(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】情報提示装置、情報提示方法、および情報提示システム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20231003BHJP
G06Q 10/00 20230101ALI20231003BHJP
【FI】
G05B23/02 302S
G06Q10/00
G05B23/02 301X
G05B23/02 301V
(21)【出願番号】P 2019166011
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 毅洋
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-041326(JP,A)
【文献】特開2019-096227(JP,A)
【文献】特開2019-091425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00-23/02
G06Q 10/00-10/30
G06Q 50/00-50/20
G06Q 50/26-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象のデータが解析された結果である異常度合いを示す第1の情報を取得するように構成された取得部と、
前記異常度合いを示す前記第1の情報に関するカテゴリとユーザが関心を有するカテゴリとの対応関係を予め設定された定量的ルールとして記憶するように構成された第1記憶部と、
前記予め設定された定量的ルールを用いて、前記第1の情報を第2の情報に変換するように構成された変換部と、
前記第2の情報の閾値に関して予め設定された基準を記憶するように構成された第2記憶部と、
前記予め設定された基準に基づいて、前記第2の情報を提示するか否かを判別するように構成された判別部と、
前記判別部が提示すると判別した前記第2の情報が前記変換部によって変換される前の前記第1の情報が解析された際に用いられた前記監視対象のデータを第3記憶部に記憶された前記監視対象のデータの履歴データから抽出するように構成された抽出部と、
前記判別部が前記第2の情報を提示すると判別した場合に、前記第2の情報と抽出された前記監視対象のデータとを提示するように構成された提示部とを備え
、
前記第1記憶部は、互いに異なる複数の前記定量的ルールを記憶するように構成されており、
前記変換部は、前記第1の情報を、前記複数の定量的ルールのそれぞれにより複数種類の前記第2の情報に変換可能であり、
前記提示部は、提示相手のユーザに応じて異なる種類の前記第2の情報を前記監視対象のデータとともに提示する、
情報提示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報提示装置において、
前
記定量的ルールは、前記第1の情報と関連付けられた前記監視対象のデータの管理指標を示す情報を含む
ことを特徴とする情報提示装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の情報提示装置において、
前記提示部は、前記判別部によって提示すると判別された前記第2の情報と前記抽出部によって抽出された前記監視対象のデータとを表示画面に表示させる表示装置を含む
ことを特徴とする情報提示装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の情報提示装置において、
前記監視対象のデータを収集するように構成された収集部と、
前記収集部によって収集された前記監視対象のデータを、予め構築された解析モデルを用いて解析して、前記監視対象のデータの異常度合いを示す前記第1の情報を算出するように構成された計算部とをさらに備え、
前記収集部によって収集された前記監視対象のデータは、前記第3記憶部に記憶され、
前記取得部は、前記計算部により計算された前記第1の情報を取得する
ことを特徴とする情報提示装置。
【請求項5】
監視対象のデータが解析された結果である異常度合いを示す第1の情報を取得する第1ステップと、
第1記憶部に記憶された、前記異常度合いを示す前記第1の情報に関するカテゴリとユーザが関心を有するカテゴリとの対応関係を予め設定された定量的ルールを用いて、前記第1の情報を第2の情報に変換する第2ステップと、
第2記憶部に記憶された前記第2の情報の閾値に関して予め設定された基準に基づいて、前記第2の情報を提示するか否かを判別する第3ステップと、
前記第3ステップで、提示すると判別された前記第2の情報が前記第2ステップで変換される前の前記第1の情報が解析された際に用いられた前記監視対象のデータを第3記憶部に記憶された前記監視対象のデータの履歴データから抽出する第4ステップと、
前記第3ステップで、提示すると判別された前記第2の情報と前記第4ステップで抽出された前記監視対象のデータとを提示す
る第5ステップとを備え
、
前記第1記憶部には、互いに異なる複数の前記定量的ルールが記憶され、
前記第2ステップでは、前記第1の情報を、前記複数の定量的ルールのそれぞれにより複数種類の前記第2の情報に変換可能であり、
前記第5ステップでは、提示相手のユーザに応じて異なる種類の前記第2の情報を前記監視対象のデータとともに提示する、
情報提示方法。
【請求項6】
第1サーバ装置と、
複数のクライアント装置とを備え、
前記第1サーバ装置は、
監視対象のデータを収集するように構成された収集部と、
前記収集部によって収集された前記監視対象のデータを、予め構築された解析モデルを用いて解析し、解析した結果である異常度合いを示す第1の情報を算出するように構成された計算部とを有し、
前記複数のクライアント装置の各々は、
前記計算部によって算出された前記第1の情報を取得するように構成された取得部と、
前記第1の情報に関するカテゴリとユーザが関心を有するカテゴリとの対応関係を予め設定された定量的ルールとして記憶するように構成された第1記憶部と、
前記予め設定された定量的ルールを用いて、前記第1の情報を第2の情報に変換するように構成された変換部と、
前記第2の情報の閾値に関して予め設定された基準を記憶するように構成された第2記憶部と、
前記予め設定された基準に基づいて、前記第2の情報を提示するか否かを判別するように構成された判別部と、
前記判別部が提示すると判別した前記第2の情報が前記変換部によって変換される前の前記第1の情報が解析された際に用いられた前記監視対象のデータを第3記憶部に記憶された前記監視対象のデータの履歴データから抽出するように構成された抽出部と、
前記判別部が前記第2の情報を提示すると判別した場合に、前記第2の情報と抽出された前記監視対象のデータとを提示するように構成された提示部とを有
し、
前記第1記憶部は、互いに異なる複数の前記定量的ルールを記憶するように構成されており、
前記変換部は、前記第1の情報を、前記複数の定量的ルールのそれぞれにより複数種類の前記第2の情報に変換可能であり、
前記提示部は、提示相手のユーザに応じて異なる種類の前記第2の情報を前記監視対象のデータとともに提示する、
情報提示システム。
【請求項7】
請求項6に記載の情報提示システムにおいて、
前記複数のクライアント装置が備える前記第1記憶部および前記第2記憶部に記憶されている前
記定量的ルールおよび前記予め設定された基準は、前記複数のクライアント装置の各々で互いに異なる
ことを特徴とする情報提示システム。
【請求項8】
第1サーバ装置と、
複数のクライアント装置とを備え、
前記第1サーバ装置は、
