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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】固定具及び固定具の固定方法
(51)【国際特許分類】
   A47B 91/02 20060101AFI20231003BHJP
   A47B 97/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
A47B91/02
A47B97/00 E
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020104843
(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公開番号】P2021194386
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】堀 信夫
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-239223(JP,A)
【文献】特開2007-202631(JP,A)
【文献】特開2007-75264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 91/02
A47B 97/00
F16B 45/00-47/00
B65G 1/10
H05K 5/00-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定対象物の第1被貼着面に第1粘着マットを貼着するとともに、前記第1被貼着面に交差する前記固定対象物の第2被貼着面に第2粘着マットを貼着することで前記固定対象物に固定される固定具であって、
前記第1被貼着面に貼着される前記第1粘着マットを有する第1固定部本体、及び第1組付部を有する第1固定部と、
前記第2被貼着面に貼着される前記第2粘着マットを有する第2固定部本体、及び第2組付部を有する第2固定部と、
を備え、
前記第1固定部は、前記第1粘着マットの厚さ方向の第1面が貼着される第1マット貼着面を前記第1固定部本体の板厚方向の第1面に備えるとともに、前記第1粘着マットの厚さ方向の第2面よりも突出し、かつ前記第2被貼着面に接触させる位置決め面を有する位置決め部を備え、
前記第2固定部は、前記第2粘着マットの厚さ方向の第1面が貼着される第2マット貼着面を前記第2固定部本体の板厚方向の第1面に備え、
前記第1組付部と前記第2組付部は、相互に組付けた状態で前記第1固定部と前記第2固定部の相対的な接離方向への移動を可能とし、かつ前記接離方向は前記位置決め面に直交する方向と一致することを特徴とする固定具。
【請求項2】
固定対象物の第1被貼着面に第1粘着マットを貼着するとともに、前記第1被貼着面に交差する前記固定対象物の第2被貼着面に第2粘着マットを貼着することで前記固定対象物に固定される固定具であって、
前記第1被貼着面に貼着される前記第1粘着マットを有する第1固定部本体、及び第1組付部を有する第1固定部と、
前記第2被貼着面に貼着される前記第2粘着マットを有する第2固定部本体、及び第2組付部を有する第2固定部と、
を備え、
前記第1固定部は、前記第1粘着マットの厚さ方向の第1面が貼着される第1マット貼着面を前記第1固定部本体の板厚方向の第1面に備えるとともに、前記第1粘着マットの厚さ方向の第2面よりも突出し、かつ前記第2被貼着面に接触させる位置決め面を有する位置決め部を備え、
前記第2固定部は、前記第2粘着マットの厚さ方向の第1面が貼着される第2マット貼着面を前記第2固定部本体の板厚方向の第1面に備え、
前記第1組付部と前記第2組付部は、相互に組付けた状態で前記第1固定部と前記第2固定部の相対的な接離方向への移動を可能とし、かつ前記接離方向は前記位置決め面に直交する方向と一致し、
前記第1組付部と前記第2組付部を相互に組付けた状態における前記第1固定部と前記第2固定部の相対的な前記接離方向への移動量は、前記第2粘着マットの厚さよりも大きいことを特徴とする固定具。
【請求項3】
前記第2組付部の前記接離方向への寸法は、前記第2粘着マットの厚さよりも大きく、かつ前記第2組付部は、前記第2粘着マットの厚さ方向の第2面よりも突出している請求項1又は請求項2に記載の固定具。
【請求項4】
前記第1固定部と前記第2固定部を連結固定する固定装置を備え、
前記固定装置は、ねじ頭及び雄ねじ部を有するねじ部材と、
前記位置決め部を前記接離方向に貫通する雌ねじ孔と、
前記第2固定部本体を前記接離方向に貫通する挿通孔と、を有し、
前記ねじ頭は前記第2固定部本体における前記挿通孔の周囲に接触し、前記雌ねじ孔に対する前記雄ねじ部の螺進方向は、前記第2固定部を前記第1固定部に近接させる方向である請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載の固定具。
【請求項5】
前記ねじ部材は、前記第2固定部本体が前記位置決め部に接触した位置が最大ねじ込み状態とされ、前記雄ねじ部の軸線方向への長さは、前記最大ねじ込み状態で前記雄ねじ部の先端が前記位置決め面よりも突出しない長さに設定されている請求項4に記載の固定具。
【請求項6】
前記第1固定部には、前記固定対象物の前記第1被貼着面と対面する対向面に接触することで接合される接合部材を有する第3固定部が連結部材により連結されており、
前記連結部材は、前記第1固定部と前記第3固定部を相対的に離間させる移動装置を備える請求項1~請求項5のうちいずれか一項に記載の固定具。
【請求項7】
固定対象物の第1被貼着面に第1粘着マットを貼着するとともに、前記第1被貼着面に交差する前記固定対象物の第2被貼着面に第2粘着マットを貼着することで前記固定対象物に固定される固定具の固定方法であって、
前記固定具は、前記第1被貼着面に貼着される前記第1粘着マットを有する第1固定部本体を有する第1固定部と、
前記第2被貼着面に貼着される前記第2粘着マットを有する第2固定部本体を有する第2固定部と、
前記第1固定部と前記第2固定部を連結固定する固定装置と、
を備え、
前記第1固定部は、前記第1粘着マットの厚さ方向の第1面が貼着される第1マット貼着面を前記第1固定部本体の板厚方向の第1面に備えるとともに、前記第1粘着マットの厚さ方向の第2面よりも突出し、かつ前記第2被貼着面に接触させる位置決め面を有する位置決め部を備え、
前記第1固定部の前記位置決め面を前記第2被貼着面に接触させた状態で、前記第1固定部を前記第1被貼着面に近接させて前記第1粘着マットを前記第1被貼着面に貼着する第1貼着工程と、
前記第1貼着工程の後に行われ、
前記第2固定部の前記第2粘着マットを前記第2被貼着面に貼着させる第2貼着工程と、前記固定装置によって前記第1固定部と前記第2固定部を連結固定する連結固定工程と、を有することを特徴とする固定具の固定方法。
【請求項8】
前記第1固定部は第1組付部を備えるとともに、前記第2固定部は第2組付部を備え、前記第1組付部と前記第2組付部は相互に組付けられるとともに相互に組付けた状態では前記第1固定部と前記第2固定部とは相対的な接離方向への移動が可能であり、かつ前記接離方向は前記位置決め面に直交する方向と一致し、
前記第1貼着工程の後、前記組付けた状態の前記第2固定部を前記接離方向に沿って前記第1固定部に近接させて前記第2貼着工程を行う請求項7に記載の固定具の固定方法。
【請求項9】
前記第1固定部には、前記固定対象物の前記第1被貼着面と対面する設置面に接触することで接合される接合部材を有する第3固定部が連結部材により連結されており、
前記連結部材は、前記第1固定部と前記第3固定部を相対的に離間移動させる移動装置を備えており、
前記第1貼着工程の後に行われ、
前記連結部材を操作し、前記移動装置によって前記第3固定部を前記第1固定部に対して離間させて、前記第1粘着マット及び前記接合部材をそれぞれ相互に離間する方向に付勢した状態で前記接合部材を前記設置面に接合する接合工程を有する請求項7又は請求項8に記載の固定具の固定方法。
【請求項10】
前記固定装置は、ねじ頭及び雄ねじ部を有するねじ部材と、
前記位置決め部を貫通する雌ねじ孔と、
前記第2固定部本体を貫通する挿通孔と、を有し、
前記連結固定工程では、前記ねじ頭を前記第2固定部本体における前記挿通孔の周囲に接触させつつ前記雄ねじ部を前記雌ねじ孔に螺合することにより、当該ねじ部材によって前記第2固定部を前記第2被貼着面に向けて押圧して前記第2被貼着面に前記第2粘着マットを圧着させる請求項7~請求項9のうちいずれか一項に記載の固定具の固定方法。
【請求項11】
前記連結固定工程では、前記雌ねじ孔に対する前記ねじ部材の螺合により前記第2粘着マットを圧縮変形させる請求項10に記載の固定具の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定具及び固定具の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地震発生時に、家具等の固定対象物の転倒を抑止するため、固定対象物は、固定具を用いて設置部に固定されている(例えば、特許文献1参照)。図17に示すように、特許文献1の固定具90は、床面100に貼着される第1粘着手段91と、固定対象物としての被固定物101の底面101aに貼着される第2粘着手段92と、被固定物101の垂直面101bに貼着される第3粘着手段93と、を備えている。
【0003】
第1粘着手段91は、第1水平支持板94の下面に取り付けられ、第2粘着手段92は第2水平支持板95の上面に取り付けられる。また、第3粘着手段93は、第3垂直支持板96における被固定物101の垂直面101bに対向する面に取り付けられる。
【0004】
