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特許7359627タイヤモデルの評価方法及びタイヤモデルの作成方法
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  • 特許-タイヤモデルの評価方法及びタイヤモデルの作成方法 図1
  • 特許-タイヤモデルの評価方法及びタイヤモデルの作成方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】タイヤモデルの評価方法及びタイヤモデルの作成方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20231003BHJP
   G06F 30/23 20200101ALI20231003BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
G06F30/10
G06F30/23
B60C19/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019180240
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021056850
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】尾藤 健介
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-156222(JP,A)
【文献】特開2011-235758(JP,A)
【文献】特開2017-091007(JP,A)
【文献】特開2017-125816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/28
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の要素に分割された有限要素モデルからなるタイヤモデルを評価する方法において、
コンピュータが、前記タイヤモデルを用いた有限要素法による固有値解析を実施して、複数の固有振動数を取得するとともに、取得した複数の前記固有振動数毎に前記タイヤモデルの前記各要素に設定された各節点又は前記各要素の第1物理量を取得する第1ステップと、
前記コンピュータが、前記第1ステップで取得した各固有振動数における前記第1物理量を前記節点毎又は前記要素毎に集約して物理量分布を取得する第2ステップと、
を含むタイヤモデルの評価方法。
【請求項2】
前記コンピュータが、前記第2ステップにおいて、固有振動数毎に重みを付けて前記第1物理量を前記節点毎又は前記要素毎に集約して物理量分布を算出する請求項1に記載のタイヤモデルの評価方法。
【請求項3】
前記コンピュータが、前記第1物理量を取得した前記タイヤモデルから前記第1物理量と異なる第2物理量を取得し、取得した前記第2物理量から各固有振動数の重み係数を算出する請求項2に記載のタイヤモデルの評価方法。
【請求項4】
前記第2物理量が、前記第1物理量と同じ前記タイヤモデルを用いた固有値解析によって取得される物理量である請求項3に記載のタイヤモデルの評価方法。
【請求項5】
前記コンピュータが、一部の前記節点又は前記要素の前記第2物理量、又は、一部又は全部の前記節点又は前記要素の前記第2物理量の所定方向成分から各固有振動数の重み係数を算出する請求項3又は4に記載のタイヤモデルの評価方法。
【請求項6】
前記第1物理量が、前記各要素の応力、歪み、応力及び歪みの少なくとも一方を用いて算出される物理量のいずれか1つを含む物理量である請求項1~5のいずれか1項に記載のタイヤモデルの評価方法。
【請求項7】
コンピュータが、請求項1~6のいずれか1項に記載のタイヤモデルの評価方法を用いて求めた物理量分布からタイヤ性能を改良する部位を特定する第3ステップと、
前記第3ステップで特定した部位の材料特性を変更して前記タイヤモデルを修正する第4ステップと、を含むタイヤモデルの作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤモデルの評価方法及びタイヤモデルの作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤが路面上を転動すると、タイヤは路面との接触により生じた力を受けて振動する。このようなタイヤの振動は、車軸やサスペンション等の伝播経路を伝播して車両室内において騒音を発生させたり、タイヤから放射騒音を発生させたりする。
