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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20231003BHJP
   C09J 175/14 20060101ALI20231003BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20231003BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C08F290/06
C09J175/14
C09J4/02
C09J11/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019213546
(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公開番号】P2021084944
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 伸也
(72)【発明者】
【氏名】宇野 弘基
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-320284(JP,A)
【文献】特開2008-133326(JP,A)
【文献】特開昭53-113843(JP,A)
【文献】特開2012-214640(JP,A)
【文献】特開2012-162652(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121587(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
C09J 175/14
C09J 4/02
C09J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)数平均分子量が5,000以上であり、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレートと、
(B)ウレタン結合を有さない(メタ)アクリレートと、
(C)(メタ)アクリル酸と、
(D)(メタ)アクリロイル基を有する酸性リン酸エステルの中和塩と
を含有し、
(A)の含有量が(A)~(C)の合計100質量部に対して40~75質量部であ
(B)の含有量が(A)~(C)の合計100質量部に対して1~38質量部であり、
(C)の含有量が(A)~(C)の合計100質量部に対して15~24質量部であり、
(D)の含有量が(A)~(C)の合計100質量部に対して1~10質量部である、組成物。
【請求項2】
(D)の中和塩は、アミン、アンモニア及びアルカリ金属からなる群から選択された少なくとも1つの塩基による中和塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(D)の中和塩は、アルカノールアミンによる中和塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
硬化物が、以下の(a)~(c)の全ての条件を満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
(a)JIS K7161-2:2014の附属書Aに規定される1BA型ダンベル試験片の引張速度10mm/分での破断伸びが-20℃で20%以上である。
(b)JIS K6850:1999に準拠して測定される、70℃の温水に7日浸漬した後の試験片のせん断接着強さが10MPa以上である。
(c)JIS K6850:1999に準拠して測定される、70℃の温水に7日浸漬する前後の試験片のせん断接着強さの保持率が50%以上である。
【請求項5】
前記硬化物は、以下の(d)~(f)の少なくとも1つの条件を更に満たす、請求項に記載の組成物。
(d)JIS K7161-2:2014の附属書Aに規定される1BA型ダンベル試験片の引張速度10mm/分での破断伸びが23℃で100%以上である。
(e)JIS K7161-2:2014の附属書Aに規定される1BA型ダンベル試験片の引張速度10mm/分での破断伸びが80℃で170%以上である。
(f)JIS K6850:1999に準拠して測定される、70℃の温水に7日浸漬する前の試験片のせん断接着強さが20MPa以上である。
【請求項6】
(E)重合開始剤及び(F)還元剤の少なくとも1つを更に含有する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の組成物を含有する接着剤組成物。
【請求項8】
請求項に記載の組成物及び(E)重合開始剤を含有する第一剤と、
請求項に記載の組成物及び(F)還元剤を含有する第二剤と
を備える、二剤型の組成物。
【請求項9】
請求項に記載の組成物及び(E)重合開始剤を含有する第一剤と、
請求項に記載の組成物及び(F)還元剤を含有する第二剤と
を備える、二剤型の接着剤組成物。
【請求項10】
請求項に記載の接着剤組成物又は請求項に記載の二剤型の接着剤組成物の硬化物である接着層を備える接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車部材には鋼板が一般に用いられているが、環境負荷に鑑み、部材の軽量化に対する需要が高まっている。そのため、鋼板よりも軽量のアルミニウムやCFRPなどの部材が鋼板と併用されている。実際、これらの異種材料を組み合わせて接合することで製造された自動車も既に製造販売されている。