第1水平支持板94は、当該第1水平支持板94の端縁から立ち上がる取付部94aを備えるとともに、取付部94aにはねじ穴94bが形成されている。第2水平支持板95は、当該第2水平支持板95の端縁から立ち上がる取付部95aを備えるとともに、取付部95aにはねじ穴95bが形成されている。第3垂直支持板96は、第1水平支持板94用の長孔と第2水平支持板95用の長孔とを有する。
【0005】
第3垂直支持板96の長孔に挿通したねじ97を第1水平支持板94のねじ穴94bに螺合することにより、第1水平支持板94が第3垂直支持板96に取り付けられる。また、第3垂直支持板96の長孔に挿通したねじ98を第2水平支持板95のねじ穴95bに螺合することにより、第2水平支持板95が第3垂直支持板96に取り付けられる。長孔に対するねじ97,98の螺合位置を調節することにより、第3垂直支持板96に対する第1水平支持板94及び第2水平支持板95の高さ調節を行うことができる。
【0006】
特許文献1の固定具90により被固定物101を床面100に固定するには、まず、第1水平支持板94の第1粘着手段91を床面100に貼着する。第3垂直支持板96を第1水平支持板94及び第2水平支持板95から外した後、第3垂直支持板96を垂直面101bに近付け、第3粘着手段93を垂直面101bに貼着させる。次に、第3垂直支持板96と、第2水平支持板95とを高さ調節可能に、ねじ97,98によって一体に組付ける。次に、第2水平支持板95を被固定物101の底面101aに向けて持ち上げ、第2粘着手段92を底面101aに貼着させる。その後、第3垂直支持板96と、第1水平支持板94及び第2水平支持板95とをねじ97,98によって固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4804844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1の固定具90は、第1水平支持板94及び第2水平支持板95とは別体とされた第3垂直支持板96の第3粘着手段93を被固定物101の垂直面101bに貼着し、貼着した後に、第3垂直支持板96と、第1水平支持板94及び第2水平支持板95とを一体に組付ける。このため、垂直面101bに対する第3粘着手段93の貼着位置が所望する位置からずれていると、第3垂直支持板96と、第1水平支持板94及び第2水平支持板95とをねじ97,98によって固定することが不可能になる。
【0009】
また、床面100に対する第1粘着手段91の貼着位置が所望する位置からずれていると、底面101aに対する第2粘着手段92の貼着位置も所望する位置からずれてしまい、所望する位置への固定具90の設置が不可能になる。したがって、特許文献1の固定具90は、所望する位置への固定具90の設置が難しいという問題である。
【0010】
本発明の目的は、固定対象物に対し容易に設置できる固定具及び固定具の固定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するための固定具は、固定対象物の第1被貼着面に第1粘着マットを貼着するとともに、前記第1被貼着面に交差する前記固定対象物の第2被貼着面に第2粘着マットを貼着することで前記固定対象物に固定される固定具であって、前記第1被貼着面に貼着される前記第1粘着マットを有する第1固定部本体、及び第1組付部を有する第1固定部と、前記第2被貼着面に貼着される前記第2粘着マットを有する第2固定部本体、及び第2組付部を有する第2固定部と、を備え、前記第1固定部は、前記第1粘着マットの厚さ方向の第1面が貼着される第1マット貼着面を前記第1固定部本体の板厚方向の第1面に備えるとともに、前記第1粘着マットの厚さ方向の第2面よりも突出し、かつ前記第2被貼着面に接触させる位置決め面を有する位置決め部を備え、前記第2固定部は、前記第2粘着マットの厚さ方向の第1面が貼着される第2マット貼着面を前記第2固定部本体の板厚方向の第1面に備え、前記第1組付部と前記第2組付部は、相互に組付けた状態で前記第1固定部と前記第2固定部の相対的な接離方向への移動を可能とし、かつ前記接離方向は前記位置決め面に直交する方向と一致することを要旨とする。
【0012】
上記問題点を解決するための固定具は、固定対象物の第1被貼着面に第1粘着マットを貼着するとともに、前記第1被貼着面に交差する前記固定対象物の第2被貼着面に第2粘着マットを貼着することで前記固定対象物に固定される固定具であって、前記第1被貼着面に貼着される前記第1粘着マットを有する第1固定部本体、及び第1組付部を有する第1固定部と、前記第2被貼着面に貼着される前記第2粘着マットを有する第2固定部本体、及び第2組付部を有する第2固定部と、を備え、前記第1固定部は、前記第1粘着マットの厚さ方向の第1面が貼着される第1マット貼着面を前記第1固定部本体の板厚方向の第1面に備えるとともに、前記第1粘着マットの厚さ方向の第2面よりも突出し、かつ前記第2被貼着面に接触させる位置決め面を有する位置決め部を備え、前記第2固定部は、前記第2粘着マットの厚さ方向の第1面が貼着される第2マット貼着面を前記第2固定部本体の板厚方向の第1面に備え、前記第1組付部と前記第2組付部は、相互に組付けた状態で前記第1固定部と前記第2固定部の相対的な接離方向への移動を可能とし、かつ前記接離方向は前記位置決め面に直交する方向と一致し、前記第1組付部と前記第2組付部を相互に組付けた状態における前記第1固定部と前記第2固定部の相対的な前記接離方向への移動量は、前記第2粘着マットの厚さよりも大きいことを要旨とする。
【0013】
固定具について、前記第2組付部の前記接離方向への寸法は、前記第2粘着マットの厚さよりも大きく、かつ前記第2組付部は、前記第2粘着マットの厚さ方向の第2面よりも突出していてもよい。
【0014】
固定具について、前記第1固定部と前記第2固定部を連結固定する固定装置を備え、前記固定装置は、ねじ頭及び雄ねじ部を有するねじ部材と、前記位置決め部を前記接離方向に貫通する雌ねじ孔と、前記第2固定部本体を前記接離方向に貫通する挿通孔と、を有し、前記ねじ頭は前記第2固定部本体における前記挿通孔の周囲に接触し、前記雌ねじ孔に対する前記雄ねじ部の螺進方向は、前記第2固定部を前記第1固定部に近接させる方向であってもよい。
【0015】
固定具について、前記ねじ部材は、前記第2固定部本体が前記位置決め部に接触した位置が最大ねじ込み状態とされ、前記雄ねじ部の軸線方向への長さは、前記最大ねじ込み状態で前記雄ねじ部の先端が前記位置決め面よりも突出しない長さに設定されていてもよい。
【0016】
固定具について、前記第1固定部には、前記固定対象物の前記第1被貼着面と対面する対向面に接触することで接合される接合部材を有する第3固定部が連結部材により連結されており、前記連結部材は、前記第1固定部と前記第3固定部を相対的に離間させる移動装置を備えていてもよい。
【0017】
上記問題点を解決するための固定具の固定方法は、固定対象物の第1被貼着面に第1粘着マットを貼着するとともに、前記第1被貼着面に交差する前記固定対象物の第2被貼着面に第2粘着マットを貼着することで前記固定対象物に固定される固定具の固定方法であって、前記固定具は、前記第1被貼着面に貼着される前記第1粘着マットを有する第1固定部本体を有する第1固定部と、前記第2被貼着面に貼着される前記第2粘着マットを有する第2固定部本体を有する第2固定部と、前記第1固定部と前記第2固定部を連結固定する固定装置と、を備え、前記第1固定部は、前記第1粘着マットの厚さ方向の第1面が貼着される第1マット貼着面を前記第1固定部本体の板厚方向の第1面に備えるとともに、前記第1粘着マットの厚さ方向の第2面よりも突出し、かつ前記第2被貼着面に接触させる位置決め面を有する位置決め部を備え、前記第1固定部の前記位置決め面を前記第2被貼着面に接触させた状態で、前記第1固定部を前記第1被貼着面に近接させて前記第1粘着マットを前記第1被貼着面に貼着する第1貼着工程と、前記第1貼着工程の後に行われ、前記第2固定部の前記第2粘着マットを前記第2被貼着面に貼着させる第2貼着工程と、前記固定装置によって前記第1固定部と前記第2固定部を連結固定する連結固定工程と、を有することを要旨とする。
【0018】
固定具の固定方法について、前記第1固定部は第1組付部を備えるとともに、前記第2固定部は第2組付部を備え、前記第1組付部と前記第2組付部は相互に組付けられるとともに相互に組付けた状態では前記第1固定部と前記第2固定部とは相対的な接離方向への移動が可能であり、かつ前記接離方向は前記位置決め面に直交する方向と一致し、前記第1貼着工程の後、前記組付けた状態の前記第2固定部を前記接離方向に沿って前記第1固定部に近接させて前記第2貼着工程を行ってもよい。
【0019】
固定具の固定方法について、前記第1固定部には、前記固定対象物の前記第1被貼着面と対面する設置面に接触することで接合される接合部材を有する第3固定部が連結部材により連結されており、前記連結部材は、前記第1固定部と前記第3固定部を相対的に離間移動させる移動装置を備えており、前記第1貼着工程の後に行われ、前記連結部材を操作し、前記移動装置によって前記第3固定部を前記第1固定部に対して離間させて、前記第1粘着マット及び前記接合部材をそれぞれ相互に離間する方向に付勢した状態で前記接合部材を前記設置面に接合する接合工程を有していてもよい。
【0020】
固定具の固定方法について、前記固定装置は、ねじ頭及び雄ねじ部を有するねじ部材と、前記位置決め部を貫通する雌ねじ孔と、前記第2固定部本体を貫通する挿通孔と、を有し、前記連結固定工程では、前記ねじ頭を前記第2固定部本体における前記挿通孔の周囲に接触させつつ前記雄ねじ部を前記雌ねじ孔に螺合することにより、当該ねじ部材によって前記第2固定部を前記第2被貼着面に向けて押圧して前記第2被貼着面に前記第2粘着マットを圧着させてもよい。
【0021】
固定具の固定方法について、前記連結固定工程では、前記雌ねじ孔に対する前記ねじ部材の螺合により前記第2粘着マットを圧縮変形させてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、固定対象物に対し容易に設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態の固定具を示す断面図。
