IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トーモクの特許一覧

<>
  • 特許-包装箱 図1
  • 特許-包装箱 図2
  • 特許-包装箱 図3
  • 特許-包装箱 図4
  • 特許-包装箱 図5
  • 特許-包装箱 図6
  • 特許-包装箱 図7
  • 特許-包装箱 図8
  • 特許-包装箱 図9
  • 特許-包装箱 図10
  • 特許-包装箱 図11
  • 特許-包装箱 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】包装箱
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/42 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
B65D5/42 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019137221
(22)【出願日】2019-07-25
(65)【公開番号】P2021020686
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390022895
【氏名又は名称】株式会社トーモク
(74)【代理人】
【識別番号】100159628
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 雅比呂
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 貴史
(72)【発明者】
【氏名】椿 いず美
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-013856(JP,A)
【文献】特開2014-104999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折目線が形成された段ボール製のブランクを、該折目線に従って折り曲げることにより、互いに対向して起立する一対の長さ面と、両長さ面と直交する方向で互いに対向する一対の幅面と、上下方向に互いに対向する天面及び底面とを有する直方体に形成される包装箱であって、
前記長さ面と前記天面との境界線に沿った両側に平行に形成された2本の折目線からなる複数の上部第1複合折目線部と、該上部第1複合折目線部の2本の折目線に対して直交する方向に位相をずらして前記長さ面と前記天面との境界線に沿った両側に平行に形成された2本の折目線からなる複数の上部第2複合折目線部とが交互に設けられ、
製函作業で前記長さ面に対して前記天面を垂直方向に折り曲げた際に、前記上部第1複合折目線部の2本の折目線折り曲げられることによって前記長さ面と前記天面との境界部分に形成される上部第1傾斜隅角部と、前記上部第2複合折目線部の2本の折目線が折り曲げられることによって前記長さ面と前記天面との境界部分に形成される上部第2傾斜隅角部とは、互いに、前記長さ面に対する角度が異なって傾斜するように設けられていることを特徴とする包装箱。
【請求項2】
請求項1記載の包装箱において、
前記上部第1複合折目線部と前記上部第2複合折目線部とは、接続複合折目線部を介して連続され、
前記接続複合折目線部は、上辺接続折目線と、下辺接続折目線と、中間接続折目線との3つの折目線により構成され、
前記上辺接続折目線は、前記上部第1複合折目線部の上側の折目線と前記上部第2複合折目線部の上側の折目線とを接続し、前記下辺接続折目線は、前記上部第1複合折目線部の下側の折目線と前記上部第2複合折目線部の下側の折目線とを接続し、前記中間接続折目線は、前記上辺接続折目線の一端と前記下辺接続折目線の一端とを接続することを特徴とする包装箱。
【請求項3】
折目線が形成された段ボール製のブランクを、該折目線に従って折り曲げることにより、互いに対向して起立する一対の長さ面と、両長さ面と直交する方向で互いに対向する一対の幅面と、上下方向に互いに対向する天面及び底面とを有する直方体に形成される包装箱であって、
前記長さ面と前記底面との境界線に沿った両側に平行に形成された2本の折目線からなる複数の下部第1複合折目線部と、該下部第1複合折目線部の2本の折目線に対して直交する方向に位相をずらして前記長さ面と前記底面との境界線に沿った両側に平行に形成された2本の折目線からなる複数の下部第2複合折目線部とが交互に設けられ、
