IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 未来工業株式会社の特許一覧

特許7359741粘着マット付き固定部材及び粘着マット付き固定部材の設置構造
<>
  • 特許-粘着マット付き固定部材及び粘着マット付き固定部材の設置構造 図1
  • 特許-粘着マット付き固定部材及び粘着マット付き固定部材の設置構造 図2
  • 特許-粘着マット付き固定部材及び粘着マット付き固定部材の設置構造 図3
  • 特許-粘着マット付き固定部材及び粘着マット付き固定部材の設置構造 図4
  • 特許-粘着マット付き固定部材及び粘着マット付き固定部材の設置構造 図5
  • 特許-粘着マット付き固定部材及び粘着マット付き固定部材の設置構造 図6
  • 特許-粘着マット付き固定部材及び粘着マット付き固定部材の設置構造 図7
  • 特許-粘着マット付き固定部材及び粘着マット付き固定部材の設置構造 図8
  • 特許-粘着マット付き固定部材及び粘着マット付き固定部材の設置構造 図9
  • 特許-粘着マット付き固定部材及び粘着マット付き固定部材の設置構造 図10
  • 特許-粘着マット付き固定部材及び粘着マット付き固定部材の設置構造 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】粘着マット付き固定部材及び粘着マット付き固定部材の設置構造
(51)【国際特許分類】
   A47B 91/02 20060101AFI20231003BHJP
   A47B 97/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
A47B91/02
A47B97/00 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020104842
(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公開番号】P2021194385
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】古田 建世
(72)【発明者】
【氏名】堀 信夫
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-201(JP,A)
【文献】特開2008-194406(JP,A)
【文献】特開2000-213508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 91/02
A47B 97/00
F16B 45/00-47/00
B65G 1/10
H05K 5/00-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の板厚方向の一方の面である表面にマット貼着面を有する固定部本体を備えるとともに、厚さ方向の両面に粘着面を有し、かつ厚さ方向に圧縮変形する板状の粘着マットが前記マット貼着面に貼着されており、前記固定部本体を前記板厚方向に貫通する貫通孔を有する固定部と、
頭部、及び雄ねじが形成された軸部を有するボルト状であり、前記貫通孔に前記軸部が挿通され、かつ当該軸部の先端が前記固定部本体の裏面側へ突出するボルト状部材と、を備え、
前記貫通孔は、前記固定部本体の前記裏面よりも膨出した膨出部の頂部に形成され、
前記膨出部の内側には、前記マット貼着面から前記裏面側へ凹む頭部収容部が形成されており、
前記ボルト状部材の前記頭部における前記粘着マットに対向する頭部端面は前記粘着マットが貼着可能な位置で前記頭部収容部に収容されていることを特徴とする粘着マット付き固定部材。
【請求項2】
前記ボルト状部材の軸線方向に沿って前記頭部を見た平面視は多角形状であり、前記頭部は、前記頭部端面に交差する複数の側面を含み、前記膨出部は、前記頭部の前記側面に接触することで当該頭部を回り止めする回転規制部を前記膨出部の内側に備える請求項1に記載の粘着マット付き固定部材。
【請求項3】
被貼着面に請求項1又は請求項2に記載の粘着マット付き固定部材の前記粘着マットが貼着されており、
前記頭部端面は、前記マット貼着面と同一面に位置し、
前記粘着マットは圧縮前の厚さの50%~90%の厚さとなるように圧縮されているとともに、前記頭部端面と前記被貼着面との間の部位と、前記マット貼着面と前記被貼着面との間の部位とで同じ圧縮量で圧縮されている、
又は、前記頭部端面は、前記マット貼着面よりも突出しており、
前記粘着マットにおける前記頭部端面と前記被貼着面との間の部位は、前記マット貼着面と前記被貼着面との間の部位よりも大きな圧縮量で圧縮され、かつ圧縮前の厚さの50%~90%の厚さとなるように圧縮されていることを特徴とする粘着マット付き固定部材の設置構造。
【請求項4】
被貼着面に請求項1又は請求項2に記載の粘着マット付き固定部材の前記粘着マットが貼着されており、
前記頭部端面は、前記マット貼着面よりも控えた位置に位置し、
前記粘着マットにおける前記頭部端面に対向する部位は前記頭部収容部に入り込んで前記頭部端面に貼着し、かつ圧縮前の厚さの50%~90%の厚さとなるように圧縮されていることを特徴とする粘着マット付き固定部材の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着マット付き固定部材及び粘着マット付き固定部材の設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地震発生時に、家具等の固定対象物の転倒を抑止するため、固定対象物は、粘着マット付き固定部材を用いて設置部に固定されている。このような粘着マット付き固定部材としては、例えば、特許文献1の固定具が挙げられる。この固定具は、相対向する一対の平板を備える。また、固定具は、一対の平板における相対向する一面から突出する雄ねじ棒を備え、一対の雄ねじ棒のリード角は反対方向である。雄ねじ棒は、頭部を備えるボルトである。各平板の中央部にはボルトに対応する雌ねじ孔が設けられている。各ボルトは雌ねじ孔に螺合されている。
