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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 15/00 20060101AFI20231003BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20231003BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20231003BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C08L15/00
C08K3/36
C08K5/06
B60C1/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019239138
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021107504
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菱川 靖浩
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-056349(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110409(WO,A1)
【文献】特開2018-095777(JP,A)
【文献】特開2017-145341(JP,A)
【文献】米国特許第10087306(US,B2)
【文献】特開2017-214508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニル-共役ジエン共重合体が水素添加された水添共重合体であって、重量平均分子量が30万以上であり、共役ジエン部の水素添加率が80モル%以上である水添共重合体を含むゴム成分100質量部に対して、シリカ1~150質量部と、下記一般式(1)で表される環状アルコキシド0.1~20質量部とを含む、タイヤ用ゴム組成物。
【化1】
式中、Mは二価金属原子を表し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基置換アルキル基、アミノ基置換アルキル基またはチオール基置換アルキル基を表す。
【請求項2】
前記一般式(1)中のMが亜鉛原子、カルシウム原子またはマグネシウム原子を表し、Rが水素原子を表し、R がヒドロキシ基置換アルキル基を表す、請求項1に記載のタ
イヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて作製されたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
低燃費性や破断強度、耐摩耗性等を向上させることを目的として、タイヤ用ゴム組成物に、芳香族ビニル化合物に基づく構成単位及び共役ジエン化合物に基づく構成単位を有し、共役ジエン部を水素添加した水添共重合体を配合することが知られている(特許文献1~5)。
【0003】
しかしながら、かかる水添共重合体をゴム成分として用いると、ゴム組成物のムーニー粘度が高くなり、加工性に課題がある。
【0004】
なお、特許文献6には、加硫ゴムのヒステリシスを増大させることなく低歪みでの動バネ定数を向上するために、シリカ配合のゴム組成物に亜鉛グリセロレート等の特定の環状アルコキシドを配合することが開示されている。しかしながら、上記水添共重合体との組み合わせにおいて加工性が改善されることは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2014/133097A1
【文献】WO2016/039008A1
【文献】特開2016-056349号公報
【文献】特開2017-145341号公報
【文献】特開2018-95779号公報
【文献】米国特許第10087306号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、上記の点に鑑み、ゴム成分として水添共重合体を用いたゴム組成物において耐摩耗性の低下を抑えながら加工性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係るタイヤ用ゴム組成物は、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体が水素添加された水添共重合体であって、重量平均分子量が30万以上であり、共役ジエン部の水素添加率が80モル%以上である水添共重合体を含むゴム成分100質量部に対して、シリカ1~150質量部と、下記一般式(1)で表される環状アルコキシド0.5~20質量部とを含むものである。
【0008】
【化1】
式中、Mは二価金属原子を表し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基置換アルキル基、アミノ基置換アルキル基またはチオール基置換アルキル基を表す。
【0009】
本発明の実施形態に係るタイヤは、該タイヤ用ゴム組成物を用いて作製されたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態によれば、ゴム成分に水添共重合体を用いたものにおいて、上記環状アルコキシドを配合したことにより、耐摩耗性の低下を抑えながら加工性を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係るタイヤ用ゴム組成物(以下、単にゴム組成物ともいう。)は、水添共重合体を含むゴム成分とともに、シリカおよび環状アルコキシドを配合してなるものである。
【0012】
[水添共重合体]
ゴム成分として用いる水添共重合体は、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体が水素添加された水添共重合体であって、重量平均分子量(Mw)が30万以上であり、共役ジエン部の水素添加率が80モル%以上である水添共重合体である。
【0013】
