(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】自動積層装置
(51)【国際特許分類】
B29C 70/38 20060101AFI20231003BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20231003BHJP
B29C 70/54 20060101ALI20231003BHJP
B29K 101/10 20060101ALN20231003BHJP
B29K 103/08 20060101ALN20231003BHJP
【FI】
B29C70/38
B29C70/16
B29C70/54
B29K101:10
B29K103:08
(21)【出願番号】P 2019202027
(22)【出願日】2019-11-07
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西村 勲
(72)【発明者】
【氏名】油野 秀彰
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03090856(EP,A1)
【文献】特表2014-526984(JP,A)
【文献】特開2018-020409(JP,A)
【文献】特開2015-217540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺シート状の熱硬化性プリプレグが巻回された原反ロール、該原反ロールから引き出された前記熱硬化性プリプレグをその長手方向及び幅方向に対し角度を成す切断角度で切断する切断装置、及び前記熱硬化性プリプレグを積層面に対し押圧する
押圧部材と前記押圧部材を上下方向へ移動させる押圧駆動機構とを含む押圧装置を備える積層ヘッドを
有し、前記熱硬化性プリプレグが前記押圧部材によって前記積層面に押圧された状態で前記積層ヘッドを積層方向へ移動させることにより、前記積層面に対し前記熱硬化性プリプレグを積層する自動積層装置において、
前記積層ヘッドに設けられる駆動機構であって前記押圧装置を前記幅方向と平行な方向へ移動させる駆動機構と、前記熱硬化性プリプレグの切断端が
前記押圧部材の位置に達した時点で前記押圧装置の移動を開始させるように前記駆動機構の駆動を制御する駆動制御器とを備える
ことを特徴とする自動積層装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺シート状の熱硬化性プリプレグが巻回された原反ロール、該原反ロールから引き出された前記熱硬化性プリプレグをその長手方向及び幅方向に対し角度を成す切断角度で切断する切断装置、及び前記熱硬化性プリプレグを積層面に対し押圧する押圧装置を備える積層ヘッドを積層方向へ移動させることにより、前記積層面に対し前記熱硬化性プリプレグを積層する自動積層装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等の繊維強化複合材は、強化繊維(炭素繊維等)にマトリックス樹脂を含浸させて形成されたプリプレグを積層して形成されたプリプレグの積層体から製造される。すなわち、プリプレグ積層体は、プリプレグが複数枚積層された多層構造を有しており、繊維強化複合材を製造するにあたっては、先ずはそのプリプレグの積層が行われる。なお、そのプリプレグとしては、強化繊維を経糸及び緯糸とした織物にマトリックス樹脂を含浸させた織物材や、強化繊維を一方向に引き揃えた状態でマトリックス樹脂を含浸させて収束させた所謂UD材がある。また、そのマトリックス樹脂としては、熱硬化性の樹脂と熱可塑性の樹脂とが存在する。
【0003】
なお、プリプレグの積層を行うにあたっては、プリプレグ積層体の各層における強化繊維の配向方向を異ならせた状態でプリプレグを積層することで、強化繊維の配向方向を一致させた状態でプリプレグの積層を行ったものと比べ、それによって製造される繊維強化複合材が剛性や強度の面において優れたものとなる。
【0004】
そして、そのようなプリプレグの積層が、自動積層装置によって行われる場合がある。その自動積層装置は、一般的に、長尺シート状のプリプレグ(プリプレグシート)が巻回された原反ロール、該原反ロールから引き出されたプリプレグシートから積層されるプリプレグ片を切り出すべくプリプレグシートを切断する切断装置、及びプリプレグシート(プリプレグ片)を積層面に対し押圧する押圧装置を備える積層ヘッドを有している。その上で、自動積層装置は、テーブル上において積層ヘッドを積層方向へ移動させることで、プリプレグシートを原反ロールから引き出すと共に、押圧装置によって前記積層面に対し押圧させることでプリプレグ片の積層を行っている。また、その積層方向(積層ヘッドの移動方向)は、強化繊維の配向方向に基づいて定められ、テーブル上に定められたプリプレグ片が積層される範囲(以下、「積層範囲」と言う。)における基準となる方向(例えばテーブルの前後方向)に対する予め定められた複数の角度のいずれかの方向で、その積層が行われる。
【0005】
因みに、一般的な自動積層装置では、切断装置は、プリプレグシートをその幅方向と平行な方向で切断するように構成されている。そのため、そのような自動積層装置によるプリプレグ片の積層では、その積層方向によっては、プリプレグ片の切断端が前記積層範囲からはみ出た状態となってしまう。それに対し、特許文献1に開示された自動積層装置は、プリプレグシートをその長手方向及び幅方向に対し角度を成す切断角度で切断できるように構成された切断装置を備えている。そして、その特許文献1の自動積層装置によれば、その切断角度を積層方向に応じた角度とすることで、プリプレグ片の切断端が前記のように前記積層範囲からはみ出た状態となることが無いようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、自動積層装置における前記した押圧装置は、一般的には、プリプレグシート(プリプレグ片)をその長手方向における同じ位置で幅方向に亘って押圧し、積層ヘッドの移動に伴ってプリプレグシート(プリプレグ片)を長手方向に順次押圧していくように設けられている。一方で、前記した特許文献1の自動積層装置のようにプリプレグシートをその長手方向及び幅方向に対し角度を成す切断角度で切断した場合、その切断した部分においては、積層されるプリプレグ片の切断端(後端)と原反ロールに連なるプリプレグシートの切断端(先端)とがプリプレグシートの長手方向における同じ位置に重複して存在した状態となる。
【0008】