監視対象のデータを収集するように構成された収集部と、
前記収集部によって収集された前記監視対象のデータを、予め構築された解析モデルを用いて解析し、解析した結果である異常度合いを示す第1の情報を算出するように構成された計算部と、
前記計算部によって算出された前記第1の情報を取得するように構成された取得部と、
前記第1の情報に関するカテゴリとユーザが関心を有するカテゴリとの対応関係を予め設定された定量的ルールとして記憶するように構成された第1記憶部と、
前記予め設定された定量的ルールを用いて、前記第1の情報を第2の情報に変換するように構成された変換部と、
前記第2の情報の閾値に関して予め設定された基準を記憶するように構成された第2記憶部と、
前記予め設定された基準に基づいて、前記第2の情報を提示するか否かを判別するように構成された判別部と、
前記判別部が提示すると判別した前記第2の情報が前記変換部によって変換される前の前記第1の情報が解析された際に用いられた前記監視対象のデータを第3記憶部に記憶された前記監視対象のデータの履歴データから抽出するように構成された抽出部とを有し、
前記複数のクライアント装置の各々は、前記判別部が前記第2の情報を提示すると判別した場合に、前記第2の情報と抽出された前記監視対象のデータとを提示するように構成された提示部を有
し、
前記第1記憶部は、互いに異なる複数の前記定量的ルールを記憶するように構成されており、
前記変換部は、前記第1の情報を、前記複数の定量的ルールのそれぞれにより複数種類の前記第2の情報に変換可能であり、
前記提示部は、提示相手のユーザに応じて異なる種類の前記第2の情報を前記監視対象のデータとともに提示する、
情報提示システム。
【請求項9】
第1サーバ装置と、
第2サーバ装置と、
複数のクライアント装置とを備え、
前記第1サーバ装置は、
監視対象のデータを収集するように構成された収集部と、
前記収集部によって収集された前記監視対象のデータを、予め構築された解析モデルを用いて解析し、解析した結果である異常度合いを示す第1の情報を算出するように構成された計算部とを有し、
前記第2サーバ装置は、
前記計算部によって算出された前記第1の情報を取得するように構成された取得部と、
前記第1の情報に関するカテゴリとユーザが関心を有するカテゴリとの対応関係を予め設定された定量的ルールとして記憶するように構成された第1記憶部と、
前記予め設定された定量的ルールを用いて、前記第1の情報を第2の情報に変換するように構成された変換部と、
前記第2の情報の閾値に関して予め設定された基準を記憶するように構成された第2記憶部と、
前記予め設定された基準に基づいて、前記第2の情報を提示するか否かを判別するように構成された判別部と、
前記判別部が提示すると判別した前記第2の情報が前記変換部によって変換される前の前記第1の情報が解析された際に用いられた前記監視対象のデータを第3記憶部に記憶された前記監視対象のデータの履歴データから抽出するように構成された抽出部とを有し、
前記クライアント装置の各々は、前記判別部が前記第2の情報を提示すると判別した場合に、前記第2の情報と抽出された前記監視対象のデータとを提示するように構成された提示部を有
し、
前記第1記憶部は、互いに異なる複数の前記定量的ルールを記憶するように構成されており、
前記変換部は、前記第1の情報を、前記複数の定量的ルールのそれぞれにより複数種類の前記第2の情報に変換可能であり、
前記提示部は、提示相手のユーザに応じて異なる種類の前記第2の情報を前記監視対象のデータとともに提示する、
情報提示システム。
【請求項10】
第1サーバ装置と、
複数の第2サーバ装置と、
複数のクライアント装置とを備え、
前記第1サーバ装置は、
監視対象のデータを収集するように構成された収集部と、
前記収集部によって収集された前記監視対象のデータを、予め構築された解析モデルを用いて解析し、解析した結果である異常度合いを示す第1の情報を算出するように構成された計算部とを有し、
前記複数の第2サーバ装置の各々は、
前記計算部によって算出された前記第1の情報を取得するように構成された取得部と、
前記第1の情報に関するカテゴリとユーザが関心を有するカテゴリとの対応関係を予め設定された定量的ルールとして記憶するように構成された第1記憶部と、
前記予め設定された定量的ルールを用いて、前記第1の情報を第2の情報に変換するように構成された変換部と、
前記第2の情報の閾値に関して予め設定された基準を記憶するように構成された第2記憶部と、
前記予め設定された基準に基づいて、前記第2の情報を提示するか否かを判別するように構成された判別部と、
前記判別部が提示すると判別した前記第2の情報が前記変換部によって変換される前の前記第1の情報が解析された際に用いられた前記監視対象のデータを第3記憶部に記憶された前記監視対象のデータの履歴データから抽出するように構成された抽出部とを有し、
前記クライアント装置の各々は、前記判別部が前記第2の情報を提示すると判別した場合に、前記第2の情報と抽出された前記監視対象のデータとを提示するように構成された提示部を有
し、
前記第1記憶部は、互いに異なる複数の前記定量的ルールを記憶するように構成されており、
前記変換部は、前記第1の情報を、前記複数の定量的ルールのそれぞれにより複数種類の前記第2の情報に変換可能であり、
前記提示部は、提示相手のユーザに応じて異なる種類の前記第2の情報を前記監視対象のデータとともに提示する、
情報提示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提示装置、情報提示方法、および情報提示システムに関し、特にデータ監視システムにおける情報提示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
時間経過とともに蓄積されるデータを、機械学習等の統計的アプローチを用いた自動処理を適用するデータ監視技術が普及しつつある。例えば、特許文献1は、プラントの運転状況の監視において、監視対象のデータと基準データとの間に有意な差異が検出された場合にこれをプラントの異常と判定する技術を開示している。
【0003】
従来の機械学習などの統計的アプローチを用いたデータ監視技術では、監視対象のデータに異常とすべき特定の状態が検出された時に、異常の発生を示す情報をユーザに通知し、ユーザに対して異常が発生しているプラントなどの状態をより望ましい状態へ移行するためのアクションを促す。例えば、ユーザは、異常の発生を示す通知を受けて、プラントなどの状態を普段の状態へ移行させることができる。
【0004】
しかし、従来のデータ監視技術において、同じ異常を示す情報であっても、データ監視システムでユーザが担う業務の種類、役割や責任の範囲に応じた興味や関心の対象により、その有意性が異なるといえる。例えば、プラントにおけるエネルギー監視の例を挙げると、検出された異常を示す情報が、たとえ、エネルギー消費としては、無駄な消費を示す場合であっても、プラントの効率的な運用の観点からは、金銭的なインパクトは小さいため対処に係る費用との比較考量に基づいてその異常を示すデータの差異を無視したい場合がある。あるいは、プラントの安全性管理という観点からは、検出された異常を示すデータの差異が発生しても特段の対処をしなくてもよいと判断されるケースが存在する。
【0005】
