(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02J 9/06 20060101AFI20231003BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20231003BHJP
B60R 16/033 20060101ALI20231003BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20231003BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20231003BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
H02J9/06 110
B62D5/04
B60R16/033 B
B60R16/033 C
H02J7/34 G
H02J1/00 304E
H02J1/00 304H
H02J7/00 302C
H02J7/34 B
(21)【出願番号】P 2019175688
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文彦
(72)【発明者】
【氏名】半澤 弘明
(72)【発明者】
【氏名】幹田 利幸
(72)【発明者】
【氏名】奥田 正貴
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-120624(JP,A)
【文献】特開平08-322163(JP,A)
【文献】国際公開第2001/081120(WO,A1)
【文献】特開昭62-250832(JP,A)
【文献】特開2007-089350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/06
B62D 5/04
B60R 16/033
H02J 7/34
H02J 1/00
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電対象に電力を供給する主電源に対する補助電源と、
前記主電源の電圧を検出する電圧検出回路と、
デジタル信号を取り扱うデジタル回路である電源制御回路であって、前記電圧検出回路を通じて検出される前記主電源の電圧に基づき前記主電源が正常であるか異常であるかを判定し、その判定結果に応じて指示を生成する電源制御回路と、を有する電源装置であって、
前記給電対象へ供給される電力
を取り込み、取り込まれる電力に基づき前記主電源から前記給電対象への給電状態が正常であるか異常であるかを
判定し、その判定結果を示す状態信号を生成するアナログ回路と、
前記状態信号に応じて自己の出力状態を前記給電状態が正常であるときの第1の状態と前記給電状態が異常であるときの第2の状態との間で切り替えて保持する保持回路と、
前記電源制御回路からの指示、または前記保持回路の出力状態に応じて前記給電対象に対する電源を前記主電源と前記補助電源との間で切り替える電源切替回路と、を備え、
前記保持回路は、前記状態信号が前記給電状態の正常を示す状態から異常を示す状態へ変化したとき、自己の出力状態を前記第1の状態から前記第2の状態へ切り替えるとともに、その後の前記状態信号の変化に関わらず前記第2の状態を保持する電源装置。
【請求項2】
前記電源切替回路は、前記主電源から前記給電対象へ電力を供給するための第1の給電経路を開閉する第1の切替回路、および前記補助電源から前記給電対象へ電力を供給するための第2の給電経路を開閉する第2の切替回路を有し、
前記アナログ回路は、前記第1の給電経路における前記第1の切替回路と前記給電対象との間に設定される検出点を通じて取得される電力に基づき前記状態信号を生成する請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記第2の給電経路は、前記第1の給電経路における前記第1の切替回路と前記給電対象との間に接続されている請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記電源切替回路は、前記主電源から前記給電対象へ電力を供給するための第1の給電経路を開閉する第1の切替回路、および前記補助電源から前記給電対象へ電力を供給するための第2の給電経路を開閉する第2の切替回路を有し、
前記アナログ回路は、前記第1の給電経路における前記主電源と前記第1の切替回路との間に設定される検出点を通じて取得される電圧としきい値電圧との比較結果に基づき前記状態信号を生成する請求項1に記載の電源装置。
【請求項5】
前記電源制御回路は、前記主電源が正常であるか異常である
かの判定結果が異常から正常へ切り替わったとき、前記保持回路の出力状態を前記第2の状態から前記第1の状態へ復帰させ
る請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特許文献1には、主電源が失陥したときに給電対象への給電を補助電源によってバックアップする電源装置が記載されている。主電源および補助電源は、給電対象に対して並列に接続されている。電源装置のコントローラは、たとえば主電源から給電対象へ供給される電流に基づき主電源の異常が検出されるとき、主電源と給電対象との間の給電経路を遮断する一方、補助電源と給電対象との間の給電経路を接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製品仕様などによっては、たとえば主電源の電圧としきい値との比較を通じて主電源の異常を判定し、その判定結果に応じて主電源と補助電源とを切り替えることも考えられる。しかしこの場合、つぎのようなことが懸念される。