IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フタバ産業株式会社の特許一覧

特許7359707プレス成形品の製造方法、及びプレス成形品の製造装置
<>
  • 特許-プレス成形品の製造方法、及びプレス成形品の製造装置 図1
  • 特許-プレス成形品の製造方法、及びプレス成形品の製造装置 図2
  • 特許-プレス成形品の製造方法、及びプレス成形品の製造装置 図3
  • 特許-プレス成形品の製造方法、及びプレス成形品の製造装置 図4
  • 特許-プレス成形品の製造方法、及びプレス成形品の製造装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】プレス成形品の製造方法、及びプレス成形品の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/26 20060101AFI20231003BHJP
   B21D 22/22 20060101ALI20231003BHJP
   B21D 22/20 20060101ALI20231003BHJP
   B21D 24/04 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B21D22/26 D
B21D22/22
B21D22/20 E
B21D24/04 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020011520
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021115610
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮本 吉貴
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-205618(JP,A)
【文献】特開2015-027698(JP,A)
【文献】特開2019-171440(JP,A)
【文献】国際公開第2016/157976(WO,A1)
【文献】特許第7153273(JP,B2)
【文献】特許第6760551(JP,B1)
【文献】特許第6757939(JP,B2)
【文献】特開昭58-77722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/26
B21D 22/22
B21D 22/20
B21D 24/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレスによって長手方向が湾曲した凸条部を有するプレス成形品を得るためのプレス成形品の製造方法であって、
平板状のブランク材のうち前記凸条部が形成される第1領域よりも前記凸条部の湾曲の外側に位置する第2領域の拘束力が、前記ブランク材のうち前記第1領域よりも前記凸条部の湾曲の内側に位置する第3領域の拘束力よりも大きくなるように、前記ブランク材を厚み方向にプレスする工程を備え
前記凸条部は、天板と、前記天板の端縁と連続する側板と、補助凸部とを有し、
前記補助凸部は、前記側板の前記天板とは反対側の端縁に連続するように配置されると共に、前記側板よりも幅方向外側に膨出し、
前記プレスする工程では、前記第1領域のうち前記第2領域よりも前記第3領域に近い部分に前記補助凸部を形成する、プレス成形品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプレス成形品の製造方法であって、
前記ブランク材を第1ダイと第2ダイとの間に配置する工程をさらに備え、
前記プレスする工程では、前記第1ダイ及び前記第2ダイの相対移動によって前記ブランク材を厚み方向にプレスする、プレス成形品の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のプレス成形品の製造方法であって、
前記第1ダイは、
前記ブランク材の前記第1領域を前記第2ダイに押し込むことで前記凸条部を形成する第1凸条形成部と、
前記第1凸条形成部の湾曲の外側に位置し、前記ブランク材の前記第2領域が配置される第1外側チャック部と、
前記第1凸条形成部の湾曲の内側に位置し、前記ブランク材の前記第3領域が配置される第1内側チャック部と、
を有し、
前記第2ダイは、
