(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】一次元及び二次元磁場を測定するための磁気センサセル及びその磁気センサセルを使用して磁場を測定する方法
(51)【国際特許分類】
H10N 50/10 20230101AFI20231003BHJP
G01R 33/09 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
H01L43/08 Z
G01R33/09
(21)【出願番号】P 2019554380
(86)(22)【出願日】2018-03-28
(86)【国際出願番号】 IB2018052111
(87)【国際公開番号】W WO2018185608
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-01-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-09
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509096201
【氏名又は名称】クロッカス・テクノロジー・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】チルドレス・ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】フォワサック・ロマン
(72)【発明者】
【氏名】マッキー・ケネス
【合議体】
【審判長】瀧内 健夫
【審判官】恩田 春香
【審判官】棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/033464(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0252591(US,A1)
【文献】特開2009-81216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10B20/00
H01L27/105
H01L29/82
H10N50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照層の面に実質的に平行に配向された参照磁化を有する参照層と、センス磁化を有するセンス層と、
前記センス層及び
前記参照層の間のトンネル障壁層とを備える磁気トンネル接合と
を備える、磁気センサセルにおいて、
前記センス層は、前記センス磁化が
前記センス層の平面に垂直な初期方向と
前記センス層の
前記平面に平行な方向との間で配向可能であるように、
前記センス層の
前記平面に実質的に垂直な固有異方性を含
み、
前記参照層は、1つ又は複数の強磁性層と、合成反強磁性体とを備え、
前記センス層は、少なくとも2層の強磁性層と、前記少なくとも2層の強磁性層の間に1層の非磁性層とを備える複数層の構成を備え、
前記固有異方性には、150Oeを超える異方性磁場があり、
前記トンネル障壁層の厚さが1nmから3nmの間であり、
前記磁気トンネル接合のトンネル磁気抵抗
比が50%よりも高
く、
前記センス層は、Co
xFe
yB
z合金を含む強磁性層を備える、磁気センサセル。
【請求項2】
前記センス層は、Co
20Fe
60B
20を含む強磁性層を備える、請求項
1に記載の磁気センサセル。
【請求項3】
前記非磁性層は、Ta、W、Mo、Nb、Zr、Ti、MgO、Hfのこれらの元素のいずれか一つ又は組み合わせを含有する、請求項1に記載の磁気センサセル。
【請求項4】
前記トンネル障壁層が含有する絶縁材料は、MgOであり、厚さ
は1nmである、請求項1に記載の磁気センサセル。
【請求項5】
第1アレイ及び第2アレイの各アレイは複数の
前記磁気トンネル接合を備え、
前記第
1アレイの磁気トンネル接合及び
前記第
2アレイの磁気トンネル接合は、互いに実質的に90°で整列された記憶磁化を有する、請求項1に記載の磁気センサセル。
【請求項6】
請求項1に記載の磁気センサセルを用いる一次元及び二次元の外部磁場を感知する方法であって、