そのため、その切断部分において押圧装置によりプリプレグ片の後端側の部分を押圧しようとすると、その押圧装置による押圧は、プリプレグ片の前記後端側の部分に対してだけでなく、プリプレグシートの前記先端側の部分に対しても行われることとなる。そして、そのプリプレグが熱硬化性プリプレグである場合、そのマトリックス樹脂としての熱硬化性樹脂は粘性が高いため、そのようにプリプレグシートの前記先端側の部分も押圧されてしまうと、前記積層範囲外において、その前記先端側の部分がテーブルに貼り付いてしまい、それ以降の積層に問題が生じる場合がある。
【0009】
そこで、熱硬化性プリプレグを用いて積層を行う上で、前記した基準となる方向に対し積層方向が角度を成している場合であって前記のようにその積層方向に応じた切断角度でプリプレグシートを切断する場合に、押圧装置によるプリプレグ片の押圧を、前記後端側の部分では行わないようにすることがある。具体的には、押圧装置が積層(押圧)しているプリプレグ片の前記後端に達した時点で、押圧装置を上方に移動させることで、プリプレグシートの前記先端側の部分を含む前記切断部分が押圧装置によって押圧されないようにすることがある。
【0010】
それによれば、プリプレグシートの前記先端側の部分がテーブルに貼り付いた状態になるといったことは防止される。しかし、その場合、積層されるプリプレグ片の前記後端側の部分も押圧装置により押圧されないため、その前記後端側の部分は、前記積層面に対し押圧されずに敷かれただけの状態となる。その結果として、そのプリプレグ片の前記後端側の部分に皺が発生したり、又は、その後端側の部分と前記積層面との間に空気(気泡)が残った状態となってしまう場合があり、その場合には、製造される繊維強化複合材は、所望の品質を満たさないものとなる。
【0011】
したがって、本発明は、プリプレグシートの前記先端側の部分を押圧することなく、プリプレグ片の前記後端側の部分を前記積層面に対し押圧することで、製造される繊維強化複合材の品質不良を防ぐことのできる自動積層装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、長尺シート状の熱硬化性プリプレグが巻回された原反ロール、該原反ロールから引き出された前記熱硬化性プリプレグをその長手方向及び幅方向に対し角度を成す切断角度で切断する切断装置、及び前記熱硬化性プリプレグを積層面に対し押圧する押圧部材と前記押圧部材を上下方向へ移動させる押圧駆動機構とを含む押圧装置を備える積層ヘッドを有し、前記熱硬化性プリプレグが前記押圧部材によって前記積層面に押圧された状態で積層方向へ移動させることにより、前記積層面に対し前記熱硬化性プリプレグを積層する自動積層装置を前提とする。
【0013】
その上で、前記の目的を達成すべく、本発明は、その前提とする自動積層装置において、前記積層ヘッドに設けられる駆動機構であって前記押圧装置を前記幅方向と平行な方向へ移動させる駆動機構と、前記熱硬化性プリプレグの切断端が前記押圧部材の位置に達した時点で前記押圧装置の移動を開始させるように前記駆動機構の駆動を制御する駆動制御器とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の自動積層装置によれば、押圧装置を幅方向と平行な方向(以下、単に「幅方向」と言う。)に移動させる駆動機構が備えられており、積層ヘッドが積層方向へ移動している状態でその駆動機構が押圧装置を移動させることで押圧部材は、プリプレグシート(プリプレグ片)に対し相対的にプリプレグシート(プリプレグ片)の長手方向及び幅方向に対し角度を成す方向(以下、「角度方向」と言う。)へ移動することとなる。そして、その角度方向は、積層ヘッドの移動速度に対する押圧装置の移動速度に応じたものとなる。そこで、押圧部材が積層(押圧)しているプリプレグ片の前記後端に達した時点で、切断角度と積層ヘッドの移動速度とに基づいて求めた速度で押圧装置を移動させるように駆動機構が駆動制御器によって制御されることで、押圧部材は、積層方向に対し切断角度と同じ角度を成す方向へ移動する。
【0015】
それにより、前記切断部分においては、プリプレグシートの前記先端側の部分が押圧部材によって押圧されることなく、プリプレグ片の前記後端側の部分が押圧部材によって前記積層面に対し押圧されることとなる。したがって、前述のようなプリプレグシートの前記先端側の部分が押圧されることによる問題の発生を回避しつつも、プリプレグ片の前記後端側の部分が前記積層面に対し押圧されないことによって生じる問題の発生を防ぐことができるようになり、その結果として、製造される繊維強化複合材の品質不良を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明が適用される自動積層装置を示す斜視図である。
【
図2】自動積層装置の積層ヘッドを示す説明図である。
【
図3】本発明による駆動機構の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、本発明が適用される自動積層装置は、長尺シート状の熱硬化性プリプレグが巻回された原反ロール21を搭載する積層ヘッド20と、積層ヘッド20から引き出された熱硬化性プリプレグが積層されるテーブル40と、積層ヘッド20を吊り下げるかたちで支持する(吊持する)門型の支持機構50であって熱硬化性プリプレグをテーブル40の上面上に積層するためにテーブル40上で積層ヘッド20を移動させる支持機構50とを備えている。
【0018】
それらの各構成要素について、テーブル40は、平面視において矩形状を成す天板41と、天板41を支持する支持台43とで構成されている。また、支持機構50は、前記のように門型の構造を有するものであって、一対のサイドレール51、51、各サイドレール51に対応させて設けられた一対のコラム53、53、及び両コラム53、53間に架設されたクロスビーム55から成るガントリ部と、ガントリ部におけるクロスビーム55上に設けられて積層ヘッド20を支持するサドル部57とを備えている。
【0019】
その支持機構50について、ガントリ部における一対のサイドレール51、51は、支持機構50のベースとなる部分であって、長尺角柱状の基部51aを主体とする部分である。そして、その一対のサイドレール51、51は、その長手方向がテーブル40における天板41の長辺方向と平行を成す向きで、テーブル40に対し、天板41の短辺方向における両側において床面上に設置されている。また、その各サイドレール51において、基部51aの上面には、対応するコラム53の前記長手方向における移動を案内するためのガイドレール51bが設けられている。なお、前記のようにテーブル40(天板41)の長辺方向とサイドレール51の長手方向とは同じ方向であり、それらの方向は、自動積層装置における前後方向と一致する。そこで、以下では、それらの方向及びそれと平行な方向を「前後方向」と称して説明する。