たとえば主電源の電圧がしきい値の近傍で変動する場合、正常判定と異常判定とが繰り返されることによって、主電源と補助電源とが頻繁に切り替わるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、給電対象に対して安定した電力を供給することができる電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成し得る電源装置は、給電対象に電力を供給する主電源に対する補助電源と、前記給電対象へ供給される電力に基づき前記主電源から前記給電対象への給電状態が正常であるか異常であるかを示す状態信号を生成するアナログ回路と、前記状態信号に応じて自己の出力状態を前記給電状態が正常であるときの第1の状態と前記給電状態が異常であるときの第2の状態との間で切り替えて保持する保持回路と、前記保持回路の出力状態に応じて前記給電対象に対する電源を前記主電源と前記補助電源との間で切り替える電源切替回路と、を備えている。前記保持回路は、前記状態信号が前記給電状態の正常を示す状態から異常を示す状態へ変化したとき、自己の出力状態を前記第1の状態から前記第2の状態へ切り替えるとともに、その後の前記状態信号の変化に関わらず前記第2の状態を保持する。
【0007】
この電源装置によれば、アナログ回路により生成される状態信号が、主電源から給電対象への給電状態について正常を示す状態から異常を示す状態へ変化した後、再び正常を示す状態へ復帰した場合であれ、保持回路の出力状態が前回の異常を示す第2の状態に保持される。このため、給電対象に対する電源が主電源から補助電源へ切り替わった後、即時に補助電源から主電源へ復帰することが抑制される。したがって、給電対象に対する電源が主電源から補助電源へ切り替わった後、給電対象には補助電源の電力が安定して供給される。
【0008】
上記の電源装置において、前記電源切替回路は、前記主電源から前記給電対象へ電力を供給するための第1の給電経路を開閉する第1の切替回路、および前記補助電源から前記給電対象へ電力を供給するための第2の給電経路を開閉する第2の切替回路を有していることが好ましい。この場合、前記アナログ回路は、前記第1の給電経路における前記第1の切替回路と前記給電対象との間に設定される検出点を通じて取得される電力に基づき前記状態信号を生成するようにしてもよい。
【0009】
この電源装置によれば、主電源の異常に起因する給電状態の異常のみならず、第1の切替回路の異常に起因する給電状態の異常にも対応することができる。すなわち、給電対象に対する給電状態の異常の原因が主電源であれ第1の切替回路であれ、給電対象に対する電源を主電源から補助電源へ切り替えられる。このため、給電対象に対する給電状態の異常の原因が主電源である場合であれ第1の切替回路である場合であれ、給電対象には補助電源の電力が安定して供給される。
【0010】
上記の電源装置において、前記第2の給電経路は、前記第1の給電経路における前記第1の切替回路と前記給電対象との間に接続されていてもよい。
この電源装置によれば、給電対象に対する電源が主電源から補助電源へ切り替えられたとき、補助電源の電力が第2の給電経路を介して給電対象へ供給される。このとき、補助電源から給電対象への給電状態は正常であるため、アナログ回路は給電対象への給電状態が正常であることを示す状態信号を生成する。しかし、保持回路は、自己の出力状態を第1の状態から第2の状態へ切り替えた後、状態信号の変化に関わらず第2の状態を保持する。このため、給電対象に対する電源が主電源から補助電源へ切り替わった後、即時に補助電源から主電源へ復帰することが抑制される。
【0011】
上記の電源装置において、前記電源切替回路は、前記主電源から前記給電対象へ電力を供給するための第1の給電経路を開閉する第1の切替回路、および前記補助電源から前記給電対象へ電力を供給するための第2の給電経路を開閉する第2の切替回路を有していることが好ましい。この場合、前記アナログ回路は、前記第1の給電経路における前記主電源と前記第1の切替回路との間に設定される検出点を通じて取得される電圧としきい値電圧との比較結果に基づき前記状態信号を生成するようにしてもよい。
【0012】
この電源装置によれば、主電源の電圧変動などに起因して、アナログ回路において給電対象への給電状態が正常であることを示す状態信号と、給電対象への給電状態が異常であることを示す状態信号とが繰り返し生成されるおそれがある。しかし、保持回路は、自己の出力状態を第1の状態から第2の状態へ切り替えた後、状態信号の変化に関わらず第2の状態を保持する。このため、給電対象に対する電源が主電源から補助電源へ切り替わった後、即時に補助電源から主電源へ復帰することが抑制される。すなわち、給電対象に対する電源が主電源と補助電源との間で頻繁に切り替わることが抑えられるため、給電対象に対して安定した電力を供給することができる。
【0013】
上記の電源装置において、前記主電源の電力に基づき前記給電対象に対する給電状態が正常であるか異常であるかを判定するとともに、その判定結果が異常から正常へ切り替わったとき、前記保持回路の出力状態を前記第2の状態から前記第1の状態へ復帰させる制御回路を有していることが好ましい。
【0014】
上記の電源装置によれば、制御回路によって保持回路の出力状態の第2の状態から第1の状態への復帰が適切に制御される。このため、給電対象に対する電源を補助電源から主電源へ適切に復帰させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電源装置によれば、主電源と補助電源との切り替えをより適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】電源装置の第1の実施の形態を適用したステアリング装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施の形態>
以下、電源装置をステアリング装置に適用した第1の実施の形態について説明する。