前記センス磁化は、最初は
前記センス層の
前記平面に垂直に配向されていて、当該方法は、外部磁場内で移動しないように
前記参照磁化を固定することと、
前記磁気センサセルを
前記外部磁場に呈することと、
前記磁気センサセルの抵抗を測定することと
を備える方法。
【請求項7】
前記抵抗は、
前記センス層の
前記平面に平行に向けられた
前記センス磁化の成分に比例する、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記抵抗は、
前記参照磁化の向きに対して
前記センス層の
前記平面に平行に向けられた
前記センス磁化の成分の間の角度に比例する、請求項
6に記載の方法。
【請求項9】
第1アレイ及び第2アレイの各アレイは複数の
前記磁気トンネル接合を備え、
前記第1アレイの
前記磁気トンネル接
合と前記第2アレイの磁気トンネル接
合は、互いに実質的に90°に整列した記憶磁化を有し、
当該方法が、
前記第1
アレイ及び
前記第
2アレイのそれぞれの
前記抵抗を測定することにより、
前記外部磁場の2つの面内直交成分を測定することを備える、請求項
6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一次元及び二次元の磁場を感知可能な磁気トンネル接合を有する磁気センサセルに関する。本開示はまた、磁気センサセルを使用して一次元及び二次元の外部磁場を感知する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自己参照型磁気トンネル接合は、磁気センサ又はコンパスで磁場を感知するために使用可能である。自己参照型磁気トンネル接合は、通常、参照磁化を有する参照層、検出磁化を有する検出層、及び検出層と参照層の間のトンネル障壁層を備える。感知動作中、外部磁場は検知磁化を参照磁化に対してより平行又はより反平行に揃える。
【0003】
理想的には、センス層は、ピン留めされた参照層の方向に沿って測定されたとき、印加された場に対して線形で非ヒステリシスの振る舞いを持つ。線形センシングは通常、参照磁化に対して垂直なセンス磁化を持つことで実現される。これは、参照磁化を、センス層の異方性軸に垂直に固定することで実現可能である。センス層の異方性軸は、センス層と参照層の平面に平行である。
【0004】
外部磁場が印加されると、自己参照型の磁気トンネル接合により、参照層の磁化軸に沿った磁場の成分を測定可能となる。MLU装置で見られる2つの接合点、又は接合部の2つのアレイ、すなわち、互いに90度に配向されている参照層を持つ自己参照磁気トンネル接合の2つのアレイを利用することにより、2つの参照面の磁場の2つの成分を測定可能である。
【0005】
特許文献1は、固定強磁性層を有する第1層構造、第1スペーサ層、及び合成反強磁性(SAF)複数層構造を備える第2層構造を備える読み取りヘッドを開示する。SAF複数層構造は、第1の強磁性自由層、第2の強磁性自由層、及び2つの強磁性層間に配置された第2のスペーサ層を備える。第1強磁性自由層の第1磁化及び第2強磁性層の第2磁化は、固定強磁性層の固定磁化に垂直である。
【0006】
特許文献2は、磁化を変更可能である磁気自由層と、膜を流れる電流方向と磁化容易軸の方向が膜面に垂直な方向である、磁化が膜面に垂直な方向に固定された磁気固定層と、磁気自由層と磁気固定層の間の非磁性バリア層とを備える磁気記録要素を開示する。磁気自由層では、飽和磁化Ms(emu/cc)と異方性磁界Han(Oe)の関係は、Han>12.57Ms、Han<1.2E7MS-1+12.57Msを満す。
【0007】
特許文献3は、面内磁化参照層と界面垂直異方性を備える自由層を備えるナノスケールトンネル磁気抵抗(TMR)センサを開示する。自由層は、印加磁場の関数として抵抗を検出するための検出層を備え、センシング層の磁化の方向を面内、傾斜、又は面外に変えるために調整可能である。
【0008】