製函作業で前記底面に対して前記長さ面を垂直方向に折り曲げた際に、前記下部第1複合折目線部の2本の折目線折り曲げられることによって前記長さ面と前記底面との境界部分に形成される下部第1傾斜隅角部と、前記下部第2複合折目線部の2本の折目線が折り曲げられることによって前記長さ面と前記底面との境界部分に形成される下部第2傾斜隅角部とは、互いに、前記長さ面に対する角度が異なって傾斜するように設けられていることを特徴とする包装箱。
【請求項4】
請求項3記載の包装箱において、
前記下部第1複合折目線部と前記下部第2複合折目線部とは、他の接続複合折目線部を介して連続され、
前記他の接続複合折目線部は、他の上辺接続折目線と、他の下辺接続折目線と、他の中間接続折目線との3つの折目線により構成され、
前記他の上辺接続折目線は、前記下部第1複合折目線部の上側の折目線と前記下部第2複合折目線部の上側の折目線とを接続し、前記他の下辺接続折目線は、前記下部第1複合折目線部の下側の折目線と前記下部第2複合折目線部の下側の折目線とを接続し、前記他の中間接続折目線は、前記他の上辺接続折目線の一端と前記他の下辺接続折目線の一端とを接続することを特徴とする包装箱。
【請求項5】
折目線が形成された段ボール製のブランクを、該折目線に従って折り曲げることにより、互いに対向して起立する一対の長さ面と、両長さ面と直交する方向で互いに対向する一対の幅面と、上下方向に互いに対向する天面及び底面とを有する直方体に形成される包装箱であって、
前記長さ面と前記天面との境界線に沿った両側に平行に形成された2本の折目線からなる複数の上部第1複合折目線部と、該上部第1複合折目線部の2本の折目線に対して直交する方向に位相をずらして前記長さ面と前記天面との境界線に沿った両側に平行に形成された2本の折目線からなる複数の上部第2複合折目線部とが交互に設けられ、
製函作業で前記長さ面に対して前記天面を垂直方向に折り曲げた際に、前記上部第1複合折目線部の2本の折目線折り曲げられることによって前記長さ面と前記天面との境界部分に形成される上部第1傾斜隅角部と、前記上部第2複合折目線部の2本の折目線が折り曲げられることによって前記長さ面と前記天面との境界部分に形成される上部第2傾斜隅角部とは、互いに、前記長さ面に対する角度が異なって傾斜するように設けられており、
前記長さ面と前記底面との境界線に沿った両側に平行に形成された2本の折目線からなる複数の下部第1複合折目線部と、該下部第1複合折目線部の2本の折目線に対して直交する方向に位相をずらして前記長さ面と前記底面との境界線に沿った両側に平行に形成された2本の折目線からなる複数の下部第2複合折目線部とが交互に設けられ、
製函作業で前記底面に対して前記長さ面を垂直方向に折り曲げた際に、前記下部第1複合折目線部の2本の折目線折り曲げられることによって前記長さ面と前記底面との境界部分に形成される下部第1傾斜隅角部と、前記下部第2複合折目線部の2本の折目線が折り曲げられることによって前記長さ面と前記底面との境界部分に形成される下部第2傾斜隅角部とは、互いに、前記長さ面に対する角度が異なって傾斜するように設けられていることを特徴とする包装箱。
【請求項6】
折目線が形成された段ボール製のブランクを、該折目線に従って折り曲げることにより、互いに対向して起立する一対の長さ面と、両長さ面と直交する方向で互いに対向する一対の幅面と、上下方向に互いに対向する天面及び底面とを有する直方体に形成される包装箱であって、
前記長さ面と前記天面との境界線に沿った両側に平行に形成された2本の折目線からなる複数の上部第1複合折目線部と、該上部第1複合折目線部の2本の折目線に対して直交する方向に位相をずらして前記長さ面と前記天面との境界線に沿った両側に平行に形成された2本の折目線からなる複数の上部第2複合折目線部とが交互に設けられ、
前記上部第1複合折目線部の2本の折目線を折り曲げることによって前記長さ面と前記天面との境界部分に形成される上部第1傾斜隅角部と、前記上部第2複合折目線部の2本の折目線によって前記長さ面と前記天面との境界部分に形成される上部第2傾斜隅角部とは、互いに、前記長さ面に対する角度が異なって傾斜するように設けられており、
前記長さ面と前記底面との境界線に沿った両側に平行に形成された2本の折目線からなる複数の下部第1複合折目線部と、該下部第1複合折目線部の2本の折目線に対して直交
する方向に位相をずらして前記長さ面と前記底面との境界線に沿った両側に平行に形成された2本の折目線からなる複数の下部第2複合折目線部とが交互に設けられ、
前記長さ面と前記底面との境界部分に形成される下部第1傾斜隅角部と、前記下部第2複合折目線部の2本の折目線によって前記長さ面と前記底面との境界部分に形成される下部第2傾斜隅角部とは、互いに、前記長さ面に対する角度が異なって傾斜するように設けられ
