IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立インダストリアルプロダクツの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】回転電機、及び回転電機システム
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/32 20060101AFI20231003BHJP
   H02K 9/04 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
H02K1/32 A
H02K9/04 A
H02K1/32 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019198324
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2021072714
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】郡 大祐
(72)【発明者】
【氏名】西濱 和雄
(72)【発明者】
【氏名】杉本 愼治
(72)【発明者】
【氏名】藤井 克彦
(72)【発明者】
【氏名】千葉 能久
(72)【発明者】
【氏名】里 水里
(72)【発明者】
【氏名】土谷 摂
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-075465(JP,U)
【文献】特開2011-066948(JP,A)
【文献】実開昭58-015467(JP,U)
【文献】実開昭55-153848(JP,U)
【文献】特開2016-158343(JP,A)
【文献】実開昭55-023858(JP,U)
【文献】特開2019-071744(JP,A)
【文献】実開昭59-107553(JP,U)
【文献】特開2019-064450(JP,A)
【文献】特開昭61-109438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00- 1/16
H02K 1/18- 1/26
H02K 1/28- 1/34
H02K 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子鉄心と、前記固定子鉄心の内側に間隙を介して設けられ、回転軸が固定された回転子鉄心を有する回転電機において、
前記固定子鉄心の外周側に軸方向に連続した第1の軸方向通風ダクトが設けられ、また、前記回転子鉄心の内周側に軸方向に連続した第2の軸方向通風ダクトが設けられると共に、
前記第2の軸方向通風ダクトから流れ出る空気の流れを径方向に変更し、前記第2の軸方向通風ダクトから流れ出る空気の全部、或いは一部を、空気の流れで見て前記固定子鉄心の下流側の端部を含む下流側コイルエンドの付近に向けて流す第1の回転子側流路変更ダクトが、前記回転子鉄心の下流側の端部に設けられ、
更に前記第1の回転子側流路変更ダクトの下流に中間回転子鉄心を設けると共に、前記中間回転子鉄心の下流に第2の回転子側流路変更ダクトが設けられている
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、
空気の流れで見て前記固定子鉄心の下流側の端部に、前記第1の回転子側流路変更ダクトからの空気を径方向に流す固定子側流路変更ダクトが配置され、
前記固定子側流路変更ダクトの下流側に、前記固定子側流路変更ダクトを前記固定子鉄心の下流側の端部に押し付けるコアクランプ(固定子)が設けられると共に、前記コアクランプ(固定子)の軸方向厚さが、前記固定子鉄心の外径側より内径側の方が薄く形成されている
ことを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項2に記載の回転電機において、
前記第1の回転子側流路変更ダクトの軸方向の長さが、前記固定子側流路変更ダクトの軸方向の長さよりも長く形成されている
ことを特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項2に記載の回転電機において、
前記固定子側流路変更ダクトには、径方向で内周側から外周側に延びる複数の導風板が形成されており、
前記導風板の内周側の先端側は、先細りした形状に形成されている
ことを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項1に記載の回転電機において、
前記第1の回転子側流路変更ダクトと前記第2の回転子側流路変更ダクトは、同じ形状のものが使用されている
ことを特徴とする回転電機。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の回転電機において、
前記回転子鉄心の内周と前記回転軸の間には、環状の前記第2の軸方向通風ダクトが形成されていると共に、
前記回転子鉄心の内周と前記回転軸とは、放射状に配置された連結バーで固定されている
ことを特徴とする回転電機。
【請求項7】
請求項に記載の回転電機において、
前記コアクランプ(固定子)の径方向の形状は、前記固定子鉄心の径方向の形状と同一形状、或いは略相似形状に形成されている
ことを特徴とする回転電機。
【請求項8】
請求項7に記載の回転電機において、
前記第1の回転子側流路変更ダクトには、前記回転子鉄心の径方向に延びる複数の導風板(回転子)が形成されており、隣り合う前記導風板(回転子)の間に通風路(回転子)が形成されている
ことを特徴とする回転電機。
【請求項9】
請求項8に記載の回転電機において、