特許文献4は、参照層の面に平行に配向された参照磁化を有する参照層を備える磁気トンネル接合と、センス磁化を有するセンス層と、センス層と参照層との間のトンネルバリアセンス層とを備える磁気センサセルを使用して外部磁場を検知する方法を開示する。磁力線は、センス磁化を整列させるように適合されたセンス磁場を提供するために界磁電流を流すように構成される。検知層の磁化は、検知磁場が提供されるとき、検知層の平面に平行な方向と検知層の平面に垂直な方向との間で配向可能である。外部磁場は、センス層の平面に平行に向けられた面内成分と、センス層の平面に垂直な面外成分を備える。この方法は、面外成分の感知と、面内成分の感知とを備える。
【0009】
特許文献5は、自由層と、固定層と、自由層及び固定層の間の非磁性層とを備える磁気積層体を備える磁気バイオセンサを開示する。自由層又は固定層の少なくとも一方は、外部磁場が存在しない場合に、それぞれ自由層又は固定層の主面から外に向けられた磁気モーメントを有してもよい。磁気バイオセンサは、磁気積層体上に配置された試料容器と、磁気積層体の上のサンプル容器の底面に取り付けられた複数の捕捉抗体と、自由層又は固定層の主平面に実質的に垂直な磁場を生成するように構成された磁場発生器とを備えてもよい。
【0010】
特許文献6は、面内磁化方向が直接直交磁気結合を誘導する導電性スペーサ層を横切って直交結合された2つの強磁性層を有する磁気結合構造を開示する。この構造は、面に垂直な電流(CPP)磁気抵抗センサの積層内バイアスに適用される。構造の強磁性層の1つはバイアス強磁性層であり、他の強磁性層はセンサ自由層である。反強磁性層はバイアス層を交換結合して、そのモーメントをセンサの固定層のモーメントと平行に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2008/020817号
【文献】米国特許出願公開第2007/228501号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/137292号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/252591号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/292318号明細書
【文献】米国特許出願公開第2005/207070号明細書
【発明の概要】
【0012】
本開示は、参照層の面に実質的に平行に配向された参照磁化を有する参照層と、センス磁化を有するセンス層と、センス層及び参照層の間のトンネルバリア層とを備える磁気トンネル接合を備える磁気センサセルに関する。センス層は、センス磁化方向がセンス層の平面に垂直な初期方向とセンス層の面に平行な方向との間で配向可能であるように、センス層の平面に実質的に垂直な固有異方性を備える。異方性磁界が150Oe以上であり、トンネル障壁層の厚さが1nmから3nmの間であり、磁気トンネル接合のトンネル磁気抵抗が50%よりも高い固有異方性を有する。
【0013】
本開示はさらに、磁気センサセルを使用して一次元及び二次元の外部磁場を検知する方法に関する。この方法は、外部磁場内で移動しないように参照磁化を固定することと、磁気センサセルを外部磁場に呈することと、磁気センサセルの抵抗を測定することとを備える。
【発明の効果】
【0014】
磁気センサセルの利点の一つは、磁場がない状態において、常に、センス磁化が参照磁化に対して垂直に整列することである。
【0015】
本開示は、例として与えられ、以下の図に示される、実施形態の説明を用いてよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、一実施形態による、センス磁化を有するセンス層を伴う磁気トンネル接合を備えるセンサセルの磁気の断面図(a)及び上面図(b)を表す。
【
図3】
図3は、一実施形態による、磁気トンネル接合の拡大部分を示す。
【
図4】
図4は、一実施形態による、磁気トンネル接合の上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、一実施形態による磁気センサセル1の断面図(
図1a)及び上面図(
