(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】回線制御装置及び無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04M 3/00 20060101AFI20231003BHJP
H04Q 1/20 20060101ALI20231003BHJP
H04W 24/04 20090101ALI20231003BHJP
H04M 3/42 20060101ALN20231003BHJP
【FI】
H04M3/00 E
H04Q1/20 101
H04W24/04
H04M3/42 101
(21)【出願番号】P 2019229987
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雅俊
【審査官】石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-124283(JP,A)
【文献】特開2017-092623(JP,A)
【文献】特開2007-235712(JP,A)
【文献】特開2014-082730(JP,A)
【文献】特開2003-047036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 3/00
H04L 13/00
H04Q 1/20
H04W 24/04
H04M 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局との間で無線通信を行う基地局と、前記移動局に指令を出力する指令局との通信における回線制御を行う回線制御装置であって、
回線接続を行う回線交換部と、
入力された制御データに基づいて前記回線交換部を制御する呼制御部と、
前記回線交換部又は前記呼制御部の障害を検出した場合に、縮退運用を指示する縮退モード信号を出力する管理監視制御部と、
前記基地局及び前記指令局との間の物理インタフェースの変換を行う物理インタフェース変換部とを備え、
前記物理インタフェース変換部は、前記回線交換部に接続し、音声データのバス制御を行う第1のバス制御部と、前記呼制御部に接続し、制御データのバス制御を行う第2のバス制御部と、縮退モードにおける音声データ及び制御データのバス制御情報を記憶する記憶部とを有し、
前記第1のバス制御部が、前記縮退モード信号が入力されると縮退モードに移行して、前記指令局から送信された音声データの宛先を、前記記憶部に記憶されたバス制御情報に基づいて書き替え、前記回線交換部を介さずに前記基地局に出力して、一斉送信させることを特徴とする回線制御装置。
【請求項2】
第2のバス制御部が、縮退モード信号が入力されると縮退モードに移行して、指令局から送信された制御データの宛先を、記憶部に記憶されたバス制御情報に基づいて、呼制御部を介さずに基地局に出力するよう書き換え、移動局から送信された制御データの宛先を前記バス制御情報に基づいて、前記呼制御部を介さずに前記指令局に出力するよう書き替えることを特徴とする請求項1記載の回線制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の回線制御装置と、移動局との間で無線通信を行う基地局と、前記移動局に指令を出力する指令局とを備えたことを特徴とする無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回線制御装置及び無線通信システムに係り、特に障害による縮退運用時に指令台と移動局との通信を確保することができる回線制御装置及び無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
業務用無線システム(以下「無線通信システム」と称する)は、運送、警察、消防、防災行政、鉄道等、公共業務から民間業務に至るまで幅広い業種で活用されている。主として、音声、データの無線通信に利用される。無線方式には大別してアナログ方式とデジタル方式が存在するが、周波数効率に優れ、データ伝送が容易なデジタル方式への移行が進んでいる。
【0003】
また、携帯電話、スマートフォンやIP無線の普及に伴い、無線局免許の不要なシステムによって業務用無線システムを構築することも可能となっている。しかし、無線局免許の不要なシステムは、輻輳による通信規制、通信サービスの停止など外的要因を受けやすいというデメリットも存在する。
そのため、高い品質が求められる公共性の高い業種(消防、防災行政、鉄道等)においては、無線局免許の必要な自営の無線通信インフラが用いられている。
【0004】
[従来の無線通信システム及び回線制御装置の構成:
図8]
従来の無線通信システム及び回線制御装置の構成例について
図8を用いて説明する。