隣り合う前記導風板(回転子)の間に形成された前記通風路(回転子)には、界磁コイルが配置されている
ことを特徴とする回転電機。
【請求項10】
請求項8に記載の回転電機において、
前記固定子鉄心の下流側の端部には、前記回転子側流路変更ダクトから流れてくる空気を前記固定子鉄心の下流側の端部を含む前記下流側コイルエンドの付近に向けて流す前記固定子側流路変更ダクトが設けられている
ことを特徴とする回転電機。
【請求項11】
請求項10に記載の回転電機において、
前記固定子側流路変更ダクトには、前記固定子鉄心の径方向に延びる複数の導風板(固定子)が形成されており、隣り合う前記導風板(固定子)の間に通風路(固定子)が形成されている
ことを特徴とする回転電機。
【請求項12】
請求項9に記載の回転電機において、
隣り合う前記導風板(固定子)の間に形成された前記通風路(固定子)には、固定子コイルが配置されている
ことを特徴とする回転電機。
【請求項13】
内燃機関によって駆動される主回転電機、及び補助回転電機を備え、前記主回転電機の電力によって車両の駆動輪を駆動する電動機を動作させ、前記補助回転電機の電力によって前記主回転電機、及び前記補助回転電機を冷却する送風ブロワを動作させる回転電機システムにおいて、
少なくとも前記主回転電機が、請求項1乃至請求項12いずれか1項に記載の前記回転電機から構成されている
ことを特徴とする回転電機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機、及びこれを用いた車両用の回転電機システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、内燃機関によって駆動される回転電機は、一般的に回転子に界磁コイルを施した界磁巻線形の同期回転電機が適用されている。これは界磁コイルに通電する励磁電流(直流電流)を制御することで、容易に力率を制御することができるためである。このことから、鉄道車両や大型ダンプトラック等の車両系にも適用されているが、車両系に搭載するための要求仕様として小型化、軽量化が重要となる。
【0003】
一般的に、小型化、軽量化と回転電機の効率はトレードオフの関係にあるため、小型化、軽量化を優先させれば回転電機の効率は低下する。即ち、損失が大きくなることを意味しており、出力の増加と同時に発熱も増加することとなる。このため、小型化、軽量化を優先して回転電機として成立させるためには、冷却性能の向上が必要である。
【0004】
回転電機の冷却は様々な方式があるが、例えば、内燃機関で駆動される回転電機として用いられているのは、軸流開放型の冷却方式である。この軸流開放型の冷却方式は、回転電機のフロント側から冷媒、ここでは空気を供給して回転電機内部を冷却し、リア側から熱交換された高熱の空気を排出するものである。
【0005】
この方式は、冷却方式の中でも構造が簡単であり、冷却性能が高いのが特徴である。冷媒である空気を流すための送風手段は、回転電機と別に設置された電動送風ブロアや回転子に設けられる自冷ファンが使用されている。
【0006】
一般的に軸流開放型での空気の流れは、回転電機の軸方向に流れる。このため、回転電機の軸方向の流入側は空気の温度が低く、軸方向の流出側は回転電機の熱を奪いながら流れるため、空気の温度は高くなる。よって、軸流開放型の冷却方式を採用した回転電機の温度分布は、空気の流出する方向に沿って、温度が高くなる傾向にある。このように、回転電機の温度が最大となるのは空気の流出側となるため、特に軸方向の流出側の回転電機の端部付近を積極的に冷却する必要がある。
【0007】
軸流開放型の冷却方式を適用した回転電機において、軸方向の端部の温度上昇を抑制する手法として種々の手法が検討されているが、その一例として、例えば、国際公開第99/38244号(特許文献1)に記載されたものが知られている。
【0008】
特許文献1においては、固定鉄心の外周側、及び回転子の内部に軸方向に形成した軸方向通風ダクトと、固定子鉄心と回転子鉄心との間のエアギャップとを連通した径方向通風ダクトを、エアギャップを流れる冷却風の下流側40%の範囲にあたる固定子鉄心部分、及び回転子鉄心部分に設けることによって、回転電機の特性低下を抑えつつ、回転電機の冷却効率の向上を図ることができる、と述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第99/38244号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1には、回転電機の特性低下を抑えつつ、回転電機の冷却効率の向上を図ることができる回転電機が開示されている。そして、特許文献1においては、冷却風が流れる下流側の固定鉄心と回転子鉄心に径方向通風ダクトを設けており、その径方向通風ダクトの配置範囲を軸方向のギャップ長さの40%の範囲としている。この場合、回転電機の固定鉄心と回転子鉄心の端部付近に、軸方向に電磁鋼板と交互に径方向通風ダクトが設けられている。
【0011】
特許文献1においては、回転子には軸方向通風ダクトが設けられており、その通風路は貫通している。そのため、流入した空気の一部は軸方向へそのまま流出されてしまい、温度が低い空気を積極的に軸方向端部へ流してしまうので、空気を冷却に利用する意味では不十分となる。また、径方向通風ダクトによって回転電機を流れる空気が流出する側の端部付近を冷却して温度を低減するという条件を満たしているが、最大温度が発生する部位(例えば、リア側のコイルエンド付近)に対して、積極的に冷却して温度分布を平準化する観点では不十分である。
【0012】