【0003】
しかしながら、その接合にはリベット接合などの機械的接合が主に用いられており、異種材料の接合において使用されるエポキシ系などの構造用接着剤は、適用部位が限定されている。その理由は、構造用接着剤の耐久信頼性に問題があるためである。具体的には、構造用接着剤は、硬化後の伸び性が乏しく、異種材料を接合した際の線膨張係数差による応力を緩和できないため、耐久劣化して接着面が剥がれるという問題がある(特許文献1~4)。
【0004】
そこで、異種材料を接合した際の応力を緩和するために、エポキシ樹脂及び潜在型硬化剤を含む、硬化後の伸び率が15%であるエポキシ系接着剤が提案されている(特許文献5)。また、低温から高温まで高い弾性率と伸びを有し、耐水性、耐熱性に優れる樹脂組成物として、ウレタンアクリレート及び単官能性不飽和化合物を含有する硬化性樹脂組成物が報告されている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-145185号公報
【文献】特開平5-148337号公報
【文献】特開平5-156227号公報
【文献】特開平7-145225号公報
【文献】特開2009-108278号公報
【文献】特開昭63-090525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献5に記載のエポキシ系接着剤は、硬化物の伸びが小さく、異種材料を接合した際の線膨張係数差による応力を十分に緩和できない。特に、このエポキシ系接着剤は、-20℃以下の低温環境下での硬化物の伸び性が乏しく、寒冷地では接着強度が著しく低下してしまう。また、自動車部材などは、雨や雪などの影響によって高湿度環境下に曝されることがあるが、このエポキシ系接着剤の硬化物は、耐水性が十分でないため、高湿度環境下で接着強度も低下し易い。
【0007】
一方、特許文献6に記載の硬化性樹脂組成物は、硬化物が低温から高温まで高い弾性率及び伸びを有すると謳われており、20℃から60℃まで高い弾性率及び伸びを有することが示されている。しかしながら、特許文献6は、-20℃以下の低温における伸びについては何ら検討されておらず、低温環境下での硬化物の伸び性が十分であるとはいえない。
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、低温での伸び率が高く且つ耐水性に優れる硬化物を与えることが可能な組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(A)数平均分子量が5,000以上であり、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレートと、
(B)ウレタン結合を有さない(メタ)アクリレートと、
(C)(メタ)アクリル酸と、
(D)(メタ)アクリロイル基を有する酸性リン酸エステルの中和塩と
を含有し、
(A)の含有量が(A)~(C)の合計100質量部に対して40~75質量部であ
(B)の含有量が(A)~(C)の合計100質量部に対して1~38質量部であり、
(C)の含有量が(A)~(C)の合計100質量部に対して15~24質量部であり、
(D)の含有量が(A)~(C)の合計100質量部に対して1~10質量部である、組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、上記の組成物を含有する接着剤組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、上記の組成物及び(E)重合開始剤を含有する第一剤と、上記の組成物及び(F)還元剤を含有する第二剤とを備える、二剤型の組成物及び二剤型の接着剤組成物に関する。
【0014】
さらに、本発明は、上記の接着剤組成物又は上記の二剤型の接着剤組成物の硬化物である接着層を備える接合体に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、低温での伸び率が高く且つ耐水性に優れる硬化物を与えることが可能な組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、改良などを行うことができる。実施形態に開示されている複数の構成要素は、適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよいし、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0017】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る組成物は、(A)ウレタン結合を有する(メタ)アクリレートと、(B)ウレタン結合を有さない(メタ)アクリレートと、(C)(メタ)アクリル酸と、(D)酸性リン酸エステルの中和塩とを含有する。本発明の実施形態1に係る組成物は、必要に応じて、(E)重合開始剤及び(F)還元剤の少なくとも1つを更に含有してもよい。
本発明の実施形態1に係る組成物は、好ましくは硬化性組成物である。以下、組成物のことを硬化性組成物ということもある。
【0018】
