(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】押出成形型
(51)【国際特許分類】
B28B 3/26 20060101AFI20231003BHJP
B28B 3/20 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B28B3/26 Z
B28B3/20 E
(21)【出願番号】P 2019200975
(22)【出願日】2019-11-05
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 恵生
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘二
(72)【発明者】
【氏名】笹原 克修
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-099854(JP,A)
【文献】特開2018-130872(JP,A)
【文献】特開2015-047733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 3/00- 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中空部を有する成形板を押出成形により製造するための押出成形型であり、
成形材料が流れる流路と、前記流路に通じる押出口と、前記流路内に配置され、前記中空部を成形する成形部材とを備え、
前記成形部材は、前記流路内に保持される支持部と、前記支持部の前記押出口側の端部に支持されている中空成形部及びダミー成形部とを備え、前記中空成形部と前記ダミー成形部とは前記押出口の開口面に沿った一方向に並び、
前記中空成形部は、前記支持部から前記押出口に向けて突出する複数の中空ピン及び複数の第一調整部を備え、前記中空ピンと前記第一調整部とは前記開口面に沿った前記の方向に交互に並び、
前記ダミー成形部は、前記支持部から前記押出口に向けて突出する複数のダミーピン及び複数の第二調整部を備え、前記ダミーピンと前記第二調整部とは前記開口面に沿った前記の方向に交互に並び、
前記ダミーピンは前記中空ピンよりも短く、かつ
前記中空ピン及び前記ダミーピンが並ぶ方向に見て、前記第二調整部の前記押出口側の先端が前記第一調整部の前記押出口側の先端よりも前記押出口側に突出する、
押出成形型。
【請求項2】
前記流路における前記支持部の前記押出口側の端部から前記押出口までの空間は、前記一方向に並ぶ中空成形空間とダミー成形空間とを含み、前記中空成形空間には前記中空成形部が配置され、前記ダミー成形空間には前記ダミー成形部が配置され、
前記中空成形空間の平均体積と、前記ダミー成形空間の平均体積との比は、1.0:1.0から1.0:1.08までの範囲内である、
請求項1に記載の押出成形型。
【請求項3】
前記一方向に見て、前記第一調整部と前記第二調整部との各々の、前記押出口側の端部は、前記押出口に向けて鋭角をなしている、
請求項1又は2に記載の押出成形型。
【請求項4】
前記一方向に見て、前記第一調整部の前記押出口側の先端は、前記中空ピンの輪郭の内側に配置され、前記第二調整部の前記押出口側の先端は、前記ダミーピンの輪郭の内側に配置されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の押出成形型。
【請求項5】
前記一方向に見て、前記第一調整部の全体は、前記中空ピンの輪郭の内側に配置され、前記第二調整部の全体は、前記ダミーピンの輪郭の内側に配置されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の押出成形型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、押出成形型に関し、詳しくは中空部を有する成形板を製造するための押出成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントや石膏等の材料を主成分とする成形板は、建築物の外壁等の建材として利用されている。成形板を軽量化するために、成形板に複数の中空部を形成することが行われている。成形板を量産するために、押出成形法によって成形板を製造することも行われている。押出成形法の場合、例えば押出成形型内の成形材料の流路内に、中空部を形成するための中空ピンが設けられる。