図1に示すように、ステアリング装置1は、操舵機構2、アシスト機構3、操舵制御装置4、および電源装置5を備えている。
【0018】
操舵機構2は、ステアリング軸11および転舵軸12を有している。ステアリング軸11の第1の端部にはステアリングホイール13が固定される。ステアリング軸11のステアリングホイール13と反対側の端部である第2の端部にはピニオンギア14が設けられている。ピニオンギア14は、転舵軸12に設けられたラックギア15に噛み合っている。ステアリング軸11の回転運動は、ピニオンギア14とラックギア15との噛み合いを介して転舵軸12の軸方向の往復直線運動に変換される。この転舵軸12の往復直線運動が転舵軸12の両端にそれぞれ連結されたタイロッド16,16を介して左右の転舵輪17,17に伝達されることにより、転舵輪17,17の転舵角が変更される。
【0019】
アシスト機構3は、モータ21および減速機22を備えている。モータ21としては三相のブラシレスモータが、減速機22としてはウォームギア機構が採用される。モータ21は減速機22を介してステアリング軸11に連結されている。減速機22は、モータ21の回転を減速し、当該減速した回転力をステアリング軸11に伝達する。すなわち、モータ21のトルクが操舵補助力として減速機22を介してステアリング軸11に伝達されることにより、運転者のステアリング操作が補助される。
【0020】
操舵制御装置4は、電源装置5を介して車載の主電源6に接続されている。主電源6としては、たとえばバッテリが採用される。操舵制御装置4は、電源装置5を介して供給される主電源6の電力を消費して動作する。操舵制御装置4は、車両に設けられる各種のセンサの検出結果に応じてモータ21に対する給電を制御する。センサとしては、たとえばトルクセンサ31および車速センサ32が挙げられる。トルクセンサ31は、ステアリング軸11に設けられて操舵トルクTを検出する。車速センサ32は、車速Vを検出する。操舵制御装置4は、操舵トルクTおよび車速Vに基づき目標アシスト力を演算し、当該目標アシスト力をアシスト機構3に発生させるための電力をモータ21に供給する。
【0021】
<電源装置>
つぎに、電源装置5の構成について説明する。
図2に示すように、電源装置5は、補助電源40、電源切替回路50、電圧検出回路60、電源制御回路70、アナログ判定回路80、およびラッチ回路90を備えている。
【0022】
電源装置5は、主電源6から操舵制御装置4へ電力を供給するための第1の給電経路L1、および補助電源40から操舵制御装置4へ電力を供給するための第2の給電経路L2を有している。第2の給電経路L2は、第1の給電経路L1の接続点P1に接続されている。補助電源40の電力は、第2の給電経路L2および第1の給電経路L1の一部分を介して操舵制御装置4へ供給される。補助電源40としては、電荷を充放電可能とされた蓄電装置、たとえばリチウムイオンキャパシタが採用される。
【0023】
電源切替回路50は、第1の切替回路51、第2の切替回路52、第1の駆動回路53、および第2の駆動回路54を有している。
第1の切替回路51は、第1の給電経路L1における主電源6と接続点P1との間に設けられている。第1の切替回路51は、第1のFET55(field-effect-transistor)および第2のFET56を有している。第1のFET55および第2のFET56はPチャネル型であって、負の電圧が印加されることによりオンする。
【0024】
第1のFET55のソース端子Sは、主電源6の高電位側に接続されている。第1のFET55のドレイン端子Dは、第2のFET56のドレイン端子Dに接続されている。第2のFET56のソース端子Sは第1の給電経路L1を介して操舵制御装置4に接続されている。第1のFET55のゲート端子Gおよび第2のFET56のゲート端子Gは、それぞれ第1の駆動回路53に接続されている。
【0025】
第2の切替回路52は、第2の給電経路L2に設けられている。第2の切替回路52は、第3のFET57および第4のFET58を有している。第3のFET57および第4のFET58はNチャネル型であって、正の電圧が印加されることによりオンする。第3のFET57のドレイン端子Dは、補助電源40の高電位側に接続されている。第3のFET57のソース端子Sは、第4のFET58のソース端子Sに接続されている。第4のFET58のドレイン端子Dは、第2の給電経路L2を介して第1の給電経路L1の接続点P1に接続されている。第3のFET57のゲート端子Gおよび第4のFET58のゲート端子Gは、それぞれ第2の駆動回路54に接続されている。
【0026】
電源制御回路70は、デジタル信号を取り扱うデジタル回路である。電源制御回路70は、電圧検出回路60を介して第1の給電経路L1の接続点P2に接続されている。接続点P2は、第1の給電経路L1における主電源6と第1の切替回路51との間に設定されている。また、電源制御回路70は、第1の駆動回路53および第2の駆動回路54にも接続されている。
【0027】
電源制御回路70は、電圧検出回路60を通じて接続点P2の電圧V2を検出し、この検出される電圧V2に基づき主電源6の異常を検出する。電源制御回路70は、接続点P2の電圧V2としきい値電圧Vth1との比較を通じて主電源6の異常を判定する。しきい値電圧Vth1は、主電源6の電圧低下などの異常を判定する際の基準となる電圧値であって、実験あるいはシミュレーションにより設定される。
【0028】
電源制御回路70は、接続点P2の電圧V2がしきい値電圧Vth1を超えている場合、主電源6は正常である旨判定する。また、電源制御回路70は、接続点P2の電圧V2がしきい値電圧Vth1を超えない状態が設定時間だけ継続する場合、主電源6に異常が発生している旨判定する。所定時間は、ノイズなどに起因する一時的な電圧V2の低下を誤って主電源6の異常として判定することを避ける観点に基づき設定される。
