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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】乳化クレンジング化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20231003BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
A61K8/891
A61Q1/14
A61K8/31
A61K8/02
A61K8/34
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019092891
(22)【出願日】2019-05-16
(65)【公開番号】P2020186212
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】池田 めぐみ
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-015407(JP,A)
【文献】特開2005-239561(JP,A)
【文献】特開平11-193213(JP,A)
【文献】特開平09-249548(JP,A)
【文献】特開2015-030683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
PubMED
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A1)、下記成分(A2)、下記成分(B)、下記成分(C)、及び下記成分(D)を含有し、
前記成分(A1)の含有割合が1.0質量%以上であり、
前記成分(A2)の含有割合が0.5質量%以上8.0質量%以下であり、
前記成分(B)の含有割合が0.1質量%以上であり、
前記成分(A1)と前記成分(B)の合計の含有割合が25.0質量%以下である乳化クレンジング化粧料。
成分(A1):25℃における動粘度が0.5~mm2/sであるジメチルポリシロキサ
成分(A2):カプリリルメチコン及び25℃における動粘度が5~10mm2/sであるジメチルポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも一種のシリコーン油
成分(B):引火点が35~110℃である炭化水素油
成分(C):ノニオン界面活性剤、及び/又は、高分子乳化剤
成分(D):水
【請求項2】
さらに、下記成分(E)を含有する、請求項1に記載の乳化クレンジング化粧料。
成分(E):多価アルコール
【請求項3】
拭き取り用である、請求項1又は2に記載の乳化クレンジング化粧料。
【請求項4】
シート基材と、前記シート基材に含浸された請求項1~3のいずれか1項に記載の乳化クレンジング化粧料とを含む、シート化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化クレンジング化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
メイク落としを目的としたクレンジング化粧料には、洗い流して使用するタイプと、コットンなどに浸み込ませて拭き取るタイプがある。後者の場合には、拭き取り後に化粧料組成物が肌に残るため、拭き取り後の肌感触が良好なものとなることが重要である。
【0003】
例えば、特許文献1(実施例)には、流動パラフィン及び環状シリコーンを主たる油性成分として含むクレンジング化粧料が開示されている。また、特許文献2(実施例)には、揮発性の高い炭化水素油及び環状シリコーンを主たる油性成分として含むクレンジング化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-302450号公報
【文献】特開2005-239561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に記載のクレンジング化粧料は、いずれも高いクレンジング力を発揮しうる。しかし、特許文献1のクレンジング化粧料は、油分として揮発性の低い炭化水素である流動パラフィンを主に用いているため、拭き取り後に、ぬるつきやべたつきが生じることがあった。また、特許文献2のクレンジング化粧料は、油分として揮発性の高い油剤のみを用いているため、拭き取り後に、過度に脱脂されて、乾燥感が強く生じることがあった。このように、クレンジング効果(メイク汚れ除去効果)に優れるとともに、クレンジング後の肌にエモリエント感(乾燥感の無さ)を与えながらも、ぬるつきやべたつきが抑えられたクレンジング化粧料は、未だ得られておらず、開発が望まれている。
【0006】
したがって、本発明の目的は、クレンジング効果に優れるとともに、クレンジング後の肌にエモリエント感(乾燥感の無さ)を与えながらも、ぬるつきやべたつきが抑えられたクレンジング化粧料を提供することにある。また、本発明の別の目的は、上記クレンジング化粧料をシート基材に含浸させたシート化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定のシリコーン油、高揮発性の炭化水素油、特定の乳化剤、及び水を含有する乳化クレンジング化粧料によれば、クレンジング効果に優れるとともに、クレンジング後の肌にエモリエント感(乾燥感の無さ)を与えながらも、ぬるつきやべたつきが抑えられることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、下記成分(A1)、下記成分(A2)、下記成分(B)、下記成分(C)、及び下記成分(D)を含有する、乳化クレンジング化粧料である。
成分(A1):環状シリコーン及び25℃における動粘度が0.5~3mm/sであるジメチルポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも一種のシリコーン油
成分(A2):カプリリルメチコン及び25℃における動粘度が5~10mm/sであるジメチルポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも一種のシリコーン油
成分(B):引火点が35~110℃である炭化水素油
成分(C):ノニオン界面活性剤、及び/又は、高分子乳化剤
成分(D):水
【0009】
上記乳化クレンジング化粧料は、さらに、下記成分(E)を含有することが好ましい。
成分(E):多価アルコール
【0010】
上記乳化クレンジング化粧料は、拭き取り用であることが好ましい。
