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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/36 20060101AFI20231003BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20231003BHJP
   G02F 1/1347 20060101ALN20231003BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 611E
G09G3/20 612U
G09G3/20 632F
G09G3/20 632G
G09G3/20 641Q
G09G3/20 642A
G09G3/20 642E
G09G3/20 680E
G02F1/1347
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019233712
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021103210
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】514136668
【氏名又は名称】パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
【氏名又は名称原語表記】Panasonic Intellectual Property Corporation of America
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(73)【特許権者】
【識別番号】520154173
【氏名又は名称】株式会社パソナナレッジパートナー
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中西 英行
(72)【発明者】
【氏名】菊池 克浩
(72)【発明者】
【氏名】西口 武伸
(72)【発明者】
【氏名】糸滿 辰夫
【審査官】武田 悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/225137(WO,A1)
【文献】特開2018-159758(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0235540(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 3/36
G02F 1/1347
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液晶パネルと、
前記第1液晶パネルと重ね合わせて配置される第2液晶パネルと、
入力画像信号に基づいて、前記第1液晶パネルに出力する第1出力画像信号と、前記第2液晶パネルに出力する第2出力画像信号とを生成する画像処理部とを備え、
前記画像処理部は、
前記入力画像信号に基づく第1信号が入力され、当該第1信号に対して平滑化処理を行い前記第2出力画像信号を生成する第1視差低減部と、
前記第2出力画像信号が入力され、前記第2出力画像信号に基づいて、前記第1出力画像信号を決定するための第1応答補正信号であって、前記第1液晶パネル及び前記第2液晶パネルの応答速度の差をゼロに近づける補正をするための第1応答補正信号を生成する第1時間軸方向フィルタと、
少なくとも前記第1応答補正信号と前記入力画像信号に基づく第2信号とが入力され、少なくとも前記第1応答補正信号に基づいて前記第2信号の階調値を補正することで、前記第1出力画像信号を生成する補正部と、を有し、
前記第1時間軸方向フィルタは、現フレームの前記第2出力画像信号と、前のフレームの前記第1応答補正信号と、フィルタ係数と、に基づいて、現フレームの前記第1応答補正信号を生成し、
前記フィルタ係数は、前記第1液晶パネルの応答速度が前記第2液晶パネルの応答速度より速い場合、1より小さい値に設定され、前記第2液晶パネルの応答速度が前記第1液晶パネルの応答速度より速い場合、1より大きな値に設定される
液晶表示装置。
【請求項2】
前記補正部には、前記第1信号も入力され、
前記補正部は、前記第1信号と前記第1応答補正信号とに基づいて、前記第2信号の階調値を補正するための補正値を算出する除算処理部と、
前記補正値と前記第2信号とに基づいて、前記第1出力画像信号を生成する乗算器と、
を有する、
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
第1液晶パネルと、
前記第1液晶パネルと重ね合わせて配置される第2液晶パネルと、
入力画像信号に基づいて、前記第1液晶パネルに出力する第1出力画像信号と、前記第2液晶パネルに出力する第2出力画像信号とを生成する画像処理部とを備え、
前記画像処理部は、
前記入力画像信号に基づく第1信号が入力され、当該第1信号に対して平滑化処理を行い前記第2出力画像信号を生成する第1視差低減部と、
前記第2出力画像信号が入力され、前記第2出力画像信号に基づいて、前記第1出力画像信号を決定するための第1応答補正信号であって、前記第1液晶パネル及び前記第2液晶パネルの応答速度の差をゼロに近づける補正をするための第1応答補正信号を生成する第1時間軸方向フィルタと、
少なくとも前記第1応答補正信号と前記入力画像信号に基づく第2信号とが入力され、少なくとも前記第1応答補正信号に基づいて前記第2信号の階調値を補正することで、前記第1出力画像信号を生成する補正部と、を有し、
前記第1時間軸方向フィルタは、前記第2出力画像信号の入力値、及び、過去のフレームの前記第1応答補正信号の出力値と、現フレームの前記第1応答補正信号の出力値とが対応付けられた変換テーブルを用いて、前記第1応答補正信号を生成する
晶表示装置。
【請求項4】
前記入力画像信号に基づく第3信号に対して、視差を低減する補正を行うことで、第2視差低減信号を生成する第2視差低減部と、
前記第2視差低減信号と、前記第2液晶パネルの応答速度を遅らせるための第2応答補正信号であって、過去のフレームの第2応答補正信号とを用いて時間軸方向のフィルタ処理を行うことで、前記現フレームの第2応答補正信号を生成する第2時間軸方向フィルタと、
前記第3信号と、前記現フレームの前記第2応答補正信号とを所定の重みで加算することで前記第1信号を生成するブレンド部とを、さらに備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第2視差低減部は、第1視差低減部よりフィルタサイズが大きい、
請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記ブレンド部は、前記入力画像信号が示す画像の明るさに応じて、前記所定の重みを決定する、
請求項4又は5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記所定の重みは、前記第3信号に用いられる第1の重み、及び、前記第1の重みに応じて決定され、前記現フレームの前記第2応答補正信号に用いられる第2の重みを含み、
前記ブレンド部は、前記画像が所定の明るさ以上である場合、前記画像が所定の明るさより低い場合に比べて前記第2の重みが大きくなるように前記所定の重みを決定し、前記入力画像信号が示す画像の明るさが前記所定の明るさより低い場合、前記画像が所定の明るさ以上である場合に比べて前記第1の重みが大きくなるように前記所定の重みを決定する、
請求項6に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記第2液晶パネルのガンマ特性に応じて前記入力画像信号の階調値を補正することで前記第3信号を生成する階調補正部をさらに備える、
請求項4~7のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記第1視差低減部は、
前記第1信号に対して平滑化処理を行い視差低減信号を生成する平滑化フィルタと、
前記視差低減信号と、過去のフレームの前記第2出力画像信号とに基づいて時間軸方向のフィルタ処理を行うことで、前記現フレームの前記第2出力画像信号を生成する第2時間軸方向フィルタと、を有する、
請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記第2液晶パネルのガンマ特性に応じて前記入力画像信号の階調値を補正することで前記第1信号を生成する階調補正部をさらに備える、
請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記第2信号は、前記入力画像信号である、
請求項1~10のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記第1液晶パネルは、カラー画像を表示し、
前記第2液晶パネルは、前記第1液晶パネルの背面側に配置され、モノクロ画像を表示する、
請求項1~11のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルを用いた液晶表示装置は、低消費電力で画像を表示することができるため、テレビ又はモニタ等のディスプレイ等として利用されている。しかしながら、液晶表示装置は、有機EL(Electro Luminescence)表示装置と比べてコントラスト比が低い。
【0003】
そこで、複数の液晶パネルを重ね合わせることで、有機EL表示装置に匹敵する又はそれ以上のコントラスト比で画像を表示することができる液晶表示装置が提案されている。例えば、特許文献1には、カラー画像を表示する第1の液晶パネルとモノクロ画像を表示する第2の液晶パネルとを重ね合わせることで、コントラスト比を向上させることができる画像表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2007/040127号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている液晶表示装置において、表示される画像の画質が低下することがある。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、画質の低下を抑制することができる液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る液晶表示装置は、第1液晶パネルと、前記第1液晶パネルと重ね合わせて配置される第2液晶パネルと、入力画像信号に基づいて、前記第1液晶パネルに出力する第1出力画像信号と、前記第2液晶パネルに出力する第2出力画像信号とを生成する画像処理部とを備え、前記画像処理部は、前記入力画像信号に基づく第1信号が入力され、当該第1信号に対して平滑化処理を行い前記第2出力画像信号を生成する第1視差低減部と、前記第2出力画像信号が入力され、前記第2出力画像信号に基づいて、前記第1出力画像信号を決定するための第1応答補正信号を生成する第1時間軸方向フィルタと、少なくとも前記第1応答補正信号と前記入力画像信号に基づく第2信号とが入力され、少なくとも前記第1応答補正信号と前記第2信号とに基づいて前記第1出力画像信号を生成する補正部と、を有し、前記第1時間軸方向フィルタは、現フレームの前記第2出力画像信号と、前のフレームの前記第1応答補正信号と、に基づいて、現フレームの第1応答補正信号を生成する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、複数の液晶パネルごとに応答速度が異なっている場合であっても、画質の低下を抑制することができる液晶表示装置を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態1に係る液晶表示装置の分解斜視図である。
図2図2は、実施の形態1に係る液晶表示装置の概略構成を示す図である。
図3図3は、実施の形態1に係る液晶表示装置の部分拡大断面図である。
図4図4は、実施の形態1に係る画像処理部の機能構成を示すブロック図である。
図5図5は、実施の形態1に係る時間軸方向フィルタが有するルックアップテーブルの一例を示す図である。
図6図6は、実施の形態1に係る入力画像、そのときのSub表示画像及びMain画像の一例を示す図である。
図7図7は、図6の点Pにおける各種データの一例を示す図である。
図8図8は、図6の点Pにおける表示データの一例を示す図である。
図9図9は、比較例1に係る液晶表示装置の表示画像の一例を示す図である。
図10図10は、実施の形態1に係る液晶表示装置の表示画像の一例を示す図である。
図11図11は、実施の形態1に係る液晶表示装置における、スクロール画像を表示するときの効果を説明するための第1図である。
図12A図12Aは、実施の形態1に係る液晶表示装置における、スクロール画像を表示するときの効果を説明するための第2図である。
図12B図12Bは、実施の形態1に係る液晶表示装置における、スクロール画像を表示するときの効果を説明するための第3図である。
図13図13は、実施の形態1に係る液晶表示装置の動作を示すフローチャートである。
図14図14は、実施の形態1の変形例に係る画像処理部の機能構成を示すブロック図である。
図15図15は、実施の形態2に係る画像処理部の機能構成を示すブロック図である。
図16図16は、実施の形態2に係る各種処理が行われた信号に基づく画像を模式的に示す図である。
図17図17は、比較例2に係る液晶表示装置の表示データの一例を示す図である。
図18図18は、実施の形態2に係る液晶表示装置の表示画像の一例を示す図である。
図19図19は、実施の形態2に係る液晶表示装置の表示データの一例を示す図である。
図20図20は、実施の形態3に係る画像処理部の機能構成を示すブロック図である。
図21図21は、応答速度の違いによる画質の低下を説明するための第1図である。
図22図22は、応答速度の違いによる画質の低下を説明するための第2図である。
図23図23は、応答速度の違いによる画質の低下を説明するための第3図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見)
本開示の実施の形態の説明に先立ち、本開示の基礎となった知見について説明する。
【0011】