【0029】
ちなみに、電源制御回路70は、第1の駆動回路53を通じて第1の切替回路51のスイッチングを制御可能である。また、電源制御回路70は、第2の駆動回路54を通じて第2の切替回路52のスイッチングを制御可能である。
【0030】
アナログ判定回路80は、主電源6の異常を電源制御回路70とは別個に検出する。アナログ判定回路80は、分圧回路81および比較回路82を有している。
分圧回路81は、分圧抵抗83および分圧抵抗84を有している。これら分圧抵抗83,84は、互いに直列に接続されている。分圧抵抗83の分圧抵抗84と反対側の端部は、第1の給電経路L1の接続点P3に接続されている。この接続点P3は、接続点P1と操舵制御装置4との間に設定されている。分圧抵抗84の分圧抵抗83と反対側の端部は、グランドに接続されている。分圧抵抗83と分圧抵抗84との間の接続点P4は、比較回路82に接続されている。
【0031】
比較回路82は、コンパレータ85およびプルアップ抵抗86を有している。コンパレータ85のプラス入力端子は、分圧回路81における分圧抵抗83と分圧抵抗84との間の接続点P4に接続されている。このため、コンパレータ85のプラス入力端子には、分圧回路81によって分圧された接続点P3の電圧V3が印加される。コンパレータ85のマイナス入力端子は基準端子として設定されている。コンパレータ85のマイナス入力端子に印加される電圧は所定の基準電圧に固定される。コンパレータ85のマイナス入力端子には、図示しない基準電圧生成部により生成される基準電圧として、しきい値電圧Vth2が印加される。コンパレータ85の正側電源端子は、基準電圧生成部に接続されている。コンパレータ85の負側電源端子は、グランドに接続されている。コンパレータ85の出力端子は、ラッチ回路90に接続されている。
【0032】
コンパレータ85は、接続点P3の電圧V3と基準電圧であるしきい値電圧Vth2とを比較し、その比較結果に応じてハイレベルまたはローレベルの制御信号SCを生成する。コンパレータ85は、プラス入力端子に印加される接続点P3の電圧V3が基準電圧であるしきい値電圧Vth2よりも大きい値であるとき、すなわち主電源6が正常であるとき、ハイレベルの制御信号SCを生成する。コンパレータ85は、プラス入力端子に印加される接続点P3の電圧V3が基準電圧であるしきい値電圧Vth2よりも小さい値であるとき、すなわち主電源6が異常であるとき、ローレベルの制御信号SCを生成する。制御信号SCは、主電源6の状態が正常であるか異常であるかを示す状態信号としても機能する。
【0033】
プルアップ抵抗86は、基準電圧生成部とコンパレータ85の出力端子との間に設けられている。プルアップ抵抗86は、コンパレータ85の出力端子から出力される制御信号SCを安定させるために設けられている。
【0034】
ラッチ回路90は、2つの入力信号に基づき出力状態をリセットされた状態またはセットされた状態に保持する。ラッチ回路90は、入力端子としてセット端子Sおよびリセット端子Rを有している。また、ラッチ回路90は、2つの出力端子Q,Q-を有している。セット端子Sは、コンパレータ85の出力端子に接続されている。リセット端子Rは電源制御回路70の出力ポートに接続されている。出力端子Qは第1の駆動回路53および第2の駆動回路54にそれぞれ接続されている。出力端子Q-は使用されない。ただし、出力端子Qと出力端子Q-との関係、すなわち論理レベルは必ず逆になる。ラッチ回路90の真理値表は、表1に示される通りである。
【0035】
【表1】
ラッチ回路90は、表1に示される真理値表に従って、セット端子Sの論理レベルとリセット端子Rの論理レベルとの組み合わせに基づき、出力端子Qの出力状態としての論理レベルを保持する。セット端子Sの論理レベルおよびリセット端子Rの論理レベルの双方がローレベル「0」である場合、出力端子Qの論理レベルはローレベル「0」となる。セット端子Sの論理レベルがローレベル「0」であって、リセット端子Rの論理レベルがハイレベル「1」である場合、出力端子Qの論理レベルはハイレベル「1」となる。セット端子Sの論理レベルがハイレベル「1」であって、リセット端子Rの論理レベルがローレベル「0」である場合、出力端子Qの論理レベルはローレベル「0」となる。セット端子Sの論理レベルおよびリセット端子Rの論理レベルの双方がハイレベル「1」である場合、出力端子Qの論理レベルは前回の論理レベルに維持される(No Change)。
【0036】
第1の駆動回路53は、ラッチ回路90の出力端子の論理レベルがローレベルである場合、第1のFET55のゲート端子Gおよび第2のFET56のゲート端子Gに対してそれぞれ負のゲート電圧Vg1を印加する。第1のFET55および第2のFET56がそれぞれオンするため、主電源6の電力は第1の給電経路L1を介して操舵制御装置4へ供給される。また、第2の駆動回路54は、ラッチ回路90の出力端子の論理レベルがローレベルである場合、第3のFET57のゲート端子Gおよび第4のFET58のゲート端子Gに対してゲート電圧Vg2を印加しない。第3のFET57および第4のFET58がそれぞれオフするため、補助電源40の電力は操舵制御装置4へ供給されない。したがって、主電源6が正常である場合、操舵制御装置4に対する電源は主電源6となる。
【0037】
第1の駆動回路53は、ラッチ回路90の出力端子の論理レベルがハイレベルである場合、第1のFET55のゲート端子Gおよび第2のFET56のゲート端子Gに対してゲート電圧Vg1を印加しない。第1のFET55および第2のFET56がそれぞれオフするため、主電源6の電力は操舵制御装置4へ供給されない。また、第2の駆動回路54は、ラッチ回路90の出力端子の論理レベルがハイレベルである場合、第3のFET57のゲート端子Gおよび第4のFET58のゲート端子Gに対してそれぞれ正のゲート電圧Vg2を印加する。第3のFET57および第4のFET58がそれぞれオンするため、補助電源40の電力は第2の給電経路L2を介して操舵制御装置4へ供給される。したがって、主電源6が異常である場合、操舵制御装置4に対する電源は補助電源40となる。