【0011】
本発明は、また、シート基材と、上記シート基材に含浸された上記乳化クレンジング化粧料とを含む、シート化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の乳化クレンジング化粧料によれば、クレンジング効果に優れるとともに、クレンジング後の肌にエモリエント感(乾燥感の無さ)を与えながらも、ぬるつきやべたつきが抑えられている。このため、拭き取りにより洗い流すことなくクレンジングを行うことができるため、簡便に短時間でメイク落としを行うことができる。また、本発明の乳化クレンジング化粧料をシート基材に含浸させてシート化粧料とすることにより、本発明の乳化クレンジング化粧料の効果を有するシート化粧料が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、乳化クレンジング化粧料を提供する。また本発明は、シート基材と、上記シート基材に含浸された本発明の乳化クレンジング化粧料とを含むシート化粧料を提供する。本明細書においては、上記シート化粧料を「本発明のシート化粧料」と称する場合がある。本発明のシート化粧料は、上記シート基材及び上記シート基材に含浸された上記乳化クレンジング化粧料以外の構成成分を含んでいてもよい。
【0014】
1.乳化クレンジング化粧料
本発明の乳化クレンジング化粧料は、必須成分として、環状シリコーン及び25℃における動粘度が0.5~3mm/sであるジメチルポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも一種のシリコーン油;カプリリルメチコン及び25℃における動粘度が5~10mm/sであるジメチルポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも一種のシリコーン油;引火点が35~110℃である炭化水素油;ノニオン界面活性剤、及び/又は、高分子乳化剤;並びに水を少なくとも含む。本明細書においては、上記「環状シリコーン及び25℃における動粘度が0.5~3mm/sであるジメチルポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも一種のシリコーン油」を「成分(A1)」と称する場合がある。また、上記「カプリリルメチコン及び25℃における動粘度が5~10mm/sであるジメチルポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも一種のシリコーン油」を「成分(A2)」と称する場合がある。また、上記「引火点が35~110℃である炭化水素油」を「成分(B)」と称する場合がある。また、上記「ノニオン界面活性剤、及び/又は、高分子乳化剤」を「成分(C)」と称する場合がある。また、上記水を「成分(D)」と称する場合がある。
【0015】
また、本発明の乳化クレンジング化粧料は、多価アルコールを含むことが好ましい、本明細書においては、上記多価アルコールを「成分(E)」と称する場合がある。
【0016】
すなわち、本発明の乳化クレンジング化粧料は、成分(A1)、成分(A2)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)を少なくとも含む。本発明の乳化クレンジング化粧料は、成分(E)を含むことが好ましい。また、本発明の乳化クレンジング化粧料は、成分(A1)~(E)以外の成分(他の成分)を含んでいてもよい。また、本発明の乳化クレンジング化粧料に含まれる各成分、例えば、成分(A1)、成分(A2)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、成分(E)、及び他の成分は、それぞれ、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0017】
[成分(A1)]
上記成分(A1)は、環状シリコーン及び25℃における動粘度が0.5~3mm/sであるジメチルポリシロキサン(ジメチコン)からなる群から選択される少なくとも一種のシリコーン油である。上記成分(A1)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0018】
上記成分(A1)は、高揮発性のシリコーン油である。上記成分(A1)は、主にクレンジング効果を発揮する成分であり、特に、シリコーン油が配合された、ウォータープルーフタイプのメイク化粧料に対するクレンジング効果に優れる。また、使用感が軽く、クレンジング後の肌にぬるつきやべたつきを生じさせにくい。なお、本明細書において、上記成分(A1)のうち、環状シリコーン油を「成分(a11)」、25℃における動粘度が0.5~3mm/sであるジメチルポリシロキサンを「成分(a12)」と称する場合がある。上記成分(A1)は、それぞれ、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0019】
上記成分(a11)としては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサンなどの環状シリコーンが挙げられる。中でも、クレンジング効果に優れる観点から、ケイ素原子数が4~8の環状シリコーンが好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサンがより好ましい。
【0020】
上記成分(a12)の25℃における動粘度は、クレンジング効果に優れる観点から、0.5~3mm/sである。なお、上記動粘度は、JIS K 2283に基づいて測定したときの値である。
【0021】
本発明の乳化クレンジング化粧料中、上記成分(A1)の含有割合は、特に限定されないが、本発明の乳化クレンジング化粧料100質量%に対して、0.1質量%以上が好ましくは、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましい。上記含有割合が0.1質量%以上であると、クレンジング効果、特にシリコーン油が配合されたメイク化粧料に対するクレンジング効果を一層向上させることができる。上記成分(A1)の含有割合は、本発明の乳化クレンジング化粧料中の全ての成分(A1)の含有割合の合計である。
【0022】
[成分(A2)]
上記成分(A2)は、カプリリルメチコン及び25℃における動粘度が5~10mm/sであるジメチルポリシロキサンからなる群から選択される少なくとも一種のシリコーン油である。上記成分(A2)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0023】
