(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着剤層及び粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 133/04 20060101AFI20231003BHJP
C09J 121/00 20060101ALI20231003BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231003BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20231003BHJP
C09J 123/20 20060101ALN20231003BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J121/00
C09J11/06
C09J7/38
C09J123/20
(21)【出願番号】P 2019098480
(22)【出願日】2019-05-27
【審査請求日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2018102821
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉良 佳子
(72)【発明者】
【氏名】谷 賢輔
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-171460(JP,A)
【文献】特開平03-220283(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0257858(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0284364(US,A1)
【文献】特開2017-071749(JP,A)
【文献】特開昭60-245681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースポリマーと、湿気硬化性成分とを含有する粘着剤組成物であって、
前記ベースポリマーは、前記湿気硬化性成分と反応する官能基を有さない、ゴム系ポリマー、又はアクリル系ポリマーを含み、
前記湿気硬化性成分は、脂肪族イソシアネート、又は脂環族イソシアネートであり、
粘着剤層を形成した際の膨潤度が2.5以下である粘着剤組成物。
【請求項2】
粘着剤層を形成した際の20℃の純水に24時間浸漬後の吸水率が20質量%以下である請求項
1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
粘着剤層を形成し、湿気硬化させた際の25℃におけるヤング率が15kPa以上100kPa以下である請求項1
又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
粘着剤層を形成した際の25℃におけるヤング率が10kPa以上400kPa以下である請求項1~
3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層。
【請求項6】
請求項
5に記載の粘着剤層を備える粘着シート。
【請求項7】
前記粘着剤層が基材上に形成されている請求項
6に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、該粘着剤組成物からなる粘着剤層、並びに該粘着剤層を備える粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な分野での接着固定において、高い初期粘着力と十分な経時接着力の両方を有することから、湿気硬化型の粘着剤や、湿気硬化型粘着剤を用いた粘着シートが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、コンクリート等の無機材や木材のような凹凸の表面を有する被着体に対して十分な接着強度を有する湿気硬化型粘接着剤を光重合により供し得る光重合性組成物、及びこの組成物を用いてなる湿気硬化型粘接着性シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、コンクリート等の無機材や木材のような凹凸の表面を有する被着体に対する接着強度について検討がなされているが、湿潤面に対する接着強度については何ら検討されていない。
また、従来の接着剤は、長期にわたり水と接触、又は浸水する等の環境で用いられる場合、接着強度が低下するという課題があり耐水性の向上が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、ベースポリマーと、湿気硬化性成分とを含有する粘着剤組成物において、粘着剤層を形成した際の膨潤度を特定の範囲とすることにより、湿潤面に対する高い接着力と、優れた耐水性を与える粘着剤組成物、該粘着剤組成物からなる粘着剤層、並びに該粘着剤層を備える粘着シートを提供することを一つの課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、湿潤面に対して高い接着力を示し、耐水性に優れた粘着シートを提供することを目的として鋭意検討を重ねた結果、粘着剤層を形成する粘着剤組成物として、湿気硬化性成分を含有する粘着剤組成物を用いることを着想した。その上で、湿潤面に対する高い接着力と耐水性を得るには、粘着剤層の吸湿、又は吸水による膨潤を抑え粘着剤層の形状の変化を抑制することが重要であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の一態様は、ベースポリマーと、湿気硬化性成分とを含有する粘着剤組成物であって、粘着剤層を形成した際の膨潤度が2.5以下である粘着剤組成物に関する。
【0009】
本発明の一態様において、湿気硬化性成分が、イソシアネート化合物及びアルコキシシリル基含有ポリマーから選択される1種以上であってもよい。
【0010】
本発明の一態様において、湿気硬化性成分は、脂肪族イソシアネート又は脂環族イソシアネートであってもよい。
【0011】
本発明の一態様において、ベースポリマーは、ゴム系ポリマー、又はアクリル系ポリマーを含むことが好ましい。
【0012】
本発明の一態様において、粘着剤組成物は、粘着剤層を形成した際の吸水率が20質量%以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様において、粘着剤組成物は、粘着剤層を形成し、湿気硬化させた際の25℃におけるヤング率が15kPa以上100kPa以下であることが好ましい。
【0014】
本発明の一態様において、粘着剤組成物は、粘着剤層を形成した際の25℃におけるヤング率が10kPa以上400kPa以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の一態様は、上記の粘着剤組成物からなる粘着剤層に関する。
【0016】
本発明の一態様は、上記の粘着剤層を備える粘着シートに関する。
【0017】
本発明の一態様において、上記粘着剤層は基材上に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、湿潤面に対する高い接着力と、優れた耐水性を与える粘着剤組成物、該粘着剤組成物からなる粘着剤層、並びに該粘着剤層を備える粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る粘着シートの概略断面図の一例である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る粘着シートの概略断面図の一例である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る粘着シートの概略断面図の一例である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る粘着シートの概略断面図の一例である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る粘着シートの概略断面図の一例である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る粘着シートの概略断面図の一例である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る粘着シートの概略断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0021】
本発明の実施形態に係る粘着剤組成物は、ベースポリマーと、湿気硬化性成分とを含有する粘着剤組成物であって、粘着剤層を形成した際の膨潤度が2.5以下である。
本発明の実施形態に係る粘着剤層は、本発明の実施形態に係る粘着剤組成物からなる。
また、本発明の実施形態に係る粘着シートは、本発明の実施形態に係る粘着剤層を備え、粘着剤層が基材上に形成されていることが好ましい。
ここで、本明細書において「粘着シート」という場合には、「粘着テープ」、「粘着ラベル」、「粘着フィルム」等と称されるものが包含され得る。
「粘着面」とは、粘着シートにおいて被着体に貼り付けられる側の面(貼付面)である。本発明の粘着シートは、片面のみが粘着面であってもよく、両面が粘着面であってもよい。
また、「未反応状態」とは、水による硬化反応を生じていない状態を表す。または、被着体と化学結合可能な官能基が残存している状態を表す。本発明においては、特に粘着剤層の粘着面側の表面付近の湿気硬化性成分が未反応状態であることが好ましい。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る粘着シートの概略断面図の一例である。
本実施形態の粘着シート10は、基材11と、粘着剤層12とを備え、粘着剤層12の基材11と反対側の面は、剥離ライナー13により剥離可能に被覆されていてもよい。
本実施形態の粘着シート10は、剥離ライナー13を剥離除去して、粘着剤層12を介して被着体に貼り付けられて使用される。すなわち、本実施形態における粘着剤層12においては、剥離ライナー13側の面が粘着面である。
【0023】
以下、本実施形態の粘着シート10を形成する層について詳細に説明する。
【0024】
本実施形態における粘着剤層12は、ベースポリマーと、未反応状態の湿気硬化性成分とを含有する粘着剤組成物からなる。
【0025】
本実施形態の粘着シート10は、被着体の湿潤面に貼付されると、粘着剤組成物(粘着剤層12)中に含有されている未反応状態の湿気硬化性成分が、被着体の湿潤面から吸収された水分や、周囲の水分や湿気といった水と反応して湿気硬化することにより、被着体に対する接着力が向上する。その結果、被着体の湿潤面に貼付された際に、接着力が経時的に上昇し、高い接着力を発現することができる。なお、湿気硬化性成分が被着体と化学結合可能なものである場合、粘着剤組成物(粘着剤層12)中に含有されている被着体と化学結合可能な湿気硬化性成分と、被着体表面との間の化学結合が進行することにより、被着体表面に対する接着力がさらに向上するため好ましい。
【0026】
本発明の実施形態に係る粘着シートは、