「背景技術」に記載したように、コントラスト比を向上させるために、複数の液晶パネル(例えば、第1液晶パネル及び第2液晶パネル)を用いて画像を表示する液晶表示装置が提案されている。そのような液晶表示装置において、互いに応答速度が異なる第1液晶パネル及び第2液晶パネルが用いられることがある。そして、第1液晶パネル及び第2液晶パネルごとに応答速度が異なると、表示される画像の画質が低下することがある。例えば、動画において、フリッカ(輝度変動)、輝度ムラなどが発生することがある。以下、応答速度の違いによる画質の低下について、図21図23を用いて説明する。なお、以下では、第1液晶パネルは、カラー画像を表示するメインパネルであり、第2液晶パネルは、モノクロ画像を表示するサブパネルであるとする。また。第2液晶パネルの応答速度は、第1液晶パネルの応答速度より遅いものとする。
【0012】
図21は、応答速度の違いによる画質の低下を説明するための第1図である。具体的には、図21は、第1液晶パネル及び第2液晶パネルに入力される画像信号のデータ(図21中のMainデータ及びSubデータ)と、そのときの実際の画像のデータ(図21中のMain画像及びSub画像)とを示す。Mainデータは、第1液晶パネルに入力される画像信号のデータであり、Subデータは、第2液晶パネルに入力される画像信号のデータである。Main画像は、Mainデータが入力されたときの第1液晶パネルの実際の明るさのデータであり、Sub画像は、Subデータが入力されたときの第2液晶パネルの実際の明るさのデータである。
【0013】
また、図21の横軸は、水平位置(水平方向の画素位置)を示し、縦軸は正規化された明るさ(階調値)を示す。また、図21は、矩形状の範囲が明るいウィンドウパターンが紙面上の右側にスクロールする動画における、ある瞬間の画像信号のデータ及び画像のデータを示す。
【0014】
図21に示すように、応答速度が速い第1液晶パネルにおいては、入力されるMainデータと、実際に表示される画像とは、明るさがおよそ一致している。一方、応答速度が遅い第2液晶パネルにおいては、水平位置850より右側では、Subデータより実際の画像が暗くなっており、水平位置850より左側では、Subデータより実際の画像が明るくなっている。つまり、ウィンドウパターンの移動方向側では第2液晶パネルがSubデータに対して暗くなり、かつ、ウィンドウパターンの移動方向と逆側では第2液晶パネルがSubデータに対して明るくなっている。
【0015】
図21に示すようなMain画像及びSub画像のときに、液晶表示装置において視認される画像について、図22及び図23を参照しながら説明する。図22は、応答速度の違いによる画質の低下を説明するための第2図である。具体的には、図22は、画像信号により本来表示されるべき画像(図22中の理想表示)と、実際の画像(図21中のMain画像及びSub画像の合成画像であり、図22中の実際の見え方)とを示す。図23は、応答速度の違いによる画質の低下を説明するための第3図である。具体的には、液晶表示装置に表示される表示画像(合成画像)を模式的に示す図である。なお、図23では、明暗の部分をわかりやすくするため、明るくなる部分及び暗くなる部分を誇張して示している。
【0016】
図22及び図23に示すように、液晶表示装置の表示画像は、ウィンドウパターンの移動方向側では暗くなり、かつ、ウィンドウパターンの移動方向と逆側では明るくなっている。つまり、表示画像に輝度ムラが発生している。これにより、液晶表示装置の画質が低下する。
【0017】
また、ウィンドウパターンが表示している状態から消えるように表示画像が変化する場合、ウィンドウパターンの周囲の明るさが他の部分と異なる挙動となるフリッカが発生することがある。これによっても、液晶表示装置の画質が低下する。
【0018】
そこで、液晶パネルの応答速度の違いに起因する画質の低下を抑制するために、第1液晶パネル及び第2液晶パネルに入力される信号にオーバードライブ又はアンダードライブをかけることが検討されている。例えば、第2液晶パネルの応答速度が第1液晶パネルより遅い場合、第2液晶パネルに入力される信号にオーバードライブをかけて第2液晶パネルの応答速度を第1液晶パネルの応答速度に合わせることが検討されている。この場合、応答速度の合わせ込み量に制限があり、例えば、第1液晶パネルの応答速度が1フレームより速いと、第2液晶パネルの応答速度を第1液晶パネルに合わせることができない。また、例えば、第2液晶パネルの応答速度が第1液晶パネルより遅い場合、第1液晶パネルに入力される信号にアンダードライブをかけて第1液晶パネルの応答速度を第2液晶パネルの応答速度に合わせることが行われる。この場合、第1液晶パネルの応答速度が低下してしまうので、例えば、動画においてボケ(残像)などが見える恐れがある。
【0019】
このように、従来の方法では、応答速度の違いに起因する画質の低下を適切に抑制することができていなかった。そこで、本願発明者らは、応答速度の違いに起因する画質の低下の抑制について鋭意検討を行い、以下に説明する液晶表示装置を創案した。
【0020】
以下、実施の形態等について、図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置、構成要素の接続形態、ステップ、及び、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0021】
また、本明細書において、直交などの要素間の関係性を示す用語、および、矩形などの要素の形状を示す用語、並びに、数値、および、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0022】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0023】
(実施の形態1)
以下、本実施の形態に係る液晶表示装置10について、図1図13を参照しながら説明する。
【0024】
[1-1.液晶表示装置の構成]
まず、本実施の形態に係る液晶表示装置10の全体の概略構成について、図1図3を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態に係る液晶表示装置10の分解斜視図である。図2は、本実施の形態に係る液晶表示装置10の概略構成を示す図である。図2では、液晶表示装置10における第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30のドライバの構成を示す。
【0025】
図1に示すように、液晶表示装置10は、観察者に近い位置(前側)に配置された第1液晶パネル20と、第1液晶パネル20よりも観察者から遠い位置(後側)に配置された第2液晶パネル30と、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30を貼り合わせる接着層40と、第2液晶パネル30の背面側(後側)に配置されたバックライト50と、観察者側から第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30を覆うフロントシャーシ60とを備える。
【0026】
接着層40で貼り合わされた第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30は、液晶表示部11(液晶モジュール)を構成し、バックライト50とともに、中間フレーム(図示せず)及びリアフレーム(図示せず)等に固定されている。液晶表示部11は、第1液晶パネル20と、第1液晶パネル20の背面側において当該第1液晶パネル20と重ね合わせて配置される第2液晶パネル30とを有する表示部の一例である。
【0027】
第1液晶パネル20は、メインパネルであって、ユーザが視認する画像を表示する。本実施の形態において、第1液晶パネル20は、カラー画像を表示する。一方、第2液晶パネル30は、第1液晶パネル20の背面側に配置されるサブパネルである。本実施の形態において、第2液晶パネル30は、第1液晶パネル20に表示されるカラー画像に対応した画像パターンのモノクロ画像(白黒画像)を、そのカラー画像に同期させて表示する。
【0028】
第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30の液晶駆動方式は、例えばいずれもIPS方式又はFFS方式等の横電界方式であってもよい。また、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30はいずれも、ノーマリーブラックであり、電圧印加時に白表示で、電圧無印加時に黒表示となる。
【0029】
なお、接着層40の厚みは、例えば、0.5mm以下である。接着層40の厚みを0.5mm以下とすることで、上記で説明した視差が発生することを抑制することができる。
【0030】
図2に示すように、第1液晶パネル20には、入力画像信号に応じたカラー画像を第1画像表示領域20aに表示するために、第1ソースドライバ21及び第1ゲートドライバ22が設けられている。
【0031】
一方、第2液晶パネル30には、入力画像信号に応じたモノクロ画像を第2画像表示領域30aに表示するために、第2ソースドライバ31及び第2ゲートドライバ32が設けられている。
【0032】
図1に示すように、バックライト50は、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30に向けて光を照射する面光源である。バックライト50は、例えば、LED(Light Emitting Diode)を光源とするLEDバックライトであるが、これに限るものではない。また、本実施の形態において、バックライト50は、直下型であるが、エッジ型であってもよい。なお、バックライト50は、光源からの光を拡散させるために拡散板(拡散シート)等の光学部材を有していてもよい。
【0033】
フロントシャーシ60は、観察者側(前方側)に配置されるフロントフレームである。フロントシャーシ60は、例えば矩形状の枠体である。フロントシャーシ60は、鋼板又はアルミニウム板等の剛性の高い金属材料で構成されているとよいが、樹脂材料で構成されていてもよい。
【0034】
また、図2に示すように、液晶表示装置10は、第1液晶パネル20の第1ソースドライバ21及び第1ゲートドライバ22を制御する第1タイミングコントローラ71と、第2液晶パネル30の第2ソースドライバ31及び第2ゲートドライバ32を制御する第2タイミングコントローラ72と、第1タイミングコントローラ71及び第2タイミングコントローラ72に画像データを出力する画像処理部80とを備える。
【0035】
画像処理部80は、外部のシステム(図示せず)から送信された入力画像信号Dataを受信し、所定の画像処理を実行した後、第1タイミングコントローラ71に第1出力画像信号DAT1を出力し、第2タイミングコントローラ72に第2出力画像信号DAT2を出力する。また、画像処理部80は、第1タイミングコントローラ71及び第2タイミングコントローラ72に同期信号等の制御信号(図示せず)を出力する。第1出力画像信号DAT1は、カラー表示用の画像データであり、第2出力画像信号DAT2は、モノクロ表示用の画像データである。
【0036】
このように、本実施の形態に係る液晶表示装置10では、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30の2つの表示パネルを重ね合わせて画像を表示しているので、黒を引き締めることができる。これにより、高コントラスト比の画像を表示することができる。また、液晶表示装置10は、例えばHDR(High Dynamic Range)対応テレビであり、バックライト50として、ローカルディミング対応の直下型LEDバックライトを用いてもよい。この場合、さらに高コントラスト比かつ高画質のカラー画像を表示することができる。
【0037】
なお、本実施の形態では、第1液晶パネル20が第1画像表示領域20aにカラー画像を表示し、第2液晶パネル30が第2画像表示領域30aに白黒画像を表示する構成としたが、これに限らない。例えば、第1液晶パネル20が第1画像表示領域20aに白黒画像を表示し、第2液晶パネル30が第2画像表示領域30aにカラー画像を表示する構成であってもよい。また、例えば、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30がともにカラー画像又は白黒画像を表示する構成であってもよい。
【0038】
ここで、液晶表示装置10の詳細な構成を、図3を参照しながら説明する。図3は、実施の形態1に係る液晶表示装置10の拡大断面図である。
【0039】
まず、第1液晶パネル20について説明する。図3に示すように、第1液晶パネル20は、一対の第1透明基板23と、第1液晶層24と、一対の第1偏光板25とを有する。
【0040】
一対の第1透明基板23の各々は、例えばガラス基板であり、互いに対面するように配置されている。本実施の形態において、一対の第1透明基板23のうち第2液晶パネル30側の位置する第1透明基板23がTFT(Thin Film Transistor)等を形成するためのTFT基板である第1TFT基板23aであり、一対の第1透明基板23のうち第2液晶パネル30側とは反対側に位置する第1透明基板23が第1対向基板23bである。
【0041】
第1TFT基板23aの第1液晶層24側の面には、TFT又は配線等が設けられた第1TFT層26が形成されている。また、第1TFT層26の平坦化層上には、第1液晶層24に電圧を印加するための画素電極が形成されている。本実施の形態では第1液晶パネル20がIPS方式により駆動されるので、第1TFT基板23aには、画素電極だけではなく、対向電極も形成されている。TFT、画素電極及び対向電極等は、画素それぞれに形成されている。また、画素電極及び対向電極を覆うように配向膜が形成されている。
【0042】
第1対向基板23bは、カラーフィルタ27bが形成されたカラーフィルタ基板(CF基板)であり、第1対向基板23bの第1液晶層24側の面には、第1ブラックマトリクス27a及びカラーフィルタ27bを有する第1画素形成層27が形成されている。
【0043】
第1液晶層24は、一対の第1透明基板23の間に封止されている。第1液晶層24の液晶材料は、駆動方式に応じて適宜選択することができる。第1液晶層24の厚さは、例えば、2.5μm~6μmであるが、これに限るものではない。