上記成分(A2)は、上記成分(A1)よりもゆるやかな揮発性を発揮するシリコーン油である。上記成分(A2)は、ある程度のクレンジング効果を有し、なおかつ、クレンジング後の肌の乾燥感(所謂、かさつき)を低減する効果を有する。なお、本明細書において、上記成分(A2)のうち、カプリリルメチコンを「成分(a21)」、25℃における動粘度が5~10mm/sであるジメチルポリシロキサンを「成分(a22)」と称する場合がある。上記成分(A2)は、それぞれ、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0024】
上記成分(a21)は、カプリリルメチコンである。上記成分(a21)は、INCI名:Caprylyl Methicone(カプリリルメチコン)で表示される。成分(a21)としては、下記式(1)の化合物が好ましい。
【化1】
【0025】
上記成分(a22)の25℃における動粘度は、肌の乾燥感を低減する観点から、5~10mm/sであり、好ましくは5~7mm/sである。なお、上記動粘度は、JIS K 2283に基づいて測定したときの値である。
【0026】
本発明の乳化クレンジング化粧料中、上記成分(A2)の含有割合は、特に限定されないが、本発明の乳化クレンジング化粧料100質量%に対して、8.0質量%以下が好ましい。上記含有割合が8.0質量%以下であると、ぬるつき・べたつきの無さを一層低減させることができる。上記成分(A2)の含有割合は、本発明の乳化クレンジング化粧料中の全ての成分(A2)の含有割合の合計である。
【0027】
[成分(B)]
上記成分(B)は、引火点が35~110℃である炭化水素油である。上記成分(B)は、高揮発性の炭化水素油であり、本発明の乳化クレンジング化粧料において、上記成分(A1)とともに、優れたクレンジング効果を発揮する成分であり、特に、炭化水素系(例えば、ワックス)成分が配合された、ウォータープルーフタイプのメイク化粧料に対するクレンジング効果に優れる。また、使用感が軽く、クレンジング後の肌にぬるつきやべたつきを生じさせにくい。上記成分(B)は、それぞれ、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0028】
上記成分(B)としては、例えば、イソパラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、水添ポリイソブテン、水添(テトラデセニル/メチルペンタデセン)、イソドデカン、(C13-15)アルカン[INCI名:C13-15 ALKANE]などが挙げられる。
【0029】
上記成分(B)の引火点は、クレンジング効果やべたつき抑制効果に優れる観点から、35~110℃であり、好ましくは、40~90℃、より好ましくは40~70℃である。上記引火点は、JIS K 2265の方法に基づいて測定することができる。
【0030】
上記成分(B)は、市販品を用いることができる。水添ポリイソブテンの市販品としては、例えば、商品名「マルカゾールR」(丸善石油化学株式会社製)、商品名「IPソルベント1620」(出光興産株式会社製)、商品名「パールリーム3」(日油株式会社製)などが挙げられる。水添(テトラデセニル/メチルペンタデセン)の市販品としては、例えば、商品名「SMART5」(日光ケミカルズ株式会社製)などが挙げられる。イソドデカンの市販品としては、例えば、商品名「Creasil ID CG」(CIT Sarl社製)などが挙げられる。(C13-15)アルカンの市販品としては、例えば、商品名「NEOSSANCE HEMISQUALANE」(Aprinnova社製)などが挙げられる。
【0031】
本発明の乳化クレンジング化粧料中の上記成分(B)の含有割合は、特に限定されないが、本発明の乳化クレンジング化粧料100質量%に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。上記含有割合が0.1質量%以上であると、クレンジング効果、特に炭化水素系成分が配合されたメイク化粧料に対するクレンジング効果を一層向上させることができる。上記成分(B)の含有割合は、本発明の乳化クレンジング化粧料中の全ての成分(B)の含有割合の合計である。
【0032】
本発明の乳化クレンジング化粧料中の上記成分(A1)と上記成分(B)の合計の含有割合は、特に限定されないが、本発明の乳化クレンジング化粧料100質量%に対して、0.5質量%以上が好ましく、3.0質量%以上がより好ましく、4.0質量%以上がさらに好ましく、25.0質量%以下が好ましく、20.0質量%以下がより好ましく、15.0質量%以下がさらに好ましい。上記成分(A1)と上記成分(B)の合計の含有割合が0.5質量%以上であると、クレンジング効果がより一層高くなる。上記成分(A1)と上記成分(B)の合計の含有割合が25.0質量%以下であると、乾燥感をより一層抑えることができる。
【0033】
上記成分(A1)と上記成分(B)の合計に対する上記成分(A2)の質量比[成分(A2)/{成分(A1)+成分(B)}]は、特に限定されないが、乾燥感をより一層抑える観点から、0.05以上が好ましく、0.15以上がより好ましく、0.20以上がさらに好ましい。
【0034】
[成分(C)]
上記成分(C)は、ノニオン界面活性剤、及び/又は、高分子乳化剤である。本明細書において、ノニオン界面活性剤を「成分(c1)」、高分子乳化剤を「成分(c2)」と称する場合がある。上記成分(C)は、乳化剤として、乳化剤型を形成する働きを有する。上記成分(C)は、それぞれ、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0035】
上記成分(c1)としては、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールラノリン、及びジメチルラウリルアミンオキシドなどが挙げられる。上記成分(c1)は、それぞれ、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0036】
これらの中で、本発明では、上記成分(c1)として、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0037】