<(A)ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート>
ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート(以下、「ウレタン(メタ)アクリレート」と略す)は、としては、特に限定されないが、例えば、ポリオール化合物と有機ポリイソシアネート化合物とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応(例えば、重縮合反応)させることにより得られる、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレートである。
【0019】
ポリオール化合物(以下、単に「ポリオール」ということがある)としては、特に限定されず、ポリエーテル型、ポリエステル型などを用いることができる。また、ポリオールは、多価アルコールであってもよい。ポリオールの例としては、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、テトラメチレンエーテルグリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの中でも、ポリエステルポリオール、テトラメチレングリコール及びブタンジオールから選ばれる1種以上が好ましい。
ここで、ポリエステルポリオールとは、ポリオールと多塩基酸との縮合物のことを意味する。
【0020】
ポリエステルポリオールに用いられる多塩基酸としては、特に限定されないが、ジカルボン酸が好ましい。ジカルボン酸の例としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、イタコン酸、アジピン酸、イソフタル酸が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの中でもアジピン酸が好ましい。
【0021】
ウレタン(メタ)アクリレートの製法は、例えば、特開平7-25957号公報、特開2002-173515号公報、特開平7-292048号公報、特開2000-351819号公報などに記載されている。
【0022】
有機ポリイソシアネート化合物(以下、単に「イソシアネート」ということがある)としては、特に限定されず、例えば、芳香族系、脂肪族系、環式脂肪族系、脂環式系などのポリイソシアネートを用いることができる。イソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(水添MDI)などが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの中でも、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましく、イソホロンジイソシアネートがより好ましい。
【0023】
ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0024】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、式(1)で表されるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを用いることができる。
Z-O-(R1-O-)p-H (1)
式(1)中、Zは(メタ)アクリロイル基、R1はアルキレン基、pは1~10の整数を表す。
式(1)におけるR1のアルキレン基の炭素数は1~8が好ましく、2~6がより好ましい。
【0025】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの中でも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0026】
ウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量は、5,000以上、好ましくは7,000以上、より好ましくは18,000以上である。数平均分子量を5,000以上に制御することにより、低温(例えば、-20℃以下)での硬化物の破断伸びを高めることができる。
なお、ウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量の上限は、特に限定されないが、一般的に50,000以下、好ましくは30,000以下である。
【0027】
ここで、本明細書において「数平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定される標準ポリスチレン換算の値のことを意味する。具体的には、数平均分子量は、下記の条件にて、溶剤としてテトラヒドロフランを用い、GPCシステム(東ソー株式会社製SC-8010)を使用し、市販の標準ポリスチレンで検量線を作成して求めることができる。
流速:1.0mL/min
設定温度:40℃
カラム構成:東ソー株式会社製「TSK guardcolumn MP(×L)」6.0mmID×4.0cm1本、及び東ソー株式会社製「TSK-GELMULTIPOREHXL-M」7.8mmID×30.0cm(理論段数16,000段)2本、計3本(全体として理論段数32,000段)
サンプル注入量:100μL(試料液濃度1mg/mL)
送液圧力:39kg/cm2
検出器:RI検出器
【0028】