【0044】
第1画素形成層27は、一対の第1透明基板23の間に配置されている。つまり、第1ブラックマトリクス27a及びカラーフィルタ27bは、一対の第1透明基板23の間に配置されている。第1ブラックマトリクス27aには、画素を構成するマトリクス状の複数の第1開口部が形成されている。つまり、複数の第1開口部の各々は、複数の画素の各々に対応している。第1ブラックマトリクス27aは、例えば、各第1開口部の平面視形状が矩形状となるように、格子状に形成されている。
【0045】
カラーフィルタ27bは、第1ブラックマトリクス27aの第1開口部の内部に形成されている。カラーフィルタ27bは、例えば、赤色用のカラーフィルタ、緑色用のカラーフィルタ、及び、青色用のカラーフィルタによって構成されている。各色のカラーフィルタは、各画素に対応している。
【0046】
一対の第1偏光板25は、樹脂材料からなるシート状の偏光フィルムであり、一対の第1透明基板23を挟むように配置されている。一対の第1偏光板25は、偏光方向が互いに直交するように配置されている。つまり、一対の第1偏光板25は、クロスニコルで配置されている。一対の第1偏光板25の各々の厚さは、例えば、0.05mm~0.5mmであるが、これに限るものではない。
【0047】
次に、第2液晶パネル30について説明する。第2液晶パネル30は、一対の第2透明基板33と、第2液晶層34と、一対の第2偏光板35とを有する。
【0048】
一対の第2透明基板33の各々は、例えばガラス基板であり、互いに対面するように配置されている。本実施の形態において、一対の第2透明基板33のうちバックライト50側に位置する第2透明基板33が第2TFT基板33aであり、一対の第2透明基板33のうち第1液晶パネル20側に位置する第2透明基板33が第2対向基板33bである。第2TFT基板33aは、第1液晶パネル20の第1TFT基板23aと同様の構成である。したがって、第2TFT基板33aの第2液晶層34側の面には第2TFT層36が形成されており、第2TFT層36の平坦化層上には画素それぞれに画素電極及び対向電極が形成されている。
【0049】
第2対向基板33bの第2液晶層34側の面には、第2ブラックマトリクス37aを有する第2画素形成層37が形成されている。
【0050】
第2液晶層34は、一対の第2透明基板33の間に封止されている。第2液晶層34の厚さは、例えば、2.5μm~6μmであるが、これに限るものではない。
【0051】
第2画素形成層37は、一対の第2透明基板33の間に配置されている。つまり、第2ブラックマトリクス37aは、一対の第2透明基板33の間に配置されている。第2ブラックマトリクス37aには、画素を構成するマトリクス状の複数の第2開口部が形成されている。つまり、複数の第2開口部の各々は、複数の画素の各々に対応している。第2ブラックマトリクス37aは、例えば、各第2開口部の平面視形状が矩形状となるように、格子状に形成されている。
【0052】
一対の第2偏光板35は、樹脂材料からなるシート状の偏光フィルムであり、一対の第2透明基板33を挟むように配置されている。一対の第2偏光板35は、クロスニコルで配置されている。一対の第2偏光板35の各々の厚さは、例えば、0.05mm~0.5mmであるが、これに限るものではない。
【0053】
次に、画像処理部80の構成について、さらに図4を参照しながら説明する。図4は、本実施の形態に係る画像処理部80の機能構成を示すブロック図である。
【0054】
図4に示すように、画像処理部80は、入力画像信号Dataに基づいて、第1液晶パネル20に出力する第1出力画像信号DAT1と、第2液晶パネル30に出力する第2出力画像信号DAT2とを生成する。第1出力画像信号DAT1は、例えば、当該第1出力画像信号DAT1に対して追加の信号処理が行われることなく、第1液晶パネル20に入力される。第2出力画像信号DAT2は、例えば、当該第2出力画像信号DAT2に対して追加の信号処理が行われることなく、第2液晶パネル30に入力される。
【0055】
画像処理部80は、第1ガンマ補正部81と、白黒画像生成部82と、第2ガンマ補正部83と、視差低減部84と、時間軸方向フィルタ85と、補正部90とを有する。なお、図4以降では、第1タイミングコントローラ71及び第2タイミングコントローラ72等の図示を便宜上省略している。
【0056】
第1ガンマ補正部81及び第2ガンマ補正部83は、入力される信号に対して所定の階調変換を行う。第1ガンマ補正部81は、第1出力画像信号DAT1を生成するための階調変換を行う。第1ガンマ補正部81は、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30の合成輝度の特性が所望のガンマになるように入力画像信号Dataの階調変換を行う。また、第2ガンマ補正部83は、第2出力画像信号DAT2を生成するための階調変換を行う。第2ガンマ補正部83は、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30の合成輝度の特性が所望のガンマになるように、白黒画像生成部82から出力される白黒画像データの階調変換を行う。
【0057】
入力画像信号Dataの入力階調(1で正規化した階調値)をD、第1液晶パネル20のガンマ値をrm、第2液晶パネル30のガンマ値をrs、第1ガンマ補正部81のガンマ値をr1、第2ガンマ補正部83のガンマ値をr2とすると、合成輝度Lは、以下の式1で算出される。
【0058】
L=(Dr1rm×(Dr2rs=Dr1×rm+r2×rs (式1)
【0059】
第1ガンマ補正部81及び第2ガンマ補正部83は、例えば、第1液晶パネル20のガンマ値rm、及び、第2液晶パネル30のガンマ値rsが2.2である場合、合成輝度Lのガンマ値が2.2になるように、つまり以下の式2を満たすように、階調変換を行う。
【0060】
r1+r2=1 (式2)
【0061】
また、第1ガンマ補正部81及び第2ガンマ補正部83は、例えば、階調変換特性に基づく変換テーブル(ルックアップテーブル)を有しており、当該変換テーブルを用いてカラー画像データ及び白黒画像データに対応する階調値を決定してもよい。変換テーブルは、例えば、画像処理部80が有する記憶部(図示しない)に記憶されている。
【0062】
なお、第1ガンマ補正部81及び第2ガンマ補正部83は、いずれか1つが設けられていればよい。また、白黒画像データは、入力画像信号Dataに基づく第1信号の一例であり、第2ガンマ補正部83は、階調補正部の一例である。
【0063】
白黒画像生成部82は、入力画像信号Data(カラー画像信号)に基づいて、第2液晶パネル30が表示する白黒画像(モノクロ画像)に対応する白黒画像データを生成する。白黒画像生成部82は、例えば、入力画像信号Dataを取得すると、入力画像信号Dataの色情報を示す各色の値(例えば、RGB値:[R値、G値、B値])のうち最大値(R値、G値又はB値)を用いて白黒画像に対応する白黒画像データを生成する。具体的には、白黒画像生成部82は、各画素に対応するRGB値において、当該RGB値のうち最大値をその画素の値に設定することにより白黒画像データを生成する。
【0064】
視差低減部84は、第2ガンマ補正部83が出力した階調補正された入力画像信号Data(例えば、階調補正された白黒画像データ)が入力され、当該階調補正された入力画像信号Dataに対して平滑化処理を行い、第2出力画像信号DAT2を生成する。視差低減部84は、例えば、第1出力画像信号DAT1に基づく第1画像と、第2出力画像信号DAT2に基づく第2画像との視差を低減する補正を行う。視差低減部84は、階調変換された白黒画像データを取得すると、当該白黒画像データに対して高輝度領域を拡張する拡張フィルタ処理を行う。拡張フィルタ処理は、例えば、第2液晶パネル30の各画素(注目画素)について、所定のフィルタサイズ(例えば、数画素×数画素)内の輝度の最大値をその画素(注目画素)の輝度に設定する処理である。拡張フィルタ処理は、複数の画素のそれぞれにおいて実行される。上記の拡張フィルタ処理により、全体的に高輝度領域(例えば白色領域)が拡張する。これにより、液晶表示装置10を斜め方向から見たときに、視差により画像の輪郭が2重に見える2重像が発生するなど、視差が発生して画像品位が低下することを抑制することができる。なお、フィルタサイズは、特に限定されず、またフィルタ形状は、正方形に限定されず円形などでもよい。
【0065】
視差低減部84は、例えば、いわゆるMAXフィルタ(最大値フィルタ)又はガウシアンフィルタなどのローパスフィルタにより実現される。つまり、視差低減部84は、ローパスフィルタ処理を行う。また、ローパスフィルタは、フィルタサイズを可変できるものであるとよい。視差低減部84は、第1液晶パネル20と第2液晶パネル30との間隔に応じて適切なフィルタサイズを決定することで、当該間隔に応じた視差低減を行うことができる。
【0066】
なお、視差低減部84は、第1視差低減部の一例である。また、本実施の形態では、第2出力画像信号DAT2は、第1視差低減信号であり、ローパスフィルタは、平滑化フィルタの一例である。
【0067】
時間軸方向フィルタ85は、第1液晶パネル20の応答速度を第2液晶パネル30の応答速度に合わせるための補正用信号を生成する。補正用信号は、例えば、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30の応答差をゼロに近づけるため信号である。また、補正用信号は、例えば、第1液晶パネル20の表示の切り替わりの速度を第2液晶パネル30の応答速度に応じて調整するための信号であるともいえる。第1液晶パネル20の方が応答速度が速い場合、補正用信号は、第1液晶パネル20の表示画像の応答を遅延させる(具体的には、第1液晶パネル20の表示画像のうち低周波の領域の応答を遅延させる)信号であるともいえる。なお、時間軸方向フィルタ85は、第1時間軸方向フィルタの一例であり、補正用信号は、第1応答補正信号の一例である。
【0068】
時間軸方向フィルタ85は、第2出力画像信号DAT2が入力され、第2出力画像信号にDAT2基づいて、第1出力画像信号DAT1を決定するための補正用信号を生成する。具体的には、時間軸方向フィルタ85は、第2出力画像信号DAT2と、過去のフレームにおいて時間軸方向フィルタ85が補正部90に出力した補正用信号(出力信号の一例)とを用いて時間軸方向のフィルタ処理を行うことで、補正用信号を生成する。フィルタ処理については、後述する。
【0069】
時間軸方向フィルタ85は、例えば、第1液晶パネル20が第2液晶パネル30より応答速度が速い場合、第1液晶パネル20の表示の切り替わり速度が遅くなるように補正用信号を生成する。また、時間軸方向フィルタ85は、例えば、第1液晶パネル20が第2液晶パネル30より応答速度が遅い場合、第1液晶パネル20の表示の切り替わり速度が速くなるように補正用信号を生成する。
【0070】
また、時間軸方向フィルタ85は、視差低減部84により出力された第2出力画像信号DAT2に対して、上記の処理を行う。第2出力画像信号DAT2は、視差低減部84によりローパスフィルタ処理が行われているので、主として低周波の成分を含む信号である。つまり、時間軸方向フィルタ85は、第2液晶パネル30の低周波の成分における応答の速さ又は遅さを第1液晶パネル20の低周波の成分における応答の速さ又は遅さに反映するように、第1液晶パネル20の第1出力画像信号DAT1を補正するための補正用信号を生成する。時間軸方向フィルタ85は、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30における、低周波の成分の応答差をゼロにするように動作する。言い換えると、時間軸方向フィルタ85は、第1液晶パネル20の高周波の成分には影響を与えない。
【0071】
これにより、画像処理部80により表示される表示画像において、主として低周波の成分の応答差がゼロになるので、低周波の成分の領域(以降において、低周波の領域とも記載する)において、第1液晶パネル20と第2液晶パネル30との応答差をゼロに近づけることができる。また、画像処理部80により表示される表示画像において、高周波の成分はそのまま第1液晶パネル20に表示されるので、動画において動画ボケが発生することを抑制することができる。画像処理部80は、第1液晶パネル20全体の表示を遅らせる又は速めるわけではなく、動画の画質の低下への影響が少ない低周波の成分の表示を遅らせる又は速めることに特徴を有する。
【0072】
また、時間軸方向フィルタ85は、第2液晶パネル30へ出力される第2出力画像信号DAT2に対しては、何も処理を行わない。つまり、第2液晶パネル30には、視差低減部84から出力された第2出力画像信号DAT2がそのまま入力される。
【0073】
ここで、時間軸方向フィルタ85によるフィルタ処理について説明する。nフレーム目の画素位置(i、j)の時間軸方向フィルタ85の出力データVO1n(i、j)は、nフレーム目の画素位置(i、j)のSubデータをVI1n(i、j)とし、n-1フレーム目の画素位置(i、j)の時間軸方向フィルタ85の出力データをVO1n-1(i、j)、時定数をK1とすると、以下の式3で算出される。
【0074】
VO1n(i、j)={VI1n(i、j)-VO1n-1(i、j)}×K1
+ VO1n-1(i、j) (式3)
【0075】
式3に示すように、時間軸方向フィルタ85は、現フレームの入力データ(現フレームの第2出力画像信号DAT2)と過去のフレームの出力データ(過去のフレームの補正用信号の一例)とを用いて、現フレームの出力データ(現フレームの補正用信号の一例)を算出する。言い換えると、時間軸方向フィルタ85は、過去のフレームの出力データが現フレームの出力データに影響を与えるような処理を行う。本実施の形態では、時間軸方向フィルタ85は、1つ前のフレームの出力データが次のフレームの出力データに影響を与えるように構成される。
【0076】