図8は、従来の無線通信システム及び回線制御装置の構成例を示す説明図である。
図8に示すように、業務用無線システムとして用いられる従来の無線通信システムは、回線制御装置1と、指令台2a,2b(指令台2と称することもある)と、基地局3a,3b,3c(基地局3と称することもある)と、複数の移動局4とを備えている。
また、FAX(facsimile)やPBX(Private Branch Exchange)など多種多様な装置が機器構成に含まれる場合もあるが、本例では省略している。
【0005】
従来の無線通信システムの各部について説明する。
指令台2は、業務用無線システムにおいて、全移動局4を対象とした一斉指令や、移動局4間の通話への割込みなど、業務運用において特に重要となる指令業務を円滑に行うための機能を有する。またシステム上で発生している通話のモニタリング、強制切断など、無線通信システム上の通信管理を行う機能も有する。
【0006】
基地局3は、回線制御装置1と有線接続され、移動局4間、及び移動局4と有線卓(図示せず)間の無線通信の中継機能を有する。
移動局4は、主に陸上を移動して、基地局3を介して他の移動局4や指令台2との無線通信を行う。
【0007】
回線制御装置1は、業務用無線システムの中核装置であり、指令台2、基地局3、移動局4からの要求に応じて音声・データ転送のための通信路を確立する回線制御機能を有する。
更に、回線制御装置1は、呼制御部11と、回線交換部12と、物理IF変換部13と、管理監視制御部14とを備えている。
【0008】
管理監視制御部14は、呼制御部11、回線交換部12、物理IF変換部13の障害監視を行う。
呼制御部11は、発信、着信、応答、切断といった呼制御を行う。具体的には、指令台2や移動局4等からの制御データ(通信要求等)の仲介を行ない、通信要求元と通信要求先の回線を接続するよう、回線交換部12に対して回線交換制御命令を出力する。
【0009】
回線交換部12は、通信回線の接続、切断の制御を行うものであり、呼制御部11からの回線交換制御命令に応じて、音声データを転送する経路の切替を行う。
物理IF変換部13は、回線制御部1と指令台2や基地局3等の周辺装置とを接続するものであり、様々な物理IFの終端を行う。具体的には、各指令台2及び基地局3に対応するアナログ回線、デジタル回線、LAN回線と回線制御装置1とを接続する。システム構成によっては、FAX、PBX(構内交換機)、独自インタフェースを有する専用電話機等、多様な周辺装置と接続する場合もある。
【0010】
従来の回線制御装置では、物理インタフェースに応じた専用の物理IF変換基板を用いて接続している。
図8の例では、物理IF変換部13は、物理IF変換基板13a~13eを備えている。
物理IF変換基板13a,13dは、アナログ回線用であり、物理IF変換基板13bはデジタル回線用であり、物理IF変換基板13c,13eはLAN回線用である。
【0011】
[物理IF変換基板の構成例:
図9]
従来の回線制御装置における物理IF変換基板の構成例について
図9を用いて説明する。
図9は、従来の物理IF変換基板の構成例を示す説明図であり、(a)は、
図8に示した物理IF変換基板13aの構成であり、(b)は、物理IF変換基板13bの構成である。
図9(a)(b)に示すように、物理IF変換基板(物理IF変換基板A)13aは、制御部31と、アナログ用IF変換部32とを備えており、物理IF変換基板(物理IF変換基板B)13bは、制御部31と、デジタル用IF変換部33とを備えている。
つまり、IF変換部の種類毎に基板が設けられていた。
【0012】
アナログ用IF変換部32は、アナログ回線に接続して物理IF変換を行い、デジタル用IF変換部33は、デジタル回線に接続して物理IF変換を行う。
制御部31は、物理IF変換基板13a,13b及び他の物理IF変換基板13c~13eにおいて共通の構成であり、呼制御部11と制御データのやり取りを行い、回線交換部12と音声データのやり取りを行う。
このように、物理IF変換部13は、制御データ、音声データなど装置内部通信に関するインタフェースを共通とすることで、物理IF変換基板を容易に組み替え可能としている。
【0013】
[障害発生時の動作]
従来の回線制御装置において、障害が発生した場合の動作について説明する。
障害が発生した場合の動作は、障害発生個所によって異なる。
例えば、物理IF変換部13のいずれかの物理IF変換基板(単に基板と称することもある)で障害が発生した場合、システムへの影響範囲は、障害発生基板の接続先に限定される。
【0014】
障害が発生した基板に基地局3が接続されている場合、当該基地局3において、移動局4間の折り返し通信を行う。つまり、回線制御装置12を介さずに、基地局3で折り返すことで、当該基地局3の無線圏内に存在する移動局4間の通信を実現する。