【0003】
また、固定具は、各平板における他面に粘着マットを備える。さらに、固定具は、筒状体を備え、筒状体の内周面には雌ねじが形成されている。筒状体の一端側には、一方の雄ねじ棒が螺合され、筒状体の他端側には、他方の雄ねじ棒が螺合されている。
【0004】
そして、固定具によって固定対象物を設置部に固定するには、まず、固定対象物より下方の設置部上における適宜の位置に固定具を置く。このとき、設置部には、一方の平板に貼着された粘着マットが貼着される。筒状体を回転させることにより、他方の平板が固定対象物の底面に接近し、さらには、底面に粘着マットが貼着される。そして、両方の粘着マットがそれぞれ対象に貼着されることにより、固定具が固定対象物及び設置部に固定されるとともに、固定具によって固定対象物が設置部に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-136810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の固定具においては、平板に雄ねじ棒を一体に設けるため、粘着マットにボルトの頭部を貫通させる透孔が形成されている。このため、粘着マットの粘着面の面積が小さくなり、粘着力の低下を招いている。
【0007】
本発明の目的は、ボルト状部材による粘着面の減少を無くせる粘着マット付き固定部材及び粘着マット付き固定部材の設置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するための粘着マット付き固定部材は、金属板の板厚方向の一方の面である表面にマット貼着面を有する固定部本体を備えるとともに、厚さ方向の両面に粘着面を有し、かつ厚さ方向に圧縮変形する板状の粘着マットが前記マット貼着面に貼着されており、前記固定部本体を前記板厚方向に貫通する貫通孔を有する固定部と、頭部、及び雄ねじが形成された軸部を有するボルト状であり、前記貫通孔に前記軸部が挿通され、かつ当該軸部の先端が前記固定部本体の裏面側へ突出するボルト状部材と、を備え、前記貫通孔は、前記固定部本体の前記裏面よりも膨出した膨出部の頂部に形成され、前記膨出部の内側には、前記マット貼着面から前記裏面側へ凹む頭部収容部が形成されており、前記ボルト状部材の前記頭部における前記粘着マットに対向する頭部端面は前記粘着マットが貼着可能な位置で前記頭部収容部に収容されていることを要旨とする。
【0009】
粘着マット付き固定部材について、前記ボルト状部材の軸線方向に沿って前記頭部を見た平面視は多角形状であり、前記頭部は、前記頭部端面に交差する複数の側面を含み、前記膨出部は、前記頭部の前記側面に接触することで当該頭部を回り止めする回転規制部を前記膨出部の内側に備えていてもよい。
【0010】
上記問題点を解決するための粘着マット付き固定部材の設置構造は、被貼着面に請求項1又は請求項2に記載の粘着マット付き固定部材の前記粘着マットが貼着されており、前記頭部端面は、前記マット貼着面と同一面に位置し、前記粘着マットは圧縮前の厚さの50%~90%の厚さとなるように圧縮されているとともに、前記頭部端面と前記被貼着面との間の部位と、前記マット貼着面と前記被貼着面との間の部位とで同じ圧縮量で圧縮されている、又は、前記頭部端面は、前記マット貼着面よりも突出しており、前記粘着マットにおける前記頭部端面と前記被貼着面との間の部位は、前記マット貼着面と前記被貼着面との間の部位よりも大きな圧縮量で圧縮され、かつ圧縮前の厚さの50%~90%の厚さとなるように圧縮されていることを要旨とする。
【0011】
上記問題点を解決するための粘着マット付き固定部材の設置構造は、被貼着面に請求項1又は請求項2に記載の粘着マット付き固定部材の前記粘着マットが貼着されており、前記頭部端面は、前記マット貼着面よりも控えた位置に位置し、前記粘着マットにおける前記頭部端面に対向する部位は前記頭部収容部に入り込んで前記頭部端面に貼着し、かつ圧縮前の厚さの50%~90%の厚さとなるように圧縮されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ボルト状部材による粘着面の減少を無くせる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態の粘着マット付き固定部材及び設置構造を示す図。
図2】実施形態の固定具を示す斜視図。
図3】実施形態の固定具を示す分解斜視図。
図4】実施形態の粘着マット付き固定部材を示す断面図。
図5】固定部を拡大して示す断面図。
図6】粘着マットを除いた固定部を示す平面図。
図7】固定具が傾いたときの状態を示す断面図。
図8】頭部がマット貼着面より突出している固定部を示す断面図。
図9】頭部端面がマット貼着面と同一面上にある固定部を示す断面図。
図10】固定部の別例を示す断面図。
図11】粘着マットの隙間形成凹部を示す部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、粘着マット付き固定部材及び粘着マット付き固定部材の設置構造を具体化した一実施形態を図1図7にしたがって説明する。
図1に示すように、固定具11は、固定対象物10と、当該固定対象物10が設置される設置部Fとの間に介在され、固定対象物10を設置部Fに固定する。固定対象物10としては、印刷装置、複合機、家具、テレビ等が挙げられる。設置部Fとしては床、天井、机等が挙げられる。
【0015】
