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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】有機性廃水の生物処理方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20230101AFI20231003BHJP
   C02F 3/30 20230101ALI20231003BHJP
【FI】
C02F3/12 F
C02F3/30 Z
C02F3/30 A
C02F3/12 M
C02F3/12 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020061288
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021159792
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】葛 甬生
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正英
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-317884(JP,A)
【文献】特開平05-192688(JP,A)
【文献】特開昭60-099395(JP,A)
【文献】特開昭58-202098(JP,A)
【文献】特開2004-050149(JP,A)
【文献】特開昭50-120164(JP,A)
【文献】特開平05-317880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00 - 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃水の生物処理方法であって、
有機性廃水である原水を第1好気槽及び嫌気槽にそれぞれ流入させて処理する工程、
前記第1好気槽及び前記嫌気槽からの処理液を合流させて第2好気槽に流入させて処理する工程、
前記第2好気槽からの処理液を固液分離して得られた汚泥の少なくとも一部を前記嫌気槽に返送する工程、及び
前記第2好気槽からの処理液を固液分離して得られた汚泥の少なくとも一部を前記第1好気槽に返送する工程
を有することを特徴とする有機性廃水の生物処理方法。
【請求項2】
前記第1好気槽に流入させる原水の量に対する前記第1好気槽に返送する汚泥の返送率が30%以下である請求項に記載の有機性廃水の生物処理方法。
【請求項3】
前記嫌気槽に流入させる原水の量に対する前記嫌気槽に返送する汚泥の返送率が50~200%である請求項1又は2に記載の有機性廃水の生物処理方法。
【請求項4】
前記第1好気槽におけるBOD汚泥負荷が5~15kg/kg/dである請求項1~のいずれかに記載の有機性廃水の生物処理方法。
【請求項5】
前記嫌気槽におけるBOD汚泥負荷が0.1~1.0kg/kg/dであり、NOX-N汚泥負荷が0.05~0.5kg/kg/dである請求項1~のいずれかに記載の有機性廃水の生物処理方法。
【請求項6】
有機性廃水の生物処理装置であって、
有機性廃水である原水に対してそれぞれ好気性処理を行う第1好気性処理手段及び嫌気性処理を行う嫌気性処理手段と、
前記第1好気性処理手段及び前記嫌気性処理手段により得られた処理液を合流させて好気性処理を行う第2好気性処理手段と、
前記第2好気性処理手段により得られた処理液を固液分離して得られた汚泥の少なくとも一部を前記嫌気性処理手段に返送する嫌気性返送手段と、
前記第2好気性処理手段により得られた処理液を固液分離して得られた汚泥の少なくとも一部を前記第1好気性処理手段に返送する好気性返送手段