前記上部第1傾斜隅角部の長さ面に対する傾斜角度は、前記下部第1傾斜隅角部の長さ面に対する傾斜角度と等しく、
前記上部第2傾斜隅角部の長さ面に対する傾斜角度は、前記下部第2傾斜隅角部の長さ面に対する傾斜角度と等しく、
前記上部第1傾斜隅角部は、前記下部第2傾斜隅角部の直上に位置し、
前記上部第2傾斜隅角部は、前記下部第1傾斜隅角部の直上に位置することを特徴とする包装箱。
【請求項7】
請求項5記載の包装箱において、
前記上部第1複合折目線部と前記上部第2複合折目線部とは、接続複合折目線部を介して連続され、
前記接続複合折目線部は、上辺接続折目線と、下辺接続折目線と、中間接続折目線との3つの折目線により構成され、
前記上辺接続折目線は、前記上部第1複合折目線部の上側の折目線と前記上部第2複合折目線部の上側の折目線とを接続し、前記下辺接続折目線は、前記上部第1複合折目線部の下側の折目線と前記上部第2複合折目線部の下側の折目線とを接続し、前記中間接続折目線は、前記上辺接続折目線の一端と前記下辺接続折目線の一端とを接続され、
前記下部第1複合折目線部と前記下部第2複合折目線部とは、他の接続複合折目線部を介して連続され、
前記他の接続複合折目線部は、他の上辺接続折目線と、他の下辺接続折目線と、他の中間接続折目線との3つの折目線により構成され、
前記他の上辺接続折目線は、前記下部第1複合折目線部の上側の折目線と前記下部第2複合折目線部の上側の折目線とを接続し、前記他の下辺接続折目線は、前記下部第1複合折目線部の下側の折目線と前記下部第2複合折目線部の下側の折目線とを接続し、前記他の中間接続折目線は、前記他の上辺接続折目線の一端と前記他の下辺接続折目線の一端とを接続することを特徴とする包装箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブランクを折目線に従って折り曲げることにより形成される直方体の包装箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、段ボールシートを打ち抜いて得られたブランクシート上に、配列されたびんや缶等の被包装物を載置し、ブランクシートを折目線に従って折り曲げることにより製品を包み込み、そしてフラップを接合することにより、製品を包装しながらケースを形成するようにしたラップアラウンドケースが知られている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
一般に、ラップアラウンドケースの場合、収納されるペットボトルや飲料缶等は容器自体の強度は高いが、ケースを積み上げたとき、上段側ケースの荷重により、上段側ケースのボトル等の底部のへこみ部分に対応する上段側ケースの底面部分に対し、その下段側のケースのボトル等のキャップ部分に対応する下段側ケースの天面部分が食い込んでいく現象が発生する。そうすると、食い込みが生じた分だけケースの歪が増大し、その歪が胴膨れ(長さ面の中央部が外側に向かって膨出する現象)となってケースの外観を損なう。
【0004】
特許文献1に記載されたラップアラウンドケースにおいては、立面板と平面板の境界部分の折目線が、1本の折目線の部分と、平行な2本の折目線の部分とで構成される。1本の折目線の部分と、2本の折目線の部分は、切目を挟んで、包装する缶に対応するように交互に設けられる。立面板と平面板の折目線に沿った折り曲げに伴い、平行な2本の折目線の間の部分が缶の端部外周に沿って斜めになる。
【0005】
これによれば、積み上げ荷重が作用したとき、平行な2本の折目線の折曲角が変化して高さ方向の変形を吸収するので、胴膨れを抑制することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4126201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1のラップアラウンドケースによると、1本の折目線の部分と、平行な2本の折目線の部分との境界には、切目による穴開きが生じてしまい、密閉性が低下して微細な塵埃等の侵入が防止できない。また、上記のような切目による穴開き部分は、段差が形成されるために外部のものに引っ掛かりやすく、亀裂や破断等が生じるおそれがある。
【0008】
このような従来技術の問題点に鑑み、本発明は、穴あき部分を設けることなく、胴膨れを抑制することができる包装箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、折目線が形成された段ボール製のブランクを、該折目線に従って折り曲げることにより、互いに対向して起立する一対の長さ面と、両長さ面と直交する方向で互いに対向する一対の幅面と、上下方向に互いに対向する天面及び底面とを有する直方体に形成される包装箱である。