図2に示すように基材の両面に粘着剤層を備え、粘着剤層を剥離ライナーにより保護してもよい。
本実施形態の粘着シート30は、第1の剥離ライナー33A、第1の粘着剤層32A、基材31、第2の粘着剤層32B、及び第2の剥離ライナー33Bをこの順で備えていてもよい。
本実施形態の粘着シート30は、第1の剥離ライナー33A及び第2の剥離ライナー33Bを剥離除去し、第1の粘着剤層32Aと第2の粘着剤層32Bとをそれぞれ異なる被着体に貼付して使用される。すなわち、本実施形態においては第1の粘着剤層32Aの第1の剥離ライナー33A側の面、及び、第2の粘着剤層32Bの第2の剥離ライナー33B側の面の両方が粘着面である。
【0027】
本実施形態における基材31、第1及び第2の粘着剤層32A及び32B、第1及び第2の剥離ライナー33A及び33Bは、上記基材11、粘着剤層12、剥離ライナー13と同様である。
【0028】
また、本実施形態における粘着シート30は巻回されていてもよい。すなわち、本実施形態の粘着シート30は、例えば第2の剥離ライナー33Bを備えず、第2の粘着剤層32Bの粘着面が第1の剥離ライナー33Aの第1の粘着剤層32Aとは反対側の面に貼付されるように巻回されていてもよい。
【0029】
本発明の実施形態に係る粘着シートは、
図3に示すように基材を備えず、粘着剤層の両面を剥離ライナーにより保護してもよい。
すなわち、本実施形態の粘着シート40は、第1の剥離ライナー43A、粘着剤層42、及び第2の剥離ライナー43Bをこの順で備えていてもよい。
本実施形態の粘着シート40は、第1の剥離ライナー43A及び第2の剥離ライナー43Bを剥離除去し、粘着剤層42の一方の面と他方の面とをそれぞれ異なる被着体に貼付して使用される。すなわち、本実施形態においては粘着剤層42の第1の剥離ライナー43A側の面、及び、第2の剥離ライナー43B側の面がいずれも粘着面である。
【0030】
本発明の実施形態に係る粘着シートは、
図4~7に示すように本発明の実施形態に係る粘着剤層(以下、「湿潤粘着剤層」と称する場合がある)とは組成の異なる他の粘着剤層(以下、「他の粘着剤層」と称する場合がある)を備えていてもよい。
【0031】
図4は、本発明の実施形態に係る粘着シートの概略断面図の一例である。
本実施形態の粘着シート50は、基材51と、湿潤粘着剤層52と、湿潤粘着剤層52とは組成の異なる他の粘着剤層54を備え、湿潤粘着剤層52の基材51と反対側の面は、剥離ライナー53により剥離可能に被覆されていてもよい。
他の粘着剤層54は、湿潤粘着剤層52とは組成の異なる粘着剤層であり、湿潤粘着剤層52を構成する粘着剤組成物とは組成の異なる任意の粘着剤組成物からなる粘着剤層であってもよい。
本実施形態の粘着シート50は、剥離ライナー53を剥離除去して、湿潤粘着剤層52を介して被着体に貼り付けられて使用される。すなわち、本実施形態における湿潤粘着剤層52においては、剥離ライナー53側の面が粘着面である。
本実施形態の粘着シート50は、他の粘着剤層54を備えることにより、コンクリートのような粗面に対して追従可能な厚みのある粘着剤構成とすることができる。
また、本実施形態の粘着シート50は、粘着面が本実施形態にかかる湿潤粘着剤層52であるため、被着体の湿潤面に貼付されると、湿潤粘着剤層52中に含有されている未反応状態の湿気硬化性成分が、被着体の湿潤面から吸収された水分や、周囲の水分や湿気といった水と反応して湿気硬化することにより、被着体に対する接着力が向上する。その結果、被着体の湿潤面に貼付された際に、接着力が経時的に上昇し、高い接着力を発現することができる。
【0032】
図5は、本発明の実施形態に係る粘着シートの概略断面図の一例である。
図5に示す本実施形態の粘着シート60は、第1の剥離ライナー63A、第1の湿潤粘着剤層62A、第1の他の粘着剤層64A、基材61、第2の他の粘着剤層64B、第2の湿潤粘着剤層62B、及び第2の剥離ライナー63Bをこの順で備えていてもよい。
粘着シート60においては、第1の湿潤粘着剤層62A及び第2の湿潤粘着剤層62Bが本発明の実施形態にかかる粘着剤層である。そして、第1の他の粘着剤層64Aおよび第2の他の粘着剤層64Bは、第1の湿潤粘着剤層62A及び第2の湿潤粘着剤層62Bとは組成の異なる他の粘着剤層であり、第1の湿潤粘着剤層62A及び第2の湿潤粘着剤層62Bを構成する粘着剤組成物とは組成の異なる任意の粘着剤組成物からなる粘着剤層であってもよい。
本実施形態の粘着シート60は、第1の剥離ライナー63A及び第2の剥離ライナー63Bを剥離除去し、第1の湿潤粘着剤層62Aと第2の湿潤粘着剤層62Bとをそれぞれ異なる被着体に貼付して使用される。すなわち、本実施形態においては第1の湿潤粘着剤層62Aの第1の剥離ライナー63A側の面、及び、第2の湿潤粘着剤層62Bの第2の剥離ライナー63B側の面の両方が粘着面である。
【0033】
本発明の実施形態に係る粘着シートは、一方の粘着面を本発明の実施形態にかかる粘着剤層とし、もう一方の粘着面を他の粘着剤層とすることもできる。
図6は、本発明の実施形態に係る粘着シートの概略断面図の一例である。
図6に示す本実施形態の粘着シート70は、第1の剥離ライナー73A、第1の他の粘着剤層74A、基材71、第2の他の粘着剤層74B、湿潤粘着剤層72、及び第2の剥離ライナー73Bをこの順で備えていてもよい。
粘着シート70においては、湿潤粘着剤層72が本発明の実施形態にかかる粘着剤層である。そして、第1の他の粘着剤層74Aおよび第2の他の粘着剤層74Bは、湿潤粘着剤層72とは組成の異なる他の粘着剤層であり、湿潤粘着剤層72を構成する粘着剤組成物とは組成の異なる任意の粘着剤組成物からなる粘着剤層であってもよい。
本実施形態の粘着シート70は、第1の剥離ライナー73A及び第2の剥離ライナー73Bを剥離除去し、第1の他の粘着剤層74Aと湿潤粘着剤層72とをそれぞれ異なる被着体に貼付して使用される。すなわち、本実施形態においては第1の他の粘着剤層74Aの第1の剥離ライナー73A側の面、及び、湿潤粘着剤層72の第2の剥離ライナー73B側の面の両方が粘着面である。
【0034】
本発明の実施形態に係る粘着シートは、基材を備えず、他の粘着剤層の少なくとも一方の面に本発明の実施形態にかかる粘着剤層を備え、粘着面の両面を剥離ライナーにより保護してもよい。
図7は、本発明の実施形態に係る粘着シートの概略断面図の一例である。
図7に示す本実施形態の粘着シート80は、第1の剥離ライナー83A、第1の湿潤粘着剤層82A、他の粘着剤層84、第2の湿潤粘着剤層82B、及び第2の剥離ライナー83Bをこの順で備えていてもよい。
粘着シート80においては、第1の湿潤粘着剤層82A及び第2の粘着剤層82Bが本発明の実施形態にかかる粘着剤層である。そして、他の粘着剤層84は、第1の湿潤粘着剤層82A及び第2の湿潤粘湿潤着剤層82Bとは組成の異なる他の粘着剤層であり、第1の湿潤粘着剤層82A及び第2の粘着剤層82Bを構成する粘着剤組成物とは組成の異なる任意の粘着剤組成物からなる粘着剤層であってもよい。
【0035】
本実施形態の粘着シート80は、第1の剥離ライナー83A及び第2の剥離ライナー83Bを剥離除去した場合、第1の湿潤粘着剤層82Aの第1の剥離ライナー83A側の面、及び、第2の湿潤粘着剤層82Bの第2の剥離ライナー83B側の面がいずれも粘着面である。
粘着シート80は、他の粘着剤層84の両方の面に本発明の実施形態にかかる粘着剤層(第1の湿潤粘着剤層82A及び第2の湿潤粘着剤層82B)を備えるが、第1の湿潤粘着剤層82Aを備えずに、他の粘着剤層84の一方の面に本発明の実施形態にかかる粘着剤層(第2の湿潤粘着剤層82B)を備える構成としてもよい。
【0036】
本実施形態の粘着剤組成物からなる粘着剤層または該粘着剤層を備える粘着シート(以下、まとめて粘着シートともいう)は、被着体の湿潤面に貼付されると、粘着剤組成物(粘着剤層)中に未反応状態で含有されている湿気硬化性成分が、被着体の湿潤面から吸収された水分や、周囲の水分や湿気といった水と反応して湿気硬化することにより、被着体に対する接着力が向上する。その結果、被着体の湿潤面に貼付された際に、接着力が経時的に上昇し、高い接着力を発現することができる。湿気硬化性成分が、被着体の湿潤面から吸収された水分と反応して湿気硬化することは、後述の剥離界面の水の吸光度比を測定することにより確認することができる。
なお、湿気硬化性成分が被着体と化学結合可能なものである場合、粘着剤組成物(粘着剤層)中に未反応状態で含有されている被着体と化学結合可能な湿気硬化性成分と、被着体表面との間の化学結合が進行することにより、被着体表面に対する接着力がさらに向上するため好ましい。
【0037】
(粘着剤組成物)
本実施形態における粘着剤組成物は、粘着剤層を形成した際の膨潤度が2.5以下である。上記膨潤度が2.5以下であれば、被着体の湿潤面に貼付された場合であっても水分や湿気との接触により粘着剤層が膨潤して接着力が低下することを防止ないし抑制できる。また、水中に保管しても粘着剤層の膨潤による形状の変化が少なく、耐水性に優れ、長期にわたり水と接触、又は浸水する等の環境での使用に適している。さらに、膨潤度が2,5以下であれば、接着後にわずかな剥離が生じて粘着剤層が膨潤したとしても、界面との接着力が強固であるために剥離力の低下を抑制できる。
上記膨潤度が2.5より大きいと、水分や湿気との接触により粘着剤層が膨潤して形状が変化し、接着力の低下や耐水性の低下、基材からのはみ出し等が生じる虞がある。さらに、膨潤度が2.5より大きいと、接着後に、わずかな剥離であっても粘着剤層が水と接すれば、粘着剤層の膨潤をきっかけとして粘着剤と被着体との界面への水の浸入が進み、剥離が進行するおそれがある。
【0038】
上記膨潤度は、2.5以下であり、好ましくは2.3以下であり、さらに好ましくは1.5以下である。なお、当該膨潤度は低い方が好ましく、その下限値も特に限定されないが、例えば、1.1である。
膨潤度は、25℃の純水に24時間浸漬した後の粘着剤層の厚みと、浸漬する前の粘着剤層の厚みとの比より算出できる。例えば、厚み1mmの粘着剤層にアルミ箔20μmで裏打ちし、2cm角に切り出して作製した試料を25℃の純水に24時間浸し、浸漬前後の粘着剤層の厚みを測定し、下記の式により算出できる。なお、粘着剤層の厚みは試料の中心部5点を測定し、平均値を採用できる。また、粘着剤層の厚みは実施例に記載の方法により測定できる。
膨潤度=浸漬後の粘着剤層の厚み/浸漬前の粘着剤層の厚み
【0039】
また、本実施形態において、粘着剤層の吸水性が低いと、水分が粘着剤層中に蓄積されにくくなる結果、湿気硬化性成分の保存安定性が向上し、また、粘着剤層の膨潤を抑制できるため好ましい。粘着剤層の吸水性が低いと、周囲の水(水分や湿気)が粘着剤組成物(粘着剤層)中に蓄積し難くなる。そのため、粘着剤組成物の保存時、粘着剤組成物からの粘着シートの作製時、粘着シートの保存時あるいは粘着シートを被着体に貼付する前等の段階で、湿気硬化性成分が周囲の水分や湿気と反応して湿気硬化するのを抑制できる。その結果、粘着剤組成物からの粘着剤層あるいは粘着シートの作製や、粘着シートの被着体への貼付が困難になるのを防ぎ、貼付後に十分な接着力が発揮しやすくなる。
【0040】