ウレタン(メタ)アクリレートの使用量は、(A)~(C)の合計100質量部に対して40質量部以上、好ましくは42質量部以上、より好ましくは44質量部以上である。このような範囲にウレタン(メタ)アクリレートの使用量を制御することにより、低温(例えば、-20℃以下)での硬化物の破断伸びを大きくできる。また、ウレタン(メタ)アクリレートの使用量は、(A)~(C)の合計100質量部に対して75質量部以下である。このような範囲にウレタン(メタ)アクリレートの使用量を制御することにより、接着強度を高めることができる。
【0029】
<(B)ウレタン結合を有さない(メタ)アクリレート>
ウレタン結合を有さない(メタ)アクリレート(以下、「(メタ)アクリレート」と略す)としては、単官能(メタ)アクリレート及び/又は多官能(メタ)アクリレートを用いることができる。その中でも、(メタ)アクリレートとしては、単官能(メタ)アクリレートが好ましい。
ここで、本明細書において「単官能(メタ)アクリレート」とは、1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートのことを意味する。また、「多官能(メタ)アクリレート」とは、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートのことを意味する。
【0030】
また、(メタ)アクリレートは、炭化水素基を有する(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上が好ましく、炭化水素基を有する(メタ)アクリレートがより好ましい。
ここで、炭化水素基としては、特に限定されないが、非置換が好ましい。また、炭化水素基は、炭素数2~16が好ましい。
【0031】
炭化水素基の具体例としては、脂肪族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、飽和炭化水素及び不飽和炭化水素のいずれであってもよいが、アルキル基、アルキレン基から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。また、脂肪族炭化水素基として、脂環式炭化水素基、非脂環式炭化水素基から選ばれる1種以上を用いてもよく、脂環式炭化水素基を用いることが好ましい。なお、脂環式炭化水素基としてはイソボルニル基、非脂環式炭化水素基としてはエチルヘキシル基を用いることが好ましい。
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、上述のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0032】
(メタ)アクリレートの使用量は、特に限定されないが、(A)~(C)の合計100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上である。また、(メタ)アクリレートの使用量は、好ましくは38質量部以下である。このような範囲に(メタ)アクリレートの使用量を制御することにより、接着強度を高めることができる。
【0033】
<(C)(メタ)アクリル酸>
(メタ)アクリル酸は、(メタ)アクリレートと併用することで、高温(例えば、80℃以上)での引張弾性率などの特性を向上させる成分である。仮説ではあるが、(メタ)アクリル酸のカルボキシル基が他の分子と水素結合を生成するため、高温での引張弾性率などの特性が向上すると本発明者は考えている。この効果は、例え(メタ)アクリレートがイソボルニル(メタ)アクリレートのような嵩高い高分子量のものであったとしても(メタ)アクリレート単独では得られないものであって、あくまで(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸が共存することでの相乗効果であると考えられる。
(メタ)アクリル酸としては、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を用いることができるが、メタクリル酸を用いることが好ましい。
【0034】
(メタ)アクリル酸の使用量は、(A)~(C)の合計100質量部に対して、15質量部以上である。このような範囲に(メタ)アクリル酸の使用量を制御することにより、高温での硬化物の引張弾性率を高めることができる。また、(メタ)アクリル酸の使用量は、特に限定されないが、(A)~(C)の合計100質量部に対して、好ましくは24質量部以下である。このような範囲に(メタ)アクリル酸の使用量を制御することにより、低温での硬化物の破断伸びを高めることができる。
【0035】
(B)及び(C)の合計使用量は、特に限定されないが、(A)~(C)の合計100質量部に対して、好ましくは25質量部以上である。このような範囲に(B)及び(C)の合計使用量を制御することにより、接着強度を高めることができる。また、(B)及び(C)の合計使用量は、(A)~(C)の合計100質量部に対して、好ましくは60質量部以下、より好ましくは56質量部以下である。このような範囲に(B)及び(C)の合計使用量を制御することにより、低温での硬化物の破断伸びを高めることができる。
【0036】
<(D)酸性リン酸エステルの中和塩>
酸性リン酸エステルの中和塩は、硬化物の耐水性を向上させる成分である。硬化物の耐水性の低下は、硬化物が加水分解することによって生じると考えられるため、酸性リン酸エステルを塩で中和して酸性成分を低減させることにより、硬化物の加水分解を抑制できる。