【0010】
本発明の第1の態様は、前記長さ面と前記天面との境界線に沿った両側に平行に形成された2本の折目線からなる複数の上部第1複合折目線部と、該上部第1複合折目線部の2本の折目線に対して直交する方向に位相をずらして前記長さ面と前記天面との境界線に沿った両側に平行に形成された2本の折目線からなる複数の上部第2複合折目線部とが交互に設けられ、前記上部第1複合折目線部の2本の折目線を折り曲げることによって前記長さ面と前記天面との境界部分に形成される上部第1傾斜隅角部と、前記上部第2複合折目線部の2本の折目線によって前記長さ面と前記天面との境界部分に形成される上部第2傾斜隅角部とは、互いに、前記長さ面に対する角度が異なって傾斜するように設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、包装箱を段積みした場合、長さ面に上下方向に付与される段積み荷重は、当該長さ面に対して異なる角度で傾斜している上部第1傾斜隅角部と上部第2傾斜隅角部とによって相殺される。これにより、長さ面に付与される段積み荷重に起因する胴膨れを抑制することができる。
【0012】
本発明の第1の態様において、前記長さ面の上縁の長さ方向の両端部には、前記長さ面と前記天面との境界線上に延びる単一の折目線が設けられていることが好ましい。
【0013】
これによれば、製函作業で長さ面に対して天面を水平方向に折り曲げるとき、長さ面の上縁の両端部の単一の折目線の案内により、上部第1複合折目線部と上部第2複合折目線部との折り曲げを円滑に行うことができる。
【0014】
本発明の第2の態様は、前記長さ面と前記底面との境界線に沿った両側に平行に形成された2本の折目線からなる複数の下部第1複合折目線部と、該下部第1複合折目線部の2本の折目線に対して直交する方向に位相をずらして前記長さ面と前記底面との境界線に沿った両側に平行に形成された2本の折目線からなる複数の下部第2複合折目線部とが交互に設けられ、前記下部第1複合折目線部の2本の折目線を折り曲げることによって前記長さ面と前記底面との境界部分に形成される下部第1傾斜隅角部と、前記下部第2複合折目線部の2本の折目線によって前記長さ面と前記底面との境界部分に形成される下部第2傾斜隅角部とは、互いに、前記長さ面に対する角度が異なって傾斜するように設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、包装箱を段積みした場合、長さ面に上下方向に付与される段積み荷重は、当該長さ面に対して異なる角度で傾斜している下部第1傾斜隅角部と下部第2傾斜隅角部とによって相殺される。これにより、長さ面に付与される段積み荷重に起因する胴膨れを抑制することができる。
【0016】
本発明の第2の態様において、前記長さ面の下縁の長さ方向の両端部には、前記長さ面と前記底面との境界線上に延びる単一の折目線が設けられていることが好ましい。
【0017】
これによれば、製函作業で底面に対して長さ面を折り曲げ起立させるとき、長さ面の上縁の両端部の単一の折目線の案内により、下部第1複合折目線部と下部第2複合折目線部との折り曲げを円滑に行うことができる。
【0018】
本発明の第3の態様は、前記長さ面と前記天面との境界線に沿った両側に平行に形成された2本の折目線からなる複数の上部第1複合折目線部と、該上部第1複合折目線部の2本の折目線に対して直交する方向に位相をずらして前記長さ面と前記天面との境界線に沿った両側に平行に形成された2本の折目線からなる複数の上部第2複合折目線部とが交互に設けられ、前記上部第1複合折目線部の2本の折目線を折り曲げることによって前記長さ面と前記天面との境界部分に形成される上部第1傾斜隅角部と、前記上部第2複合折目線部の2本の折目線によって前記長さ面と前記天面との境界部分に形成される上部第2傾斜隅角部とは、互いに、前記長さ面に対する角度が異なって傾斜するように設けられており、前記長さ面と前記底面との境界線に沿った両側に平行に形成された2本の折目線からなる複数の下部第1複合折目線部と、該下部第1複合折目線部の2本の折目線に対して直交する方向に位相をずらして前記長さ面と前記底面との境界線に沿った両側に平行に形成された2本の折目線からなる複数の下部第2複合折目線部とが交互に設けられ、前記下部第1複合折目線部の2本の折目線を折り曲げることによって前記長さ面と前記底面との境界部分に形成される下部第1傾斜隅角部と、前記下部第2複合折目線部の2本の折目線によって前記長さ面と前記底面との境界部分に形成される下部第2傾斜隅角部とは、互いに、前記長さ面に対する角度が異なって傾斜するように設けられていることを特徴とする。
