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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】硫化検出センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/04 20060101AFI20231003BHJP
   H01C 7/00 20060101ALI20231003BHJP
   H01C 1/034 20060101ALI20231003BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
G01N27/04 L
H01C7/00 110
H01C1/034
G01N27/00 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020021795
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2021128028
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 太郎
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-250611(JP,A)
【文献】特開2019-196957(JP,A)
【文献】特開2015-230313(JP,A)
【文献】米国特許第9291543(US,B1)
【文献】特開2014-153089(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0287551(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/24
G01N 17/00-19/10
H01C 1/00-1/16
H01C 7/00-7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の主面における両端部に形成された一対の表電極と、前記一対の表電極間に並列に配置された第1の硫化検出導体および第2の硫化検出導体と、を備え、
前記第1の硫化検出導体は、前記一対の表電極間に矩形状に形成されて、累積的な硫化量によって断線するように構成され、
前記第2の硫化検出導体は、前記一対の表電極間に所定のギャップを存して配置されて、累積的な硫化量によって導通するように構成されている、
ことを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の硫化検出センサにおいて、
前記第1の硫化検出導体と前記表電極との間に抵抗体が接続されていることを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項3】
請求項2に記載の硫化検出センサにおいて、
前記第1の硫化検出導体および前記第2の硫化検出導体の一部と前記抵抗体の全体とが硫化ガス非透過性の保護膜によって覆われており、前記第1の硫化検出導体と前記第2の硫化検出導体は前記保護膜から露出する硫化検出部を有していることを特徴とする硫化検出センサ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の硫化検出センサにおいて、
前記第2の硫化検出導体が累積的な硫化量によって導通状態になる前に、前記第1の硫化検出導体が累積的な硫化量によって断線するように、前記第1の硫化検出導体の膜厚と前記ギャップの間隔が設定されていることを特徴とする硫化検出センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食環境の累積的な硫化を検出するための硫化検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にチップ抵抗器等の電子部品の内部電極としては、比抵抗の低いAg(銀)系の電極材料が使用されているが、銀は硫化ガスに晒されると硫化銀となり、硫化銀は絶縁物であることから、電子部品が断線してしまうという不具合が発生してしまう。そこで近年では、AgにPd(パラジウム)やAu(金)を添加して硫化しにくい電極を形成したり、電極を硫化ガスが到達しにくい構造にする等の硫化対策が講じられている。
【0003】
しかし、このような硫化対策を電子部品に講じたとしても、当該電子部品が硫化ガス中に長期間晒された場合や高濃度の硫化ガスに晒された場合は、断線を完全に防ぐことが難しくなるため、未然に断線を検知して予期せぬタイミングでの故障発生を防止することが必要となる。
【0004】
そこで従来より、特許文献1に記載されているように、電子部品の累積的な硫化の度合いを検出して、電子部品が硫化断線する等して故障する前に危険性を検出可能とした硫化検出センサが提案されている。
【0005】