【0003】
ところで、成形板には、中空部を全体にわたって均一に形成する場合だけでなく、中空部が形成されている部分と形成されていない部分とを設ける場合がある。例えば成形板の実が形成される端部には、強度確保等のために中空部が形成されないことがある。中空部が形成されない部分を設ける場合は、その部分に対応する箇所では、押出成形型の流路内に中空ピンが設けられない。流路内における中空ピンが設けられていない箇所では、中空ピンによる抵抗が無いため、成形材料が流れやすくなる。そうすると流路内には成形材料が流れやすい箇所と流れにくい箇所とが生じてしまい、流れにくい箇所では成形材料の量が不足して成形板の表面に凹み、荒れ、ヒケなどの不良が生じやすくなる。
【0004】
そこで、中空ピンが設けられていない箇所には、中空ピンよりも短いダミーピンを設けることで抵抗を生じさせることも行われている(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、ダミーピンは中空ピンよりも短いために中空ピンよりも成形材料にかける抵抗が少なく、そのためダミーピンのみで成形板の表面の不良を抑制することは難しかった。
【0006】
また、押出成形型の成形材料の流路に調整用ゲート、チョークなどとの呼ばれる部材を部分的に押し込むことで、流路の体積を部分的に調整して、流路内の成形材料の流れやすさを調整することも行われている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-130872号公報
【文献】特開平8-270115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、チョークなどの部材を流路内に部分的に押し込むと、流路内の成形材料の流れに乱れが生じることがあり、それが成形板の表面の不良を生じさせる原因となることがある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、中空部を有する成形板を製造するために用いられ、かつ成形板の表面の不良を生じさせにくくできる押出成形型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る押出成形型は、複数の中空部を有する成形板を押出成形により製造するための押出成形型であり、成形材料が流れる流路と、前記流路に通じる押出口と、前記流路内に配置され、前記中空部を成形する成形部材とを備える。前記成形部材は、前記流路内に保持される支持部と、前記支持部の前記押出口側の端部に支持されている中空成形部及びダミー成形部とを備え、前記中空成形部と前記ダミー成形部とは前記押出口の開口面に沿った一方向に並ぶ。前記中空成形部は、前記支持部から前記押出口に向けて突出する複数の中空ピン及び複数の第一調整部を備え、前記中空ピンと前記第一調整部とは前記開口面に沿った前記の方向に交互に並ぶ。前記ダミー成形部は、前記支持部から前記押出口に向けて突出する複数のダミーピン及び複数の第二調整部を備え、前記ダミーピンと前記第二調整部とは前記開口面に沿った前記の方向に交互に並ぶ。前記ダミーピンは前記中空ピンよりも短く、かつ前記中空ピン及び前記ダミーピンが並ぶ方向に見て、前記第二調整部の前記押出口側の先端が前記第一調整部の前記押出口側の先端よりも前記押出口側に突出する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、中空部を有する成形板を製造するために用いられ、かつ成形板の表面の不良を生じにくくできる押出成形型を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】中空部を有する成形板の例を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態における押出成形型の模式的な断面図である。
【
図3】同上の実施形態における成形部材の一部を示す
概略の斜視図である。
【
図4】同上の実施形態における押出成形型の要部の断面図である。
【
図5】同上の実施形態における押出成形型の別の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0014】
本実施形態に係る押出成形型1は、
図1に示されるような複数の中空部101を有する成形板10を、押出成形により製造するために使用される。この成形板10は、中空部101が形成されていない部分を有する。