【0019】
本発明の第3の態様によれば、包装箱を段積みした場合、長さ面に上下方向に付与される段積み荷重は、上部第1傾斜隅角部と上部第2傾斜隅角部とによって相殺されると同時に、下部第1傾斜隅角部と下部第2傾斜隅角部とによって相殺される。これにより、長さ面に付与される段積み荷重に起因する胴膨れを抑制することができる。
【0020】
このとき、前記上部第1傾斜隅角部の長さ面に対する傾斜角度は、前記下部第1傾斜隅角部の長さ面に対する傾斜角度と等しく、前記上部第2傾斜隅角部の長さ面に対する傾斜角度は、前記下部第2傾斜隅角部の長さ面に対する傾斜角度と等しく、前記上部第1傾斜隅角部は、前記下部第2傾斜隅角部の直上に位置し、前記上部第2傾斜隅角部は、前記下部第1傾斜隅角部の直上に位置することが好ましい。
【0021】
これによれば、長さ面に上下方向に付与される段積み荷重は、長さ面の上縁側の上部第1傾斜隅角部と下縁側の下部第2傾斜隅角部とによって相殺され、長さ面の上縁側の上部第2傾斜隅角部と下縁側の下部第1傾斜隅角部とによっても相殺される。よって、長さ面に付与される段積み荷重に起因する胴膨れを一層効果的に抑制することができる。
【0022】
なお、ここで「傾斜角度と等しく」とは、角度が誤差なく一致するという意味ではなく、例えば、上部第1傾斜隅角部の長さ面に対する傾斜角度が大(または小)、上部第2傾斜隅角部の長さ面に対する傾斜角度が小(または大)となった場合において、下部第1傾斜隅角部の長さ面に対する傾斜角度が大(または小)、下部第2傾斜隅角部の長さ面に対する傾斜角度が小(または大)となり、なす角の大小関係が等しいという意味である。
【0023】
数値的にいえば、プラスマイナス5°程度は、「傾斜角度と等しく」の範囲内である。
【0024】
また、本発明の第3の態様において、前記長さ面の上縁の長さ方向の両端部には、前記長さ面と前記天面との境界線上に延びる単一の折目線が設けられており、前記長さ面の下縁の長さ方向の両端部には、前記長さ面と前記底面との境界線上に延びる単一の折目線が設けられていることが好ましい。
【0025】
これにより、製函作業で底面に対して長さ面を起立させるとき、長さ面の下縁両端部の単一の折目線の案内により、下部第1複合折目線部と下部第2複合折目線部との折り曲げの進行が円滑に進むと共に、長さ面に対して天面を水平方向に折り曲げるとき、長さ面の上縁両端部の単一の折目線の案内により、上部第1複合折目線部と上部第2複合折目線部との折り曲げの進行が円滑に進み、製函作業が一層容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態の包装箱の組み立て状態の平面図。
図2】本実施形態の包装箱の組み立て状態の長さ面を示す側面図。
図3】本実施形態の包装箱の組み立て状態の幅面を示す側面図。
図4】本実施形態の包装箱の組み立て状態の底面図。
図5】本実施形態の包装箱の展開図(実施例4)。
図6図6Aは上部第1複合折目線部及び上部第2複合折目線部の説明図、図6Bは下部第1複合折目線部及び下部第2複合折目線部の説明図。
図7】本実施形態の包装箱の要部の説明的断面図。
図8】本実施形態の包装箱の他の要部の説明的断面図。
図9】他の実施形態の包装箱の展開図(実施例5)。
図10】他の実施形態の包装箱の展開図(実施例1)。
図11】他の実施形態の包装箱の展開図(実施例2)。
図12】他の実施形態の包装箱の展開図(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一実施形態について、図面を用いて説明する。図1図4に各面を示した本実施形態の包装箱は、ラップアラウンドケースと言われるもので、図5に示すブランクシート1を、所定の位置で折り曲げることにより直方体に形成される段ボール製のケースである。
【0028】
包装箱は、図1に平面視する長方形状の天面2と、天面2の長辺に連設された図2に示す長さ面3と、天面2の短辺に連設された図3に示す幅面4と、天面2に対向して底部を閉塞する底面5とを備えている。
【0029】
なお、図2に示す符号6はライナーカットによる開封用の切り裂き帯であり、図3に示す符号7は包装箱を保持する際に手を入れるための手穴である。
【0030】
図5は包装箱の展開図であり、製函前のブランクシート1である。図5に示すように、ブランクシート1は、底面5となる底板51と、底面5に対向する天面2となる天板21と、起立状態で互いに対向する一対の長さ面3となる一対の側板31と、一方の側板31と天板21とを連結するための接着片22とを備えている。接着片22は、天板21に接着されて天面2の一部を構成する。