特許文献1に記載された硫化検出センサは、絶縁基板上にAgを主体とした硫化検出体を形成し、この硫化検出体を覆うように透明で硫化ガス透過性のある保護膜を形成すると共に、絶縁基板の両側端部に硫化検出体に接続する端面電極を形成した構成となっている。このように構成された硫化検出センサを他の電子部品と共にプリント基板上に実装した後、該プリント基板を硫化ガスを含む雰囲気で使用すると、硫化ガスが硫化検出センサの保護膜を透過して硫化検出体に接するため、硫化ガスの濃度と経過時間に応じて硫化検出体を構成する銀が硫化銀に変化し、それに伴って硫化検出体の抵抗値が上昇していき、最終的に硫化検出体の断線に至る。したがって、硫化検出体の抵抗値の変化や断線を検出することにより、硫化の度合いを検出することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-250611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、硫化検出体に銀が使用されていると、硫化検出センサが水分(湿度)の多い環境条件下で使用された場合に、銀がイオン化して絶縁体の表面または内部を移動するイオンマイグレーションと呼ばれる現象が発生しやすくなるため、硫化による抵抗値変化や断線のタイミングに誤差を生じてしまう虞がある。また、銀は硫化速度の速い材料であるため、硫化検出体に銀を使用して長期間の硫化検出を行うには、硫化検出体の検出部の膜厚を厚くする必要があり、それに伴って材料コストや製造コストが上昇してしまうという問題もあった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、硫化の度合いを正確に検出することができる硫化検出センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の硫化検出センサは、直方体形状の絶縁基板と、前記絶縁基板の主面における両端部に形成された一対の表電極と、前記一対の表電極間に並列に配置された第1の硫化検出導体および第2の硫化検出導体と、を備え、前記第1の硫化検出導体は、前記一対の表電極間に矩形状に形成されて、累積的な硫化量によって断線するように構成され、前記第2の硫化検出導体は、前記一対の表電極間に所定のギャップを存して配置されて、累積的な硫化量によって導通するように構成されている、ことを特徴としている。
【0010】
このように構成された硫化検出センサは、第1の硫化検出導体が累積的な硫化量によって断線すると、導通状態(第1の硫化検出導体の抵抗値)からオープン状態へと変化する。また、第2の硫化検出導体のギャップが累積的な硫化量によって短絡すると、オープン状態から導通状態(第2の硫化検出導体の抵抗値)へと変化する。したがって、これら2つの変化によって硫化検出が可能となるため、それぞれ形態を異にする第1の硫化検出導体や第2の硫化検出導体の周囲環境による誤差が発生したとしても、高精度な硫化検出を行うことができる。
【0011】
上記構成の硫化検出センサにおいて、第1の硫化検出導体と表電極との間に抵抗体が接続されていると、第1の硫化検出導体に接続された抵抗体の抵抗値が硫化検出センサの初期抵抗値となるため、もしも第1の硫化検出導体が断線に至る前に第2の硫化検出導体のギャップが短絡したとしても、その場合でも初期抵抗値から0オームとなる抵抗値変化によって硫化を検出することができる。
【0012】
また、上記構成の硫化検出センサにおいて、第1の硫化検出導体および第2の硫化検出導体の一部と抵抗体の全体とが硫化ガス非透過性の保護膜によって覆われており、第1の硫化検出導体と第2の硫化検出導体は保護膜から露出する硫化検出部を有していることが好ましい。
【0013】
また、上記構成の硫化検出センサにおいて、第2の硫化検出導体が累積的な硫化量によって導通状態になる前に、第1の硫化検出導体が累積的な硫化量によって断線するように、第1の硫化検出導体の膜厚とギャップの間隔が設定されていると、第1の硫化検出導体の断線に基づく短時間の硫化検出と第2の硫化検出導体の導通に基づく長時間の硫化検出を実現できて好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、硫化の度合いを正確に検出することが可能な硫化検出センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態例に係る硫化検出センサの平面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3図1のIII-III線に沿う断面図である。
図4】該硫化検出センサの製造工程を示す平面図である。
図5】該硫化検出センサの製造工程を示す断面図である。
図6】該硫化検出センサの製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態について図面を参照しながら説明すると、図1は本発明の実施形態例に係る硫化検出センサの平面図、図2図1のII-II線に沿う断面図、図3図1のIII-III線に沿う断面図である。
【0017】