また、本実施形態において、25℃/50%RH保管時における粘着剤層の吸水率が低いと、水分が粘着剤層中に蓄積されにくくなる結果、湿気硬化性成分の保存安定性が向上するため好ましい。粘着剤層の吸水率が低いと、周囲の水(水分や湿気)が粘着剤組成物(粘着剤層)中に蓄積し難くなる。そのため、粘着剤組成物の保存時、粘着剤組成物からの粘着シートの作製時、粘着シートの保存時あるいは粘着シートを被着体に貼付する前等の段階で、湿気硬化性成分が周囲の水分や湿気と反応して湿気硬化するのを抑制できる。その結果、粘着剤組成物からの粘着剤層あるいは粘着シートの作製や、粘着シートの被着体への貼付が困難になるのを防ぎ、貼付後に十分な接着力が発揮しやすくなる。
【0041】
そこで、本実施形態の粘着剤組成物は、粘着剤層を形成した際の25℃の純水中で24時間保管後の吸水率(以下、単に吸水率ともいう)を20質量%以下とすることが好ましい。粘着剤層の上記吸水率が20質量%以下であれば吸水性が低くなり、粘着剤組成物の保存時、粘着剤組成物からの粘着シートの作製時、粘着シートの保存時、あるいは粘着シートを被着体に貼付する際等の段階で、周囲の水(水分や湿気)が粘着剤組成物(粘着剤層)中に蓄積(吸液)することを十分に防止ないし抑制できる。さらに、粘着シートを被着体に貼付した後に水中で使用した場合であっても、粘着剤層が吸水することを防止ないし抑制できる。これにより、粘着剤層の膨潤を防止ないし抑制できる。その結果、かかる粘着シートは被着体の湿潤面に対してより良好に貼付でき、また良好な接着力を発現し、耐水性がより得られやすくなる。上記吸水率は、より好ましくは10質量%以下であり、更に好ましくは5質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下である。なお、上記吸水率は低い方が好ましく、その下限値は特に限定されないが、例えば、0.1質量%である。
【0042】
なお、粘着剤層の25℃の純水中で24時間保管後の吸水率は、カールフィッシャー水分気化-電量滴定法(JIS K 0113:2005)により測定することができる。具体的には平沼産業株式会社製の平沼微量水分測定装置AQ-2100を用い、200℃、30分間の加熱気化により生じた水分量を測定し、加熱前の試料質量に対する割合を吸水率として算出できる。
吸水率(質量%)=(カールフィッシャー測定水分量/測定前の試料全質量)×100
【0043】
本実施形態の粘着剤組成物は、粘着剤層を形成した際(湿気硬化前)の該粘着剤層の25℃におけるヤング率(初期)が0.1kPa以上であることが好ましく、1kPa以上であることがより好ましく、5kPa以上であることがさらに好ましく、10kPa以上であることが特に好ましい。該初期ヤング率が0.1kPa以上であれば粘着剤層の変形が生じにくく、粘着シートの形状安定性がよい。また、接着後にかかる応力によって糊はみ出しなどの不具合が生じにくい。
湿潤面に接着する観点では、該初期ヤング率は400kPa以下が好ましく、200kPa以下が好ましく、100kPa以下がより好ましい。該初期ヤング率が400kPa以下であれば、湿潤した被着体の凹凸の粗面によく追従できる。
【0044】
また、本実施形態の粘着剤組成物は、粘着剤層を形成し、25℃の純水中で24時間保存後(湿気硬化後)の該粘着剤層の25℃におけるヤング率(硬化後)が5kPa以上であることが好ましく、8kPa以上であることがより好ましく、10kPa以上であることがさらに好ましい。該ヤング率(硬化後)が5kPa以上であれば、水中での使用においても良好な接着力を示し優れた耐水性を発揮することができる。
また、吸水性ポリマーを含有する場合、吸水性ポリマーの過大な膨潤を抑制することができるという観点では、該粘着剤層のヤング率(硬化後)が10kPa以上であることが好ましく、12kPa以上であることがより好ましく、15kPa以上であることがさらに好ましい。また、該ヤング率(硬化後)は400kPa以下であることが好ましく、100kPa以下であることがより好ましい。該ヤング率(硬化)が400kPa以下であれば、基材との投錨破壊を抑制でき、基材の剥離によって露出する粘着剤層の膨潤による接着力低下を防止、抑制できる。
【0045】
ここで、粘着剤層を形成したときの該粘着剤層の初期ヤング率及びヤング率(硬化後)は、該粘着剤層をひも状に形成した試料を作製し、引張試験機(株式会社島津製作所製のAG-IS)を用いて50mm/minの速度で引張ったときに測定される応力-ひずみ曲線から算出することができる。
【0046】
また、本実施形態の粘着剤組成物において、ベースポリマーは、湿気硬化性成分と反応する官能基を有さないポリマーを含むことが好ましい。そのようなポリマーとしては、例えば、官能基を有さないポリマー(無官能ポリマー)が挙げられる。あるいは、湿気硬化性成分と反応しない官能基を有するポリマーであってもよい。
ベースポリマーに湿気硬化性成分と反応する官能基を有さないポリマーを用いることで、粘着シートを被着体に貼付する前の各段階における、ベースポリマーと湿気硬化性成分との反応を防止して、保存安定性に優れた粘着剤組成物、粘着剤層または粘着シートとすることができる。その結果、かかる粘着シートは被着体の湿潤面に対して良好に貼付でき、また良好な接着力を発現できる。
【0047】
ここで、湿気硬化性成分と反応する官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、シアノ基、スルホン酸基、リン酸基、イミド基、イソシアネート基、アルコキシ基、シラノール基等の極性官能基が挙げられる。
【0048】
本実施形態における粘着剤組成物を構成するベースポリマーとしては特に限定されず、粘着剤に用いられる公知のポリマーを用いることが可能である。例えば、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ビニルアルキルエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ウレタン系ポリマー、フッ素系ポリマー、エポキシ系ポリマーなどが挙げられる。上記例示したポリマーの中でも、接着性の観点からは、アクリル系ポリマー及びゴム系ポリマーが好ましく、疎水性の観点からは、ゴム系ポリマーがより好ましい。
疎水性のポリマーを含有することにより粘着剤層が疎水性となり、粘着シート10が被着体の湿潤面に貼付された際に、粘着シートと被着体との接着の妨げとなる湿潤面の水分を弾き、被着体と粘着剤層の界面から水を排除する効果がある。それにより粘着剤層中に水分を取り込みにくくなるため粘着シートの被着体に対する初期接着力が良好となる。また、湿気硬化性成分と水との反応を遅らせることができる。
【0049】
本実施形態において、ゴム系ポリマーとしては、例えば、ポリイソブチレン(PIB)、イソブチレンとノルマルブチレンとの共重合体、イソブチレンとイソプレンとの共重合体(例えば、レギュラーブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、部分架橋ブチルゴム等のブチルゴム類)、これらの加硫物等のイソブチレン系ポリマー;スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS、SISの水添物)、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体(SEP、スチレン-イソプレンブロック共重合体の水添物)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)等のスチレン系ブロックコポリマー等のスチレン系熱可塑性エラストマー;ブチルゴム(IIR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、EPR(二元系エチレン-プロピレンゴム)、EPT(三元系エチレン-プロピレンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム等が挙げられる。中でも吸水率が低いことから、PIB、IIR、IR、SIS、SIBSが好ましく、PIBがより好ましい。なお、これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ゴム改質剤は優れた粘着性を粘着剤組成物に付与するために配合されていてもよく、例えば、パラフィン類、ワックス類、ナフテン類、アロマ類、アスファルト類、乾性油類(例えば、アマニ油など)、動植物油類、石油系オイル類(例えば、プロセスオイルなど)、ポリブテン、低分子量ポリエチレングリコール、フタル酸エステル類、リン酸エステル類、ステアリン酸またはそのエステル類、アルキルスルホン酸エステル類などが挙げられる。これらのゴム改質剤は、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、石油系オイル類、ポリブテンが挙げられる。
【0050】
また、本実施形態において、アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルを主たる単量体成分とするポリマーであり、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル)を主たる単量体成分として含有するものを好適に用いることができる。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの炭素数1~20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。中でも好ましくは炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、さらに好ましくは炭素数2~10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。なお、上記「(メタ)アクリル酸エステル」とは、「アクリル酸エステル」及び/又は「メタクリル酸エステル」を表し、他も同様である。
【0051】
また、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0052】
上記(メタ)アクリル酸エステルは、単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。また、極性官能基を有さないモノマーであれば、アクリル系モノマー以外のモノマーを(メタ)アクリル酸エステルと共重合させてもよい。
【0053】
本実施形態において、アクリル系ポリマーを構成する単量体成分のうち、80質量%以上が(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは100質量%である。
【0054】
本実施形態におけるベースポリマーは、湿気硬化性成分の保存安定性の観点から、湿気硬化性成分と反応可能な官能基を有さないポリマーを含むことが好ましく、湿気硬化性成分と反応可能な官能基を有するポリマーを含有しないことがより好ましい。
本実施形態において、湿気硬化性成分と反応する官能基を有さないアクリル系ポリマーとするには、モノマー成分として、極性基含有単量体や多官能性単量体などの湿気硬化性成分と反応しうる官能基を有する単量体を用いないことが好ましい。
【0055】