【0031】
また、ブランクシート1は、底板51の両端と天板21の両端に連設された外フラップ41と、各側板31の両端に連設された内フラップ42とを備えている。外フラップ41は内フラップ42の外面に接着されて幅面4を構成する。
【0032】
天板21と側板31との境界部分には、複数の上部第1複合折目線部10と複数の上部第2複合折目線部11とが側板31の上縁に沿って交互に形成されている。上部第1複合折目線部10は、平行に形成された2本の折目線(上辺折目線10aと下辺折目線10b)からなり、上部第2複合折目線部11は、平行に形成された2本の折目線(上辺折目線11aと下辺折目線11b)からなる。
【0033】
上部第1複合折目線部10と上部第2複合折目線部11とは、図6に示すように、上辺折目線10a,11a及び下辺折目線10b,11bに直交する方向に位相をずらして形成されている。
【0034】
また、上部第1複合折目線部10と上部第2複合折目線部11とは、接続複合折目線部12を介して連続する。即ち、図6に示すように、接続複合折目線部12は、上辺接続折目線12aと、下辺接続折目線12bと、中間接続折目線12cとの3つの折目線により構成されている。
【0035】
上辺接続折目線12aは、上部第1複合折目線部10の上辺折目線10aと上部第2複合折目線部11の上辺折目線11aとを接続する。下辺接続折目線12bは、上部第1複合折目線部10の下辺折目線10bと上部第2複合折目線部11の下辺折目線11bとを接続する。更に、中間接続折目線12cは、上辺接続折目線の一端と下辺接続折目線の一端とを接続しており、これによって、上部第1複合折目線部10と上部第2複合折目線部11とが、帯状に連なる複数の六角形状であるかのように視認される。
【0036】
同じように、底板51と側板31との境界部分には、複数の下部第1複合折目線部13と複数の下部第2複合折目線部14とが側板31の下縁に沿って交互に形成されている。下部第1複合折目線部13は、平行に形成された2本の折目線(上辺折目線13aと下辺折目線13b)からなり、下部第2複合折目線部14は、平行に形成された2本の折目線(上辺折目線14aと下辺折目線14b)からなる。
【0037】
下部第1複合折目線部13と下部第2複合折目線部14とは、図6に示すように、上辺折目線13a,14a及び下辺折目線13b,14bに直交する方向に位相をずらして形成されている。
【0038】
また、下部第1複合折目線部13と下部第2複合折目線部14とは、接続複合折目線部15を介して連続する。即ち、図6に示すように、接続複合折目線部15は、上辺接続折目線15aと、下辺接続折目線15bと、中間接続折目線15cとの3つの折目線により構成されている。
【0039】
上辺接続折目線15aは、下部第1複合折目線部13の上辺折目線13aと下部第2複合折目線部14の上辺折目線14aとを接続する。下辺接続折目線15bは、下部第1複合折目線部13の下辺折目線13bと下部第2複合折目線部14の下辺折目線14bとを接続する。更に、中間接続折目線15cは、上辺接続折目線の一端と下辺接続折目線の一端とを接続しており、これによって、下部第1複合折目線部13と下部第2複合折目線部14とが、帯状に連なる複数の六角形状であるかのように視認される。
【0040】
ブランクシート1から包装箱を組み立てると、図7に示すように、上部第1複合折目線部10は、上部第1傾斜隅角部16を形成し、下部第2複合折目線部14は、下部第2傾斜隅角部17を形成する。同じく、図8に示すように、上部第2複合折目線部11は、上部第2傾斜隅角部18を形成し、下部第1複合折目線部13は、下部第1傾斜隅角部19を形成する。
【0041】
また、図7及び図8に示すように、上部第1傾斜隅角部16と下部第1傾斜隅角部19とは、長さ面3に対する傾斜角度が等しく、上部第2傾斜隅角部18と下部第2傾斜隅角部17とは、長さ面3に対する傾斜角度が等しい。
【0042】
更に、長さ面3に対する上部第1傾斜隅角部16の傾斜角度は、長さ面3に対する上部第2傾斜隅角部18の傾斜角より小さく、長さ面3に対する下部第1傾斜隅角部19の傾斜角度は、長さ面3に対する下部第2傾斜隅角部17の傾斜角より小さい。
【0043】
そして、図7に示すように、上部第1傾斜隅角部16は、下部第2傾斜隅角部17の直上に位置し、図8に示すように、上部第2傾斜隅角部18は、下部第1傾斜隅角部19の直上に位置する。
【0044】