時定数K1は、例えば、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30の応答速度の差に応じて設定される。時定数K1は、例えば、第1液晶パネル20の応答速度が第2液晶パネル30より速い場合、1より小さい値に設定される。これにより、時間軸方向フィルタ85は、第2出力画像信号DAT2を遅らせて補正部90に出力することができるので、第1液晶パネル20の応答を遅らせることができる。つまり、第1液晶パネル20と第2液晶パネル30との応答速度の差を縮めることができる。なお、応答速度の差とは、応答の差であり、表示が切り替わるときの第1液晶パネル20の切り替わり速度(例えば、輝度変化の速度)と第2液晶パネル30の切り替わり速度(例えば、輝度変化の速度)の差を意味する。
【0077】
また、時定数K1は、第2液晶パネル30の応答速度が第1液晶パネル20より速い場合、1より大きい値に設定される。これにより、時間軸方向フィルタ85は、第2出力画像信号DAT2にオーバードライブをかけて補正部90に出力することができるので、第1液晶パネル20の応答を速めることができる。つまり、第1液晶パネル20と第2液晶パネル30との応答速度の差を縮めることができる。
【0078】
このように、時間軸方向フィルタ85は、時定数K1の値を調整して、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30の応答の差をゼロに近づける。
【0079】
なお、時定数K1は、例えば、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30の応答速度の計測を行い、計測結果に基づいて予め設定されてもよい。また、時定数K1は、例えば、所定の値に設定されてもよい。時定数K1は、フィルタ係数の一例である。
【0080】
このような時間軸方向フィルタ85には、例えば、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタ構成のローパスフィルタを適用することができる。時間軸方向フィルタ85は、例えば、一次遅れ系のIIRフィルタ構成のローパスフィルタであってもよい。なお、上記では、時間軸方向フィルタ85は、現フレームの出力データを算出するために1フレーム前の出力データを参照する1次のIIRフィルタである例を示したが、これに限定されず、過去の複数のフレームの出力データを参照する多次のIIRフィルタであってもよい。時間軸方向フィルタ85は、例えば、現フレームの出力データを算出するために1フレーム前及び2フレーム前の出力データを参照するIIRフィルタであってもよいし、1フレーム前~3フレーム前の出力データを参照するIIRフィルタであってもよい。
【0081】
また、時間軸方向フィルタ85は、IIRフィルタ構成のローパスフィルタであることに限定されない。時間軸方向フィルタ85は、例えば、FIR(Finite Impulse Response)フィルタ構成のローパスフィルタであってもよい。また、時間軸方向フィルタ85は、例えば、メディアンフィルタなどであってもよい。
【0082】
なお、画像処理部80は、過去のフレームにおける時間軸方向フィルタ85の出力データを記憶するフレームメモリ(図示しない)を備える。例えば、時間軸方向フィルタ85が当該フレームメモリを有していてもよい。
【0083】
なお、時間軸方向フィルタ85は、上記の式3などの近似式を用いることに限定されない。時間軸方向フィルタ85は、例えば、図5に示すようなルックアップテーブル(LUT)を用いて、出力値を算出することで補正用信号を生成してもよい。図5は、本実施の形態に係る時間軸方向フィルタ85が有するルックアップテーブルの一例を示す図である。ルックアップテーブルは、1フレーム前の補正用信号の出力値、及び、現フレームの第2出力画像信号DAT2の入力値と、現フレームの補正用信号の出力値とが対応付けられたテーブルである。ルックアップテーブルは、例えば、画像処理部80が有する記憶部(図示しない)に記憶されている。ルックアップテーブルは、変換テーブルの一例である。
【0084】
図4を再び参照して、補正部90は、時間軸方向フィルタ85から出力された現フレームの補正用信号を用いて、入力画像信号Dataに基づく第2信号を補正することで、第1出力画像信号DAT1を生成する。本実施の形態では、補正部90は、現フレームの補正用信号を用いて、第1ガンマ補正部81により階調補正された入力画像信号Dataを補正することで、第1出力画像信号DAT1を生成する。第1ガンマ補正部81により階調補正された入力画像信号Dataは、入力画像信号Dataに基づく第2信号の一例である。
【0085】
補正部90は、第1出力画像信号DAT1に基づいて第1液晶パネル20が表示する第1画像と、第2出力画像信号DAT2に基づいて第2液晶パネル30が表示する第2画像との合成画像が、入力画像信号Dataに基づく画像となるように、第1ガンマ補正部81からの信号の各画素それぞれの階調値を補正することで、第1出力画像信号DAT1を生成する。補正部90は、少なくとも補正信号と第1ガンマ補正部81により階調補正された入力画像信号Dataとが入力され、少なくとも補正信号と階調補正された入力画像信号Dataとに基づいて第1出力画像信号DAT1を生成する。本実施の形態では、補正部90は、第2ガンマ補正部83から出力された階調補正された白黒画像データと、時間軸方向フィルタ85から出力された補正用信号とに基づいて、第1ガンマ補正部81から出力されたカラー画像データを補正する。このように、補正部90は、視差低減部84及び時間軸方向フィルタ85によって変化した信号の変化分を第1液晶パネル20側の信号に帰還する処理を行う。第1出力画像信号DAT1×第2出力画像信号DAT2=入力画像信号Dataが維持されることで、合成輝度Lは、式1によりL=D2.2に維持される。なお、以下では、第1ガンマ補正部81から出力され補正部90に入力される信号を、第1信号とも記載する。
【0086】
補正部90は、除算処理部91と、乗算器92とを有する。
【0087】
除算処理部91は、階調補正された白黒画像データと補正用信号とに基づいて、第1ガンマ補正部81から出力された信号の画素ごとの階調値を補正するための補正値を算出する。除算処理部91は、例えば、階調補正された現フレームの白黒画像データを現フレームの補正用信号で除算することで補正値を算出するが、ルックアップテーブルを参照して補正値を取得してもよい。
【0088】
乗算器92は、取得した補正値に基づいて、第1ガンマ補正部81からの信号の階調値を補正する。具体的には、乗算器92は、第1ガンマ補正部81からの信号に補正値を乗算して得られた階調値を第1出力画像信号DAT1の階調値とする。これにより、第1出力画像信号DAT1は、視差低減部84及び時間軸方向フィルタ85の処理を反映した階調値の信号となる。つまり、第1出力画像信号DAT1は、時間軸方向フィルタ85の処理による第2出力画像信号DAT2の遅れを反映した信号となる。
【0089】
上記のような画像処理部80が備える各構成要素は、例えば、それぞれが専用回路で構成されるが、これに限定されず、プロセッサなどで構成されてもよい。
【0090】
ここで、上記のように、画像処理部80が時間軸方向フィルタ85を備えている場合と、備えていない場合との相違について説明する。図6は、本実施の形態に係る入力画像、そのときのSub表示画像及びMain画像の一例を示す図である。図6は、第1フレーム~第5フレーム(図6中のFrame1~Frame5)までの5つのフレームにおける、入力画像、Sub表示画像、及び、Main表示画像を模式的に示す。入力画像の白ウィンドウのサイズは、例えば、32画素×32画素である。なお、Sub表示画像は、第2画像の一例であり、Main画像は、第1画像の一例である。
【0091】
図7は、図6の点Pにおける各種データの一例を示す図である。なお、図7では、便宜上、第1フレーム及び第3フレームのみに点Pを図示している。図7の横軸は、フレームを示しており、縦軸は、液晶パネルに入力されるデータ値を示している。データ値は、出力画像信号の階調値(1で正規化した階調値)である。また、Mainデータは、第1液晶パネル20に出力される第1出力画像信号DAT1を示しており、Subデータは、第2液晶パネル30に出力される第2出力画像信号DAT2を示している。なお、データ値を2.2乗すれば、輝度値(正規化された輝度値)が得られる。
【0092】
図6及び図7は、第1フレーム及び第2フレームでは白ウィンドウが表示され、第3フレーム~第5フレームでは白ウィンドウが表示されない画像を表示している場合を示している。つまり、第2フレームから第3フレームの間で白ウィンドウが消えるような表示の場合を示している。なお、図6に示す画像は、あくまで説明用であり、理想的な表示画像を示している。つまり、図6は、第1液晶パネル20と第2液晶パネル30との応答速度が等しい(ゼロである)場合について、図示している。
【0093】
点Pでの入力画素の階調値を0.1、第1ガンマ補正部81のガンマ値r1及び第2ガンマ補正部83のガンマ値r2のそれぞれを0.5とすると、第2ガンマ補正部83の出力値(階調値)は、式4により算出される。
【0094】
0.10.5≒0.316 (式4)
【0095】
そして、視差低減部84のフィルタ処理により、第2出力画像信号DAT2における点Pの階調値が0.7になったとする。このとき、画像処理部80が時間軸方向フィルタ85を備えていない場合、第1出力画像信号DAT1における点Pの階調値は、およそ0.143となる。
【0096】
第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30の応答速度を無視すれば、点Pにおける合成輝度Lは、入力画像と同じように一定となる。しかし、実際には、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30のそれぞれには応答時間があり、当該応答時間に応じた輝度推移となる。第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30の実際の輝度推移を図8に示す。
【0097】
図8は、図6の点Pにおける表示データの一例を示す図である。図8の横軸は、フレームを示し、縦軸は表示データを示す。表示データは、輝度値(1で正規化した輝度値)を示す。また、破線は、時間軸方向フィルタ85の時定数K1を1とした場合の輝度推移を示している。つまり、破線は、時間軸方向フィルタ85を備えていない液晶表示装置の輝度推移を示している。また、実線は、時間軸方向フィルタ85の時定数K1を0.54とした場合の輝度推移を示している。つまり、実線は、時間軸方向フィルタ85が第1液晶パネル20と第2液晶パネル30との応答差に相当する分だけ第1液晶パネル20の輝度変化を遅く(第1液晶パネル20の応答速度を遅く)したときの輝度推移を示している。
【0098】
また、図8では、第1液晶パネル20の時定数K21を0.85、第2液晶パネル30の時定数K22を0.5とした場合の表示データを示す。また、液晶の応答を考慮した、点Pの輝度値は、nフレーム目の表示データをDn、n-1フレーム目の表示データをDn-1とすると、輝度値Lnは、以下の近似式で算出される。
【0099】
Ln={(Dn-Dn-1)×K3+Dn-1}2.2 (式5)
【0100】
また、上記輝度値Lnのときのデータ値(階調値)Dは、以下の式6で換算することができる。
【0101】
D(Ln)=(Dn-Dn-1)×K3+Dn-1 (式6)
【0102】
ここで、Dnはnフレーム目のデータ値であり、Dn-1はn-1フレーム目のデータ値であり、K3は液晶パネルの時定数である。
【0103】
図8に示すように、時定数K1=1である場合、つまり、時間軸方向フィルタ85が備えられていない場合、第1液晶パネル20の表示データは、第2液晶パネル30の応答速度を考慮せずに変化する。この場合、破線で示される合成表示値(K1=1)は、液晶表示装置として表示される画像の輝度値(第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30の合成輝度)を示している。
【0104】
時定数K1=1の場合、第1液晶パネル20より第2液晶パネル30の方が応答速度が速いため、第2フレームから第3フレームに移行するときに、第1液晶パネル20は、第2液晶パネル30の輝度が低下する速度より速い速度で輝度が上昇する。その結果、一点鎖線枠に示すように、第3フレームから数フレームの間において、合成表示値(K1=1)が本来の0.1より大きくなる。つまり、時間軸方向フィルタ85を備えない場合、点Pにおいて、第3フレームから数フレームの間において、本来表示される明るさより明るい表示が行われる。
【0105】
図9は、比較例1に係る液晶表示装置の表示画像の一例を示す図である。図9は、入力画像と、第2液晶パネルが表示するSub表示画像と、第1液晶パネル20が表示するMain画像と、液晶表示装置が表示する合成画像とを模式的に示す。合成画像は、Sub表示画像とMain画像とを合成した画像である。また、比較例1に係る液晶表示装置は、時間軸方向フィルタ85の時定数がK1=1である液晶表示装置を意味する。
【0106】
図9に示すように、Sub表示画像において、第3フレーム以降の白ウィンドウの周囲の輝度の低下は遅いが、Main表示画像において、第3フレーム以降の白ウィンドウの周囲の輝度の上昇は速い。その結果、合成画像のように、白ウィンドウの周囲が明るく光ってしまう現象であるフリッカが第3フレーム以降で発生する。
【0107】
一方、本実施の形態に係る液晶表示装置10は、図8に示すように、第2液晶パネル30の応答速度に応じて、第1液晶パネル20の応答速度を調整している。本実施の形態では、第1液晶パネル20の応答速度は第2液晶パネル30より速いので、時間軸方向フィルタ85は、第1液晶パネル20の応答を遅らせるようにフィルタ処理を実行する。それにより、時間軸方向フィルタ85は、図8のMain表示値(K1=0.54)の実線に示すように、Main表示値(K1=1)の破線より第1液晶パネル20の表示を遅らせることができる。つまり、時間軸方向フィルタ85は、第1液晶パネル20の輝度値が0.316付近に到達するまでの時間を長くすることができる。
【0108】