を含む有機性廃水の生物処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機性廃水の生物処理方法及び装置に関する。一部の実施態様では、生活排水、下水、食品工場、化学工場やパルプ工場等の有機性廃水の処理に利用することができる有機性廃水、特に窒素やBODが高い有機性廃水に対し、処理効率を向上させ、かつ、余剰汚泥発生量の低減が可能な有機性廃水の生物処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、BOD(Biochemical oxygen demand:生物化学的酸素要求量)や窒素濃度の高い有機性廃水処理としては、一般的に活性汚泥処理を用いる場合が多い。活性汚泥処理は維持管理が容易であり、ランニングコストが低い。また、流入原水BODの安定除去が可能であり、常時良好な処理水質が得られる等の利点がある。このことから、活性汚泥処理は下水、生活排水、工場廃水等の有機性廃水処理に多く用いられている。しかしながら、活性汚泥処理では、BOD除去に伴う余剰汚泥が発生する。特にBOD濃度の高い廃水は余剰汚泥の発生量も多く、その処分に伴うランニングコストが処理全体に占める比率が高く、余剰汚泥の削減が大きな課題となっている。
【0003】
余剰汚泥の削減方法として、例えば、特許文献1(特開2010-069482号公報)には、高負荷及び低負荷を組み合わせた2段の活性汚泥処理により、前段の高負荷槽である第一生物処理槽で分散菌を発生させ、後段の低負荷槽である第二生物処理槽で、原生動物や後生動物を利用して分散菌を捕食し、このような食物連鎖により、汚泥の減量化、すなわち減容化を実現する方法が開示されている。
【0004】
一方、窒素を含有する有機性廃水の場合、BOD除去とともに窒素の除去を行う必要がある。生物学的窒素除去方法としては、一般的に循環式硝化脱窒方式を用いられることが多い。例えば、特許文献2(特開2006-061743号公報)には、好気性処理と通性嫌気性処理の両方が行われるように構成される循環式二段脱窒法を利用した汚泥処理装置が開示されている。
【0005】
循環式二段脱窒法の場合、前段に嫌気槽(脱窒槽)を設けて、後段の好気槽(硝化槽)にて原水中のアンモニア性窒素(NH4-N)を亜硝酸性窒素(NO2-N)や硝酸性窒素(NO3-N)等(以下、これらをまとめて硝酸性窒素(NOx-N)と称する)に酸化した後、NOX-N含有硝化液を嫌気槽に返送し、流入原水中のBODを脱窒の水素供与体として利用し、NOX-Nを窒素ガスに還元する方法で窒素除去を行なっている。このような窒素含有有機性廃水の処理においても、BOD廃水処理と同様に余剰汚泥削減が大きな課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-069482号公報
【文献】特開2006-061743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1には、窒素除去と同時に余剰汚泥削減を行なうプロセスが開示されていない。特許文献2に開示される発明では、一態様として、通性嫌気性処理を組み込んだ窒素除去についても言及されている(段落0021)ものの、原水と返送汚泥が嫌気槽を経てから曝気槽に流入している。この態様では、脱窒に寄与する微生物が本来必要のない長時間の曝気条件にさらされ、一方、余剰汚泥の削減に寄与する微生物が本来必要のない嫌気条件にさらされるため、各々の微生物の活性が低下してしまう。また、原水のBODが嫌気槽で除去されてしまうため、後段の曝気槽にかかるBOD負荷は成り行きとなり、汚泥減容化に適したBOD負荷に設定することができない。したがって、窒素除去性能、余剰汚泥の削減の双方に限界があった。
【0008】
このように、従来の技術では、窒素除去と同時に余剰汚泥削減を効率的に達成することが課題となっていた。
【0009】
本発明の上記の問題に鑑みてされたものであり、安定した窒素除去と余剰汚泥削減効果が同時に達成できる有機性廃水の生物処理方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者が鋭意検討した結果、有機性廃水を第1好気槽と嫌気槽にそれぞれ流入させて処理し、その処理液を合流して後段の好気槽に流入させて処理を行なうことで窒素除去と余剰汚泥削減効果を同時に得られることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
そこで、本発明の一つの実施形態は、
有機性廃水の生物処理方法であって、
有機性廃水である原水を第1好気槽及び嫌気槽にそれぞれ流入させて処理する工程、
前記第1好気槽及び前記嫌気槽からの処理液を合流させて第2好気槽に流入させて処理する工程、
前記第2好気槽からの処理液を固液分離して得られた汚泥の少なくとも一部を前記嫌気槽に返送する工程