【0003】
そこで、引用文献1では、有限要素法による固有値解析により、タイヤ断面2次モードにおける振動時の歪みエネルギーの分布を解析し、歪みエネルギーが大きい箇所をタイヤ性能の改良に影響が大きい部位に特定し、当該部位に歪みエネルギーを抑えるための対策を施し、騒音の低減を図ることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-205515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような方法では、固有値解析によって複数の固有振動数が取得されるが、得られた固有振動数毎にタイヤ性能の改良に大きく影響する部位が異なることがある。そのため、固有振動数毎にタイヤ性能の改良に影響が大きい部位を特定し、特定した部位に対策を施す必要があり、作業工数が増大する。加えて、ある固有振動数について行った対策が他の固有振動数に影響を与えることがあり、複数の固有振動数の中から優先して対策するべき固有振動数の判断が困難な場合がある。特に、周波数が大きくなるにつれて固有モードが増加するため、高周波数領域では上記したような問題が顕著になる。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、固有値解析によって取得される固有振動数毎に個別に特定することなく、複数の固有振動数について総合的にタイヤ性能の改良に影響が大きい部位を特定することができるタイヤモデルの評価方法及びタイヤの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のタイヤモデルの評価方法は、複数の要素に分割された有限要素モデルからなるタイヤモデルを評価する方法において、コンピュータが、前記タイヤモデルを用いた有限要素法による固有値解析を実施して、複数の固有振動数を取得するとともに、取得した複数の前記固有振動数毎に前記タイヤモデルの前記各要素に設定された各節点又は前記各要素の第1物理量を取得する第1ステップと、前記コンピュータが、前記第1ステップで取得した各固有振動数における前記第1物理量を前記節点毎又は前記要素毎に集約して物理量分布を取得する第2ステップと、を含むものである。
【0008】
また、本発明のタイヤモデルの作成方法は、 コンピュータが、上記タイヤモデルの評価方法を用いて求めた物理量分布からタイヤ性能を改良する部位を特定する第3ステップと、前記第3ステップで特定した部位の材料特性を変更して前記タイヤモデルを修正する第4ステップと、を含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、固有値解析によって取得される複数の固有振動数について総合的にタイヤ性能の改良に大きく影響する部位を特定することができるため、作業工数を抑えつつ当該部位を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の方法を示すフロー図
図2】第1物理量の物理量分布の一例を示す図
図3】第2実施形態の方法を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態にかかるタイヤモデルの評価方法を用いてタイヤ性能を改良するために有効な部位を特定する方法を示すフローチャートである。
【0013】
本実施形態の方法は、コンピュータを用いて実施することができる方法であって、タイヤの有限要素モデル(以下、タイヤFEモデルという)を用いた固有値解析によって得られる振動特性情報を用いて、タイヤFEモデルにおける第1物理量の分布を求める。
【0014】
ます、ステップS1において、対象とするタイヤに対して、基準となるタイヤFEモデルを作成又は用意する。具体的には、自然平衡状態のタイヤ断面積を基準形状とし、この基準形状を有限要素にてモデルを作成して、内部構造を含むタイヤ断面形状を表すと共にメッシュ分割によって複数の要素に分割されたタイヤFEモデルを作成又は用意する。
【0015】
次いで、ステップS2において、固有値解析を実施する。詳細には、タイヤFEモデルを仮想リムに装着するとともに、境界条件の設定を行う。境界条件としては、タイヤの内圧や仮想リムの軸に付与する荷重などが挙げられる。そして、タイヤFEモデルを用いた有限要素法による固有値解析を実施して、複数の固有振動数及び固有モードを含む振動特性情報を取得するとともに、取得した固有振動数毎にタイヤFEモデルの各節点又は各要素について第1物理量を取得する。
【0016】