ここで、湿気硬化性成分と反応する官能基としては、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、シアノ基、スルホン酸基、リン酸基、イミド基、イソシアネート基、アルコキシ基、シラノール基等の極性官能基が挙げられる。
【0056】
また、ベースポリマーには、本発明の効果が著しく阻害されない範囲において、上述した湿気硬化性成分と反応する官能基を有さないポリマー以外の改質剤などのポリマー(以下、他のポリマーともいう)が含有されていてもよい。その場合、ベースポリマー全体(100質量%)に対する他のポリマーの含有割合は、75質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。
また、ベースポリマー全体(100質量%)に対する、湿気硬化性成分と反応する官能基を有さないポリマーの含有量は、100質量%であってもよいが、他のポリマーを含有させる場合には、80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。また、湿気硬化性成分と反応する官能基を有さないポリマーの含有量は、上述した効果を良好に発揮するためには、25質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。
【0057】
また、本実施形態におけるベースポリマーは、水との反応により湿気硬化性成分と反応可能な官能基となる官能基を有するポリマーを含有していることが好ましく、この場合、湿潤面への貼付の際に上記官能基を有するポリマーが、湿潤面から吸収された水分等との反応によって、湿気硬化性成分と反応可能な官能基を有するポリマーとなる。そして、湿気硬化性成分自体の硬化に加えて、この湿気硬化性成分と反応可能な官能基を有するポリマーと湿気硬化性成分との架橋反応も進行することで、粘着剤層の凝集力がさらに向上し、接着性がより向上する。
また、ベースポリマーに含有される、水との反応により湿気硬化性成分と反応可能な官能基となる官能基を有するポリマーは、水との反応前には湿気硬化性成分との間で反応しないため、粘着シートを湿潤面に貼付するまでの湿気硬化性成分の保存安定性が確保される。ここで、湿気硬化性成分の保存安定性を確保するとの観点からは、湿気硬化性成分と反応しない無極性ポリマーを用いることも考えられるが、無極性ポリマーは湿気硬化性成分と反応しないことから、粘着剤層全体としての強度が低くなる。
水との反応により湿気硬化性成分と反応可能な官能基となる官能基を有するポリマーとしては、例えば、無水マレイン酸またはアミンで変性されたポリマー、水との反応によりヒドロキシル基となる置換基で変性されたポリマー等が挙げられ、中でも、湿気硬化剤の保存安定性の観点からは、無水マレイン酸で変性されたポリマー(無水マレイン酸変性ポリマー)が好ましい。例えば、無水マレイン酸で変性されたポリマーの無水マレイン酸基は、水との反応により開環してカルボキシル基となる。そのカルボキシル基を有するポリマーと湿気硬化性成分とは架橋反応しうる。
【0058】
本実施形態に係る粘着剤組成物中におけるベースポリマーの含有量は特に限定されるものではないが、初期接着力の観点からは、粘着剤組成物の溶媒を除く成分全体に対して、すなわち粘着剤組成物の溶媒を除く成分全量を100質量%として、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。また、ベースポリマーの含有量は、湿気硬化性成分等を含有させる観点からは、粘着剤組成物の溶媒を除く成分全体に対して90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。
【0059】
本実施形態において、湿気硬化性成分とは、水(水分や湿気)の存在により硬化反応を生じる性質(湿気硬化性)を有する成分である。例えば、分子内に一つ以上の加水分解性反応基あるいは水により反応を開始する官能基を有し、空気中などの周囲の水(水分や湿気)によって硬化を開始する樹脂や化合物が包含される。
【0060】
本実施形態の粘着剤組成物に用いられる湿気硬化性成分は、湿気硬化性を有する。本実施形態の粘着剤組成物からなる粘着剤層を備えた粘着シートが被着体に貼付されると、未反応状態の湿気硬化性成分自体が、湿潤面から吸収された水分や、周囲の水分や湿気といった水により硬化することで接着性がより向上する。また、湿気硬化性成分は、貼付される被着体と化学結合可能な成分であることが好ましい。そのような場合、未反応状態の湿気硬化性成分と被着体との間で化学結合が進行することで、接着性がより向上する。
【0061】
本実施形態に用いられる湿気硬化性成分は、イソシアネート化合物、アルコキシシリル基含有ポリマー、シアノアクリレート系化合物、ウレタン系化合物等が挙げられる。なかでも、ベースポリマーとの相溶性や硬化速度の点において、イソシアネート化合物及びアルコキシシリル基含有ポリマーから選択されることが好ましい。なお、湿気硬化性成分は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
イソシアネート化合物(イソシアネート)は、水の存在下で加水分解されてアミンとなり、イソシアネートとアミンが反応してウレア結合を形成することにより硬化する。また、被着体表面の水酸基や、アミノ基、カルボキシル基等との間で化学結合を形成することができる。
【0063】
イソシアネート化合物としては、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート及び芳香族イソシアネートが挙げられる。中でも、ベースポリマー、特にゴム系ポリマーとの相溶性が良好であり、湿気や水分との反応性が緩やかなことから、脂肪族イソシアネート及び脂環族イソシアネートが好ましい。
【0064】
脂肪族イソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHMDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート(LDI)、リジントリイソシアネート(LTI)等が挙げられる。中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0065】
脂環族イソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート(CHDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素添加XDI(H6XDI)、水素添加MDI(H12MDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)等が挙げられる。
【0066】
芳香族イソシアネートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート等のジフェニルメタンジイソシアネート(MDI);粗製ジフェニルメタンジイソシアネート;多核ポリフェニレンポリメチルポリイソシアネート(ポリメリックMDI);2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート(TDI);1,4-ナフタレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート等のナフタレンジイソシアネート(NDI);1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート;1,2-フェニレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート等のフェニレンジイソシアネート(PDI);キシレンジイソシアネート(XDI);テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI);トリジンジイソシアネート(TODI);2,4,6-トリメチルフェニル-1,3-ジイソシアネート、2,4,6-トリイソプロピルフェニル-1,3-ジイソシアネート、クロロフェニレン-2,4-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0067】
アルコキシシリル基含有ポリマーは、水の存在下で加水分解されてシラノールとなり、縮合(架橋)することで硬化する。また、被着体表面の水酸基との間で脱水縮合反応すること等で強固な化学結合を形成することができる。
【0068】
アルコキシシリル基含有ポリマーとしては、例えば、株式会社カネカ製の、サイリルSAX220やサイリルSAT350等の直鎖型ジメトキシ基両末端タイプ、サイリルSAT145等の直鎖型ジメトキシ基片末端タイプ、サイリルSAX510やサイリルSAT580等の直鎖型トリメトキシ基両末端タイプ、サイリルSAT400等の分岐型ジメトキシ基末端タイプ、サイリルMA440やサイリルMA903、サイリルMA904等のアクリル変性タイプから選ばれる1種以上を用いることができる。
【0069】
本実施形態の粘着シート(粘着剤層)においては、25℃、50%RHで24時間保存した後の、粘着剤組成物中の湿気硬化性成分の維持率(残存率)が30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。また、当該維持率(残存率)は高いほど好ましく、100%であることが最も好ましい。当該維持率(残存率)は、実施例の欄に記載の方法で測定することができる。
【0070】
上記25℃、50%RHの環境下で24時間保存した後の、粘着剤層の粘着面側の表面付近の維持率は、例えば、湿気硬化性成分としてイソシアネート化合物を用いる場合であれば、全反射測定法(ATR法)により得られる赤外吸収スペクトルから求めることができる。ATR法は、試料の表面から深さ数μmの領域の赤外吸収スペクトルを得ることができる測定法であり、したがって粘着剤層の粘着面側の表面付近における湿気硬化性成分の維持率の測定に適している。具体的には、以下のようにして測定できる。
まず、作製直後の粘着シート(粘着剤層)のATR法による赤外分光測定から得られるイソシアネート基由来の2275cm-1における吸光度とベースポリマーのメチレン基由来の1462cm-1における吸光度の比を算出する。ここで、吸光度比とは、上記メチレン基由来の吸光度に対する上記イソシアネート基由来の吸光度の比(イソシアネート基由来の吸光度/メチレン基由来の吸光度)である。また、25℃、50%RHの環境下で24時間保存した後の粘着シート(粘着剤層)のATR法による赤外分光測定から得られる吸光度比を同様にして算出し、これらの変化率から、湿気硬化性成分(イソシアネート化合物)の維持率を算出することができる。具体的には、以下の関係式から算出される。
湿気硬化性成分(イソシアネート化合物)の維持率(%)={(25℃、50%RHの環境下で24時間保存した後の粘着シートの吸光度比)/(作製直後の粘着シートの吸光度比)}×100
【0071】
なお、湿気硬化性成分がイソシアネート化合物以外の場合においても同様に、ATR法による赤外分光測定においてその湿気硬化性成分に由来する代表的なピークが現れる波数における吸光度比の変化率から、粘着剤層の粘着層面側の表面付近における湿気硬化性成分の維持率を算出することができる。
【0072】