この点について、回転電機の極数と固定子のコイルエンドの関係について簡単に説明する。例えば、固定子のコイルは分布巻とし、固定子の外径、毎極毎相スロット数(固定子スロット/極数/相数)を同一とした場合、極数が増えるにつれて固定子コイルのスロット間の跨りは小さくなる。つまり、固定子コイルの跨りが小さくなれば、それに伴い固定子のコイルエンドの軸方向長さも短くなる。
【0013】
図15A図15Bに示しているように、空気が流出する側の固定子40のコイルエンド41の冷却に着目すると、固定子40を形成する固定子鉄心44の外周面とケースであるフレーム42の内周面の間には、空気が通るバックサイドダクト43が設けられており、そのバックサイドダクト43を通過する空気によって固定子40及びコイルエンド41を冷却している。
【0014】
つまり、図15Aに示すように、固定子40のコイルエンド41が軸方向に長ければ、バックサイドダクト43からの空気(Air)にコイルエンド41が晒されやすいため、コイルエンド41付近の温度を低下できる。しかしながら、極数が増えてコイルエンド41の軸方向長さが短くなると、図15Bに示すように、固定子40のコイルエンド41が軸方向に短くなり、固定子鉄心44の「風裏」となるため、コイルエンド41の冷却が不十分となる。
【0015】
このように、空気(Air)の流出側における回転電機で最大温度となる領域は、固定子40の下流側の端部を含むコイルエンド41の付近になる可能性が高いことになる。したがって、固定子40のコイルエンド41の付近を積極的に冷却する手法が必要となる。
【0016】
尚、これ以外に特許文献1においては、回転電機の軸方向において、径方向通風ダクトが磁気抵抗となるため、径方向通風ダクトが無い回転電機と比較すると、回転電機の特性低下を招くことになる。また、回転電機の軸方向に対して、径方向通風ダクトの磁気抵抗が非対称となるため、電磁気的なアンバランスが生じることで、振動や騒音が発生するという副次的な課題も併せ生じることがある。
【0017】
本発明の主たる目的は、流入側の温度が低い空気を積極的に流出側の固定子の端部を含むコイルエンド付近に流して、コイルエンド付近を効果的に冷却する新規な構成を備える回転電機、及び回転電機システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、固定子鉄心と、この固定子鉄心の内側に間隙を介して設けられ、回転軸が固定された回転子鉄心を有する回転電機において、固定子鉄心の外周側に軸方向に連続した第1の軸方向通風ダクトが設けられ、また、回転子鉄心の内周側に軸方向に連続した第2の軸方向通風ダクトが設けられると共に、第2の通風ダクトから流れ出る空気の流れを径方向に変更し、第2の通風ダクトから流れ出る空気の全部、或いは一部を、空気の流れで見て固定子鉄心の下流側の端部を含む下流側コイルエンドの付近に向けて流す回転子側流路変更ダクトが、回転子鉄心の下流側の端部に設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第2の軸方向通風ダクトを介して温度が低い流入側の空気を積極的に固定子の下流側コイルエンドの付近に流して、固定子鉄心の下流側の端部を含む下流側コイルエンドの付近を効果的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態になる回転電機の軸方向の断面を示す断面図である。
図2図1に示す回転電機の軸方向に直交する径方向のA-A面で断面した回転電機の要部拡大断面図である。
図3図1に示す回転電機の軸方向に直交する径方向のB-B面で断面した回転電機の要部拡大断面図である。
図4A図1に示す回転子側エンドダクトの構成を説明する説明図である。
図4B図1に示す固定子側エンドダクトの構成を説明する説明図である。
図5】コイルエンドの温度上昇値を従来と比較した比較説明図である。
図6】本発明の第2の実施形態になる回転電機の軸方向の断面を示す断面図である。
図7A】第1の実施形態による空気の流れを説明する説明図である。
図7B】第2の実施形態による空気の流れを説明する説明図である。
図8】本発明の第3の実施形態になる回転電機の軸方向の断面を示す断面図である。
図9】回転子の流路変更ダクトの軸方向の長さとコイルエンドの温度上昇値の関係を示した説明図である。
図10A】本発明の第4の実施形態になる固定子側エンドダクトの径方向の断面を示す要部拡大断面図である。
図10B】固定子側エンドダクトに使用される導風板の形状を示す説明図である。
図11】本発明の第5の実施形態になる回転電機の軸方向の断面を示す断面図である。
図12】本発明の第6の実施形態になる回転電機の径方向の断面を示す断面図である。
図13A】本発明の第7の実施形態になる回転子のコアクランプの形状を説明する説明図である。
図13B】本発明の第7の実施形態になる固定子のコアクランプの形状を説明する説明図である。
図14】本発明の第8の実施形態になる回転電機システムの構成図である。
図15A】従来の軸方向長が長いコイルエンド付近の構成と空気の流れを説明する説明図である。
図15B】従来の軸方向長が短いコイルエンド付近の構成と空気の流れを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【実施例1】
【0022】
図1は、第1の実施形態となる回転電機の軸方向の断面図である。また、図2図1のA-A矢視断面であり、その一部を拡大して示している。この回転電機は、主にディーゼル機関のような内燃機関と接続されて使用される回転電機である。例えば、出力が数先KVA、回転速度が数千min-1程度の回転電機であり、大型ダンプトラックや鉄道車両の車両用電源として使用される。
【0023】