図1b)を表す。磁気センサセル1は、参照磁化230を有する参照層23と、センス磁化210を有するセンサ層21と、センサ層21と参照層23の間のトンネルバリア層22を備える磁気トンネル接合2とを備える。電流線3は、磁気トンネル接合2の遠端と電気的に接触している。磁気センサセル1は、センス磁場電流41又は参照磁場電流43を通過させて、それぞれセンス磁場42及び参照磁場44を生成するように適合された磁力線4をさらに備える。参照磁化230及びセンス磁化210は、参照層及びセンス層21、23の平面に実質的に平行に配向可能である。
【0018】
一実施形態では、センス層21は、面外固有異方性を備える。固有異方性は、センス層21の平面に対して実質的に垂直に配向されている。異方性場は、この異方性を克服し、センス層210の平面内でセンス磁化210を方向付けるために必要なおおよその磁場を表す。
【0019】
好ましくは、センス層21の面外固有異方性は、150Оe超の異方性磁場を有する。より一般的には、異方性磁場は、センス磁化210を回転させる(又は切り替える)ために必要な外部磁場の最小の大きさよりも大きくなければならない。したがって、異方性磁場は、適用に依存する、つまり感知される外部磁場の大きさに依存する。例えば、異方性場は160Оe超、又は180Оe超である。一実施形態では、磁場が存在しない場合、センス磁化210は、最初は実質的に面外に配向される(
図1を参照)。この構成において、センス磁化210は、外部磁場45が面内方向に印加されるとき、その初期の面外方向とセンス層21の面に実質的に平行な方向(面内)との間で配向可能である。
【0020】
線形検知は、通常、参照磁化230に垂直な検知磁化210を持つことによって達成される。これは、センス層21の異方性軸に垂直に参照磁化230を固定することにより達成可能である。センス層21の異方性軸は、センス層21及び参照層23の平面に平行である。
【0021】
一実施形態では、センス層21は、CoxFeyBz合金を含む強磁性層211を備える。
【0022】
センス層21の厚さは、正味の垂直異方性値、すなわち異方性場の大きさを変えるために変更可能である。センス層21は、0.5nmから2nmの間の厚さとしてもよい。
【0023】
好ましくは、強磁性層211はCo20Fe60B20合金を含み、その含有量はat%である。次に、約1.5nmのセンス層21の厚さは、150Oe超、又は160Oe超、又は180Oe超の異方性場をもたらす。
【0024】
図2に示される変形例では、センス層21は、少なくとも強磁性層211及び非磁性層212を備える複数層の構成を備える。非磁性層212は、これらの元素、タンタルTa、タングステンW、モリブデンMo、ニオブNb、ジルコニウムZr、チタンTi、酸化マグネシウムMgO、フッ化水素Hfのいずれか1つ又は組み合わせを含有してもよい。非磁性層212は、センス層21のCoFeB界面で垂直異方性を促進可能である。
【0025】
この構成では、非磁性層212のそれぞれは、0.1nmから0.4nmの間に含まれる厚さを有してもよい。
【0026】
参照層23は、1つ又は複数の強磁性層213を備えてもよく、各強磁性層213は、銅Co、鉄Fe、ニッケルNi、CoFeB又はそれらの合金を含む。参照層23はさらに、少なくとも2つの強磁性層213、あるいはルテニウムRu、イリジウムIr、銅Cu又はこれらの元素の組み合わせからなる反平行結合層によって分離された2つの強磁性層213を備える合成反強磁性体(SAF)を備えてもよい。例示的な実施形態では、参照層23は、以下の構造、CoFe(2.5nm/Ru(0.8nm/CoFe(1nm/CoFeB(2nm)を備える。
【0027】
トンネル障壁22は、絶縁材料を含有するか、又は絶縁材料から形成してもよい。適切な絶縁材料には、酸化アルミニウム(例えば、Al2 O3)及び酸化マグネシウム(例えば、MgO)のような酸化物が含まれる。酸化物の酸化状態を調整して、センス層21の垂直異方性場を増加させることができる。トンネル障壁層22の厚さは、約1nmから約3nmのようなナノメートルの範囲であり得る。トンネル障壁22の最適な厚さは、磁気トンネル接合部2のトンネル磁気抵抗(TMR)が50%より高い、好ましくは100%である一方で、150Oe以上、又は160Oe以上、又は180Oe以上の垂直異方性磁界の、両方を達成可能である。トンネル障壁22の最適な厚さは、複数(二重又は複数層)の酸化マグネシウムMgO(あるいは別の適切な酸化物又は絶縁材料)層を挿入することにより得られる。