を含む有機性廃水の生物処理方法である。
【0012】
このような工程とすることで、第1好気槽と嫌気槽の各々を適正なBOD負荷に自在に設定することができるため、第1好気槽を経由した汚泥の削減、嫌気槽における脱窒、のそれぞれを同時かつ効率的に進めることができる。
【0013】
本発明のもう一つの好ましい実施態様は、さらに、第2好気槽からの処理液を固液分離して得られた汚泥の少なくとも一部を前記第1好気槽に返送する工程を含む有機性廃水の生物処理方法である。
【0014】
このような工程とすることで、固液分離して得られた汚泥中の細菌は、嫌気槽を経由せずに直接第1好気槽に供給できるため、第1好気槽の細菌量とその活性を高く維持することができ、余剰汚泥の削減が促進される。
【0015】
本発明のもう一つの好ましい実施態様は、前記第1好気槽に流入させる原水の量に対する前記第1好気槽に返送する汚泥の返送率が0~30%である有機性廃水の生物処理方法である。
【0016】
このような返送率にすることで、原水由来のBODの供給量と細菌のバランスが良好となり、余剰汚泥の削減が促進される。
【0017】
本発明のもう一つの好ましい実施態様は、前記嫌気槽に流入させる原水の量に対する前記嫌気槽に返送する汚泥の返送率が50~200%である有機性廃水の生物処理方法である。
【0018】
このような返送率にすることで、原水由来のBOD供給量と返送汚泥由来のNOx-N供給量のバランスが良好となり、脱窒が促進される。
【0019】
本発明のもう一つの好ましい実施態様は、前記第1好気槽におけるBOD汚泥負荷が5~15kg/kg/dである有機性廃水の生物処理方法である。
【0020】
このようなBOD汚泥負荷範囲にすることで原水中のBODが高効率で分解除去されて、微細な分散菌の増殖が進み、流入する第2好気槽で活性汚泥に捕食される。その結果余剰汚泥削減が促進される。
【0021】
本発明のもう一つの好ましい実施態様は、前記嫌気槽におけるBOD汚泥負荷が0.1~1.0kg/kg/dであり、NOX-N汚泥負荷が0.05~0.5kg/kg/dである有機性廃水の生物処理方法である。
【0022】
このようなBOD汚泥負荷とNOX-N負荷の範囲にすることでBODと窒素のバランスがとれ、脱窒菌の増殖が進み、その結果脱窒が促進される。
【0023】
本発明の別の一つの実施形態は、
有機性廃水の生物処理装置であって、
有機性廃水である原水に対してそれぞれ好気性処理を行う第1好気性処理手段及び嫌気性処理を行う嫌気性処理手段と、
前記第1好気性処理手段及び嫌気性処理手段により得られた処理液を合流させて好気性処理を行う第2好気性処理手段と、
前記第2好気性処理手段により得られた処理液を固液分離して得られた汚泥の少なくとも一部を前記嫌気性処理手段に返送する嫌気性返送手段
を含む有機性廃水の生物処理装置である。
【0024】
このような構成にすることで固液分離して得られた汚泥中の細菌は、嫌気槽を経由せずに直接第1好気槽に供給できるため、第1好気槽の細菌量とその活性を高く維持することができ、余剰汚泥の削減が促進される。
【0025】
本発明のもう一つの好ましい実施態様は、前記第2好気性処理手段からの処理液を固液分離して得られた汚泥の少なくとも一部を前記第1好気処理手段に返送する好気性返送手段を有する有機性廃水の生物処理装置である。
【0026】
このような好気性返送手段を有することで、固液分離して得られた汚泥中の細菌は、嫌気槽を経由せずに直接第1好気槽に供給できるため、第1好気槽の細菌量とその活性を高く維持することができ、余剰汚泥の削減が促進される。
【0027】
本発明のもう一つの好ましい実施態様は、前記第1好気性処理手段に流入させる原水の量に対する前記第1好気性処理手段に返送する汚泥の返送率が0~30%である有機性廃水の生物処理装置である。
【0028】
このような返送率にすることで、原水由来のBODの供給量と細菌のバランスが良好となり、余剰汚泥の削減が促進される。
【0029】
本発明のもう一つの好ましい実施態様は、前記嫌気性処理手段に流入させる原水の量に対する前記嫌気性処理手段に返送する汚泥の返送率が50~200%である有機性廃水の生物処理装置である。
【0030】