上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体を構成する芳香族ビニル化合物としては、特に限定されず、例えばスチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4-シクロヘキシルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体を構成する共役ジエン化合物としては、特に限定されず、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体は、特に限定されないが、スチレン及び1,3-ブタジエンの共重合体(スチレンブタジエン共重合体)であることが好ましい。従って、水添共重合体としては、水添スチレンブタジエン共重合体であることが好ましい。水添共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても、交互共重合体であってもよい。
【0016】
上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合体における芳香族ビニルの含有量(例えばスチレンブタジエン共重合体の場合の結合スチレン量)は、特に限定されず、例えば5~40質量%でもよく、10~30質量%でもよい。
【0017】
上記水添共重合体は、例えば、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体を合成し、水素添加処理を行うことで合成することができる。芳香族ビニル-共役ジエン共重合体の合成方法は、特に限定されないが、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法等を挙げることができ、特に溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、回分式及び連続式のいずれであってもよい。なお、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体は市販のものを使用することも可能である。
【0018】
水素添加の方法は、特に限定されず、公知の方法、公知の条件で水素添加すればよい。通常は、20~150℃、0.1~10MPaの水素加圧下、水添触媒の存在下で実施される。なお、水素添加率は、水添触媒の量、水添反応時の水素圧力、反応時間等を変えることにより、任意に選定することができる。水添触媒として、通常は、元素周期表4~11族金属のいずれかを含む化合物を用いることができる。例えば、Ti、V、Co、Ni、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Ptのいずれかの原子を含む化合物を水添触媒として用いることができる。より具体的な水添触媒としては、Ti、Zr、Hf、Co、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh、Re等のいずれかを含むメタロセン系化合物;Pd、Ni、Pt、Rh、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた担持型不均一系触媒;Ni、Co等の金属元素の有機塩又はアセチルアセトン塩と有機アルミニウム等の還元剤とを組み合わせた均一系チーグラー型触媒;Ru、Rh等の有機金属化合物又は錯体;水素を吸蔵させたフラーレンやカーボンナノチューブ等を挙げることができる。
【0019】
水添共重合体の水素添加率は80モル%以上であり、好ましくは80~95モル%であり、85~95モル%でもよく、90~95モル%でもよい。水素添加率が80モル%以上であることにより、架橋の均質化による耐摩耗性の改善効果に優れる。ここで、水添共重合体の水素添加率は、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体の共役ジエン部(共役ジエン化合物に基づく単位)に対して水素添加された割合であり、水素添加前の共役ジエン部全体を100モル%としたときの水素添加された共役ジエン部のモル比率である。
【0020】
水添共重合体のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定された重量平均分子量(Mw)は、30万以上であれば特に限定されないが、30万~200万であることが好ましく、30万~100万であることがより好ましく、30万~60万であることがさらに好ましい。
【0021】
[ゴム成分]
ゴム成分は、上記水添共重合体を含むものであり、水添共重合体単独でもよく、水添共重合体とともに他のジエン系ゴムが含まれてよい。
【0022】
ゴム成分中の上記水添共重合体の含有割合は、70~100質量%であることが好ましい。すなわち、ゴム成分100質量部中に上記水添共重合体を70~100質量部含むことが好ましい。ゴム成分中の上記水添共重合体の含有割合は、80~100質量%であることがより好ましい。
【0023】
水添共重合体と併用してもよい上記他のジエン系ゴムは、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴムなどが挙げられる。これらのジエン系ゴムは、いずれか1種単独で用いても、2種以上ブレンドして用いてもよい。
【0024】
[シリカ]
充填剤としてのシリカとしては、特に限定されず、例えば、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカを用いてもよい。
【0025】
シリカの配合量は、ゴム成分100質量部に対して1~150質量部であり、より好ましくは10~120質量部であり、また20~100質量部でもよく、30~80質量部でもよい。
【0026】
充填剤としてはシリカ単独でもよいが、シリカとともにカーボンブラックを配合してもよい。カーボンブラックとしては、特に限定されず、公知の種々の品種を用いることができる。例えば、SAF級(N100番台)、ISAF級(N200番台)、HAF級(N300番台)、FEF級(N500番台)(ともにASTMグレード)のものが好ましく用いられる。これら各グレードのカーボンブラックは、いずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。カーボンブラックを併用する場合、その配合量は、特に限定されず、ゴム成分100質量部に対して、20質量部以下でもよく、5~15質量部でもよい。
