電装置の模式的な平面図である。
図2図2は、ループ線と走行路との位置関係を示す模式的な断面図である。
図3図3は、図1とは異なる実施形態における給電装置の模式的な平面図である。
図4図4は、従来の給電装置の模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す給電装置1は、移動体(例えば、鉄道車両、自動車、工場内の搬送装置等)への非接触給電に用いられる。給電装置1は、給電コイル2と、電源3とを備える。
【0018】
<給電コイル>
給電コイル2は、移動体の走行路10に配置されている。給電コイル2は、第1ループ線21と第2ループ線22とを有する。給電コイル2は、第1ループ線21及び第2ループ線22によって形成された複数のループから構成されている。
【0019】
本実施形態では、給電コイル2は、図2に示すように、走行路10の走行面10Aから走行面10Aと垂直な方向に一定距離離間した位置に、支持具(図示省略)によって保持されている。つまり、第1ループ線21及び第2ループ線22は、走行路10の走行面10Aに沿って延伸している。
【0020】
走行路10の走行面10Aは、移動体が走行する面である。ただし、移動体は、走行面10Aに必ずしも接面して走行する必要はなく、走行面10Aから離間しつつ、走行面10Aに沿って走行してもよい。また、給電コイル2は、走行面10A上に直接配置されてもよい。
【0021】
走行路10は、図1に示すように、本区間11と、分岐区間12と、被接続区間13とを有する。移動体は、本区間11から被接続区間13に向かって、あるいは被接続区間13から本区間11に向かって走行する。
【0022】
分岐区間12は、本区間11に対し、走行路10における移動体の進路を変更するように移動する。分岐区間12は、本区間11に接続された固定側端部12Aと、被接続区間13に接続する第1位置(図1中破線で示す)と被接続区間13から離間した第2位置(図1中実線で示す)とに移動可能な可動側端部12Bとを有する。被接続区間13は、分岐区間12の可動側端部12Bに接続される。
【0023】
分岐区間12は、固定側端部12Aを中心として、走行面10Aと平行な面内で揺動する。進路変更時における可動側端部12Bの移動量は、固定側端部12Aの移動量よりも大きい。分岐区間12の可動側端部12Bが第2位置にあるときは、図示しない別の被接続区間に分岐区間12が接続される。なお、本区間11と分岐区間12とは常に接続されている。また、固定側端部12Aはループ線が断線しない範囲で移動してもよい。
【0024】
(第1ループ線)
第1ループ線21には、電源3から供給されるU相の電流が流れる。第1ループ線21は、第1本区間部21Aと、第1折り返し部21Bと、第1被接続区間部21Cと、第1アプローチ部21Dとを有する。
【0025】
第1本区間部21Aは、本区間11に配置された部位である。第1本区間部21Aの一端は、電源3に接続されている。
【0026】
第1折り返し部21Bは、移動体の走行方向と平行な方向にU字状に折り返された部位である。第1折り返し部21Bは、分岐区間12に配置されている。第1折り返し部21Bの折り返し端部(つまりU字の底の部分)は、分岐区間12の可動側端部12Bに配置され、分岐区間12の幅方向(つまり走行方向と垂直な方向)に延伸している。
【0027】
第1折り返し部21Bの両端(つまりU字の始点及び終点)は、分岐区間12の固定側端部12Aに配置されている。第1折り返し部21Bの一端は、第1本区間部21Aに接続されている。第1折り返し部21Bの他端は、第1アプローチ部21Dに接続されている。第1折り返し部21Bは、分岐区間12と共に、第1位置と第2位置とに移動する。
【0028】
第1被接続区間部21Cは、被接続区間13に配置された部位である。第1被接続区間部21Cの一端は、第1アプローチ部21Dに接続されている。第1被接続区間部21Cの他端は、第2ループ線22に接続されている。
【0029】
第1アプローチ部21Dは、第1折り返し部21Bと第1被接続区間部21Cとを接続する部位である。第1アプローチ部21Dは、ループを形成せずに、分岐区間12と並行して延伸している。また、第1アプローチ部21Dは、移動体の走行領域外に配置されている。
【0030】
(第2ループ線)
第2ループ線22には、電源3から供給されるV相の電流が流れる。第2ループ線22は、第1ループ線21と直列に接続されている。
【0031】
第1ループ線21と第2ループ線22とは、電源3に両端が接続された一本の連続した電線で構成される。この電線において電源3から最も離間した点Pが第1ループ線21と第2ループ線22との境界となる。
【0032】
第2ループ線22は、第2本区間部22Aと、第2折り返し部22Bと、第2被接続区間部22Cと、第2アプローチ部22Dとを有する。
【0033】
第2本区間部22Aは、本区間11に配置された部位である。第2本区間部22Aの一端は、電源3に接続されている。第2本区間部22Aは、第1本区間部21Aと離間しつつ移動体の走行方向に沿って延伸している。
【0034】
第2折り返し部22Bは、移動体の走行方向と平行な方向にU字状に折り返された部位である。第2折り返し部22Bは、分岐区間12に配置されている。第2折り返し部22Bの折り返し端部は、分岐区間12の可動側端部12Bに配置され、分岐区間12の幅方向に延伸している。