図2】実施形態の固定具を示す斜視図。
図3】実施形態の固定具を示す分解斜視図。
図4】実施形態の固定具を示す第3固定部側から示す斜視図。
図5】第1固定部を示す斜視図。
図6】第2固定部を示す斜視図。
図7】位置決め部周辺を示す拡大断面図。
図8】(a)は第1固定部と第2固定部を示す断面図、(b)は第3固定部を示す断面図。
図9】第3固定部を設置部に設置した状態を示す側面図。
図10】第1固定部及び第2固定部を固定対象物に近接させた状態を示す側面図。
図11】第2固定部の第2粘着マットを第2被貼着面に貼着した状態の側面図。
図12】別例の固定具を示す部分断面図。
図13】別例の固定具を示す部分断面図。
図14】別例の固定具を示す部分斜視図。
図15】別例の固定具を第3粘着マットから示す斜視図。
図16】別例の固定具を示す断面図。
図17】背景技術を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、固定具及び固定具の固定方法を具体化した一実施形態を図1図11にしたがって説明する。
図1に示すように、固定具11は、固定対象物10と、当該固定対象物10が設置される設置部Fとの間に介在され、固定対象物10を設置部Fに固定する。固定対象物10としては、印刷装置、複合機、家具、テレビ、タンス等が挙げられ、設置部Fとしては床、机、天井等が挙げられる。本実施形態では、固定対象物10は印刷装置であり、設置部Fは床である。また、設置部Fの上面Faは固定具11の設置面となる。
【0025】
固定具11は、固定対象物10の下面となる第1被貼着面10aと、固定対象物10の側面となる第2被貼着面10bと、設置部Fの上面Faとに第1~第3粘着マット121~123によって貼着される。なお、固定対象物10の第2被貼着面10bは、第1被貼着面10aに対し交差する面である。本実施形態では、第2被貼着面10bは第1被貼着面10aに直交する側面である。また、固定対象物10の第1被貼着面10aと、設置部Fの上面Faは上下方向に対向し、上面Faは、第1被貼着面10aと対面する対向面である。
【0026】
固定具11は、固定対象物10の第1被貼着面10aに第1粘着マット121を貼着するとともに、固定対象物10の第2被貼着面10bに第2粘着マット122を貼着することで固定対象物10に固定される。
【0027】
固定具11は、第1被貼着面10aに貼着される第1粘着マット121を有する第1固定部21と、第2被貼着面10bに貼着される第2粘着マット122を有する第2固定部31と、上面Faに貼着される第3粘着マット123を有する第3固定部41と、を有する。さらに、固定具11は、第1固定部21と第3固定部41を連結する連結部材50と、第1固定部21と第2固定部31を連結固定する固定装置59と、を有する。
【0028】
第1粘着マット121、第2粘着マット122、及び第3粘着マット123は、厚さ方向の両面に粘着面を有する。第1~第3粘着マット121~123は、粘着性を備えるゲル状の超軟質ウレタンにより形成される。また、第1~第3粘着マット121~123は、圧縮前の厚さの50%~90%の厚さで圧縮されることで、最適の粘着力を発揮するものである。第1粘着マット121は厚さ方向の一方の粘着面に第1面121aを備え、厚さ方向の他方の粘着面に第2面121bを備える。第2粘着マット122は厚さ方向の一方の粘着面に第1面122aを備え、厚さ方向の他方の粘着面に第2面122bを備える。第3粘着マット123は厚さ方向の一方の粘着面に第1面123aを備え、厚さ方向の他方の粘着面に第2面123bを備える。
【0029】
図1図5に示すように、第1固定部21は、金属板製の第1固定部本体22と、第1固定部本体22に一体の第1組付部23と、第1固定部本体22に一体の位置決め部28と、を有する。第1固定部本体22は、長四角板状である。第1固定部本体22は、板厚方向の第1面に長四角形状の第1マット貼着面22aを備え、板厚方向の第2面に長四角形状の裏面22bを備える。第1マット貼着面22aは、第1粘着マット121の第1面121aと一致する長四角形状であるとともに、第1面121aより広い面積を有する。第1マット貼着面22aには、第1粘着マット121の厚さ方向の第1面121aが貼着されている。したがって、第1固定部21は、第1粘着マット121を有する第1固定部本体22を有する。
【0030】
第1組付部23は、第1マット貼着面22aの長手方向の両側に設けられている。第1組付部23は、第1固定部本体22を形成する金属板の長手方向の両側部を折り曲げることで形成されている。具体的には、第1組付部23は、金属板の長手方向の両側部を、第1固定部本体22の裏面22bに対して間隔を空けて対向するまで折り曲げることで形成されている。第1組付部23の内側にはガイド溝23aが形成されている。第1組付部23及びガイド溝23aは、第1固定部本体22の短手方向に長手が連続して延びる形状である。
【0031】
第1固定部21は、第1固定部本体22の裏面22bよりも膨出する膨出部25を有する。膨出部25は、筒状に突出する周壁26と、周壁26の突出方向の先端に位置する環状底部27とを有する。環状底部27は、膨出部25の頂部に位置している。そして、周壁26と環状底部27によって囲まれる空間は、第1マット貼着面22aから凹むとともに、凹んだ空間には頭部収容部25cが画成されている。
【0032】
第1マット貼着面22aに対する直交方向に沿って第1固定部本体22を見た平面視では、周壁26は円形状である。第1固定部21は、環状底部27を貫通する貫通孔27aを有する。貫通孔27aは、第1固定部本体22の板厚方向に貫通する。貫通孔27aは、第1固定部本体22の裏面22b側に膨出した膨出部25の頂部に形成されている。第1固定部本体22の板厚方向に沿う第1マット貼着面22aから環状底部27までの寸法を膨出部25の深さDとする。
【0033】
膨出部25には、ボルト状部材12が挿通されている。ボルト状部材12は、六角柱状の頭部13と、頭部13から突出する軸部14とを有する。軸部14の外周面には雄ねじが形成されている。ボルト状部材12の頭部13は、頭部収容部25cに収容されている。また、頭部13において、軸部14の突出する端面は、膨出部25の頂部である環状底部27に接触している。
【0034】
また、ボルト状部材12の軸線方向への頭部13の寸法を頭部長さLとする。本実施形態では、膨出部25の深さDは、頭部長さLよりも浅くなっている。そして、頭部13における第1マット貼着面22a側の面である頭部端面13aは、第1マット貼着面22aよりも突出している。
【0035】
ボルト状部材12の軸部14は、貫通孔27aを貫通している。このため、軸部14は、第1固定部本体22の裏面22b側へ突出している。つまり、ボルト状部材12は、第1固定部本体22を板厚方向に貫通する貫通孔27aに、軸部14の先端が裏面22b側へ突出するように挿通されている。軸部14には、ナット15が螺合されている。ナット15と頭部13によって環状底部27が挟まれるとともに、第1固定部本体22にボルト状部材12が一体化されている。
【0036】
図2図5又は図7に示すように、第1固定部21は、第1固定部本体22の一対の長側縁のうちの一方から突出する位置決め部28を有する。位置決め部28は、第1粘着マット121の厚さ方向の第2面121bよりも突出している。位置決め部28は、第1固定部本体22を形成する金属板を折り曲げて形成されている。位置決め部28は長四角板状である。位置決め部28の板厚方向の両面は、第1固定部本体22の第1マット貼着面22aに直交する。また、位置決め部28の長手は、第1固定部本体22の長手方向に延びる。位置決め部28の短手は、第1マット貼着面22aに対する直交方向に延びる。位置決め部28は、第1固定部本体22の一方の長側縁の中央部に配置されている。
【0037】
位置決め部28は、板厚方向の両面のうち、第1マット貼着面22aに連続する面に位置決め面28aを有する。位置決め面28aは、第1固定部本体22の第1マット貼着面22a及び裏面22bに直交する。上記したように、第1組付部23及びガイド溝23aの長手は、第1固定部本体22の短手方向に延びるため、第1組付部23及びガイド溝23aは、位置決め面28aに直交する方向に長手が延びる形状である。
【0038】
また、位置決め部28は、裏面22bに連続する面に立設面28bを有する。位置決め部28は、立設面28bの長手方向の中央部に環状の孔形成部28cを有する。
位置決め部28は、孔形成部28c及び位置決め部28を板厚方向に貫通する雌ねじ孔28dを有する。また、位置決め部28は、立設面28bにおける長手方向の両側にリブ28eを有する。一対のリブ28eは、孔形成部28cを長手方向の両側から挟む。立設面28bからの孔形成部28cの突出高さと、リブ28eの突出高さは同じである。
【0039】
図4又は図5に示すように、第1固定部21は、第1固定部本体22の第1マット貼着面22aから裏面22bに向けて突出するビード24を備える。ビード24は、第1固定部21を補強する。ビード24は、第1固定部本体22を第1マット貼着面22aから凹ませることにより形成されており、第1固定部本体22を第1マット貼着面22aとは反対側に突出させて形成されている。ビード24は、第1固定部本体22の第1マット貼着面22aから裏面22bに向けて突出する。ビード24の長手は、第1固定部本体22の長手方向に延びる。
【0040】
ビード24は、第1固定部本体22の長手方向に真っ直ぐ延びる。そして、第1固定部本体22に位置するビード24により、第1粘着マット121の第1面121aと第1マット貼着面22aとの間には隙間Jが形成されている。
【0041】