【0038】
<第1の実施の形態の作用>
つぎに、第1の実施の形態の作用を説明する。
電源制御回路70は、車両電源がオフからオンへ切り替えられた場合、たとえば車両のイニシャルチェック(初期点検)が実行されるとき、第1の駆動回路53を通じて第1のFET55および第2のFET56をそれぞれオンさせるとともに、第2の駆動回路54を通じて第3のFET57および第4のFET58をそれぞれオフさせる。これにより、主電源6の電力が第1の給電経路L1を介して操舵制御装置へ供給される。
【0039】
主電源6が正常である場合、電圧検出回路60を通じて検出される第1の給電経路L1の接続点P2の電圧V2がしきい値電圧Vth1を超えるとともに、第1の給電経路L1の接続点P3の電圧V3がコンパレータ85の基準電圧であるしきい値電圧Vth2を超える。
【0040】
このとき、電源制御回路70は、電圧検出回路60を通じて検出される接続点P2の電圧V2がしきい値電圧Vth1を超えない状態が所定時間だけ継続しないため、主電源6は正常である旨判定する。また、電源制御回路70は、ラッチ回路90に対するローレベルの電気信号SRを生成する。このため、ラッチ回路90のリセット端子Rの論理レベルはローレベル「0」に維持される。また、接続点P3の電圧V3がコンパレータ85の基準電圧であるしきい値電圧Vth2を超えているため、コンパレータ85はハイレベルの制御信号SCを生成する。このため、ラッチ回路90のセット端子Sの論理レベルはハイレベル「1」に維持される。したがって、ラッチ回路90の出力端子Qの論理レベルはローレベル「0」に維持される。ラッチ回路90の各端子と論理レベルとの関係は次式(1)の通りである。
【0041】
(S,R,Q)=(1,0,0) …(1)
電源制御回路70は、車両のイニシャルチェックの完了後、ラッチ回路90を定められた初期状態とするために、ラッチ回路90のリセット端子Rにハイレベルの電気信号SRを印加する。これにより、リセット端子Rの論理レベルはローレベル「0」からハイレベル「1」へ変化する。この場合、ラッチ回路90では前回の出力状態が保持される。このため、出力端子Qの論理レベルはローレベル「0」に維持される。初期状態におけるラッチ回路90の各端子の論理レベルは次式(2)の通りである。
【0042】
(S,R,Q)=(1,1,0) …(2)
式(2)に示されるように、ラッチ回路90の出力端子Qの論理レベルがローレベル「0」に維持されている。このため、第1の駆動回路53は第1のFET55および第2のFET56をそれぞれオンさせる。また、第2の駆動回路54は第3のFET57および第4のFET58をそれぞれオフさせる。すなわち、操舵制御装置4に対する電源が主電源6に切り替えられる。操舵制御装置4には、主電源6の電力が第1の給電経路L1を介して供給される。
【0043】
つぎに、主電源6に異常が発生した場合について説明する。
主電源6に異常が発生することによって、たとえば接続点P3の電圧V3がコンパレータ85の基準電圧であるしきい値電圧Vth2よりも小さい値に低下した場合、セット端子Sにはローレベルの制御信号SCが印加される。このとき、セット端子Sの論理レベルはハイレベル「1」からローレベル「0」へ変化する。また、出力端子Qの論理レベルはローレベル「0」からハイレベル「1」へ変化する。このときのラッチ回路90の各端子の論理レベルは次式(3)の通りである。
【0044】
(S,R,Q)=(0,1,1) …(3)
式(3)に示されるように、ラッチ回路90の出力端子Qの論理レベルがハイレベル「1」に維持されている。このため、第1の駆動回路53は第1のFET55および第2のFET56をそれぞれオフさせる一方、第2の駆動回路54は第3のFET57および第4のFET58をそれぞれオンさせる。すなわち、操舵制御装置4に対する電源が主電源6から補助電源40へ切り替えられる。操舵制御装置4には、補助電源40の電力が第2の給電経路L2および第1の給電経路L1を介して供給される。
【0045】
この補助電源40から操舵制御装置4への給電に伴い、コンパレータ85のプラス入力端子には、分圧回路81によって分圧された接続点P3の電圧V3が印加される。このときの電圧V3は補助電源40の電圧に基づく正常な値を示す。このため、電圧V3は、コンパレータ85の基準電圧であるしきい値電圧Vth2よりも大きい値となる。したがって、コンパレータ85は、ハイレベルの制御信号SCを生成する。このため、ラッチ回路90のセット端子Sの論理レベルはローレベル「0」からハイレベル「1」へ変化する。この場合、ラッチ回路90では前回の出力状態が保持される。このときのラッチ回路90の各端子の論理レベルは次式(4)の通りである。
【0046】
(S,R,Q)=(1,1,1) …(4)
式(4)に示されるように、出力端子Qの論理レベルがハイレベル「1」に維持される。このため、第1の駆動回路53は第1のFET55および第2のFET56をオフした状態に維持する一方、第2の駆動回路54は第3のFET57および第4のFET58をオンした状態に維持する。すなわち、操舵制御装置4に対する電源が主電源6から補助電源40へ切り替えられた状態が維持される。操舵制御装置4に対する電源が主電源6から補助電源40へ切り替わった後、操舵制御装置4に対する電源が即時に主電源6へ復帰することが回避される。
【0047】
ちなみに、電源装置5としてラッチ回路90を割愛するとともにコンパレータ85により生成される制御信号SCに基づき第1の切替回路51のスイッチング、および第2の切替回路52のスイッチングを制御する構成を採用することも考えられるところ、この構成を採用する場合、つぎのことが懸念される。