前記ブランク材の前記第1領域が前記第1凸条形成部によって押し込まれる第2凸条形成部と、
前記第1外側チャック部と共に前記ブランク材の前記第2領域を厚み方向に挟む第2外側チャック部と、
前記第1内側チャック部と共に前記ブランク材の前記第3領域を厚み方向に挟む第2内側チャック部と、
を有し、
前記プレスする工程において、前記第1外側チャック部と前記第2外側チャック部とによる前記第2領域の拘束力は、前記第1内側チャック部と前記第2内側チャック部とによる前記第3領域の拘束力よりも大きい、プレス成形品の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のプレス成形品の製造方法であって、
前記第1外側チャック部は、前記ブランク材のプレス方向に高さが変化する少なくとも1つの第1段差を有し、
前記第2外側チャック部は、前記少なくとも1つの第1段差と共に前記ブランク材の前記第2領域を厚み方向に挟む少なくとも1つの第2段差を有する、プレス成形品の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のプレス成形品の製造方法であって、
前記第1外側チャック部は、前記少なくとも1つの第1段差として1つの第1段差を有し、
前記第2外側チャック部は、前記少なくとも1つの第2段差として1つの第2段差を有する、プレス成形品の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプレス成形品の製造方法であって、
前記ブランク材の引張強度は、980MPa以上である、プレス成形品の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプレス成形品の製造方法であって、
前記プレス成形品は、自動車の骨格を構成する部材である、プレス成形品の製造方法。
【請求項8】
プレスによって長手方向が湾曲した凸条部を有するプレス成形品を得るためのプレス成形品の製造装置であって、
第1ダイと、
前記第1ダイに対し相対移動することで平板状のブランク材を厚み方向にプレスするように構成された第2ダイと、
を備え、
前記第1ダイは、
前記ブランク材の第1領域を前記第2ダイに押し込むことで前記凸条部を形成するように構成された第1凸条形成部と、
前記第1凸条形成部の湾曲の外側に位置し、前記ブランク材の第2領域が配置されるように構成された第1外側チャック部と、
前記第1凸条形成部の湾曲の内側に位置し、前記ブランク材の第3領域が配置されるように構成された第1内側チャック部と、
を有し、
前記第2ダイは、
前記ブランク材の前記第1領域が前記第1凸条形成部によって押し込まれるように構成された第2凸条形成部と、
前記第1外側チャック部と共に前記ブランク材の前記第2領域を厚み方向に挟むように構成された第2外側チャック部と、
前記第1内側チャック部と共に前記ブランク材の前記第3領域を厚み方向に挟むように構成された第2内側チャック部と、
を有し、
前記第1外側チャック部と前記第2外側チャック部とによる前記第2領域の拘束力は、前記第1内側チャック部と前記第2内側チャック部とによる前記第3領域の拘束力よりも大きく、
前記凸条部は、天板と、前記天板の端縁と連続する側板と、補助凸部とを有し、
前記補助凸部は、前記側板の前記天板とは反対側の端縁に連続するように配置されると共に、前記側板よりも幅方向外側に膨出し、
前記第1凸条形成部及び前記第2凸条形成部は、前記第1領域のうち前記第2領域よりも前記第3領域に近い部分に前記補助凸部を形成する、プレス成形品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プレス成形品の製造方法、及びプレス成形品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属板のプレス加工(つまり絞り加工)によって長手方向に湾曲した凸条部を有するプレス成形品を製造する方法が公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-30886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のプレス成形品では、凸条部における湾曲の内側領域の長手方向における長さが、湾曲の外側領域の長手方向における長さよりも小さいため、プレス加工時に湾曲の内側に引張応力が発生する。したがって、プレス成形品をダイから取り出すと、湾曲の内側が縮むスプリングバックが発生する。その結果、製品の寸法精度が低下する。