図1、及び図2において、回転電機100は、回転子1、固定子2を主たる構成要素としており、具体的には回転子鉄心3、回転子鉄心3が固定されたシャフト(請求項でいう回転軸)19、ケースを構成するフレーム12に固定された固定子鉄心4、回転子鉄心3に巻回された界磁コイル5、固定子鉄心4に巻回された固定子コイル6、回転子鉄心3と固定子鉄心4との間に形成されたギャップ7、回転子鉄心3の界磁コイル5の間に設けられたダンパーバー8(図2参照)、界磁コイル5に設けられた回転子楔9(図2参照)、固定子コイル6に設けられた固定子楔10(図2参照)等で構成される。これらの構成は周知の構成であるので、特段の説明は省略する。
【0024】
尚、固定子鉄心4には、空気が流入してくる側に上流側コイルエンド16uが形成され、空気が流出する側に下流側コイルエンド16dが形成されている。尚、「上流側」、「下流側」は冷媒である空気の流れを相対的な基準としており、以下の説明でも同様である。
【0025】
固定子2の更に外周側には、固定子2と固定されるケースとなるフレーム12が配置されており、固定子2とフレーム12の固定部は周方向に所定の間隔で固定されている。そして、フレーム12の内周面との間に、固定子鉄心4の外周面に形成された、軸方向に冷媒である空気を流すためのバックサイドダクト(請求項でいう第1の軸方向通風ダクト)13が設けられている。このバックサイドダクト13は、固定子コイル6より外周側に配置されている。
【0026】
また、回転子鉄心3の内周側に、軸方向に冷媒である空気を流すためのアキシャルダクト(請求項でいう第2の軸方向通風ダクト)11が設けられている。このアキシャルダクト11は、界磁コイル5より内周側に配置されている。
【0027】
尚、固定鉄心や回転子鉄心の内部には、特許文献1にあるような径方向に延びる径方向通風ダクトは形成されていない。これによって、径方向通風ダクトが磁気抵抗となることが回避されて回転電機の特性低下を抑制でき、また、回転電機の軸方向に対して、径方向通風ダクトの磁気抵抗が非対称とならないので、振動や騒音を抑制することができる。
【0028】
回転子鉄心3の両側には、回転子鉄心3を両側から挟み込んで固定する、上流側コアクランプ(回転子)15auと下流側コアクランプ(回転子)15adとが設けられている。これらのコアクランプ(回転子)15au、15adはシャフト19に固定されており、シャフト19と回転子鉄心3の位置決めと固定を行っている。
【0029】
コアクランプ15(回転子)au、15adの径方向の長さは、径方向でアキシャルダクト11を超え、しかも界磁コイル5に至る前の長さに設定されている。そして、上流側コアクランプ(回転子)15auには、アキシャルダクト11に繋がる開口が形成されている。
【0030】
一方、下流側コアクランプ(回転子)15adには、アキシャルダクト11に繋がる開口は形成されないか、或いは所定の流量を流すことができる開口が形成されている。後述する回転子側エンドダクト(請求項でいう回転子側流路変更ダクト)17aには、アキシャルダクト11から軸方向に流れ出る空気の全部、或いは一部を、下流側コイルエンド16dの側に方向転換して径方向に流す機能を備えており、この回転子側エンドダクト17aは、下流側コアクランプ(回転子)15adによって固定されている。そして、回転子側エンドダクト17aに、一部の空気を軸方向下流に逃がす開口がある場合は、下流側コアクランプ(回転子)15adに形成した開口から、一部の空気を軸方向下流に逃がすことも可能である。
【0031】
このように、回転子鉄心3の軸方向で下流側の端部3dと下流側コアクランプ(回転子)15adの間には、回転子側エンドダクト17aが挟持されている。この回転子側エンドダクト17aが本実施形態の特徴となるものであり、これについては後述する。
【0032】
また、固定子鉄心4の両側には、固定子鉄心4を両側から挟み込んで固定する、上流側コアクランプ(固定子)15buと下流側コアクランプ(固定子)15bdとが設けられている。これらのコアクランプ(固定子)15bu、15bdはフレーム12の内周に固定されており、フレーム12と固定子鉄心4の位置決めと固定を行っている。そして、コアクランプ(固定子)15bu、15bdには、バックサイドダクト13に繋がる開口が形成されている。
【0033】
同様に固定子鉄心4の軸方向で下流側の端部4dと下流側コアクランプ(固定子)15bdの間には、固定子側エンドダクト(請求項でいう固定子側流路変更ダクト)17bが挟持されている。尚、本実施形態では固定子側エンドダクト17bを採用しているが、固定子側エンドダクト17bについては、必要なければ省略することもできる。
【0034】
次に、回転電機100の冷却について説明する。図1に示す矢印は空気(Air)の流れを示しており、空気(Air)が流れる流路は、流入側からバックサイドダクト13、ギャップ7、及びアキシャルダクト11に分岐して流れる流路である。
【0035】
バックサイドダクト13に流れる空気(Air)は、特許文献1のように径方向に分岐することなく、そのまま軸方向に流れて主に固定子鉄心4に発生する鉄損、固定子コイル6に発生する銅損に基づく熱を奪って、固定子鉄心4、及び固定子コイル6の温度上昇を抑制する。
【0036】
また、ギャップ7に流れる空気(Air)は、径方向に分岐することなく、そのまま軸方向に流れて、主に固定子鉄心4に発生する鉄損、固定子コイル6に発生する銅損、界磁コイル5に発生する銅損に基づく熱を奪って、固定子鉄心4、固定子コイル6、及び界磁コイル5の温度上昇を抑制する。
【0037】
このように、バックサイドダクト13とギャップ7に流れる空気(Air)は、流入側から流出側に向かって、熱を奪って温度上昇しながら軸方向に流れることになる。したがって、発熱源の大部分は固定子2であるため、最大温度領域は、空気(Air)の流出側の固定子2の下流側の端部4dを含む下流側エンドコイル16dの付近に発生することになり、この部分の冷却が重要である。