このような返送率にすることで、原水由来のBOD供給量と返送汚泥由来のNOx-N供給量のバランスが良好となり、脱窒が促進される。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、安定した窒素除去と余剰汚泥削減効果が同時に達成できる有機性廃水の生物処理方法及び装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一つの実施形態における実施フローである
図2】本発明の実施例1における実施フローである
図3】比較例1における実施フローである。
図4】比較例2における実施フローである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に本発明の実施形態につき図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0034】
本発明は一実施態様において、有機性廃水である原水を第1好気槽及び嫌気槽にそれぞれ流入させて処理する工程、前記第1好気槽及び前記嫌気槽からの処理液を合流させて第2好気槽に流入させて処理する工程、前記第2好気槽からの処理液を固液分離して得られた汚泥の少なくとも一部を前記嫌気槽に返送する工程を含む方法である。第1好気槽では、原水のBODを効率的に分解除去すると同時に微細な分散菌を増殖させることができる。増殖した分散菌が第2好気槽に直接流入することで第2好気槽の活性汚泥に捕食されて余剰汚泥削減となる。一方、脱窒槽である嫌気槽では、返送汚泥から返送される第2好気槽処理液中のNOX-Nに対し、流入原水中のBODを用いた脱窒が安定してできる。このBOD及び窒素低減した嫌気槽処理液を直接第2好気槽に流入すれば、第2好気槽のBOD負荷低減と分散菌捕食にも寄与し、水質安定化と汚泥削減効果が得られる。
【0035】
有機性廃水は窒素を含有するものであることが好ましい。特にNH4-Nを含有する有機性廃水であることが好ましい。第1好気槽及び嫌気槽は、並列で設置することが好ましい。具体的には、原水の供給源からそれぞれ分流して原水を流入させることができるように配管されることが好ましい。このように配置することで、第1好気槽と嫌気槽それぞれについて、余剰汚泥削減や窒素除去に適した負荷条件に任意に設定することができる。そして、負荷条件を適宜変更できるよう、第1好気槽及び嫌気槽へ流入させる原水の量をバルブなどで調整できることが好ましい。
【0036】
第1好気槽においては、適切なBOD負荷の条件下では、分散菌等の微小細菌が短時間に増殖するとともに原水中有機物の分解除去が行われ、溶解性BODが大きく低下する。この処理液が第2好気槽に流入すれば、第2好気槽の原生動物や捕食性微小動物等の捕食により、余剰汚泥発生量が低下する。
【0037】
嫌気槽においては、適切なNOX-N負荷やBOD負荷の条件下で固液分離後の汚泥の少なくとも一部、又は第2好気槽処理液の少なくとも一部を嫌気槽に返送する、すなわち、第1好気槽を経由せずに直接嫌気槽に返送することで、脱窒に寄与する微生物の活性を高く維持することができ、流入原水BOD源を使った効率的な従属栄養脱窒が可能である。
【0038】
以上のように、第1好気槽及び嫌気槽を併用することにより、有機性廃水に対し、窒素除去と余剰汚泥削減が同時に安定して達成可能となる。
【0039】
第1好気槽では、原水の一部を流入させて曝気処理して原水の有機物を酸化分解して粒径約20μ前後の微小細菌である分散菌に変換される。第1好気槽ではBOD汚泥負荷(汚泥1kgあたりに負荷される1日のBOD量)が5~15kg/kg/dであることが好ましい。BOD汚泥負荷をこの範囲にすることにより、第1好気槽では、流入原水BODの効率的な分解除去と分散菌の安定増殖が可能であることから、後段の第2好気槽において、処理水質の安定化と余剰汚泥削減が可能である。BOD汚泥負荷が5kg/kg/dより低いと、他の微生物が優勢になる。一方、BOD汚泥負荷が15kg/kg/dを超えると、分散菌にとっても過負荷で酷な条件となる。この観点から、第1好気槽ではBOD汚泥負荷は、5~10kg/kg/dであることがより好ましく、5~7.5kg/kg/dであることがさらにより好ましい。
【0040】