このように、監視対象のデータにおいて検出された異常の全てを機械的にユーザに通知することは、監視業務におけるオペレーション効率を低下させるということになり得る。一方において、異常の発生を示す有意な差異が多数検出された場合に、その中から真にユーザの興味、関心、役割、責任等に応じて提示すべき異常を選別する場合に多大な労力が必要となる。そのため、監視対象のデータにおいて検出された異常を、適切な観点から選別してユーザに提示する技術が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、監視対象のデータにおいて検出された異常を適切な観点から選別してユーザに提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明に係る情報提示装置は、監視対象のデータが解析された結果である異常度合いを示す第1の情報を取得するように構成された取得部と、前記異常度合いを示す前記第1の情報に関するカテゴリとユーザが関心を有するカテゴリとの対応関係を予め設定された定量的ルールとして記憶するように構成された第1記憶部と、前記予め設定された定量的ルールを用いて、前記第1の情報を第2の情報に変換するように構成された変換部と、前記第2の情報の閾値に関して予め設定された基準を記憶するように構成された第2記憶部と、前記予め設定された基準に基づいて、前記第2の情報を提示するか否かを判別するように構成された判別部と、前記判別部が提示すると判別した前記第2の情報が前記変換部によって変換される前の前記第1の情報が解析された際に用いられた前記監視対象のデータを第3記憶部に記憶された前記監視対象のデータの履歴データから抽出するように構成された抽出部と、前記判別部が前記第2の情報を提示すると判別した場合に、前記第2の情報と抽出された前記監視対象のデータとを提示するように構成された提示部とを備える。
【0009】
また、本発明に係る情報提示装置において前記予め設定された定量的ルールは、前記第1の情報と関連付けられた前記監視対象のデータの管理指標を示す情報を含んでいてもよい。
【0010】
また、本発明に係る情報提示装置において、前記提示部は、前記判別部によって提示すると判別された前記第2の情報と前記抽出部によって抽出された前記監視対象のデータとを表示画面に表示させる表示装置を含んでいてもよい。
【0011】
また、本発明に係る情報抽出装置において、前記監視対象のデータを収集するように構成された収集部と、前記収集部によって収集された前記監視対象のデータを、予め構築された解析モデルを用いて解析して、前記監視対象のデータの異常度合いを示す前記第1の情報を算出するように構成された計算部とをさらに備え、前記収集部によって収集された前記監視対象のデータは、前記第3記憶部に記憶され、前記取得部は、前記計算部により計算された前記第1の情報を取得してもよい。
【0012】
また、上述した課題を解決するために、本発明に係る情報提示方法は、監視対象のデータが解析された結果である異常度合いを示す第1の情報を取得する第1ステップと、第1記憶部に記憶された、前記異常度合いを示す前記第1の情報に関するカテゴリとユーザが関心を有するカテゴリとの対応関係を予め設定された定量的ルールを用いて、前記第1の情報を第2の情報に変換する第2ステップと、第2記憶部に記憶された前記第2の情報の閾値に関して予め設定された基準に基づいて、前記第2の情報を提示するか否かを判別する第3ステップと、前記第3ステップで、提示すると判別された前記第2の情報が前記第2ステップで変換される前の前記第1の情報が解析された際に用いられた前記監視対象のデータを第3記憶部に記憶された前記監視対象のデータの履歴データから抽出する第4ステップと、前記第3ステップで、提示すると判別された前記第2の情報と前記第4ステップで抽出された前記監視対象のデータとを提示するように構成された提示部とを備える。
【0013】
上述した課題を解決するために、本発明に係る情報提示システムは、第1サーバ装置と、複数のクライアント装置とを備え、前記第1サーバ装置は、監視対象のデータを収集するように構成された収集部と、前記収集部によって収集された前記監視対象のデータを、予め構築された解析モデルを用いて解析し、解析した結果である異常度合いを示す第1の情報を算出するように構成された計算部とを有し、前記複数のクライアント装置の各々は、前記計算部によって算出された前記第1の情報を取得するように構成された取得部と、前記第1の情報に関するカテゴリとユーザが関心を有するカテゴリとの対応関係を予め設定された定量的ルールとして記憶するように構成された第1記憶部と、前記予め設定された定量的ルールを用いて、前記第1の情報を第2の情報に変換するように構成された変換部と、前記第2の情報の閾値に関して予め設定された基準を記憶するように構成された第2記憶部と、前記予め設定された基準に基づいて、前記第2の情報を提示するか否かを判別するように構成された判別部と、前記判別部が提示すると判別した前記第2の情報が前記変換部によって変換される前の前記第1の情報が解析された際に用いられた前記監視対象のデータを第3記憶部に記憶された前記監視対象のデータの履歴データから抽出するように構成された抽出部と、前記判別部が前記第2の情報を提示すると判別した場合に、前記第2の情報と抽出された前記監視対象のデータとを提示するように構成された提示部とを有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る情報提示システムにおいて、前記複数のクライアント装置が備える前記第1記憶部および前記第2記憶部に記憶されている前記予め設定された定量的ルールおよび前記予め設定された基準は、前記複数のクライアント装置の各々で互いに異なっていてもよい。
【0015】
上述した課題を解決するために、本発明に係る情報提示システムは、第1サーバ装置と、複数のクライアント装置とを備え、前記第1サーバ装置は、監視対象のデータを収集するように構成された収集部と、前記収集部によって収集された前記監視対象のデータを、予め構築された解析モデルを用いて解析し、解析した結果である異常度合いを示す第1の情報を算出するように構成された計算部と、前記計算部によって算出された前記第1の情報を取得するように構成された取得部と、前記第1の情報に関するカテゴリとユーザが関心を有するカテゴリとの対応関係を予め設定された定量的ルールとして記憶するように構成された第1記憶部と、前記予め設定された定量的ルールを用いて、前記第1の情報を第2の情報に変換するように構成された変換部と、前記第2の情報の閾値に関して予め設定された基準を記憶するように構成された第2記憶部と、前記予め設定された基準に基づいて、前記第2の情報を提示するか否かを判別するように構成された判別部と、前記判別部が提示すると判別した前記第2の情報が前記変換部によって変換される前の前記第1の情報が解析された際に用いられた前記監視対象のデータを第3記憶部に記憶された前記監視対象のデータの履歴データから抽出するように構成された抽出部とを有し、前記複数のクライアント装置の各々は、前記判別部が前記第2の情報を提示すると判別した場合に、前記第2の情報と抽出された前記監視対象のデータとを提示するように構成された提示部を有することを特徴とする。
【0016】