固定具11は、固定対象物10の下面10a、及び設置部Fの上面Faそれぞれに対し粘着マット20によって貼着される。したがって、本実施形態では、固定対象物10の下面10a及び設置部Fの上面Faは、粘着マット20が貼着される被貼着面を構成している。また、固定対象物10の下面10aと設置部Fの上面Faは上下方向に対向する対向面であり、対向面のうちの一方の面を設置部Fの上面Faとし、対向面のうちの他方の面を下面10aとする。
【0016】
固定具11は、2つの粘着マット付き固定部材25と、2つの粘着マット付き固定部材25が螺合される連結部材30と、を備える。粘着マット付き固定部材25は、粘着マット20を含む固定部12と、ボルト状部材21とを備える。
【0017】
粘着マット20は、厚さ方向の両面に粘着面を有する板状である。粘着マット20は厚さ方向に圧縮変形可能である。粘着マット20は、粘着性を備えるゲル状の超軟質ウレタンにより形成される。また、粘着マット20は、圧縮前の厚さの50%~90%の厚さとなるまで圧縮されることで、最適の粘着力を発揮するものである。粘着マット20は厚さ方向の一方の粘着面に第1面20aを備え、厚さ方向の他方の粘着面に第2面20bを備える。粘着マット20は、厚さ方向の第1面20aが固定部12に貼着され、厚さ方向の第2面20bが、被貼着面である固定対象物10の下面10aや、設置部Fの上面Faに貼着される。
【0018】
図4又は図6に示すように、ボルト状部材21は、六角柱状の頭部22と、頭部22から突出する軸部23を有するボルトである。ボルト状部材21の軸線方向に沿って頭部22を見た平面視では、頭部22は六角形状である。頭部22は、平面視六角形状の頭部端面22aと、頭部端面22aに交差する6つの側面22bとを含む。軸部23の外周面には雄ねじが形成されている。
【0019】
次に、固定部12について説明する。
図1図4に示すように、固定部12は、金属板製の固定部本体13と、固定部本体13の周縁から突出する複数の突出部17と、固定部本体13に貼着される粘着マット20と、を備える。
【0020】
固定部本体13は、四角板状である。固定部本体13は、板厚方向の一方の面である表面にマット貼着面13aを備え、板厚方向の他方の面に裏面13bを備える。マット貼着面13aは、粘着マット20よりも広い面積を有する。固定部本体13のマット貼着面13aは、粘着マット20の第1面20aと一致する四角形状である。そして、マット貼着面13aには、粘着マット20の第1面20aが貼着されている。
【0021】
本実施形態では、固定部12は、固定部本体13の裏面13bよりも膨出する膨出部14と、膨出部14の頂部に位置する貫通孔16aを有する。膨出部14は、筒状に突出する周壁15と、固定部本体13からの周壁15の突出方向の先端に位置する環状底部16とを有する。環状底部16は、膨出部14の頂部に位置している。
【0022】
図6に示すように、マット貼着面13aに対する直交方向に沿って固定部本体13を見た平面視では、周壁15はトラック形状である。周壁15の内面は、マット貼着面13aに沿う面方向に対向する一対の規制面15aと、一対の規制面15aの端同士を繋ぐ一対の弧状面15bとを有する。
【0023】
図5に示すように、貫通孔16aは、環状底部16を固定部本体13の板厚方向に貫通する。貫通孔16aは、固定部本体13の裏面13b側に膨出した膨出部14の頂部に形成されている。固定部本体13の板厚方向に沿うマット貼着面13aから環状底部16までの寸法を膨出部14の深さDとする。
【0024】
膨出部14の内側には、ボルト状部材21が挿通されている。ボルト状部材21の頭部22は、頭部収容部14cに収容されている。また、頭部22において、軸部23の突出する端面は、膨出部14の頂部である環状底部16に接触している。ボルト状部材21の軸線方向への頭部22の寸法を頭部長さLとする。本実施形態では、膨出部14の深さDは、頭部長さLより大きくなっている。このため、頭部端面22aは、マット貼着面13aよりも控えた位置にある。
【0025】
固定部本体13のマット貼着面13aには粘着マット20が貼着されている。そして、頭部収容部14cは粘着マット20によって覆われ、頭部22の頭部端面22aは粘着マット20によって覆われている。頭部端面22aは、粘着マット20及びマット貼着面13aよりも固定部本体13の裏面13b側に控えた位置にある。頭部端面22aが控えた位置とは、粘着マット20が圧縮変形されたとき、頭部収容部14cに入り込んだ粘着マット20が頭部端面22aに貼着可能となる位置である。
【0026】
粘着マット20の第1面20aの一部は、頭部22の頭部端面22aに対向している。ボルト状部材21の軸部23は、貫通孔16aに挿通され、環状底部16を貫通している。このため、軸部23は、固定部本体13の裏面13b側へ突出している。つまり、ボルト状部材21は、固定部本体13を板厚方向に貫通する貫通孔16aに、軸部23の先端が裏面13b側へ突出するように挿通されている。軸部23には、ナット24が螺合されている。ナット24と頭部22によって環状底部16が挟まれるとともに、固定部本体13にボルト状部材21が一体化されている。固定部12とボルト状部材21とが一体化されて粘着マット付き固定部材25が構成されている。
【0027】
頭部22の6つの側面のうち、互いに平行な2つの側面22b間の距離を二面幅Wとする。二面幅Wは、周壁15の規制面15a間の距離より僅かに短い。頭部22において互いに平行な2つの側面22bは、それぞれ規制面15aに対向配置され、対向する規制面15aと側面22bとの接触により、ボルト状部材21の回転が規制されている。したがって、規制面15aは、頭部22の側面22bに接触することで頭部22を回り止めする回転規制部を構成している。
【0028】