一方、指令台2、他の基板に接続された基地局3、回線制御部12は運用を継続する。
【0015】
障害が発生した基板に指令台2が接続されている場合、当該指令台2をシステムから切り離し、正常な基板に接続された指令台2、基地局3、回線制御部12は運用を継続する。
【0016】
また、呼制御部11、交換制御部12で障害が発生した場合、回線制御機能の運用継続が困難となるため、全ての基地局3と回線制御装置12の接続を論理的に切り離し、各基地局3において折り返し通信による縮退運用を行う。
これにより、呼制御部11、交換制御部12で障害が発生した場合には、指令台2は、移動局4との通信は不可能となる。
【0017】
[関連技術]
尚、回線制御装置や無線通信システムに関する従来技術としては、特開2014-82730号公報「無線通信システム」(特許文献1)、特開2006-340165号公報「通信経路切替制御システム及びルータ装置」(特許文献2)がある。
【0018】
特許文献1には、基地局と回線制御装置との間に通信障害が発生した場合に、当該基地局配下の中継局同士が無線接続されて、通信障害のない基地局を介して移動局同士が通信可能となることが記載されている。
特許文献2には、現在使用中の通信経路での回線障害を検出すると、回線障害を迂回する通信経路を探索し、探策された通信経路に切り替えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】特開2014-82730号公報
【文献】特開2006-340165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述したように、従来の回線制御装置では、呼制御部や回線交換部に障害が発生した場合には、指令台と移動局との間の通信を行うことができなくなるため、指令台から移動局への指示が伝達できず、業務運営に深刻な影響を及ぼすという問題点があった。
【0021】
尚、特許文献1及び特許文献2には、呼制御部や回線交換部に障害が発生した場合に、呼制御部及び回線交換部を介さずに指令台から移動局への音声による一斉通報を行うことは記載されていない。
【0022】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、呼制御部や回線交換部に障害が発生して縮退運用となった場合でも、指令台から移動局への指示伝達を可能とし、業務への影響を抑えることができ、システムの信頼性を向上させることができる回線制御装置及び無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、移動局との間で無線通信を行う基地局と、移動局に指令を出力する指令局との通信における回線制御を行う回線制御装置であって、回線接続を行う回線交換部と、入力された制御データに基づいて回線交換部を制御する呼制御部と、回線交換部又は呼制御部の障害を検出した場合に、縮退運用を指示する縮退モード信号を出力する管理監視制御部と、基地局及び指令局との間の物理インタフェースの変換を行う物理インタフェース変換部とを備え、物理インタフェース変換部は、回線交換部に接続し、音声データのバス制御を行う第1のバス制御部と、呼制御部に接続し、制御データのバス制御を行う第2のバス制御部と、縮退モードにおける音声データ及び制御データのバス制御情報を記憶する記憶部とを有し、第1のバス制御部が、縮退モード信号が入力されると縮退モードに移行して、指令局から送信された音声データの宛先を、記憶部に記憶されたバス制御情報に基づいて書き替え、回線交換部を介さずに基地局に出力して、一斉送信させることを特徴としている。
【0024】
また、本発明は、上記回線制御装置において、第2のバス制御部が、縮退モード信号が入力されると縮退モードに移行して、指令局から送信された制御データの宛先を、記憶部に記憶されたバス制御情報に基づいて、呼制御部を介さずに基地局に出力するよう書き換え、移動局から送信された制御データの宛先をバス制御情報に基づいて、呼制御部を介さずに指令局に出力するよう書き替えることを特徴としている。
【0025】