上述した課題を解決するために、本発明に係る情報提示システムは、第1サーバ装置と、第2サーバ装置と、複数のクライアント装置とを備え、前記第1サーバ装置は、監視対象のデータを収集するように構成された収集部と、前記収集部によって収集された前記監視対象のデータを、予め構築された解析モデルを用いて解析し、解析した結果である異常度合いを示す第1の情報を算出するように構成された計算部とを有し、前記第2サーバ装置は、前記計算部によって算出された前記第1の情報を取得するように構成された取得部と、前記第1の情報に関するカテゴリとユーザが関心を有するカテゴリとの対応関係を予め設定された定量的ルールとして記憶するように構成された第1記憶部と、前記予め設定された定量的ルールを用いて、前記第1の情報を第2の情報に変換するように構成された変換部と、前記第2の情報の閾値に関して予め設定された基準を記憶するように構成された第2記憶部と、前記予め設定された基準に基づいて、前記第2の情報を提示するか否かを判別するように構成された判別部と、前記判別部が提示すると判別した前記第2の情報が前記変換部によって変換される前の前記第1の情報が解析された際に用いられた前記監視対象のデータを第3記憶部に記憶された前記監視対象のデータの履歴データから抽出するように構成された抽出部とを有し、前記クライアント装置の各々は、前記判別部が前記第2の情報を提示すると判別した場合に、前記第2の情報と抽出された前記監視対象のデータとを提示するように構成された提示部を有することを特徴とする。
【0017】
上述した課題を解決するために、本発明に係る情報提示システムは、第1サーバ装置と、複数の第2サーバ装置と、複数のクライアント装置とを備え、前記第1サーバ装置は、監視対象のデータを収集するように構成された収集部と、前記収集部によって収集された前記監視対象のデータを、予め構築された解析モデルを用いて解析し、解析した結果である異常度合いを示す第1の情報を算出するように構成された計算部とを有し、前記複数の第2サーバ装置の各々は、前記計算部によって算出された前記第1の情報を取得するように構成された取得部と、前記第1の情報に関するカテゴリとユーザが関心を有するカテゴリとの対応関係を予め設定された定量的ルールとして記憶するように構成された第1記憶部と、前記予め設定された定量的ルールを用いて、前記第1の情報を第2の情報に変換するように構成された変換部と、前記第2の情報の閾値に関して予め設定された基準を記憶するように構成された第2記憶部と、前記予め設定された基準に基づいて、前記第2の情報を提示するか否かを判別するように構成された判別部と、前記判別部が提示すると判別した前記第2の情報が前記変換部によって変換される前の前記第1の情報が解析された際に用いられた前記監視対象のデータを第3記憶部に記憶された前記監視対象のデータの履歴データから抽出するように構成された抽出部とを有し、前記クライアント装置の各々は、前記判別部が前記第2の情報を提示すると判別した場合に、前記第2の情報と抽出された前記監視対象のデータとを提示するように構成された提示部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、予め設定された定量的ルールを用いて、監視対象のデータの解析結果である異常度合いを示す第1の情報を、第2の情報に変換し、第2の情報の閾値に関して予め設定された基準に基づいて、第2の情報を提示するか否かを判別し、提示すると判別された第2の情報と、第2の情報の変換前の第1の情報が解析された際に用いられた監視対象のデータとを抽出して提示する。そのため、監視対象のデータにおいて検出された異常を適切な観点から選別してユーザに提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る情報提示装置および異常検出装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施の形態に係る情報提示装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本実施の形態に係る情報提示装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本実施の形態に係る異常検出装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本実施の形態に係る異常検出装置の動作を説明するための図である。
【
図6】
図6は、本実施の形態に係る異常検出装置の動作を説明するための図である。
【
図7】
図7は、本実施の形態に係る異常検出装置の動作を説明するための図である。
【
図8】
図8は、本実施の形態に係る情報提示システムの構成例を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、本実施の形態に係る情報提示システムの別の構成例を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、本実施の形態に係る情報提示システムの別の構成例を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、本実施の形態の変形例1に係る異常検出装置の動作を説明するための図である。
【
図13】
図13は、変形例2に係る異常検出装置の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について、
図1から
図13を参照して詳細に説明する。
【0021】
はじめに、本発明の実施の形態に係る情報提示装置1の概要について説明する。
情報提示装置1は、監視対象のデータが解析された結果である異常度合いを示す第1の情報を、予め設定された定量的ルールを用いて第2の情報に変換する。定量的ルールとは、異常度合いを示す第1の情報に関するカテゴリとユーザが関心を有するカテゴリとの対応関係として予め設定された情報である(以下、「第1ドメイン知識」という)。
【0022】
また、情報提示装置1は、第2の情報の閾値に関して予め設定されている基準に基づいて、第2の情報をユーザに提示するか否かを判別する。情報提示装置1は、ユーザに提示すべき情報であると判別した第2の情報の変換前の第1の情報の元のデータである、第1の情報が解析された際に用いられた監視対象のデータを、監視対象データ23(第3記憶部)の履歴データから抽出し、第2の情報と抽出された監視対象のデータとをユーザに提示する。
【0023】
ここで、第2の情報の閾値に関して予め設定されている基準とは、ユーザにおいて優先度、関心度や重要度がより高い所望とされる異常を判別するために第2の情報の閾値に関して設定される基準である(以下、「第2ドメイン知識」という)。
【0024】
例えば、プラントなどの設備でのガスや電力などのエネルギーを監視するエネルギー監視システムでは、設備で使用されるガスや電力などのデータが蓄積され、通常では生じないガスや電力の消費を表す急激なデータの変化が異常として検出される。このようなエネルギー監視システムでは、検出されたデータの異常は、様々な管理指標に基づいて監視および管理が行われている。例えば、設備保全員、運転オペレータ、予算管理者などそれぞれ異なる業務に携わる複数のユーザは、設備で検出される異常を、それぞれの業務に応じた観点から把握し、監視業務を行う。
【0025】
例えば、設備保全員であれば、エネルギー監視システムにおいて検出された異常を、設備の劣化度の観点から把握することが必要となる。運転オペレータであれば、検出された異常をプロセスの危険度の観点から把握することが必要となる。また、予算管理者は、検出された異常をエネルギー損失金額の観点から把握することが必要となる。
【0026】
このように、監視対象のデータの解析結果である異常度合いを示す第1の情報を、第1ドメイン知識を用いてユーザが用いる管理指標に応じた表現形式となるように変換し、さらに、変換された第2の情報について、第2ドメイン知識に基づいてユーザに提示すべき必要な異常度合いであるかを判別し、提示すべきと判別された第2の情報とその元となっている監視対象のデータとをユーザに提示することが本実施の形態の特徴の一つである。
【0027】