図1図3に示すように、本実施形態例に係る硫化検出センサ10は、直方体形状の絶縁基板1と、絶縁基板1の表面(主面)における図示左右方向の両端部に対向して設けられた一対の表電極2と、一対の表電極2間に並列に配置された第1の硫化検出導体3および第2の硫化検出導体4と、第1の硫化検出導体3と一方の表電極2間に接続された抵抗体5と、第1の硫化検出導体3および第2の硫化検出導体4の一部と抵抗体5の全体を覆う硫化ガス非透過性の保護膜6と、絶縁基板1の裏面における図示左右方向の両端部に対向して設けられた一対の裏電極7と、絶縁基板1の図示左右方向の両端面に設けられた一対の端面電極8と、表電極2と裏電極および端面電極8の表面を覆う外部電極9と、によって主として構成されている。
【0018】
絶縁基板1は、後述する大判基板を縦横の分割溝に沿って分割して多数個取りされたものであり、大判基板の主成分はアルミナを主成分とするセラミックス基板である。
【0019】
一対の表電極2は銀を主成分とするAg系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、これら表電極2は所定間隔を存して対向するように絶縁基板1の図示左右方向の両端部に形成されている。一対の裏電極7も銀を主成分とするAg系ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、これら裏電極7は絶縁基板1の表面側の表電極2と対応する位置に形成されている。
【0020】
第1の硫化検出導体3は、硫化ガスに晒されると絶縁体となる銀を主成分とするAgペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、平面視で矩形状(長方形状)に形成されている。第1の硫化検出導体3の一端部は図示左側の表電極2に接続しているが、第1の硫化検出導体3の他端部は図示右側の表電極2と所定間隔を存して対向している。
【0021】
第2の硫化検出導体4は、硫化ガスに晒されても絶縁体とならない銅を主成分とするCuペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものである。第2の硫化検出導体4は中央部で一定幅のギャップGを介して2分されており、一方の第2の硫化検出導体4は図示左側の表電極2に接続しており、他方の第2の硫化検出導体4は図示右側の表電極2に接続している。
【0022】
抵抗体5は、酸化ルテニウム等の抵抗体ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成したものであり、第1の硫化検出導体3の他端部と図示右側の表電極2との間に形成されている。なお、抵抗体5に図示せぬトリミング溝を形成して抵抗値を調整するようにしても良い。
【0023】
保護膜6は、硫化ガス非透過性の樹脂材料であるエポキシ系樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化したものであり、この保護膜6によって第1の硫化検出導体3および第2の硫化検出導体4の一部と抵抗体5の全体が覆われている。第1の硫化検出導体3における保護膜6で覆われずに外部に露出する領域は硫化検出部3aとなっている。また、第2の硫化検出導体4における保護膜6で覆われずに外部に露出する領域は硫化検出部4aとなっており、前述したギャップGは保護膜6から露出する一対の硫化検出部4aの中央部に形成されている。
【0024】
一対の端面電極8は、絶縁基板1の端面にNi/Crをスパッタリングしたり、導電性フィラーを含有する導電樹脂ペーストを塗布して加熱硬化させたものであり、これら端面電極8は絶縁基板1の両面に形成された対応する表電極2と裏電極7間を導通するように形成されている。
【0025】
一対の外部電極9はバリヤー層と外部接続層の2層構造からなり、そのうちバリヤー層は電解メッキによって形成されたNiメッキ層であり、外部接続層は電解メッキによって形成されたSnメッキ層である。これら外部電極9により、保護膜6から露出する表電極2の表面と、裏電極7および端面電極8の表面全体がそれぞれ被覆されている。
【0026】
次に、上記のごとく構成された硫化検出センサ10の製造工程について、図4図6を用いて説明する。なお、図4(a)~(f)はこの製造工程で用いられる大判基板を表面的に見た平面図、図5(a)~(f)は図4(a)~(f)のX1-X1線に沿う1チップ相当分の断面図、図6(a)~(f)は図4(a)~(f)のX2-X2線に沿う1チップ相当分の断面図をそれぞれ示している。
【0027】
まず、絶縁基板1が多数個取りされる大判基板を準備する。この大判基板には予め1次分割溝と2次分割溝が格子状に設けられており、両分割溝によって区切られたマス目の1つ1つが1個分のチップ領域となる。図4には1個分のチップ領域に相当する大判基板1Aが代表して示されているが、実際は多数個分のチップ領域に相当する大判基板に対して以下に説明する各工程が一括して行われる。
【0028】