また、本発明は、無線通信システムであって、上記いずれかの回線制御装置と、移動局との間で無線通信を行う基地局と、移動局に指令を出力する指令局とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、移動局との間で無線通信を行う基地局と、移動局に指令を出力する指令局との通信における回線制御を行う回線制御装置であって、回線接続を行う回線交換部と、入力された制御データに基づいて回線交換部を制御する呼制御部と、回線交換部又は呼制御部の障害を検出した場合に、縮退運用を指示する縮退モード信号を出力する管理監視制御部と、基地局及び指令局との間の物理インタフェースの変換を行う物理インタフェース変換部とを備え、物理インタフェース変換部は、回線交換部に接続し、音声データのバス制御を行う第1のバス制御部と、呼制御部に接続し、制御データのバス制御を行う第2のバス制御部と、縮退モードにおける音声データ及び制御データのバス制御情報を記憶する記憶部とを有し、第1のバス制御部が、縮退モード信号が入力されると縮退モードに移行して、指令局から送信された音声データの宛先を、記憶部に記憶されたバス制御情報に基づいて書き替え、回線交換部を介さずに基地局に出力して、一斉送信させる回線制御装置としているので、呼制御部又は回線交換部に障害が発生した場合でも、指令台から移動局への指示を音声の一斉通報によって伝達することができ、業務運営への影響を抑え、システムの信頼性を向上させることができる効果がある。
【0027】
また、本発明によれば、第2のバス制御部が、縮退モード信号が入力されると縮退モードに移行して、指令局から送信された制御データの宛先を、記憶部に記憶されたバス制御情報に基づいて、呼制御部を介さずに基地局に出力するよう書き換え、移動局から送信された制御データの宛先をバス制御情報に基づいて、呼制御部を介さずに指令局に出力するよう書き替える上記回線制御装置としているので、呼制御部に障害が発生した場合でも、制御データであるショートメッセージを用いて指令台と移動局との情報のやり取りを可能とし、業務運営への影響を抑え、システムの信頼性を向上させることができる効果がある。
【0028】
また、本発明によれば、上記いずれかの回線制御装置と、移動局との間で無線通信を行う基地局と、移動局に指令を出力する指令局とを備えた無線通信システムとしているので、呼制御部又は回線交換部に障害が発生した場合でも、指令台から移動局への指示を音声の一斉通報によって伝達することができ、業務運営への影響を抑え、システムの信頼性を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本無線通信システム及び本回線制御装置の構成ブロック図である。
【
図2】本回線制御装置の物理IF変換部の構成例を示す説明図である。
【
図3】本回線制御装置のIF制御部の構成を示す説明図である。
【
図4】通常時における指令台から移動局への通信確立シーケンスを示す説明図である。
【
図5】通常時の音声データ・制御データの経路を示す説明図である。
【
図6】縮退モードにおける通信確立シーケンスを示す説明図である。
【
図7】縮退モードにおける音声データ・制御データの経路を示す説明図である。
【
図8】従来の無線通信システム及び回線制御装置の構成例を示す説明図である。
【
図9】従来の物理IF変換基板の構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る回線制御装置(本回線制御装置)及び無線通信システム(本無線通信システム)は、周辺装置との間の物理インタフェース変換を行う物理IF変換部にバス制御部を設け、縮退運用における経路情報として、指令台からの音声データを呼制御部及び回線交換部を介さずに基地局に出力する経路情報を記憶しており、管理監視制御部から縮退モードが設定された状態で、指令台から音声通話の要求があると、バス制御部が、記憶されている経路情報に従って指令台からの音声データの宛先を書き替え、呼制御部及び回線交換部を介さずに基地局へ出力して、移動局への一斉通報(一斉通信)を行うものであり、呼制御部や回線交換部に障害が発生した場合でも、指令台から移動局への指示を伝達することができ、業務運営への影響を抑え、システムの信頼性を向上させることができるものである。
【0031】
また、本回線制御装置及び本無線通信システムは、物理IF変換部に、縮退運用における経路情報として、呼制御部及び回線交換部を介さずに、指令台から送信された制御データは基地局に出力し、基地局から送信された制御データは指令台に出力する経路情報を記憶しており、バス制御部が、管理監視制御部から縮退モードが設定された状態で、制御データが入力されると、制御データの宛先を書き替えて、呼制御部及び回線交換部を介さずに、指令台と基地局との間で制御データを送受信させるものであり、呼制御部に障害が発生した場合でも、ショートメッセージによる指令台と移動局との情報のやり取りを可能とし、業務運営への影響を抑え、システムの信頼性を向上させることができるものである。
【0032】
[本無線通信システム及び本回線制御装置の構成:
図1]
本無線通信システム及び本回線制御装置の構成について
図1を用いて説明する。
図1は、本無線通信システム及び本回線制御装置の構成ブロック図である。
図1に示すように、本無線通信システムは、