図1に示すように、情報提示装置1は、取得部10、記憶部11、変換部13、判別部15、抽出部16、および提示部17を備える。本実施の形態では、情報提示装置1は、通信ネットワークNWを介して異常検出装置2と接続されている。情報提示装置1および異常検出装置2は、例えば、上述したエネルギー監視システムに設置される。
【0028】
[異常検出装置の機能ブロック]
はじめに、異常検出装置2の機能ブロックについて説明する。
異常検出装置2は、収集部20、計算部21、記憶部22、および出力部24を備える。異常検出装置2は、監視対象のデータを収集して蓄積し、事前に構築された解析モデルを用いて監視対象のデータを解析し、データに生じた異常度合いを示す第1の情報(以下、「異常指標値」という。)を算出する。
【0029】
収集部20は、通信ネットワークNWを介して、監視対象のデータを収集する。収集されたデータは、記憶部22の監視対象データ23に蓄積される。収集部20は、予め設定された周期でデータを収集することができる。例えば、収集部20は、設備における電力使用量のデータを1時間1サンプルの周期で収集することができる。
【0030】
計算部21は、収集された監視対象のデータを、予め構築された解析モデルを用いて解析し、監視対象のデータの異常指標値を算出する。解析モデルとしては、統計モデルや機械学習モデルを用いることができる。具体的には、計算部21は、ロバスト主成分分析やオートエンコーダ、あるいはカーネル変化点検知などの時系列変化点検知手法などを用いて、監視対象のデータの異常度合いを示す異常指標値を計算することができる。例えば、計算部21は、設備における実際の電力使用量と推定使用量の絶対誤差を計算し、各日の総和をとった損失電力量[kWh]を異常指標値として算出することができる。
【0031】
記憶部22は、監視対象データ23を備える。記憶部22には、事前に構築された解析モデルが格納されている。例えば、学習済みのオートエンコーダなどが記憶部22に格納されている。また、監視対象データ23は、収集部20によって収集された監視対象のデータを蓄積する。
【0032】
出力部24は、計算部21によって算出された異常指標値を通信ネットワークNWを介して情報提示装置1に送出する。例えば、出力部24は、情報提示装置1からの要求に応じて算出された異常指標値を出力することができる。
【0033】
[情報提示装置の機能ブロック]
次に、情報提示装置1の機能ブロックについて説明する。
取得部10は、異常検出装置2において算出された異常指標値を取得する。例えば、取得部10は、外部から後述の入力装置107に入力される操作入力に応じた取得要求に基づいて、異常指標値を異常検出装置2から通信ネットワークNWを介して取得することができる。
【0034】
記憶部11は、第1ドメイン知識DB(第1記憶部)12、および第2ドメイン知識DB(第2記憶部)14を備える。
【0035】
第1ドメイン知識DB12は、異常指標値に関するカテゴリとユーザが関心を有するカテゴリとの対応関係の定量的ルールである第1ドメイン知識を記憶する。第1ドメイン知識は、異常指標値と関連付けられた監視対象のデータの管理指標を示す情報を含む。例えば、エネルギー監視システムにおいて、予め設定されている定量的ルールとは、検出された異常指標値を、ユーザに用いられる管理指標に応じて変換するための情報が含まれる。
【0036】
具体的には、ユーザがエネルギー監視システムにおける予算管理者である場合、ユーザの関心度は、設備におけるエネルギーの損失金額にある。この場合、ユーザのドメイン固有の情報である第1ドメイン知識としては、電力の単価[円/kWh]などが含まれる。すなわち、異常指標値に関するカテゴリは、損失電力量であり、ユーザが関心を有するカテゴリは、エネルギーの損失金額である。
【0037】
また、例えば、時間帯によって異常指標値の危険度が異なる場合、後述の変換部13によって、時間帯による重み付けされた異常指標値を得ることが望まれる場合には、第1ドメイン知識としては、時間帯別の危険度を示す値が含まれる。
【0038】
変換部13は、第1ドメイン知識を用いて、異常指標値を第2の情報(以下、「変換値」という。)に変換する。より具体的には、変換部13は異常指標値の単位の変換や重み付けを行う。例えば、変換部13は、異常指標値として取得された損失電力量[kWh]および第1ドメイン知識である電力単価[円/kWh]を変換式[異常指標値[kWh]×電力単価[円/kWh]]に代入して、エネルギーの損失金額[円]を求める。
【0039】
第2ドメイン知識DB14は、変換値の閾値に関して予め設定されている基準である第2ドメイン知識を記憶する。第2ドメイン知識とは、変換部13によって変換された変換値のうちから、ユーザに提示すべき変換値を判別するための基準である。
【0040】
第2ドメイン知識には、プラントなどの運用に関する知識、例えば、予定されているプラントの運用実施などに伴い、事前に発生することが分かっている異常値の発生に関する情報が含まれる。また、第2ドメイン知識は、プラントの運用の変更に関する知識を含む。プラントの運用の変更に関する知識とは、例えば、季節の変化に応じて空調などの設備の稼働に関する設定が変更されること等が含まれる。
【0041】
また、第2ドメイン知識は、監視対象のデータおよびデータの処理に関する知識を含む。詳細は後述するが、データおよびデータの処理に関する知識は、比較対象に関する知識、例えば、分析対象のデータ区間(期間)とその直前の区間とのある特性値に関する差分に関する情報である。また、第2ドメイン知識は、閾値など限界条件に関する知識が含まれる。
【0042】
判別部15は、第2ドメイン知識に基づいて、変換部13によって変換された変換値から、第2ドメイン知識で示される基準に基づき変換値をユーザに提示するか否かを判別する。具体的には、判別部15は、変換値が閾値を満たすか否かを判定する。また、第2ドメイン知識として複数の条件が含まれる場合には、それらの条件の論理演算により判定を行うことができる。例えば、判別部15は、プラントなどの運用に関する基準を満たし、かつ、閾値を超える場合に、その変換値をユーザに提示すべきと判別することができる。
【0043】
抽出部16は、判別部15がユーザに提示すると判別した変換値の元となった監視対象のデータ、すなわち、変換部13によって変換される前の異常指標値が異常検出装置2において算出された際に用いられた監視対象のデータを監視対象データ23の履歴データから抽出する。
【0044】
提示部17は、判別部15によってユーザに提示すべきと判別された変換値と抽出部16によって抽出された監視対象のデータをユーザに提示する。例えば、提示部17は、後述する表示装置108の表示画面に提示すべき変換値および元のデータである抽出された監視対象のデータをユーザが比較可能に表示させることができる。提示部17は、判別部15によって判別された、ユーザにとってより優先度、関心度や重要度が高い異常指標値の変換値をユーザに提示する。
【0045】
提示部17によって提示される変換値は、ユーザがエネルギー監視業務で用いる特定の管理指標に応じた異常指標値であり、かつ、多数検出された異常指標値のうち、ユーザの業務において必要とされる異常指標値のみを示す情報である。例えば、異常指標値として得られたエネルギー使用量[kWh]がエネルギー損失金額[円]に変換されたとしても、プラント全体の効率の観点から閾値を超えたエネルギー損失金額[円]のみがユーザに提示されることになる。
【0046】
[情報提示装置のハードウェア構成]
次に、上述した機能を有する情報提示装置1を実現するハードウェア構成の一例について、