図4又は図6に示すように、第2固定部31は、金属板製の第2固定部本体32と、第2固定部本体32に一体の第2組付部33と、を有する。第2固定部本体32は、長四角板状の金属板製である。第2固定部本体32は、板厚方向の第1面に第2マット貼着面32aを備え、板厚方向の第2面に裏面32bを備える。第2マット貼着面32aは、第2粘着マット122の第1面122aより広い面積を有する。そして、第2マット貼着面32aには第2粘着マット122の第1面122aが貼着されている。したがって、第2固定部31は、第2粘着マット122を有する第2固定部本体32を有する。つまり、第2固定部31は、第2粘着マット122の厚さ方向の第1面122aが貼着される第2マット貼着面32aを、第2固定部本体32の板厚方向の第1面に備える。
【0042】
図8(a)に示すように、第2マット貼着面32aは、第2固定部本体32の第1面を形成する長四角形から上記した位置決め部28が重なる領域を除いた形状である。つまり、第2マット貼着面32aに直交する方向から第2マット貼着面32aを見た側面視では、第2マット貼着面32aは位置決め部28を避けた位置に設けられている。
【0043】
第2固定部本体32の第1面のうち、位置決め部28と重なる領域は接触面32dを構成している。接触面32dは、第2固定部本体32の第1面のうち、第2組付部33寄りの一方の長側縁の中央部に位置している。第2固定部本体32を第2マット貼着面32aに直交する方向から見て、接触面32dは長四角形状である。したがって、第2マット貼着面32aは、第2固定部本体32の第2マット貼着面32aを形成する長四角形の一方の長側縁から長四角形状に凹む部分を有する形状である。
【0044】
第2マット貼着面32aに貼着される第2粘着マット122は、第2マット貼着面32aに応じた形状である。第2粘着マット122は、当該第2粘着マット122の長手方向に延びる一対の長側縁のうちの一方の長側縁の中央部から凹む切り欠き部122cを備える。第2粘着マット122の第2面122bに直交する方向から第2粘着マット122を見て、切り欠き部122cは長四角形状に凹む。第2固定部31において、接触面32dは、第2粘着マット122の切り欠き部122cから露出している。
【0045】
図3又は図6に示すように、第2固定部31は、接触面32dの長手方向の中央に位置する挿通孔32cを有する。挿通孔32cは、第2固定部本体32を板厚方向に貫通し、かつ第2固定部本体32の短手方向に長手が延びる長孔である。
【0046】
第2組付部33は、第2固定部本体32の長手方向に延びる一対の長側縁のうちの一方の長側縁から突出するように設けられている。第2組付部33は、第2固定部本体32を形成する金属板を短手方向の途中から折り曲げることで形成されている。具体的には、第2組付部33は、金属板の短手方向の途中を、第2マット貼着面32a及び裏面32bに対して直交するよう折り曲げることで形成されている。
【0047】
第2組付部33の板厚方向の第1面33aは、第2マット貼着面32aに連続する面であり、第2組付部33の板厚方向の第2面33bは、裏面32bに連続する面である。また、第2組付部33の第1面33aは、第2組付部33の板厚方向において第2粘着マット122に向く面である。
【0048】
また、第2組付部33の長手は第2固定部本体32の長手方向に延び、第2組付部33の短手は、第2固定部本体32の第2マット貼着面32a及び裏面32bに直交する方向に延びる。第2組付部33の長手方向の両側には、第1組付部23のガイド溝23aに挿入されるガイド凸部33cが形成されている。ガイド凸部33cは、第2組付部33の長手方向の両側を屈曲させることで形成されている。
【0049】
第2マット貼着面32aに直交する方向への第2組付部33の寸法は、第2粘着マット122の厚さよりも大きい。また、第2組付部33は、第2固定部本体32から、当該第2固定部本体32における第2マット貼着面32a側に延びるように形成されている。このため、第2組付部33は、第2粘着マット122の厚さ方向に沿って第2面122bよりも突出している。
【0050】
第2固定部31は、第2固定部本体32の第2マット貼着面32aから裏面32bに向けて突出するとともに、第2組付部33の第1面33aから第2面33bに向けて突出するビード34を備える。ビード34は、第2固定部31を補強する。第2固定部本体32に位置するビード34は、第2固定部本体32を第2マット貼着面32aから凹ませることにより形成されており、第2固定部本体32を第2マット貼着面32aとは反対側に突出させて形成されている。また、第2組付部33に位置するビード34は、第2組付部33を第1面33aから凹ませることにより形成されており、第2組付部33を第1面33aとは反対側となる第2面33bに向けて突出させて形成されている。ビード34は、第2固定部本体32及び第2組付部33の長手方向の両側に設けられている。ビード34は、第2固定部本体32及び第2組付部33の両方に亘るように連続している。
【0051】
ビード34は、第2固定部本体32及び第2組付部33の短手方向に真っ直ぐ延びる。そして、第2固定部本体32に位置するビード34により、第2粘着マット122の第1面122aと第2マット貼着面32aとの間には隙間Jが形成されている。
【0052】
第2固定部31は、第2組付部33における第2固定部本体32からの突出方向の先端に逃げ部35を有する。逃げ部35は、第2組付部33の長手方向の中央部を凹ませて形成されている。
【0053】
図4に示すように、第2組付部33のガイド凸部33cを、第1組付部23のガイド溝23aに挿入すると、第1組付部23によって第2組付部33の長手方向の両端部を支持でき、第1固定部21と第2固定部31を相互に組付けることができる。そして、第1組付部23と第2組付部33の相互の組付けにより、第1固定部21によって第2固定部31が支持される。
【0054】
第1組付部23と第2組付部33は、相互に組付けた状態で第1固定部21と第2固定部31の相対的に接離する方向のみの移動を可能とする。上記したように、第1組付部23及びガイド溝23aの長手は位置決め部28の位置決め面28aに直交する方向に延びる。
【0055】
そして、第2組付部33のガイド凸部33cは、ガイド溝23aの長手に沿って移動が可能である。このため、第1組付部23と第2組付部33の相互の組付けにより、第1固定部21と第2固定部31とは、位置決め面28aに直交する方向へ相対的に移動できる。以下、第1固定部21と第2固定部31が相対的に接離する方向を接離方向Yとする。
【0056】
位置決め面28aに直交する方向は接離方向Yと一致する。なお、接離方向Yは、位置決め部28の板厚方向と一致し、第2固定部本体32の板厚方向に一致する。接離方向Yへの第2組付部33の寸法は、第2粘着マット122の厚さよりも大きくなっている。
【0057】
第1組付部23と第2組付部33を相互に組付けた状態において、第1固定部21と第2固定部31の接離方向Yへの相対的な移動量は、第2組付部33の短手方向への寸法と同じである。第2組付部33の短手方向への寸法は、接離方向Yへの第2組付部33の寸法と一致する。そして、接離方向Yへの第2組付部33の寸法は、第2粘着マット122の厚さよりも大きいため、第1固定部21と第2固定部31の接離方向Yへの相対的な移動量は、第2粘着マット122の厚さよりも大きい。
【0058】
なお、第1固定部21によって第2固定部31が支持されず、手によって第2固定部31を支持しながら相対的に移動させてもよいし、第1組付部23の長手方向への移動以外にも移動が可能としてもよい。要は、第1固定部21と第2固定部31を相対的に接離方向Yへ移動させることができれば、第1組付部23と第2組付部33の組付け態様は実施形態に限定されない。
【0059】
第1固定部21と第2固定部31を相対的に近接移動させると、第2粘着マット122の第2被貼着面10bに貼着される面である第2面122bが、位置決め面28aを越える。このとき、位置決め部28は、第2粘着マット122の切り欠き部122cを通過する。このため、位置決め部28を第2粘着マット122に干渉させることなく、位置決め面28aと、第2固定部本体32の接触面32dを面接触させることができる。
【0060】
図7に示すように、位置決め部28のリブ28e及び孔形成部28cと接触面32dを接触させた状態では、位置決め部28の雌ねじ孔28dと、第2固定部本体32の挿通孔32cとが一致する。
【0061】
固定装置59は、位置決め部28の雌ねじ孔28dと、第2固定部本体32の挿通孔32cとが一致した状態で、第1固定部21と第2固定部31を連結固定する。固定装置59は、位置決め部28を接離方向Yに貫通する雌ねじ孔28dと、第2固定部本体32を接離方向Yに貫通する挿通孔32cと、ねじ部材60と、から構成されている。
【0062】
ねじ部材60は、ねじ頭61と、ねじ頭61から突出する雄ねじ部62とから構成される。ねじ頭61の直径は、第2固定部本体32の挿通孔32cの短手方向への寸法よりも大きい。ワッシャ65に挿通した雄ねじ部62を挿通孔32cに挿通するとともに、雄ねじ部62を雌ねじ孔28dに螺進させると、ねじ頭61を、ワッシャ65を介して第2固定部本体32における挿通孔32cの周囲に接触させることができるとともに、螺進するねじ部材60によって、第2固定部本体32を位置決め部28に近接させることができる。したがって、雌ねじ孔28dに対する雄ねじ部62の螺進方向は、第2固定部31を第1固定部21に近接させる方向となっている。
【0063】
図1又は図7に示すように、雄ねじ部62の軸線方向への寸法Mは、接離方向Yへの第2固定部本体32の寸法と、接離方向Yへの位置決め部28の寸法と、接離方向Yへのワッシャ65の寸法の和Wよりも小さい。第2固定部本体32における挿通孔32cの周囲にワッシャ65を介してねじ頭61を接触させ、雄ねじ部62を位置決め部28の雌ねじ孔28dに螺合した状態を、ねじ部材60の最大ねじ込み状態とする。雄ねじ部62の軸線方向への寸法Mは、最大ねじ込み状態で雄ねじ部62の先端が位置決め面28aよりも突出しない長さに設定されている。