図1に示す成形板10では、端部に中空部101が形成されていない部分を有するが、成形板におけるいかなる位置に中空部101が形成されていない部分があってもよい。
【0015】
図2は、押出成形型1を成形材料の流れ方向と直交する平面で切った模式的な断面図である。押出成形型1は、
図2に示されるように、成形材料が流れる流路2と、この流路2に通じる押出口3と、この流路2内に配置され、中空部101を成形する成形部材4とを備える。
【0016】
図3は、成形部材4の全体斜視図である。成形部材4は、
図2及び
図3に示されるように、支持部41と、複数の成形ピン42と、調整部8とを備える。支持部41は、流路2内に保持される。複数の成形ピン42は、支持部41の押出口3側の端部に支持され、支持部41から押出口3に向けて突出している。複数の成形ピン42は、押出口3の開口面31に沿った方向に並んでいる。調整部8は、支持部41の押出口3側の端部に支持されている。
【0017】
図3に示されるように、成形ピン42は、複数の中空ピン71と、中空ピン71よりも短い複数のダミーピン72とを含む。
【0018】
図3に示されるように、調整部8は、支持部41における複数の中空ピン71を支持する部分に支持されている第一調整部81と、支持部41における複数のダミーピン72を支持する部分に支持されている第二調整部82とを含む。中空ピン71と第一調整部81とが中空成形部43を構成し、ダミーピン72と第二調整部82とがダミー成形部44を構成している。
【0019】
上記により、成形部材4は、支持部41と、支持部41の押出口3側の端部に支持されている中空成形部43及びダミー成形部44とを備え、中空成形部43とダミー成形部44とは押出口3の開口面31に沿った一方向(後述するX方向)に並んでいる。本実施形態では、支持部41の当該一方向両端部に、上記成形板1の端部に対応するようにダミー成形部44が設けられている一方、支持部41の上記一方向中途部に、上記成形板1の中空部101に対応するように中空成形部43が設けられている。また、中空成形部43は、支持部41から押出口3に向けて突出する複数の中空ピン71及び複数の第一調整部81を備え、中空ピン71と第一調整部81とは開口面31に沿った前記の方向に交互に並んでいる。また、ダミー成形部44は、支持部41から押出口3に向けて突出する複数のダミーピン72及び複数の第二調整部82を備え、ダミーピン72と第二調整部82とは開口面31に沿った前記の方向に交互に並んでいる。
【0020】
本実施形態では、ダミーピン72は中空ピン71よりも短く、かつ第二調整部82のサイズは第一調整部81のサイズよりも大きい。
【0021】
本実施形態によると、押出成形型1の流路2内に成形材料を供給し、成形材料を流路2内で流動させながら押出口3から押し出すと、中空ピン71によって形成された複数の中空部101を有する成形板10が得られる。この成形材料の押出成形時には、ダミーピン72は中空ピン71よりも短いため、ダミーピン72は中空部101を形成せず、このためダミー成形部44は、成形板10に中空部101を有さない部分を形成することができる。また、このようにダミーピン72が中空ピン71よりも短くても、第二調整部82のサイズは第一調整部81のサイズよりも大きいため、流路2における中空成形部43の周りの部分とダミー成形部44の周りの部分との間に、広さの差が生じにくくできる。そのため、成形材料が中空成形部43の周りを通過する場合とダミー成形部44の周りを通過する場合との間で、成形材料にかかる抵抗の大きさに差が生じにくい。そのため、流路2内には、成形材料が流れやすい箇所と流れにくい箇所とが生じにくくなり、このため流れにくい箇所で成形材料の量が不足して成形板10の表面に凹み、荒れ、ヒケなどが生じるような事態が、起こりにくくなる。このため、本実施形態では、押出成形型1を用いて中空部101を有する成形板10を製造でき、かつ成形板10の製造時に成形板10の表面性状を悪化させにくくできる。
【0022】
本実施形態に係る押出成形型1の構成をより具体的に説明する。
図2に示すように、押出成形型11は、型体9、流路2、及び成形部材4を備える。流路2は、型体9内に形成されている。流路2には、流路2へ成形材料を供給する適宜の押出機が接続される。型体9は、流路2に通じる押出口3を有する。
【0023】