第1物理量とは、タイヤ性能を判断する際に基礎となる物理量であって、例えば、応力、歪み、応力及び歪みの少なくとも一方を用いて算出される物理量(例えば、歪みエネルギーや、歪みエネルギーを要素の体積で除した歪みエネルギー密度等)、振動速度、加速度、変位量等が挙げられる。応力、歪みは要素毎に取得され、応力及び歪みの少なくとも一方を用いて算出される物理量も要素毎に取得される。振動速度、加速度、変位量は、節点毎に取得される。なお、本実施形態では、第1物理量としてタイヤFEモデルの要素毎に歪みエネルギー密度を取得する。
【0017】
次いで、ステップS3において、ステップS2で固有振動数毎に取得した第1物理量を節点毎又は要素毎に集約して物理量分布を取得する。例えば、ステップS2においてN個(Nは2以上の整数)の固有振動数が取得される場合、n番目の固有振動数におけるi番目の要素の歪みエネルギー密度がF(i,n)とすると、固有振動数毎に取得した歪みエネルギー密度を要素毎に集約した物理量分布の関数A(i)は下記式(1)次のように表される。
【式1】
【0018】
なお、固有振動数毎に取得した第1物理量を節点毎又は要素毎に集約する場合、上記のように単に加算してもよく、上記のように加算したものを固有振動数の個数で除して平均値を求めてもよい。また、固有振動数毎に重み係数を第1物理量に乗じてから節点毎又は要素毎に加算したり、その加算値を固有振動数の個数で除して平均値を求めたりしてもよい。
【0019】
次いで、ステップS4において、得られた第1物理量の物理量分布が目的性能を達成しているか否か判定する。この判定は、種々の方法を採用することができる。一例を挙げると、物理量分布において歪みエネルギー密度が所定範囲を超える部位を特定し、当該部位を、タイヤ性能を改良するために材料特性の変更が有効な部位とすることができる。
【0020】
次いで、物理量分布において第1物理量が所定範囲を超える部位がある場合(ステップS4のNo)、タイヤFEモデルが目的性能を達成していないとして、ステップS5に進み、ステップS4で特定した部位の材料特性を変更するようにタイヤFEモデルを修正する。
【0021】
なお、ステップS3において取得した第1物理量の物理量分布について、タイヤFEモデル内の各節点又は各要素の第1物理量の最小値から最大値までを線形に表示ダイナミックレンジの階調(例えば、256階調)に階調を割り当てるようにして、図2に例示するように第1物理量の物理量分布を可視化してもよい。これにより、タイヤ性能を改良するために有効な部位を容易に特定することができる。
【0022】
タイヤFEモデルを修正した後、ステップS2に戻って変更したタイヤFEモデルの固有振動数や第1物理量等を取得するとともに物理量分布を取得し(ステップS2~S3)、再び、物理量分布が目的性能を達成しているか否か判定する(ステップS4)。このようなタイヤFEモデルの修正(ステップS5)と、修正したタイヤFEモデルの物理量分布の取得(ステップS2~S3)と、取得した物理量分布が目的性能を達成しているか否か判定(ステップS4)とを、タイヤFEモデルが目標性能を達成するまで繰り返し実行する。
【0023】
そして、物理量分布が目的性能を達成すると上記制御を終了し、得られたタイヤFEモデルに基づいてタイヤを製造する。
【0024】
本実施形態では、タイヤFEモデルを用いた固有値解析によって複数の固有振動数を取得し、複数の固有振動数における第1物理量を節点毎又は要素毎に集約して物理量分布を取得する。取得された物理量分布を用いることで複数の固有振動数について総合的にタイヤ性能を評価することができる。
また、本実施形態で得られた物理量分布に基づいてタイヤ性能を改良するために有効な部位を特定することで、複数の固有振動数毎にタイヤ性能の改良に影響が大きい部位を特定する必要がなく、複数の固有振動数について総合的にタイヤ性能の改良に影響が大きい部位を特定することができ、タイヤ性能が改良されたタイヤを低コストに設計し、製造することができる。
【0025】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について、図3に基づいて説明する。
【0026】
本実施形態では、第1物理量と異なる物理量である第2物理量に基づいて固有振動数毎に重み係数Wを算出し、固有振動数毎に算出した重み係数Wを第1物理量に乗じてから節点毎又は要素毎に第1物理量を集約する点で、上記した第1実施形態と相違する。
【0027】
詳細には、図3に示すように、ステップS11において、対象とするタイヤの自然平衡状態のタイヤ断面積を基準形状とし、この基準形状を有限要素にてモデルを作成して、基準となるタイヤFEモデルを作成又は用意する。
【0028】