図2又は図5に示すように、突出部17は、固定部本体13の縁に沿って長手が延びる突条形状である。突出部17は、固定部本体13の4つの側縁13dに2つずつ設けられている。突出部17は、各側縁13dの両端寄りに離れて配置されている。そして、各側縁13dにおいて隣り合う突出部17の間には凹部18が形成されている。
【0029】
また、各突出部17は、各側縁13dの端よりも中央寄りにずれた位置にある。このため、固定部本体13の四隅では、交差する側縁13dの突出部17同士が互いに離間しており、固定部本体13の各隅において隣接する突出部17同士の間には間隙Sが形成されている。
【0030】
各突出部17は、粘着マット20の周縁に対向する内面17bを備える。なお、内面17bは、マット貼着面13aに連続する面であり、マット貼着面13aに対し交差する面である。突出部17は、内面17bとマット貼着面13aとの間の角度が90度よりも大きくなるように、固定部本体13よりも外側に向けて突出部17全体が傾斜している。したがって、突出部17の先端面は平坦面であるが、突出部17全体の傾斜により、突出部17の先端面は傾斜している。
【0031】
各突出部17は、固定部本体13から粘着マット20の第2面20b側へ突出した先端に傾斜面19を備える。傾斜面19は、固定部本体13の面方向に沿って粘着マット20から離れるに従い、第2面20bから第1面20aに向かうように傾斜している。
【0032】
突出部17は、内面17bと傾斜面19との交差部に先端縁19aを備える。先端縁19aは、側縁13dに沿って直線状に延びており、突出部17の交差部はエッジ状である。マット貼着面13aから突出部17の先端縁19aまでの寸法を、突出部17の高さ寸法とする。突出部17の高さ寸法は、圧縮されていない状態の粘着マット20の厚さ寸法より小さい。
【0033】
また、上述した凹部18は、傾斜面19よりもマット貼着面13a寄りに凹設されている。なお、凹部18は、傾斜面19からマット貼着面13aに至るまで凹設されている。
図2又は図4に示すように、固定部12は、固定部本体13のマット貼着面13aから裏面13bに向けて突出するビード12aを備える。ビード12aは、固定部本体13を補強する。ビード12aは、固定部本体13をマット貼着面13aから凹ませることにより形成されており、固定部本体13をマット貼着面13aとは反対側に突出させて形成されている。
【0034】
ビード12aは、固定部本体13の中央部から固定部本体13の四隅に向けて真っ直ぐ延びる。なお、ビード12aの形状、固定部本体13における位置は適宜変更してもよい。そして、ビード12aにより、粘着マット20の第1面20aとマット貼着面13aとの間には隙間Jが形成されている。隙間Jは、固定部本体13の中央部から固定部本体13の四隅に向けて真っ直ぐ延びる。また、隙間Jは、固定部本体13のマット貼着面13aから凹む。つまり、隙間Jはマット貼着面13aの一部を裏面13b側に膨出させたビード12aにより形成されている。
【0035】
次に、連結部材30について説明する。
図3又は図4に示すように、連結部材30は、2つの粘着マット付き固定部材25のボルト状部材21の軸部23の先端が対向する状態で双方の軸部23を連結する。つまり、連結部材30は、2つの粘着マット付き固定部材25がそれぞれ有するボルト状部材21の軸部23の先端面を向い合せた状態で、2つの粘着マット付き固定部材25を連結する。なお、2つのボルト状部材21の雄ねじは互いに逆ねじの関係にある。
【0036】
連結部材30は内周面に雌ねじ孔30aを有する六角筒状である。雌ねじ孔30aは、連結部材30を軸線方向に貫通する。雌ねじ孔30aの軸線方向の第1端側には、一方の粘着マット付き固定部材25のボルト状部材21が螺合され、雌ねじ孔30aの軸線方向の第2端側には、他方の粘着マット付き固定部材25のボルト状部材21が螺合されている。
【0037】
一方の粘着マット付き固定部材25に対し、連結部材30が離間するように連結部材30を回転させる。このとき、他方の粘着マット付き固定部材25を連結部材30と一体回転させると、他方の粘着マット付き固定部材25を、連結部材30の移動距離と同じ量で移動させることができる。
【0038】
また、一方の粘着マット付き固定部材25に対し、連結部材30が離間するように連結部材30を回転させたとき、他方の粘着マット付き固定部材25の軸部23は回転させず、連結部材30のみを回転させる。すると、両方の軸部23が連結部材30から離間し、他方の粘着マット付き固定部材25を、連結部材30の移動距離より多い量で他方の粘着マット付き固定部材25を移動させることができる。
【0039】
上記のように、連結部材30を操作することで、連結部材30の軸線方向に沿った2つの粘着マット付き固定部材25の距離を調節できる。各粘着マット付き固定部材25の固定部本体13には粘着マット20が貼着されているため、連結部材30を操作することで、連結部材30の軸線方向に沿った2つの粘着マット20の距離を調節できる。
【0040】
次に、粘着マット付き固定部材25の設置構造について説明する。固定具11が備える2つの粘着マット付き固定部材25のうち、下側の粘着マット付き固定部材25を第1固定部材251とし、上側の粘着マット付き固定部材25を第2固定部材252とする。そして、第2固定部材252は、ボルト状部材21の軸部23の先端が設置部Fの上面Faに対向するように、粘着マット20の第2面20bが固定対象物10の下面10aに貼着されている。したがって、第2固定部材252は、固定対象物10に貼着される固定対象物側固定部である。また、第1固定部材251は、連結部材30を介して第2固定部材252に連結されるとともに、粘着マット20によって設置部Fに設置されている。
【0041】