【0048】
前述したように、操舵制御装置4に対する電源が主電源6から補助電源40へ切り替えられることによって、コンパレータ85は主電源6が正常である旨示すハイレベルの制御信号SCを生成する。この制御信号SCに基づき、第1の駆動回路53が第1のFET55および第2のFET56をオンする一方、第2の駆動回路54が第3のFET57および第4のFET58をオフする。すなわち、主電源6の異常が検出されることによって操舵制御装置4に対する電源を主電源6から補助電源40へ切り替えたにもかかわらず、補助電源40の電力が操舵制御装置4へ供給されることに起因して、操舵制御装置4に対する電源が補助電源40から主電源6へ意図せず復帰するおそれがある。この点、本実施の形態では、ラッチ回路90によって補助電源40へ切り替えられた状態が維持される。
【0049】
つぎに、操舵制御装置4に対する電源が補助電源40へ切り替えられている状態において、主電源6が正常な状態に復帰した場合について説明する。
主電源6が正常な状態に復帰することによって、コンパレータ85のプラス入力端子に印加される接続点P3の電圧V3の値がコンパレータ85の基準電圧であるしきい値電圧Vth2を超える。このとき、コンパレータ85はハイレベルの制御信号SCを生成する。このため、セット端子Sの論理レベルは、ローレベル「0」からハイレベル「1」へ変化する。この場合、ラッチ回路90では前回の出力状態が保持されるため、出力端子Qの論理レベルはハイレベル「1」に維持される。このときのラッチ回路90の各端子の論理レベルは次式(5)の通りである。
【0050】
(S,R,Q)=(1,1,1) …(5)
また、主電源6が正常な状態に復帰することによって、電圧検出回路60を通じて検出される接続点P2の電圧V2がしきい値電圧Vth1を超える。電源制御回路70は主電源6が正常な状態へ復帰した旨判定されるとき、ラッチ回路90を初期状態へ復帰させる。具体的には、つぎの通りである。
【0051】
電源制御回路70は、一旦、ラッチ回路90のリセット端子Rにローレベルの電気信号SRを印加する。これにより、リセット端子Rの論理レベルがハイレベル「1」からローレベル「0」へ変化するとともに、出力端子Qの論理レベルがハイレベル「1」からローレベル「0」へ変化する。このときのラッチ回路90の各端子の論理レベルは次式(6)の通りである。
【0052】
(S,R,Q)=(1,0,0) …(6)
式(6)に示されるように、ラッチ回路90の出力端子Qの論理レベルがローレベル「0」に維持されている。このため、第1の駆動回路53は第1のFET55および第2のFET56をそれぞれオンさせる一方、第2の駆動回路54は第3のFET57および第4のFET58をそれぞれオフさせる。すなわち、操舵制御装置4に対する電源が補助電源40から主電源6へ復帰する。操舵制御装置4には、主電源6の電力が第1の給電経路L1を介して供給される。
【0053】
つぎに、電源制御回路70は、ラッチ回路90のリセット端子Rにハイレベルの電気信号SRを印加する。これにより、リセット端子Rの論理レベルはローレベル「0」からハイレベル「1」へ変化する。この場合、ラッチ回路90では前回の出力状態が保持されるため、出力端子Qの論理レベルはローレベル「0」に維持される。すなわち、ラッチ回路90は初期状態へ復帰する。このときのラッチ回路90の各端子の論理レベルは次式(7)の通りである。
【0054】
(S,R,Q)=(1,1,0) …(7)
式(7)に示されるように、ラッチ回路90の出力端子Qの論理レベルがローレベル「0」に維持されている。このため、操舵制御装置4に対する電源が主電源6へ切り替えられた状態に維持される。
【0055】
<第1の実施の形態の効果>
したがって、第1の実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)操舵制御装置4に対する電源が主電源6から補助電源40へ切り替えられた場合、補助電源40から操舵制御装置4への給電開始に伴い第1の給電経路L1の電圧が正常値に復帰した場合であれ、ラッチ回路90によって操舵制御装置4に対する電源が補助電源40へ切り替えられた状態が保持される。このため、操舵制御装置4に対する電源が主電源6から補助電源40へ切り替えられた後、即時に主電源6に復帰することが回避される。したがって、操舵制御装置4には補助電源40の電力が安定して供給される。
【0056】
(2)電源制御回路70は、主電源6が正常な状態に復帰した旨判定されるとき、操舵制御装置4に対する電源を補助電源40から主電源6へ復帰させるための電気信号SRをラッチ回路90のリセット端子Rに印加する。ラッチ回路90の出力端子Qの論理レベルが反転することによって、操舵制御装置4に対する電源が補助電源40から主電源6へ切り替えられる。電源制御回路70によってラッチ回路90の出力端子Qの論理レベルが適切に制御されるため、操舵制御装置4に対する電源を補助電源40から主電源6へ適切に復帰させることができる。また、主電源6の正常状態への復帰が電源制御回路70によってより正確に判定されるため、操舵制御装置4に対する電源を主電源6へ復帰させることに対する信頼性を確保することができる。
【0057】
(3)アナログ判定回路80は、デジタル回路と異なり、操舵制御装置4に対する第1の給電経路L1の電圧を直接判定する。このため、主電源6の異常のみならず、たとえば第1の給電経路L1に設けられる第1の切替回路51の異常によって操舵制御装置4に対する給電が困難となった場合においても、操舵制御装置4に対する電源を主電源6から補助電源40へ切り替えることが可能である。
【0058】