上記ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリル、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリン、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノミリスチン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ジイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、及びトリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルなどが挙げられる。
【0038】
上記ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルにおける酸化エチレンの付加モル数は、特に限定されないが、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、好ましくは100以下、より好ましくは40以下である。上記ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルにおける酸化エチレンの付加モル数が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の乳化クレンジング化粧料の保存安定性がより一層良好になる。
【0039】
上記ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルは、市販品を用いることができる。モノイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルの市販品としては、例えば、商品名「ブラウノン RGL-5MISE」(酸化エチレン付加モル数:5)、商品名「ブラウノン RGL-8MISE」(酸化エチレン付加モル数:8)、商品名「ブラウノン RGL-10MISE」(酸化エチレン付加モル数:10)、及び商品名「RGL-20MISE」(酸化エチレン付加モル数:20)(以上、青木油脂工業株式会社製)、並びに、商品名「GWIS-108」(酸化エチレン付加モル数:8)、商品名「EMALEX GWIS-120」(酸化エチレン付加モル数:20)、及び商品名「EMALEX GWIS-160」(酸化エチレン付加モル数:60)(以上、日本エマルジョン株式会社)などが挙げられる。ジイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルの市販品としては、例えば、商品名「GWIS-210」(酸化エチレン付加モル数:10)、商品名「EMALEX GWIS-220」(酸化エチレン付加モル数:20)、商品名「EMALEX GWIS-230」(酸化エチレン付加モル数:30)、及び商品名「EMALEX GWIS-260」(酸化エチレン付加モル数:60)(以上、日本エマルジョン株式会社製)などが挙げられる。
【0040】
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリル、モノカプリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、ジオレイン酸デカグリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸ペンタグリセリル、ジオレイン酸ペンタグリセリル、モノカプリル酸ヘキサグリセリル、モノカプリル酸トリグリセリル、モノラウリン酸ポリ(4~10)グリセリル、モノステアリン酸ポリ(2~10)グリセリル、ジイソステアリン酸ポリ(2~10)グリセリル、モノオレイン酸ポリ(2~10)グリセリル等が挙げられる。
【0041】
上記成分(c1)のHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値は、特に限定されないが、乳化安定性の観点から、好ましい下限値は7以上、より好ましくは8以上であり、好ましい上限値は16以下、より好ましくは15以下である。なお、上記HLB値は、グリフィン(Griffin)法により算出することができる。
【0042】
上記成分(c2)としては、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルを構成単位として含有する、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体を挙げられる。
【0043】
上記アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体は、主としてアクリル酸とメタクリル酸アルキル(例えば、総炭素数が10~30(C10~C30))の共重合体である。上記成分(c2)としては、特に限定されないが、INCI(International Nomenclature of Cosmetic Ingredient)名で「ACRYLATES/C10-30 ALKYL ACRYLATE CROSSPOLYMER((アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー)」と表記される化合物が挙げられる。
【0044】
上記成分(c2)は市販品を用いることができる。アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の市販品としては、例えば、商品名「PEMULEN TR-1」、商品名「PEMULEN TR-2」、商品名「カーボポール1342」、商品名「カーボポール1382」、及び商品名「ETD2020」(以上、LUBRIZOL社)などが挙げられる。
【0045】
上記成分(c2)は、疎水性であるアルキル部分が油滴に溶解し、同時に親水基であるポリカルボン酸部分が油滴の周囲に水和ゲルを形成することで、油滴の合一を防ぐことにより、比較的大きな油滴の状態でも、乳化状態を安定化することができる。これにより、高い強度のミセルを形成するHLB乳化の場合と異なり、塗布時に、上記水和ゲルが塗布圧力によりつぶされやすくなり、油を効率的に放出するため、クレンジング効果を効果的に発揮する。
【0046】
上記成分(C)としては、上記成分(c1)及び上記成分(c2)のうちのいずれか一方のみを用いてもよく、上記成分(c1)と上記成分(c2)とを併用してもよい。油をより効率的に放出する観点からは、上記成分(C)は、少なくとも上記成分(c2)を含むことが好ましい。さらに、上記成分(c1)と上記成分(c2)とを併用することにより、上記成分(c2)が、油滴の粒子径を比較的大きく保持しながら、上記成分(c1)が乳化助剤として働き、安定な乳化系を形成できるため、上記成分(C)は、上記成分(c1)、及び上記成分(c2)を含むことが好ましい。