【0037】
酸性リン酸エステルを中和するための中和塩としては、特に限定されないが、アミン、アンモニア、アルカリ金属、アルカリ土類金属からなる群から選択された少なくとも1つの塩基による中和塩が好ましく、アミンによる中和塩がより好ましい。
中和塩として用いられるアミンの例としては、モノエタノールアミンなどのアルカノールアミン、塩基性アミノ酸が挙げられる。
【0038】
酸性リン酸エステルとしては、特に限定されないが、(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。このような酸性リン酸エステルを用いることにより、高い接着強度を発現させることができる。
酸性リン酸エステルの中和塩は、下記の一般式(1)で表すことができる。このような構造を有する酸性リン酸エステルの中和塩を1種以上用いることが好ましい。
【0039】
【化1】
【0040】
一般式(1)中、R1は水素原子又はメチル基であり;R2は、炭素数1~4のアルキレン基であって、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよく;Aは酸素原子又はNHであり;mは1~40の整数であり;M1及びM2はそれぞれ独立して水素原子又は中和塩であるが、M1及びM2の少なくとも1つが中和塩である。M1及びM2は、一方が中和塩であり、他方が水素原子であることが好ましい。
【0041】
酸性リン酸エステルの中和塩は、酸性リン酸エステルとアミンなどの塩基とを混合することによって調製できる。また、酸性リン酸エステルの中和塩は市販されているため、市販品(例えば、ユニケミカル株式会社製のホスマー(登録商標)MH)を用いることもできる。ホスマー(登録商標)MH(methacroyl oxyethyl acid phosphate monoethanolamine half salt)の構造は、下記の式(2)で表される。
【0042】
【化2】
【0043】
酸性リン酸エステルの中和塩の使用量は、特に限定されないが、(A)~(C)の合計100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上である。このような範囲に酸性リン酸エステルの中和塩の使用量を制御することにより、硬化物の耐水性を高めることができる。また、酸性リン酸エステルの中和塩の使用量は、(A)~(C)の合計100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下である。このような範囲に酸性リン酸エステルの中和塩の使用量を制御することにより、耐水性以外に要求される硬化物の特性(例えば、低温での破断伸び率)を確保できる。
【0044】
<(E)重合開始剤>
重合開始剤としては、特に限定されないが、反応性の点で、有機過酸化物が好ましい。
有機過酸化物の例としては、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの中でも、反応性の点で、クメンハイドロパーオキサイドが好ましい。
【0045】
重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、(A)~(C)の合計100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。このような範囲に重合開始剤の使用量を制御することにより、組成物の硬化速度を高めることができる。また、重合開始剤の使用量は、(A)~(C)の合計100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。このような範囲に重合開始剤の使用量を制御することにより、組成物の貯蔵安定性を向上させることができる。
【0046】
<(F)還元剤>
還元剤としては、重合開始剤と反応し、ラジカルを発生するものであれば特に限定されず、公知の各種還元剤を用いることができる。
還元剤としては、第3級アミン、チオ尿素誘導体及び遷移金属塩から選ばれる1種以上が好ましく、遷移金属塩がより好ましい。遷移金属塩としては、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅及びバナジルアセチルアセトナートなどが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの中でも、バナジルアセチルアセトナートが好ましい。
【0047】
還元剤の使用量は、特に限定されないが、(A)~(C)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上である。このような範囲に還元剤の使用量を制御することにより、組成物の硬化速度を高めることができる。また、還元剤の使用量は、(A)~(C)の合計100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。このような範囲に還元剤の使用量を制御することにより、組成物の貯蔵安定性を向上させることができる。
【0048】
<その他の成分>
本発明の実施形態1に係る組成物では、上記の(A)~(F)以外に、本発明の効果を阻害しない範囲において、当該技術分野において公知の成分を使用できる。当該公知の成分の例としては、増粘剤、安定剤、フィラーなどが挙げられる。