図2のブロック図を参照して説明する。
【0047】
図2に示すように、情報提示装置1は、例えば、バス101を介して接続されるプロセッサ102、主記憶装置103、通信インターフェース104、補助記憶装置105、入出力I/O106、入力装置107、および表示装置108を備えるコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。プロセッサ102は、CPUやGPUなどによって構成される。
【0048】
主記憶装置103には、プロセッサ102が各種制御や演算を行うためのプログラムが予め格納されている。プロセッサ102と主記憶装置103とによって、
図1に示した変換部13、判別部15、抽出部16など、情報提示装置1の各機能が実現される。
【0049】
通信インターフェース104は、情報提示装置1と各種外部電子機器との間をネットワーク接続するためのインターフェース回路である。例えば、通信インターフェース104を介して、情報提示装置1と異常検出装置2とはネットワーク接続され、異常検出装置2で算出された異常指標値が情報提示装置1に送出されることができる。
【0050】
補助記憶装置105は、読み書き可能な記憶媒体と、その記憶媒体に対してプログラムやデータなどの各種情報を読み書きするための駆動装置とで構成されている。補助記憶装置105には、記憶媒体としてハードディスクやフラッシュメモリなどの半導体メモリを使用することができる。
【0051】
補助記憶装置105は、情報提示装置1が変換処理、判別処理、抽出処理を含む各種処理を実行するための情報提示処理プログラムを格納するプログラム格納領域を有する。補助記憶装置105は、第1ドメイン知識を格納する領域、および第2ドメイン知識を格納する領域を有する。
【0052】
補助記憶装置105によって、
図1で説明した第1ドメイン知識DB12、および第2ドメイン知識DB14を含む記憶部11が実現される。さらには、例えば、上述したデータやプログラムやなどをバックアップするためのバックアップ領域などを有していてもよい。
【0053】
入出力I/O106は、外部機器からの信号を入力したり、外部機器へ信号を出力したりするI/O端子により構成される。
【0054】
入力装置107は、物理キーやタッチパネルなどで構成され、外部からの操作入力に応じた信号を生成して出力する。
【0055】
表示装置108は、液晶ディスプレイなどによって構成される。表示装置108は、
図1で説明した提示部17を実現する。
【0056】
図1で説明した異常検出装置2についても、
図2で示す情報提示装置1と同様のハードウェア構成により実現することができる。なお、情報提示装置1と異常検出装置2とは共通する単一の演算装置で構成されていてもよい。
【0057】
[情報提示方法]
次に、上述した構成を有する情報提示装置1の動作について、
図3のフローチャートを用いて説明する。以下において、監視対象のデータはプラントなどの設備における電力使用量のデータである場合を例に挙げて説明する。また、ユーザは、施設管理者であり、電力使用量のデータにおける異常に対してユーザが用いる管理指標は、金額[円]であるものとする。
【0058】
まず、取得部10は、異常検出装置2から監視対象のデータの異常指標値を取得する(ステップS1)。例えば、取得部10は、異常指標値として、実際の電力使用量と推定使用量の絶対誤差における、各日の総和をとった電力量[kWh]を取得する。また、取得部10は、1日に一回など予め設定された周期で異常指標値を取得することができる。あるいは、取得部10は、入力装置107が外部からの操作入力として取得要求を受け付けた場合に、異常指標値を取得する構成とすることができる。
【0059】
次に、変換部13は、第1ドメイン知識DB12を参照する(ステップS2)。例えば、変換部13は、第1ドメイン知識として登録されている電力の単価[円/kWh]を読み出す。次に、変換部13は、第1ドメイン知識を用いて、異常指標値をユーザが用いる管理指標に応じた変換値に変換する(ステップS3)。例えば、変換部13は、異常指標値である電力損失[kWh]と電力の単価[円/kWh]との積により、電力損失金額[円]を変換値として求めて出力する(ステップS4)。
【0060】
次に、判別部15は、第2ドメイン知識DB14を参照する(ステップS5)。例えば、判別部15は、第2ドメイン知識として第2ドメイン知識DB14に事前に登録されている、設備における電力使用料金の予算などから決定された電力損失金額の閾値[円]を読み出す。その後、判別部15は、ステップS4で出力された変換値である電力損失金額[円]が、閾値を超えている場合には、提示すべき電力損失金額[円]であると判別する(ステップS6)。
【0061】
次に、抽出部16は、ステップS6でユーザに提示すべきと判別された場合に、その変換値が、変換部13によって変換される前の異常指標値が、異常検出装置2において解析された監視対象の電力使用量のデータを、監視対象データ23から抽出する(ステップS7)。すなわち、抽出部16は、判別部15によって提示すべきと判別された変換値の元となっている監視対象のデータを、監視対象データ23から抽出する。また、抽出部16は、変換値の比較基準となり得る監視対象のデータに関連するデータについても監視対象データ23から抽出することができる。
【0062】
次に、提示部17は、判別部15によってユーザに提示すべきと判別された変換値の電力損失金額[円]および抽出部16によって抽出された監視対象のデータをユーザに提示する(ステップS8)。例えば、提示部17は、変換値である電力損失金額[円]が閾値を超えた日の電力使用量のデータと日付とを表示装置108に表示させることができる。このように、提示部17は、判別部15がユーザに提示すべきと判別された変換値をユーザに比較対象可能な態様で提示する。
【0063】
[異常指標値の算出処理]
ここで、情報提示装置1によって取得される異常指標値の異常検出装置2による算出処理について
図4のフローチャートを用いて説明する。監視対象のデータは、上記の例と同様に、電力使用量のデータであるものとする。
【0064】
まず、収集部20は、通信ネットワークNWを介してプラントにおける電力使用量のデータを、例えば、1時間の周期で収集する(ステップS10)。収集部20によって収集された監視対象のデータは、記憶部22の監視対象データ23に蓄積される。
図5は、収集部20によって収集された1時間1サンプルの電力使用量の時系列データである。
図5の上段のデータ中に示すフレーム内の区間のデータを拡大すると、
図5の下段に示すように、土日の電力使用量は平日の電力使用量よりも少ないことがわかる。
【0065】
次に、計算部21は、収集部20によって収集された監視対象のデータを事前に構築された解析モデルを用いて異常指標値を計算する(ステップS11)。例えば、計算部21は、
図6に示すように、収集部20によって収集され蓄積された監視対象の過去のデータを学習用データとして用いて予め設定された学習モデル、例えば、オートエンコーダなどの機械学習モデルの学習を行い、解析モデルを構築する。例えば、
図6に示すように、計算部21は、過去における監視対象の24時間単位のデータを学習日数分だけ抽出して、学習を行って解析モデルを構築する。オートエンコーダの他にも、計算部21は、例えば、ロバスト主成分分析などの統計的手法を用いることができる。
【0066】
構築された解析モデルは、記憶部22に格納される。このように、計算部21は、事前の学習によって構築された解析モデルを用いて、解析対象とする特定の監視対象のデータにおける異常指標値を計算する。より詳細には、