上記25℃、50%RHの環境下で24時間保存した後の、粘着剤層の粘着面側の表面付近の湿気硬化性成分の維持率は、例えば、湿気硬化性成分としてアルコキシシリル基含有ポリマーを用いる場合であれば、粘着剤層中の、アルコキシシリル基の加熱分解により生成したアルコール量をガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)で定量することにより、評価することができる。具体的には、以下のようにして測定できる。
まず、作製直後の粘着シート(粘着剤層)のGC/MSから得られるアルコール量と、25℃、50%RHの環境下で24時間保存した後の粘着シート(粘着剤層)のGC/MSから得られるアルコール量とを定量し、これらの変化率から湿気硬化性成分(アルコキシシリル基)の維持率を算出することができる。具体的には、以下の関係式から算出される。
湿気硬化性成分(アルコキシシリル基)の維持率(%)=〔(25℃、50%RHの環境下で24時間保存した後の粘着シート(粘着剤層)のGC/MSから得られるアルコール量)/(作製直後の粘着シート(粘着剤層)のGC/MSから得られるアルコール量)〕×100
【0073】
また、湿気硬化性成分は、20℃、60%RHの環境における硬化性が低いことが好ましい。湿気硬化性成分の硬化性は、例えば、JIS K-5400に基づく指触乾燥試験、及び硬化乾燥試験により確認できる。指触乾燥試験の場合、20℃、60%RHの環境下で6時間経過後において硬化しないことが好ましく、硬化乾燥試験の場合、20℃、60%RHの環境下で24時間経過後において硬化しないことが好ましい。
かかる硬化性を満足し得るイソシアネート化合物としては、脂肪族イソシアネートが挙げられる。
【0074】
本実施形態に係る粘着剤組成物中における湿気硬化性成分の含有量は特に限定されるものではないが、高い接着力を得る観点からは、ベースポリマー100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上がより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましい。また、湿気硬化性成分の含有量は、湿気硬化性成分が過剰であるとベースポリマーに溶解できずに粘着剤表面にブリードアウトして粘着特性が低下するおそれがあることから、ベースポリマー100質量部に対して150質量部以下であることが好ましく、100質量部以下であることがより好ましく、80質量部以下であることが特に好ましい。なお、粘着剤層中におけるベースポリマー100質量部に対する湿気硬化性成分の含有量の好ましい範囲は、粘着剤組成物中のベースポリマー100質量部に対する湿気硬化性成分の含有量の好ましい範囲と実質的に同じであり、粘着剤組成物(粘着剤層)中に含有されうるその他の成分についても同様である。
【0075】
本実施形態における粘着剤組成物は、粘着剤層を形成した際の膨潤度を2.5以下とし得る範囲であれば、吸水性材料をさらに含有してもよい。ここで、吸水性材料とは、水分を吸収して保持できる材料を表す。粘着剤組成物が吸水性材料を含有すると、粘着シート10が被着体の湿潤面に貼付された際に、吸水性材料が粘着シート10と被着体との接着の妨げとなる湿潤面の水分を吸収保持することで、粘着シート10の被着体に対する初期接着力が良好となる。また、吸水性材料により被着体の湿潤面の水分が吸収除去されるため、凹凸表面を有する被着体に対しても粘着シート10が良好に追従することができる。その結果、湿潤面に対する接着性がより向上しやすくなる。
【0076】
吸水性材料としては、吸水性ポリマー等の有機系の吸水性材料や、無機系の吸水性材料を用いることができる。中でも、吸水性ポリマーを用いることが好ましい。なお、吸水性材料は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
吸水性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸類、水溶性セルロース類、ポリビニルアルコール類、ポリエチレンオキサイド類、デンプン類、アルギン酸類、キチン類、ポリスルホン酸類、ポリヒドロキシメタクリレート類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレンイミン類、ポリアリルアミン類、ポリビニルアミン類、無水マレイン酸変性ポリマー類、及びこれらを構成するモノマーの共重合体等が挙げられる。なお、吸水性ポリマーは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
なかでも、ポリアクリル酸ナトリウム塩、無水マレイン酸及びイソブチレンの共重合体が好ましく、無水マレイン酸及びイソブチレンの共重合体がより好ましい。
【0078】
吸水性ポリマーとしては、市販品を用いてもよい。吸水性ポリマーの市販品としては、例えば、KCフロック(セルロースパウダー、日本製紙ケミカル株式会社製)、サンローズ(カルボキシメチルセルロース、日本製紙ケミカル株式会社製)、アクアリックCA(アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物、株式会社日本触媒製)、アクリホープ(アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物、株式会社日本触媒製)、サンウェット(ポリアクリル酸塩架橋体、サンダイヤポリマー株式会社製)、アクアパール(ポリアクリル酸塩架橋体、サンダイヤポリマー株式会社製)、アクアキープ(アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物、住友精化株式会社製)、アクアコーク(変性ポリアルキレンオキサイド、住友精化株式会社製)、KIゲル(イソブチレン-無水マレイン酸共重合体架橋物、株式会社クラレトレーディング株式会社製)等を好適に用いることができる。また、これらの吸水性ポリマーは無機塩の配合やポリマー内の親水性官能基(例えばカルボン酸など)を疎水化することで、吸水性能を調整してもよい。
【0079】
無機系の吸水性材料としては、例えば、シリカゲルや、クニミネ工業株式会社製のスメクトンSA等の無機高分子などが挙げられる。
【0080】
本実施形態における粘着剤組成物において、吸水性材料をさらに含有する場合の吸水性材料の含有量は特に限定されるものではないが、粘着剤層を形成した際の膨潤度の調整の観点から、ベースポリマー100質量部に対して、50質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましく、0質量部が特に好ましい。
【0081】
本実施形態の粘着剤層における湿気硬化性成分が、湿潤面から吸収された水と反応して湿気硬化することは、湿潤面の水の吸光度比を測定することにより確認することができる。例えば、湿潤面の水の吸光度比と、本実施形態の粘着シートを湿潤面に貼付し、剥離した面について測定した水の吸光度比を比較することにより確認することができる。具体的には、以下のようにして測定できる。
スレート板を水道水に浸漬し、超音波脱気装置(ヤマト科学株式会社製のBRANSON3510)で30分間処理し、24時間静置して水中から取り出し、湿潤スレート板を作製する。
得られた湿潤スレート板の表面について、フーリエ変換型赤外分光法((Varian社製の3100 FT-IRを使用し、ATR法により測定)による炭酸カルシウム由来のピーク(1410cm-1)における吸光度と水の水酸基由来のピーク(3350cm-1)における吸光度の比(水の吸光度比)を算出する。水の吸光度比とは、上記炭酸カルシウム由来の吸光度に対する上記水酸基由来の吸光度の比(炭酸カルシウム由来の吸光度/水酸基由来の吸光度)である。
【0082】
次に、水をふき取った湿潤スレート板の表面(湿潤面)に、本実施形態にかかる粘着シートを2kgローラーで1往復して圧着して貼付し、スレートの乾燥を防ぐために、各スレート1枚ずつをラップで被覆し、さらにアルミ箔で全面を包み72時間静置する。その後、粘着シート(試験片)が貼着されたスレート板を取り出し、粘着シートを剥離し、スレート板の粘着シートを剥離した面の水の吸光度比(剥離界面の水の吸光度比)を測定する。
得られた剥離界面の水の吸光度比が、湿潤スレート板の表面における水の吸光度比よりも小さい場合、本実施形態の粘着剤組成物からなる粘着剤層が、湿潤面から水分を吸収したことを示す。
【0083】
本実施形態に係る粘着剤組成物には、弾性率の調整ならびに初期接着の際のタックを与えることを目的として、タッキファイヤー(粘着付与剤)を含有させてもよい。タッキファイヤーとしては、例えば、ポリブテン類、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂(例えば、石油系脂肪族炭化水素樹脂、石油系芳香族炭化水素樹脂、石油系脂肪族・芳香族共重合炭化水素樹脂、石油系脂環族炭化水素樹脂(芳香族炭化水素樹脂を水素添加したもの)等)、クマロン系樹脂等が挙げられる。ベースポリマーとの相溶性の点において、好ましくは、石油系樹脂、ロジン系樹脂である。タッキファイヤーは、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
粘着剤組成物中にタッキファイヤーを含有させる場合の含有量は、弾性率を低下させる観点からは、ベースポリマー100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがより好ましく、50質量部以上であることがさらに好ましい。また、タッキファイヤーの含有量は、粘着剤に適度な凝集力を持たせる観点からは、ベースポリマー100質量部に対して、500質量部以下であることが好ましく、400質量部以下であることがより好ましく、250質量部以下であることがさらに好ましい。
【0085】
また、本実施形態の粘着剤組成物には、本発明の効果が阻害されない範囲において、粘度調整剤、剥離調整剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料、染料等)、老化防止剤、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、光安定剤等、粘着剤組成物に通常添加される添加剤をさらに添加してもよい。
充填剤としては、例えば、タルク、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、カーボン、シリカ、クレー、マイカ、硫酸バリウム、ウィスカー、水酸化マグネシウム等の無機充填剤が挙げられる。
充填剤の含有量は、粗面接着性の観点からは、ベースポリマー100質量部に対して、500質量部以下であることが好ましく、300質量部以下であることがより好ましい。
【0086】
また、粘着剤組成物に利用される溶剤(溶媒)としては、各種の一般的な溶剤を用いることができる。前記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類等の有機溶剤が挙げられる。前記溶剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用されてもよい。
【0087】
(粘着剤層)