粘着マット付き固定部材25の設置構造では、第1固定部材251の粘着マット20の第2面20bが設置部Fの上面Faに貼着され、第2固定部材252の粘着マット20の第2面20bが固定対象物10の下面10aに貼着されている。また、粘着マット付き固定部材25の設置構造では、第1固定部材251の粘着マット20は、第1固定部材251のマット貼着面13aと設置部Fの上面Faとの間で所望する粘着力が発揮できるように厚さ方向に圧縮変形されている。同様に、第2固定部材252の粘着マット20は、第2固定部材252のマット貼着面13aと固定対象物10の下面10aとの間で所望する粘着力が発揮できるように厚さ方向に圧縮変形されている。本実施形態では、粘着マット20は、圧縮変形させる前の厚さに対し、50%~90%の厚さとなるように圧縮されている。
【0042】
なお、ボルト状部材21の頭部22は、固定部本体13のマット貼着面13aから突出しておらず、頭部端面22aは、マット貼着面13aより控えた位置に位置している。そして、粘着マット20の圧縮変形に伴い、粘着マット20の面方向に沿う部位のうち、頭部22の頭部端面22aに対向する部位は頭部収容部14cに入り込んでいる。また、頭部収容部14cに入り込んだ粘着マット20の一部は、頭部端面22aに貼着されている。したがって、粘着マット付き固定部材25において、頭部22の頭部端面22aは、粘着マット20が貼着可能な位置で頭部収容部14cに収容されている。
【0043】
粘着マット20の面方向に沿う部位のうち、頭部22の頭部端面22aと対向する部分と、頭部端面22aに非対向な部位とでは、圧縮量が異なる。粘着マット20のうち、頭部端面22aと対向する部位は、頭部端面22aに非対向な部位よりも圧縮量が少ない。本実施形態では、粘着マット20において、頭部端面22aに対向する部位は、頭部端面22aと下面10aとの間と、頭部端面22aと上面Faとの間に設けられる。また、粘着マット20において、頭部端面22aに非対向な部位は、マット貼着面13aと下面10aとの間と、マット貼着面13aと上面Faとの間に設けられる。
【0044】
そして、粘着マット20のうち、頭部端面22aに対向する部位は、圧縮前の厚さの50%~90%の厚さとなるように圧縮されている。粘着マット20のうち、頭部端面22aに対向する部位の圧縮量は、頭部端面22aに非対向な部位での圧縮量よりも小さい。
【0045】
粘着マット20のうち、頭部端面22aに対向する部位と、頭部端面22aに非対向な部位との圧縮量の差は10%以下が好ましい。つまり、粘着マット20において、頭部端面22aに対向する部位と、頭部端面22aに非対向な部位とで圧縮量の差が10%以下となるように、膨出部14の深さDが調節されている。
【0046】
図1又は図5に示すように、粘着マット付き固定部材25の設置構造において、第1固定部材251の突出部17は、先端縁19aを含む傾斜面19が設置部Fの上面Faから離隔している。このとき、傾斜面19は、圧縮変形された粘着マット20の厚さよりも小さい寸法で、上面Faから離隔している。
【0047】
また、第2固定部材252の突出部17は、先端縁19aを含む傾斜面19が固定対象物10の下面10aから離隔している。このとき、傾斜面19は、圧縮変形された粘着マット20の厚さよりも小さい寸法で、下面10aから離隔している。
【0048】
つまり、粘着マット付き固定部材25の設置構造が構築される前の状態で、傾斜面19が粘着マット20の第2面20bから控えることにより、設置構造が構築され、粘着マット20が圧縮されても傾斜面19と各面10a,Faとが離隔する。この離隔を利用することにより、粘着マット20がマット貼着面13aと各面10a,Faとの間で圧縮変形可能になっている。
【0049】
第1固定部材251において、粘着マット20の四つの側縁は、それぞれ傾斜面19の先端縁19aと設置部Fの上面Faとの間、及び凹部18から露出し、第2固定部材252において、粘着マット20の四つの側縁は、それぞれ傾斜面19の先端縁19aと固定対象物10の下面10aとの間、及び凹部18から露出する。
【0050】
次に、粘着マット付き固定部材25を有する固定具11の設置方法を説明する。
まず、固定具11において、連結部材30の軸線方向に沿った2つの粘着マット20の第2面20b間の距離を、固定対象物10の下面10aと設置部Fの上面Faとの離間距離より短くする。
【0051】
次に、設置部Fの上面Faにおいて、固定対象物10の下面10aより下方に固定具11を配置し、第1固定部材251の粘着マット20を上面Faに載置する。そして、連結部材30を回転させて、第2固定部材252を固定対象物10に接近させ、粘着マット20の第2面20bを固定対象物10の下面10aに貼着させる。さらに、連結部材30を回転させて第2固定部材252を固定対象物10に接近させる。すると、第1固定部材251の粘着マット20、及び第2固定部材252の粘着マット20がそれぞれ圧縮変形する。このとき、圧縮変形させる前の粘着マット20の厚さに対し、50%~90%の厚さとなるまで粘着マット20が圧縮変形するように、連結部材30の回転量を調節する。
【0052】
また、第1固定部材251の突出部17が設置部Fの上面Faから離隔し、第2固定部材252の突出部17が固定対象物10の下面10aから離隔するように、連結部材30の回転量を調節する。
【0053】
すると、第1固定部材251の粘着マット20の第2面20bが設置部Fの上面Faに貼着されるとともに、第2固定部材252の粘着マット20の第2面20bが固定対象物10の下面10aに貼着される。その結果、固定具11によって固定対象物10が設置部Fに固定される。同時に、固定具11及び粘着マット付き固定部材25の設置構造が構成される。
【0054】
なお、粘着マット20から固定部本体13を剥がす必要が生じる場合がある。このとき、固定部本体13のビード12a内に設けられた隙間Jに剥離剤を注入するのが好ましい。バール形状の工具の先端を凹部18に差し込み、工具の先端をマット貼着面13aに宛がって、工具を抉る。すると、粘着マット20から固定部本体13を剥がすことができる。