図8に示した従来の無線通信システムと基本的な構成は同様であり、回線制御装置5と、指令台2a,2b(指令台2と称することもある)と、基地局3a,3b,3c(基地局3と称することもある)と、複数の移動局4とを備えている。
指令台2、基地局3及び移動局4は、従来と同様であり、説明を省略する。
【0033】
回線制御装置(本回線制御装置)5は、呼制御部51と、回線交換部52と、管理監視制御部54と、物理IF変換部7とを備えている。
これらの構成部分の内、呼制御部51と、回線交換部52は従来と同様であり、説明は省略する。
【0034】
管理監視制御部54は、従来と同様に、装置内の各部を監視して障害を検出し、本回線制御装置5の特徴として、呼制御部51及び/又は回線交換部52の障害を検出した場合には、物理IF変換部7のIF制御部71,72に対して縮退運用(縮退モード)を指示する縮退モード信号を出力する。
また、管理監視制御部54は、それまで障害状態であった呼制御部51及び/又は回線交換部52が障害から復帰したことを検出すると、縮退モード解除信号を出力する。
【0035】
物理IF変換部7は、従来とは構成及び動作が異なっており、本回線制御装置5の特徴部分となっている。
詳細は後述するが、
図1の例では、物理IF変換部7は、IF制御部71,72と、複数のIF変換部81~85を備えている。
IF制御部71は、アナログ回線・デジタル回線用であり、IF制御部72はLAN回線用となっており、それぞれ複数のIF変換部が接続可能となっている。
IF制御部71、72は、通常時には、接続された複数のIF変換部と呼制御部51との制御データのやり取りを適切に経路制御し、複数のIF変換部と回線交換部52との音声データのやり取りを適切に経路制御する。
【0036】
図1では、IF制御部71にアナログ回線用IF変換部(図ではアナログ用IF変換部)81,84と、デジタル回線用IF変換部(デジタル用IF変換部)82とが接続され、IF制御部72にLAN回線用IF変換部(LAN用IF変換部)83,85が接続されている。
尚、IF変換部81~85は、従来と同様の構成及び動作となっている。
【0037】
更に、アナログ用IF変換部81には、アナログ回線を介して基地局3aが接続され、デジタル用IF変換部82には、デジタル回線を介して基地局3bが接続され、アナログ用IF変換部84には、アナログ回線を介して指令台2aが接続されている。
また、LAN用IF変換部85には、LAN回線を介して基地局3cが接続され、同様に、LAN用IF変換部83には指令台2bが接続されている。
そして、各基地局3には複数の移動局4が無線接続されている。
【0038】
従来の物理IF変換部では、
図9に示したように、回線毎の専用の物理IF変換基板に、制御部とIF変換部とが設けられていたが、本回線制御装置5の物理IF変換部7では、複数のIF変換部が共通のIF制御部に接続された構成となっている。
【0039】
[本回線制御装置の物理IF変換部の構成例:
図2]
ここで、本回線制御装置5における物理IF変換部7の構成例について
図2を用いて説明する。
図2は、本回線制御装置の物理IF変換部の構成例を示す説明図である。
図2に示すように、物理IF変換部7は、IF制御基板7aと、複数の物理IF変換基板8a,8b,8cを備えている。
【0040】
IF制御基板7aには、IF制御部70が搭載されている。IF制御部70の構成及び動作が本回線制御装置5の特徴となっており、後述する。IF制御部70は、上述したIF制御部71,72を一体化したものであり、アナログ回線・デジタル回線・LAN回線に対応する複数のIF変換部からの制御データ及び音声データの経路制御を行うものである。
【0041】
また、
図2の例では、物理IF変換基板8aには、アナログ用IF変換部81が搭載され、物理IF変換基板8bには、デジタル用IF変換部82が搭載され、物理IF変換基板8bには、LAN用IF変換部83が搭載されている。
【0042】
[IF制御部の構成:
図3]
次に、物理IF変換部7のIF制御部70の構成について
図3を用いて説明する。
図3は、本回線制御装置のIF制御部の構成を示す説明図である。
図3に示すように、IF制御部70は、バス制御部73,74と、音声/制御多重分離部75a,75b,…(音声/制御多重分離部75と記載することもある)と、縮退モード経路情報記憶部77とを備えている。
ここで、音声/制御多重分離部75は、IF制御部70に接続される各IF変換部に対応して設けられており、
図2に示したIF制御部70の場合、音声/制御多重分離部は3つ設けられているが、
図3では説明を簡単にするために2つのみを示している。
【0043】
バス制御部73は、呼制御部51に接続し、制御データのバス制御を行う。バス制御部73は、請求項に記載した第2のバス制御部に相当する。