【0049】
上記のような成分を含有する本発明の実施形態1に係る組成物は、上記の成分を混合することによって製造できる。混合方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の混合装置を用いればよい。
【0050】
本発明の実施形態1に係る組成物は、低温での伸び率が高く且つ耐水性に優れる硬化物を与えるため、各種用途で用いることができる。その中でも、この組成物は、接着剤組成物に用いることが好ましい。接着剤組成物に用いた場合、低温時の接着強度及び耐水性に優れる接着層を形成できる。接着剤組成物は、この組成物に加えて、当該技術分野において公知の成分を更に含有してもよい。
【0051】
本発明の実施形態1に係る組成物は、一剤型として用いてよいが、二剤型として用いてもよい。本発明の実施形態1に係る組成物を二剤型として用いる場合、貯蔵中は組成物の全成分を混合せずに第一剤と第二剤とに分ければよい。具体的には、二剤型の組成物は、(A)~(D)を含有する組成物及び(E)重合開始剤を含有する第一剤と、(A)~(D)を含有する組成物及び(F)還元剤を含有する第二剤とを備えることが好ましい。二剤型の組成物は、使用時に第一剤及び第二剤を予め混合した後に塗布して硬化させてもよいし、第一剤及び第二剤を別々に塗布して接触させることで混合して硬化させてもよい。
【0052】
同様に、本発明の実施形態1に係る組成物を含有する接着剤組成物は、一剤型として用いてよいが、二剤型として用いてもよい。本発明の実施形態1に係る組成物を含有する接着剤組成物を二剤型として用いる場合、貯蔵中は接着剤組成物の全成分を混合せずに第一剤と第二剤とに分ければよい。具体的には、二剤型の接着剤組成物は、(A)~(D)を含有する組成物及び(E)重合開始剤を含有する第一剤と、(A)~(D)を含有する組成物及び(F)還元剤を含有する第二剤とを備えることが好ましい。二剤型の接着剤組成物は、使用時に第一剤及び第二剤を予め混合した後に塗布して硬化させてもよいし、第一剤及び第二剤を別々に塗布して接触させることで混合して硬化させてもよい。
なお、二剤型の接着剤組成物を使用する場合、第一剤に含有される(E)重合開始剤及び第二剤に含有される(F)還元剤の使用量は、第一剤及び第二剤に含有される(A)~(D)の合計100質量部に対して(E)重合開始剤及び(F)還元剤の使用量が上述の範囲となるように調整することが好ましい。
【0053】
上記の接着剤組成物は、2つの被着体の間に配置して硬化させることにより、接合体を作製できる。このようにして作製された接合体は、接着剤組成物の硬化物である接着層を備える。接着層は、低温時の接着強度及び耐水性に優れているため、各種分野における接合体、特に自動車部材の接合体に用いるのに適している。
上記の接着剤組成物を用いることが可能な被着体としては、特に限定されず、紙、木材、セラミック、ガラス、陶磁器、ゴム、プラスチック、モルタル、コンクリート、金属などが挙げられる。
【0054】
(実施形態2)
本発明の実施形態2に係る組成物は、硬化物が、以下の(a)~(c)の全ての条件を満たす。
(a)JIS K7161-2:2014の附属書Aに規定される1BA型ダンベル試験片の引張速度10mm/分での破断伸びが-20℃で20%以上である。
(b)JIS K6850:1999に準拠して測定される、70℃の温水に7日浸漬した後の試験片のせん断接着強さが10MPa以上である。
(c)JIS K6850:1999に準拠して測定される、70℃の温水に7日浸漬する前後の試験片のせん断接着強さの保持率が50%以上である。
硬化物が(a)の条件を満たすことにより、低温環境下での硬化物の伸び性を十分に確保できる。また、硬化物が(b)及び(c)の条件を満たすことにより、湿潤環境下における硬化物の耐水性を十分に確保できる。
本発明の実施形態2に係る組成物は、好ましくは硬化性組成物である。以下、組成物のことを硬化性組成物ということもある。
【0055】
ここで、(b)及び(c)における浸漬は、JIS K6850:1999に規定される試験片を用いて行われる。7日浸漬した後に取り出した試験片は、自然乾燥させた後にせん断接着強さの測定を行う。
【0056】
硬化物は、以下の(d)~(f)の少なくとも1つの条件を更に満たすことが好ましい。
(d)JIS K7161-2:2014の附属書Aに規定される1BA型ダンベル試験片の引張速度10mm/分での破断伸びが23℃で100%以上である。
(e)JIS K7161-2:2014の附属書Aに規定される1BA型ダンベル試験片の引張速度10mm/分での破断伸びが80℃で170%以上である。
(f)JIS K6850:1999に準拠して測定される、70℃の温水に7日浸漬する前の試験片のせん断接着強さが20MPa以上である。
硬化物が(d)の条件を満たすことにより、常温での硬化物の伸び性を十分に確保できる。また、硬化物が(e)の条件を満たすことにより、高温での硬化物の伸び性を十分に確保できる。さらに、硬化物が(f)の条件を満たすことにより、硬化物の初期の耐水性を十分に確保できる。
【0057】
本発明の実施形態2に係る組成物は、硬化物が上記の特性を有していれば、その組成は特に限定されないが、上述の(A)~(D)を含有することが好ましい。また、本発明の実施形態2に係る組成物は、必要に応じて、(E)重合開始剤及び(F)還元剤の少なくとも1つを更に含有してもよい。