時間軸方向フィルタ85は、第2液晶パネル30の輝度が低下する速度に応じた速度で第1液晶パネル20の輝度を上昇させるともいえる。その結果、一点鎖線枠に示すように、第3フレームから数フレームの間においても、合成表示値(K1=0.54)が本来の0.1を実現することができる。つまり、時間軸方向フィルタ85を備える場合、点Pにおいて、第3フレームから数フレームの間においても、本来表示される明るさ表示が行われる。
【0109】
これにより、図10に示すように、Sub表示画像における第3フレーム以降の白ウィンドウの周囲の輝度の低下と、Main表示画像における第3フレーム以降の白ウィンドウの周囲の輝度の上昇とが対応する速度で行われる。本実施の形態では、第1液晶パネル20における第3フレーム以降の白ウィンドウの周囲の輝度の上昇が本来より遅い速度で行われる。その結果、合成画像に示すように、白ウィンドウの周囲が明るく光ってしまう現象であるフリッカの発生を抑制することができる。なお、図10は、本実施の形態に係る液晶表示装置10の表示画像の一例を示す図である。
【0110】
また、図9及び図10の合成画像に示すように、第1フレームから第5フレームの間において、白ウィンドウ自体の表示自体は、変化しておらず、当該白ウィンドウの周囲の輝度のみが変化している。時間軸方向フィルタ85は、上記でも説明したように、視差低減部84よりローパスフィルタ処理された信号に対してフィルタ処理を行う。つまり、時間軸方向フィルタ85は、視差低減部84より低域の信号成分を取得し、当該低域の信号成分にフィルタ処理を行う。これにより、補正部90は、第2液晶パネル30の低域の成分の遅さを第1液晶パネル20への信号に反映させることができる。つまり、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30における低域の成分の速度(例えば、遅さ)を合わせることができる。また、第1液晶パネル20における高域の成分は変化しない(遅れない)ので、白ウィンドウの動きに対する影響は少ない。
【0111】
また、白ウィンドウが紙面右側に向けて移動するスクロール画像の場合について、図11図12Bを参照しながら説明する。図11は、本実施の形態に係る液晶表示装置10における、スクロール画像を表示するときの効果を説明するための第1図である。具体的には、図11は、本実施の形態に係る液晶表示装置10、及び、比較例1に係る液晶表示装置における、Main表示画像、Sub表示画像、及び、合成画像を示す。
【0112】
図11に示すように、時間軸方向フィルタ85は、白ウィンドウの移動方向側の画素において、第1液晶パネル20が暗くなる速度を第2液晶パネル30の応答速度に応じて遅らせることができる。また、時間軸方向フィルタ85は、白ウィンドウの移動方向と反対側の画素において、第1液晶パネル20が明るくなる速度を第2液晶パネル30の応答速度に応じて遅らせることができる。よって、本実施の形態に係る液晶表示装置10は、比較例1に係る液晶表示装置において発生していた白ウィンドウの移動方向側が暗くなる現象、及び、白ウィンドウの移動方向の反対側が明るくなる現象の双方を改善することができる。
【0113】
図12Aは、本実施の形態に係る液晶表示装置10における、スクロール画像を表示するときの効果を説明するための第2図である。図12Aの(a)は、入力画像のデータ値を示す。図12Aの(b)は、第2液晶パネル30に出力されるSubデータ(第2出力画像信号DAT2の階調値)及び時間軸方向フィルタ85の出力(補正用信号の階調値)を示す。図12Aの(c)は、第1液晶パネル20に出力されるMainデータ(第1出力画像信号DAT1の階調値)を示す。また、図12Aの(a)~(c)の横軸は、液晶表示装置10の水平位置を示しており、縦軸は、データ値を示している。
【0114】
図12Aの(b)に示すように、第2液晶パネル30には、Subデータ(実線)を示す第2出力画像信号DAT2が出力される。また、補正部90には、時間軸方向フィルタ85の出力(破線)を示す信号が出力される。時間軸方向フィルタ85は、Subデータが入力され、第2液晶パネル30の応答速度に応じて遅らせたSubデータを出力として補正部90に出力する。
【0115】
図12Aの(c)は、図12Aの(b)に示す時間軸方向フィルタ85の出力に基づいて、補正部90が第1ガンマ補正部81から出力された信号を補正して生成されたMainデータを示す。図12Aの(c)に示すように、Mainデータにおける高周波の部分は、遅れていない。Mainデータにおいて遅れるのは、低周波の領域のみである。これにより、第1液晶パネル20の高域の成分は維持しているので、液晶表示装置10は、動画応答に与える影響を抑制しつつ、かつ、フリッカ及び輝度ムラが発生することを抑制することができる。
【0116】
図12Bは、本実施の形態に係る液晶表示装置10における、スクロール画像を表示するときの効果を説明するための第3図である。図12Bの(a)は、図12Aの(b)に示すSubデータが入力されたときの第2液晶パネル30の表示データ(実際の輝度値)を示す。図12Bの(b)は、図12Aの(c)に示すMainデータが入力されたときの第1液晶パネル20の表示データ(実際の輝度値)を示す。図12Bの(c)は、液晶表示装置10の表示データ(合成画像の輝度値)を示す。また、図12Aの(a)~(c)の横軸は、液晶表示装置10の水平位置を示しており、縦軸は表示データを示している。
【0117】
図12Bの(a)に示すように、図12Aの(b)に示すSubデータが入力されても第2液晶パネル30の応答速度の影響により、Sub表示が示す表示データとなる。つまり、第2液晶パネル30の表示は、Subデータが示す表示より遅れる。例えば、第2液晶パネル30の表示は、図12Aの(b)に示す時間軸方向フィルタ85の出力が示す表示となる。
【0118】
図12Bの(b)に示すように、高周波の部分及び低周波の領域のうち、低周波の領域のみが遅れた表示データとなる。なお、図12Bの(b)では、第1液晶パネル20の応答で遅れる部分を一点鎖線枠で示している。
【0119】
図12Bの(c)に示すように、合成表示(合成画像)において、高周波の部分の移動方向の前後における輝度ムラは、発生していない。よって、本実施の形態に係る液晶表示装置10は、動画応答に与える影響を抑制しつつ、かつ、液晶パネルの応答速度の差に起因するフリッカ及び輝度ムラが発生することを抑制することができる。
【0120】
[1-2.液晶表示装置の動作]
次に、上記の液晶表示装置10の動作について、図13を参照しながら説明する。図13は、本実施の形態に係る液晶表示装置10の動作を示すフローチャートである。
【0121】
図13に示すように、まず、液晶表示装置10は、入力画像信号Dataを取得する(S11)。具体的には、画像処理部80は、外部のシステム(図示せず)から送信された入力画像信号Dataを受信することで、当該入力画像信号Dataを取得する。なお、入力画像信号Dataがカラー画像を表示するための画像信号であるとする。例えば、液晶表示装置10は、図12Aの(a)に示すような入力画像信号Dataを取得する。
【0122】
次に、画像処理部80は、入力画像信号Dataに基づいて、第2信号を生成する(S12)。具体的には、第1ガンマ補正部81は、入力画像信号Dataに対して階調変換を行うことで、第2信号を生成する。第1ガンマ補正部81は、生成した第2信号を補正部90に出力する。また、第2ガンマ補正部83は、白黒画像生成部82が入力画像信号Dataに基づいて生成した白黒画像データに対して階調変換を行うことで、第1信号を生成する。第2ガンマ補正部83は、生成した第1信号を視差低減部84及び補正部90に出力する。
【0123】
次に、視差低減部84は、第2ガンマ補正部83から出力された第1信号に対して視差を低減するための処理を実行することで、第2出力画像信号DAT2を生成する(S13)。視差低減部84は、生成した第2出力画像信号DAT2を第2液晶パネル30及び時間軸方向フィルタ85に出力する。第2出力画像信号DAT2は、例えば、図12Aの(b)に示すSubデータ(実線)を示す信号である。
【0124】
次に、時間軸方向フィルタ85は、第2出力画像信号DAT2に時間軸方向のフィルタ処理を実行し、第2信号を補正するための補正用信号(現フレームの補正用信号の一例)を生成する(S14)。補正用信号は、例えば、図12Aの(b)に示す時間軸方向フィルタ85の出力(破線)を示す信号である。時間軸方向フィルタ85は、視差低減部84により視差を低減するための処理(例えば、ローパスフィルタ処理)が行われたSubデータ(図12Aの(b)参照)に対して、時間軸方向のフィルタ処理を実行する。時間軸方向フィルタ85は、当該Subデータに対してフィルタ処理を実行することで、当該Subデータを遅らせて出力する。時間軸方向フィルタ85は、生成した補正用信号(現フレームの一例)を補正部90に出力する。
【0125】
次に、補正部90は、現フレームの補正用信号を用いて第2信号を補正することで、第1出力画像信号DAT1を生成する(S15)。具体的には、除算処理部91は、第2ガンマ補正部83からの第1信号と時間軸方向フィルタ85からの補正用信号とに基づいて、第2信号を補正する補正値を算出する。除算処理部91は、例えば、第1信号を補正用信号で除算することで補正値を算出する。除算処理部91は、算出した補正値を乗算器92に出力する。
【0126】
乗算器92は、第1ガンマ補正部81からの第2信号と除算処理部91からの補正値とに基づいて、第1液晶パネル20に出力する第1出力画像信号DAT1を生成する。乗算器92は、例えば、第2信号に補正値を乗算することで、第1出力画像信号DAT1を生成する。乗算器92は、生成した第1出力画像信号DAT1を第1液晶パネル20に出力する。
【0127】
次に、液晶表示装置10は、入力画像信号Dataに対応する画像を表示する(S16)。液晶表示装置10は、例えば、図12Bの(c)に示すような合成表示の画像を表示する。具体的には、第2液晶パネル30は、第2出力画像信号DAT2に応じた画像、例えば、図12Bの(a)に示すようなSub表示の画像を表示する。また、第1液晶パネル20は、第1出力画像信号DAT1に応じた画像、例えば、図12Bの(b)に示すようなMain表示の画像を表示する。第1液晶パネル20が表示する画像は、低周波の成分のみが遅れた画像となる。よって、液晶表示装置10は、動画におけるボケが発生することを抑制しつつ、かつ、フリッカ及び輝度ムラが発生することを抑制することができる。
【0128】
[1-3.効果など]
以上説明したように、液晶表示装置10は、第1液晶パネル20と、第1液晶パネル20と重ね合わせて配置される第2液晶パネル30と、入力画像信号Dataに基づいて、第1液晶パネル20に出力する第1出力画像信号DAT1と、第2液晶パネル30に出力する第2出力画像信号DAT2とを生成する画像処理部80とを備える。そして、画像処理部80は、入力画像信号Dataに基づく第1信号が入力され、当該第1信号に対して平滑化処理を行い、第2出力画像信号DAT2を生成する視差低減部84と、第2出力画像信号DAT2が入力され、第2出力画像信号DAT2に基づいて、第1出力画像信号DAT1を決定するための補正信号を生成する時間軸方向フィルタ85と、少なくとも補正信号と入力画像信号Dataに基づく第2信号とが入力され、少なくとも補正信号と第2信号とに基づいて第1出力画像信号DAT1を生成する補正部90とを有する。そして、時間軸方向フィルタ85は、現フレームの第2出力画像信号DAT2と、前のフレームの補正信号と、に基づいて、現フレームの補正信号を生成する。
【0129】
なお、視差低減信号は、第1視差低減信号の一例であり、時間軸方向フィルタ85は、第1時間軸方向フィルタの一例であり、補正用信号は、第1応答補正信号の一例である。
【0130】
これにより、時間軸方向フィルタ85は、視差低減部84により平滑化処理(例えば、ローパスフィルタ処理)が行われた低周波の成分を含む信号に対してフィルタ処理を行うことで補正用信号を生成する。つまり、第1出力画像信号DAT1は、入力画像信号Dataに基づく第2信号の低周波の成分に対して補正が行われた信号となる。第2信号における高周波の成分には、補正が行われないので、液晶表示装置10は、動画ボケなどが発生することを抑制することができる。よって、液晶表示装置10によれば、複数の液晶パネル(例えば、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30)を有する構成であっても、画質の低下を抑制することができる。具体的には、液晶表示装置10は、動画ボケなどの動画像の画質が低下することを抑制することができる。
【0131】
また、補正用信号が第1液晶パネル20の応答速度を第2液晶パネル30の応答速度に合わせるための信号である場合、補正用信号に基づいて生成される第1出力画像信号DAT1は、第1液晶パネル20の応答速度を第2液晶パネル30の応答速度に合わせるための補正が行われた信号となる。これにより、液晶表示装置10は、さらに、第1液晶パネル20と第2液晶パネル30との応答速度の差に起因するフリッカ及び輝度ムラが発生することを抑制することができる。
【0132】
また、補正部90には、第1信号も入力される。そして、補正部90は、第1信号と補正信号とに基づいて、補正値を算出する除算処理部91と、補正値と第2信号とに基づいて、第1出力画像信号DAT1を生成する乗算器92とを有する。
【0133】
これにより、算出される補正値は、視差低減部84及び時間軸方向フィルタ85の処理を反映した値となる。つまり、第1出力画像信号DAT1は、視差低減部84及び時間軸方向フィルタ85の処理を反映した信号となる。よって、視差低減部84及び時間軸方向フィルタ85の処理が行われたことによる画質の低下が発生することを抑制することができる。
【0134】
また、時間軸方向フィルタ85は、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30の応答速度の差に応じた時定数K1を用いて、フィルタ処理を行う。
【0135】
なお、時定数K1は、フィルタ係数の一例である。
【0136】
これにより、画像処理部80は、第1液晶パネル20と第2液晶パネル30との応答差をよりゼロに近づけることができる。よって、液晶表示装置10は、第1液晶パネル20と第2液晶パネル30との応答速度の差に起因するフリッカ及び輝度ムラが発生することをさらに抑制することができる。
【0137】