次いで、ステップS12において、タイヤFEモデルを仮想リムに装着するとともに、境界条件の設定を行った後、タイヤFEモデルを用いて有限要素法による固有値解析を実施して、複数の固有振動数及び固有モードを含む振動特性情報を取得するとともに、取得した固有振動数毎にタイヤFEモデルの各節点又は各要素について第1物理量及び第2物理量を取得する。
【0029】
第1物理量とは、タイヤ性能を判断する際に基礎となる物理量であって、応力、歪み、応力及び歪みの少なくとも一方を用いて算出される物理量等、上記した第1実施形態の第1物理量と同様の物理量が挙げられる。なお、本実施形態では、第1物理量としてタイヤFEモデルの要素毎に歪みエネルギー密度を取得する。
【0030】
第2物理量とは、重み係数Wの算出に用いられる物理量であって、例えば、振動速度、振動変位、加速度、軸変位、速度等の物理量が挙げられる。なお、振動速度、振動変位、加速度、軸変位、速度は、節点毎に取得される。
【0031】
次いで、ステップS13において、ステップS12で取得した第2物理量から各固有振動数の重み係数Wを算出する。重み係数Wの算出には、タイヤFEモデルの全ての節点又は要素の第2物理量を用いてもよいが、一部の節点又は要素の第2物理量を用いたり、一部の節点又は要素の第2物理量の所定方向成分を用いたり、あるいは、全ての節点又は要素の第2物理量の所定方向成分を用いて各固有振動数の重み係数を算出してもよい。
【0032】
ここでは、第2物理量から各固有振動数の重み係数Wを算出する例として、各節点の振動速度を第2物理量として取得し、タイヤFEモデルのタイヤ外表面に位置する節点の振動速度の法線方向成分を用いて各固有振動数の重み係数Wを算出する場合について説明する。
【0033】
具体的には、固有振動数と、各節点の点群密度(基準となる節点を中心とする単位面積に含まれる節点の個数)の逆数と、タイヤ外表面に位置する節点での法線方向の固有ベクトルとを乗じたベクトルを、固有振動数毎にタイヤ外表面に位置する全ての節点について足し合わせて、各固有振動数に適用する重み係数Wを取得する。つまり、タイヤ外表面にJ個(Jは2以上の整数)の節点が存在する場合、n番目の固有振動数をωn、タイヤ外表面に位置するj番目の節点のタイヤ外表面に対する法線方向の固有ベクトルEj、j番目の節点の点群密度ρjとすると、n番目の固有振動数に適用する重み係数がWnは、下記式(2)次のように表される。
【式2】
【0034】
次いで、ステップS14において、ステップS12で取得した第1物理量にステップS13で算出した重み係数Wnを固有振動数毎に乗じ、固有振動数毎に重み係数Wnを乗じた第1物理量を節点毎又は要素毎に集約して物理量分布を取得する。
【0035】
例えば、ステップS12においてN個(Nは2以上の整数)の固有振動数が取得される場合、n番目の固有振動数におけるi番目の要素の歪みエネルギー密度がF(i,n)、n番目の固有振動数に適用する重み係数がWnとすると、固有振動数毎に重み係数Wnを乗じた歪みエネルギー密度を節点毎又は要素毎に集約した物理量分布A(i)は下記式(3)次のように表される。
【式3】
【0036】
なお、第1物理量を節点毎又は要素毎に集約する場合、上記のように固有振動数毎に重み係数を第1物理量に乗じてから節点毎又は要素毎に加算してもよく、あるいはまた、その加算値を固有振動数の個数で除して平均値を求めてもよい。
【0037】
次いで、ステップS15において、得られた第1物理量の物理量分布が目的性能を達成しているか否か判定する。この判定は、種々の方法を採用することができる。一例を挙げると、物理量分布において歪みエネルギー密度が所定範囲を超える部位を特定し、当該部位を、タイヤ性能を改良するために材料特性の変更が有効な部位とすることができる。
【0038】
そして、物理量分布において第1物理量が所定範囲を超える部位がある場合(ステップS15のNo)、タイヤFEモデルが目的性能を達成していないとして、ステップS16に進み、ステップS15で特定した部位の材料特性を変更するようにタイヤFEモデルを修正する。
【0039】
タイヤFEモデルを修正した後、ステップS12に戻って変更したタイヤFEモデルの物理量分布を取得し(ステップS12~S14)、再び、物理量分布が目的性能を達成しているか否か判定する(ステップS15)。このようなタイヤFEモデルの修正(ステップS16)と、修正したタイヤFEモデルの物理量分布の取得(ステップS12~S14)と、取得した物理量分布が目的性能を達成しているか否か判定(ステップS15)とを、タイヤFEモデルが目標性能を達成するまで繰り返し実行する。
【0040】