【0020】
各コラム53は、台座部53a、及び台座部53a上に立設された一対の支柱53b、53bで構成されている。そして、各コラム53は、その台座部53aにおいて対応するサイドレール51における基部51a上に載置された状態で設けられると共に、台座部53aがサイドレール51におけるガイドレール51bに案内されるかたちでサイドレール51の前記前後方向に移動可能に設けられている。また、クロスビーム55は、長尺角柱状の梁部材であって、その両端部のそれぞれがコラム53における各支柱53bの上端に取り付けられるかたちで、一対のコラム53、53間に架設されている。但し、そのようにクロスビーム55が架設された状態において、両コラム53、53は、サイドレール51の前記前後方向における位置が一致する状態となっており、それにより、クロスビーム55は、その長手方向がサイドレール51の前記前後方向と直交する方向(テーブル40(天板41)の短辺方向)に一致する状態となっている。
【0021】
そして、そのような梁構造を有するガントリ部において、各サイドレール51とそれに対応するコラム53との間には、例えばラック、ピニオンギア、駆動モータ等から成るガントリ駆動機構(図示略)が設けられている。すなわち、ガントリ部は、一対のコラム53、53及び両コラム53、53間に架設されたクロスビーム55が、そのガントリ駆動機構により、サイドレール51の前記前後方向に沿って移動するように駆動される構成となっている。なお、前記のように、クロスビーム55の長辺方向とテーブル40(天板41)の短辺方向とは同じ方向であり、それらの方向は自動積層装置における左右方向に一致する。そこで、以下では、それらの方向及びそれと平行な方向を全て「左右方向」と称して説明する。
【0022】
サドル部57は、積層ヘッド20を支持機構50に対し支持された状態とするための機構であって、前記のように構成されたガントリ部におけるクロスビーム55上に設けられている。そのサドル部57は、クロスビーム55上で前記左右方向に移動可能に設けられた板状のサドルベース57aを主体とする。また、そのサドル部57は、サドルベース57aにおけるクロスビーム55側の面から下方へ向けて突出するようなかたちで、サドルベース57aに対し回転自在に支持された支持シャフト57bを有している。そのため、ガントリ部におけるクロスビーム55には、その支持シャフト57bの配置を許容すると共に前記左右方向におけるサドル部57の移動を許容するために、クロスビーム55を上下方向に貫通すると共にその前記左右方向に延在する孔55aが形成されている。そして、サドル部57における支持シャフト57bは、その孔55aに挿通され、クロスビーム55の下方まで延びている。
【0023】
また、サドル部57は、サドルベース57a上に設けられたヘッド駆動機構を有している。そのヘッド駆動機構は、支持シャフト57bを回動させるための構成であり、駆動モータ57c及び駆動モータ57cと支持シャフト57bとを連結して駆動モータ57cの出力軸の回転を支持シャフト57bに伝達する駆動伝達機構57dとで構成されている。したがって、サドル部57は、その支持シャフト57bが、鉛直方向に延びる自身の軸心を回動中心として、そのヘッド駆動機構によって回動される構成となっている。
【0024】
その上で、支持機構50においては、そのサドル部57とクロスビーム55との間に、サドル部57を前記左右方向に沿って移動させるためのサドル駆動機構が設けられている。図示の例はその一例であって、そのサドル駆動機構は、サドル部57におけるサドルベース57aの側面に対し出力軸の軸心を鉛直方向に向けて取り付けられた駆動モータ59a、クロスビーム55の側面に取り付けられたラック59b、及び駆動モータ59aの出力軸に取り付けられると共にラック59bと噛合するピニオンギア59cで構成されている。したがって、支持機構50は、そのサドル駆動機構により、クロスビーム55上においてサドル部57が前記左右方向に移動するように駆動される構成となっている。
【0025】
熱硬化性プリプレグの原反ロール21が搭載された積層ヘッド20は、以上のように構成された支持機構50におけるサドル部57の支持シャフト57bに取り付けられることで、支持機構50におけるクロスビーム55に吊時された状態で設けられている。そして、支持機構50において、両コラム53、53がサイドレール51、51上で前記前後方向に移動するように駆動される、及び/又は、サドル部57がクロスビーム55上で前記左右方向に移動するように駆動されることで、積層ヘッド20は、テーブル40の上方において、前記前後方向、前記左右方向、あるいは前記前後方向及び前記左右方向と交差する方向へ移動する。また、支持機構50において支持シャフト57bが回動するように駆動されることで、積層ヘッド20が回転駆動される。
【0026】
その積層ヘッド20は、一対の支持板23、23を含む支持フレームを主体としており、その支持板23、23間で前記した原反ロール21を支持している。なお、その原反ロール21は、長尺シート状の熱硬化性プリプレグ(以下、「プリプレグシートPS」と言う。)をリール(巻枠)に巻回させて形成されている。但し、その巻回された状態では、巻層間でのプリプレグシートPSの粘性による互いの粘着を防止すべくプリプレグシートPSにはその一方の面に剥離紙RPが貼着されている。そして、自動積層装置においては、その積層ヘッド20における原反ロール21から引き出された熱硬化性プリプレグがテーブル40(天板41)上に積層される。そのため、積層ヘッド20は、そのようなプリプレグシートPSの積層を実現するための各機構を支持フレームの内部(支持板23、23間)に備えている。
【0027】
図2は、そのような積層ヘッド20における支持フレーム内の構成を概略的に示した図である。
図2に示すように、積層ヘッド20においては、原反ロール21から引き出されたプリプレグシートPSは、テンションロール22を経由してガイドロール24に巻き掛けられて、その積層を実行する押圧装置へ送り出される。
【0028】
なお、原反ロール21は、支持フレームにおける一対の支持板23、23のうちの一方の支持板23に対し、送出軸28によって回転可能に支持されている。また、送出軸28は、ギア列等の駆動伝達機構を介して送出モータM1に連結されている。そして、送出軸28が送出モータM1によって回転駆動されることに伴い、原反ロール21が回転駆動される。