成形部材4は、流路2内に配置されるように型体9に保持されている。流路2は、成形部材4の押出口3とは反対側の端部において、成形部材4によって第一流路21と第二流路22とに分岐され、第一流路21と第二流路22は成形部材4の押出口3側の端部で合流している。
【0024】
図3は、本実施形態の成形部材4の、押出口3側の部分の概略の斜視図である。成形部材4は、支持部41と、複数の成形ピン42と、複数の調整部8とを備える。調整部8は、第一調整部81と第二調整部82とを含む。
【0025】
支持部41は、流路2内に保持される。この支持部41が、流路2を第一流路21と第二流路22とに分岐させる。
【0026】
成形ピン42は、支持部41の押出口3側の端部に支持されており、支持部41から前記押出口3に向けて突出している。複数の成形ピン42は、押出口3の開口面31に沿った一方向に一列に並んでいる。複数の成形ピン42は、間隔をあけて並んでいる。成形ピン42は例えば等間隔で並んでいるが、異なる間隔で並んでいてもよい。
【0027】
以下、便宜上、押出口3の開口面31に沿った成形ピン42が並ぶ方向をX方向といい、押出口3の開口面31に沿いかつX方向と直交する方向をY方向といい、X方向とY方向とのいずれとも直交する方向をZ方向という。
【0028】
成形ピン42は、Z方向に長い形状を有する。複数の成形ピン42は、上述のとおり、X方向に一列に並んでいる。複数の成形ピン42には、複数の中空ピン71と複数のダミーピン72とが含まれている。
【0029】
本実施形態では、成形部材4のX方向の一端側から他端側に向けて、まず複数のダミーピン72が並び、続いて複数の中空ピン71が並び、続いて複数のダミーピン72が並んでいる。この複数のダミーピン72及び中空ピン71の配列は、
図1に示されるような、両端部に中空部101を有さない部分があり、それ以外の部分は中空部101が形成されている成形板10を製造するための配列である。なお、中空ピン71の位置及びダミーピン72の位置は、前述の配置に制限されず、成形板10における中空部101を有する部分の位置及び中空部101を有さない部分の位置に応じて、設計されればよい。
【0030】
中空ピン71は、基部5とピン部6とを有する。基部5は、中空ピン71の、Z方向における支持部41側の部分であり、基部5のZ方向における支持部41側の端部が支持部41につながっている。これにより、中空ピン71は支持部41に支持されている。基部5はX方向に見ると略三角形状を有し、基部5のY方向寸法は、Z方向における押出口3側にいくほど小さくなる。ピン部6は、Z方向に長い柱状である。ピン部6は、成形板10に形成される中空孔101に応じた形状及び寸法を有する。ピン部6のZ方向における支持部41側の端部は基部5につながっている。すなわちピン部6は基部5のZ方向における押出口3側の端部から押出口3に向けて、Z方向に沿って突出している。ピン部6の、押出口3側の先端は、押出口3の開口面31に位置している。
【0031】
ダミーピン72も、基部5とピン部6とを有する。基部5は、ダミーピン72の、Z方向における支持部41側の部分であり、基部5のZ方向における支持部41側の端部が支持部41につながっている。これにより、ダミーピン72は支持部41に支持されている。基部5はX方向に見ると略三角形状を有し、基部5のY方向寸法は、Z方向における押出口3側にいくほど小さくなる。ダミーピン72における基部5は中空ピン71における基部5と同じ形状及び寸法を有するが、異なる形状及び寸法を有していてもよい。ピン部6は、Z方向に長い柱状である。ピン部6のZ方向における支持部41側の端部は基部5につながっている。すなわちピン部6は基部5のZ方向における押出口3側の端部から押出口3に向けて、Z方向に沿って突出している。ダミーピン72におけるピン部6のZ方向の寸法(長さ)は、中空ピン71におけるピン部6のZ方向の寸法(長さ)よりも短い。ダミーピン72におけるピン部6のZ方向における押出口3側の先端は、中空ピン71におけるピン部6のZ方向における押出口3側の先端よりも、支持部41寄りの位置にある。ダミーピン72のピン部6のZ方向における押出口3側の端部は、押出口3に向けて突出するように尖っている。
【0032】