そして、物理量分布が目的性能を達成すると上記制御を終了し、得られたタイヤFEモデルに基づいてタイヤを製造する。
【0041】
本実施形態では、第1物理量を取得した有限要素モデルと同じモデルから取得した第2物理量に基づいて重み係数Wを固有振動数毎に算出し、算出した重み係数Wを固有振動数毎に第1物理量に乗じてから節点毎又は要素毎に集約して物理量分布を取得する。そのため、タイヤ性能への寄与に応じて各固有振動数の影響を物理量分布へ反映させることができ、より的確にタイヤ性能の改良に影響が大きい部位を特定することができ、タイヤ性能が改良されたタイヤを低コストに設計し、製造することができる。
【0042】
また、タイヤFEモデルの一部の節点の第2物理量を用いたり、第2物理量の所定方向成分を用いたりして各固有振動数の重み係数を算出することで、タイヤFEモデルが振動した際にタイヤ性能への寄与が大きい部位による影響を重み係数Wに反映させることができる。その結果、当該重み係数Wを用いて得られる物理量分布に基づいてより正確にタイヤ性能の改良に影響が大きい部位を特定することができる。
【0043】
特に、本実施形態のようにタイヤFEモデルのタイヤ外表面に位置する節点の振動速度の法線方向成分を用いて各固有振動数の重み係数Wを算出し、当該重み係数Wを用いて得られる物理量分布に基づいてタイヤ性能を改良するために有効な部位を特定することで、タイヤ振動発生時にタイヤ外表面を音源とする放射音の発生に寄与の高い部位を特定することができ、放射音の発生を抑えたタイヤを低コストに設計し、製造することができる。
【0044】
(第2実施形態の変更例1)
第2実施形態では、各節点の振動速度を第2物理量として取得し、タイヤFEモデルのタイヤ外表面に位置する節点の振動速度の法線方向成分を用いて各固有振動数の重み係数Wを算出する場合について説明したが、第2物理量から各固有振動数の重み係数Wを算出する方法は、種々の方法を採用することができる。
【0045】
例えば、第2物理量として各節点の振動速度を取得するのに換えて、各節点の振動変位や加速度を取得し、タイヤFEモデルのタイヤ外表面に位置する節点の振動速度の法線方向成分を用いて各固有振動数の重み係数Wを算出してもよい。
【0046】
また、第2物理量として各節点の振動速度や振動変位や加速度を取得し、タイヤFEモデルのタイヤ外表面のショルダー領域内(タイヤ最大幅を中心として、タイヤ呼び幅にタイヤの偏平率の1/2を乗じた長さとなるタイヤ径方向の領域内)に位置する節点の第2物理量の法線方向成分又はタイヤ幅方向成分を用いて各固有振動数の重み係数Wを算出してもよい。
【0047】
また、第2物理量として各節点の振動速度や振動変位や加速度を取得し、タイヤFEモデルのタイヤ内表面に位置する節点の第2物理量のタイヤ面内方向成分を用いて各固有振動数の重み係数Wを算出してもよい。このように算出された重み係数Wを用いて物理量分布を取得することで、タイヤの空洞共鳴音の発生に寄与の高い部位を特定することができ、空洞共鳴音の発生を抑えたタイヤを低コストに設計し、製造することができる。
【0048】
(第2実施形態の変更例2)
第2実施形態では、第2物理量が、第1物理量と同じモデルを用いた固有値解析によって取得される物理量である場合について説明するが、これに限定されない。
【0049】
例えば、タイヤFEモデルの周囲の空気をモデル化し、当該モデルを用いた固有値解析によって得られる所定の目標位置での音圧や音響パラメータを第2物理量としたり、タイヤFEモデルに装着するリムをモデル化し、当該モデルを用いた固有値解析によって得られる変位、速度、加速度又はジャークを第2物理量としたり、車両の少なくとも一部をモデル化し、当該モデルを用いた固有値解析によって得られる当該モデルの所定箇所で発生する反力を第2物理量としたりするなど、タイヤFEモデルに隣接する領域をモデル化し、当該モデルを用いた固有値解析によって得られる物理量を第2物理量としてもよい。
【0050】
(他の実施形態)
なお、上記した各実施形態では、取得した第1物理量分布に基づいてタイヤ性能を改良するために有効な部位を特定する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、例えば、構造の異なる複数のタイヤ性能を比較したり、タイヤを構成している部材のタイヤ性能への寄与度を取得したりするなど、取得した第1物理量分布に基づいて、タイヤモデルの種々の評価を行うことができる。
【0051】
上記の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
図1
図2
図3