【0005】
本開示の一局面は、湾曲した凸条部を形成する際のスプリングバックを抑制できるプレス成形品の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、プレスによって長手方向が湾曲した凸条部を有するプレス成形品を得るためのプレス成形品の製造方法である。プレス成形品の製造方法は、平板状のブランク材のうち凸条部が形成される第1領域よりも凸条部の湾曲の外側に位置する第2領域の拘束力が、ブランク材のうち第1領域よりも凸条部の湾曲の内側に位置する第3領域の拘束力よりも大きくなるように、ブランク材を厚み方向にプレスする工程を備える。
【0007】
このような構成によれば、ブランク材のプレス時に、第2領域の拘束力が第3領域よりも大きくされることで、第2領域における材料流入量が、第3領域における材料流入量よりも低減する。つまり、プレス成形品において引張応力が発生しやすい凸条部の湾曲内側部分に材料が多く供給される。その結果、凸条部の湾曲内側部分における引張応力が低減されるため、プレス成形品のスプリングバックが抑制される。
【0008】
本開示の一態様は、ブランク材を第1ダイと第2ダイとの間に配置する工程をさらに備えてもよい。プレスする工程では、第1ダイ及び第2ダイの相対移動によってブランク材を厚み方向にプレスしてもよい。
【0009】
本開示の一態様では、第1ダイは、ブランク材の第1領域を第2ダイに押し込むことで凸条部を形成する第1凸条形成部と、第1凸条形成部の湾曲の外側に位置し、ブランク材の第2領域が配置される第1外側チャック部と、第1凸条形成部の湾曲の内側に位置し、ブランク材の第3領域が配置される第1内側チャック部と、を有してもよい。第2ダイは、ブランク材の第1領域が第1凸条形成部によって押し込まれる第2凸条形成部と、第1外側チャック部と共にブランク材の第2領域を厚み方向に挟む第2外側チャック部と、第1内側チャック部と共にブランク材の第3領域を厚み方向に挟む第2内側チャック部と、を有してもよい。プレスする工程において、第1外側チャック部と第2外側チャック部とによる第2領域の拘束力は、第1内側チャック部と第2内側チャック部とによる第3領域の拘束力よりも大きくてもよい。
【0010】
本開示の一態様では、第1外側チャック部は、ブランク材のプレス方向に高さが変化する少なくとも1つの第1段差を有してもよい。第2外側チャック部は、少なくとも1つの第1段差と共にブランク材の第2領域を厚み方向に挟む少なくとも1つの第2段差を有してもよい。このような構成によれば、第1段差及び第2段差によって、比較的容易に、第2領域の拘束力を第3領域の拘束力よりも大きくすることができる。
【0011】
本開示の一態様では、第1外側チャック部は、少なくとも1つの第1段差として1つの第1段差を有してもよい。第2外側チャック部は、少なくとも1つの第2段差として1つの第2段差を有してもよい。このような構成によれば、第1ダイ及び第2ダイとブランク材との間の抵抗が過大となることが抑制される。その結果、ヒケ等の成形不良の発生が抑制できる。
【0012】
本開示の一態様では、ブランク材の引張強度は、980MPa以上であってもよい。このような構成によれば、材料の流入量を調整しにくい、いわゆる超ハイテン材を用いて、割れ等の不具合を避けつつ寸法精度の高い成形品を成形することができる。
【0013】
本開示の一態様では、プレス成形品は、自動車の骨格を構成する部材であってもよい。このような構成によれば、高い強度と寸法精度とが求められる自動車の骨格において、材料を制限せずにスプリングバックを抑制できる。
【0014】
本開示の別の態様は、プレスによって長手方向が湾曲した凸条部を有するプレス成形品を得るためのプレス成形品の製造装置である。プレス成形品の製造装置は、第1ダイと、第1ダイに対し相対移動することで平板状のブランク材を厚み方向にプレスするように構成された第2ダイと、を備える。
【0015】
第1ダイは、ブランク材の第1領域を第2ダイに押し込むことで凸条部を形成するように構成された第1凸条形成部と、第1凸条形成部の湾曲の外側に位置し、ブランク材の第2領域が配置されるように構成された第1外側チャック部と、第1凸条形成部の湾曲の内側に位置し、ブランク材の第3領域が配置されるように構成された第1内側チャック部と、を有する。
【0016】