バス制御部74は、回線交換部52に接続し、音声データのバス制御を行う。バス制御部74は、請求項に記載した第1のバス制御部に相当する。
本回線制御装置5の特徴として、バス制御部73,74は、内部に動作モードの情報として、通常モード又は縮退モードを保持している。動作モードとして、デフォルトでは通常モードが設定されているが、管理監視制御部54から縮退モード信号が入力されると、動作モードを縮退モードに切り替える(設定する)。
【0044】
そして、バス制御部73,74は、通常時(通常モードの場合)にはデータに付された宛先情報に従ってバス制御を行うが、縮退モードが設定された場合には、縮退モード経路情報記憶部77に記憶された経路情報に従ってバス制御を行う。
具体的には、バス制御部73は、制御データに付加されている宛先情報を、縮退モード経路情報記憶部77に記憶された経路情報に基づいて書き替える(上書きする)ことにより、制御データの宛先を強制的に変更する。
【0045】
同様に、バス制御部74は、音声データに付加されている宛先情報を、縮退モード経路情報記憶部77に記憶された経路情報に基づいて書き替えることにより、宛先を強制的に変更する。
また、縮退モードが設定されている状態で、管理監視制御部54から縮退モード解除信号が入力されると、バス制御部73,74は、動作モードを通常モードに切り替え、呼制御部51、回線制御部52を介して送受信する経路とする。
【0046】
縮退モード経路情報記憶部77は、縮退モードが設定された場合のバス制御部73,74におけるバス制御(縮退モード経路)を規定する情報を記憶している。
縮退モード経路情報記憶部77には、指令台2からの音声データを全ての基地局3に出力するよう縮退モード経路情報が記憶されている。これにより、縮退モードでは、指令台2から移動局4への音声による一斉通報が行われるものである。
【0047】
また、縮退モード経路情報記憶部77には、指令台2からの制御データを基地局3へ出力するよう縮退モード経路情報が記憶され、各基地局3からの制御データを、指令台2へ出力するよう縮退モード経路情報が記憶されている。
これにより、移動局4又は指令台2から制御データを利用したショートメッセージが入力されると、呼制御部11を介さずに宛先に出力され、ショートメッセージを用いて指令台2と移動局4との間の個別通信が行われることになる。
【0048】
音声/制御多重分離部75a,75bは、IF変換部から入力される多重化された音声データと制御データとを分離して、音声データをバス制御部74に出力し、制御データをバス制御部73に出力する。
また、音声/制御多重分離部75a,75bは、バス制御部74から入力される音声データと、バス制御部73から入力される音声データとを多重化して、接続するIF変換部に出力する。
【0049】
[指令台から移動局への通信確立シーケンス(通常時):
図4]
次に、通常時(障害が発生していない状態)における指令台2から移動局4への通信確立シーケンスについて
図4を用いて説明する。
図4は、通常時における指令台から移動局への通信確立シーケンスを示す説明図である。
尚、
図4では、
図3の音声/制御分離多重部75bに、IF変換部を介して
図1の指令台2aが接続され、音声/分離多重部75aにIF変換部を介して
図1の基地局3aが接続されている場合を示している。ここでは、指令台2a、基地局3a共にアナログ回線に接続されているものとするが、デジタル回線やLAN回線であっても構わない。
【0050】
図4に示すように、指令台2から移動局4との通信要求が出力されると、回線制御装置5のIF制御部70は、呼制御部51に移動局4との通信要求を出力する。
呼制御部51は、通信要求に含まれる通信相手の移動局4が存在する基地局3aを特定し、移動局4との通信チャネル確立のため、基地局3aに向けて呼設定メッセージを送信する。
【0051】
呼設定メッセージは、IF制御部70を介して基地局3に受信され、基地局3は、対象の移動局4にページングを行って、移動局4からの着信状態応答を受信し、当該移動局4が着信可能状態であれば、呼設定受付メッセージを回線制御装置5のIF制御部70に呼設定受付を返信する。
そして、IF制御部70は呼設定受付メッセージを呼制御部51に出力する。
また、基地局3aは、通信に使用する無線チャネルを決定し、移動局4へ無線チャネル指定メッセージを通知する。
ここまでが通信チャネル確立のシーケンスとなる。
【0052】
そして、移動局4は、指定された無線チャネルに周波数を切り替え、基地局3aに対して呼出メッセージを送信し、呼制御部51との間で応答確認シーケンスを行なう。
回線制御装置5の呼制御部51は、移動局4からの応答を確認すると、回線制御シーケンスとして、回線交換部52に対して、基地局3aと指令台2aとの音声回線を接続するよう回線交換制御メッセージを送信する。