上記の構成による包装箱は、複数個段積みして長さ面3に上下方向に段積み荷重が付与されると、長さ面3の上縁において、上部第1傾斜隅角部16と上部第2傾斜隅角部18とが荷重を外方と内方とに分散させる。このとき、長さ面3には、上部第1傾斜隅角部16と上部第2傾斜隅角部18とによる、僅かな波うち変形が発生して長さ面3の鉛直方向の強度が増加する。これにより、胴膨れが抑制される。
【0045】
同時に、長さ面3の下縁において、下部第1傾斜隅角部19と下部第2傾斜隅角部17とが荷重を外方と内方とに分散させる。このとき、長さ面3には、下部第1傾斜隅角部19と下部第2傾斜隅角部17とによる、僅かな波うち変形が発生するが、上部第1傾斜隅角部16が下部第2傾斜隅角部17の直上に位置し、上部第2傾斜隅角部18が下部第1傾斜隅角部19の直上に位置することにより、長さ面3の上縁側と下縁側とで波うち方向が逆であるため変形が相殺され、外観上において波うち変形が視認されない。
【0046】
このように、本実施形態の包装箱は、長さ面3の強度増加に伴う外観上の変化を発生させることなく、胴膨れを抑制して、良好な外観を維持することができる。
【0047】
なお、本実施形態においては、長さ面3の上縁の全長にわたって上部第1複合折目線部10と上部第2複合折目線部11とが交互に形成され、長さ面3の下縁の全長にわたって下部第1複合折目線部13と下部第2複合折目線部14とが交互に形成されたものを示したが、他の実施形態として図9に示すように、長さ面3の上縁の長さ方向の両端部に単一に延びる一対の上部境界折目線8(単一の折目線)を設けてもよい。更に、長さ面3の下縁の長さ方向の両端部に単一に延びる一対の下部境界折目線9(単一の折目線)を設けてもよい。
【0048】
これによれば、製函作業で底面5(底板51)に対して長さ面3(側板31)を起立させるとき、長さ面3の下縁両端部の下部境界折目線9の案内により、下部第1複合折目線部13と下部第2複合折目線部14との折り曲げの進行が円滑に進むと共に、長さ面3に対して天面2を水平方向に折り曲げるとき、長さ面3の上縁両端部の上部境界折目線8の案内により、上部第1複合折目線部10と上部第2複合折目線部11との折り曲げの進行が円滑に進み、製函作業が一層容易となる。
【0049】
また、本実施形態では、長さ面3において、上部第1傾斜隅角部16を下部第2傾斜隅角部17の直上に配置させ、上部第2傾斜隅角部18を下部第1傾斜隅角部19の直上に配置させたことにより、長さ面3が段積み荷重を受けた際に、上縁側と下縁側とで波うち方向を逆に向けて相殺させ、長さ面3の強度増加に伴う外観上の変化を発生させないようにしたものを示した。
【0050】
これに対し、長さ面3において、上部第1傾斜隅角部16を下部第1傾斜隅角部19の直上に配置させ、上部第2傾斜隅角部18を下部第2傾斜隅角部17の直上に配置させることも可能である。これによると、長さ面3が段積み荷重を受けた際に、上縁側と下縁側とで波うち方向が同じになるため、長さ面3の波うち変形が比較的大きくなるが、十分な強度が確保されるので、上記実施形態と同様に胴膨れを抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態においては、長さ面3の上縁と下縁との両方に第1傾斜隅角部16,19と第2傾斜隅角部17,18と形成したものを示したが、これ以外に、図示しないが、長さ面の上縁と下縁との何れか一方にのみ第1傾斜隅角部と第2傾斜隅角部と形成してもよい。この場合には、僅かに長さ面の強度が低下するものの、胴膨れを抑える効果を十分に得ることができる。
【実施例
【0052】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0053】
〔実施例1〕
図10に示す展開状態のブランクシート1により500mLPET24本(縦6本×横4個)を包装して包装箱を作製した。この包装箱は、上部第1複合折目線部10及び上部第2複合折目線部11のみを有するものである。上部第1複合折目線部10及び上部第2複合折目線部11は、缶ビールの直径に対応させて3個ずつ、合計6個形成されている。
【0054】
かかる包装箱を、圧縮試験機を用いて包装箱の天面2から底面5に向けて限界圧縮まで荷重をかけた。
【0055】
そして、このときにおける長さ面3の下端縁から一番外側に向けて膨らんだ部分との距離を最大胴膨れとして測定した。また、この荷重によって、長さ面3が縦方向に折れ曲がって縦じわが発生するか否かを目視確認した。また、この荷重によって、手穴7が形成されている側の外フラップ41(以下、単に「上部外フラップ」という。)に座屈が発生するか否かを目視確認した。さらに、製函作業時における折目線の折り曲げやすさ(製函容易性)を確認した。