第1好気槽のBOD汚泥負荷を調整するために、必要に応じて固液分離後の汚泥の一部を適量に返送することが望ましい。すなわち、第2好気槽からの処理液を固液分離して得られた汚泥の少なくとも一部を前記第1好気槽に返送する工程を含むことが好ましい。このように、嫌気槽を経由せずに直接第1嫌気槽に返送することで、余剰汚泥削減に寄与する微生物の活性を高く維持することができ、効率的に汚泥を減容することができる。固液分離は、典型的には沈澱処理により行うことができる。この工程で、流入原水有機物分解及び分散菌の増殖促進に寄与する観点から、汚泥の返送率は第1好気槽への流入原水量に対し、好ましくは0~30%、より好ましくは5~15%である。また、第1好気槽中の溶存酸素濃度(DO)が例えば1mg/L以上、より好ましくは2mg/L以上となるように曝気の風量調整をすれば、より効果的な処理が得られる。
【0041】
嫌気槽に対し、沈澱池などで固液分離して得られた汚泥を返送し、流入原水の一部と混合して嫌気槽に流入すれば、返送汚泥中のNOX-Nが流入原水BODを利用した従属脱窒が進行し、NOX-Nが無害な窒素ガスに還元されて窒素除去が可能となる。嫌気槽への汚泥の返送率は流入原水量に対し、好ましくは50~200%、より好ましくは100~200%であり、これにより安定した脱窒が得られる。また、必要に応じて、第2好気槽処理液の少なくとも一部を嫌気槽に返送すれば、窒素除去率をさらに向上させることが可能である。
【0042】
嫌気槽のNOX-N汚泥負荷(汚泥1kgあたりに負荷される1日のNOx-N量)が0.05~0.5kg/kg/dが好ましく、0.1~0.3kg/kg/dがより好ましい。NOX-N汚泥負荷をこの範囲にすることにより、嫌気槽において、流入されるNOX-Nが安定して除去される。この観点から、嫌気槽ではNOX-N汚泥負荷は、0.05~0.3kg/kg/dであることがより好ましく、0.05~0.25kg/kg/dであることがさらにより好ましい。この負荷となるように返送汚泥もしくは第2好気槽の処理液の適量を嫌気槽に戻すことが必要となる。
【0043】
また、嫌気槽のBOD汚泥負荷を0.1~1.0kg/kg/dとなるように流入原水量を適宜に設定することが望ましい。BOD汚泥負荷を基本的に嫌気槽NOX-N汚泥負荷の2.5~3倍程度となる範囲にすることにより、BOD及びNOX-Nの同時除去が安定して得られる。この観点から、嫌気槽ではBOD汚泥負荷は、0.15~0.9kg/kg/dであることがより好ましく、0.15~0.75kg/kg/dであることがさらにより好ましい。
【0044】
嫌気槽におけるBOD汚泥負荷とNOX-N汚泥負荷は、嫌気槽に流入する返送汚泥量又は第2好気槽から返送する処理液の量を適宜に設定することで調整可能である。
【0045】
第2好気槽では、第1好気槽からの分散菌を原生動物や捕食性微小動物等の微小微生物に捕食されることにより余剰汚泥の発生量が削減可能となる。この第2好気槽において分散菌を効率よく捕食させるためにはBOD汚泥負荷を0.2kg/kg/d以下とすることが好ましく、0.15kg/kg/d以下とすることがより好ましい。第1好気槽で原水BODが一部酸化分解されていることから、第1好気槽から第2好気槽に流入する残留BODを、溶解性BOD、即ち、S-BODとして評価することが可能である。この場合、S-BOD汚泥負荷を0.1kg/kg/d以下とすることが望ましい。
【0046】
第2好気槽では、原水中の窒素、特にNH4-NをNOX-Nに酸化変換する必要がある。従って、第2好気槽では硝化菌の保持が不可欠となる。このため、第2好気槽のSRT(Solids Retention Time:固形物滞留時間)を硝化菌保持可能となるように長くし、MLSS(Mixed Liquor Suspended Solids:活性汚泥浮遊物質)を高くすることが好ましい。余剰汚泥発生量の関係から、所定のSRTを確保できない場合は、微生物担体を投入した流動担体方式としても、同様な処理効果が得られる。
【0047】
微生物担体として、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド、光硬化性樹脂等の合成高分子、カラギーナン、アルギン酸ソーダ等の高分子を用いたゲル担体、ポリエチレンやポリウレタン、ポリプロピレン等からなる流動担体が挙げられる。
【0048】