【0064】
また、リブ28e及び孔形成部28cと接触面32dが接触する状態では、第1固定部21の膨出部25は、第2固定部31の逃げ部35に入り込んでいる。このため、膨出部25と第2固定部31との干渉が回避されている。
【0065】
図1又は図2に示すように、第3固定部41は、金属板製の第3固定部本体42と、第3固定部本体42の周縁から突出する複数の突出部43と、第3固定部本体42に貼着される第3粘着マット123と、を備える。
【0066】
第3固定部本体42は、四角板状である。第3固定部本体42は、板厚方向の第1面に第3マット貼着面42aを備え、板厚方向の第2面に裏面42bを備える。第3マット貼着面42aの形状は、第3粘着マット123の形状と一致する四角形状であるとともに、第3マット貼着面42aの面積は、第3粘着マット123の第1面123aの面積より広い。また、第3固定部41は、第3固定部本体42の裏面42bよりも膨出する膨出部44を有する。
【0067】
膨出部44は、筒状に突出する壁部45と、壁部45の突出方向の先端に位置する環状底部46とを有する。環状底部46は、膨出部44の頂部に位置している。そして、壁部45と環状底部46によって囲まれる空間は、第3マット貼着面42aから凹むとともに、凹んだ空間には頭部収容部44cが画成されている。
【0068】
第3固定部本体42は、環状底部46を貫通する貫通孔46aを有する。貫通孔46aは、第3固定部本体42の板厚方向に貫通する。貫通孔46aは、第3固定部本体42の裏面42b側に膨出した膨出部44の頂部に形成されている。第3固定部本体42の板厚方向に沿う第3マット貼着面42aから環状底部46までの寸法を膨出部44の深さDとする。
【0069】
膨出部44には、第1固定部21に一体化されたボルト状部材12と同じ構成のボルト状部材12が挿通されている。そして、ボルト状部材12の頭部13は、頭部収容部44cに収容されている。また、頭部13において、軸部14の突出する端面は、膨出部44の頂部である環状底部46に接触している。また、膨出部44の深さDは、頭部長さLよりも浅くなっている。そして、頭部13の頭部端面13aは、第3マット貼着面42aよりも突出している。第3マット貼着面42aに貼着された第3粘着マット123において、第1面123aの一部は、頭部13の頭部端面13aに対向している。
【0070】
ボルト状部材12の軸部14は、貫通孔46aを貫通している。このため、軸部14は、第3固定部本体42の裏面42b側へ突出している。つまり、ボルト状部材12は、第3固定部本体42を板厚方向に貫通する貫通孔46aに、軸部14の先端が裏面42b側へ突出するように挿通されている。軸部14には、ナット15が螺合されている。ナット15と頭部13によって環状底部46が挟まれるとともに、第3固定部本体42にボルト状部材12が一体化されている。
【0071】
突出部43は、第3固定部本体42の縁に沿って長手が延びる突条形状である。突出部43は、第3固定部本体42の四辺に沿って延びる各側縁42dに2つずつ設けられている。突出部43は、各側縁42dの両端寄りに離れて配置されている。そして、各側縁42dにおいて隣り合う突出部43の間には凹部48が形成されている。
【0072】
また、各突出部43は、各側縁42dの端よりも中央寄りにずれた位置にある。このため、第3固定部本体42の四隅では、交差する側縁42dの突出部43同士が互いに離間しており、第3固定部本体42の各隅において隣接する突出部43同士の間には間隙が形成されている。
【0073】
各突出部43は、第3固定部本体42から第3粘着マット123の第2面123b側へ突出した先端に傾斜面49を備える。傾斜面49は、第3固定部本体42の面方向に沿って第3粘着マット123から離れるに従い、第2面123bから第1面123aに向かうように傾斜している。
【0074】
また、上述した凹部48は、傾斜面49よりも第3マット貼着面42a寄りに凹設されている。なお、凹部48は、傾斜面49から第3マット貼着面42aに至るまで凹設されている。
【0075】
突出部43は、第3固定部本体42の面方向において第3粘着マット123に対向する内面43bを備える。なお、内面43bは、第3マット貼着面42aに連続する面であり、第3マット貼着面42aに対し交差する面である。突出部43は、内面43bと傾斜面49との交差部に先端縁を備える。先端縁は、第3固定部本体42の側縁42dに沿って直線状に延びている。このため、突出部43を長手方向の一端側から見た場合、突出部43の交差部は鋭角に尖るエッジ状である。
【0076】
第3マット貼着面42aから突出部43の先端縁までの寸法を、突出部43の高さ寸法とする。突出部43の高さ寸法は、圧縮されていない状態の第3粘着マット123の厚さ寸法より小さい。したがって、傾斜面49は、圧縮変形されていない第3粘着マット123の第2面123bよりも第3マット貼着面42a寄りに控える位置にある。つまり、傾斜面49は、第3粘着マット123の第2面123bよりも突出していない。
【0077】
第3固定部41は、第3固定部本体42の第3マット貼着面42aから裏面42bに向けて突出するビード42cを備える。ビード42cは、第3固定部本体42の中央部から第3固定部本体42の四隅に向けて真っ直ぐ延びる。そして、図8(b)に示すように、ビード42cにより、第3粘着マット123の第1面123aと第3マット貼着面42aとの間には隙間Jが形成されている。隙間Jは、第3固定部本体42の中央部から第3固定部本体42の四隅に向けて真っ直ぐ延びる。また、隙間Jは、第3固定部本体42の第3マット貼着面42aから凹む。つまり、隙間Jは第3マット貼着面42aの一部を裏面42b側に膨出させたビード42cにより形成されている。
【0078】
次に、連結部材50について説明する。
図1に示すように、連結部材50は、第1固定部21と第3固定部41から突出するボルト状部材12を連結する。連結部材50は、第1固定部21と第3固定部41がそれぞれ有するボルト状部材12の先端面を向い合せた状態で、第1固定部21と第3固定部41を連結する。したがって、固定具11において、第1固定部21には、第3固定部41が連結部材50により連結されている。第3固定部41は、固定対象物10の第1被貼着面10aと対面する設置面である設置部Fの上面Faに対し、第3粘着マット123によって貼着されている。したがって、第3粘着マット123は、第3固定部41を上面Faに接合する接合部材を構成する。なお、2つのボルト状部材12の雄ねじは互いに逆ねじの関係にある。
【0079】
連結部材50は内周面に雌ねじ孔50aを有する六角筒状である。雌ねじ孔50aは、連結部材50を軸線方向に貫通する。雌ねじ孔50aの軸線方向の第1端側には、第1固定部21から突出する軸部14が螺合され、雌ねじ孔50aの軸線方向の第2端側には、第3固定部41から突出する軸部14が螺合されている。
【0080】
例えば、第1固定部21に対し、連結部材50が離間するように連結部材50を回転させる。このとき、第3固定部41の軸部14を連結部材50と一体回転させると、第3固定部41を、連結部材50の移動距離と同じ量で移動させることができ、第1固定部21と第3固定部41を相対的に離間移動させることができる。
【0081】
また、第1固定部21に対し、連結部材50が離間するように連結部材50を回転させたとき、第3固定部41の軸部14は回転させず、連結部材50のみを回転させる。すると、両方の軸部14を連結部材50から離間させることができ、第1固定部21と第3固定部41を相対的に離間移動させることができる。したがって、連結部材50の雌ねじ孔50aは、第1固定部21と第2固定部31を相対的に離間移動させる移動装置を構成する。
【0082】
次に、固定具11の固定方法を説明する。
まず、固定具11において、連結部材50の軸線方向に沿った第1粘着マット121と第3粘着マット123との距離を、固定対象物10の第1被貼着面10aと設置部Fの上面Faとの離間距離より短くする。また、第1固定部21に対し、第2固定部31は連結固定されていない。また、第1組付部23のガイド溝23aには、第2組付部33のガイド凸部33cが挿入され、第1組付部23と第2組付部33とが相互に組付けられている。この組付により、第1固定部21と第2固定部31が接離方向Yへ相対的に移動が可能な状態となっている。
【0083】
固定具11の固定方法は、第1粘着マット121を第1被貼着面10aに貼着する第1貼着工程と、第3粘着マット123を上面Faに接合する接合工程と、第2粘着マット122を第2被貼着面10bに貼着させる第2貼着工程と、第1固定部21と第2固定部31を連結固定する連結固定工程と、を有する。
【0084】
第1貼着工程では、第1固定部21の位置決め面28aを第2被貼着面10bに接触させた状態で、第1固定部21を第1被貼着面10aに近接させて第1粘着マット121を第1被貼着面10aに貼着する。
【0085】
具体的には、図9に示すように、第1固定部21の位置決め面28aを固定対象物10の第2被貼着面10bに面接触させる。このとき、第1固定部本体22及び第1粘着マット121を、固定対象物10の第1被貼着面10aより下方に位置させておく。次に、第1固定部本体22が第1被貼着面10aに近接するように固定具11を移動させ、第1粘着マット121の第2面121bを第1被貼着面10aに貼着する。これにより、第1固定部21が固定対象物10の第1被貼着面10a及び第2被貼着面10bに対して所望する位置に貼着され、第1貼着工程が完了する。位置決め面28aが第2被貼着面10bに面接触することで、第1固定部本体22の長側縁が固定対象物10の第1被貼着面10aの縁に対して平行な状態に第1固定部21を第1被貼着面10aに貼着できる。
【0086】
第2固定部31は、第1組付部23及び第2組付部33によって第1固定部21に対して一体に組付けられている。このため、第1固定部21が固定対象物10の第1被貼着面10aに貼着された状態では、第2固定部31の第2粘着マット122は、第2面122bが固定対象物10の第2被貼着面10bに平行な状態で対面している。