すなわち、図4(a)と図5(a)および図6(a)に示すように、この大判基板1Aの表面にAg系ペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、チップ領域の図示左右方向の両端部に一対の表電極2を形成する。なお、これと同時あるいは前後して、大判基板1Aの裏面にAg系ペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、各表電極2に対応する一対の裏電極7を形成する。
【0029】
次に、大判基板1Aの表面にAgペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、図4(b)と図5(b)に示すように、一方の表電極2に接続する第1の硫化検出導体3を形成する。また、これに前後して大判基板1Aの表面にCuペーストをスクリーン印刷した後、これを乾燥・焼成することにより、図4(b)と図6(b)に示すように、一対の表電極2に接続すると共にギャップGを介して対向する第2の硫化検出導体4を形成する。
【0030】
次に、酸化ルテニウム等の抵抗体ペーストをスクリーン印刷して乾燥・焼成することにより、図4(c)と図5(c)に示すように、両端部が他方の表電極2と第1の硫化検出導体3に接続する抵抗体5を形成する。なお、必要に応じて抵抗体5の抵抗値調整を行うことも可能であり、その場合は、抵抗体5の耐湿性やレーザー熱による抵抗体5へのダメージを考慮して、図示せぬガラスコートを抵抗体5を覆うように形成した後、そのガラスコートの表面側からレーザー光を照射して抵抗体5にトリミング溝を形成すれば良い。
【0031】
次に、エポキシ系樹脂ペーストをスクリーン印刷して加熱硬化することにより、図4(d)と図5(d)および図6(d)に示すように、第1の硫化検出導体3および第2の硫化検出導体4の一部と抵抗体5の全体を覆う硫化ガス非透過性の保護膜6を形成する。この保護膜6はチップ領域の中央部を図示上下方向に露出させるように形成されており、第1の硫化検出導体3には保護膜6で覆われずに外部に露出する硫化検出部3aが形成される。また、第2の硫化検出導体4には保護膜6で覆われずに外部に露出する一対の硫化検出部4aが形成され、これら硫化検出部4aがギャップGを介して対向する形態となる。なお、第1の硫化検出導体3と第2の硫化検出導体4が一方の表電極2に重なる接続部、並びに第2の硫化検出導体4と抵抗体5が他方の表電極2に重なる接続部も保護膜6によって覆われるが、この時点で各表電極2の残りの端部は保護膜6で覆われずに露出している。
【0032】
次に、大判基板1Aを一次分割溝に沿って複数の短冊状基板1Bに1次分割し、これら短冊状基板1Bの分割された面(両端面)に対して、Ni-Crスパッタを行うことで、図4(e)と図5(e)および図6(e)に示すように、絶縁基板1の両面に形成された対応する表電極2と裏電極7間を導通する端面電極8を形成する。
【0033】
次に、短冊状基板1Bを二次分割溝に沿って複数のチップ状基板1Cに2次分割し、これらチップ状基板1Cに対して電解メッキを施してNiめっき層とSnメッキ層を順次形成する。これにより、図4(f)と図5(f)および図6(f)に示すように、保護膜6から露出する表電極2の表面と、裏電極7および端面電極8の表面全体に外部電極9が形成され、図1図3に示す硫化検出センサ10が完成する。
【0034】
このように構成された硫化検出センサ10の硫化検出動作について説明すると、硫化検出センサ10が硫化ガスに晒される前の初期状態において、一対の表電極2に接続された第2の硫化検出導体4はギャップGを介して離間しているが、一対の表電極2間に第1の硫化検出導体3と抵抗体5が直列接続されているため、抵抗体5の抵抗値Rを例えば1kΩとすると、硫化検出センサ10の初期抵抗値はR=1kΩとなる。
【0035】
この硫化検出センサ10が硫化ガスを含む雰囲気中に配置されると、第1の硫化検出導体3の硫化検出部3aと第2の硫化検出導体4の硫化検出部4aが硫化ガスに晒されることにより、累積硫化量が増えていくことに伴って、これら硫化検出部3aと硫化検出部4aが硫化されていく。
【0036】
ここで、銀を主成分とする第1の硫化検出導体3の硫化検出部3aは硫化によって絶縁性の硫化銀となるため、第1の硫化検出導体3は累積的な硫化量によって断線状態となる。一方、銅を主成分とする第2の硫化検出導体4の硫化検出部4aは硫化によって硫化銅を生成し、生成した硫化銅の結晶がギャップGの内方に向かって徐々に伸長していくため、一対の硫化検出部4aに生成した硫化銅がギャップG間に跨るまで伸長すると、その時点で第2の硫化検出導体4は累積的な硫化量によって導通状態となる。
【0037】