【0047】
本発明の乳化クレンジング化粧料中の上記成分(C)の含有割合は、特に限定されないが、本発明の乳化クレンジング化粧料100質量%に対して、0.05質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましい。上記含有割合が0.05質量%以上であると、油分を効率的に放出する効果を維持しながら乳化安定性を高めることができる。これにより、クレンジング効果がより一層高くなる。上記含有割合が5.0質量%以下であると、べたつきやぬるつきを抑えつつ、保存安定性を一層高め、さらに本発明の乳化クレンジング化粧料の粘度を適度に低くすることが容易になる。上記成分(C)の含有割合は、本発明の乳化クレンジング化粧料中の全ての成分(C)の含有割合の合計である。
【0048】
本発明の乳化クレンジング化粧料中の上記成分(c1)の含有割合は、特に限定されないが、乳化安定性の観点から、本発明の乳化クレンジング化粧料100質量%に対して、0.04質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、5.0質量%以下が好ましく、、4.5質量%以下がより好ましく、2.5質量%以下がさらに好ましい。
【0049】
本発明の乳化クレンジング化粧料中の上記成分(c2)の含有割合は、特に限定されないが、本発明の乳化クレンジング化粧料100質量%に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.2質量%以下が好ましく、0.15質量%以下がより好ましい。上記含有割合が0.01質量%以上であると、乳化安定性がより一層高くなる。上記含有割合が、0.2質量%以下であると、コットン等に浸み込ませて使用する際のコットン等への含浸性や、シート化粧料とする際のシート基材への含浸性がより一層向上する。
【0050】
[成分(D)]
上記成分(D)である水としては、特に限定されないが、精製水が好ましい。
【0051】
本発明の乳化クレンジング化粧料中の上記成分(D)の含有割合は、特に限定されないが、本発明の乳化クレンジング化粧料100質量%に対して、50.0質量%以上が好ましく、60.0質量%以上がより好ましく、90.0質量%以下が好ましく、85.0質量%以下がより好ましい。
【0052】
(他の成分)
[成分(E)]
上記成分(E)は多価アルコールである。本発明の乳化クレンジング化粧料の保湿感を高める観点から、上記成分(E)を含有することが好ましい。またシート化粧料とした場合、拭き取り時の皮膚刺激性を緩和する効果が得られる。
【0053】
上記成分(E)としては、特に限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオールなどのグリコール化合物;グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなどのグリセリン化合物;キシリトール、トレハロース、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、アラビトール、リビトール、ガラクチトール、グルシトールなどの糖アルコールなどが挙げられる。
【0054】
上記成分(E)としては、保湿感を向上させる観点から、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、及びソルビトールからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。また、保湿感に加え、ぬるつきやべたつきを抑制する効果をより一層向上する観点から、上記成分(E)はイソプレングリコールを含むことが特に好ましい。
【0055】
本発明の乳化クレンジング化粧料中、上記成分(E)の含有割合は、特に限定されないが、本発明の乳化クレンジング化粧料100質量%に対して、0.5質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましく、20.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以下がより好ましい。上記含有割合が0.5質量%以上であると、保湿感が一層良好となる。また皮膚に対する刺激性がより一層緩和される。上記含有割合が20.0質量%以下であると、クレンジング後のぬるつきやべたつきを抑制する効果がより一層良好になる。本発明の乳化クレンジング化粧料中のイソプレングリコールの含有割合は、特に限定されないが、0.5質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましく、20.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以下がより好ましい。
【0056】
本発明の乳化クレンジング化粧料は、本発明の効果を阻害しない範囲で、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、低級アルコール、油脂、脂肪酸エステル、高級アルコール、高級脂肪酸、防腐剤、清涼剤、抗酸化剤、金属封鎖剤、ビタミン類、動植物抽出エキス、パール化剤、pH調整剤、及び着色剤などの他の成分を含んでいてもよい。これらの他の成分は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0057】
本発明の乳化クレンジング化粧料は、防腐性や速乾性を付与するなどの観点から、エタノールを含んでいてもよい。本発明の乳化クレンジング化粧料中、エタノールの含有割合は、特に限定されないが、本発明の乳化クレンジング化粧料100質量%に対して、0質量%以上(未使用を含む)が好ましく、2.0質量%以上がより好ましく、10.0質量%以下が好ましく、8.0質量%以下がより好ましい。
【0058】
本発明の乳化クレンジング化粧料中の上記成分(A1)、上記成分(A2)、及び上記成分(B)以外の油性成分の含有割合は、特に限定されないが、べたつきをより一層抑制する観点から、本発明の乳化クレンジング化粧料に対して、5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましい。上記成分(A1)、上記成分(A2)、及び上記成分(B)以外の油性成分としては、例えば、油脂、高級脂肪酸、脂肪酸エステル、高級アルコール、上記成分(A1)及び上記成分(A2)以外のシリコーン油、上記成分(B)以外の炭化水素油などが挙げられる。