【0029】
その原反ロール21から引き出されたプリプレグシートPSは、ガイドロール24よりも原反ロール21側(上流側)で経路が屈曲するようにテンションロール22に巻き掛けられており、それにより、プリプレグシートPSによる荷重がテンションロール22に掛かるかたちとなっている。また、テンションロール22には、ロードセル等の荷重検出器(図示略)が連結されており、プリプレグシートPSの張力によってテンションロール22に掛かる荷重が荷重検出器によって検知され、それに基づいてプリプレグシートPSの張力が検出されるようになっている。その上で、その検出されたプリプレグシートPSの張力の検出値に基づき、前記のように原反ロール21を回転駆動する送出モータM1の駆動を制御することで、プリプレグシートPSの張力が所望の程度に維持されるようになっている。
【0030】
また、積層ヘッド20は、プリプレグシートPSが予め定められた長さのプリプレグ片PS’として積層されるように、プリプレグシートPSからプリプレグ片PS’を切り出すための切断装置27を備えている。なお、その切断装置27は、プリプレグシートPSの長手方向に対する切断角度を変更できるように構成されている。
【0031】
より詳しくは、切断装置27は、プリプレグシートPSの経路中におけるテンションロール22とガイドロール24との間に設けられている。また、その切断装置27は、カッタ27a、そのカッタ27aに対しプリプレグシートPSの経路を挟んで対向するように設けられた受け部材27b、及びカッタ27aを受け部材27b(プリプレグシートPS)に対し進退駆動するカッタ駆動機構(図示略)を含んでいる。
【0032】
なお、自動積層装置は、積層ヘッド20の移動を制御するための主制御装置70を備えている。すなわち、自動積層装置は、前記した支持機構50における駆動モータ59a等の各駆動モータの駆動が主制御装置70によって制御されるように構成されている。その上で、その主制御装置70には積層のための動作プログラムが記憶されており、主制御装置70は、予め定められた長さのプリプレグシートPSを積層する1回の積層動作毎に、その動作プログラムに従って各駆動モータの制御を行うように構成されている。
【0033】
また、自動積層装置においては、カッタ駆動機構の制御も、その主制御装置70によって行われるようになっている。具体的には、主制御装置70は、予め定められた長さのプリプレグシートPSが原反ロール21から引き出された時点でカッタ27aを受け部材27bへ向けて進出するように、カッタ駆動機構の駆動を制御する。それにより、カッタ27aがプリプレグシートPSに押し当てられ、プリプレグシートPSが切断される。但し、カッタ駆動機構によるカッタ27aの進出駆動は、剥離紙RPが切断されない(プリプレグシートPSのみが切断される)ように行われる。
【0034】
また、カッタ駆動機構は、カッタ27aによる切断角度を変更できるようにするために、カッタ27aを回転駆動可能にも構成されている。そして、主制御装置70は、前記した動作プログラムに従って積層ヘッド20の移動方向(積層方向)が前記前後方向又はそれと直交する方向とは異なる方向に変更される場合に、切断角度をその積層方向に応じた角度とすべく、カッタ27aが回転されるようにカッタ駆動機構の駆動を制御する。
【0035】
また、積層ヘッド20は、プリプレグシートPSを積層面に対し押圧するための押圧装置30(構成に関する詳細は後述)を備えている。なお、押圧装置30は、プリプレグシートPSを押圧する押圧部材30a及びその押圧部材30aを上下方向へ移動させるための押圧駆動機構31を含んでいる。その押圧駆動機構31は、押圧部材30aを前記積層面にから離間した位置(以下、「待機位置」と言う。)と、プリプレグシートPSを押圧する位置(以下、「積層位置」と言う。)との間で移動させるように構成されている。そして、その押圧駆動機構31の駆動も、主制御装置70によって制御される。
【0036】
また、積層ヘッド20は、積層されたプリプレグシートPSから剥離された剥離紙RPを巻き取るための巻取装置25を備えている。その巻取装置25は、剥離紙RPが巻き取られる巻取リール25aと、支持フレームにおける支持板23に取り付けられると共に巻取リール25aを回転可能に支持する巻取軸25bと、ギア列等の駆動伝達機構を介して巻取軸25bに連結される巻取モータM3とを含むように構成されている。また、その巻取装置25は、積層方向に関し押圧部材30aの後方であって上下方向に関し押圧部材30aの上方に配置されている。そして、剥離紙RPは、前記のように切断装置27に切断されることなく連続しており、押圧部材30aと巻取装置25との間に配置されたガイドロール29に巻き掛けられた上で巻取装置25に導かれている。
【0037】
以上のような自動積層装置では、前記積層面へのプリプレグシートPSの積層を行うにあたっては、先ずは、積層ヘッド20を積層開始位置へ移動させるように、動作プログラムに従い、支持機構50における各駆動モータが駆動される。なお、そのように積層ヘッド20が積層開始位置へ移動された後、それに続く積層における積層方向が前回の積層における積層方向とは異なる場合、すなわち、積層方向が変更される場合には、ヘッド駆動機構により積層ヘッド20が回転駆動され、積層ヘッド20の向き(積層動作中に積層ヘッド20が向かう向き)がその変更後の積層方向と一致する状態とされる。
【0038】
また、そのように積層方向が変更される場合、切断装置27におけるカッタ駆動機構によりカッタ27aが回転駆動され、切断角度がその変更された積層方向に応じた角度とされる。具体的には、その切断角度が、テーブル40上に定められたプリプレグシートPSの積層範囲における積層方向前方の縁が積層されるプリプレグシートPSの長手方向に対し成す角度と一致するように、カッタ27aが回転駆動される。
【0039】
次いで、押圧装置30における押圧部材30aを前記待機位置から前記積層位置へ移動させるように、押圧駆動機構31が駆動される。それにより、プリプレグシートPSが押圧部材30aによって前記積層面に対し押圧された状態となる。その上で、積層ヘッド20を積層方向へ向けて移動させるように、支持機構50における各駆動モータが駆動される。それにより、プリプレグシートPSが原反ロール21から引き出されると共に押圧部材30aにより前記積層面に対し押圧されることとなり、プリプレグシートPSが積層される。また、プリプレグシートPSが積層されることによってプリプレグシートPSから剥離された剥離紙RPは、巻取装置25において巻取リール25aによって巻き取られる。