担体の形状としては球形、四角形、円筒形の何れも使用可能であり、その有効径は第2好気槽の出口のスクリーンより安定して分離できる3~10mmが好ましい。担体比重は曝気状態において均一に流動可能となる1.01~1.05であるものが好ましい。また、担体充填量は生物反応槽に対し、均一に混合流動可能となる、5~30V/V%、好ましくは10~20V/V%とすることが効果的である。第2好気槽は単独1槽としてもよいが、さらに数槽に分けて直列しても同じ効果が得られる。この場合、微生物担体をBOD負荷の低い後段の好気槽に添加することが好ましい。
【0049】
本発明は別の側面において、上記方法を実現する手段として、有機性廃水の生物処理する装置であって、有機性廃水である原水に対してそれぞれ好気性処理を行う第1好気性処理手段及び嫌気性処理を行う嫌気性処理手段と、前記第1好気性処理手段及び前記嫌気性処理手段により得られた処理液を合流させて好気性処理を行う第2好気性処理手段と、前記第2好気性処理手段により得られた処理液を固液分離して得られた汚泥の少なくとも一部を前記嫌気性処理手段に返送する嫌気性返送手段を含む装置である。
【0050】
第1好気性処理手段及び第2好気性処理手段としては、例えば、活性汚泥等の好気性微生物を用いて廃水または汚泥を処理するための好気槽が好適に用いられる。嫌気性処理手段としては、例えば、嫌気性微生物を用いて嫌気性処理を行い、NOX-Nを無害な窒素ガスに還元するための嫌気槽が好適に用いられる。嫌気性返送手段は、その機能を実現できる限り具体的な態様が制限されないが、典型的には第2好気性処理手段と嫌気性処理手段を連結する配管である。
【0051】
また、第2好気性処理手段からの処理液を固液分離して得られた汚泥の少なくとも一部を第1好気処理手段に返送する好気性返送手段を含むことが好ましい。好気性返送手段は、その機能を実現できる限り具体的な態様が制限されないが、典型的には第2好気性処理手段と第1好気処理手段を連結する配管である。
【0052】
さらに、第2好気性処理手段からの処理液の少なくとも一部を嫌気槽に返送する返送手段を追加すると、窒素除去率をさらに向上させることが可能であるので好ましい。
【0053】
また、第1好気性処理手段に流入させる原水の量に対する第1好気性処理手段に返送する汚泥の返送率、及び嫌気性処理手段に流入させる原水の量に対する嫌気性処理手段に返送する汚泥の返送率の好ましい範囲は、いずれも前述と同様であり、ここで引用する。
【0054】
また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜追加の好気槽、嫌気槽、沈澱池、あるいは他の工程又は手段を追加することができる。
【実施例
【0055】
以下に本発明を実施態様の一例を示す図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
【0056】
(実施例及び比較例)
実施例1、並びに比較例1、比較例2における処理のフローを、それぞれ図2~4の要領で実施した。実施例及び比較例のいずれも、原水はBOD:300mg/L、T-N(全窒素量):50mg/Lの窒素含有有機性廃水を使用した。原水量はいずれも100L/dとし、全反応槽BOD汚泥負荷は実施例、比較例の何れも0.25kg/kg/dと同一な条件とした。MLSSが3,500mg/Lと同じであるため、全槽の容積はいずれも約34Lと同じであった。
【0057】
実施例1では、並列している嫌気槽と第1好気槽にそれぞれ、原水を50L/d分注させたのに対し、比較例1では、原水全量100L/dを第1好気槽に、比較例2では、原水全量100L/dを嫌気槽に直接流入させている。上記条件で約1ヶ月連続通水した。表1には本発明による実施例及び比較例の処理条件と結果を示す。
【0058】
【表1】
【0059】
(考察)
実施例1では余剰汚泥発生量が4.5g/d、原水に対する窒素(T-N)除去率が60%であった。これに対し、比較例1では、余剰汚泥発生量が実施例1と同程度の4.5g/dであり、汚泥減容効果が見られたものの、T-N除去率は18%程度に止まった。また、比較例2では、原水に対するT-N除去率は約50%と実施例1より若干の低下であったが、余剰汚泥発生量は10.5g/dと多い結果となった。上記の結果から、本発明では余剰汚泥発生量を抑制し、高いT-N除去率が得られる有効な処理方式であることを確認できた。
図1
図2
図3
図4