【0059】
本発明の乳化クレンジング化粧料は、常法により製造することができる。例えば、上記各成分を混合し、公知の方法、具体的には、ディスパーミキサー、ホモミキサー、ディスパーミルなどで攪拌し、乳化する方法が挙げられる。
【0060】
本発明の乳化クレンジング化粧料は、メイク除去を目的として使用されるクレンジング化粧料である。本発明の乳化クレンジング化粧料は、乳液状であることが好ましい。
【0061】
本発明の乳化クレンジング化粧料は、例えば、化粧品、医薬部外品、医薬品、雑貨などとして用いられる。本発明の乳化クレンジング化粧料を適用する部位としては、特に限定されないが、例えば、顔(額、目元、目じり、頬、口元など)、身体(腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、脇、背中など)などが挙げられる。中でも、特に好ましくは顔である。
【0062】
本発明の乳化クレンジング化粧料は、クレンジング効果に優れるとともに、クレンジング後の肌にエモリエント感(乾燥感の無さ)を与えながらも、ぬるつきやべたつきが抑えられた、良好な肌感触を付与することができる。このため、クレンジング後に、洗い流したり、さらに洗顔を行ったりする必要がない。本発明の乳化クレンジング化粧料は、拭き取り用のクレンジング化粧料であることが好ましく、洗い流さないクレンジング化粧料であることが好ましい。
【0063】
本発明の乳化クレンジング化粧料を用いた拭き取り方法としては、例えば、コットン等のシートに本発明の乳化クレンジング化粧料を含浸させて拭き取りながらメイクなどの汚れを除去する方法、若しくは、本発明の乳化クレンジング化粧料をメイクなどの汚れを除去したい部位に塗布して馴染ませた後、コットン等のシートを用いて拭き取りながら除去する方法などが挙げられる。また、予め、本発明の乳化クレンジング化粧料を不織布などのシート基材に含浸させて作製した、シート化粧料を用いてもよい。
【0064】
2.シート化粧料
本発明の乳化クレンジング化粧料をシート基材に含浸することによりシート化粧料が得られる。すなわち、上記シート化粧料は、シート基材と、上記シート基材に含浸された本発明の乳化クレンジング化粧料とを含む。本発明のシート化粧料は、シート基材及び本発明の乳化クレンジング化粧料以外の構成成分を含んでいてもよい。上記シート化粧料としては、例えば、顔用のシート化粧料(クレンジングシート)が好ましい。
【0065】
上記シート基材は、本発明の乳化クレンジング化粧料が含浸可能なシート状の支持体である。上記シート基材としては、織布、不織布が好ましい。上記シート基材は、積層体(すなわち、積層シート)であってもよく、例えば、織布の積層体、不織布の積層体、織布と不織布の積層体などであってもよい。上記シート基材は、使用感、加工のしやすさ等の観点から、不織布を含むシート基材であることが好ましく、より好ましくは不織布である。
【0066】
上記不織布としては、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スティッチボンド不織布などが挙げられる。
【0067】
上記織布や不織布を構成する繊維としては、特に限定されず、例えば、天然繊維、合成繊維、半天然繊維などが挙げられる。上記天然繊維としては、綿、パルプ、シルク、セルロース、麻、リンターなどが挙げられる。上記合成繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等)、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維(例えば、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等)、エチレン-ビニルアルコール共重合体繊維などが挙げられる。上記半天然繊維としては、レーヨン、アセテートなどが挙げられる。上記繊維は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。また、二種以上の上記繊維からなる混紡繊維を用いてもよい。
【0068】
上記シート基材は、エンボス加工処理が施されていてもよい。上記エンボス加工処理としては、特に限定されず、例えば、裏面を押し上げて浮かす(したがって裏面は凹む)方式や、表面に特殊なインクを付着することで凸部を形成する(裏面は凹まない)方式などが挙げられる。
【0069】
上記シート基材の目付は、特に限定されないが、20~100g/mが好ましく、より好ましくは25~80g/mである。目付が上記範囲内であると、肌を拭く際に、シート基材が丸まらず使用感に優れる。また、シート化粧料の単位面積あたりの乳化クレンジング化粧料の含浸量が多くなる。
【0070】
上記シート基材は、織布や不織布等の種類に応じて、公知乃至慣用の製造方法により製造することができる。また、上記シート基材は市販品を用いることもできる。
【0071】
本発明のシート化粧料における、上記シート基材に対する含浸された本発明の乳化クレンジング化粧料の質量割合は、特に限定されないが、上記シート基材100質量部に対して、100~1000質量部であることが好ましく、より好ましくは150~700質量部である。
【0072】
本発明のシート化粧料の形状はシート状である。これにより、皮膚(肌)を拭く使用形態での使用性に優れ、携帯性にも優れる。シートの平面形状は、特に限定されないが、例えば、四角形(例えば、正方形、長方形等)、三角形等の多角形;円形、楕円形、半円形;三日月形;樽形;鼓形;キャラクターの形状などが挙げられる。中でも、生産性、使用性や梱包性の観点からは四角形が好ましい。本発明のシート化粧料には、切れ込み部、くり抜き部、凹凸部などの成型が施されていてもよい。本発明のシート化粧料のシートの片面の表面積は、特に限定されないが、使用性、携帯性、包装性などの観点から、100~3000cmが好ましく、より好ましくは150~1000cmである。
【0073】
本発明のシート化粧料は、乾燥防止、外出時の携帯性、使用時の取り扱い性等の観点から、包装容器に収納されることが好ましい。本発明のシート化粧料は1枚ごとに個別包装されていてもよいし、生産コスト、生産効率等の観点から、複数枚の本発明のシート化粧料が同一包装容器内に収納されていてもよい。1つの包装容器に収納される本発明のシート化粧料の枚数は、特に限定されないが、1~50枚(/1包装容器)が好ましい。本発明のシート化粧料は、二つ折り、三つ折り、四つ折り等に折り畳んで包装容器に収納されていることが好ましい。