第2ダイは、ブランク材の第1領域が第1凸条形成部によって押し込まれるように構成された第2凸条形成部と、第1外側チャック部と共にブランク材の第2領域を厚み方向に挟むように構成された第2外側チャック部と、第1内側チャック部と共にブランク材の第3領域を厚み方向に挟むように構成された第2内側チャック部と、を有する。第1外側チャック部と第2外側チャック部とによる第2領域の拘束力は、第1内側チャック部と第2内側チャック部とによる第3領域の拘束力よりも大きい。
【0017】
このような構成によれば、凸条部の湾曲内側部分における引張応力が低減されることで、プレス成形品のスプリングバックが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態におけるプレス成形品の製造方法のフロー図である。
図2図2は、図1のプレス成形品の製造方法で得られるプレス成形品の模式的な斜視図である。
図3図3は、図2のIII-III線での模式的な断面図である。
図4図4Aは、実施形態におけるプレス成形品の製造装置を示す模式図であり、図4Bは、図4Aのプレス成形品の製造装置によるブランク材のプレスが完了した状態を示す模式図である。
図5図5Aは、プレス工程後のブランク材の模式的な断面図であり、図5Bは、切断工程後のブランク材の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示すプレス成形品の製造方法は、ブランク材のプレスによって図2のプレス成形品100を得るための方法である。
【0020】
<プレス成形品>
プレス成形品100は、図3に示すように、凸条部110と、スカート部120と、フランジ部130とを有する。
【0021】
凸条部110は、プレス成形品100の長手方向に沿って形成されている。また、凸条部110は、長手方向が湾曲している。凸条部110の長手方向と垂直な断面はU字状である。
【0022】
凸条部110は、天板111と、第1側板112と、第2側板113と、補助凸部114とを有する。
【0023】
天板111は、プレス成形品100の長手方向に沿って延びる帯状の部位である。天板111は、厚み方向から視て、長手方向(つまり中心軸)と、幅方向(つまり長手方向と直交する方向)における2つの端縁とが湾曲している。
【0024】
第1側板112は、天板111の幅方向における2つの端縁のうち、凸条部110の湾曲の外側(つまり凸側)の端縁と連続するように配置されている。第1側板112の板面は、天板111の板面と交差している。
【0025】
第2側板113は、天板111の幅方向の端縁のうち、凸条部110の湾曲の内側(つまり凹側)の端縁と連続するように配置されている。第2側板113の板面は、天板111の板面と交差している。
【0026】
補助凸部114は、第2側板113の天板111とは反対側の端縁に連続するように配置されている。補助凸部114は、第2側板113よりも幅方向外側に膨出するように湾曲している。
【0027】
スカート部120は、凸条部110の湾曲外側に凸条部110と連続して配置されると共に、プレス成形品100の幅方向の第1端部を構成している。具体的には、スカート部120は、凸条部110の第1側板112と連続している。
【0028】
スカート部120の板面は、第1側板112の板面に対して傾斜している。また、スカート部120の凸条部110と連続する端縁は、スカート部120の厚み方向から視て、凸条部110の長手方向に沿って湾曲している。
【0029】
フランジ部130は、凸条部110の湾曲内側に凸条部110と連続して配置されると共に、プレス成形品100の幅方向の第2端部を構成している。具体的には、フランジ部130は、凸条部110の補助凸部114と連続している。
【0030】
フランジ部130の板面は、天板111の板面と略平行である。また、フランジ部130の凸条部110と連続する端縁は、フランジ部130の厚み方向から視て、凸条部110の長手方向に沿って湾曲している。
【0031】
プレス成形品100の材料となるブランク材は、金属製の平板である。ブランク材の材質は特に限定されないが、ブランク材の引張強度としては、980MPa以上が好ましい。ブランク材の引張強度を980MPa以上とすることで、材料の流入量を調整しにくい、いわゆる超ハイテン材を用いて、割れ等の不具合を避けつつ寸法精度の高い成形品を成形することができる。
【0032】