【0040】
そして、予め定められた長さのプリプレグシートPSが原反ロール21から引き出された時点で、カッタ27aの進出駆動を行うようにカッタ駆動機構が駆動される。それにより、プリプレグシートPSが切断され、プリプレグシートPSからプリプレグ片PS’が切り出された状態となる。そして、その前記積層(積層ヘッド20の移動)に伴ってプリプレグ片PS’の切断端が前記積層面に達した時点で、1回の積層動作が完了する。
【0041】
以上のように構成された自動積層装置において、本発明では、その自動積層装置が、積層ヘッド20に設けられた駆動機構であって押圧装置30を熱硬化性プリプレグの幅方向と平行な方向へ移動させるための駆動機構、及びその駆動機構の駆動を制御する駆動制御器を備えている。そのような自動積層装置の一実施例(本実施例)を、以下で詳細に説明する。但し、本実施例では、本発明における駆動機構を幅方向駆動機構32として説明する。
【0042】
押圧装置30は、前記した押圧駆動機構31が
図2に示すようなボールネジ機構で構成されており、そのボールネジ機構が枠体であるリニアガイド35に収容された構成となっている。その上で、押圧装置30は、
図3に示すように、そのリニアガイド35において幅方向駆動機構32に支持されている。なお、その幅方向駆動機構32は、後述のように一対の支持板23、23に支持されるかたちで、積層ヘッド20に対し設けられている。したがって、押圧装置30は、その幅方向駆動機構32を介して積層ヘッド20に対し設けられている。
【0043】
その幅方向駆動機構32について、幅方向駆動機構32は、支持する押圧装置30を移動させるための構成としてのボールネジ機構を備え、そのボールネジ機構が枠体を成すリニアガイド62に収容された構成となっている。
【0044】
より詳しくは、幅方向駆動機構32は、枠体としてのリニアガイド62を主体として構成されている。また、幅方向駆動機構32は、駆動源としての駆動モータM4を備えており、その駆動モータM4は、出力軸がリニアガイド62の長手方向と平行を成す向きで出力軸をリニアガイド62に向けるかたちでリニアガイド62の一端部に取り付けられている。その上で、その駆動モータM4の出力軸には、ネジ軸65が取り付けられている。それにより、幅方向駆動機構32は、一端を駆動モータM4に支持されると共に他端をリニアガイド62に支持されたネジ軸65が、リニアガイド62内においてその長手方向に延在するように構成されている。
【0045】
また、幅方向駆動機構32は、リニアガイド62に対しその長手方向に摺動可能に収容されたナットブラケット64を備えている。そして、そのナットブラケット64には、ネジ軸65が螺挿されている。したがって、そのように構成された幅方向駆動機構32では、駆動モータM4によってネジ軸65が回転駆動されることで、ナットブラケット64がリニアガイド62内において長手方向に変位するようになっている。
【0046】
なお、リニアガイド62は、その上面が開放されており、ナットブラケット64を案内する内部の空間が溝状のガイド溝として形成された構成となっている。また、ナットブラケット64は、そのリニアガイド62におけるガイド溝の深さ寸法よりも若干大きい高さ寸法を有している。したがって、ナットブラケット64は、リニアガイド62内に収容された状態で、その上部がリニアガイド62から僅かに突出している。
【0047】
その上で、その幅方向駆動機構32は、積層ヘッド20において、前記のように一対の支持板23、23によって支持されている。より詳しくは、各支持板23には、幅方向駆動機構32を支持するためのホルダベース61が取り付けられている。その各ホルダベース61は、L字型のブラケットであり、屈曲部よりも一端側の部分(一端部)61aにおいて、各支持板23の側面に対しネジ部材によって取り付けられている。また、その取り付け状態は、ホルダベース61の他端側の部分(他端部)61bの外側の面が鉛直上方を向くようなかたちとなっている。
【0048】
なお、本実施例において、幅方向駆動機構32におけるリニアガイド62は、その長手方向において一対の支持板23、23の間隔より大きい寸法を有している。一方で、各支持板23には、リニアガイド62を挿通させることができる大きさの矩形状の孔23aが形成されている。また、ホルダベース61は、各支持板23の外側の側面に対し取り付けられると共に、上下方向において他端部61bにおける前記した外側の面の位置が孔23aの下端の位置よりも僅かに上方に位置するように配置されている。そして、幅方向駆動機構32は、孔23aに挿通されて各支持板23から突出するリニアガイド62の端部がホルダベース61に載置されるかたちで、一対の支持板23、23によって支持されている。その上で、各ホルダベース61の他端部61bに形成された貫通孔に挿通されたネジ部材がリニアガイド62に螺挿されることで、リニアガイド62が各ホルダ61bに固定されている。
【0049】
そして、そのように支持された幅方向駆動機構32に対し、押圧装置30が取り付けられることで、押圧装置30が積層ヘッド20において支持された状態とされる。なお、押圧装置30は、幅方向駆動機構32におけるナットブラケット64に対し取り付けられる。そこで、ナットブラケット64には、その押圧装置30を取り付けるための支持構成63が取り付けられている。また、その支持構成63は、ナットブラケット64に取り付けられる第1の支持部材63aと、その第1の支持部材63aに取り付けられる第2の支持部材63bとで構成されている。
【0050】
その第1の支持部材63aは、板状の部材であり、板厚方向に見て矩形状に形成された部材である。そして、その第1の支持部材63aは、前記のようにリニアガイド62から突出するナットブラケット64の上面に対し、その板厚方向における端面の一方を当接させるかたちで取り付けられている。但し、その取り付けは、前記端面の長辺方向をリニアガイド62の長手方向に一致させるかたちで行われている。また、第1の支持部材63aは、前記端面の短辺方向(リニアガイド62の幅方向)において、ナットブラケット64よりも大きい寸法を有している。その上で、その第1の支持部材63aの取り付けは、リニアガイド62の幅方向に関しては、第1の支持部材63aの前記短辺方向における両側の側面のうちの一方がその幅方向においてリニアガイド62に対し僅かに外側に位置するような配置で行われている。
【0051】