本実施形態の粘着剤層は、上記の粘着剤組成物を用いて形成される。形成方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができるが、下記の粘着シートの製造方法に準じて行うことができる。なお、粘着剤層中における各成分量の好ましい範囲は、粘着剤組成物中の溶媒を除いた各成分量の好ましい範囲と同様である。
【0088】
本実施形態における粘着剤層は、上記の粘着剤組成物を用いて形成される。形成方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。例えば、粘着剤組成物を公知の塗工方法を用いて後述する基材に塗布し、乾燥させて、粘着シートの形態として得ることができる。また、剥離性を有する表面に粘着剤組成物を塗布して乾燥または硬化させることにより該表面上に粘着剤層を形成した後、その粘着剤層を非剥離性の基材に貼り合わせて転写させてもよい。粘着剤組成物を基材に塗布する方法は、特に制限されず、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、ファウンテンダイコーター、クローズドエッジダイコーター等を用いて行うことができる。
乾燥温度は、例えば、50~150℃とすることができる。
【0089】
また、粘着剤層は、粘着剤組成物を剥離ライナー(剥離面を備えるシート状基材であってもよい。)に塗布して粘着剤層を形成してもよい。
【0090】
乾燥後の粘着剤層の厚みは特に制限されないが、凹凸面を有する被着体に対して良好な追従性を発揮させる観点からは、5~5000μmであることが好ましく、10~1000μmであることがより好ましい。
粘着剤層は圧延や押出などの無溶剤塗工法を用いて形成してもよい。この場合、粘着剤組成物は加熱し混練して混練物として得ることができる。混練には、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、ミキシングロールなどのバッチ式混練機や、2軸混練機などの連続混練機などが用いられる。混練における加熱温度は、例えば、80~180℃とすることができる。
上記により得られた粘着剤組成物を、例えば、押出機、カレンダーロール、プレス機(熱プレス機)などの成形装置により、加熱して、粘着剤層12をシート状に形成できる。
【0091】
本実施形態の粘着シートは、上記の粘着剤層を有する。
ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。
本実施形態の粘着シートは、上記粘着剤層をシート状基材(支持体)の片面又は両面に有する形態の基材付き粘着シートであってもよく、上記粘着剤層が剥離ライナーに保持された形態等の基材レスの粘着シートであってもよい。
また、本実施形態の粘着シートは、上記粘着剤層とは組成の異なる他の粘着剤層を備えていてもよい。
本実施形態の粘着シートは、シート状基材(支持体)の片面又は両面に他の粘着剤層を備え、他の粘着剤層上に本発明の実施形態にかかる粘着剤層(湿潤粘着剤層)を有する形態の基材付き粘着シートであってもよい。
また、シート状基材(支持体)の両面に他の粘着剤層を備え、一方の他の粘着剤層上に湿潤粘着剤層を有する形態の基材付き粘着シートであってもよい。
他の粘着剤層の片面又は両面に湿潤粘着剤層を有する形態の、基材レスの粘着シートであってもよい。
【0092】
(他の粘着剤層)
他の粘着剤層は、上述した本発明の実施形態にかかる粘着剤層とは組成の異なる粘着剤層であり、本発明の実施形態にかかる粘着剤組成物とは組成の異なる粘着剤組成物により形成された粘着剤からなる。該粘着剤としては、特に限定はなく公知の粘着剤を用いることが可能である。例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤などが挙げられる。中でも、接着性の点から、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、又はポリエステル系粘着剤が好ましく、アクリル系粘着剤又はゴム系粘着剤が好ましい。なお、粘着剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
他の粘着剤層は、上述した本発明の実施形態にかかる粘着剤層と同様の方法により形成することができる。
【0094】
他の粘着剤層の厚みは特に制限されないが、被着体表面の粗面追従性の観点からは、5~1200μmであることが好ましく、10~1000μmであることがより好ましい。
【0095】
なお、本発明の実施形態にかかる粘着剤層及び他の粘着剤層は典型的には連続的に形成されるが、かかる形態に限定されるものではなく、例えば、点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。また、本実施形態の粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態の粘着シートであってもよい。
【0096】
(基材)
基材を形成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系フィルム;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム;ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルム;クラフト紙、和紙等の紙類;綿布、スフ布等の布類;ポリエステル不織布、ビニロン布織布等の布織布類;金属箔が挙げられる。また、基材の厚みは特に限定されない。
【0097】
前記プラスチックフィルム類は、無延伸フィルムであってもよいし、延伸(一軸延伸又は二軸延伸)フィルムであってもよい。また、基材の粘着剤層が設けられる面には、下塗り剤の塗布、コロナ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0098】
本実施形態においては、粘着シートに穿孔して貫通孔を設けてもよい。このようにすれば、粘着シートを被着体に張り付けた際に、被着体の湿潤面の水分が貫通孔を通じて粘着シートの背面側(貼付面とは反対側)に抜けることができるため、被着体の湿潤面における水分をより多く除去することができる。
【0099】
(剥離ライナー)
本実施形態の粘着シートにおいては、使用時まで本発明の実施形態にかかる粘着剤層及び他の粘着剤層が剥離ライナー(セパレータ、剥離フィルム)により保護されていてもよい。また、剥離ライナーによる保護は、本発明の実施形態にかかる粘着剤層中の未反応状態の湿気硬化性成分の未反応状態を維持するためにも有用である。
【0100】
剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙などを使用でき、特に限定されないが、例えば、剥離処理層を有する基材、フッ素系ポリマーからなる低接着性基材、無極性ポリマーからなる低接着性基材などを用いることができる。
剥離処理層を有する基材としては、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等が挙げられる。
フッ素系ポリマーからなる低接着性基材のフッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。
無極性ポリマーからなる低接着性基材の無極性ポリマーとしては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等が挙げられる。なお、剥離ライナーは公知乃至慣用の方法により形成することができる。また、剥離ライナーの厚さ等も特に制限されない。
【0101】
本実施形態に係る粘着剤組成物、該粘着剤組成物からなる粘着剤層または該粘着剤層を備える粘着シート中において、湿気硬化性成分は未反応状態で含有されていることが好ましい。
【0102】
(包装体)
本実施形態の粘着剤組成物、粘着剤層並びに粘着シート(粘着剤組成物等)は、粘着剤組成物等の中の未反応状態の湿気硬化性成分の未反応状態を保持するために、周囲の水(水分や湿気)の影響を低減ないし遮断しておくことが好ましい。例えば、本実施形態の粘着シートは、適宜な包装体で包装されていてもよい。包装体の材料としては、アルミニウム製の防湿袋等が例示されるが、これに限定されるものではない。また、包装体内部の雰囲気は、空気であってもよいが、窒素やアルゴン等の不活性ガス等で置換されていてもよい。また、包装体内部にはシリカゲル等の乾燥剤を同梱してもよい。
【0103】
(被着体)
本実施形態の粘着シートが貼付される被着体としては、特に限定されないが、粘着剤組成物(粘着剤層)中の未反応状態の湿気硬化性成分と化学結合しうるものが好ましい。
被着体としては、例えば、コンクリート、モルタル、アスファルト、金属、木材、タイル、プラスチック材(例えば、塗膜面や浴室の内壁等の建築外装材および内装材、船舶やブイ等の水中及び水面構造物、水槽や浴槽、スポーツ用具等)、織布や不織布等の布、紙、電解質膜、分離膜、フィルタなどの多孔質体等が挙げられる。また、被着体は生物であってもよく、生物の外部(例えば、皮膚や外殻、鱗等)や生物の内部(例えば、歯や骨等)であってもよい。
【実施例】
【0104】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。
【0105】
<イソシアネート化合物の反応性評価>
(ベースポリマー(SIS)中の湿気硬化性成分維持率の測定)
ベースポリマーSIS(クインタック3520)100質量部に対し、表1に記載のイソシアネート5質量部を添加して作製した試料に対して、赤外分光測定(Varian社製の3100 FT-IRを使用し、ATR法により測定)から得られるイソシアネート基由来の2275cm-1における吸光度とベースポリマーのメチレン基由来の1462cm-1における吸光度の比を算出した。ここで、吸光度比とは、上記メチレン基由来の吸光度に対する上記イソシアネート基由来の吸光度の比(イソシアネート基由来の吸光度/メチレン基由来の吸光度)である。
次に、上記測定後の各試料を25℃、50%RHの環境下で24時間保存した後、上記と同様に吸光度比を算出した。
これらの変化率から、ベースポリマー中の湿気硬化性成分(イソシアネート化合物)の維持率を算出した。具体的には、以下の関係式から算出した。
ベースポリマー中の湿気硬化性成分(イソシアネート化合物)維持率(%)={(25℃、50%RHの環境下で24時間保存した後の試料の吸光度比)/(作製直後の試料の吸光度比)}×100
結果を表1に示す。
【0106】
<指触乾燥試験>
JIS K-5400に基づき指触乾燥試験を行った。イソシアネート原液をアルミホイルシャーレにたらし、20℃/60%RH環境下で6時間後に塗面の中央に指先を軽く触れてみて、指先が試料で汚れない状態を「硬化」、指先が試料で汚れる状態を「未硬化」とした。
【0107】
<硬化乾燥試験>
JIS K-5400に基づき硬化乾燥試験を行った。イソシアネート原液をアルミホイルシャーレにたらし、20℃/60%RH環境下で24時間後に塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすってみて、塗面にすりあとがつかない状態を「硬化」、指先が試料で汚れる状態を「未硬化」とした。
【0108】
【0109】
(実施例1)