【0087】
本実施形態では、第1貼着工程の後、接合工程が行われる。接合工程は、連結部材50を操作し、第3固定部41を第1固定部21に対して離間させて、第1粘着マット121及び第3粘着マット123をそれぞれ相互に離間する方向に付勢した状態で第3粘着マット123を設置部Fの上面Faに接合する。
【0088】
具体的には、図10に示すように、連結部材50を操作して第3固定部本体42を設置部Fの上面Faに近接させる。そして、第3粘着マット123の第2面123bを設置部Fの上面Faに接触させて貼着させる。第3固定部41は、連結部材50によって第1固定部21に連結されているため、第3固定部41は、第1固定部21の真下に配置された状態で上面Faに貼着される。つまり、第3固定部41は、固定対象物10に対する所望する位置で設置部Fの上面Faに貼着される。
【0089】
さらに連結部材50が回転するように操作して、第1粘着マット121と第3粘着マット123をそれぞれ相互に離間する方向に付勢する。すると、第1粘着マット121が、第1固定部本体22の第1マット貼着面22aと固定対象物10の第1被貼着面10aとの間で圧縮変形し、第3粘着マット123が、第3固定部本体42の第3マット貼着面42aと設置部Fの上面Faとの間で圧縮変形する。このとき、圧縮変形させる前の第1粘着マット121及び第3粘着マット123の厚さの50%~90%の厚さとなるまで各粘着マット121,123が圧縮変形するように、連結部材50の回転量を調節する。そして、第3粘着マット123が設置部Fの上面Faに貼着されることにより、接合工程が完了する。
【0090】
本実施形態では、接合工程の後、第2貼着工程及び連結固定工程が行われる。
具体的には、図11に示すように、第2固定部31を第1固定部21に向けて押し、第1固定部21と第2固定部31を相対的に近接移動させる。つまり、第1組付部23と第2組付部33の組付けにより、第1固定部21に対し組付け状態にある第2固定部31を接離方向Yに沿って第1固定部21に近接させる。このとき、第1組付部23と第2組付部33の組付けにより、第1固定部21と第2固定部31とは、相対的な姿勢が維持されたまま接離方向Yに移動する。
【0091】
すると、第1組付部23のガイド溝23aにより、第2組付部33が第1組付部23の長手方向、つまり、第1固定部本体22の短手方向に移動するように案内される。その結果、第1組付部23と第2組付部33により、第2固定部31を接離方向Yに沿って第1固定部21に向けて移動させることができる。
【0092】
第1固定部21が固定対象物10の第1被貼着面10aに貼着された状態では、第2固定部31の第2粘着マット122は、第2面122bが固定対象物10の第2被貼着面10bに平行な状態で対面している。このため、第1組付部23と第2組付部33の案内により、第2粘着マット122の第2面122bを第2被貼着面10bに対面させた状態を維持したまま、第2固定部31を第2被貼着面10bに向けて移動させることができる。
【0093】
そして、第2粘着マット122の第2面122bが、位置決め面28a越える位置まで第2固定部31が移動すると、第2粘着マット122の第2面122bが第2被貼着面10bに接触する。第2粘着マット122の第2面122bが第2被貼着面10bに接触した時点では、第2粘着マット122は厚さ方向に圧縮されていない。
【0094】
また、本実施形態では、第1組付部23と第2組付部33は、第2固定部31を第1固定部21に近接させる前から組付けられている。このため、第1組付部23と第2組付部33は、第2粘着マット122の第2面122bが位置決め面28aを越える前から組付けられている。そして、第1組付部23と第2組付部33の組付け完了の途中で、第2粘着マット122の貼着が開始される。なお、第1組付部23と第2組付部33の組付け完了とは、ガイド溝23a内にガイド凸部33cがほとんど又は全てが収容された状態である。なお、第2粘着マット122の切り欠き部122cにより、位置決め部28が第2粘着マット122に干渉することがない。
【0095】
次に、連結固定工程が行われる。連結固定工程は、固定装置59によって第1固定部21と第2固定部31を連結固定する。
具体的には、固定部本体32の挿通孔32cに、ワッシャ65に挿通されたねじ部材60の雄ねじ部62を挿通するとともに、雄ねじ部62を雌ねじ孔28dに螺進させる。すると、ねじ部材60の螺進に伴い、ワッシャ65を介したねじ頭61によって第2固定部31が第1固定部21に近接していくとともに、第2固定部本体32が第2被貼着面10bに向けて押圧される。
【0096】
その結果、図7の2点鎖線に示すように、第2粘着マット122が厚さ方向に圧縮変形していく。そして、接触面32dが、位置決め部28の孔形成部28c及びリブ28eに接触するまでねじ部材60が雌ねじ孔28dに螺進されると、それ以上の第2固定部31の移動が規制されるとともに、第1固定部21と第2固定部31が連結固定され、連結固定工程が完了する。
【0097】
ねじ部材60の螺進に伴い、第2粘着マット122は、圧縮変形させる前の厚さの50%~90%の厚さとなるまで圧縮される。そして、第2粘着マット122の第2面122bが第2被貼着面10bに圧着され、第2粘着マット122が第2被貼着面10bに貼着される。その結果、第1組付部23と第2組付部33の組付けが完了するとともに、第2粘着マット122の貼着が完了し、第2貼着工程が完了する。本実施形態では、第2貼着工程と連結固定工程が同時に完了する。
【0098】
その結果、第3固定部41の第3粘着マット123が設置部Fの上面Faに貼着されるとともに、第1固定部21の第1粘着マット121及び第2固定部31の第2粘着マット122が固定対象物10に貼着される。固定具11によって固定対象物10が設置部Fに固定される。
【0099】
なお、固定具11においては、第1固定部21の第1粘着マット121が固定対象物10に貼着され、第3固定部41の第3粘着マット123が設置部Fに貼着されている。よって、固定対象物10の設置面となる上面Faには、第3固定部41の第3粘着マット123が貼着されるとともに、第3固定部本体42に連結された第1固定部21の第1粘着マット121が固定対象物10に貼着されている。したがって、第1固定部21の第1粘着マット121は、固定対象物側粘着マットを構成し、第1固定部21が固定対象物側固定部を構成している。
【0100】
なお、第2粘着マット122を第2固定部本体32の第2マット貼着面32aから剥がす場合や、第3粘着マット123を第3固定部本体42の第3マット貼着面42aから剥がす場合がある。さらには、第1粘着マット121を第1固定部本体22の第1マット貼着面22aから剥がす場合がある。このとき、第1固定部本体22のビード24内に設けられた隙間J、第2固定部本体32のビード34内に設けられた隙間J、第3固定部本体42のビード42c内に設けられた隙間Jに剥離剤を注入するのが好ましい。
【0101】
そして、バール形状の工具の先端を、第1粘着マット121の第1面121aと第1マット貼着面22aとの間、第2粘着マット122の第1面122aと第2マット貼着面32aとの間、第3粘着マット123の第1面123aと第3マット貼着面42aとの間に差し込む。そして、工具の先端を、各マット貼着面22a,32a,42aに宛がって、工具を抉る。すると、第1粘着マット121、第2粘着マット122及び第3粘着マット123から各固定部本体22,32,42を剥がすことができる。
【0102】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第1固定部21の位置決め面28aを第2被貼着面10bに面接触させることにより、第1固定部21が第2被貼着面10bから離れた位置に配置されたり、第1固定部本体22の長側縁が第2被貼着面10bに対して傾く状態で第1粘着マット121が第1被貼着面10aに貼着されることを抑制できる。また、第1組付部23と第2組付部33の相互の組付けにより、第1固定部21に組み付く位置に第2固定部31が移動するように接離方向Yへ案内できる。そして、接離方向Yは、位置決め面28aに直交する方向と一致する。このため、第1組付部23と第2組付部33が相互に組み付いた状態で第1固定部21と第2固定部31を接離方向Yへ移動させても、第2粘着マット122が、第2被貼着面10bにおける所望する位置とは異なる位置、例えば、第1固定部21に対して離れた位置で第2被貼着面10bに貼着されることを抑制できる。その結果、第1粘着マット121及び第2粘着マット122が固定対象物10の所望する位置に貼着されるように、第1固定部21及び第2固定部31の位置を手作業で調節する必要がなく、固定具11を固定対象物10に対し容易に設置できる。
【0103】
(2)接離方向Yへの第1組付部23及び第2組付部33の寸法は、第2粘着マット122の厚さより大きいとともに、第2組付部33は、第2固定部本体32の第2マット貼着面32aより第2粘着マット122の厚さ方向に突出する。このため、第1組付部23と第2組付部33が相互に組み付いた状態において、第2粘着マット122が第2被貼着面10bに接触した後も、第1組付部23と第2組付部33が組み付いた状態を維持でき、接離方向Yに沿って第2固定部31を第1固定部21に向けて移動させることができる。このため、第2粘着マット122の第2面122bが第2被貼着面10bに対向した状態を維持したまま、第2粘着マット122を第2被貼着面10bに押圧でき、第2粘着マット122を全面に亘って圧縮変形させ、圧着させることができる。このため、第2粘着マット122を面方向の位置に偏りなく第2被貼着面10bに貼着できる。
【0104】