【0035】
第2折り返し部22Bは、分岐区間12の幅方向において第1折り返し部21Bに重なっている。第2折り返し部22Bの分岐区間12の幅方向における長さは、第1折り返し部21Bの分岐区間12の幅方向における長さと等しくされる。また、第2折り返し部22Bは、図1に示すように、第1折り返し部21Bと交差していてもよい。
【0036】
第2折り返し部22Bの両端は、分岐区間12の固定側端部12Aに配置されている。第2折り返し部22Bの一端は、第2本区間部22Aに接続されている。第2折り返し部22Bの他端は、第2アプローチ部22Dに接続されている。第2折り返し部22Bは、分岐区間12及び第1折り返し部21Bと共に、第1位置と第2位置とに移動する。
【0037】
第2被接続区間部22Cは、被接続区間13に配置された部位である。第2被接続区間部22Cの一端は、第2アプローチ部22Dに接続されている。第2被接続区間部22Cの他端は、第1ループ線21に接続されている。
【0038】
第2アプローチ部22Dは、第2折り返し部22Bと第2被接続区間部22Cとを接続する部位である。第2アプローチ部22Dは、ループを形成せずに、分岐区間12と並行して延伸している。また、第2アプローチ部22Dは、第1アプローチ部21Dと共に、移動体の走行領域外に配置されている。
【0039】
(ループの数)
図1において、第1本区間部21Aと第2本区間部22Aとの捻架によって、本区間11に1又は複数のループが形成されてもよい。また、第1本区間部21A及び第2本区間部22Aそれぞれによって本区間11に1又は複数の単相ループが形成されてもよい。
【0040】
さらに、第1折り返し部21B及び第2折り返し部22Bそれぞれによって分岐区間12に1又は複数の単相ループが形成されてもよい。また、第1折り返し部21Bと第2折り返し部22Bとの捻架によって、分岐区間12に1又は複数のループが形成されてもよい。
【0041】
さらに、第1被接続区間部21C及び第2被接続区間部22Cそれぞれによって被接続区間13に1又は複数の単相ループが形成されてもよい。また、被接続区間13には捻架による複数のループが形成されてもよい。
【0042】
<電源>
電源3は、給電コイル2に交流電流を供給する。電源3は、受電設備、高周波変換設備等を含む給電ポストで構成される。なお、図1では、電源3は走行路10に配置されているが、電源3は走行路10の外に配置されてもよい。
【0043】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)第1折り返し部21B及び第2折り返し部22Bにおいて、第1ループ線21及び第2ループ線22が走行方向と垂直な方向に並びながら走行方向に延伸することで、第1ループ線21及び第2ループ線22の長さが均等に保たれる。そのため、走行路10においてループ線の折り返しが必要な箇所に第1折り返し部21B及び第2折り返し部22Bを配置することで、走行路10の設計自由度が高められる。
【0044】
(1b)第1折り返し部21B及び第2折り返し部22Bが分岐区間12に配置されることで、給電コイル2における電気的な不平衡を抑制するために発生する分岐区間12の長さ制約を解消することができる。
【0045】
(1c)第1アプローチ部21D及び第2アプローチ部22Dによって、1つの電源3から分岐区間12前後の複数のループに電流を供給できる。その結果、分岐区間12の長さ制約を解消しつつ、設備コストが低減できる。
【0046】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0047】
(2a)上記実施形態の給電装置1において、第1ループ線21は、必ずしも第1被接続区間部21C及び第1アプローチ部21Dを有さなくてもよい。同様に、第2ループ線22は、必ずしも第2被接続区間部22C及び第2アプローチ部22Dを有さなくてもよい。
【0048】
例えば、図3に示す給電コイル2Aでは、第1ループ線21は、第1本区間部21Aと、第1折り返し部21Bとのみを有する。同様に、第2ループ線22は、第2本区間部22Aと、第2折り返し部22Bとのみを有する。また、給電コイル2Aでは、本区間11内の点Pにおいて、第1ループ線21と第2ループ線22とが接続されている。
【0049】
(2b)上記実施形態の給電装置1において、第1折り返し部21B及び第2折り返し部22Bは、必ずしも分岐区間12に配置されなくてもよい。少なくとも第1折り返し部21B及び第2折り返し部22Bが走行路10に配置されることで、例えば、走行路10全体の長さや、走行路10の内外でループ線が通線される管路の配置の制約を解消することができる。
【0050】
(2c)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0051】
1…給電装置、2,2A…給電コイル、3…電源、10…走行路、10A…走行面、
11…本区間、12…分岐区間、12A…固定側端部、12B…可動側端部、
13…被接続区間、21…第1ループ線、21A…第1本区間部、
21B…第1折り返し部、21C…第1被接続区間部、21D…第1アプローチ部、
22…第2ループ線、22A…第2本区間部、22B…第2折り返し部、
22C…第2被接続区間部、22D…第2アプローチ部。
図1
図2
図3
図4