成形部材4は、第一調整部81を複数備え、各第一調整部81は、隣り合う中空ピン71の間に位置している。すなわち、中空ピン71と第一調整部81とが、X方向に交互に並んでいる。この一列に並ぶ複数の中空ピン71と第一調整部81との集合が、中空成形部43を構成している。また、成形部材4は、第二調整部82を複数備え、各第二調整部82は、隣り合うダミーピン72の間に配置されている。すなわち、ダミーピン72と第二調整部82とが、X方向に交互に並んでいる。この一列に並ぶ複数のダミーピン72と第二調整部82との集合が、ダミー成形部44を構成している。このため、本実施形態では、成形部材4は二つのダミー成形部44と一つの中空成形部43とを備え、二つのダミー成形部44の間に一つの中空成形部43が位置している。
【0033】
図4は中空成形部43のX方向と直交するYZ平面で切った断面を示し、
図5はダミー成形部44のX方向と直交するYZ平面で切った断面を示す。
図5には、中空成形部43における中空ピン71及び第一調整部81を破線で示している。
図4及び
図5に示すとおり、第一調整部81と第二調整部82との各々は、X方向に見て、Z方向の位置が押出口3側にいくほどY方向の寸法が小さくなるような三角形状を有する。このため、X方向に見て、第一調整部81と第二調整部82との各々の、押出口3側の端部は、押出口3に向けて鋭角をなしている。また、X方向に見て、第一調整部81と第二調整部82との各々の、押出口3側の先端は、成形ピン42における基部5の輪郭の内側に配置されている。さらに、X方向に見て、第一調整部81と第二調整部82との各々の全体は、成形ピン42における基部5の輪郭の内側に配置されている。
【0034】
本実施形態では、第二調整部82の、X方向に見たサイズは、第一調整部81のX方向に見たサイズよりも大きい。より具体的には、X方向に見て、第二調整部82は、その押出口3側の先端が第一調整部81の押出口3側の先端よりも押出口3側に突出する形状を有する。そのため、ダミーピン72が中空ピン71よりも短くても、
流路2における中空成形部43の周りの部分とダミー成形部44の周りの部分との間に、広さの差が生じにくい。
【0035】
上記のように第一調整部81と第二調整部82との間にサイズの相違があることで、流路2における中空成形空間23の平均体積と、ダミー成形空間24の平均体積との比が、1.0:1.0から1.0:1.08までの範囲内にあることが好ましい。この比が1.0:1.0に近いほど好ましく、1.0:1.0であれば特に好ましい。なお、中空成形空間23とダミー成形空間24とは、流路2における支持部41の押出口3側の端部から押出口3までの空間20に含まれる。中空成形空間23とダミー成形空間24とはX方向に並んでおり、中空成形空間23には中空成形部43が配置され、ダミー成形空間24にはダミー成形部44が配置されている。すなわち、中空成形空間23は流路2における中空成形部43の周りの空間であり、ダミー成形空間24は流路2におけるダミー成形部44の周りの空間である。
【0036】
中空成形空間23の平均体積と、ダミー成形空間24の平均体積との比は、X方向に見た第一調整部81のサイズと第二調整部82のサイズとを調整することで設定できる。中空成形空間23の平均体積は、中空成形空間23の体積を、中空成形空間23のX方向の寸法で除した値とみなすことができる。また、ダミー成形空間24の平均体積は、ダミー成形空間24の体積を、ダミー成形空間24のX方向の寸法で除した値とみなすことができる。
【0037】
なお、隣り合う中空ピン71とダミーピン72との間にある調整部8は、中空成形部43に含まれる第一調整部81であってもよく、ダミー成形部44に含まれる第二調整部82であってもよい。
【0038】
本実施形態では、型体9は、複数のチョーク91を備えている。チョーク91は型体9内に配置されて、流路2の内面の一部を構成する。複数のチョーク91は、X方向に並んでいる。チョーク91は流路2に向かう向きと流路2から離れる向きとに進退移動可能であり、流路2に向かう向きに移動することで、流路2内へ突出し、それにより流路2内を流れる成形材料にかかる抵抗を大きくする。X方向に並ぶ複数のチョーク91のうちの一部を流路2の内面から突出させることで、流路2内の抵抗を部分的に調整することができる。本実施形態では、X方向に見て、チョーク91は成形ピン42にY方向に対向する一箇所に設けられているが、チョーク91の位置はこれに限られず、またチョーク91は複数箇所に設けられていてもよい。
【0039】
本実施形態の押出成形型11を用いて成形板10を製造する方法を説明する。
【0040】
成形材料を用意する。成形材料は、例えば水硬性無機質材料を含有する。成形材料は、例えば、無機質系主材、無機質系混和材、有機質系混和材、補強繊維、及び水を含有する。