【0038】
一方、アキシャルダクト11に流れる空気(Air)は、界磁コイルの5の内周側を流れるので、バックサイドダクト13やギャップ7に流れる空気(Air)に対して、温度上昇の度合は小さくなる。言い換えると、アキシャルダクト11を流れる空気(Air)の流入側と流出側の温度差が、バックサイドダクト13やギャップ7を流れる空気(Air)の温度差に比べて小さくなる傾向にある。つまり、アキシャルダクト11に流れる空気(Air)を利用すれば、冷却効果を大きくできることがわかる。
【0039】
本実施形態はこのアキシャルダクト11に流れる空気(Air)を積極的に利用するものである。すなわち、アキシャルダクト11を軸方向に流れる温度上昇が小さい空気(Air)を、回転子鉄心3の軸方向の下流側の端部3dに位置する下流側エンドダクト17aで受け、回転子側エンドダクト17aを利用して流動方向を径方向に変更して流すことで、固定子2の下流側の端部4dを含む下流側コイルエンド16dの付近を冷却するものである。
【0040】
次に、アキシャルダクト11を軸方向に流れる空気(Air)の流動方向を径方向に変更して流す構成について説明する。図3図1のB-B矢視断面を示し、アキシャルダクト11に流れる空気(Air)の流動方向を、下流側コイルエンド16dの付近に向かう径方向に変更して流すためのエンドダクト17a、17bの構成を示している。尚、図4Aに回転子側エンドダクト17aの構成を示し、図4Bに固定子側エンドダクト17bの構成を示している。
【0041】
図1にあるように、回転子鉄心3の下流側の端部3dと下流側コアクランプ(回転子)15adの間には、回転子側エンドダクト17aが配置され、固定子鉄心4の下流側の端部4dと下流側コアクランプ(固定子)15bdの間には固定子側エンドダクト17bが配置されている。ここで、アキシャルダクト11に流れる空気(Air)の流れの向きを径方向に変える機能は、回転子側エンドダクト17aに持たせてある。
【0042】
図3図4Aに示すように回転子側エンドダクト17aは、回転子鉄心3の軸方向に直交する面で見て、実質的に回転子鉄心3と同じ形状に形成されており、回転子鉄心3の下流側の端部3dの面と協働して、アキシャルダクト11から流れ出た空気を方向転換して径方向に流す通風路17apが形成されている。
【0043】
図4Aに示すように、回転子側エンドダクト17aは、平面状の風路形成面17afを備え、この風路形成面17afに径方向に放射状に延びる導風板17agが形成されており、この導風板17agは軸方向に所定の長さを有して植立されている。これによって上述した通風路17apを形成することができる。導風板17agは、回転子鉄心3の端部3dの面に当接され、導風板17agが形成されている風路形成面17afの反対側の面が下流側コアクランプ(回転子)15adと当接される。
【0044】
つまり、導風板17agが形成されている面とは反対の面が、下流側コアクランプ(回転子)15adによって軸方向に強く押し当てられ、シャフト19に固定されることによって、回転子鉄心3の下流側の端部3dの面と回転子側エンドダクト17aの風路形成面17afの間に通風路17apを形成することができる。
【0045】
このように、導風板17agは通風路17apを形成すると共に、下流側コアクランプ(回転子)15adからの押し付け力を回転子鉄心3に伝えて、回転子鉄心3を固定する機能を備えている。尚、この通風路17apは、導風板17agによって、アキシャルダクト11の内周側から回転子鉄心3の外周付近まで形成されている。
【0046】
また、導風板17agは、界磁コイル5の間に配置、言い換えれば界磁コイル5を挟み込む形態で配置されており、これによって空気を界磁コイル5に確実に接触させて効率良く、また均等に冷却することができる。回転子側エンドダクト17aには、隣り合う導風板17agの間に界磁コイル5が収納される収納空間17acが形成されている。
【0047】
また、固定鉄心4の側も実質的に同じ構成とされている。固定子側エンドダクト17bは、固定子鉄心4の軸方向に直交する面で見て、固定鉄心4と実質的に同じ形状に形成されており、固定子鉄心4の下流側の端部4dの面と協働して、回転子側エンドダクト17aの通風路17apを流れてきた空気を径方向に流す通風路17bpが形成されている。
【0048】
図4Bに示すように、固定子側エンドダクト17bは、平面状の風路形成面17bfを備え、この風路形成面17bfに径方向に放射状に延びる導風板17agが形成されており、この導風板17bgは軸方向に所定の長さを有して植立されている。これによって上述した通風路17bpを形成することができる。導風板17bgは、固定子鉄心4の端部4dの面に当接され、導風板17bgが形成されている風路形成面17bfの反対側の面が下流側コアクランプ(固定子)15bdと当接される。
【0049】
つまり、導風板17bgが形成されている面とは反対の面が、下流側コアクランプ(固定子)15bdによって軸方向に強く押し当てられ、フレーム12に固定されることによって、固定子鉄心4の下流側の端部4dの面と固定子側エンドダクト17bの風路形成面17bfの間に通風路17bpを形成することができる。
【0050】
このように、導風板17bgは通風路17bpを形成すると共に、下流側コアクランプ(固定子)15bdからの押し付け力を固定子鉄心3に伝えて、固定子鉄心4を固定する機能を備えている。尚、この通風路17bpは、固定子鉄心4の内周側から固定子鉄心4の外周付近まで、径方向に放射状に延びる導風板17bgによって形成されている。
【0051】