本発明の実施形態2に係る組成物に用いることが可能な各成分の種類及び含有量などについては、本発明の実施形態1に係る組成物に用いられる各成分の種類及び含有量などと同じであるため、説明を省略する。
【0058】
本発明の実施形態2に係る組成物は、本発明の実施形態1に係る組成物と同じ効果を有する。そのため、この組成物は、接着剤組成物に用いることが好ましい。接着剤組成物に用いた場合、低温時の接着強度及び耐水性に優れる接着層を形成できる。
【0059】
また、本発明の実施形態2に係る組成物は、上述の(A)~(D)を含有する場合、一剤型として用いてよいが、二剤型として用いてもよい。本発明の実施形態2に係る組成物を二剤型として用いる場合、上記と同様にして行うことができる。
同様に、本発明の実施形態2に係る組成物を含有する接着剤組成物は、一剤型として用いてよいが、二剤型として用いてもよい。本発明の実施形態2に係る組成物を含有する接着剤組成物を二剤型として用いる場合、上記と同様にして行うことができる。また、接着剤組成物は、2つの被着体の間に配置して硬化させることにより、接合体を作製できる。このようにして作製された接合体は、接着剤組成物の硬化物である接着層を備える。接着層は、低温時の接着強度及び耐水性に優れているため、各種分野における接合体、特に自動車部材の接合体に用いるのに適している。
【実施例
【0060】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0061】
<使用成分>
(A)ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオールと、イソシアネートと、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることによって調製した。
ウレタンアクリレートA(数平均分子量20,000):ポリオールとしてはブタンジオール及びヘキサンジオールとアジピン酸とを重縮合したポリエステルポリオールを用いた。また、イソシアネートとしてはイソホロンジイソシアネート、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては2-ヒドロキシエチルアクリレートを用いた。
ウレタンアクリレートB(数平均分子量7,000):ポリオールとしてはネオペンチルグリコールとアジピン酸とを重縮合したポリエステルポリオールを用いた。また、イソシアネートとしてはイソホロンジイソシアネート、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては2-ヒドロキシエチルアクリレートを用いた。
ウレタンアクリレートC(数平均分子量5,000):ポリオールとしてはテトラメチレングリコール、イソシアネートとしては水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては2-ヒドロキシエチルアクリレートを用いた。
ウレタンアクリレートD(数平均分子量3,500):ポリオールとしてはブタンジオール及びヘキサンジオールとアジピン酸とを重縮合したポリエステルポリオールを用いた。また、イソシアネートとしてはイソホロンジイソシアネート、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては2-ヒドロキシエチルアクリレートを用いた。
ウレタンアクリレートE(数平均分子量12,000):ポリオールとしてはテトラメチレングリコール、イソシアネートとしてはイソホロンジイソシアネート、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては2-ヒドロキシエチルアクリレートを用いた。
【0062】
(B)(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシプロピルメタクリレート(市販品)、エチルヘキシルメタクリレート(市販品)、イソボルニルアクリレート(市販品)を用いた。
(C)(メタ)アクリル酸としてはメタクリル酸(市販品)を用いた。
(D)酸性リン酸エステルの中和塩としては、ホスマー(登録商標)MH(methacroyl oxyethyl acid phosphate monoethanolamine half salt、ユニケミカル株式会社製の市販品)を用いた。
(E)重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド(市販品)を用いた。
(F)還元剤としてはバナジルアセチルアセトナート(市販品)を用いた。
酸性リン酸エステルとしては、SIPOMER(登録商標)PAM-4000(Ethylmethacrylate phosphate、SOLVAY社製の市販品)を用いた。
【0063】
<破断伸び>
破断伸びは、低温(-20℃)、常温(23℃)及び高温(80℃)において測定した。破断伸びの測定は、JIS K7161-1:2014及びK7161-2:2014の「プラスチック-引張特性の求め方」による試験方法に準拠して行った。
試験片は、硬化性組成物(接着剤組成物)を23℃、相対湿度50%の環境下で24時間養生することにより、JIS K7161-2:2014の附属書Aに規定される1BA型ダンベル試験片(硬化物)を作製した。