(3)第2固定部31において、第2粘着マット122は切り欠き部122cを備える。このため、第1固定部21の位置決め面28aを第2被貼着面10bに接触させた状態で第2固定部31を第2被貼着面10bに近接させたとき、切り欠き部122cによって、位置決め部28と第2粘着マット122が干渉することが無い。よって、第2粘着マット122の第2面122bの全面を第2被貼着面10bに貼着できる。
【0105】
(4)第2粘着マット122は切り欠き部122cを備えるとともに、第2粘着マット122の厚さは、位置決め部28の板厚より大きい。このため、位置決め面28aを第2被貼着面10bに接触させた状態であっても、位置決め部28に第2粘着マット122を干渉させることなく、第2粘着マット122の第2面122bを第2被貼着面10bに貼着できる。
【0106】
(5)雌ねじ孔28dに対するねじ部材60の螺進方向を、第2固定部31が第1固定部21に近接する方向とした。このため、雌ねじ孔28dにねじ部材60を螺進させると、第2固定部31を第1固定部21に近接させることができ、固定装置59による第1固定部21と第2固定部31の連結固定と同時に、第2粘着マット122を第2被貼着面10bに押し付け、さらに第2粘着マット122を圧縮変形させることができる。そのため、第2粘着マット122を最適な粘着力が発揮される厚さまで圧縮できる。
【0107】
(6)ねじ部材60の雄ねじ部62の軸線方向への寸法Mは、第2固定部本体32の接離方向Yへの寸法と位置決め部28の接離方向Yへの寸法とワッシャ65の接離方向Yへの寸法との和Wよりも小さい。このため、ねじ部材60を用いて第1固定部21と第2固定部31を固定した状態であっても、雄ねじ部62が位置決め部28から突出しない。よって、螺合される雄ねじ部62の先端が第2被貼着面10bを押すことによって第2粘着マット122が第2被貼着面10bから剥がされることを防止できる。
【0108】
(7)固定具11は、第3粘着マット123を有する第3固定部41を備え、第3固定部41と第1固定部21とは、連結部材50により連結されている。連結部材50は、第1固定部21と第3固定部41のボルト状部材12が螺合する雌ねじ孔50aを有する。そして、連結部材50を回転させ、各ボルト状部材12を雌ねじ孔50aに対し螺進又は螺退させることで、第1固定部21と第3固定部41を相対的に移動させることができる。その結果、接合工程では、連結部材50の回転量を調節することにより、第1粘着マット121を第1被貼着面10aに付勢しつつ、第3粘着マット123を設置部Fの上面Faに付勢して押し付けることができる。つまり、第1粘着マット121を第1被貼着面10aに強固に貼着させ、第3粘着マット123を設置部Fの上面Faに強固に貼着させることができる。
【0109】
(8)第1固定部21と第3固定部41とは、双方のボルト状部材12の軸部14を連結部材50の雌ねじ孔50aに螺合して連結されている。このため、第1固定部21と第3固定部41は、連結部材50の軸線方向に並んで連結されている。よって、位置決め部28を用いて第1粘着マット121を固定対象物10の所望する位置に貼着すると同時に第3粘着マット123を設置部Fの所望する位置に貼着できる。したがって、固定対象物10に対する第1粘着マット121の貼着と、設置部Fに対する第3粘着マット123の貼着とを別々に行う場合と比べると、固定具11の設置が容易となる。
【0110】
(9)地震が発生したとき、第3粘着マット123の部分的な圧縮により、第3固定部41が傾いたとき、突出部43の傾斜面49が設置部Fの上面Faに面接触する。傾斜面49と上面Faの面接触により、第3固定部41の上面Faに沿う方向へのずれが抑制され、揺れを原因として第3粘着マット123が剥がれることを抑制できる。
【0111】
(10)第3粘着マット123が厚さ方向全体に圧縮された場合、突出部43の先端縁が設置部Fの上面Faに接触する。上面Faに対する突出部43の先端縁の接触に伴う摩擦抵抗により、第3固定部41の上面Faに沿う方向へのずれが抑制され、揺れを原因とした第3粘着マット123の貼着力の低下を抑制できる。
【0112】
(11)突出部43は、第3粘着マット123の側縁に沿って延びる突条形状である。例えば、突出部43がピン状である場合と比べると、上面Faに対する突出部43の接触面積を大きくできる。このため、面方向への第3固定部41の揺れが規制され、揺れを原因とした貼着力の低下を抑制できる。
【0113】
(12)複数の突出部43は、第3粘着マット123の周縁に沿って配置され、第3粘着マット123の周縁の延びる方向に隣り合う突出部43同士の間には凹部48が形成されている。第3粘着マット123の側縁の一部には突出部43が対向しているが、凹部48が設けられた部分は、外部に露出している。設置部Fの上面Faから第3固定部41を取り外す必要がある場合は、凹部48に差し込んだ工具を操作することで、上面Faから第3粘着マット123を剥がす作業、又は第3粘着マット123から第3マット貼着面42aを剥がす作業が行いやすくなる。
【0114】
(13)各マット貼着面22a,32a,42aと第1面121a,122a,123aとの間には隙間Jが確保されている。この隙間Jに剥離剤を注入することで、各マット貼着面22a,32a,42aと第1面121a,122a,123aとを剥離しやすくなる。
【0115】
(14)各固定部21,31,41の補強のためにビード24,34,42cが設けられ、このビード24,34,42cの内側を、剥離剤を注入するための隙間Jとして利用できる。よって、各固定部21,31,41にビード24,34,42cと、剥離剤注入のための部位とを別々に成形する場合と比べると、各固定部21,31,41の製造が容易となる。
【0116】
(15)第1固定部21は膨出部25を備え、第3固定部41は膨出部44を備える。そして、膨出部25,44の環状底部27,46にボルト状部材12の頭部13を接触させつつ、頭部収容部25c,44cの内側にボルト状部材12の頭部13を収容できる。このため、第1マット貼着面22aや第3マット貼着面42aに頭部13を直接接触させる場合と比べると、第1マット貼着面22a及び第3マット貼着面42aからの頭部13の突出量を減らすことができる。よって、第1粘着マット121及び第3粘着マット123に頭部13が貫通する孔を形成する必要がなくなり、第1粘着マット121及び第3粘着マット123の貼着面積が減らずに済む。その結果として、第1粘着マット121及び第3粘着マット123の貼着面積が減ることによる粘着力の低下を無くすことができる。
【0117】
(16)固定具11の固定方法では、第1組付部23と第2組付部33の組付けにより、第2固定部31と第1固定部21を相互に組み付いた状態にできる。このため、第2貼着工程では、第2粘着マット122の第2面122bを第2被貼着面10bに対面させた状態を維持しながら第2粘着マット122を第2被貼着面10bに貼着できる。このため、第2粘着マット122が、第2被貼着面10bにおける所望する位置とは異なる位置、例えば、第1固定部21に対して離れた位置で第2被貼着面10bに貼着されることを抑制できる。
【0118】
(17)連結固定工程では、第1固定部21が備える位置決め部28の雌ねじ孔28dに対するねじ部材60の螺合により第2粘着マット122を圧縮変形させることができるとともに、第2粘着マット122の第2面122bを第2被貼着面10bに圧着させることができる。このため、第2粘着マット122に適度な粘着力を発揮させることができる。
【0119】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
図12に示すように、第1固定部21において、頭部13の頭部端面13aが、第1マット貼着面22aと同一面に位置するように、膨出部25の深さDが設定されていてもよい。この場合、頭部長さLが深さDと同じになる。
【0120】
図示しないが、第3固定部41において、頭部13の頭部端面13aが、第3マット貼着面42aと同一面に位置するように、膨出部44の深さDが設定されていてもよい。この場合、頭部長さLが深さDと同じになる。
【0121】
頭部端面13aが第1マット貼着面22a及び第3マット貼着面42aと同一面上にある場合、第1粘着マット121及び第3粘着マット123は、圧縮前の厚さの50~90%の厚さとなるように圧縮される。
【0122】
このように構成しても、頭部収容部25c,44cにボルト状部材12の頭部13を収容できる。このため、第1マット貼着面22a及び第3マット貼着面42aに頭部13を直接接触させる場合と比べると、第1マット貼着面22a及び第3マット貼着面42aからの頭部13の突出量を減らすことができる。よって、頭部13の頭部端面13aが第1粘着マット121及び第3粘着マット123から飛び出ないようにするため、第1粘着マット121及び第3粘着マット123に頭部13が貫通する孔を形成する必要がなくなり、第1粘着マット121及び第3粘着マット123の貼着面積が減らずに済む。その結果として、第1粘着マット121及び第3粘着マット123の粘着面の面積が減ることによる貼着力の低下を無くすことができる。
【0123】
図13に示すように、第1固定部21において、頭部13の頭部端面13aが、第1マット貼着面22aよりも裏面22b側に控えるように、膨出部25の深さDが設定されていてもよい。この場合、頭部長さLが深さDより小さくなる。
【0124】
図示しないが、第3固定部41において、頭部13の頭部端面13aが、第3マット貼着面42aよりも裏面42b側に控えるように、膨出部25の深さDが設定されていてもよい。この場合、頭部長さLが深さDより小さくなる。
【0125】
頭部端面13aが第1マット貼着面22a及び第3マット貼着面42aより控えた位置にある場合、第1粘着マット121及び第3粘着マット123は、頭部端面13aとの間では、圧縮前の厚さの50%~90%の厚さとなるように圧縮される。
【0126】