また、時間軸方向フィルタ85は、第2出力画像信号DAT2の入力値、及び、過去のフレームの補正用信号の出力値と、現フレームの補正用信号の出力値とが対応付けられたルックアップテーブルを用いて、フィルタ処理を行う。
【0138】
なお、ルックアップテーブルは、変換テーブルの一例である。
【0139】
これにより、時間軸方向フィルタ85における処理量を抑制することができる。
【0140】
また、第2液晶パネル30のガンマ特性に応じて入力画像信号Dataの階調値を補正することで第1信号を生成する第2ガンマ補正部83をさらに備える。
【0141】
なお、第2ガンマ補正部83は、階調補正部の一例である。
【0142】
これにより、第2液晶パネル30のガンマ特性を考慮した信号に対して、各種処理を行うことができる。つまり、第2出力画像信号DAT2は、第2液晶パネル30のガンマ特性を考慮した信号となる。よって、第2液晶パネル30は、より所望の表示を行うことができる。
【0143】
また、第1液晶パネル20は、カラー画像を表示し、第2液晶パネル30は、第1液晶パネル20の背面側に配置され、モノクロ画像を表示する。
【0144】
これにより、第1液晶パネル20がカラー画像を表示し、第2液晶パネル30がモノクロ画像を表示する液晶表示装置10において、第1液晶パネル20と第2液晶パネル30との応答速度の差に伴うフリッカ及び輝度ムラが発生することを抑制することができる。
【0145】
(実施の形態1の変形例)
以下、本変形例に係る液晶表示装置10aについて、図14を参照しながら説明する。図14は、実施の形態1の変形例に係る画像処理部80aの機能構成を示すブロック図である。本変形例に係る画像処理部80aは、主に、第1ガンマ補正部81を備えていない点、及び、補正部90に替えて補正部90aを備える点において、実施の形態1に係る画像処理部80と相違する。以下、本変形例に係る画像処理部80aについて、実施の形態1に係る画像処理部80との相違点を中心に説明する。また、本変形例において、実施の形態1に係る画像処理部80と同一または類似の構成については、画像処理部80と同一の符号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0146】
図14に示すように、液晶表示装置10aが備える画像処理部80aは、第1ガンマ補正部81を備えていない。そのため、画像処理部80aでは、入力画像信号Dataがそのまま補正部90aに入力される。このように、入力画像信号Dataに基づく第2信号は、入力画像信号Dataそのものであってもよい。
【0147】
除算処理部91aは、時間軸方向フィルタ85から出力された補正用信号(現フレームの補正用信号の一例)に基づいて、入力画像信号Dataの画素ごとの階調値を補正するための補正値を算出する。除算処理部91aは、例えば、補正用信号の階調値の逆数を示す補正値を乗算器92に出力する。そして、乗算器92は、補正値を用いて、入力画像信号Dataの階調値を補正することで、第1出力画像信号DAT1を生成する。補正部90aは、生成した第1出力画像信号DAT1を、第1液晶パネル20に出力する。
【0148】
この場合、第2出力画像信号DAT2の階調値をDs、入力画像信号Dataの階調値をDとすると、第1出力画像信号DAT1の階調値Dmは、以下の式7で算出される。
【0149】
Dm=D/Ds (式7)
【0150】
また、この場合、第1液晶パネル20側のガンマ値は、(1-ガンマ値r2)となる。
【0151】
以上説明したように、液晶表示装置10aにおいて、第2信号は、入力画像信号Dataである。
【0152】
これにより、液晶表示装置10aは、第1ガンマ補正部81を備えない簡易な構成で構成される。このような液晶表示装置10においても、時間軸方向フィルタ85を備えることで、フリッカ及び輝度ムラが発生することを抑制することができる。よって、液晶表示装置10aは、簡易な構成であり、かつ、複数の液晶パネル(例えば、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30)ごとに応答速度が異なっている場合であっても、応答速度の違いによる画質の低下を抑制することができる。
【0153】
(実施の形態2)
以下、本実施の形態に係る液晶表示装置110について、図15図19を参照しながら説明する。
【0154】
[2-1.液晶表示装置の構成]
まず、本実施の形態に係る液晶表示装置110の構成について、図15図19を参照しながら説明する。図15は、本実施の形態に係る画像処理部180の機能構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る液晶表示装置110は、温度変化により応答差が変化した場合でも、フリッカ及び輝度ムラが発生することを抑制することができる点に特徴を有する。
【0155】
画像処理部180は、主に、第2視差低減部186、第2時間軸方向フィルタ187、及び、ブレンド部188を備える点において、実施の形態1に係る画像処理部80と相違する。以下、本実施の形態に係る画像処理部180について、実施の形態1に係る画像処理部80との相違点を中心に説明する。また、本実施の形態において、実施の形態1に係る画像処理部80と同一または類似の構成については、画像処理部80と同一の符号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0156】
図15に示すように、液晶表示装置110の画像処理部180は、実施の形態1の画像処理部80に加えて、第2視差低減部186と、第2時間軸方向フィルタ187と、ブレンド部188とを備える。また、視差低減部84に替えて第1視差低減部189を備える。また、第1時間軸方向フィルタ85は、実施の形態1に係る時間軸方向フィルタと同じフィルタであるが、第2時間軸方向フィルタ187との識別のため、第1時間軸方向フィルタ85と記載する。
【0157】
第2視差低減部186は、第2ガンマ補正部83が出力した階調補正された入力画像信号Data(例えば、階調補正された白黒画像データ)が入力され、当該階調補正された入力画像信号Dataに対して平滑化処理を行い、第2視差低減信号を生成する。第2視差低減部186は、例えば、第2ガンマ補正部83が出力した階調補正された入力画像信号Dataに対して、第1出力画像信号DAT1に基づく第1画像と、第2出力画像信号DAT2に基づく第2画像との視差を低減する補正を行う。第2視差低減部186がローパスフィルタ処理を行うためのフィルタサイズは、第1視差低減部189がローパスフィルタ処理を行うためのフィルタサイズより大きい。第2視差低減部186は、例えば、大面積フィルタである。第2視差低減部186のフィルタサイズは、例えば、300画素×300画素であるが、これに限定されない。第2視差低減部186のフィルタサイズが大きいことで、視差をより低減することができる。第2視差低減部186は、例えば、いわゆるMAXフィルタ又はガウシアンフィルタなどのローパスフィルタにより実現される。なお、第2ガンマ補正部83により階調補正された入力画像信号Data(具体的には、階調補正された白黒画像データ)は、入力画像信号Dataに基づく第3信号の一例であり、ローパスフィルタは、平滑化フィルタの一例である。
【0158】
図16は、本実施の形態に係る各種処理が行われた信号に基づく画像を模式的に示す図である。図16の(a)は、図6の第1フレームに示す入力画像に対して第2視差低減部186によるフィルタ処理(図16中の大画面フィルタ処理)が行われた画像を模式的に示す。
【0159】
図16の(a)に示すように、視差を改善するために入力画像に大画面フィルタ処理が行われる。
【0160】
図15を再び参照して、第2視差低減部186は、白黒画像データに基づいて生成した第2視差低減信号を、第2時間軸方向フィルタ187に出力する。
【0161】
なお、第2視差低減部186のフィルタサイズが大きい場合、視差の抑制効果は向上するが、フリッカ及び輝度ムラが目立ちやすくなることがある。そこで、本実施の形態では、第2視差低減部186のフィルタ処理に起因するフリッカ及び輝度ムラが発生することを抑制するために、第2時間軸方向フィルタ187が設けられる。
【0162】
第2時間軸方向フィルタ187は、第2視差低減部186のフィルタ処理に起因するフリッカ及び輝度ムラが発生することを抑制するための第2応答補正信号を生成する。第2応答補正信号は、第2視差低減信号に基づく信号であり、第2液晶パネル30の応答を遅らせるための信号である。第2応答補正信号は、第2液晶パネル30の表示画像の応答を遅延させる(具体的には、第2液晶パネル30の表示画像のうち低周波の領域の応答を遅延させる)信号であるともいえる。第2応答補正信号は、例えば、第2視差低減信号における低周波の成分の輝度変化を遅らせた信号である。
【0163】
第2時間軸方向フィルタ187は、第2視差低減部186から出力された第2視差低減信号を用いて第2応答補正信号を生成する。第2時間軸方向フィルタ187は、大画面フィルタ処理された第2視差低減信号を用いて第2応答補正信号を生成するともいえる。具体的には、第2時間軸方向フィルタ187は、現フレームの第2視差低減信号と、過去のフレームにおいて第2時間軸方向フィルタ187がブレンド部188に出力した第2応答補正信号(出力信号の一例)とを用いて時間軸方向のフィルタ処理を行うことで、現フレームの第2応答補正信号を生成する。
【0164】
これにより、第2液晶パネル30において輝度値が急激に変化することを抑制することができる。具体的には、第2時間軸方向フィルタ187は、第2液晶パネル30が表示するSub表示画像の低周波の領域の輝度の時間変化を抑制する。
【0165】
ここで、第2時間軸方向フィルタ187によるフィルタ処理について説明する。nフレーム目の画素位置(i、j)の第2時間軸方向フィルタ187の出力データVO2n(i、j)は、nフレーム目の画素位置(i、j)の第2視差低減信号をVI2n(i、j)とし、n-1フレーム目の画素位置(i、j)の第2時間軸方向フィルタ187の出力データをVO2n-1(i、j)、時定数をK4とすると、以下の式8で算出される。
【0166】
VO2n(i、j)={VI2n(i、j)-VO2n-1(i、j)}×K4
+VO2n-1(i、j) (式8)
【0167】
式8に示すように、第2時間軸方向フィルタ187は、現フレームの入力データ(現フレームの第2視差低減信号の一例)と過去のフレームの出力データ(過去のフレームの第2応答補正信号の一例)とを用いて、現フレームの出力データ(現フレームの第2応答補正信号の一例)を算出する。言い換えると、第2時間軸方向フィルタ187は、過去のフレームの出力データが現フレームの出力データに影響を与えるような処理を行う。本実施の形態では、第2時間軸方向フィルタ187は、1つ前のフレームの出力データが次のフレームの出力データに影響を与えるように構成される。
【0168】
第2時間軸方向フィルタ187の時定数K4は、例えば、1より小さい値に設定される。第2時間軸方向フィルタ187は、第2液晶パネル30の応答を遅らせるようにフィルタ処理を実行する。このように、第2時間軸方向フィルタ187は、時定数K4の値を調整して、温度が変化した場合でも、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30の応答の差をゼロに近づける。
【0169】
なお、時定数K4は、例えば、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30の応答速度の計測を行い、計測結果に基づいて予め設定されてもよい。また、時定数K4は、例えば、所定の値に設定されてもよい。時定数K4は、フィルタ係数の一例である。
【0170】
このような第2時間軸方向フィルタ187には、例えば、IIRフィルタ構成のローパスフィルタを適用することができる。第2時間軸方向フィルタ187は、例えば、一次遅れ系のIIRフィルタ構成のローパスフィルタであってもよい。なお、第2時間軸方向フィルタ187は、IIRフィルタ構成のローパスフィルタであることに限定されない。第2時間軸方向フィルタ187は、例えば、FIRフィルタ構成のローパスフィルタであってもよい。また、第2時間軸方向フィルタ187は、例えば、メディアンフィルタなどであってもよい。
【0171】
なお、画像処理部80は、過去のフレームにおける第2時間軸方向フィルタ187の出力データを記憶するフレームメモリ(図示しない)を備える。例えば、第2時間軸方向フィルタ187が当該フレームメモリを有していてもよい。
【0172】
なお、第2時間軸方向フィルタ187は、上記の式8などの近似式を用いることに限定されない。第2時間軸方向フィルタ187は、例えば、ルックアップテーブルを用いて出力値を算出することで、現フレームの第2応答補正信号を生成してもよい。
【0173】
ブレンド部188は、最高輝度を維持しながら第2ガンマ補正部83から出力される信号と、第2時間軸方向フィルタ187から出力される信号とを合成する。ブレンド部188は、例えば、2つの信号の輝度の最大値を基準とし、所定の比率で2つの信号を加算する。言い換えると、ブレンド部188は、第2ガンマ補正部83により階調補正された現フレームの白黒画像データと、現フレームの第2応答補正信号とを所定の重みで加算する。
【0174】
ブレンド部188は、第2ガンマ補正部83から出力される信号の階調値をD11、第2時間軸方向フィルタ187から出力される信号の階調値をD12とすると、例えば、以下の式9により第1視差低減部189に出力する信号の階調値D10を算出する。
【0175】
D10=(1-α)×D11+α×D12 (式9)
【0176】
ここで、αは、係数(重み)であり、所定の重みの一例である。係数αは、例えば、1以下の値である。ブレンド部188は、入力画像信号Dataに基づいて係数αを決定してもよい。ブレンド部188は、例えば、入力画像信号Dataが示す画像の明るさに応じて、係数αを決定してもよい。ブレンド部188は、例えば、入力画像信号Dataが示す画像が明るい画像である場合、画像が暗い場合に比べて係数αを大きい値に決定する。ブレンド部188は、明るいシーンでは第2時間軸方向フィルタ187からの信号の影響が大きくなるように係数αを決定する。ブレンド部188は、入力画像信号Dataが示す画像が明るい画像である場合、画像が暗い場合に比べて階調値D12の重み(α)を大きい値に決定するとも言える。例えば、ブレンド部188は、入力画像信号Dataが示す画像が明るい画像である場合、現フレームの第2応答補正信号の重みを階調補正された現フレームの白黒画像データの重みより大きくなるように係数αを決定してもよい。