図7の(a)に示すように、計算部21は、異常が発生しているか否かを検証したい日のデータを収集された監視対象のデータから抽出して、日数×24時間の行列の形に整形し、(b)に示すように、事前に構築された解析モデルに入力として与える。
【0067】
さらに、計算部21は、
図7の(c)に示すように、実際のデータcと解析モデルより推定した基準パターンc’との差分を計算する。すなわち、計算部21は、オートエンコーダやロバスト主成分分析などを適用し、日数×24時間の入力データのノイズが除去されたデータ(以下、「推定使用量」ということがある。)を計算する。さらに、計算部21は、実際の電力使用量cと推定使用量c’との絶対誤差を計算し、
図7の(d)に示すように、得られた絶対誤差の各日の総和を計算し、異常指標値19.8[kWh]を求める。
【0068】
図4に戻り、出力部24は、計算部21によって得られた異常指標値を出力する(ステップS12)。なお、出力部24は、情報提示装置1からの要求に応じて異常指標値を出力する構成とすることができる。
【0069】
[情報提示システムの構成]
次に、情報提示装置1および異常検出装置2が備える各機能を有する情報提示システムの具体的な構成例について、
図8から
図10を用いて説明する。
【0070】
図8は、情報提示システムの一例を示すブロック図である。
図8の例では、通信ネットワークNWを介して接続されているサーバ(第1サーバ装置)200と、複数のクライアント210とを備える。
【0071】
サーバ200は、
図1で説明した異常検出装置2の各機能を備える。サーバ200は、クラウドサーバなどのWebサーバを用いることができる。
【0072】
クライアント210は、
図1で説明した情報提示装置1の各機能を備える。クライアント210は、タブレット端末、ノートパソコンなど表示画面を有する通信端末装置を用いることができる。クライアント210各々は、異なるユーザ、例えば、設備保全員、運転オペレータ、および予算管理者など、プラントの管理および監視業務を異なる管理指標を用いて行うユーザによって用いられる。したがって、各クライアント210が備える第1ドメイン知識DB12、および第2ドメイン知識DB14には、それぞれ異なる情報が登録されている。
【0073】
また、
図8において、サーバ200が、異常検出装置2の各機能に加え、情報提示装置1が備える取得部10、変換部13、判別部15、抽出部16、第1ドメイン知識DB12、および第2ドメイン知識14を備える構成とすることもできる。この場合、各クライアント210は、提示部17を備える。
【0074】
なお、サーバ200は、通信ネットワークNWを介してクライアント210と接続されている場合に限らない。例えば、サーバ200が検出した異常指標値が記憶媒体に格納され、各クライアント210にオフライン環境でロードされる構成とすることもできる。
【0075】
次に、情報提示システムの別の構成例を
図9を用いて説明する。
図9の例では、サーバ200、複数のクライアント210、および別のサーバ(第2サーバ装置)220をさらに備える。
【0076】
サーバ200は、
図1で説明した異常検出装置2の各機能を備える。
サーバ220は、
図1で説明した情報提示装置1が有する取得部10、変換部13、判別部15、抽出部16、第1ドメイン知識DB12、および第2ドメイン知識14を備える。サーバ220は、クラウドサーバなどのWebサーバを用いることができる。
各クライアント210は、情報提示装置1が有する提示部17の機能を備える。
【0077】
また、
図9に示すサーバ220の代わりに、
図10に示すように、クライアント210a、210b、210cごとに通信ネットワークNW上に設置されたサーバ220a、220b、220cを備え、各サーバ220は、情報提示装置1が備える取得部10、変換部13、判別部15、抽出部16、第1ドメイン知識DB12、および第2ドメイン知識14を有することができる。クライアント210a、210b、210cは提示部17を備え、対応するサーバ220a、220b、220cでの判別結果に基づいて提示処理を行うことができる。
【0078】
なお、情報提示システムの構成は、
図8から
図10に示した具体例に限らず、情報提示装置1および異常検出装置2が備える各機能を備えれば、どのように分散されていてもよい。
【0079】
以上説明したように、本実施の形態によれば、監視対象のデータの異常指標値を、異常指標値に関するカテゴリとユーザが監視を有するカテゴリとの対応関係である予め設定された定量的ルールを用いて、変換値に変換する。また、変換値の閾値に関し値予め設定された基準に基づいて変換値をユーザに提示するか否かを判別する。また、変換値を提示すると判別された場合に、変換値の変換前のデータである異常指標値が異常検出装置2で解析された際に用いられた監視対象のデータを監視対象データ23に記憶された履歴データから抽出する。さらに、提示部17は、提示すべきと判別された変換値を比較可能な態様にて抽出された監視対象のデータと共にユーザに提示する。そのため、監視対象のデータにおいて検出された多数の異常を適切な観点から選別してユーザに提示することができる。
【0080】
また、本実施の形態によれば、同一の異常指標値に基づいて、ユーザ側でユーザ各々に必要な情報を選別することができるので、より柔軟な情報提示システムを構築し、さらには、より確実なデータ監視システムに資することができる。
【0081】
なお、説明した実施の形態では、ユーザが許容できる電力の損失金額の最大量に基づいた閾値を第2ドメイン知識として用いて、ユーザに提示する情報を判別した。しかし、第2ドメイン知識として複数の条件が第2ドメイン知識DB14に登録されていてもよい。
【0082】
具体的には、上記閾値と、例えば、プラントの運用に関する情報として、例えば、イベント日のカレンダーを用いて、事前に予定されている電力消費の増加の発生が生ずるイベント日を除外する条件とを組み合わせることができる。この場合、判別部15は、変換値が閾値を超え、かつイベント日ではない日の変換値を第2ドメイン知識の基準を満たす提示すべき変換値として判別する。また、提示部17は、電力の損失金額が閾値を超えた日のトレンドデータと、その日の損失金額を表示装置108に表示させることができる。
【0083】
また、説明した実施の形態では、
図1で説明したように、情報提示装置1の外部に異常検出装置2が設置されている場合について説明したが、情報提示装置1が、異常検出装置2を備える構成を採用してもよい。この場合、例えば、化学プラントなどのプラントにおける監視制御装置として1台のPCに情報提示装置1および異常検出装置2の各機能を備えることができる。
【0084】
[変形例1]
次に、上述した実施の形態の変形例1に係る情報提示装置1、異常検出装置2、およびこれらを備える情報提示システムについて
図11および
図12を参照して説明する。
【0085】
上述した実施の形態では、
図5から
図7で説明したように、異常検出装置2において、収集部20が収集した監視対象のデータの全ての過去の履歴データを用いて解析モデルが生成された。これに対して、変形例1では、異常検出装置2では、収集部20によって収集された監視対象のデータのうち、一部の履歴データを用いて解析モデルを生成する。
【0086】
変形例1に係る情報提示装置1、異常検出装置2、およびこれらを備える情報提示システムの構成は、上述した実施の形態と同様である。
【0087】
図11に示すように、異常検出装置2において予め生成され記憶部22に格納されている解析モデルは、例えば、異常かどうかを検証したい日のデータc(