プレス成形品100の用途は限定されないが、プレス成形品100は、自動車の骨格を構成する部材として好適である。プレス成形品100を用いることで、高い強度と寸法精度とが求められる自動車の骨格において、材料を制限せずにスプリングバックを抑制できる。
【0033】
<プレス成形品の製造装置>
本実施形態のプレス成形品の製造方法は、図4Aに示すプレス成形品の製造装置1を用いて実施することができる。プレス成形品の製造装置1は、第1ダイ2と、第2ダイ3とを備える。
【0034】
(第1ダイ)
第1ダイ2は、第1凸条形成部2Aと、第1外側チャック部2Bと、第1内側チャック部2Cとを有する。また、第1ダイ2は、第1部21と、第2部22と、第3部23とに分割されている。第2部22は、第1部21及び第3部23とは分離してプレス方向に移動可能である。なお、第1ダイ2は、複数のパーツに分割されていなくてもよい。
【0035】
第1凸条形成部2Aは、ブランク材200の第1領域210を第2ダイ3に押し込むことでプレス成形品100の凸条部110を形成するように構成されている。具体的には、第1凸条形成部2Aは、後述する第2ダイ3の第2凸条形成部3Aと対向する位置に配置された凸条の部材である。
【0036】
第1凸条形成部2Aは、凸条部110に対応して長手方向が湾曲している。また、第1凸条形成部2Aは、第2部22に配置されている。第1凸条形成部2Aは、図4Bに示すように、プレス時に第2凸条形成部3A内に進入する。
【0037】
第1外側チャック部2Bは、第1凸条形成部2Aの湾曲の外側に位置している。第1外側チャック部2Bは、ブランク材200の第2領域220が配置されるように構成されている。
【0038】
第1外側チャック部2Bは、第1部21において後述する第2ダイ3の第2外側チャック部3Bと対向する部位に設けられている。なお、第2領域220は、プレス成形品100のスカート部120を形成する領域であり、第1領域210よりもブランク材200の幅方向外側に位置する。
【0039】
第1外側チャック部2Bは、ブランク材200のプレス方向に高さが変化する1つの第1段差2Dを有する。具体的には、第1外側チャック部2Bは、ブランク材200の第1領域210から離れる方向(つまり、第1凸条形成部2Aから離れる方向)に沿って、プレス方向の高さ(つまり第2ダイ3への突出量)が第1段差2Dにおいて他の領域よりも急激に大きくなっている。
【0040】
換言すれば、第1段差2Dは、第1領域210から離れる方向に沿って第2外側チャック部3Bに向かって立ち上がる形状を有する。また、第1外側チャック部2Bは、第1段差2D以外の領域において、プレス方向の高さがブランク材200の第1領域210から離れる方向に沿って徐々に小さくなっている。
【0041】
第1内側チャック部2Cは、第1凸条形成部2Aの湾曲の内側に位置している。第1内側チャック部2Cは、ブランク材200の第3領域230が配置されるように構成されている。
【0042】
第1内側チャック部2Cは、第3部23において後述する第2ダイ3の第2内側チャック部3Cと対向する部位に設けられている。なお、第3領域230は、プレス成形品100のフランジ部130を形成する領域であり、ブランク材200の幅方向において第1領域210を挟んで第2領域220とは反対側に位置する。
【0043】
第1内側チャック部2Cは、プレス方向の高さがブランク材200の第1領域210から離れる方向に沿って徐々に大きくなっている。第1凸条形成部2Aは、ブランク材200の幅方向において、第1外側チャック部2Bと第1内側チャック部2Cとの間に配置されている。
【0044】
(第2ダイ)
第2ダイ3は、第1ダイ2に対し相対移動することでブランク材200を厚み方向にプレスするように構成されている。第2ダイ3は、第2凸条形成部3Aと、第2外側チャック部3Bと、第2内側チャック部3Cとを有する。第2ダイ3は、一体の部品であるが、複数のパーツに分割されていてもよい。
【0045】
第2凸条形成部3Aは、ブランク材200の第1領域210が第1凸条形成部2Aによって押し込まれるように構成された凹条の部材である。第2凸条形成部3Aは、凸条部110に対応して長手方向が湾曲している。
【0046】
なお、第2凸条形成部3Aは、第1凸条形成部2Aが隙間なく嵌まる形状である必要はない。本実施形態では、図4Bに示すように、プレス時に、ブランク材200と第2凸条形成部3Aとの間、及びブランク材200と第1凸条形成部2Aとの間には空隙が形成される。