【0177】
また、ブレンド部188は、例えば、入力画像信号Dataが示す画像が暗い画像である場合、画像が明るい場合に比べて係数αを小さい値に決定する。ブレンド部188は、暗いシーンでは第2ガンマ補正部83の信号の影響が大きくなるように係数αを決定する。ブレンド部188は、入力画像信号Dataが示す画像が暗い画像である場合、画像が明るい場合に比べて階調値D11の重み(1-α)を大きい値に決定するとも言える。例えば、ブレンド部188は、入力画像信号Dataが示す画像が暗い画像である場合、階調補正された現フレームの白黒画像データの重みを現フレームの第2応答補正信号の重みより大きくなるように係数αを決定してもよい。
【0178】
なお、上記で説明した係数αの決定は、一例であり、これに限定されない。例えば、係数αは、予め設定された値であってもよい。
【0179】
なお、明るいとは、例えば、画像における階調値(画素ごとの階調値)の最大値、平均値、中央値、又は、最小値のいずれかが所定の階調値より大きいことであってもよい。また、明るいとは、例えば、画像を複数のエリアに分割し、分割されたエリア内の複数の画素の階調値の最大値、平均値、中央値、又は、最小値のいずれかが所定の階調値より大きいことであってもよい。この場合、ブレンド部188は、複数のエリアごとに、係数αを決定してもよい。ブレンド部188は、例えば、複数のエリアのうち、所定の明るさ以下の暗いエリアがある場合、当該暗いエリアの周囲のエリア(例えば、当該暗いエリアに隣接するエリア)の係数αを、当該周囲のエリアの明るさに基づいて決定される係数αより小さな値に設定してもよい。これにより、局所的に暗いエリアがある画像において、当該暗いエリアの周囲の明るいエリアが影響して、黒浮きが発生することを抑制することができる。つまり、さらに画質の低下を抑制することができる。なお、所定の階調値は、所定の明るさの一例である。
【0180】
図16の(b)は、第2ガンマ補正部83から出力される信号に基づく画像と、第2時間軸方向フィルタ187から出力される信号に基づく画像とを所定の混合比で合成(図16中のブレンド処理)した画像を示す。このとき、最大輝度は、維持される。つまり、合成することで生成される画像の最大輝度が、入力画像の最大輝度と等しくなる。
【0181】
図15を再び参照して、ブレンド部188は、生成した信号を第1視差低減部189に出力する。ブレンド部188が第1視差低減部189に出力する信号は、入力画像信号Dataに基づく第1信号の一例である。
【0182】
第1視差低減部189は、ブレンド部188が出力した信号に対して、第1出力画像信号DAT1に基づく第1画像と、第2出力画像信号DAT2に基づく第2画像との視差を低減する補正を行う。第1視差低減部189は、第2視差低減部186よりフィルタサイズが小さいフィルタである。第2視差低減部186は、例えば、小面積フィルタである。第1視差低減部189のフィルタサイズは、例えば、10画素×10画素程度であるが、これに限定されない。第1視差低減部189のフィルタサイズが小さいことで、フリッカ及び輝度ムラが発生することを抑制しつつ、視差をさらに低減することができる。第1視差低減部189は、例えば、いわゆるMAXフィルタ又はガウシアンフィルタなどのローパスフィルタにより実現される。第1視差低減部189は、例えば、図16の(c)に示すように、ブレンド部188から出力された信号に対して、小面積のフィルタ処理を実行する。
【0183】
図15を再び参照して、第1視差低減部189は、ブレンド部188からの信号に基づいて生成した第2視差低減信号を、第1時間軸方向フィルタ85及び第2液晶パネル30に出力する。第2視差低減信号は、第2出力画像信号DAT2の一例である。
【0184】
このように構成された画像処理部180は、第2時間軸方向フィルタ187のフィルタ処理により、第2液晶パネル30へ出力される第2出力画像信号DAT2における低周波の領域の階調値をゆっくりと変化させる。その結果、第2液晶パネル30が表示するSub表示画像の低周波の領域がゆっくり変化する(後述する図19参照)。
【0185】
また、補正部90は、第1出力画像信号DAT1と第2出力画像信号DAT2とを掛け合わせると入力画像信号Dataとなる関係を維持しつつ、第1出力画像信号DAT1に補正を加える。具体的には、補正部90は、第1液晶パネル20へ出力される第1出力画像信号DAT1における低周波の領域の階調値をゆっくりと変化させるように補正を加える。
【0186】
これにより、液晶表示装置110は、温度変化により第1液晶パネル20と第2液晶パネル30との応答速度の応答差が変化しても、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30の低周波の領域の輝度値をゆっくりと変化させることで、当該温度変化によりフリッカ及び輝度ムラが発生することを抑制することができる。
【0187】
ここで、第2時間軸方向フィルタ187を備えない液晶表示装置において、温度が変化した場合について、図17を参照しながら説明する。図17は、比較例2に係る液晶表示装置の表示データの一例を示す図である。比較例2に係る液晶表示装置は、図15に示す第1時間軸方向フィルタ85を備え、かつ、第2時間軸方向フィルタ187を備えていない液晶表示装置である。例えば、比較例2に係る液晶表示装置は、実施の形態1に係る液晶表示装置10であってもよい。以下では、比較例2に係る液晶表示装置が実施の形態1に係る液晶表示装置10である例について説明する。なお、図17は、図18の点Pにおける表示データを示す。
【0188】
実施の形態1では、第1温度において、第1液晶パネル20の時定数K21を0.875、第2液晶パネル30の時定数K22を0.5、時間軸方向フィルタ85の時定数K1を0.54として第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30の応答を合わせた(図8の実線を参照)。図17は、周囲の温度が第1温度から第2温度に変化したことにより、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30の応答速度が変化し、第1時間軸方向フィルタ85の時定数K1が0.54のまま、第1液晶パネル20の時定数K21が0.8、第2液晶パネル30の時定数K22が0.3に変化したときの表示データの一例を示す図である。
【0189】
図8に示すように、第1温度では、第1時間軸方向フィルタ85のフィルタ処理により、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30の応答が合っていた。しかしならが、図17に示すように、第2温度では、液晶パネルの応答速度が変化することにより液晶パネルの時定数が変化するので、第1時間軸方向フィルタ85の時定数K1が0.54のままでは、第1液晶パネル20の応答を適切に補正できていないことがわかる。その結果、比較例2に係る液晶表示装置では、一点鎖線枠が示すように、第3フレーム以降において、本来より明るく表示されるフリッカが発生する場合がある。
【0190】
一方、本実施の形態に係る液晶表示装置110は、第2時間軸方向フィルタ187を備えるので、温度変化に起因するフリッカ及び輝度ムラを抑制することができる。以下、温度変化に起因するフリッカ及び輝度ムラを抑制することについて、図18及び図19を参照しながら説明する。
【0191】
図18は、本実施の形態に係る液晶表示装置110の表示画像の一例を示す図である。具体的には、図18は、第1フレーム~第5フレームまでの5つのフレームにおける、入力画像、大面積フィルタ画像、Sub表示画像、及び、Main表示画像を模式的に示す。大面積フィルタ画像は、第2視差低減部186から出力された信号に基づく画像を示す。
【0192】
図19は、本実施の形態に係る液晶表示装置110の表示データの一例を示す図である。図19では、横軸はフレームを示し、縦軸は表示データ(階調値)を示す。また、破線は、第2時間軸方向フィルタ187を備えていない場合の輝度推移を示しており、実線は、第2時間軸方向フィルタ187を備えている場合の輝度推移を示している。
【0193】
図18及び図19に示すように、液晶表示装置110は、第2時間軸方向フィルタ187を備えるので、第1液晶パネル20が表示するMain表示画像及び第2液晶パネル30が表示するSub表示画像の低周波の領域の応答を遅らせることができる。つまり、液晶表示装置110は、Main表示画像及びSub表示画像の低周波の領域において、表示が切り替わる速度を遅らせることができる。
【0194】
図18に示す第2フレームから第3フレームにかけて表示が切り替わっているが、その切り替わりが第5フレームの時点でまだ完了していない。液晶表示装置110は、例えば、低周波の領域において、図10に示す場合より、実際の表示の切り替えに時間を要する。
【0195】
図19に示すように、液晶表示装置110は、第2時間軸方向フィルタ187により、Subデータの変化を大面積で抑制することにより、表示画像のフリッカを抑制することができる。Subデータはゆっくり変化するが、Subデータ×Mainデータ=入力画像信号を維持しながらMainデータもSubデータの変化に追従する。これにより、液晶表示装置110は、温度変化等により、第1液晶パネル20と第2液晶パネル30との応答差が変化しても、最終的に表示画像に現れるフリッカを抑制することができる。例えば、液晶表示装置110は、温度センサによる制御を行うことなく、つまりコストアップすることを抑制しつつ、温度変化によるフリッカを抑制することができる。また、液晶表示装置110は、白ウィンドウのスクロール画像を表示するも同様に、低周波の領域において、Subデータ及びMainデータがゆっくり変化するので、温度変化による輝度ムラを抑制することができる。
【0196】
なお、液晶表示装置110の構成は、上記に限定されない。液晶表示装置110は、例えば、第1ガンマ補正部81及び第2ガンマ補正部83の少なくとも一方を備えていればよい。また、液晶表示装置110は、第1視差低減部189を備えていなくてもよい。この場合、第2視差低減部186は、階調補正された白黒画像データに対して、第1出力画像信号DAT1に基づく第1画像と、第2出力画像信号DAT2に基づく第2画像との視差を低減する補正を行うことで視差低減信号(第1視差低減信号の一例)を生成する第1視差低減部として機能する。
【0197】
[2-2.効果など]
以上説明したように、液晶表示装置110は、入力画像信号Dataに基づく第3信号に対して、第1出力画像信号DAT1に基づく第1画像と、第2出力画像信号DAT2に基づく第2画像との視差を低減する補正を行うことで、第2視差低減信号を生成する第2視差低減部186と、第2視差低減信号と、第2液晶パネル30の応答速度を遅らせるための第2応答補正信号であって、過去のフレームの第2応答補正信号とを用いて時間軸方向のフィルタ処理を行うことで、現フレームの第2応答補正信号を生成する第2時間軸方向フィルタ187と、第3信号と、現フレームの第2応答補正信号とを所定の重みで加算することで第1信号を生成するブレンド部188とをさらに備える。
【0198】
これにより、第2時間軸方向フィルタ187は、第2ガンマ補正部83からの白黒画像データのうち低周波の領域を遅らせることができる。つまり、第2時間軸方向フィルタ187を備えることで、第2液晶パネル30の表示は、低周波の領域においてゆっくり切り替わる。また、これに伴い、補正部90の補正により第1液晶パネル20の表示も、低周波の領域においてゆっくりと切り替わる。よって、液晶表示装置110は、温度変化により第1液晶パネル20と第2液晶パネル30との応答差が変化しても、低周波の領域の表示がゆっくりと切り替わることで、温度変化によりフリッカ及び輝度ムラが発生することを抑制することができる。つまり、液晶表示装置110によれば、温度センサなどの他の構成を追加することなく、つまりコストアップを抑制しつつ、画質の低下をさらに抑制することができる。また、液晶表示装置110が表示する画像の最大輝度は、入力画像の最大輝度を維持することができる。
【0199】
また、第2視差低減部186は、第1視差低減部189よりフィルタサイズが大きい。
【0200】
これにより、第2視差低減部186は、フィルタサイズが小さいときに比べて、視差をより改善することができる。なお、第2視差低減部186のフィルタサイズが大きいことで視差は改善するがフリッカ及び輝度ムラが目立ちやすくなるが、第2時間軸方向フィルタ187があることで、当該フリッカ及び輝度ムラが発生することを抑制することができる。よって、液晶表示装置110によれば、フリッカ及び輝度ムラの発生を抑制しつつ、視差をより低減することができるので、さらに画質を向上させることができる。
【0201】
また、ブレンド部188は、入力画像信号Dataが示す画像の明るさに応じて、所定の重みを決定する。
【0202】
これにより、重みは、画像の明るさに応じて変化する。液晶表示装置110は、画像の明るさに応じて適切に重みが設定されることで、温度変化によるフリッカ及び輝度ムラの発生をより抑制することができる。
【0203】
また、ブレンド部188は、画像が所定の明るさ以上である場合、第3信号及び現フレームの第2応答補正信号のうち現フレームの第2応答補正信号の重みが大きくなるように所定の重みを決定し、入力画像信号Dataが示す画像の明るさが所定の明るさより低い場合、第3信号及び現フレームの第2応答補正信号のうち第3信号の重みが大きくなるように所定の重みを決定する。
【0204】
これにより、液晶表示装置110は、画像が明るい場合に、大面積の第2視差低減部186の影響を大きくすることで、視差を効果的に抑制することができる。また、液晶表示装置110は、画像が暗い場合に、第2ガンマ補正部83からの信号の影響を大きくすることで、暗い画像に対する黒浮きを抑制することができる。
【0205】