また、導風板17bgは、固定子コイル6の間に配置、言い換えれば固定子コイル6を挟み込む形態で配置されており、これによって空気を固定子コイル6に確実に接触させて効率良く、また均等に冷却することができる。固定子側エンドダクト17bには、隣り合う導風板17bgの間に固定子コイル6が収納される収納空間17bcが形成されている。
【0052】
ここで、図1に示すように、通風路17bpを流れる空気は、固定子鉄心4の下流側の端部4dを冷却し、一部は下流側エンドコイル16dに流れ、一部はバックサイドダクト13を流れる空気と合流される。これによって、固定子鉄心4の下流側の端部4dを含む下流側エンドコイル16dの付近を、アキシャルダクト11を流れてきた温度が低い空気によって冷却することができる。
【0053】
図1に戻って、回転電機100のフロント側から流入した温度の低い空気は、黒い矢印で示すように、バックサイドダクト13、ギャップ7、及びアキシャルダクト11に流入し、固定子鉄心4、固定子コイル6、回転子鉄心3、界磁コイル5を冷却しながら流出側に流出する。
【0054】
そして、特にアキシャルダクト11から流れ出る空気は、回転子側エンドダクト17aに達すると、回転子側エンドダクト17aに風路形成面17afに衝突して径方向で外側に向けて流れ方向を変更する。流れ方向が変更されたアキシャルダクト11からの空気は、図3に示すように、回転子側エンドダクト17aに形成された通風路17apに沿って外側に向かって流れる。通風路17apを流れる空気は、流入側と流出側の圧力差や、回転子鉄心3の遠心力の作用によって、回転子鉄心3の外周側に移動する。
【0055】
回転子鉄心3の外周側から径方向に流れ出た空気の一部は、ギャップ7を通過する空気によって持ち去られるが、それ以外の空気、及びギャップ7を流れる空気の一部は、固定鉄心4の端部に設けた固定子側エンドダクト17bの通風路17bpに流入する。通風路17bpを流れる空気は、固定子鉄心4の下流側の端部4dを冷却し、一部は下流側コイルエンド16dに流れ、一部はバックサイドダクト13を流れる空気に合流される。
【0056】
このように、バックサイドダクト13やギャップ7を流れる空気に比べて、アキシャルダクト11を流れる温度が低い空気を、固定鉄心4の端部4dに設けた固定子側エンドダクト17bの通風路17bpに流入させることで、固定子鉄心4の下流側の端部4dを含む下流側コイルエンド16dの付近を冷却することができる。
【0057】
上述したコアクランプ15au、15ad、15bu、15bdは、積層した電磁鋼板(回転子鉄心、固定子鉄心)を保持する機能も備えている。そのため、コアクランプ15au、15ad、15bu、15bdは、高剛性を得るため鉄よりも硬い材料や十分な厚さにすることが望ましい。
【0058】
また、コアクランプ15au、15ad、15bu、15bdや回転子側エンドダクト17a、固定子側エンドダクト17bは、一般的には磁性部材となるため、渦電流による損失が発生する。その渦電流による損失を抑えるために、ステンレス等の導電率が低い材料等を使用するのが望ましい。
【0059】
本実施形態で説明した回転電機100は、極数10極、固定子2のスロット数90であるが、他の極数、スロット数としても同様の効果が得られる。また、回転電機100の種類としては、界磁巻線形同期回転電機であるが、誘導回転電機、永久磁石を適用した永久磁石型回転電機に適用しても同様の効果は得られる。更に、固定子コイル6の巻線方式は分布巻としているが、その他の巻線方式としても良いことはいうまでもない。
【0060】
次に、本実施形態の回転電機と、エンドダクトを備えない従来の回転電機の温度上昇の比較結果を説明する。図5にその比較結果を示しており、縦軸を下流側コイルエンド16dの温度上昇値として、従来の回転電機による温度上昇値を1.0にした規格化値(p.u.)としている。図5からわかるように、エンドダクトを設けることで0.1ポイント程度低減することができる。固定子2での最大温度となる、固定子鉄心4の下流側の端部4dであれば、0.1ポイントでも低減できれば、効果として十分である。
【0061】
このように、本実施形態では、固定子鉄心4に軸方向に連続した第1の軸方向通風ダクト(バックサイドダクト)13を設け、また、回転子鉄心に軸方向に連続した第2の軸方向通風ダクト(アキシャルダクト)11を設けると共に、第2の通風ダクトを流れる空気の流れを径方向に変更し、第2の通風ダクトを流れる空気の全部、或いは一部を、空気の流れで見て固定子鉄心の下流側の端部を含む下流側コイルエンドの付近に向けて流す回転子側流路変更ダクトを回転子鉄心の下流側に設ける構成とした。
【0062】
これによれば、第2の軸方向通風ダクト11を介して温度が低い流入側の空気を積極的に固定子2の下流側コイルエンド16付近に流して、固定子鉄心4の下流側の端部4dを含む下流側コイルエンド16の付近を効果的に冷却することができる。
【実施例2】
【0063】
次に本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態と異なるのは、固定子鉄心4の下流側に配置した下流側コアクランプ(固定子)15bdの形状である。尚、これ以外の構成は図1に示す構成と同じである。
【0064】
図6に示すように、下流側コアクランプ(固定子)15bd2の軸方向の厚さは、固定子鉄心4の内周側から外周側に向かって徐々に厚くなっている。尚、本実施形態では対称性を考慮して、上流側コアクランプ(固定子)15bu2の軸方向の厚さも、固定子鉄心4の内周側から外周側に向かって徐々に厚くなっている。
【0065】
図7Aに第1の実施形態の下流側コアクランプ(固定子)15bdにおける径方向の空気の流れを示し、図7Bに第2の実施形態の下流側コアクランプ(固定子)15bd2における径方向の空気の流れを示している。