【0047】
第2外側チャック部3Bは、第1外側チャック部2Bと共にブランク材200の第2領域220を厚み方向に挟むように構成されている。第2外側チャック部3Bは、第1段差2Dと共にブランク材200の第2領域220を厚み方向に挟むように構成された1つの第2段差3Dを有する。
【0048】
具体的には、第2外側チャック部3Bは、ブランク材200の第1領域210から離れる方向(つまり、第2凸条形成部3Aから離れる方向)に沿って、プレス方向の高さ(つまり第1ダイ2への突出量)が第2段差3Dにおいて他の領域よりも急激に小さくなっている。
【0049】
換言すれば、第2段差3Dは、第1領域210から離れる方向に沿って第1外側チャック部2Bから離れる方向に落ち込む形状を有する。また、第2外側チャック部3Bは、第2段差3D以外の領域において、プレス方向の高さがブランク材200の第1領域210から離れる方向に沿って徐々に大きくなっている。
【0050】
ブランク材200の第2領域220のうち、第1外側チャック部2Bの第1段差2Dと第2外側チャック部3Bの第2段差3Dとに挟まれた部位は、ブランク材200の幅方向及び厚み方向の変形量が大きくなる。そのため、ブランク材200の幅方向への移動に対する規制力(つまり材料の拘束力)が大きくなる。
【0051】
第2内側チャック部3Cは、第1内側チャック部2Cと共にブランク材200の第3領域230を厚み方向に挟むように構成されている。第2内側チャック部3Cは、プレス方向の高さがブランク材200の第1領域210から離れる方向に沿って、徐々に小さくなっている。
【0052】
<プレス成形品の製造方法>
図1に示すように、本実施形態のプレス成形品の製造方法は、配置工程S10と、プレス工程S20と、切断工程S30と、曲げ工程S40とを備える。
【0053】
<配置工程>
本工程では、平板状のブランク材200を上下方向に離間した第1ダイ2と第2ダイ3との間に配置する。
【0054】
具体的には、第1ダイ2の第1部21及び第3部23の上に、ブランク材200の厚み方向がプレス方向と一致するように配置する。ブランク材200は、第1部21と第3部23とに掛け渡される。このとき、第2部22は、第1凸条形成部2Aがブランク材200に当接しない位置に退避している。
【0055】
<プレス工程>
本工程では、第1ダイ2及び第2ダイ3の相対移動によってブランク材200を厚み方向にプレスする。
【0056】
具体的には、まず、図4Aに示すように、第1ダイ2の第1部21及び第3部23を第2ダイ3に向けて上方に動かす、又は第2ダイ3を第1部21及び第3部23に向けて下方に動かすことによって、ブランク材200の第2領域220と第3領域230とを第1ダイ2と第2ダイ3とでチャックする。
【0057】
これにより、ブランク材200は、第2領域220の第1段差2Dと第2段差3Dとの間の部位において変形する。また、ブランク材200は、第1領域210と第2領域220との連続部分、及び第1領域210と第3領域230との連続部分において湾曲する。
【0058】
また、上述した第1段差2D及び第2段差3Dによって、第1外側チャック部2Bと第2外側チャック部3Bとによる第2領域220の拘束力は、第1内側チャック部2Cと第2内側チャック部3Cとによる第3領域230の拘束力よりも大きくなる。
【0059】
次に、図4Bに示すように、第1凸条形成部2Aを第2凸条形成部3A内に移動させる。このとき、第2部22を上昇させてもよいし、第1部21及び第3部23並びに第2ダイ3を第2部22に対し下降させてもよい。
【0060】
これにより、第1凸条形成部2Aによってブランク材200の第1領域210が第2凸条形成部3Aの内面に押し付けられることで、凸条部110が形成される。凸条部110が形成されるとき、第1内側チャック部2Cと第2内側チャック部3Cとに挟まれた第3領域230からブランク材200が供給される。
【0061】
これは、第1段差2Dと第2段差3Dとによって、第1外側チャック部2Bと第2外側チャック部3Bとに挟まれた第2領域220の移動が規制されるためである。これにより、ブランク材200のうちプレス成形品100のフランジ部130を構成する部位に多くの材料が供給される。
【0062】
プレス後、第1ダイ2及び第2ダイ3を離間させることで、図5Aに示す第1中間成形品300が得られる。第1中間成形品300は、凸条部110と、第1中間フランジ部320と、第2中間フランジ部330とを有する。