また、第2の支持部材63bは、同じく板状の部材であって、板厚方向に見て矩形状に形成された部材である。そして、その第2の支持部材63bは、第1の支持部材63aの前記した一方の側面に対し、その板厚方向における両端面の一方を当接させるかたちで取り付けられている。但し、その取り付けは、上下方向に関しては、第2の支持部材63bにおける前記端面の長辺方向が積層ヘッド20上で鉛直方向と略一致すると共に、第2の支持部材63bが第1の支持部材63aから下方へ向けて延在するようなかたちで行われている。また、その取り付けは、リニアガイド62の長手方向に関しては、第1の支持部材63aにおける前記端面の長辺方向の中心と第2の支持部材63bにおける前記端面の短辺方向の中心とを一致させるかたちで行われている。その上で、第2の支持部材63bに形成された貫通孔に挿通されたネジ部材が第1の支持部材63aに螺挿されることで、第2の支持部材63bが第1の支持部材63aに固定されている。
【0052】
そして、押圧装置30は、押圧駆動機構31がその支持構成63における第2の支持部材63bに取り付けられることで、積層ヘッド20上において支持構成63を介して幅方向駆動機構32に支持されている。また、押圧駆動機構31は、前記したようにリニアガイド35において幅方向駆動機構32に支持されている(支持構成63に取り付けられている)。
【0053】
より詳しくは、リニアガイド35は、支持構成63における第2の支持部材63bに対し取り付けられている。但し、その取り付けは、第2の支持部材63bの他方の端面と、リニアガイド35の後面とを当接させるかたちで行われる。また、その取り付けは、上下方向に関しては、リニアガイド35の長手方向を第2の支持部材63bにおける前記端面の長辺方向と略一致させた状態で行われている。さらに、その取り付けは、リニアガイド35の幅方向に関しては、その幅方向における中心を第2の支持部材63bにおける前記端面の短辺方向における中心と一致させた状態で行われている。また、第2の支持部材63bには貫通孔が形成されており、その貫通孔に挿通されたネジ部材がリニアガイド35に螺挿されることで、リニアガイド35が第2の支持部材63b(支持構成63)に固定されている。
【0054】
なお、押圧駆動機構31は、駆動モータM2を駆動源として備えている。そして、その駆動モータM2は、出力軸がリニアガイド35の長手方向と平行を成す向きで出力軸をリニアガイド35に向けるかたちでリニアガイド35の一端部に取り付けられている。その上で、押圧駆動機構31は、リニアガイド35における前記のような支持構成63(第2の支持部材63b)に対する取り付けにおいて、駆動モータM2がリニアガイド35の上方に位置する向きとなっている。
【0055】
また、リニアガイド35は、リニアガイド62と同様に、前面に開放されると共に長手方向に延在するガイド溝を有している。そして、
図2に示すように、駆動モータM2の出力軸にはネジ軸38が取り付けられており、そのネジ軸38は、ガイド溝内においてリニアガイド35の長手方向に延在している。さらに、そのガイド溝には、ナットブラケット36が長手方向に摺動可能に収容されており、ネジ軸38は、そのナットブラケット36に螺挿されている。したがって、駆動モータM2によってネジ軸38が回転駆動されることで、ナットブラケット36がリニアガイド35内において長手方向(上下方向)に変位する。なお、押圧駆動機構31においても、ナットブラケット36は、リニアガイド35から僅かに突出している。そして、そのナットブラケット36の前面には、押圧部材30aを支持するための板状の支持プレート37が取り付けられている。
【0056】
そして、ナットブラケット36には、その支持プレート37を介して押圧部材30aが取り付けられている。すなわち、押圧部材30aは、支持プレート37を介してナットブラケット36(押圧駆動機構31)に支持されている。なお、押圧部材30aは、その幅方向に関しては、その幅方向における中心をナットブラケット36(リニアガイド35)の幅方向における中心と一致させた状態で支持されている。また、上下方向に関しては、押圧部材30aは、ナットブラケット36よりも下方であって、リニアガイド35におけるガイド溝内においてナットブラケット36が最も下方に位置した状態でリニアガイド35の下端よりも下方に位置するようなナットブラケット36との位置関係で支持されている。なお、そのナットブラケット36が最も下方に位置する状態は、押圧部材30aが前記積層位置に位置する状態である。
【0057】
因みに、本実施例の押圧部材30aは、図示のように断面形状が略くさび形のブロック状の部材であり、先端部分を下方に向けた状態で支持プレート37に対し取り付けられている。また、押圧部材30aは、その幅方向において、前記積層面に対し積層されるプリプレグシートPSの幅方向における寸法と略同じ寸法を有している。
【0058】
以上で説明したように、押圧装置30においては、押圧部材30aは、押圧駆動機構31において上下方向へ移動するように駆動されるナットブラケット36に支持されている。また、そのナットブラケット36が収容されるリニアガイド35は、幅方向駆動機構32においてリニアガイド62の長手方向(積層ヘッド20の幅方向)へ移動するように駆動されるナットブラケット64に支持されている。したがって、押圧部材30aは、押圧駆動機構31においてナットブラケット36が上下方向へ移動するように駆動されることで上下方向へ移動すると共に、幅方向駆動機構32においてナットブラケット64が積層ヘッド20の幅方向へ移動するように駆動されることで幅方向へ移動する。
【0059】
そして、本実施例における自動積層装置は、その幅方向駆動機構32(駆動モータM4)の駆動を制御する駆動制御器72を備えている。なお、その駆動制御器72は、前記した主制御装置70に含まれている。また、主制御装置70は、前記のように積層ヘッド20を駆動するための積層方向への移動速度(以下、「積層速度」とも言う。)等の設定値や切断装置27がプリプレグシートPSを切断する上での切断角度の設定値等が設定された設定器73も備えている。
【0060】
なお、幅方向駆動機構32の駆動について、本実施例では、その制御は、前記のように設定器73に設定された積層速度の設定値及び切断角度の設定値に基づいて行われる。すなわち、本実施例では、幅方向駆動機構32による押圧部材30a(押圧装置30)の幅方向への移動速度(以下、「幅方向移動速度」とも言う。)の設定値自体は設定されておらず、その幅方向移動速度は、積層速度の設定値及び切断角度の設定値を用いて求められる。したがって、その積層速度の設定値及び切断角度の設定値が、幅方向移動速度に関する設定値であり、その設定値が主制御装置70における設定器73に設定されている。
【0061】