【0055】
次に、固定具11、粘着マット付き固定部材25及びその設置構造の作用を説明する。
さて、地震が発生すると、地震での揺れに伴い、設置部Fが揺れ、固定対象物10が揺れる。すると、揺れに伴い、粘着マット20には部分的に荷重が加わり、さらに圧縮変形する部分が生じる。このとき、粘着マット20の第2面20bの全面が各面10a,Faに貼着されている。このため、粘着マット20が各面10a,Faから剥がれることが抑制される。
【0056】
また、図7に示すように、粘着マット20がさらに圧縮されると、第1固定部材251においては、圧縮した部分に近い突出部17が設置部Fの上面Faに接触する。粘着マット20の部分的な圧縮により、第1固定部材251が傾くため、傾斜面19が設置部Fの上面Faに面接触する。第2固定部材252においても、圧縮した部分に近い突出部17が固定対象物10の下面10aに接触する。
【0057】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)粘着マット付き固定部材25の固定部本体13は膨出部14を備える。そして、膨出部14の貫通孔16aにボルト状部材21の軸部23を挿通しつつ、環状底部16にボルト状部材21の頭部22を接触させることで、頭部収容部14cにボルト状部材21の頭部22を収容できる。このため、頭部収容部14cがなく、マット貼着面13aに頭部22を直接接触させる場合と比べると、マット貼着面13aからの頭部22の突出量を減らすことができる。よって、頭部端面22aが粘着マット20の第2面20bから飛び出ないようにするため、粘着マット20に頭部22が貫通する孔を形成する必要がなくなり、粘着マット20の貼着面の面積を減らさない。その結果として、粘着マット20の粘着面の面積が減ることによる粘着力の低下を無くすことができる。
【0058】
(2)膨出部14の深さDを頭部22の頭部長さLより大きくした。このため、膨出部14の環状底部16にボルト状部材21の頭部22を接触させた状態では、頭部22の頭部端面22aを、固定部本体13のマット貼着面13aより控えた位置に位置させることができる。その結果、粘着マット20が頭部端面22aと各面10a,Faとの間で過剰に圧縮されることを抑制でき、粘着力の低下を抑制できる。
【0059】
(3)膨出部14の周壁15は、規制面15aを備え、頭部22の二面幅Wは、周壁15の規制面15a間の距離より僅かに短い。頭部22の対向する側面22bは、規制面15aに対向配置され、規制面15aと頭部22の側面22bとの接触により、ボルト状部材21の回転を規制できる。このため、例えば、ボルト状部材21の軸部23を連結部材30に螺合するためにボルト状部材21を回転させたとき、ボルト状部材21と固定部本体13を一体回転させることができる。
【0060】
(4)粘着マット付き固定部材25の設置構造では、粘着マット20の厚さが、圧縮前の厚さの50~90%の厚さとなるように、連結部材30の回転量を調整し、各面10a,Faに対する固定部本体13の接近量を調整する。このため、粘着マット20が過剰に圧縮されることによる素材破壊を回避し、粘着マット20の粘着力の低下を抑制できる。また、粘着マット20が圧縮されないことを原因として、固定具11による突っ張り力が弱まることを回避し、固定具11による固定機能の低下を抑制できる。
【0061】
(5)固定部本体13のマット貼着面13aと粘着マット20の第1面20aとの間には隙間Jが確保されている。この隙間Jに剥離剤を注入することで、粘着マット20から固定部本体13を剥離しやすくなる。
【0062】
(6)固定部本体13の補強のためにビード12aが設けられ、このビード12aの内側を、剥離剤を注入するための隙間Jとして利用できる。よって、固定部本体13にビード12aと、剥離剤注入のための部位とを別々に成形する場合と比べると、固定部12の製造が容易となる。
【0063】
(7)粘着マット20は、マット貼着面13aと各面10a,Faとの間で圧縮変形されているが、突出部17は各面10a,Faから離隔している。そして、地震の揺れによって粘着マット20が圧縮されたとき、突出部17が各面10a,Faに接触することにより、粘着マット20がそれ以上圧縮変形することを抑制できる。粘着マット20の過剰な圧縮変形に伴う粘着力の低下を抑制でき、固定具11によって固定対象物10を設置部Fに固定した状態を維持できる。
【0064】
(8)粘着マット20のうち、頭部端面22aに対向する部位は、圧縮前の厚さの50%~90%の厚さとなるように圧縮されている。このため、粘着マット20において頭部端面22aに対向する部位と、非対向の部位が生じても、粘着マット20の過剰な圧縮変形に伴う粘着力の低下を抑制できる。
【0065】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
(9)粘着マット付き固定部材25の設置構造では、粘着マット20は、マット貼着面13aと各面10a,Faとの間で圧縮変形されているが、突出部17は各面10a,Faから離隔している。このため、地震の揺れに伴う粘着マット20の圧縮変形が許容され、さらに、突出部17が各面10a,Faに接触することにより、粘着マット20がそれ以上圧縮変形することを抑制できる。したがって、突出部17により、粘着マット20の過剰な圧縮変形に伴う粘着力の低下を抑制でき、固定部12によって固定対象物10を設置部Fに固定した状態を維持できる。
【0066】
図8に示すように、粘着マット付き固定部材25において、頭部22の頭部端面22aが、マット貼着面13aより突出するように、膨出部14の深さDが設定されていてもよい。この場合、頭部長さLが深さDよりも大きくなる。