【0074】
上記包装容器としては、例えば、袋体(包装袋)、箱状容器などが挙げられる。上記包装容器は、本発明の乳化クレンジング化粧料の揮発を抑制できるものが好ましい。上記包装容器の材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂;アルミニウム等の金属等が挙げられる。上記包装容器としては、軽量であり優れた揮発防止効果を有する観点から、表面に金属層が積層又は蒸着された樹脂製の包装容器(特に、包装袋)が好ましく、より好ましくは表面にアルミニウム蒸着された樹脂製の包装袋である。
【0075】
本発明のシート化粧料は、上記シート基材に本発明の乳化クレンジング化粧料を含浸させることにより製造することができる。シート基材に本発明の乳化クレンジング化粧料を含浸させる方法は、特に限定されず、例えば、折り畳まれた状態のシート基材に本発明の乳化クレンジング化粧料を注入し含浸させる方法、シート基材に本発明の乳化クレンジング化粧料をスプレーする方法、印刷法を用いてシート基材に本発明の乳化クレンジング化粧料を含浸させる方法、本発明の乳化クレンジング化粧料中にシート基材を浸す方法などが挙げられる。
【0076】
本発明のシート化粧料は、皮膚(肌)を拭くために用いられる。本発明のシート化粧料により拭き取る部位としては、特に限定されず、例えば、顔面(例えば、額、目元、目じり、頬、口元等)や、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、脇、背中などが挙げられる。本発明のシート化粧料としては、メイク落としシート(クレンジングシート)などが挙げられる。なお、本発明のシート化粧料は、例えば、化粧品、医薬部外品、医薬品、雑貨のいずれであってもよい。
【0077】
本発明のシート化粧料の使用方法は、特に限定されないが、肌上の汚れ、古い角質や皮脂、メイク汚れ等を拭き取る方法が挙げられる。本発明のシート化粧料は、肌上を拭いて使用するだけで、クレンジング効果に優れるとともに、クレンジング後の肌にエモリエント感(乾燥感の無さ)を与えながらも、ぬるつきやべたつきを抑制することができるため、肌上を拭いて使用する拭き取り用シート化粧料(例えば、クレンジングシート)とすることが好ましい。
【0078】
本発明の乳化クレンジング化粧料は、環状シリコーン及び動粘度の小さいジメチルポリシロキサンより選択される高揮発性のシリコーン油(上記成分(A1))、及び、高揮発性の炭化水素油(上記成分(B))を含有することにより、優れたクレンジング効果を有する。特に、シリコーン油が配合されたタイプと炭化水素化合物が配合されたタイプのいずれのタイプのメイク化粧料に対しても優れたクレンジング効果を有する。
しかしながら、上記のような高揮発性の油分のみを油分とする場合には、拭き取り後に、過度な脱脂が生じて乾燥感(かさつき)が強く生じる問題があった。これに対して、本発明の乳化クレンジング化粧料は、上記成分(A1)や上記成分(B)よりも揮発速度がある程度遅いシリコーン油である上記成分(A2)を併用することにより、上記成分(A1)や上記成分(B)の揮発後も、上記成分(A2)がある程度残存するようにして、乾燥感を抑制することに成功した。なおかつ、上記成分(A2)は揮発速度が遅すぎないため、油性成分の残存によるぬるつきやべたつきが生じることも抑制して、保湿感を与えつつも、油っぽさが抑えられた軽い使用感を達成した。
さらに乳化剤である上記成分(C)を含有することで、みずみずしい水中油型の乳化クレンジング化粧料とすることができる。中でも、上記成分(C)として、高分子乳化剤(上記成分(c2))を用いる場合(より好ましくは、上記成分(c1)と上記成分(c2)を併用する場合)は、油分の乳化粒子を適度なサイズに安定的に制御し、圧力の付与により油分を放出して、一層効果的にクレンジング効果を発揮する乳化系を形成することができる。これにより、本発明の乳化クレンジング化粧料は、みずみずしい水中油型の乳化クレンジング化粧料でありながらも、オイルクレンジングのような高いクレンジング効果を有する。
【実施例
【0079】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表に記載の配合量は、各成分の配合量(すなわち、各原料中の有効成分の配合量)であり、特記しない限り「質量%」で表す。また、表中の配合量における「-」は、その成分を配合していないことを示す。ここで実施例3、4は参考例1、2と読み替えるものとする。
【0080】
表1に記した組成に従い、常法により、実施例及び比較例の乳化クレンジング化粧料を調製した。さらに、上記乳化クレンジング化粧料を、スパンレース不織布(目付:40g/m)に、スパンレース不織布と乳化クレンジング化粧料の質量比が1:4.5となるように含浸させて、実施例及び比較例のシート化粧料を調製した。
【0081】
表に記載の主な成分は、以下のとおりである。
【0082】
<成分(A1)>
ジメチコン(25℃における動粘度1.5mm/s):商品名「DOWSIL SH200 C Fluid 1.5cSt」、ダウ・東レ株式会社製
ジメチコン(25℃における動粘度1mm/s):商品名「DOWSIL SH200 C Fluid 1cSt」、ダウ・東レ株式会社製
ジメチコン(25℃における動粘度2mm/s):商品名「DOWSIL SH200 C Fluid 2cSt」、ダウ・東レ株式会社製
シクロペンタシロキサン:商品名「TSF405」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、デカメチルシクロペンタシロキサン
<成分(A2)>
ジメチコン(25℃における動粘度5mm/s):商品名「DOWSIL SH200 C Fluid 5cSt」、ダウ・東レ株式会社製
カプリリルメチコン:商品名「SILSOFT 034」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製
ジメチコン(25℃における動粘度10mm/s):商品名「DOWSIL SH200 C Fluid 10cSt」、ダウ・東レ株式会社製
<成分(B)>
軽質イソパラフィン(引火点49℃):商品名「マルカゾール R」、丸善石油化学株式会社製
軽質イソパラフィン(引火点61℃):商品名「パールリーム3」、日油株式会社製
軽質流動イソパラフィン(引火点96℃):商品名「パールリーム4」、日油株式会社製