【0028】
好ましい実施形態では、絶縁材料は酸化マグネシウムMgOであり、厚さは約1nmである。
【0029】
図示されない別の変形例では、別の絶縁材料層が、トンネル障壁層22と接触している側とは反対側のセンス層21の側で、センス層21と直接接触して追加される。この追加の絶縁材料層は、異方性場を増加させることを可能にし、したがって十分に高い異方性場を維持しながらより厚いセンス層21を可能にする。より厚いセンス層21は、磁気センサセル1のより堅牢な磁性層及び信号対雑音比の改善を得ることを可能にする。追加の断熱材層は好ましくは酸化マグネシウムMgO層である。
【0030】
追加の絶縁材料層を使用すると、センス層の厚さを1nmから3nm、例えば2nmにできるようになる。
【0031】
磁気センサセル1の通常の動作条件では、参照磁化230は外部磁場45の存在下で固定され、一方、センス磁化210はその磁場に整列可能である。
【0032】
そのために、磁気センサセル1は、反強磁性層24は、低温磁化しきい値TLで参照磁化230を固定し、高温しきい値THで解放するように、参照層23を交換結合する。
【0033】
反強磁性層24に適した材料には、遷移金属及びそれらの合金が含まれる。例えば、適切な反強磁性材料には、イリジウム(Ir)及びMn(例、IrMn)をベースにした合金のようなマンガン(Mn)ベースの合金と、鉄Fe及びマンガンMnをベースにした合金(例、FeMn)と、白金(Pt)及びMn(PtMnなど)をベースにした合金と、ニッケルNi及びマンガンMnをベースとする合金(例えば、NiMn)とが含まれる。場合によっては、Ir及びMnに基づく(又はFe及びMnに基づく)合金の高温しきい値THは、約120°Cから約220°C又は約150°Cから約200℃の範囲であり得る。そして、高温しきい値THは、白金Pt及びマンガンMnに基づく(又はニッケルNi及びマンガンMnに基づく)合金の高温しきい値THよりも小さい場合があり、約300°Cから約350°Cの範囲の値であることがある。反強磁性層24に適した材料は、酸化ニッケルNiOなどの酸化物層がさらに含まれる場合がある。
【0034】
好ましい実施形態では、反強磁性層24は、厚さが約10nmのイリジウムマンガンIrMn層を備える。
【0035】
一実施形態では、磁気トンネル接合2は、次の順序で、シリコンSi基板、下地層、反強磁性層24、参照層23、トンネル障壁層22、センス層21、及び少なくともキャップ層を備える。
【0036】
下地層は、タンタルTa、窒化タンタルTaN、チタンTi、窒化チタンTiN、タングステンW、銅Cu、窒化銅CuN、ルテニウムRu、クロムCr、ニッケル鉄NiFe、白金Pt、ニオブNb、モリブデンMo、イリジウムIrのうちの1つ以上を含有する複数の層を備えてもよい。可能な実施形態では、下地層は以下の構成、タンタルTa(5nm)/ルテニウムRu(2nm)を備える。
【0037】
磁気センサセル1は、参照磁化230を参照層23の面内の所定の方向に切り替えることによりプログラムしてもよい(
図1bを参照)。プログラミング動作は熱的に支援してもよく、プログラミング動作は、電流線3を介して磁気トンネル接合2に加熱電流31を流すことにより、磁気トンネル接合2を高温しきい値T
Hまで加熱する工程をさらに備える。次に、参照磁場44を印加することにより、参照磁化230が切り替えられる。参照磁化230を切り替えた後、磁気トンネル接合2は、参照磁化230を切り替えた状態にピン留めするような低温しきい値まで冷却してもよい。参照磁場44は、参照線電流43の極性によって方向が決定されるように、参照線電流43を磁力線4に流すことによって生成される。
【0038】
図3は、
図1の磁気センサセル1の磁気トンネル接合2の拡大部分を示していて、面内に配向されている外部磁場45が存在する場合の参照層23、トンネル障壁層22、及びセンス層21を示している。