その幅方向移動速度について、より詳しくは、積層ヘッド20が積層方向へ向けて移動している状態で、押圧部材30a(押圧装置30)を幅方向へ移動させることで、押圧部材30a(押圧装置30)は、プリプレグシートPS(プリプレグ片PS’)に対し相対的にプリプレグシートPS(プリプレグ片PS’)の長手方向及び幅方向に対し角度を成す方向(以下、「角度方向」と言う。)へ移動することとなる。そして、その角度方向は、積層速度に対する幅方向移動速度に応じたものとなる。
【0062】
その上で、その角度方向がプリプレグシートPS(プリプレグ片PS’)の長手方向に対し成す角度を切断角度と一致させるべく、実際の積層のために設定されている積層速度の設定値及び切断角度の設定値に基づいてその幅方向移動速度を求めている。なお、その幅方向移動速度は、切断角度の設定値及び積層速度の設定値を用いた演算によって求められ、そのための演算式等がプログラム(演算プログラム)として駆動制御器72に記憶されている。
【0063】
また、主制御装置70は、プリプレグ片PS’の切断端が押圧部材30a(押圧装置30)の位置に達した時点を把握し、その時点で押圧部材30a(押圧装置30)の幅方向への移動を開始させるための信号(移動開始信号)を駆動制御器72に対し出力するように構成されている。
【0064】
より詳しくは、主制御装置70における設定器73には、切断装置27のカッタ27aによる切断位置から押圧装置30の押圧部材30aによる押圧位置までのプリプレグシートPSの先端側の経路長(先端側経路長)が予め設定されている。
【0065】
また、自動積層装置は、図示は省略するが原反ロール21の巻径を検出するための巻径センサ及び送出軸28の回転量を検出するエンコーダを備えており、それらの検出信号が主制御装置70に入力されるように構成されている。そして、主制御装置70は、それらの検出信号に基づき、原反ロール21から引き出されるプリプレグシートPSの長さ(引出長)を求め、その引出長を監視するように構成されている。
【0066】
その上で、主制御装置70は、切断装置27によるプリプレグシートPSの切断が行われた時点(カッタ駆動機構が作動した時点)、すなわち、1回の積層動作分のプリプレグシートPSが原反ロール21から引き出された時点からの引出長が前記先端側経路長と一致した時点で、駆動制御器72に対し移動開始信号を出力するように構成されている。
【0067】
なお、駆動制御器72は、前述のように駆動モータM4の駆動を制御する構成であり、その出力側において駆動モータM4と接続されている。そして、駆動制御器72は、前記した移動開始信号の入力に応じて駆動モータM4の駆動制御を実行するように構成されている。
【0068】
その駆動制御について、より詳しくは、駆動制御器72は、移動開始信号の入力を契機として、設定器73から積層速度の設定値及び実行中の積層動作に用いられるその積層方向に応じた切断角度の設定値を読み出し、その読み出した設定値を用いて前記の演算プログラムにより幅方向移動速度を求めるように構成されている。
【0069】
また、設定器73には、幅方向駆動機構32におけるネジ軸65の単位回転量当りのナットブラケット64の移動量が予め設定されているものとする。その上で、駆動制御器72は、設定器73に対しプリプレグシートPS(プリプレグ片PS’)の幅寸法が設定されるのに伴い、その幅寸法と前記移動量とから、その幅寸法分だけナットブラケット64(押圧部材30a)を移動させるのに要するネジ軸65の回転量(移動回転量)を求めるように構成されている。なお、その移動回転量は、押圧部材30aの移動を開始させてからそれを終了させるまでの幅方向駆動機構32(駆動モータM4)の駆動期間を定める情報となる。すなわち、本実施例では、その駆動期間は、ネジ軸65を前記移動回転量だけ回転させる駆動モータM4の回転量で定められている。
【0070】
そして、駆動制御器72は、移動開始信号の入力に応じて、前記のように求められた幅方向移動速度に応じた駆動速度での駆動モータM4の駆動を開始すると共に、駆動モータM4の回転量が前記移動回転量に達した時点でその駆動を停止するように構成されている。
【0071】
以上のような本実施例における自動積層装置について、その作用を
図4に基づいて説明する。なお、
図4は、積層されるプリプレグ片PS’(プリプレグシートPS)を平面的に見た図であって、そのプリプレグ片PS’に加え、プリプレグ片PS’を押圧する押圧部材30aを示した図である。
【0072】
支持機構50及び積層ヘッド20を駆動することによる積層動作の開始後、前述のように1回の積層動作分のプリプレグシートPSが原反ロール21から引き出された時点で、プリプレグシートPSに対する切断装置27による切断動作が実行され、原反ロール21に連なるプリプレグシートPSからプリプレグ片PS’が切り出された状態となる。そして、その時点から前記先端側経路長分のプリプレグシートPSが更に原反ロール21から引き出されると、
図4(a)に示すように、プリプレグ片PS’の切断端が押圧部材30aの位置に達した状態となる。そして、そのようにプリプレグ片PS’の切断端が押圧部材30aの位置に達した時点で、主制御装置70は、駆動制御器72に対し移動開始信号を出力する。
【0073】
駆動制御器72は、その移動開始信号が入力されると、設定器73に設定された積層速度の設定値及び実行中の積層動作に用いられている切断角度の設定値(
図4における切断角度θ)に基づき、押圧部材30aを移動させるための幅方向移動速度を求める。そして、駆動制御器72は、その求めた幅方向移動速度に応じた駆動速度で、幅方向駆動機構32(駆動モータM4)の駆動を開始する。それにより、積層ヘッド20上においては、押圧部材30aがその幅方向移動速度で幅方向へ向けて移動を開始する。
【0074】
なお、1回の積層動作は、少なくとも押圧部材30aがプリプレグ片PS’の切断端の積層方向における終端に達するまで積層ヘッド20を積層方向へ移動させるかたちで行われる。したがって、その押圧部材30aの幅方向への移動が開始される押圧部材30aが前記の切断端に達した時点から前記終端に達するまでの間では、積層ヘッド20は、前記の積層速度で積層方向へ向けての移動を継続している。その結果として、押圧部材30aは、積層ヘッド20の移動に伴う自身の積層方向への移動と幅方向駆動機構32による前記のような幅方向移動速度での幅方向への移動との合成で、
図4(b)に示すように、積層方向に対し切断角度θと同じ角度を成す方向、すなわち、プリプレグ片PS’の切断端に沿った方向へ、プリプレグ片PS’に対し相対的に移動することとなる。
【0075】