(C13-15)アルカン(引火点110℃):商品名「NEOSSANCE HEMIQUALANE」、Aprinnova社製
<成分(C)>
イソステアリン酸PEG-20グリセリル:商品名「ブラウノンRGL-20MISE」、青木油脂工業株式会社製
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー:商品名「PEMULEN TR-2」、LUBRIZOL社製
カプリル酸ポリグリセリル-3:商品名「TEGO Cosmo P 813」、EVONIK社製
<その他成分>
ジメチコン(25℃における動粘度50mm/s):商品名「DOWSIL SH200 C Fluid 50cSt」、ダウ・東レ株式会社製
軽質イソパラフィン(引火点140℃):商品名「パールリームEX」、日油株式会社製
流動パラフィン(引火点185℃):商品名「CARNATION」、Sonneborn Inc社製
【0083】
<評価方法>
実施例、比較例で得られた各シート化粧料について、以下のとおり評価した。評価結果は表1に記載した。
【0084】
(1)クレンジング力
市販のシリコーン系のウォータープルーフマスカラ及び市販の炭化水素系のウォータープルーフマスカラをそれぞれ人工皮膚(商品名「バイオスキンプレート」、白色、ビューラックス社製)に塗布し、25℃の環境下で3時間放置した後、評価に用いた。実施例及び比較例の各シート化粧料で、上記マスカラを塗布した人工皮膚を10往復擦り、マスカラの除去度合を、以下の基準で目視にて観察した。
[クレンジング力の判定基準]
○○(優れる):シリコーン系のウォータープルーフマスカラ及び炭化水素系のウォータープルーフマスカラのいずれもが、完全に除去された。
○(良好):シリコーン系のウォータープルーフマスカラ及び炭化水素系のウォータープルーフマスカラのいずれもが、わずかに残る程度にまで除去された。又は、いずれか一方が完全に除去され、他方がわずかに残る程度にまで除去された。
×(不良):シリコーン系のウォータープルーフマスカラ及び炭化水素系のウォータープルーフマスカラの少なくとも一方が、明らかに残存していた。
【0085】
(2)乾燥感の無さ、ぬるつき・べたつきの無さ
実施例及び比較例の各シート化粧料で、頬部を片道5回擦り、25℃の環境下で10分間放置した後、頬部の肌の乾燥感の無さ、ぬるつき・べたつきの無さを以下の基準で評価した。なお、評価は、ポンプフォーマー洗顔料で洗顔しタオルドライして3分後に行った。
[乾燥感の無さの判定基準]
○○(優れる):シート化粧料を使用する前よりも、肌の乾燥感がより低減したと感じられた。
○(良好):肌の乾燥感の無さが、シート化粧料を使用する前と同程度と感じられた。
×(不良):シート化粧料を使用する前よりも、肌が乾燥していると感じられた。
[ぬるつき・べたつきの無さの判定基準]
○○(優れる):ぬるつき・べたつきがほとんど又は全く感じられなかった。
○(良好):ぬるつき・べたつきが感じられるものの、実用上許容できる程度であった。
×(不良):ぬるつき・べたつきが強く感じられ、実用上不快であった。
【0086】
【表1】
【0087】
本発明の乳化クレンジング化粧料(シート化粧料)は、クレンジング力、乾燥感の無さ、ぬるつき・べたつきの無さの全てが、良好(〇)~優れる(〇〇)結果となり、これらの機能を兼ね備えることが示された。一方、比較例1は、上記成分(A1)を欠く例であるが、クレンジング力が不良であった。比較例2は、上記成分(A2)を欠く例であるが、乾燥感の無さが不良であった。比較例3は、上記成分(B)を欠く例であるが、クレンジング力が不良であった。比較例4は、上記成分(A2)の代わりに、25℃の動粘度が、上限値を超えるシリコーン油を配合した例であるが、ぬるつき・べたつきの無さが不良であった。比較例5は、上記成分(B)の代わりに、引火点が上限値を超える炭化水素油を配合した例であるが、クレンジング力、ぬるつき・べたつきの無さの両方において、不良であった。以上の結果から、本発明の乳化クレンジング化粧料(シート化粧料)は、クレンジング効果に優れるとともに、クレンジング後の肌に乾燥感の無さを与えながらも、ぬるつきやべたつきを抑える効果を有することが示された。
【0088】
さらに以下に、本発明の乳化クレンジング化粧料の処方例を示す。
【0089】
処方例1 クレンジングミルク
ジメチコン(25℃の動粘度:1.5mm/s) 7.0質量%
ジメチコン(25℃の動粘度:5mm/s) 2.0質量%
カプリリルメチコン 1.0質量%
軽質イソパラフィン(引火点49℃) 6.0質量%
イソステアリン酸PEG-20グリセリル 1.5質量%
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー 0.07質量%
カプリル酸ポリグリセリル-3 0.5質量%
イソプレングリコール 5.0質量%
グリセリン 2.0質量%
DPG 3.0質量%
1,2-オクタンジオール 0.1質量%
メチルパラベン 0.1質量%
フェノキシエタノール 0.2質量%
エタノール 3.0質量%
香料 0.02質量%
フィチン酸 0.15質量%
イノシトール 2.0質量%
水酸化カリウム 適量(pH6.8となる量)
精製水 残部

処方例2 クレンジングクリーム
ジメチコン(25℃の動粘度:1.5mm/s) 7.0質量%
ジメチコン(25℃の動粘度:5mm/s) 2.0質量%
カプリリルメチコン 1.0質量%
軽質イソパラフィン(引火点49℃) 3.0質量%
軽質イソパラフィン(引火点61℃) 2.0質量%
パルミチン酸2-エチルヘキシル 3.0質量%
イソステアリン酸PEG-20グリセリル 1.0質量%
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー 0.2質量%
カルボマー 0.1質量%
キサンタンガム 0.05質量%
カプリル酸ポリグリセリル-3 0.3質量%
PEG-6(カプリル酸/カプリン酸)グリセリズ 0.2質量%
ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル 0.5質量%
ステアリン酸グリセリル 0.3質量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 0.5質量%
イソプレングリコール 4.0質量%
グリセリン 2.0質量%
DPG 3.0質量%
ベタイン 2.0質量%
ヒアルロン酸 0.1質量%
エタノール 5.0質量%
香料 0.02質量%
水酸化カリウム 適量(pH6.8となる量)
精製水 残部