図11の(a))に類似するデータを、収集部20が収集した過去の履歴データ(
図11の(b))から取得して(
図11の(c)のデータc’、c’’)生成される。ここで、異常かどうかを検証したい日のデータcに類似するデータc’、c’’とは、例えば、ユークリッド距離、ミンコフスキー距離、コサイン類似度などの指標に基づいて、監視対象データ23に蓄積されている過去の履歴データから取得される。
【0088】
このように、過去の履歴データの一部(
図11の(c)のデータc’、c’’)に基づいて、主成分分析やオートエンコーダなどにより生成された解析モデルは、記憶部22に格納される。
【0089】
このような解析モデルを用いて計算部21が異常指標値を算出した場合には、情報提示装置1が備える提示部17は、判別部15がユーザに提示すべきと判別した変換値(例えば、エネルギーの損失金額)と、抽出部16が抽出した、上記解析モデルが生成される際に用いられた監視対象のデータc’、c’’についても、ユーザに提示する。
【0090】
図12は、提示部17による提示例を示している。提示部17は、表示装置108にユーザに提示すべきと判別された変換値である「本日の損失額:297円」および、変換値が変換される前の異常指標値が求められる際に用いられた過去の監視対象のデータの一部(データc’、c’’)を表示させることができる。
【0091】
以上説明したように、変形例1によれば、提示部17は、判別部15がユーザに提示すべきと判別した変換値とあわせて、解析モデルが生成される際に用いられた異常かどうかを検証したい日のデータcに類似するデータc’、c’’をユーザに提示する。そのため、ユーザは、提示された変換値が、基準となる類似のデータからどの程度どのように逸脱したかを一目で比較し把握することができる。
【0092】
[変形例2]
次に、本実施の形態の変形例2について
図13を参照して説明する。上述した実施の形態では、監視対象のデータとして、電力使用量のデータを用いる場合について説明した。変形例2では、監視対象のデータとして、プラントにおけるガスの使用量データを用いた例について
図3および
図4のフローチャートを用いて説明する。なお、変形例2に係る情報提示装置1、異常検出装置2、およびこれらを備える情報提示システムの構成は、上述した実施の形態と同様である。
【0093】
まず、
図4のフローチャートに示すように、異常検出装置2の収集部20は、例えば、1日1サンプルのガスの使用量データを収集する(ステップS10)。収集されたデータは、監視対象データ23に蓄積される。
図10の上段に示す時系列データは、収集部20によって収集されたガスの使用量データgを示している。
図10に示されるように、ガスの使用量データgは、8月の夏場に向けて冷房を本格稼働したことで、破線で示す時期以降にガスの使用量が増加していることがわかる。
【0094】
計算部21は、カーネル変化点検知などの時系列変化点検知手法により、収集されたデータにおける変化点スコアを計算し、変化点スコアに基づいて異常指標値を算出する(ステップS11)。
図10の下段に示すように、計算部21は、変化点スコアを異常指標値として算出する。
【0095】
その後、出力部24は、計算部21によって求められた変化点スコアを異常指標値として出力する(ステップS12)。
【0096】
次に、
図3のフローチャートを用いて、本変形例2における情報提示装置1の動作について説明する。本例では、ユーザはプラントの施設管理者であり、プラントにおけるガスの使用量データの異常指標値を、金銭的な損失の発生の側面から管理する。特に、ユーザは、想定外な大きな金銭的損失が生じたことを把握し対策を行うことが求められる。
【0097】
まず、取得部10は、異常検出装置2が算出した異常指標値を取得する(ステップS1)。次に、変換部13は、第1ドメイン知識DB12を参照する(ステップS2)。第1ドメイン知識DB12には、ガスの単価、例えば、2[円/m3]が第1ドメイン知識として登録されている。
【0098】
次に、変換部13は、異常指標値と第1ドメイン知識であるガスの単価とに基づいて、異常指標値を、損失金額の表現形式で表される変換値に変換する(ステップS3)。より詳細には、変換部13は、異常指標値として得られた変化点スコアから極大値を抽出し、変化点を決定する(
図13の上段のガスの使用量データの破線)。また、変換部13は、決定された変化点前後の各区間において1日当たりのガスの使用量とガスの単価との積を求め、その差を求めて、変化点前後の平均損失金額を算出する。
【0099】
すなわち、変換部13は、
図13の上段に示す区間P1のガスの平均使用量を[区間内のガスの使用量の総和/区間の日数]により計算する。さらに、変換部13は、[(区間P1のガスの平均使用量[m
3]-区間P2のガスの平均使用量[m
3])×2[円/m
3]]により、ガスの平均使用量の増減を示す変換値を求める。
図10の上段に示すように、変化点よりも前の区間(期間)の平均損失金額は、205[円/m
3]であり、変化点よりも後の区間(期間)の平均損失金額は395[円/m
3]と計算される。また、変換値は、380[円]と算出される。
【0100】
変換部13は、変換値380[円]を出力する(ステップS4)。次に、判別部15は、第2ドメイン知識DB14を参照する(ステップS5)。第2ドメイン知識DB14には、プラントの運用の変更によって生ずるガスの平均使用料金の増加量に基づいた閾値が第2ドメイン知識として登録されている。
【0101】
判別部15は、プラントの運用の変更によって生ずるガスの平均使用料金の増加量を示す変換値380[円]が、閾値を超えている場合には、その変換値をユーザに提示すべきと判別する(ステップS6)。次に、抽出部16は、変換値が変換される前の異常指標値であるガスの使用量が異常検出装置2において解析される際に用いられた監視対象のデータであるガスの使用量データを監視対象データ23から抽出する(ステップS6)。
【0102】
その後、提示部17は、判別部15によって判別された、ユーザに提示すべき変換値である平均使用料金の増加分[円]および変化が生じた日付を表示装置108に表示させる(ステップS7)。
【0103】
以上説明したように、変形例2によれば、ガスの使用量のデータ[m3]を監視対象とした場合に、プラントの運用変更によって生ずる平均使用料金の増加量[円]に変換し、さらに、増加量[円]の閾値を超えた場合に、ユーザに提示すべき変換値としてユーザにその増加量を基準となるデータと比較可能に提示することができる。
【0104】
以上、本発明の情報提示装置、情報提示方法、および情報提示システムにおける実施の形態について説明したが、本発明は説明した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に記載した発明の範囲において当業者が想定し得る各種の変形を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0105】
1…情報提示装置、2…異常検出装置、10…取得部、11,22…記憶部、12…第1ドメイン知識DB、13…変換部、14…第2ドメイン知識DB、15…判別部、16…抽出部、17…提示部、20…収集部、21…計算部、23…監視対象データ、24…出力部、101…バス、102…プロセッサ、103…主記憶装置、104…通信インターフェース、105…補助記憶装置、106…入出力I/O、107…入力装置、108…表示装置、NW…通信ネットワーク、200,220…サーバ、210…クライアント。