ベースポリマーとしての高分子量のポリイソブチレン重合体(BASF社製のオパノールN80)50質量部と低分子量のポリイソブチレン重合体(JXTGエネルギー株式会社製テトラックス5T)50質量部をラボニーダーミル(株式会社トーシン製 TDR300-3型)を用いて、混練温度140度、回転数40rpmにてマスターバッチを作製した。次に、マスターバッチ100質量部に対し、液状ポリブテン(JXTGエネルギー株式会社製HV-300)100質量部、湿気硬化性成分としてのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(BASF社製のバソナットHA2000)16質量部、粘着付与剤としての石油系樹脂(JXTGエネルギー株式会社、T-Rez RB100)100質量部、充填剤としての重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社製)100質量部を配合して、粘着剤組成物1を作製した。
【0110】
混練により得た粘着剤組成物1を基材としてのPETフィルム(商品名「ルミラーS10(25μm)」、東レ株式会社製)と剥離ライナー(PETフィルム(商品名「MRF(厚み38μm)」、三菱ケミカル株式会社製)で挟み、熱プレス(加工温度60℃)にて厚さ300μmの粘着剤層を形成し、粘着シートを作製した。
【0111】
(実施例2)
ベースポリマーとしての高分子量のポリイソブチレン重合体(BASF社製のオパノールN80)75質量部と低分子量のポリイソブチレン重合体(JXTGエネルギー株式会社製テトラックス5T)25質量部をラボニーダーミル(株式会社トーシン製 TDR300-3型)を用いて、混練温度140度、回転数40rpmにてマスターバッチを作製した。次に、マスターバッチ100質量部に対し、液状ポリブテン(JXTGエネルギー株式会社製HV-300)100質量部、湿気硬化性成分としてのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(BASF社製のバソナットHA2000)34質量部、粘着付与剤としての石油系樹脂(JXTGエネルギー株式会社、T-Rez RB100)100質量部、充填剤としての重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社製)200質量部、着色剤としてのカーボンブラック(東海カーボン株式会社製シースト3H)3質量部を配合して粘着剤組成物2を作製し、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0112】
(実施例3)
ベースポリマーとしての高分子量のポリイソブチレン重合体(BASF社製のオパノールN80)50質量部と低分子量のポリイソブチレン重合体(JXTGエネルギー株式会社製テトラックス5T)50質量部、液状ポリブテン(JXTGエネルギー株式会社製HV-300)100質量部を溶媒としてのトルエンに溶解させた後、この溶液に、湿気硬化性成分としてのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(BASF社製のバソナットHA2000)16質量部、粘着付与剤としての石油系樹脂(JXTGエネルギー株式会社、T-Rez RB100)100質量部、充填剤としての重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社製)100質量部、吸水性材料としてイソブチレン・無水マレイン酸共重合体(クラレトレーディング株式会社製KIゲル)16質量部を配合して、粘着剤組成物3を作製した。
【0113】
基材としてPETフィルム(商品名「ルミラーS10(厚み25μm)」、東レ株式会社製)の一方の面に、粘着剤組成物3を塗布し、80℃で5分間乾燥させたのち、130℃でさらに30分乾燥させ、厚さ300μmの粘着剤層を形成した。上記の基材上に形成された粘着剤層の基材とは反対側の面を、剥離ライナー(PETフィルム(商品名「MRF(厚み38μm)」、三菱ケミカル株式会社製)の剥離面に貼り合わせて、粘着シートを作製した。
【0114】
(実施例4)
ベースポリマーとしてのアクリルポリマー(BA100)100質量部を溶媒としての酢酸エチルに溶解させた後、この溶液に、湿気硬化性成分としてのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(BASF社製のバソナットHA2000)15質量部、粘着付与剤としての液状完全水添ロジンメチルエステル樹脂(丸善石油化学株式会社製のM-HDR)100質量部、吸水性材料としてイソブチレン・無水マレイン酸共重合体(クラレトレーディング株式会社製KIゲル)10質量部を配合して、粘着剤組成物4を作製し、実施例3と同様にして粘着シートを作製した。
【0115】
(実施例5)
ベースポリマーとしてのアクリル系熱可塑性エラストマー(株式会社クラレ製 クラリティLA3320)75質量部と(株式会社クラレ製 クラリティLA1140)25質量部を溶媒としての酢酸エチルに溶解させた後、この溶液に、湿気硬化性成分としてのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(BASF社製のバソナットHA2000)22質量部、粘着付与剤としての液状完全水添ロジンメチルエステル樹脂(丸善石油化学株式会社製のM-HDR)20質量部及びテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製 YSポリスターS145)50質量部を配合して、粘着剤組成物5を作製した。
【0116】
基材としてPETフィルム(商品名「ルミラーS10(厚み25μm)」、東レ株式会社製)の一方の面に、粘着剤組成物5を塗布し、130℃で10分間乾燥させたのち、130℃でさらに30分乾燥させ、厚さ50μmの粘着剤層を形成した。上記の基材上に形成された粘着剤層の基材とは反対側の面を、アクリルフォーム基材強接着両面テープ(日東電工株式会社製 ハイパージョイントH8004)の粘着面に貼り合わせて、
図6に示す構成の粘着シートを作製した。
【0117】
(実施例6)
ベースポリマーとしての高分子量のポリイソブチレン重合体(BASF社製のオパノールN80)75質量部と低分子量のポリイソブチレン重合体(JXTGエネルギー株式会社製テトラックス5T)25質量部をラボニーダーミル(株式会社トーシン製 TDR300-3型)を用いて、混練温度140度、回転数40rpmにてマスターバッチを作製した。次に、マスターバッチ100質量部に対し、液状ポリブテン(JXTGエネルギー株式会社製HV-300)100質量部、湿気硬化性成分としてのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(BASF社製のバソナットHA2000)34質量部、粘着付与剤としての石油系樹脂(JXTGエネルギー株式会社、T-Rez RB100)100質量部を配合して粘着剤組成物6を作製した。
【0118】
基材としてPETフィルム(商品名「ルミラーS10(厚み25μm)」、東レ株式会社製)の一方の面に、粘着剤組成物6を塗布し、80℃で5分間乾燥させたのち、130℃でさらに30分乾燥させ、厚さ20μmの粘着剤層を形成した。上記の基材上に形成された粘着剤層の基材とは反対側の面を、アルミ基材付きブチルゴム系粘着テープ(日東電工株式会社製 全天テープLA)の剥離ライナーを剥離した粘着面に貼り合わせて、
図4に示す構成の粘着シートを作製した。
【0119】
(実施例7)
ベースポリマーとしての高分子量のポリイソブチレン重合体(BASF社製のオパノールN80)90質量部と低分子量のポリイソブチレン重合体(JXTGエネルギー株式会社製テトラックス5T)10質量部をラボニーダーミル(株式会社トーシン製 TDR300-3型)を用いて、混練温度140度、回転数40rpmにてマスターバッチを作製した。次に、マスターバッチ100質量部に対し、液状ポリブテン(JXTGエネルギー株式会社製HV-300)100質量部、湿気硬化性成分としてのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(BASF社製のバソナットHA2000)34質量部、粘着付与剤としての石油系樹脂(JXTGエネルギー株式会社、T-Rez RB100)100質量部を配合して粘着剤組成物7を作製した。
【0120】
基材としてPETフィルム(商品名「ルミラーS10(厚み25μm)」、東レ株式会社製)の一方の面に、粘着剤組成物7を塗布し、80℃で5分間乾燥させたのち、130℃でさらに30分乾燥させ、厚さ50μmの粘着剤層を形成した。上記の基材上に形成された粘着剤層の基材とは反対側の面を、アルミ基材付きブチルゴム系粘着テープ(日東電工株式会社製 全天テープLA)の剥離ライナーを剥離した粘着面に貼り合わせて、
図4に示す構成の粘着シートを作製した。
【0121】
(実施例8)
ベースポリマーとしての高分子量のポリイソブチレン重合体(BASF社製のオパノールN80)25質量部と低分子量のポリイソブチレン重合体(JXTGエネルギー株式会社製テトラックス5T)75質量部をラボニーダーミル(株式会社トーシン製 TDR300-3型)を用いて、混練温度140度、回転数40rpmにてマスターバッチを作製した。次に、マスターバッチ100質量部に対し、液状ポリブテン(JXTGエネルギー株式会社製HV-300)100質量部、湿気硬化性成分としての湿気硬化性シリル基含有オレフィン樹脂(エボニック・デグサ株式会社製 Vestplast206)60質量部、粘着付与剤としての石油系樹脂(JXTGエネルギー株式会社、T-Rez RB100)100質量部、充填剤としての重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社製)200質量部、触媒としての酸化亜鉛(富士フィルム和光純薬株式会社製)3質量部を配合して粘着剤組成物8を作製し、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0122】
(実施例9)
ベースポリマーとしての高分子量のポリイソブチレン重合体(BASF社製のオパノールN80)25質量部と低分子量のポリイソブチレン重合体(JXTGエネルギー株式会社製テトラックス5T)75質量部をラボニーダーミル(株式会社トーシン製 TDR300-3型)を用いて、混練温度140度、回転数40rpmにてマスターバッチを作製した。次に、マスターバッチ100質量部に対し、液状ポリブテン(JXTGエネルギー株式会社製HV-300)100質量部、湿気硬化性成分としての湿気硬化性シリル基含有オレフィン樹脂(エボニック・デグサ株式会社製 Vestplast206)60質量部、粘着付与剤としての石油系樹脂(JXTGエネルギー株式会社、T-Rez RB100)100質量部を配合して粘着剤組成物9を作製した。
【0123】
基材としてPETフィルム(商品名「ルミラーS10(厚み25μm)」、東レ株式会社製)の一方の面に、粘着剤組成物9を塗布し、80℃で5分間乾燥させたのち、130℃でさらに30分乾燥させ、厚さ300μmの粘着剤層を形成した。上記の基材上に形成された粘着剤層の基材とは反対側の面を、アルミ基材付きブチルゴム系粘着テープ(日東電工株式会社製 全天テープLA)の剥離ライナーを剥離した粘着面に貼り合わせて、
図4に示す構成の粘着シートを作製した。
【0124】