【0063】
<切断工程>
本工程では、プレス工程S20で得られた第1中間成形品300の一部を切断し、図5Bに示す第2中間成形品400を得る。
【0064】
具体的には、第1中間成形品300の第2中間フランジ部330の幅方向の一部を切断し、フランジ部130を形成する。また、第1中間フランジ部320の幅方向の一部を切断し、第3中間フランジ部420を形成する。
【0065】
<曲げ工程>
本工程では、切断工程S30で得られた第2中間成形品400の曲げ加工によって、図3のプレス成形品100を得る。
【0066】
具体的には、第2中間成形品400の第3中間フランジ部420をフランジ部130に近づく向きに曲げることで、スカート部120を成形する。
【0067】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)ブランク材のプレス時に、第1段差2D及び第2段差3Dの存在によって、第1外側チャック部2Bと第2外側チャック部3Bとの間への材料流入量(つまり、第2領域220における材料流入量)が、第1内側チャック部2Cと第2内側チャック部3Cとの間への材料流入量(つまり、第3領域230における材料流入量)よりも低減する。つまり、プレス成形品100において引張応力が発生しやすい凸条部110の湾曲内側部分であるフランジ部130に材料が多く供給される。その結果、凸条部110の湾曲内側部分における引張応力が低減されるため、プレス成形品100のスプリングバックが抑制される。
【0068】
(1b)プレス時に第1内側チャック部2Cと第2内側チャック部3Cとの間への材料流入量が増加するため、凸条部110の補助凸部114及びフランジ部130の厚みの低減が抑制される。
【0069】
(1c)第1ダイ2が1つの第1段差2Dを有し、かつ、第2ダイ3が1つの第2段差3Dを有することで、第1ダイ2及び第2ダイ3とブランク材との間の抵抗が過大となることが抑制される。その結果、ヒケ等の成形不良の発生が抑制できる。
【0070】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0071】
(2a)上記実施形態のプレス成形品の製造装置において、第1外側チャック部2Bは、複数の第1段差2Dを有してもよい。第2外側チャック部3Bは、複数の第2段差3Dを有してもよい。
【0072】
(2b)上記実施形態のプレス成形品の製造装置において、第1段差2Dは、第1領域210から離れる方向に沿って第2外側チャック部3Bから離れる方向に落ち込んだ形状であってもよい。
【0073】
(2c)上記実施形態のプレス成形品の製造装置において、プレス方向は鉛直方向に限定されない。つまり、プレス方向は、水平方向であってもよいし、鉛直方向及び水平方向に対し傾斜した方向であってもよい。
【0074】
(2d)上記実施形態のプレス成形品の製造装置において、第1段差2D及び第2段差3D以外の手段によって、第2領域220の拘束力を第3領域230の拘束力よりも大きくしてもよい。
【0075】
例えば、第1外側チャック部2B及び/又は第2外側チャック部3Bのブランク材200に対する摩擦力を第1内側チャック部2C及び/又は第2内側チャック部3Cのブランク材200に対する摩擦力よりも大きくしてもよい。また、第1外側チャック部2B及び/又は第2外側チャック部3Bにブランク材200の移動を規制するようにブランク材200を把持又は固定する部位を設けてもよい。
【0076】
(2e)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0077】
1…プレス成形品の製造装置、2…第1ダイ、2A…第1凸条形成部、
2B…第1外側チャック部、2C…第1内側チャック部、2D…第1段差、
3…第2ダイ、3A…第2凸条形成部、3B…第2外側チャック部、
3C…第2内側チャック部、3D…第2段差、21…第1部、22…第2部、
23…第3部、100…プレス成形品、110…凸条部、111…天板、
112…第1側板、113…第2側板、114…補助凸部、120…スカート部、
130…フランジ部、200…ブランク材、210…第1領域、220…第2領域、
230…第3領域、300…第1中間成形品、320…第1中間フランジ部、
330…第2中間フランジ部、400…第2中間成形品、
420…第3中間フランジ部。
図1
図2
図3
図4
図5