そして、駆動制御器72は、駆動モータM4の回転量が前記移動回転量に達すると駆動モータM4の駆動を停止させる。それにより、押圧部材30aの幅方向への移動が終了する。
【0076】
このように、本発明によれば、押圧部材30aによりプリプレグシートPS(プリプレグ片PS’)を押圧しつつ行われる積層動作において、プリプレグ片PS’の切断端が押圧部材30aの位置に達してからのプリプレグ片PS’の押圧は、押圧部材30aがプリプレグ片PS’に対しその切断端に沿って相対的に移動するかたちで行われる。その結果として、プリプレグ片PS’に対し積層方向(プリプレグシートPSの長手方向)において重複して存在する(原反ロール21に連なる)プリプレグシートPSの先端側の部分を押圧すること無く、押圧部材30aによるプリプレグ片PS’の押圧が行われることとなる。それにより、プリプレグシートPSの先端側の部分が押圧されることによって生じる問題の発生を回避しつつも、プリプレグ片PS’の切断端の部分が前記積層面に対し押圧されないことによって生じる問題の発生を防ぐことができるようになり、製造される繊維強化複合材の品質不良を防ぐことができる。
【0077】
因みに、前記のように駆動モータM4の駆動が停止されると、主制御装置70は、押圧駆動機構31における駆動モータM2を駆動して押圧部材30aを前記積層位置から前記待機位置へ移動させる。そして、駆動制御器72は、その押圧部材30aの前記待機位置へ向けた移動が完了した時点で、前述の押圧部材30aを幅方向へ移動させる際とは逆方向に出力軸を回転させるように駆動モータM4の駆動を開始する。それにより、押圧部材30aが前述の移動とは反対の方向へ向けて移動する。そして、駆動制御器72は、その逆転量が前記移動回転量と同じ回転量に達した時点で、その駆動モータM4の駆動を停止する。その結果として、押圧部材30aが元の位置(積層動作開始時の位置)に戻った状態となる。
【0078】
なお、本発明については、以上で説明した実施例(前記実施例)に限定されるものではなく、以下のような変形した実施形態でも実施が可能である。
【0079】
(1)前記実施例では、押圧部材30a(押圧装置30)を幅方向へ移動させるための幅方向移動速度を、積層速度の設定値と切断角度の設定値とを用いて積層動作中に求めている。しかし、本発明が前提とする自動積層装置において、積層速度が特定の速度に固定されている場合には、幅方向移動速度は、切断角度の設定値のみを用いて求められる。さらに、その自動積層装置が、積層範囲の縁に対し角度を成す特定の方向にのみプリプレグシートPSを積層するように構成されている(切断角度が固定されている)場合には、その幅方向移動速度を予め求めることが可能である。したがって、その場合には、幅方向移動速度を予め求めておき、設定器73に設定しておくことも可能である。
【0080】
(2)前記実施例では、押圧部材30a(押圧装置30)の移動を開始させてからその移動を終了させるまでの幅方向駆動機構32(駆動モータM4)の駆動期間をネジ軸65の回転量である移動回転量で定めている。しかし、その駆動期間は、そのようなネジ軸65の回転量に限らず、幅方向移動速度に応じた時間(移動時間)で定められていても良い。なお、その移動時間は、幅方向移動速度と前記幅寸法とに基づいて求められる。そして、前述のように幅方向移動速度が予め求められる場合には、この移動時間も予め求めて設定しておくことも可能である。また、その移動時間の経過は、例えば、駆動モータM4の駆動の開始によって作動を開始するタイマ回路を駆動制御器72に設け、そのタイマ回路によって計測するようにすれば良い。
【0081】
(3)押圧装置を移動させる駆動機構について、前記実施例では、その駆動機構は、駆動モータM4を駆動源とするボールネジ機構で構成されている。しかし、本発明による自動積層装置において、駆動機構は、そのようなボールネジ機構で構成されたものに限らず、押圧装置をプリプレグシートPSの幅方向と平行な方向へ移動させることが可能な機構であれば、ラックオピニオン機構等、他のどのような機構で構成されていても良い。
【0082】
(4)押圧装置における熱硬化性プリプレグを押圧する部材(押圧部材30a)を上下方向へ移動させる機構について、前記実施例では、その機構としての押圧駆動機構31は、駆動モータM2を駆動源とするボールネジ機構で構成されている。しかし、本発明が前提とする自動積層装置において、その機構は、ボールネジ機構で構成されたものに限らず、他の機構(例えばラックオピニオン機構)で構成されていても良い。
【0083】
また、その押圧部材について、前記実施例では、押圧部材30aは、断面形状が略くさび形のブロック状の部材から成っている。しかし、押圧部材の形状は、そのような断面形状が略くさび形のものに限らず、プリプレグシートPSをその幅方向に亘って押圧可能なものであれば、どのような形状のものであっても良い。また、押圧部材は、ブロック状の部材から成るものにも限らず、ローラ状の部材から成るものであっても良い。なお、その場合、押圧部材は、押圧装置において軸心がプリプレグシートPSの幅方向と平行を成す向きで回転可能に支持される。
【0084】
(5)切断装置について、前記実施例では、切断装置27は、カッタ27aをカッタ駆動機構が進退駆動させることでプリプレグシートPSを切断するように構成されている。しかし、本発明が前提とする自動積層装置において、切断装置は、そのように構成されたものに限らない。例えば、切断装置は、周面上に刃部(切断刃)を有するカッタロールを回転駆動して対象を切断するロータリ型の切断装置であっても良い。そして、その構成においては、カッタロールをその長手方向(軸線方向)において回転可能とすることで、切断角度を変更可能とすることができる。
【0085】
なお、本発明は、以上で説明した例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0086】
20 積層ヘッド 21 原反ロール
23 支持板 25 巻取装置
27 切断装置 28 送出軸
30 押圧装置 30a 押圧部材
31 押圧駆動機構 32 幅方向駆動機構
35 リニアガイド 36 ナットブラケット
37 支持プレート 38 ネジ軸
40 テーブル 41 天板
50 支持機構 51 サイドレール
53 コラム 55 クロスビーム
57 サドル部 61 ホルダベース
62 リニアガイド 63 支持構成
64 ナットブラケット 65 ネジ軸
70 主制御装置 72 駆動制御器
73 設定器
PS プリプレグシート PS’ プリプレグ片
RP 剥離紙 θ 切断角度
M1~M4 駆動モータ