また、第2液晶パネル30のガンマ特性に応じて入力画像信号Dataの階調値を補正することで第3信号を生成する第2ガンマ補正部83をさらに備える。
【0206】
なお、第2ガンマ補正部83は、階調補正部の一例である。
【0207】
これにより、第2液晶パネル30のガンマ特性を考慮した信号に対して、各種処理を行うことができる。つまり、第2出力画像信号DAT2は、第2液晶パネル30のガンマ特性を考慮した信号となる。よって、第2液晶パネル30は、より所望の表示を行うことができる。
【0208】
(実施の形態3)
以下、本実施の形態に係る液晶表示装置210について、図20を参照しながら説明する。
【0209】
[3-1.液晶表示装置の構成]
まず、本実施の形態に係る液晶表示装置210の構成について、図20を参照しながら説明する。図20は、本実施の形態に係る画像処理部280の機能構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る液晶表示装置210は、簡易な構成で、温度変化により応答差が変化した場合でも、フリッカ及び輝度ムラが発生することを抑制することができる点に特徴を有する。
【0210】
画像処理部280は、主に、第2時間軸方向フィルタ286を備える点において、実施の形態1に係る画像処理部80と相違する。以下、本実施の形態に係る画像処理部280について、実施の形態1に係る画像処理部80との相違点を中心に説明する。また、本実施の形態において、実施の形態1に係る画像処理部80と同一または類似の構成については、画像処理部80と同一の符号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0211】
図20に示すように、液晶表示装置210の画像処理部280は、実施の形態1の画像処理部80に加えて、第2時間軸方向フィルタ286を備える。また、視差低減部84と第2時間軸方向フィルタ286とで、第1視差低減部が構成される。
【0212】
第2時間軸方向フィルタ286は、視差低減部84と第1時間軸方向フィルタ85及び第2液晶パネル30との間に接続される。言い換えると、第2時間軸方向フィルタ286から出力される信号が、第2出力画像信号DAT2として第1時間軸方向フィルタ85及び第2液晶パネル30に入力される。
【0213】
第2時間軸方向フィルタ286は、温度変化に起因するフリッカ及び輝度ムラが発生することを抑制するための第2応答補正信号を生成する。第2応答補正信号は、視差低減部84からの信号に基づく信号であり、第2液晶パネル30の応答を遅らせるための信号である。第2応答補正信号は、第2液晶パネル30の表示画像の応答を遅延させる(具体的には、第2液晶パネル30の表示画像のうち低周波の領域の応答を遅延させる)信号であるともいえる。第2応答補正信号は、例えば、視差低減部からの信号における低周波の成分の輝度変化を遅らせた信号である。
【0214】
第2時間軸方向フィルタ286は、視差低減部84から出力された信号を用いて現フレームの第2応答補正信号を生成する。第2時間軸方向フィルタ286は、ローパスフィルタ処理された信号を用いて現フレームの第2応答補正信号を生成するともいえる。第2時間軸方向フィルタ286は、視差低減部84からの信号と、過去のフレームにおいて第2時間軸方向フィルタ286が第1時間軸方向フィルタ85及び第2液晶パネル30に出力した第2応答補正信号(出力信号の一例)とを用いて時間軸方向のフィルタ処理を行うことで、現フレームの第2応答補正信号を生成する。なお、本実施の形態では、第2出力画像信号DAT2は、現フレームの第2応答補正信号である。
【0215】
これにより、第2液晶パネル30において輝度値が急激に変化することを抑制することができる。具体的には、第2時間軸方向フィルタ286は、第2液晶パネル30が表示するSub表示画像の低周波の領域の輝度の時間変化を抑制する。
【0216】
ここで、第2時間軸方向フィルタ286によるフィルタ処理について説明する。nフレーム目の画素位置(i、j)の第2時間軸方向フィルタ286の出力データVO3n(i、j)は、nフレーム目の画素位置(i、j)の視差低減部84からの信号をVI3n(i、j)とし、n-1フレーム目の画素位置(i、j)の第2時間軸方向フィルタ286の出力データ(過去のフレームの第2応答補正信号の一例)をVO3n-1(i、j)、時定数をK5とすると、以下の式10で算出される。
【0217】
VO3n(i、j)={VI3n(i、j)-VO3n-1(i、j)}×K5
+VO3n-1(i、j) (式10)
【0218】
式10に示すように、第2時間軸方向フィルタ286は、現フレームの入力データ(視差低減部84からの信号であり、第1視差低減信号の一例)と過去のフレームの出力データ(過去のフレームの第2応答補正信号の一例)とを用いて、現フレームの出力データ(現フレームの第2応答補正信号の一例)を算出する。言い換えると、第2時間軸方向フィルタ286は、過去のフレームの出力データが現フレームの出力データに影響を与えるような処理を行う。本実施の形態では、第2時間軸方向フィルタ286は、1つ前のフレームの出力データが次のフレームの出力データに影響を与えるように構成される。
【0219】
第2時間軸方向フィルタ286の時定数K5は、例えば、1より小さい値に設定される。第2時間軸方向フィルタ286は、第2液晶パネル30の応答を遅らせるようにフィルタ処理を実行する。このように、第2時間軸方向フィルタ286は、時定数K5の値を調整して、温度が変化した場合でも、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30の応答の差をゼロに近づける。
【0220】
なお、時定数K5は、例えば、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30の応答速度の計測を行い、計測結果に基づいて予め設定されてもよい。また、時定数K5は、例えば、所定の値に設定されてもよい。時定数K5は、フィルタ係数の一例である。
【0221】
このような第2時間軸方向フィルタ286には、例えば、IIRフィルタ構成のローパスフィルタを適用することができる。第2時間軸方向フィルタ286は、例えば、一次遅れ系のIIRフィルタ構成のローパスフィルタであってもよい。なお、第2時間軸方向フィルタ286は、IIRフィルタ構成のローパスフィルタであることに限定されない。第2時間軸方向フィルタ286は、例えば、FIRフィルタ構成のローパスフィルタであってもよい。また、第2時間軸方向フィルタ286は、例えば、メディアンフィルタなどであってもよい。
【0222】
なお、画像処理部280は、過去のフレームにおける第2時間軸方向フィルタ286の出力データを記憶するフレームメモリ(図示しない)を備える。例えば、第2時間軸方向フィルタ286が当該フレームメモリを有していてもよい。
【0223】
なお、第2時間軸方向フィルタ286は、上記の式10などの近似式を用いることに限定されない。第2時間軸方向フィルタ286は、例えば、ルックアップテーブルを用いて出力値を算出することで、現フレームの第2応答補正信号を生成してもよい。
【0224】
このように構成された画像処理部280は、第2時間軸方向フィルタ286のフィルタ処理により、第2液晶パネル30へ出力される第2出力画像信号DAT2における低周波の領域の階調値をゆっくりと変化させる。その結果、第2液晶パネル30が表示するSub表示画像の低周波の領域がゆっくり変化する。
【0225】
また、補正部90は、第1出力画像信号DAT1と第2出力画像信号DAT2とを掛け合わせると入力画像信号Dataとなる関係を維持した中で、第1出力画像信号DAT1に補正を加える。具体的には、補正部90は、第1液晶パネル20へ出力される第1出力画像信号DAT1における低周波の領域の階調値をゆっくりと変化させるように補正を加える。
【0226】
これにより、液晶表示装置210は、温度変化により第1液晶パネル20と第2液晶パネル30との応答速度の応答差が変化しても、第1液晶パネル20及び第2液晶パネル30の低周波の領域の輝度値をゆっくりと変化させることで、当該温度変化によりフリッカ及び輝度ムラが発生することを抑制することができる。
【0227】
また、第2時間軸方向フィルタ286は、視差低減部84のフィルタサイズが大きい場合(例えば、300画素×300画素など)、さらに視差低減部84のローパスフィルタ処理に起因してフリッカ及び輝度ムラが発生することを抑制することができる。
【0228】
[3-2.効果など]
以上説明したように、第1視差低減部は、第2ガンマ補正信号に対して平滑化処理を行い第1視差低減信号を生成するローパスフィルタと、第1視差低減信号と、過去のフレームの第2出力画像信号DAT2とに基づいて時間軸方向のフィルタ処理を行うことで、現フレームの第2出力画像信号DAT2を生成する第2時間軸方向フィルタ286と、を有する。
【0229】
なお、ローパスフィルタは、平滑化フィルタの一例であり、第1視差低減信号は、視差低減信号の一例である。平滑化フィルタは、視差低減部84が有する。また、視差低減部84と第2時間軸方向フィルタ286とで第1視差低減部が構成される。
【0230】
これにより、第2時間軸方向フィルタ286は、視差低減部84からの信号のうち低周波の領域を遅らせることができる。つまり、第2時間軸方向フィルタ286を備えることで、第2液晶パネル30の表示は、低周波の領域においてゆっくり切り替わる。また、これに伴い、補正部90の補正により第1液晶パネル20の表示も、低周波の領域においてゆっくりと切り替わる。よって、液晶表示装置210は、温度変化により第1液晶パネル20と第2液晶パネル30との応答差が変化しても、低周波の領域の表示がゆっくりと切り替わることで、温度変化によりフリッカ及び輝度ムラが発生することを抑制することができる。つまり、液晶表示装置210によれば、温度センサなどの他の構成を追加することなく、つまりコストアップを抑制しつつ、画質の低下をさらに抑制することができる。
【0231】
(その他の実施の形態)
以上、各実施の形態及び変形例(以下において、実施の形態等とも記載する)に係る液晶表示装置について説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0232】
例えば、上記実施の形態等において、液晶表示装置は、2つの液晶パネルを備える例について説明したが、これに限定されない。液晶表示装置は、例えば、3つ以上の液晶パネルを備えていてもよい。
【0233】
また、一対の第1透明基板及び一対の第2透明基板は、ガラス基板としたが、これに限らず、透明樹脂基板等であってもよい。
【0234】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを1つの機能ブロックとして実現したり、1つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0235】
また、上記実施の形態等において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、プロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、又はLSI(Large scale integration)を含む一つ又は複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、一つのチップに集積されていてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは一つの装置に集約されていてもよし、複数の装置に備えられていてもよい。
【0236】
また、上記実施の形態等において説明された複数の処理の順序は一例である。複数の処理の順序は、変更されてもよいし、複数の処理の少なくとも一部は、並行して実行されてもよい。
【0237】
その他、実施の形態等に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、または、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【符号の説明】
【0238】
10、10a、110、210 液晶表示装置
11 液晶表示部(表示部)
20 第1液晶パネル
20a 第1画像表示領域
21 第1ソースドライバ
22 第1ゲートドライバ
23 第1透明基板
23a 第1TFT基板
23b 第1対向基板
24 第1液晶層
25 第1偏光板
26 第1TFT層
27 第1画素形成層
27a 第1ブラックマトリクス
27b カラーフィルタ
30 第2液晶パネル
30a 第2画像表示領域
31 第2ソースドライバ
32 第2ゲートドライバ
33 第2透明基板
33a 第2TFT基板
33b 第2対向基板
34 第2液晶層
35 第2偏光板
36 第2TFT層
37 第2画素形成層
37a 第2ブラックマトリクス
40 接着層
50 バックライト
60 フロントシャーシ
71 第1タイミングコントローラ
72 第2タイミングコントローラ
80、80a、180、280 画像処理部
81 第1ガンマ補正部
82 白黒画像生成部
83 第2ガンマ補正部(階調補正部)
84 視差低減部
85 時間軸方向フィルタ(第1時間軸方向フィルタ)
90、90a 補正部
91、91a 除算処理部
92 乗算器
186 第2視差低減部
187、286 第2時間軸方向フィルタ
188 ブレンド部
189 第1視差低減部
D データ値
Data 入力画像信号
DAT1 第1出力画像信号
DAT2 第2出力画像信号
D10、D11、D12 階調値
K1 時定数(フィルタ係数)
K21、K22、K3、K4、K5 時定数
L 合成輝度
P 点
rm、rs、r1、r2 ガンマ値
α 係数(所定の重み)
図1
図2
図3
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図5
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図10
図11
図12A
図12B
図13
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図20
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