図3には、x座標、y座標、z座標も示されていて、x座標、y座標は、面内、すなわち、センス層21(及び参照層23)の面内にある。
【0039】
その大きさに応じて、面内外部磁場45(又は外部磁場の面内成分)は、センス磁化210をその最初の向きから面外の、0°(面外)から90°(面内)の間の角度θで傾いた向きに偏向させる。90°より小さくゼロでない角度の場合、センス磁化210は、面内成分210′及び面外成分210″を含む。90°よりも大きい角度の場合、センス磁化210は、平面要素210″のみを含む。
【0040】
一実施形態では、磁気センサセル1による面内外部磁場45の大きさの検知は、検知磁化210が面内外部磁場45によって偏向されたときの磁気トンネル接合2の抵抗Rを測定することによって実行してもよい。
【0041】
磁気トンネル接合2の抵抗Rの測定は、電流線3を介して磁気トンネル接合2にセンス電流32を流すことにより実行してもよい。測定された抵抗Rは、参照磁化230とセンス磁化210の面内成分210′の相対的な大きさに比例する。測定された抵抗Rは、参照磁化230に対するセンス磁化210の面内成分210′のセンス層(及び参照層)の面内の向きにも比例する。
【0042】
図4aは、参照磁化230とセンス磁化210の面内成分210′が見える磁気トンネル接合2の上面図を示す。特に、
図4は、面内外部磁場45が参照磁化230の向きに対して角度βで向けられている場合を示す(
図4bを参照)。
【0043】
本開示の磁気センサセル1は、面内に方向付けられた面内外部磁場45の参照層軸に沿った、すなわち参照層23の平面に沿った成分の大きさを感知(又は測定)するために使用され得る(一次元、又は1Dの適用)。
【0044】
図5に表される実施形態では、磁気センサセル1は、2つの磁気トンネル接合2を備え、磁気トンネル接合2の一方の記憶磁化230は、他方の磁気トンネル記憶2に対して実質的に90°に整列される。
図5aは、2つの磁気トンネル接合2の上面図を示し、
図5bは、磁気トンネル接合2の1つの参照磁化230の向きに対して角度β(及び他の磁気トンネル接合2の参照磁化230の方向に対して90°-βの角度で)で向けられた面内外部磁場45を示す。参照層の軸が互いに90度を向いた2つの別々の磁気トンネル接合2を使用することにより、外部磁場45の2つの直交する面内成分を測定して、面内外部の面内方向βを感知可能である(二次元、又は2Dの適用)。
【0045】
ここで、1次元及び2次元は、それぞれデカルト座標系の1次元及び2次元に沿って配向された外部磁場45を指す。
【0046】
より一般的には、磁気センサセル1は、第1アレイ及び第2アレイを備えてもよく、各アレイは複数の磁気トンネル接合2(図示せず)を備える。第1のアレイの磁気トンネル接合2及び第2のアレイの磁気トンネル接合2は、互いから実質的に90°に整列したそれぞれの(ピン留めされた)記憶磁化230を有してもよい。
【0047】
外部磁場45の2つの直交する面内成分の検知は、第1及び第2のアレイのそれぞれの抵抗Rを測定することにより実行してもよい。
【0048】
強い垂直異方性を有するセンス磁化210センス層21の面内成分201′は、非常に小さい(ゼロに近い)保磁力と非常に小さい面内異方性を有する。面内成分201′は、面内外場45の広い範囲にわたる良好な線形性と非ヒステリシス挙動を有する。したがって、本明細書で開示される磁気センサセル1は、面内外場45を感知するため、及び1D及び2D角度の適用のために従来の磁気センサセルよりも有利である。
【符号の説明】
【0049】
1 磁気センサセル
2 磁気トンネル接合
21 センス層
210 センス磁化
201′ センス磁化の面内成分
201″ センス磁化の面外成分
211 強磁性層
212 非磁性層
22 トンネル障壁層
23 参照層
230 参照磁化
24 反強磁性層
3 電流線
31 加熱電流
32 センス電流
4 磁場線
41 センス磁場電流
42 センス磁場
43 参照場電流
44 参照磁場
45 外部磁場
R 磁気トンネル接合の抵抗
Θ 角度
β 角度