【0066】
回転子側エンドダクト17aから径方向に流れてきた空気(Air)は、固定子側エンドダクト17bを流れる流路(Fr)と、下流側コアクランプ(固定子)15bdの側に流れる流路(Fa)とに分岐される。図7Aに示す第1の実施形態の場合では、空気(Air)は、下流側コアクランプ(固定子)15bdの径方向に垂直な面に遮られる状態となり、固定子鉄心4の径方向に空気(Air)が流れ難くなる。
【0067】
一方、図7Bに示す第2の実施形態の場合では、下流側コアクランプ(固定子)15bd2は、内周側から外周側に向かって厚さが漸増する形状となっているため、図7Aに示す実施形態に比べて空気(Air)は径方向側に流れ易くなる。これによって、下流側コイルエンド16dが空気(Air)に晒されやすくなるため、下流側コイルエンド16dの温度上昇を抑制することが可能となる。
【実施例3】
【0068】
次に本発明の第3の実施形態について説明する。第2の実施形態と異なるのは、固定子鉄心4の下流側の端部4dに配置した固定子側エンドダクト17bと、回転子鉄心3の下流側の端部3dに配置した回転子側エンドダクト17aの軸方向の長さが異なっている点である。尚、これ以外は図2に示す構成と同じである。
【0069】
図8において、回転子鉄心3の下流側の端部3dに配置した回転子側エンドダクト17aの導風板17agの軸方向の長さ(Lr)は、固定子鉄心4の下流側の端部4dに配置した固定子側エンドダクト17bの導風板17bgの軸方向の長さ(Ls)より長く設定されている。
【0070】
第2の実施形態で説明したように、回転子側エンドダクト17aから径方向に流れてきた空気(Air)は、固定子側エンドダクト17bを流れる流路と、下流側コアクランプ(固定子)15bdの側に流れる流路に分岐される。このため、回転子側エンドダクト17aの軸方向の長さ(Lr)を、固定子側エンドダクト17bの軸方向の長さ(Ls)よりも長くすることで、回転子側エンドダクト17aの流出開口面積が大きくなり、下流側コイルエンド16dに流れる空気(Air)の流量を増やすことができる。
【0071】
ここで、回転子側エンドダクト17aの軸方向の長さ(Lr)と、固定子側エンドダクト17bの軸方向の長さ(Ls)の長さ比(Lr/Ls)による温度低減効果を図9に示している。
【0072】
横軸は、固定子側エンドダクト17bの軸方向の長さ(Ls)に対する回転子側エンドダクト17aの軸方向の長さ(Lr)の長さ比(Lr/Ls)としている。尚、長さ比(Lr/Ls)が「0」の状態は、下流側エンドダクト17aが無い場合を表している。また、縦軸は、下流側コイルエンド16dの温度上昇値を示しており、長さ比(Lr/Ls)が「0」の時の温度上昇値を1.0にした規格化値(p.u.)としている。
【0073】
図9に示すように、長さ比(Lr/Ls)が大きくなると、下流側コイルエンド16dの温度上昇値は減少していく。これは回転子側エンドダクト17aを流れる空気(Air)の流量が増加し、下流側コイルエンド16dに流れる流量が増加したためと考えられる。本実施形態によっても、下流側コイルエンド16dの温度上昇を効果的に抑制することが可能となる。第3の実施形態では、第2の実施形態を基礎としているが、第1の実施形態を基礎として組み合せることも可能である。
【実施例4】
【0074】
次に本発明の第4の実施形態について説明する。第1の実施形態と異なるのは、固定子鉄心4の下流側の端部4dに配置した固定子側エンドダクト17bの導風板17bgの内周側の先端形状が異なっている点である。尚、これ以外は図1に示す構成と同じである。
【0075】
図10A図10Bに示しているように、導風板17bgの内周側には、先細りした形状の尖端部17bdtを形成している。このような尖端部17bdtを形成することで、回転子側エンドダクト17aの側から流れてきた空気(Air)の流入面の圧力損失を低減することが可能となる。これにより、固定子側エンドダクト17bの通風路17bpを通過する空気(Air)の流量を増加でき、固定子鉄心4の下流側の端部4dを含む下流側コイルエンド16dの温度上昇を効果的に抑制することができる。
【実施例5】
【0076】
次に本発明の第5の実施形態について説明する。第1の実施形態と異なるのは、回転子鉄心3の軸方向長さが固定子鉄心4の軸方向長さより長くしたこと、及び回転子鉄心3に2つのエンドダクトを設けた点である。尚、これ以外は図1に示す構成と同じである。
【0077】
図11に示しているように、回転子鉄心3の下流側の端部3dには、空気の流れに沿って、回転子側第1エンドダクト17a-1、中間回転子鉄心3c、回転子側第2エンドダクト17a-2、及び下流側コアクランプ(回転子)15adの順番で配置されている。回転子側第1エンドダクト17a-1と回転子側第2エンドダクト17a-2は、同じ形状のものが使用され、中間回転子鉄心3cも回転鉄心3と同じ形状のものが使用されている。尚、本実施形態では、回転子鉄心3の軸長(RtL)は、固定子鉄心4の軸長(StL)より長く設定されており、「StL<RtL」の関係に決められている。
【0078】
そして、アキシャルダクト11から流れてくる空気(Air)は、回転子側第1エンドダクト17a-1と回転子側第2エンドダクト17a-2から、固定子鉄心4の側の固定子側エンドダクト17bに流れ出ることになる。
【0079】
これによって、多くの空気を固定子鉄心4の側の固定子側エンドダクト17bに供給でき、固定子鉄心4の下流側の端部4dを含む下流側コイルエンド16dの温度上昇を効果的に抑制することができる。特に、回転子側第2エンドダクト17a-2から集中的に下流側コイルエンド16dを冷却することができる。