(4)第2の給電経路L2は、第1の給電経路L1における第1の切替回路51と操舵制御装置4との間に接続されている。そして、操舵制御装置4に対する電源が主電源6から補助電源40へ切り替えられたとき、補助電源40の電力が第2の給電経路L2を介して給電対象へ供給される。このとき、補助電源40から操舵制御装置4への給電状態は正常であるため、アナログ判定回路80は操舵制御装置4への給電状態が正常であることを示すハイレベルの制御信号SCを生成する。しかし、ラッチ回路90は、ラッチ回路90は、制御信号SCが給電状態の異常を示すものであるとき、出力端子Qの論理レベルをローレベルからハイレベルへ切り替えるとともに、その後の制御信号SCの変化に関わらず出力端子Qの論理レベルをハイレベルに保持する。このため、操舵制御装置4に対する電源が主電源6から補助電源40へ切り替わった後、即時に補助電源40から主電源6へ復帰することが抑制される。
【0059】
(5)アナログ判定回路80は、接続点P3の電圧V3をデジタル化することなく電圧V3の判定処理を行う。このため、アナログ判定回路80は、電圧V3をデジタル化しない分だけ、操舵制御装置4に対する電源を主電源6と補助電源40との間で迅速に切り替えることができる。
【0060】
<第2の実施の形態>
つぎに、電源装置の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態は、アナログ判定回路80による電圧の監視箇所の点で第1の実施の形態と異なる。
【0061】
図3に示すように、アナログ判定回路80の分圧抵抗83は第1の給電経路L1の接続点P3に接続されているところ、この接続点P3は第1の給電経路L1における主電源6と第1の切替回路51との間に設定されている。電源装置5として、これらの構成を採用した場合、つぎのことが懸念される。
【0062】
すなわち、コンパレータ85のプラス入力端子には分圧回路81によって分圧された接続点P3の電圧V3が印加される。たとえば主電源6の電圧変動に伴い、電圧V3の値がコンパレータ85の基準電圧であるしきい値電圧Vth2の近傍で変動する場合、コンパレータ85により生成される制御信号SCの論理レベルがハイレベルとローレベルとの間で頻繁に切り替わることが懸念される。
【0063】
このため、電源装置5として、コンパレータ85により生成される制御信号SCに基づき第2の切替回路52のスイッチングを制御する構成を採用する場合、操舵制御装置4に対する電源が主電源6と補助電源40との間で頻繁に切り替わることによって、操舵制御装置4へ供給される電力にノイズが生じるおそれがある。ひいては、操舵制御装置4に対して安定した電力を供給することが困難となることが懸念される。
【0064】
この点、本実施の形態によれば、接続点P3の電圧V3の変動に起因して、この電圧V3の値がコンパレータ85の基準電圧であるしきい値電圧Vth2を下回った後、即時にしきい値電圧Vth2を上回る値へ変化するときであれ、ラッチ回路90の出力端子Qの論理レベルはハイレベル「1」に保持される。このため、操舵制御装置4に対する電源が主電源6と補助電源40との間で頻繁に切り替わることを抑制することが可能である。
【0065】
<第2の実施の形態の作用>
つぎに、第2の実施の形態の作用を説明する。
主電源6が正常である場合、電圧検出回路60を通じて検出される第1の給電経路L1の接続点P2の電圧V2がしきい値電圧Vth1を超えるとともに、第1の給電経路L1の接続点P3の電圧V3がコンパレータ85の基準電圧であるしきい値電圧Vth2を超える。
【0066】
車両電源がオフからオンへ切り替えられたとき、電源制御回路70は、主電源6が正常である旨判定する。また、電源制御回路70は、ラッチ回路90に対するローレベルの電気信号SRを生成する。このため、ラッチ回路90のリセット端子Rの論理レベルはローレベル「0」に維持される。また、接続点P3の電圧V3が基準電圧であるしきい値電圧Vth2を超えているため、コンパレータ85はハイレベルの制御信号SCを生成する。これにより、ラッチ回路90のセット端子Sの論理レベルはハイレベル「1」に維持される。したがって、ラッチ回路90の出力端子Qの論理レベルはローレベル「0」に維持される。ラッチ回路90の各端子と論理レベルとの関係は次式(8)の通りである。
【0067】
(S,R,Q)=(1,0,0) …(8)
電源制御回路70は、車両のイニシャルチェックの完了後、ラッチ回路90を初期状態にするために、ラッチ回路90のリセット端子Rにハイレベルの電気信号SRを印加する。これにより、リセット端子Rの論理レベルはローレベル「0」からハイレベル「1」へ変化する。この場合、ラッチ回路90では前回の出力状態が保持されるため、出力端子Qの論理レベルはローレベル「0」に維持される。初期状態におけるラッチ回路90の各端子の論理レベルは次式(9)の通りである。
【0068】
(S,R,Q)=(1,1,0) …(9)
式(2)に示されるように、ラッチ回路90の出力端子Qの論理レベルがローレベル「0」に維持されている。このため、第1の駆動回路53は第1のFET55および第2のFET56をそれぞれオンさせる。また、第2の駆動回路54は第3のFET57および第4のFET58をそれぞれオフさせる。すなわち、操舵制御装置4に対する電源が主電源6に切り替えられる。操舵制御装置4には、主電源6の電力が第1の給電経路L1を介して供給される。
【0069】
この後、主電源6の電圧変動に伴い、接続点P3の電圧V3がコンパレータ85の基準電圧であるしきい値電圧Vth2を下回ったとき、ラッチ回路90のセット端子Sにはローレベルの制御信号SCが印加される。このとき、セット端子Sの論理レベルはハイレベル「1」からローレベル「0」へ変化する。また、出力端子Qの論理レベルはローレベル「0」からハイレベル「1」へ変化する。このときのラッチ回路90の各端子の論理レベルは次式(10)の通りである。
【0070】
(S,R,Q)=(0,1,1) …(10)