【0056】
〔実施例2〕
図11に示すブランクシート1を用いた以外は上記実施例1と同様の構成を有する包装箱を作製し、実施例1と同様にして最大胴膨れ、縦じわの有無、座屈の有無及び製函容易性を確認した。この包装箱は、下部第1複合折目線部13及び下部第2複合折目線部14のみを有するものである。
【0057】
〔実施例3〕
図12に示すブランクシート1を用いた以外は上記実施例1と同様の構成を有する包装箱を作製し、実施例1と同様にして最大胴膨れ、縦じわの有無、座屈の有無及び製函容易性を確認した。この包装箱は、上部第1複合折目線部10及び上部第2複合折目線部11と、下部第1複合折目線部13及び下部第2複合折目線部14とを切り裂き帯6を挟んで線対称に形成されているので、上部第1傾斜隅角部16が下部第1傾斜隅角部19の直上に位置し、上部第2傾斜隅角部18が下部第2傾斜隅角部17の直上に位置する。
【0058】
〔実施例4〕
図5に示すブランクシート1を用いた以外は上記実施例1と同様の構成を有する包装箱を作製し、実施例1と同様にして最大胴膨れ、縦じわの有無、座屈の有無及び製函容易性を確認した。この包装箱は、図7及び図8に示すように、上部第1傾斜隅角部16が下部第2傾斜隅角部17の直上に位置し、上部第2傾斜隅角部18が下部第1傾斜隅角部19の直上に位置するものである。
【0059】
〔実施例5〕
図9に示すブランクシート1を用いた以外は上記実施例1と同様の構成を有する包装箱を作製し、実施例1と同様にして最大胴膨れ、縦じわの有無、座屈の有無及び製函容易性を確認した。
【0060】
この包装箱は、上部第1複合折目線部10及び下部第2複合折目線部14が各2個と、上部第2複合折目線部11及び下部第1複合折目線部13が各3個形成され、その両端に上部境界折目線8または下部境界折目線9が連結されている。なお、この上部第1複合折目線部10、上部第2複合折目線部11、下部第1複合折目線部13及び下部第2複合折目線部14の位置及び長さは、缶ビールの直径に対応していない。
【0061】
また、この包装箱は、実施例4と同様に、上部第1傾斜隅角部16が下部第2傾斜隅角部17の直上に位置し、上部第2傾斜隅角部18が下部第1傾斜隅角部19の直上に位置するものである。
【0062】
〔比較例1〕
図5及び図9に示したブランクシート1から上部第1複合折目線部10、上部第2複合折目線部11、下部第1複合折目線部13及び下部第2複合折目線部14を除いた通常のブランクシート1を用い、それ以外は上記実施例1と同様の構成を有する包装箱を作製し、実施例1と同様にして最大胴膨れ、縦じわの有無、座屈の有無及び製函容易性を確認した。
【0063】
実施例1~5及び比較例1の包装箱についての上記試験結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
試験結果から明らかなとおり、実施例1~5は、比較例に比べて胴膨れが抑制されることが分かった。
【0066】
また、実施例3~5は実施例1、2に比べて最大胴膨れが抑制されていることから、複合折目線部は、長さ面の上下端縁の両方に設けることが好ましいことが分かった。
【0067】
また、実施例4及び5は実施例3に比べて縦じわが抑制されていることから、上部第1複合折目線部10及び上部第2複合折目線部11と、下部第1複合折目線部13及び下部第2複合折目線部14とは、切り裂き帯6を挟んで非対称に形成することが好ましいことが分かった。
【0068】
同様に、実施例4及び5は実施例3に比べて上部外フラップ41の座屈が防止されていることから、上部第1複合折目線部10及び上部第2複合折目線部11と、下部第1複合折目線部13及び下部第2複合折目線部14とは、切り裂き帯6を挟んで非対称に形成することが好ましいことが分かった。
【0069】
さらに、実施例5は実施例1~4に比べて、製函容易性、すなわち、長さ面に対して天面及び底面を折り曲げるときの折り曲げ易さが改善しているため、長さ面に対する天面または底面との境界線の両端には、単一の折目線が形成されていることが好ましいことが分かった。
【符号の説明】
【0070】
1…ブランクシート(ブランク)、2…天面、3…長さ面、4…幅面、5…底面、8…上部境界折目線(単一の折目線)、9…下部境界折目線(単一の折目線)、10…上部第1複合折目線部、11…上部第2複合折目線部、13…下部第1複合折目線部、14…下部第2複合折目線部、16…上部第1傾斜隅角部、17…下部第2傾斜隅角部、18…上部第2傾斜隅角部、19…下部第1傾斜隅角部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12