【実施例6】
【0080】
次に本発明の第6の実施形態について説明する。第1の実施形態と異なるのは、回転子鉄心3に形成したアキシャルダクト11をシャフト19の周囲に形成した点である。尚、これ以外は図1に示す構成と同じである。
【0081】
図12に示すように、回転子鉄心3に設けたアキシャルダクト11をシャフト19の周囲に環状に形成し、シャフト19と回転子鉄心3の内周面との間に連結バー20を周方向に放射状に配置して、シャフト19と回転子鉄心3とを連結、固定している。この構成にすることで、回転子鉄心3に直にアキシャルダクト11を設けた構成に比べて、アキシャルダクト11の径方向での位置はシャフト19の回転中心に近い位置に形成することができる。
【0082】
アキシャルダクト11からエンドダクト17aの径方向に流れる空気(Air)は、回転子鉄心3が回転することによる、ファンアクションの効果も加味される。このファンアクションは圧力として表され、このファンアクションによる圧力は次の(1)式となる。
P=(V ―V )/2……(1)
ここで、Pは圧力、Vは回転子鉄心の外周側の周速度、Vは回転子鉄心の内周側の周速度である。
【0083】
(1)式に示すよう、回転子鉄心3の内周と外周の周速度の差が大きければ圧力も大きくなることを意味している。つまり、回転子鉄心3の内周側の周速度は、アキシャルダクト11の径方向での位置によって決まることとなる。
【0084】
このように、本実施形態によればアキシャルダクト11の径方向での位置をシャフト19の回転中心に近づけて配置できるため、空気(Air)を流れやすくするための圧力Pを大きくすることができる。
【0085】
これにより、回転子側エンドダクト17aの径方向に流れる空気(Air)の流量を増加することができるため、多くの空気を固定子鉄心4の側の固定子側エンドダクト17bに供給でき、固定子鉄心4の下流側の端部4dを含む下流側コイルエンド16dの温度上昇を効果的に抑制することができる。
【実施例7】
【0086】
次に本発明の第7の実施形態について説明する。第1の実施形態と異なるのは、回転子鉄心3、固定子鉄心4を固定するコアクランプの形状を、回転子鉄心3、固定子鉄心4と類似した形状とした点である。尚、これ以外は図1に示す構成と同じである。
【0087】
図13Aは、回転子鉄心3の軸方向から見た下流側コアクランプ(回転子)15adの要部を切り取って拡大したものである。下流側コアクランプ(回転子)15adは、回転子鉄心3の軸方向で見た形状と、同一形状、或いは略相似形状に作られており、界磁コイル5と干渉しないために、コイル収納空間15adcが形成された櫛歯状に形成されている。
【0088】
図13Bは、固定子鉄心4の軸方向で見た下流側コアクランプ(固定子)15bdの要部を切り取って拡大したものである。下流側コアクランプ(固定子)15bdも、固定子鉄心4の軸方向で見た形状と、同一形状、或いは略相似形状に作られており、固定子コイル6と干渉しないために、コイル収納空間15bdcが形成された櫛歯状に形成されている。
【0089】
上述したように、下流側コアクランプ15ad、15bdの機能の1つは、回転子側エンドダクト17a、固定子側エンドダクト17bを介して、回転子鉄心3、及び固定子鉄心4を形成する積層された電磁鋼板を保持、固定するためである。
【0090】
このため、下流側コアクランプ15ad、15bdを回転子鉄心3、及び固定子鉄心4と同一形状、或いは略相似形状に形成すると、回転子鉄心3、及び固定子鉄心4の端部3d、4dに面圧を均一に加え易くなり、回転子鉄心3、固定子鉄心4の剛性をより向上することができる。
【実施例8】
【0091】
次に本発明の第8の実施形態について説明する。第8の実施形態は、上述した回転電機を実際のシステムに展開したものである。
【0092】
図14に示すように、第1の実施形態から第7の実施形態の回転電機は主回転電機100aとして使用される。主回転電機100aのシャフト19には補助回転電機100bが接続されている。また、シャフト19はカップリング21を介して内燃機関200に直結されている。
【0093】
内燃機関200が駆動されることで、主回転電機100a、及び補助回転電機100bから、電力変換器201a、201bへ電力が供給される。電力変換器201aはダンプトラックの駆動用電動機300に電力を供給する。駆動用電動機は駆動輪を回転させて、ダンプトラックを走行させることができる。一方、電力変換器201bは送風ブロア301を回転させて、主回転電機100a、補助回転電機100bを冷却するための空気(Air)を供給することができる。
【0094】
ここで、上述の説明は回転電機として発電機の例を説明したが、回転電機として電動機にも使用することができ、更には、電気自動車のような発電機能と電動機能を備える回転電機にも使用できる。
【0095】
尚、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0096】
1…回転子、2…固定子、3…回転子鉄心、4…固定子鉄心、5…界磁コイル、6…固定子コイル、7…ギャップ、8…ダンパーバー、9…回転子楔、10…固定子楔、11…アキシャルダクト、12…フレーム、13…バックサイドダクト、14…冷媒(空気)、15au…上流側コアクランプ(回転子)、15ad…下流側コアクランプ(回転子)、15bu…上流側コアクランプ(固定子)、15bd…下流側コアクランプ(固定子)、16d…下流側コイルエンド、17a…回転子側エンドダクト、17b…固定子側エンドダクト、19…シャフト、20…連結バー、21…カップリング。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15A
図15B