【0067】
そして、粘着マット付き固定部材25の設置構造においては、粘着マット20は、頭部端面22aと各面10a,Faとの間では、圧縮前の厚さの50%~90%の厚さとなるように圧縮されている。また、粘着マット20は、頭部端面22aと各面10a,Faとの間の部位は、マット貼着面13aと各面10a,Faとの間の部位よりも大きな圧縮量で圧縮されている。
【0068】
このように構成した場合、頭部収容部14cにボルト状部材21の頭部22を収容できる。このため、マット貼着面13aに頭部22を直接接触させる場合と比べると、マット貼着面13aからの頭部22の突出量を減らすことができる。よって、頭部22の頭部端面22aが粘着マット20の第2面20bから飛び出ないようにするため、粘着マット20に頭部22が貫通する孔を形成する必要がなくなり、粘着マット20の貼着面の面積が減らずに済む。その結果として、粘着マット20の粘着面の面積が減ることによる粘着力の低下を無くすことができる。
【0069】
また、粘着マット20において、頭部端面22aに対向する部位と、マット貼着面13aに対向する部位とで、圧縮される量を調整することで粘着マット20が過剰に圧縮されることによる素材破壊を回避し、粘着力の低下を抑制できる。
【0070】
図9に示すように、固定具11及び粘着マット付き固定部材25において、頭部22の頭部端面22aが、マット貼着面13aと同一面上に位置するように、膨出部14の深さDが設定されていてもよい。この場合、頭部長さLと深さDが同じになる。また、粘着マット20は、圧縮前の厚さの50%~90%の厚さとなるように圧縮され、頭部端面22aと各面10a,Faとの間の部位と、マット貼着面13aと各面10a,Faとの間の部位とで同じ圧縮量で圧縮されている。
【0071】
このように構成した場合、頭部22の頭部端面22aが粘着マット20の第2面20bから飛び出ないようにするため、粘着マット20に頭部22が貫通する孔を形成する必要がなくなり、粘着マット20の粘着面の面積が減らずに済む。その結果として、粘着マット20の貼着面の面積が減ることによる粘着力の低下を無くすことができる。
【0072】
○ 固定具11は、1つの粘着マット付き固定部材25と、連結部材30と、設置部材と、を備える構成としてもよい。この場合、設置部材は、固定対象物10及び設置部Fのうち、粘着マット付き固定部材25の粘着マット20が貼着されない方に設置される。また、設置部材は、連結部材30の雌ねじ孔30aに螺合される雄ねじを有する構成であれば、特に粘着マット付き固定部材25の構成に限定されない。
【0073】
○ 固定部12において、固定部本体13は突出部17を備えていなくてもよい。この場合、固定部本体13は凹部18も備えない。
○ 固定部本体13のビード12aはなくてもよい。この場合、粘着マット20との間に隙間Jは形成されない。
【0074】
図10又は図11に示すように、粘着マット付き固定部材25において、固定部12の粘着マット20の第2面20bに隙間形成凹部20cを設けてもよい。そして、粘着マット20の第2面20bを固定対象物10の下面10aや、設置部Fの上面Faに貼着したとき、それら第2面20bが貼着される面と隙間形成凹部20cとの間に隙間Jを形成してもよい。
【0075】
隙間形成凹部20cは、第2面20bの面方向に延びる溝状である。また、第2面20bに直交する方向から見た平面視では、隙間形成凹部20cは、面方向に直線状に延びている。また、平面視では、隙間形成凹部20cは、粘着マット20の周縁にまで延びており、粘着マット20の周縁において開口している。なお、隙間形成凹部20cの形状、隙間形成凹部20cの端が開口する位置は適宜変更してもよい。
【0076】
この場合、粘着マット付き固定部材25を有する固定具11において、固定対象物10の設置面となる設置部Fの上面Faには、第1固定部材251の粘着マット20が貼着されるとともに、第2固定部材252の粘着マット20が固定対象物10に貼着されている。したがって、第2固定部材252の粘着マット20は、固定対象物側粘着マットを構成し、第2固定部材252が固定対象物側固定部を構成している。
【0077】
固定具11が、固定対象物10の下面10aと、設置部Fの上面Faとに粘着マット20によって貼着されることにより、固定対象物10と設置部Fとの間には、第1固定部材251及び第2固定部材252の設置構造が構築されている。
【0078】
第1固定部材251の固定構造において、設置部Fの上面Faとマット貼着面13aとの間の粘着マット20は、隙間形成凹部20cによって隙間Jを確保した状態で圧縮変形されている。
【0079】
このように構成した場合、設置部Fの上面Faから粘着マット20を剥がす必要が生じる場合がある。このとき、設置部Fの上面Faに剥離剤を散液すると、隙間形成凹部20cによって形成された隙間Jに剥離剤が侵入する。
【0080】
そして、バール形状の工具の先端を凹部18に差し込み、工具の先端を、第1固定部材251のマット貼着面13aに宛がって、工具を抉る。すると、設置部Fの上面Faから粘着マット20を剥がすことができる。特に、隙間形成凹部20cによる隙間Jが確保されていないと、設置部Fの上面Faにおける粘着マット20の周囲に剥離剤を散液し、粘着マット20の周囲から剥がす必要がある。しかし、隙間形成凹部20cによる隙間Jを確保することで、粘着マット20の面内中央部にまで剥離剤を侵入させることができ、粘着マット20を剥がす作業が行いやすくなる。
【0081】
○ 固定部本体13のマット貼着面13aから粘着マット20に向けて突出する複数の凸部を設け、複数の凸部によってマット貼着面13aと粘着マット20の第1面20aとの間に隙間Jを形成してもよい。この場合、ビード12aは削除されてもよい。
【0082】
○ ビード12aに剥離剤の注入口を形成してもよい。