【0027】
本実施形態において、充填剤はシリカを主成分としてもよく、充填剤の50質量%超、より好ましくは80質量部超がシリカでもよい。
【0028】
[環状アルコキシド]
本実施形態に係るゴム組成物には、下記一般式(1)で表される環状アルコキシドが配合される。
【0029】
【化2】
式(1)中、Mは二価金属原子を表し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基置換アルキル基、アミノ基置換アルキル基またはチオール基置換アルキル基を表す。
【0030】
上記水添共重合体とシリカを含む系に該環状アルコキシドを配合することにより、水添共重合体による優れた耐摩耗性を維持しながら加工性を改善することができる。その理由は、これにより限定されることを意図するものではないが、次のように推測される。すなわち、環状アルコキシドがシリカに表面に結合し、表面を部分的にブロックすることで、シリカの凝集が緩和され、水添共重合体中でのシリカの分散がよくなって、耐摩耗性を維持しつつ加工性が改善することができると考えられる。
【0031】
上記式(1)において、Mは、亜鉛原子(Zn)、カルシウム原子(Ca)またはマグネシウム原子(Mg)であることが好ましく、より好ましくは亜鉛原子である。
【0032】
上記R及びRにおいて、アルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい。またアルキル基の炭素数は1~30であることが好ましく、1~20でもよく、1~10でもよく、1~5でもよい。
【0033】
ヒドロキシ基置換アルキル基は、置換基としてヒドロキシ基を有するアルキル基であり、直鎖状でも分岐状でもよい。ヒドロキシ基置換アルキル基の炭素数は1~30であることが好ましく、1~20でもよく、1~10でもよく、1~5でもよい。
【0034】
アミノ基置換アルキル基は、置換基としてアミノ基を有するアルキル基であり、直鎖状でも分岐状でもよい。アミノ基置換アルキル基におけるアルキル基の炭素数は1~30であることが好ましく、1~20でもよく、1~10でもよく、1~5でもよい。ここで、アミノ基としては、1級アミノ基(-NH)だけでなく、炭化水素基(好ましくはアルキル基)を1つ又は2つ有する2級又は3級アミノ基でもよい。なお、2級又は3級アミノ基の場合、該炭化水素基の炭素数は合計で15以下であることが好ましい。
【0035】
チオール基置換アルキル基は、置換基としてチオール基を有するアルキル基であり、直鎖状でも分岐状でもよい。チオール基置換アルキル基の炭素数は1~30であることが好ましく、1~20でもよく、1~10でもよく、1~5でもよい。
【0036】
一実施形態において、Rが水素原子かつRがヒドロキシ基置換アルキル基であることが好ましく、より好ましくは、Rが水素原子かつRが炭素数1~5のヒドロキシ基置換アルキル基であり、更に好ましくは、Rが水素原子かつRがヒドロキシメチル基である。そのため、好ましい一実施形態に係る環状アルコキシドとしては、亜鉛グリセロレート、カルシウムグリセロレート又はマグネシウムグリセロレートが挙げられる。
【0037】
式(1)で表される環状アルコキシドの配合量は、ゴム成分100質量部に対して0.1~20質量部である。配合量が0.1質量部以上であることにより、加工性を改善することができる。また、配合量が20質量部以下であることにより、耐摩耗性の低下を抑えることができる。式(1)の環状アルコキシドの配合量は、より好ましくは、ゴム成分100質量部に対して0.5~20質量部であり、2~15質量部でもよく、3~10質量部でもよい。
【0038】
[その他の配合剤]
本実施形態に係るゴム組成物には、上記成分の他に、シランカップリング剤、オイル、樹脂、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、ワックス、加工助剤、加硫剤、加硫促進剤など、タイヤ用ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。
【0039】
シランカップリング剤としては、スルフィドシランやメルカプトシランなどが挙げられる。シランカップリング剤の含有量は、特に限定されず、例えば、シリカ含有量に対して2~20質量%でもよい。
【0040】
オイルとしては、一般にゴム組成物に配合される各種オイルを用いることができる。例えば、鉱物油、即ちパラフィンオイル、ナフテンオイル、及びアロマオイルからなる群から選択される少なくとも1種の鉱物油を用いてもよい。オイルの含有量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して60質量部以下でもよく、5~50質量部でもよい。
【0041】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの各種加硫促進剤を用いることができ、これらのいずれか1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、グアニジン系加硫促進剤とジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤とを含有することが好ましく、また、グアニジン系加硫促進剤及びジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤とともに、スルフェンアミド系加硫促進剤を含有させてもよい。
【0042】
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、1,3-ジ-o-トリルグアニジン(DOTG)、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩(DTGCB)などが挙げられ、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0043】
ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤としては、例えば、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBzC)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDMC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(ZPMC)、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZEPC)、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SDMC)、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SDEC)、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(SDBC)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル(TeDEC)、ジメチルジチオカルバミン酸銅(CuDMC)、ジメチルジチオカルバミン酸鉄(FeDMC)などが挙げられ、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0044】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS),N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(MBS)、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(DIBS)などが挙げられ、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0045】
加硫促進剤の配合量は、特に限定するものではないが、ゴム成分100質量部に対して0.1~7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部である。グアニジン系加硫促進剤の配合量は、特に限定されず、ゴム成分100質量部に対して、0.1~3質量部でもよく、0.2~2質量部でもよい。ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤の含有量は、特に限定されず、ゴム成分100質量部に対して、0.1~3質量部でもよく、0.2~2質量部でもよい。スルフェンアミド系加硫促進剤の含有量は、特に限定されず、ゴム成分100質量部に対して、0.1~3質量部でもよく、0.2~2質量部でもよい。
【0046】
グアニジン系加硫促進剤とジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤とを併用する場合、両者の配合割合(グアニジン系加硫促進剤/ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤)は、質量比で、0.5~3.0であることが好ましい。
【0047】
加硫剤としては、硫黄が好ましく用いられる。加硫剤の配合量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.1~10質量部でもよく、0.5~5質量部でもよい。
【0048】
[ゴム組成物の調製、その他]
本実施形態に係るゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。例えば、第一混合段階(ノンプロ練り工程)で、ゴム成分に対し、シリカ及び環状アルコキシドとともに、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を添加混合する。次いで、得られた混合物に、最終混合段階(プロ練り工程)で加硫剤及び加硫促進剤を添加混合して未加硫のゴム組成物を調製することができる。
【0049】
本実施形態に係るゴム組成物は、例えば乗用車用、トラックやバスの重荷重用など各種用途のタイヤに用いることができ、空気入りタイヤのトレッド部やサイドウォール部などのタイヤの各部位に適用することができる。好ましくは空気入りタイヤのトレッドに用いること、即ちタイヤトレッド用ゴム組成物である。
【0050】
一実施形態に係るタイヤは、上記ゴム組成物を含むものであり、未加硫の上記ゴム組成物を用いてゴム用押し出し機などによりトレッドゴム等のタイヤ部材を作製し、他のタイヤ部材と組み合わせて未加硫タイヤ(グリーンタイヤ)を作製した後、例えば140~180℃で加硫成型することにより製造することができる。例えば、空気入りタイヤのトレッドゴムには、キャップゴムとベースゴムとの2層構造からなるものと、両者が一体の単層構造のものがあるが、接地面を構成するゴムに好ましく用いられる。すなわち、単層構造のものであれば、当該トレッドゴムが上記ゴム組成物からなり、2層構造のものであれば、キャップゴムが上記ゴム組成物からなることが好ましい。
【実施例
【0051】
以下、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
水添共重合体についての測定方法は以下の通りである。
【0053】
[重量平均分子量(Mw)の測定]
水添共重合体のMwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算のMwを求めた。詳細には、測定装置として島津製作所製「LC-10A」を、カラムとしてPolymer Laboratories社製「PLgel-MIXED-C」を、検出器として示差屈折率検出器(RI)を用い、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、測定温度を40℃、流量を1.0mL/分、濃度を1.0g/L、注入量を40μLとし、市販の標準ポリスチレンを用いてポリスチレン換算で算出した。
【0054】
[水素添加率の測定]
水添共重合体の共役ジエン部の水素添加率は、H-NMRを測定して得られたスペクトルの不飽和結合部のスペクトル減少率から算出した。
【0055】
[結合スチレン量の測定]