【0053】
回線交換部52は、回線交換制御メッセージに従い、指定された音声回線を接続する(回線切換)。
これにより、回線制御部52を介して、指令台2aと移動局4との間の音声通信を行うことが可能となる。
このようにして、通常時の通信確立シーケンスが行われる。
【0054】
[通常時の音声データ・制御データの経路:
図5]
次に、
図4に示した通常時の音声データ・制御データの経路について
図5を用いて説明する。
図5は、通常時の音声データ・制御データの経路を示す説明図である。尚、
図5では、指令台-移動局の個別通信を示している。
また、
図5では、IF制御部70と基地局3a及び指令台2aとの間に設けられているIF変換部は省略している。
【0055】
図5に示すように、通常時の音声通話に伴って送受信される制御データ(点線で示す)は、指令台2a-音声/制御多重分離部75b-バス制御部73-呼制御部51-バス制御部73-音声/制御多重分離部75a-基地局3a-移動局4の経路で双方向に送受信される。
また、呼制御部51から出力される回線交換制御メッセージは、回線交換部52に入力される。
【0056】
同様に、回線確立後、実線で示した音声データは、指令台2a-音声/制御多重分離部75b-バス制御部74-回線交換部52-バス制御部74-音声/制御多重分離部75a-基地局3a-移動局4の経路で双方向に送受信される。
つまり、通常時には、制御データは呼制御部51を介して送受信され、音声データは回線交換部52を介して送受信されている。
【0057】
[縮退モードにおける通信確立シーケンス:
図6]
次に、縮退モードにおける通信確立シーケンスについて
図6を用いて説明する。
図6は、縮退モードにおける通信確立シーケンスを示す説明図である。
呼制御部51及び/又は回線交換部52に障害が発生して、管理監視制御部54から縮退モード信号が出力されると、IF制御部70のバス制御部73,74は、動作モードを縮退モードに設定し、縮退モード経路情報記憶部77から縮退経路情報を読み込んで、バス制御を行う。
【0058】
図6に示すように、縮退モードにおいて、指令台2aからいずれかの移動局4への通信要求が出力された場合には、本回線制御装置5のIF制御部70は、通信要求を呼制御部51に出力せず、縮退モード経路情報に基づいて宛先情報を一斉通報に書き替えて、全基地局3に呼設定メッセージを送信する。そして、各基地局3は、圏内にいる全移動局4に対してページングを送信し、着信可能状態であれば、呼設定受付メッセージを回線制御装置5に送信する。
【0059】
縮退モードにおいては、呼設定受付メッセージを呼制御部51に出力することなく、IF制御部70が呼設定受付を行って、移動局4との応答確認を行う。
そして、IF制御部70は、回線交換部52に対する制御は行わず、指令台2から入力された音声データの宛先を一斉通報に書き替えて、全基地局3に出力し、全基地局3から移動局4に対して一斉通報が行われる。
このようにして、縮退モードにおける通信確立シーケンスが行われるものである。
【0060】
[縮退モードにおける音声データ・制御データの経路:
図7]
次に、
図6に示した縮退モードにおける音声データ・制御データの経路について
図7を用いて説明する。
図7は、縮退モードにおける音声データ・制御データの経路を示す説明図である。
図7に示すように、本回線制御装置では、管理監視制御部54が呼制御部51、回線交換部52に対して障害監視を行っており、障害を検出すると、バス制御部73,74に対して縮退モード信号を出力し、バス制御部73,74は縮退モードに移行する。
【0061】
縮退モードにおいては、上述したように、音声データは、回線交換部52を介さずに、指令台2a-音声/制御多重分離部75b-バス制御部74-音声/制御多重分離部75a-基地局3aを含む全基地局-移動局4の経路で一斉通報される。
【0062】
つまり、指令台2aから音声/制御多重分離部75bを介してバス制御部74に入力された音声データに付された宛先情報は、回線交換部52-バス制御部74-音声/制御多重分離部75a-基地局3a-移動局4であるが、縮退モードが設定されている場合、バス制御部74は、当該音声データの宛先情報を、音声/制御多重分離部75a-基地局3aを含む全基地局3-全移動局4に書き替える(上書きする)。
【0063】
これにより、呼制御部51や回線交換部52に不具合が発生した場合でも、指令台2aからの指示は全移動局4に伝達されるため、業務遂行に及ぼす影響を抑えることができるものである。
【0064】
また、業務用無線システムでは、音声データとは別に、専用の無線チャネルを用いて制御情報(制御データ)のやり取りを行っており、制御データには、ショートメッセージと呼ばれる簡易的なテキスト情報を送受信する仕組みがある。