本実施形態例に係る硫化検出センサ10では、第1の硫化検出導体3と表電極2との間に抵抗体5が接続されており、この抵抗体5の抵抗値R(例えばR=1kΩ)が硫化検出センサ10の初期抵抗値R(=1kΩ)となるため、もしも第1の硫化検出導体3が断線に至る前に第2の硫化検出導体4のギャップGが短絡したとしても、その場合でも初期抵抗値Rから0オームとなる明確な抵抗値変化によって硫化を検出することができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態例に係る硫化検出センサ10は、一対の表電極2間に第1の硫化検出導体3と第2の硫化検出導体4が並列に配置されており、第1の硫化検出導体3が累積的な硫化量によって断線すると導通状態からオープン状態へと変化し、その後に第2の硫化検出導体4のギャップGが累積的な硫化量によって短絡するとオープン状態から導通状態へと変化するため、導通からオープンもしくはオープンから導通といったそれぞれの変化を一対の表電極2間の抵抗値変化にて硫化検出が可能となり、周囲環境による誤差の少ない高精度な硫化検出を行うことができる。
【0039】
また、本実施形態例に係る硫化検出センサ10では、第1の硫化検出導体3と表電極2との間に抵抗体5が直列接続されており、この抵抗体5の抵抗値R(例えばR=1kΩ)が硫化検出センサ10の初期抵抗値R(=1kΩ)となるため、初期抵抗値Rから0オームとなる抵抗値変化によって硫化を明確に検出することができる。なお、第1の硫化検出導体3の両端部と一対の表電極2との間にそれぞれ抵抗体5を直列接続しても良く、その場合、1つの抵抗体5の抵抗値をR(例えばR=1kΩ)とすると、硫化検出センサ10の初期抵抗値RはR=2×R=2kΩとなる。また、第2の硫化検出導体4と表電極2との間に抵抗体を接続しても良く、その場合、第2の硫化検出導体4のギャップGが短絡した時点で、硫化検出センサ10の抵抗値はオープンから抵抗体の抵抗値へと変化する。
【0040】
また、本実施形態例に係る硫化検出センサ10では、第1の硫化検出導体3および第2の硫化検出導体4の一部と抵抗体5の全体が硫化ガス非透過性の保護膜6によって覆われており、第1の硫化検出導体3における保護膜6で覆われずに外部に露出する部分が硫化検出部3aとなっていると共に、第2の硫化検出導体4における保護膜6で覆われずに外部に露出する部分が硫化検出部4aとなっているため、硫化ガスに接触する硫化検出部3a,4aの面積を保護膜6によって高精度に規定することができる。
【0041】
また、銀を主成分とする第1の硫化検出導体3の膜厚や銅を主成分とする第2の硫化検出導体4の硫化検出部4aのギャップGの間隔を適宜設定することにより、その表電極2間の抵抗値変化に基づいて様々なタイミングの硫化検出を行うことができる。
【0042】
例えば、第2の硫化検出導体4が累積的な硫化量によって導通状態になる前に、第1の硫化検出導体3が累積的な硫化量によって断線するように、第1の硫化検出導体3の膜厚や第2の硫化検出導体4の硫化検出部4aのギャップGの間隔を設定した場合、この硫化検出センサ10が硫化ガスを含む雰囲気中に配置されると、第1の硫化検出導体3の硫化検出部3aと第2の硫化検出導体4の硫化検出部4aが硫化ガスに晒されることにより、累積硫化量が増えていくことに伴って、これら硫化検出部3aと硫化検出部4aが硫化されていく。そして一定の累積硫化量に達すると、第1の硫化検出導体3は累積的な硫化量によって断線状態となり、硫化検出センサ10の抵抗値が抵抗体5の抵抗値(例えば1kΩ)からオープン状態へと変化するため、その抵抗値変化に基づいて硫化検出を行うことができる。
【0043】
また、第1の硫化検出導体3が断線した後、さらに累積硫化量が増えていくと、第2の硫化検出導体4の硫化検出部4aに生成した硫化銅がギャップG間に跨るまで伸長するため、第2の硫化検出導体4が累積的な硫化量によって導通状態となる。したがって、この時点で硫化検出センサ10の抵抗値はオープン状態から0Ω(導通状態)へと変化するため、その抵抗値変化に基づいて硫化検出を行うことができる。
【0044】
このように、一つの硫化検出センサ10によって、2つの累積的な硫化量のタイミングを明確に検出することができる。また、銀は硫化速度の速い材料であるため、硫化検出体に銀を使用して長期間の硫化検出を行うには、硫化検出体の検出部の膜厚を厚くする必要があるが、第2の硫化検出導体4の硫化検出部4aのギャップGの間隔を広げることにより、長期間の硫化検出を行うことができる。
【0045】
なお、一対の表電極2間に接続される第1の硫化検出導体3と抵抗体5の直列回路部は、本実施形態例のような1組に限らず、複数組の直列回路部を一対の表電極2間に並列接続するようにしても良い。その場合、各組の第1の硫化検出導体3における累積的な硫化量による断線タイミングが異なるように設定しておけば、一対の表電極2間の抵抗値が段階的に変化していき、全ての第1の硫化検出導体3が断線した後に第2の硫化検出導体4が導通することになる。
【符号の説明】
【0046】
1 絶縁基板
2 表電極
3 第1の硫化検出導体
3a 硫化検出部
4 第2の硫化検出導体
4a 硫化検出部
5 抵抗体
6 保護膜
7 裏電極
8 端面電極
9 外部電極
10 硫化検出センサ
G ギャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6