水添共重合体の結合スチレン量は、H-NMRを用いて、スチレン単位に基づくプロトンと、ブタジエン単位(水素添加部を含む)に基づくプロトンとのスペクトル強度比から求めた。
【0056】
[合成例1:水添共重合体1の合成]
窒素置換された耐熱反応容器に、シクロヘキサンを2.5L、テトラヒドロフラン(THF)を50g、n-ブチルリチウムを0.12g、スチレンを100g、1,3-ブタジエンを400g入れ、反応温度50℃で重合を行った。重合が完了した後にN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシランを1.7g加えて、1時間反応させた後、水素ガスを0.4MPa-ゲージの圧力で供給し、20分間撹拌した。次いで、水素ガス供給圧力を0.7MPa-ゲージ、反応温度を90℃とし、チタノセンジクロリドを主とした触媒を用いて目的の水素添加率となるまで反応させ、溶媒を除去することにより、水添共重合体1を得た。得られた水添共重合体1は、水添スチレンブタジエンゴムであり、Mwは35万、結合スチレン量は20質量%、ブタジエン部の水素添加率は90モル%であった。
【0057】
[合成例2:水添共重合体2の合成]
水素添加を行う反応時間を変更し、水素添加率を変更した以外、合成例1と同様の方法によって水添共重合体2を得た。得られた水添共重合体2は、水添スチレンブタジエンゴムであり、Mwは35万、結合スチレン量は20質量%、ブタジエン部の水素添加率は80モル%であった。
【0058】
[ゴム組成物及びタイヤの作製及び評価]
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、ゴム成分に対し硫黄及び加硫促進剤を除く配合剤を添加し混練した(排出温度=160℃)。次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練した(排出温度=90℃)。これによりゴム組成物を調製した。表1中の各成分の詳細は、以下の通りである。
【0059】
・水添SBR1:合成例1に従い作製した水添共重合体1
・水添SBR2:合成例2に従い作製した水添共重合体2
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」
・シリカ:エボニックインダストリーズ社製「UltrasilVN3」
・シランカップリング剤:エボニックインダストリーズ社製「Si69」
・オイル:JXTGエネルギー(株)製「プロセスNC140」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS-20」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「酸化亜鉛2種」
・ワックス:日本精鑞(株)製「OZOACE0355」
・老化防止剤:住友化学(株)製「アンチゲン6C」
・脂肪酸金属塩:東京化成工業(株)製「ラウリン酸ナトリウム」
・環状アルコキシド:亜鉛グリセロレート(式(1)中、M=Zn、R=H、R=CHOH
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「5%油入粉末硫黄」
・加硫促進剤1:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」、スルフェンアミド系
・加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製「ノクセラ-D」、グアニジン系
・加硫促進剤3:三新化学工業(株)製「サンセラーZBE」、ジチオカルバミン酸塩系。
【0060】
得られた各ゴム組成物について、加工性を評価するとともに、160℃×30分間加硫して試験片を作製して耐摩耗性を評価した。また、各ゴム組成物をトレッドゴムに用いて、常法に従い加硫成型することにより空気入りラジアルタイヤ(タイヤサイズ:215/45ZR17)を作製した。得られた試験タイヤについて、転がり抵抗性能とウェットグリップ性能を評価した。各測定・評価方法は以下の通りである。
【0061】
・加工性:JIS K6300に準拠して東洋精機(株)製ロータレスムーニー測定機を用い、未加硫ゴムを100℃で1分間予熱後、4分後のトルク値をムーニー単位で測定し、測定値の逆数について、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れることを意味する。
【0062】
・耐摩耗性:JIS K6264に準拠し、岩本製作所(株)製のランボーン摩耗試験機を用いて、荷重40N、スリップ率30%、温度23℃の条件で摩耗減量を測定し、測定値の逆数について、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、摩耗減量が少なく耐摩耗性に優れる。
【0063】
・転がり抵抗性能:転がり抵抗測定ドラム試験機を用いて、空気圧230kPa、荷重4410N、温度23℃、80km/hの条件で各タイヤの転がり抵抗を測定し、転がり抵抗の逆数について比較例1の値を100として指数で示した。指数が大きいほど、転がり抵抗が小さく、転がり抵抗性能(即ち、低燃費性)に優れることを示す。
【0064】
・ウェットグリップ性能:試験タイヤ4本を乗用車に装着し、2~3mmの水深で水をまいた路面上を走行した。時速100kmにて摩擦係数を測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど摩擦係数が大きく、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
【0065】
【表1】
結果は表1に示す通りである。比較例1及び比較例3に対して、環状アルコキシドを配合した実施例1~6であると、水添共重合体である水添SBR1や水添SBR2をゴム成分として用いたことによる優れた耐摩耗性、転がり抵抗性能及びウェットグリップ性能を維持しながら、加工性が顕著に改善されていた。これに対し、汎用の加工助剤である脂肪酸金属塩を配合した比較例2では、比較例1に対して加工性の改善効果が不十分であった。
【0066】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。