縮退モードにおいては、制御データは、呼制御部51を介さずに、指令台2a-音声/制御多重分離部75b-バス制御部73-音声/制御多重分離部75a-基地局2a-移動局4の経路で、双方向に送受信される。
【0065】
例えば、音声/制御多重分離部75aからバス制御部73に入力された移動局4からの制御データ(ショートメッセージ)に付された宛先情報は、呼制御部51-バス制御部73-音声/制御多重分離部75b-指令台2aであるが、呼制御部51を介さないよう、音声/制御多重分離部75b-指令台2aと更新して出力する。指令台2aからの制御データについても同様である。
これにより、縮退モードにおいても、移動局4と指令台2aとの間でショートメッセージを用いた意思の疎通が可能となるものである。
【0066】
このように、本回線制御装置5ではIF制御部70が縮退モード経路情報を記憶し、縮退モードが設定された場合には、縮退モード経路情報に従って音声データや制御データの宛先を書き替えることで、縮退運用時の通信を確保でき、また、システム内の他の構成部分(基地局、指令台等)には変更が必要ないため、低コストで実現することができるものである。
【0067】
尚、管理監視制御部54が、物理IF変換部7の障害を検出した場合には、縮退モード信号は出力せず、縮退モードとはならない。
この場合には、従来と同様に、故障したIF変換部に指令台2が接続されている場合には、当該指令台2をシステムから切り離して、他の指令台2及び基地局3と、回線制御装置5は通常通り運用を継続する。
また、故障したIF変換部に基地局3が接続されている場合には、当該基地局において移動局間折り返し通信を行い、当該基地局3に接続された移動局同士の通信を行う。他の基地局3及び指令台2と回線制御装置5は通常運用を行う。
【0068】
[実施の形態の効果]
本回線制御装置及び無線通信システムによれば、回線接続を行う物理IF変換部7のIF制御部70に、バス制御部74と、縮退運用における縮退モード経路情報を記憶する縮退モード経路情報記憶部77とを備え、音声データのバス制御を行うバス制御部74が、管理監視制御部54から縮退信号が入力されると、縮退モードを設定して、指令台2から音声通話の要求があると、縮退モード経路情報記憶部77に記憶されている縮退モード経路情報に従って、指令台2からの音声データの宛先を書き替え、呼制御部51及び回線交換部52を介さずに基地局3へ出力して、移動局4への一斉通報を行う回線制御装置及び無線通信システムとしているので、呼制御部51や回線交換部52に障害が発生した場合でも、指令台2から移動局4への指示を伝達することができ、業務運営への影響を抑え、システムの信頼性を向上させることができる効果がある。
【0069】
また、本回線制御装置及び本無線通信システムによれば、縮退モード経路情報記憶部77に、指令台2から送信された制御データを、呼制御部51及び回線交換部52を介さずに移動局4に出力し、移動局4から送信された制御データを、呼制御部51及び回線交換部52を介さずに指令台2に出力する経路情報を記憶しており、制御データのバス制御を行うバス制御部73が、管理監視制御部54から縮退信号が入力されると、縮退モードを設定して、制御データが入力されると、縮退モード経路情報に従って制御データの宛先を書き替えて、呼制御部51及び回線交換部52を介さずに、指令台2と移動局4との間で制御データを送受信させる回線制御装置及び無線通信システムとしているので、呼制御部51に障害が発生した場合でも、ショートメッセージを用いて指令台2と移動局4との情報のやり取りを可能とし、業務運営への影響を抑え、システムの信頼性を向上させることができる効果がある。
【0070】
特に、本回線制御装置及び無線通信システムは、防災無線システムや業務用無線システム等の自営系無線通信システム全般に適用可能であり、システムの種類によらず、上述した効果が得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、呼制御部や回線交換部に障害が発生して縮退運用となった場合でも、指令台から移動局への指示伝達を可能とし、業務への影響を抑えることができ、システムの信頼性を向上させることができる回線制御装置及び無線通信システムに適している。
【符号の説明】
【0072】
1,5…回線制御装置、 2…指令台、 3…基地局、 4…移動局、 7,13…物理IF変換部、 …11,51…呼制御部、 12,52…回線交換部、 8a,8b,8c,13a~13e…物理IF変換基板、 14,54…管理監視制御部、 31…制御部、 70,71,72…IF制御部、 73,74…バス制御部、 75a,75b…音声/制御多重分離部、 77…縮退モード経路情報記憶部、 81,82,83,84,85…IF変換部