常温(23℃)における破断伸びは、1BA型ダンベル試験片に対し、23℃の雰囲気下、引張速度10mm/分の条件で引張試験を行うことによって測定した。引張試験機としては「INSTRON5967」(インストロン社製)を使用した。
低温(-20℃)における破断伸びは、1BA型ダンベル試験片に対し、-20℃の低温恒温器WU-200(エスペック株式会社製)で30分冷却した後、-20℃の雰囲気下、引張速度10mm/分の条件で引張試験を行うことによって測定した。
高温(80℃)における破断伸びは、1BA型ダンベル試験片に対し、80℃の高温槽SPHH-201(エスペック株式会社製)で30分加温した後、80℃雰囲気下、引張速度10mm/分の条件で引張試験を行うことによって測定した。
この評価において、低温(-20℃)での破断伸びが20%以上であれば、低温環境でも十分な伸びがあると判断できる。また、常温(23℃)での破断伸びが100%以上、高温(80℃)での破断伸びが170%以上であれば高温環境でも構造用接着剤として有効であると判断できる。
【0064】
<せん断接着強さ>
せん断接着強さの測定は、JIS K6850:1999に準拠して行った。
試験片は、一方の被着体(100mm×25mm×5mmのSPCC)の片面に硬化性組成物(接着剤組成物)を塗布し、他方の被着体(100mm×25mm×5mmのSPCC)と直ちに重ね合わせて貼り合わせた後、室温で24時間養生することによって作製した。なお、硬化性組成物には、硬化物(接着層)の厚さを均一にするために、粒径125μmのガラスビーズを微量添加したものを用いた。
せん断接着強さの測定は、温度23℃、湿度50%の環境下、引張速度10mm/分の条件で行った。また、せん断接着強さの測定は、70℃の温水に7日浸漬した後の試験片(以下、「浸漬後の試験片」と略す)、及び70℃の温水に7日浸漬する前の試験片(以下、「浸漬前の試験片」と略す)に対して行った。温水に浸漬した試験片は、7日後に温水から取り出し、自然乾燥させた後にせん断接着強さを測定した。
また、70℃の温水に7日浸漬する前後の試験片のせん断接着強さの結果を用い、下記の式に基づいて、せん断接着強さの保持率を算出した。
せん断接着強さの保持率(%)=浸漬後の試験片のせん断接着強さ/浸漬前の試験片のせん断接着強さ×100
この評価において、浸漬後のせん断接着強さが10MPa以上、せん断接着強さの保持率が50%以上であれば、湿潤環境でも耐水性が良好であると判断できる。
【0065】
<実施例1~4及び比較例1~5>
表1の割合で各成分を混合して第一剤及び第二剤を調製した。次に、第一剤と第二剤とを混合して硬化性組成物(接着剤組成物)を調製した。得られた硬化性組成物を用いて上記の評価を行った。その結果を表1に示す。なお、表1における各成分の割合の単位は全て質量部である。
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示されるように、所定の組成を有する実施例1~4の硬化性組成物は、低温(-20℃)での破断伸びが20%以上、浸漬後のせん断接着強さが10MPa以上、せん断接着強さの保持率が50%以上である硬化物を得ることができた。
これに対して比較例1の硬化性組成物は、(A)ウレタンアクリレートの使用量が少なすぎたため、低温(-20℃)での破断伸びが不十分な硬化物を与えた。
比較例2の硬化性組成物は、(A)ウレタンアクリレートの使用量が多すぎるとともに、(C)メタクリル酸を使用しなかったため、浸漬後のせん断接着強さが不十分な硬化物を与えた。
比較例3の硬化性組成物は、(A)ウレタンアクリレートの数平均分子量が小さすぎたため、低温(-20℃)での破断伸びが不十分な硬化物を与えた。
比較例4の硬化性組成物は、(D)酸性リン酸エステルの中和塩の代わりに酸性リン酸エステルを使用したため、浸漬後のせん断接着強さ及びせん断接着強さの保持率が不十分な硬化物を与えた。
比較例5の硬化性組成物は、(D)酸性リン酸エステルの中和塩を使用しなかったため、浸漬後のせん断接着強さが不十分な硬化物を与えた。
【0068】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、低温での伸び率が高く且つ耐湿性や耐水性に優れる硬化物を与えることが可能な組成物を提供できる。したがって、この組成物を用いることにより、低温時の接着強度及び耐湿性や耐水性に優れる接着層を形成可能な接着剤組成物を提供できる。また、この接着剤組成物を用いることにより、低温時の接着強度及び耐湿性や耐水性に優れる接着層を有する接合体を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の実施形態に係る組成物は、低温での伸び率が高く且つ耐水性に優れる硬化物を与えることが可能な硬化性組成物を提供できる。
また、本発明の実施形態に係る組成物は、低温時の接着強度及び耐水性に優れる接着層を形成可能な接着剤組成物を提供できる。
さらに、低温時の接着強度及び耐水性に優れる接着層を有する接合体を提供できる。
本発明の実施形態に係る組成物は、上記のような特性を有するため、接着剤やシーリング剤などの各種用途に用いることができる。特に、本発明の実施形態に係る組成物は、高温環境はもちろんのこと低温環境でも伸び率が高い硬化物を与えるため、自動車部材や電気製品筐体などにおける異種材料を接合するための接着剤に用いるのに有用である。