【0041】
無機質系主材は、例えばケイ素とカルシウムとのうち少なくとも一方を含む化合物、例えばセメントなどの水硬性無機質材料を含有する。無機質系主材は、更に、フライアッシュ、シリカヒューム、珪石粉などを含有してもよい。
【0042】
無機質系混和材は、例えば軽量骨材として使用される無機発泡体を含有し、例えばパーライト、フライアッシュバルーン、及びバーミキュライトなどを含有できる。無機質系混和材は、更にマイカ、ワラストナイトなどを含有できる。
【0043】
有機質系混和材は、例えばメチルセルロース、有機質系発泡粒子等を含有できる。有機質系発泡粒子は、例えばスチレン系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、及びアクリロニトリル系樹脂などの発泡粒子を含有できる。
【0044】
補強繊維は、例えばパルプ繊維等の天然繊維、ポリプロピレン、ビニロン等の有機繊維、ガラス繊維、ロックウール、炭素繊維等の無機繊維などを含有できる。
【0045】
押出機などで、成形材料を押出成形型1に供給する。成形材料は、押出成形型1の流路2内で、押出口3へ向けて流動する。
【0046】
流路2内では、成形材料は、成形部材4の支持部41に到達すると、第一流路21及び第二流路22に分かれて流れる。第一流路21と第二流路22とをそれぞれ流れる成形材料は、支持部41の押出口3側の端部で合流し、中空成形部43の周りとダミー成形部44の周りとを流動する。
【0047】
中空成形部43の周りにおいては、第一流路21及び第二流路22の各々を流れる成形材料は、第一調整部81の表面に沿って流れることで、合流が促進される。このとき、上記のように、X方向に見て、第一調整部81の押出口3側の端部が押出口3に向けて鋭角をなしているので、成形材料の合流が円滑になされやすい。また、X方向に見て、第一調整部81の押出口3側の先端は、中空ピン72の輪郭の内側に配置されているため、第一調整部81は成形材料の流動を阻害しにくく、そのため、合流した後の成形材料が中空ピン71の周りを流動しやすくなる。さらに、X方向に見て、第一調整部81の全体が中空ピン72の輪郭の内側に配置されているため、第一調整部81は更に成形材料の流動を阻害しにくく、このため成形材料の円滑な押出が可能となる。これにより、成形材料が中空ピン71の周りを円滑に流動し、中空部101が形成される。
【0048】
また、ダミー成形部44の周りにおいても、第一流路21及び第二流路22の各々を流れる成形材料は、第二調整部82の表面に沿って流れることで、合流が促進される。このとき、上記のように、X方向に見て、第二調整部82の押出口3側の端部が押出口3に向けて鋭角をなしているので、成形材料の合流が円滑になされやすい。また、X方向に見て、第二調整部82の押出口3側の先端は、ダミーピン72の輪郭の内側に配置されているため、第二調整部82は成形材料の流動を阻害しにくく、そのため、合流した後の成形材料がダミーピン72の周りを流動しやすくなる。さらに、X方向に見て、第二調整部82の全体がダミーピン72の輪郭の内側に配置されているため、第二調整部82は更に成形材料の流動を阻害しにくく、このため成形材料の円滑な押出が可能となる。これにより、成形材料はダミーピン72の周りを円滑に流動する。ダミーピン72の長さは中空ピン71よりも短いため、流路2内で成形材料がダミーピン72の先端に達し、そのためダミーピン72は中空部101を形成させにくい。本実施形態のようにダミーピン72が尖っていると、ダミーピン72の先端で成形材料が合流しやすく、そのためダミーピン72があっても、中空部101が特に形成されにくくできる。
【0049】
また、ダミーピン72は中空ピン71よりも短く、そのためダミーピン72が成形材料に与える抵抗は中空ピン71よりも小さいが、既に説明したとおり、本実施形態では第二調整部のサイズが第一調整部のサイズよりも大きいため、中空成形部43の周りを流動する成形材料が中空成形部43全体から受ける抵抗と、ダミー成形部44の周りを流動する成形材料がダミー成形部44全体から受ける抵抗との間に、差異が生じにくくなり、そのため、成形板10の表面性状が悪化しにくい。また、抵抗に差異が生じたとしても、その差異を小さくできるため、流路2内の抵抗を更に調整するためにチョーク91を流路2内に押し込む場合であっても、チョーク91の押し込み量が大きくなくて済むようにできる。このため、チョーク91に起因する成形板10の表面性状の悪化を起こりにくくできる。