○ 粘着マット20の第1面20aに隙間形成凹部20cを形成し、固定部本体13のマット貼着面13aと、粘着マット20の第1面20aとの間に隙間Jを確保してもよい。
【0083】
○ 固定部12は樹脂製であってもよい。
○ 固定部本体13のビード12aはなくてもよい。この場合、粘着マット20との間に隙間Jは形成されない。
【0084】
○ 固定具11の一対の粘着マット付き固定部材25のうち、一方の粘着マット付き固定部材25の固定部12のみに突出部17を設け、他方の粘着マット付き固定部材25の固定部12には突出部17を設けなくてもよい。
【0085】
○ 膨出部14の周壁15は円筒状であり、規制面15aを備えていなくてもよい。
○ 周壁15を平面視六角形状にし、周壁15の内面の全てを頭部22の側面22bに対向させて頭部22を回り止めしてもよい。
【0086】
○ ボルト状部材21は、頭部22と軸部23が一体成形されたボルトであったが、頭部22をナットにより構成するとともに、軸部23を雄ねじ棒により構成し、雄ねじ棒にナットを螺合してボルト状部材21としてもよい。
【0087】
○ 固定部12の固定部本体13と、ボルト状部材21とを溶接によって一体化してもよい。
○ 固定部本体13のマット貼着面13aには、1枚の粘着マット20でなく、複数枚に分割された粘着マット20が貼着されていてもよい。
【0088】
○ 粘着マット付き固定部材25において、固定部本体13におけるマット貼着面13aの形状と粘着マット20の形状は一致していなくてもよく、例えば、マット貼着面13aは四角形状である一方で、粘着マット20は楕円形状であってもよい。
【0089】
○ 固定対象物10は、固定具11によって設置部Fに固定されるものでなくてもよい。具体的には、他の固定具によって設置部に固定された固定対象物10を、固定具11によって設置部Fにさらに固定してもよい。
【0090】
○ 固定部本体13は四角板状でなくてもよく、例えば、固定部本体13は円板状であったり、五角板状や六角板状であってもよい。
○ 突出部17は、固定部本体13の周縁以外の部位から突出していてもよく、例えば、固定部本体13の周縁よりも内側から突出していてもよい。
【0091】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)金属板の板厚方向の一方の面である表面にマット貼着面を有する固定部本体を備えるとともに、厚さ方向の両面に粘着面を有し、かつ厚さ方向に圧縮変形する板状の粘着マットが前記マット貼着面に貼着されており、前記固定部本体を前記板厚方向に貫通する貫通孔を有する固定部と、
頭部、及び雄ねじが形成された軸部を有するボルト状であり、前記貫通孔に前記軸部が挿通され、かつ当該軸部の先端が前記固定部本体の裏面側へ突出するボルト状部材と、を備え、
前記貫通孔は、前記固定部本体の前記裏面よりも膨出した膨出部の頂部に形成され、
前記膨出部の内側には、前記マット貼着面から前記裏面側へ凹む頭部収容部が形成されており、
前記粘着マットは、前記頭部収容部を覆うように前記マット貼着面に貼着されており、
前記頭部における前記粘着マットに対向する頭部端面は、前記粘着マットよりも前記裏面側に控えた位置であるとともに、圧縮変形により前記頭部収容部に入り込んだ前記粘着マットが貼着可能となる位置であることを特徴とする粘着マット付き固定部材。
【0092】
(ロ)板厚方向の一方の面である表面にマット貼着面を有する固定部本体を備えるとともに、厚さ方向の両面に粘着面を有しており、かつ前記厚さ方向に圧縮変形する板状の粘着マットが前記マット貼着面に貼着される固定部であって、
前記マット貼着面は、前記粘着マットより広い面積を有するとともに、前記粘着面と前記マット貼着面との間には、前記マット貼着面の面方向に沿う一部に隙間が形成されていることを特徴とする固定部。
【0093】
(ハ)前記隙間は、前記固定部本体を前記マット貼着面から凹ませることにより形成されている固定部。
(ニ)前記固定部本体は金属板状であり、前記隙間は前記固定部本体を前記マット貼着面とは反対側に突出させたビードにより形成されている固定部。
【0094】
(ホ)前記隙間に剥離剤を注入するための注入口が形成されている固定部。
(ヘ)板厚方向の一方の面である表面にマット貼着面を有する固定部本体を備えるとともに、厚さ方向の両面に粘着面を有しており、かつ前記厚さ方向に圧縮変形する板状の粘着マットが前記マット貼着面に貼着される固定部であって、
前記マット貼着面は、前記粘着マットより広い面積を有するとともに、前記粘着マットには、当該粘着マットが貼着される面との間に隙間を形成する隙間形成凹部が設けられていることを特徴とする固定部。
【0095】
(ト)前記隙間形成凹部は溝状である固定部。
(チ)前記隙間形成凹部は、前記粘着マットの周縁において開口している固定部。
(リ)固定対象物が設置部の設置面に固定された固定構造であって、前記設置面に上記(ロ)~(チ)のいずれか一項に記載の前記粘着マット付き固定部材の前記粘着マットが貼着されるとともに、前記設置面に貼着される前記固定部の前記固定部本体と連結され前記固定対象物に貼着される固定対象物側粘着マットを有する固定対象物側固定部が、前記固定対象物に貼着されていることを特徴とする固定構造。
【符号の説明】
【0096】
Fa…被貼着面としての上面、10a…被貼着面としての下面、11…固定具、12…固定部、13…固定部本体、13a…マット貼着面、13b…裏面、14…膨出部、14c…頭部収容部、15a…回転規制部としての対向面、16a…貫通孔、20…粘着マット、21…ボルト状部材、22…頭部、22a…頭部端面、22b…側面、23…軸部、25…粘着マット付き固定部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11