(実施例10)
ベースポリマーとしての高分子量のポリイソブチレン重合体(BASF社製のオパノールN80)75質量部と低分子量のポリイソブチレン重合体(JXTGエネルギー株式会社製テトラックス5T)25質量部をラボニーダーミル(株式会社トーシン製 TDR300-3型)を用いて、混練温度140度、回転数40rpmにてマスターバッチを作製した。次に、マスターバッチ100質量部に対し、液状ポリブテン(JXTGエネルギー株式会社製HV-300)100質量部、湿気硬化性成分としてのシリル末端ポリエーテル樹脂(株式会社カネカ製 サイリルSAT350)5質量部、粘着付与剤としての石油系樹脂(JXTGエネルギー株式会社、T-Rez RB100)100質量部、触媒としてのジブチルスズアセテート(東京化成工業株式会社製)を0.025質量部配合して粘着剤組成物10を作製し、実施例9と同様にして粘着シートを作製した。
【0125】
(比較例1)
吸水性材料としてイソブチレン・無水マレイン酸共重合体(クラレトレーディング株式会社製KIゲル)20質量部をさらに加えた以外は実施例1の粘着剤組成物1と同様にして、比較例1の粘着剤組成物を作製し、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
【0126】
(比較例2)
実施例3の各成分を表2に記載された配合になるように変更した以外は実施例3と同様にして、比較例2の粘着剤組成物を作製し、実施例3と同様にして粘着シートを作製した。
【0127】
<吸水率の測定>
基材としてのPETフィルムではなく、剥離ライナー(PETフィルム(商品名「MRE(厚み38μm)、とした以外は、上記と同様にして両面が剥離ライナーに貼りあわされた粘着シート(粘着剤層)から、幅10mm、長さ10mmになるように切断し、片側の剥離ライナー(PETフィルム(商品名「MRE(厚み38μm)」、東レ株式会社製)を剥がし、試料とした。作製した試料を25℃/50%RH環境に24時間保管し、カールフィッシャー水分気化-電量滴定法(JIS K 0113:2005)により吸水率を測定した。測定には平沼産業株式会社製の平沼微量水分測定装置AQ-2100を用い、200℃、30分間の加熱気化により生じた水分量を測定し、加熱前の試料質量に対する割合を吸水率(水浸漬前)として算出した。
また、上記と同様に作成した試料を20℃の純水に24時間浸漬した後、上記と同様にして吸水率(水浸漬後)を算出した。
吸水率(質量%)=(カールフィッシャー測定水分量/測定前の試料全質量)×100
【0128】
<湿気硬化性成分維持率の測定>
(イソシアネート化合物)
まず、作製直後の各例の粘着シートから剥離ライナーを剥離除去し、粘着剤層の粘着面側に対して、赤外分光測定(Varian社製の3100 FT-IRを使用し、ATR法により測定)から得られるイソシアネート基由来の2275cm-1における吸光度とベースポリマーのメチレン基由来の1462cm-1における吸光度の比を算出した。
次に25℃、50%RHの環境下で24時間保存した後の粘着シートに対して、上記と同様に吸光度比を算出した。
これらの変化率から、粘着剤組成物中の湿気硬化性成分(イソシアネート化合物)の維持率を算出した。具体的には、以下の関係式から算出した。
粘着剤組成物中の湿気硬化性成分(イソシアネート化合物)維持率(%)={(25℃、50%RHの環境下で24時間保存した後の試料の吸光度比)/(作製直後の試料の吸光度比)}×100
結果を表2に示す。
【0129】
(アルコキシシリル基)
上記の実施例8~10で作製した粘着シート(粘着剤層)20mgをGerstel社製の加熱装置(TDS)を用いて加熱し、発生したガスを液体窒素によりコールドトラップして試料とし、アルコキシシリル基の加熱分解により生成したアルコール量をAgilent Technologies,社製 6890plus/5973Nを使用してガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)で定量した。
次に上記実施例8~10で作製した粘着シート(粘着剤層)を25℃、50%RHの環境下で24時間保存した後、上記と同様に試料を作製し、アルコール量を定量し、アルコキシシリル基の維持率を算出した。具体的には、以下の関係式から算出した。
湿気硬化性成分(アルコキシシリル基)の維持率(%)=〔(25℃、50%RHの環境下で24時間保存した後の粘着シート(粘着剤層)のGC/MSから得られるアルコール量)/(作製直後の粘着シート(粘着剤層)のGC/MSから得られるアルコール量)〕×100
結果を表2に示す。
【0130】
<ヤング率の測定>
粘着剤層をひも状に丸めた試料(断面積3mm2)を作製し、引張試験機(株式会社島津製作所製のAG-IS)を用いて、温度:25℃、引張速度:50mm/分、つかみ具間距離:10mm、ロードセル:50Nの条件下で引張試験を行った。応力-歪み(S-S)波形(測定チャート)から、引張強度(N)および破断直前の平均伸び(%)を読み取り、S-S波形からヤング率(初期)(kPa)を算出した。
また、上記と同様にして作製した試料を25℃の純水中で24時間保管後、上記と同様の操作によりヤング率(硬化後)を算出した。膨潤する試料において、断面積は変化するが、見かけのヤング率として評価した。
【0131】
<180度ピール接着力の測定>
まず、日本テストパネル株式会社製のスレート標準板、製品名「JIS A5430(FB)」(以下、スレート板ともいう)で、厚み3mm、幅30mm、長さ125mmのサイズのものを用意した。このスレート板の光沢面を使用した。このスレート板を130℃で1時間乾燥させ、この時点でのスレート板の質量を測定し、「水中に浸漬前のスレート板の質量」と規定した。
つづいて、用意したスレート板を水中に浸漬させた状態で、超音波脱気装置(ヤマト科学株式会社製のBRANSON3510)で1時間脱気し、24時間静置して、水中から取り出した。スレート板の水をふき取り、この時点でのスレート板の質量を測定し、「水中に浸漬、脱気後のスレート板の質量」と規定した。
測定した「水中に浸漬前のスレート板の質量」及び「水中に浸漬、脱気後のスレート板の質量」に基づき、以下の式よりスレート板の吸水率を算出したところ、25%(質量%)であった。
スレート板の吸水率(質量%)=〔{(水中に浸漬、脱気後のスレート板の質量)-(水中に浸漬前のスレート板の質量)}/(水中に浸漬前のスレート板の質量)〕×100
【0132】
<湿潤接着力の測定>
次に、上記と同様にして作製した粘着シートを幅20mm、長さ10cmになるように切断し、剥離ライナーを剥離除去した。
続いて、水をふき取ったスレート板の表面(湿潤面)に、作成した各例の粘着シート(試験片)を2kgローラーで1往復して圧着して貼付し、スレートの乾燥を防ぐために、各スレート1枚ずつをラップで被覆し、さらにアルミ箔で全面を包み72時間静置した。その後、粘着シート(試験片)が貼着されたスレート板を取り出し、引張試験機(ミネベア株式会社製のテクノグラフTG-1kN)を用いて、スレート板に対する、剥離温度23℃、剥離速度300mm/minでの180度ピール接着力(湿潤接着力)(N/20mm)を測定した。
【0133】
<水中接着力の測定>
上記と同様にして、作製した粘着シートを水をふき取ったスレート板の表面(湿潤面)に貼付し、その後、ただちに水中に浸漬し、72時間静置した。その後、粘着シート(試験片)が貼着されたスレート板を水中から取り出し、引張試験機(ミネベア株式会社製のテクノグラフTG-1kN)を用いて、スレート板に対する、剥離温度23℃、剥離速度300mm/minでの180度ピール接着力(水中接着力)(N/20mm)を測定した。
【0134】
<膨潤度の測定>
吸水率の測定と同様に両面が剥離ライナーで貼りあわされた粘着シートを作製し、片面の剥離ライナーを剥離除去したのち、基材(アルミ箔、厚み20μm)の一方の面と貼り合せた。得られた片面がアルミ箔の粘着シートを2cm角に切り出して作製した試料を25℃の純水中で24時間保管し、Peacock社製ダイアルゲージR1-205を用いて水中保管前後の粘着剤層の厚みを測定し、下記の式により算出した。なお、粘着剤層の厚みは試料の中心部5点を測定し、平均値を採用した。
膨潤度=水中保管後の粘着剤層の厚み/水中保管前の粘着剤層の厚み
【0135】
<剥離界面の水の吸光度>
厚み3mm、幅30mm、長さ120mmのスレート板を水道水に浸漬し、超音波脱気装置(ヤマト科学株式会社製のBRANSON3510)で30分間処理し、24時間静置して水中から取り出し、吸水率23質量%のスレート板を作製した。
吸水率23質量%のスレート板について、フーリエ変換型赤外分光法((Varian社製の3100 FT-IRを使用し、ATR法により測定)による炭酸カルシウム由来のピーク(1410cm-1)における吸光度と水の水酸基由来のピーク(3350cm-1)における吸光度の比(水の吸光度比)を算出した。水の吸光度比とは、上記炭酸カルシウム由来の吸光度に対する上記水酸基由来の吸光度の比(炭酸カルシウム由来の吸光度/水酸基由来の吸光度)である。
吸水率23質量%のスレート板水の吸光度比は2.6であった。
【0136】
次に、上記と同様にして作製した各例の粘着シートを幅20mm、長さ100mmになるように切断し、剥離ライナーを剥離除去した。
続いて、水をふき取った吸水率23質量%のスレート板の表面(湿潤面)に、作成した各例の粘着シート(試験片)を2kgローラーで1往復して圧着して貼付し、スレートの乾燥を防ぐために、各スレート1枚ずつをラップで被覆し、さらにアルミ箔で全面を包み72時間静置した。その後、粘着シート(試験片)が貼着されたスレート板を取り出し、粘着シートを剥離し、スレート板の粘着シートを剥離した面の水の吸光度比(剥離界面の水の吸光度比)を測定した。
【0137】
上記の測定結果、及び剥離後の粘着剤層の状態を観察した結果を表2に記載した。
【0138】
【0139】
表2に示されるように、粘着剤層を形成した際の膨潤度が本発明の規定の範囲内である実施例1~10の粘着剤組成物及び粘着シートは、湿潤面に対して高い接着力を発現し、水中保存後も優れた接着力を示し耐水性に優れることがわかる。
また、吸水率23質量%のスレート板の水の吸光度比が2.6であったのに対し、剥離界面の水の吸光度比の測定結果は、比較例1及び2では2.5及び2.6と同等の値であったが、実施例1~10は1.2~1.6と低い値であった。この結果からスレート板に含まれる水が湿気硬化性成分との反応により消費されたものと推察できる。
一方、膨潤度が本発明の規定の範囲外である比較例1~2の粘着剤組成物及び粘着シートは、水中保存後の膨潤度、及び吸水率が高く、接着力が低く耐水性に劣ることがわかる。
【符号の説明】
【0140】
10、30、40、50、60、70、80 粘着シート
11、31、41、51、61、71 基材
12、42 粘着剤層
72 湿潤粘着剤層
13、53 剥離ライナー
32A 第1の粘着剤層
32B 第2の粘着剤層
62A、82A 第1の湿潤粘着剤層
62B、82B 第2の湿潤粘着剤層
33A、43A、63A、73A、83A 第1の剥離ライナー
33B、43B、63B、73B、83B 第2の剥離ライナー
54、84 他の粘着剤層
64A、74A 第1の他の粘着剤層
64B、74B 第2の他の粘着剤層