式(3)に示されるように、ラッチ回路90の出力端子Qの論理レベルがハイレベル「1」に維持されている。このため、第1の駆動回路53は第1のFET55および第2のFET56をそれぞれオフさせる一方、第2の駆動回路54は第3のFET57および第4のFET58をそれぞれオンさせる。すなわち、操舵制御装置4に対する電源が主電源6から補助電源40へ切り替えられる。操舵制御装置4には、補助電源40の電力が第2の給電経路L2および第1の給電経路L1を介して供給される。
【0071】
この後、主電源6の電圧変動に伴い、接続点P3の電圧V3がコンパレータ85の基準電圧であるしきい値電圧Vth2を再び上回ったとき、ラッチ回路90のセット端子Sにはハイレベルの制御信号SCが印加される。これにより、セット端子Sの論理レベルはローレベル「0」からハイレベル「1」へ変化する。ただし、この場合、ラッチ回路90では前回の出力状態が保持されるため、出力端子Qの論理レベルはハイレベル「1」に維持される。このときのラッチ回路90の各端子の論理レベルは次式(11)の通りである。
【0072】
(S,R,Q)=(1,1,1) …(11)
式(11)に示されるように、出力端子Qの論理レベルがハイレベル「1」に維持される。このため、第1の駆動回路53は第1のFET55および第2のFET56をオフした状態に維持する一方、第2の駆動回路54は第3のFET57および第4のFET58をオンした状態に維持する。すなわち、操舵制御装置4に対する電源が主電源6から補助電源40へ切り替えられた状態が維持される。操舵制御装置4に対する電源が主電源6から補助電源40へ切り替わった後、即時に操舵制御装置4に対する電源が主電源6へ復帰することが回避される。
【0073】
<第2の実施の形態の効果>
したがって、第2の実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(6)主電源6の電圧変動に伴いコンパレータ85のプラス入力端子に印加される接続点P3の電圧V3が変動することに起因して、電圧V3がコンパレータ85の基準電圧であるしきい値電圧Vth2を上回ったり下回ったりすることを繰り返すことが考えられる。この点、本実施の形態によれば、たとえば電圧V3がしきい値電圧Vth2を下回った後、即時にしきい値電圧Vth2を超える値に復帰したときであれ、ラッチ回路90の出力状態が前回の状態、すなわち電圧V3がしきい値電圧Vth2を下回ったときの状態に保持される。このため、操舵制御装置4に対する電源が主電源6と補助電源40との間で頻繁に切り替わることを抑制することができる。したがって、操舵制御装置4へ供給される電力にノイズが生じることが抑制されることにより、操舵制御装置4に対して安定した電力を供給することができる。また、電源装置5としての動作を安定させることができる。
【0074】
(7)電源制御回路70およびアナログ判定回路80は、主電源6の電圧を直接的に検出する。このため、主電源6の電圧をより正確に検出することができる。
<他の実施の形態>
なお、第1および第2の実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
【0075】
・第1のFET55および第2のFET56としてNチャネル型を採用するとともに、第3のFET57および第4のFET58としてPチャネル型を採用してもよい。
・第1のFET55および第2のFET56、ならびに第3のFET57および第4のFET58として機械的なスイッチを採用してもよい。
【0076】
・第2の給電経路L2は第1の給電経路L1に対して独立して設けてもよい。すなわち、補助電源40と操舵制御装置4との間を第2の給電経路L2によって直接接続してもよい。
【0077】
・分圧回路81および比較回路82の具体的な構成は、適宜変更してもよい。たとえば比較回路82としてプルアップ抵抗86を割愛した構成を採用してもよい。
・アナログ判定回路80として、分圧回路81を割愛した構成を採用してもよい。この場合、比較回路82のコンパレータ85には、分圧しない接続点P3の電圧V3に耐えられる程度の耐圧性能をもたせる。また、コンパレータ85の基準電圧であるしきい値電圧Vth2は、コンパレータ85のプラス入力端子に印加される電圧に応じて適宜調節する。
【0078】
・比較回路82は、たとえば接続点P3における電流の値としきい値電流との比較を通じて主電源6の異常を判定するようにしてもよい。
・電源制御回路70として、電圧検出回路60を通じて検出される接続点P2の電圧V2に基づき主電源6の異常を判定する機能を割愛した構成を採用してもよい。この場合、電源制御回路70は、たとえばラッチ回路90の出力端子の論理レベルに基づき、主電源6が正常であるか異常であるかを認識することができる。
【0079】
・電源装置5が適用されるステアリング装置1は、モータ21のトルクを転舵軸12に付与するタイプの電動パワーステアリング装置であってもよい。また、電源装置5が適用されるステアリング装置1は、ステアバイワイヤ式のステアリング装置であってもよい。
【0080】
・電源装置5の給電対象は、操舵制御装置4に限られない。電源装置5の給電対象は、エアバッグ装置の制御装置、あるいはブレーキ装置の制御装置であってもよい。また、電源装置5の給電対象は、無人搬送車あるいは電気自動車における駆動用モータの制御装置であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
4…操舵制御装置(給電対象)、6…主電源、40…補助電源、50…電源切替回路、51…第1の切替回路、52…第2の切替回路、70…電源制御回路(制御回路)80…アナログ判定回路(アナログ回路)、90…ラッチ回路(保持回路)、L1…第1の給電経路、L2…第2の給電経路、P3…接続点(検出点)、SC…制御信号(状態信号)。