【0050】
上記のように流路2を流れた成形材料は、押出口3から押出成形型1の外に押し出される。押出口3から押し出された成形材料を任意の長さに切断することによって、未硬化の成形体(グリーンシート)が得られる。この未硬化の成形体にプレス等を施すことによって、その表面に凹凸模様を形成してもよい。この場合、凹凸模様を有する建築板を形成することができる。
【0051】
次に、未硬化の成形体を養生して硬化させる。これにより、
図1に示すような、複数の中空部101を有し、かつ両端部にはそれぞれ中空部101が形成されていない部分を有する成形板10が得られる。
【0052】
上記の実施形態から明らかなように、本発明の第一の態様に係る押出成形型1は、複数の中空部101を有する成形板10を押出成形により製造するための押出成形型1である。押出成形型1は、成形材料が流れる流路2と、流路2に通じる押出口3と、流路2内に配置され、中空部101を成形する成形部材4とを備える。成形部材4は、流路2内に保持される支持部41と、支持部41の押出口3側の端部に支持されている中空成形部43及びダミー成形部44とを備える。中空成形部43とダミー成形部44とは押出口3の開口面31に沿った一方向に並ぶ。中空成形部43は、支持部41から押出口3に向けて突出する複数の中空ピン71及び複数の第一調整部81を備える。中空ピン71と第一調整部81とは押出口3の開口面31に沿った前記の方向に交互に並ぶ。ダミー成形部44は、支持部41から押出口3に向けて突出する複数のダミーピン72及び複数の第二調整部82を備える。ダミーピン72と第二調整部82とは押出口3の開口面31に沿った前記の方向に交互に並ぶ。ダミーピン72は中空ピン71よりも短く、かつ第二調整部82のサイズは第一調整部81のサイズよりも大きい。
【0053】
第一の態様によると、中空部101を有する成形板10を製造するために用いられ、かつ成形板10の表面の不良を生じにくくできる押出成形型1を提供できる。
【0054】
本発明の第二の態様に係る押出成形型は、第一の態様において、流路2における支持部41の押出口3側の端部から押出口3までの空間20は、押出口3の開口面31に沿った前記の方向に並ぶ中空成形空間23とダミー成形空間24とを含む。中空成形空間23には中空成形部43が配置され、ダミー成形空間24にはダミー成形部44が配置される。中空成形空間23の平均体積と、ダミー成形空間24の平均体積との比は、1.0:1.0から1.0:1.08までの範囲内である。
【0055】
第二の態様によると、成形板10の表面の不良を特に生じにくくできる。
【0056】
本発明の第三の態様に係る押出成形型は、第一又は第二の態様において、押出口3の開口面31に沿った前記の方向に見て、第一調整部81と第二調整部82との各々の、押出口3側の端部は、押出口3に向けて鋭角をなしている。
【0057】
第三の態様によると、流路2内で支持部41の周りを分岐して流れる成形材料が合流する際、成形材料が第一調整部81と第二調整部82との表面に沿って流動することで、円滑に合流しやすくなり、そのため成形不良を生じにくくできる。
【0058】
本発明の第四の態様に係る押出成形型1は、第一から第三のいずれか一の態様において、押出口3の開口面31に沿った前記の方向に見て、第一調整部81の押出口3側の先端は、中空ピン71の輪郭の内側に配置され、第二調整部82の押出口3側の先端は、ダミーピン72の輪郭の内側に配置されている。
【0059】
第四の態様によると、第一調整部81と第二調整部82とが、成形材料の流動を阻害しにくいため、成形不良が更に生じにくくなる。
【0060】
本発明の第五の態様に係る押出成形型1は、第一から第四のいずれか一の態様において、押出口3の開口面31に沿った前記の方向に見て、第一調整部81の全体は、中空ピン71の輪郭の内側に配置され、第二調整部82の全体は、ダミーピン72の輪郭の内側に配置されている。
【0061】
第五の態様によると、第一調整部81と第二調整部82とが、成形材料の流動を阻害しにくいため、成形不良が更に生じにくくなる。
【符号の説明】
【0062】
1 押出成形型
2 流路
20 空間
23 中空成形空間
24 ダミー成形空間
3 押出口
31 開口面
4 成形部材
41 支持部
43 中空成形部
44 ダミー成形部
71 中空ピン
72 ダミーピン
81 第一調整部
82 第二調整部
10 成形板
101 中空部