このように構成しても、頭部収容部25c,44cにボルト状部材12の頭部13を収容できる。このため、第1マット貼着面22a及び第3マット貼着面42aに頭部13を直接接触させる場合と比べると、第1マット貼着面22a及び第3マット貼着面42aからの頭部13の突出量を減らすことができる。よって、頭部13の頭部端面13aが第1粘着マット121及び第3粘着マット123から飛び出ないようにするため、第1粘着マット121及び第3粘着マット123に頭部13が貫通する孔を形成する必要がなくなり、第1粘着マット121及び第3粘着マット123の貼着面積が減らずに済む。その結果として、第1粘着マット121及び第3粘着マット123の粘着面の面積が減ることによる貼着力の低下を無くすことができる。
【0127】
図14に示すように、第1組付部23と第2組付部33は変更してもよい。第1組付部23を、位置決め部28の突出する第1固定部本体22の長縁の両端側から突出する板状とする。第1組付部23には、雌ねじ孔が形成されている。
【0128】
第2固定部31は、第2固定部本体32の一対の長側縁のうち挿通孔32c寄りの長側縁の両端側から裏面32bに向けて突出する取付板部33fを有する。取付板部33fには透孔が形成されている。そして、透孔に挿通した長ねじ部材66を、第1組付部23の雌ねじ孔に螺合する。この形態では、長ねじ部材66が、第1組付部23に組付く第2組付部を構成する。そして、長ねじ部材66の接離方向Yへの寸法である軸線方向への長さは、位置決め部28の接離方向Yへの寸法より大きく、かつ第2粘着マット122の厚さより大きい。
【0129】
長ねじ部材66を第1組付部23の雌ねじ孔に対して螺進又は螺退させることにより、第2固定部31を第1固定部21に対する接離方向Yへ移動させることができる。
○ 第2固定部31の第2組付部33にガイド溝23aを形成し、第1固定部21の第1組付部23にガイド凸部33cを形成してもよい。
【0130】
○ 第1組付部23と第2組付部33の組付けにより、第1固定部21と第2固定部31を相互に組付けることができるとともに、第1固定部21と第2固定部31を接離方向Yへ相対的に移動させることができれば、第1組付部23と第2組付部33の構成は適宜変更してもよい。例えば、第1固定部21の第1組付部23を、第1固定部本体22の短手方向に延びる溝とし、第2固定部31の第2組付部33を、溝に挿入される爪としてもよい。このように構成した場合、第2固定部31を第1固定部21に向けて押すと、溝によって爪が接離方向Yに案内され、第2固定部31を接離方向Yに移動させることができる。
【0131】
又は、第1組付部23及び第2組付部33は、接離方向Yへ連続して延びるものでなくてもよい。
さらに、第1組付部23を第1固定部本体22における位置決め部28の突出する長側縁から第1固定部本体22とは相反する方向へ突出するように形成し、その第1組付部23の内側にガイド溝23aを形成する。ガイド溝23aは、位置決め面28aに直交する方向に長手が延びるとともに、第1固定部本体22からの位置決め部28の突出方向の端面にて開口する。
【0132】
一方、第2組付部33を第2固定部本体32における挿通孔32c寄りの長側縁から突出するように形成し、その第2組付部33の突出端にガイド凸部33cを形成する。ガイド凸部33cは、ガイド溝23aに挿入されるとともに、第1組付部23の内面に掛止することで、第1マット貼着面22aに直交する方向へのガイド溝23aからの抜け出しが規制されている。
【0133】
このように構成した場合も、第1組付部23と第2組付部33は、相互に組付けた状態で第1固定部21と第2固定部31の相対的な接離方向Yへの移動を可能とし、かつ接離方向Yは位置決め面28aに直交する方向と一致する。また、第1組付部23と第2組付部33を相互に組付けた状態における第1固定部21と第2固定部31の相対的な接離方向Yへの移動量は、第1組付部23の接離方向Yへの寸法に一致するとともに、第2粘着マット122の厚さよりも大きくなる。
【0134】
この構成では、第2組付部33の接離方向Yへの寸法は、第2粘着マット122の厚さよりも小さくてもよく、かつ第2粘着マット122の厚さ方向の第2面122bよりも突出していない。
【0135】
○ 第2粘着マット122は、位置決め部28を避けるための切り欠き部122cを備えておらず、位置決め面28aに直交する方向から第2マット貼着面32aを見て、位置決め部28と第2粘着マット122が重なっていてもよい。この場合、第2固定部31を第1固定部21に向けて移動させたとき、第2粘着マット122は位置決め部28によって厚さ方向に圧縮される。
【0136】
又は、切り欠き部122cを設けず、第2粘着マット122の一対の長側縁のうち、第2組付部33よりの長側縁全体が接触面32dと重ならないように第2粘着マット122を長四角形状としてもよい。
【0137】
○ 第1固定部21と第2固定部31を連結固定するための固定装置59は無くてもよい。
○ 第1固定部21と第2固定部31の連結固定は、第1固定部本体22と第2組付部33とを板厚方向に連結固定して行ってもよい。例えば、第1固定部本体22に、第1固定部本体22を板厚方向に貫通する雌ねじ孔を形成し、第2固定部本体32を板厚方向に貫通させたねじ部材60の雄ねじ部62を第1固定部本体22の雌ねじ孔に螺合して第1固定部21と第2固定部31を連結固定してもよい。
【0138】
この場合、連結固定工程は、第2貼着工程の後に行われる。
○ 第2貼着工程と連結固定工程が完了した後に、接合工程を行ってもよい。
○ 接離方向Yへの位置決め部28の寸法と、第2粘着マット122の厚さは同じでもよい。この場合、連結固定工程では、雌ねじ孔28dに対するねじ部材60の螺進が行われても第2粘着マット122の圧縮変形は生じない。
【0139】
○ 位置決め部28は、一枚の板状でなく、複数枚の板状となるように、第1固定部本体22の長手方向に分割して配置されていてもよい。
又は、第2マット貼着面32aに直交する方向から位置決め部28を見た場合の位置決め部28の形状は、長四角形状でなくてもよく、正方形状や、台形状、円形状であってもよい。
【0140】
さらに、位置決め部28は、第2固定部本体32の第2マット貼着面32aを長手方向に2分割するように、第2固定部本体32の上端に達するまで延出されていてもよい。つまり、位置決め部28は、位置決め面28aを第2被貼着面10bに面接触させることができれば、その形状、数等は適宜変更してもよい。
【0141】
○ 固定具11の固定方法を実施する際、固定具11は第1組付部23及び第2組付部33を備えていなくてもよく、第2貼着工程は、第1組付部23及び第2組付部33を用いずに行われる。この場合、固定具11の固定方法において、位置決め部28によって第1固定部21の第1粘着マット121を固定対象物10の所望する位置に貼着することができれば、第1固定部21を基準として第2固定部31の貼着を行うことにより、第2固定部31を固定対象物10の所望する位置に貼着できる。
【0142】
○ 第1~第3固定部21~41の少なくとも一つにおいて、粘着マットの第2面に隙間形成凹部を設けてもよい。例えば、図15又は図16に示すように、第3粘着マット123の第2面123bに隙間形成凹部123cを設けてもよい。そして、第3粘着マット123の第2面123bを設置部Fの上面Faに貼着したとき、隙間形成凹部123cと上面Faとの間に隙間Jを形成してもよい。
【0143】
隙間形成凹部123cは、第2面123bの面方向に延びる溝状である。また、第2面123bに直交する方向から見た平面視では、隙間形成凹部123cは、面方向に直線状に延びている。また、平面視では、隙間形成凹部123cは、第3粘着マット123の周縁にまで延びており、第3粘着マット123の周縁において開口している。
【0144】
この場合、固定具11において、固定対象物10の設置面となる上面Faには、第3固定部41の第3粘着マット123が貼着されるとともに、第1固定部21の第1粘着マット121が固定対象物10に貼着されている。したがって、第1固定部21の第1粘着マット121は、固定対象物側粘着マットを構成し、第1固定部21が固定対象物側固定部を構成している。
【0145】
固定具11が、固定対象物10と、設置部Fとに第1~第3粘着マット121~123によって貼着されることにより、固定対象物10と設置部Fとの間には、第1固定部21及び第3固定部41の固定構造が構築されている。
【0146】
第3固定部41の固定構造において、設置部Fの上面Faと第3固定部本体42の第3マット貼着面42aとの間の第3粘着マット123は、隙間形成凹部123cによって隙間Jを確保した状態で圧縮変形されている。
【0147】
このように構成した場合、設置部Fの上面Faから第3粘着マット123を剥がす必要が生じる場合がある。このとき、設置部Fの上面Faに剥離剤を散液すると、隙間形成凹部123cによって形成された隙間Jに剥離剤が侵入する。
【0148】
そして、バール形状の工具の先端を凹部48に差し込み、工具の先端を、第3粘着マット123に宛がって工具を抉る。すると、上面Faから第3粘着マット123付きの第3固定部41を、又は第3粘着マット123から第3固定部41を剥がすことができる。特に、隙間形成凹部123cによる隙間Jが確保されていないと、設置部Fの上面Faにおける第3粘着マット123の周囲に剥離剤を散液し、第3粘着マット123の周囲から剥がす必要がある。しかし、隙間形成凹部123cによる隙間Jを確保することで、第3粘着マット123の面内中央部にまで剥離剤を侵入させることができ、第3粘着マット123を剥がす作業が行いやすくなる。
【0149】
○ 各固定部本体22,32,42の各マット貼着面22a,32a,42aから各粘着マット121,122,123に向けて突出する複数の凸部を設け、複数の凸部によってマット貼着面22a,32a,42aと粘着マット121,122,123の第1面121a,122a,123aとの間に隙間Jを形成してもよい。
【0150】
○ ビード24,34,42cに剥離剤の注入口を形成してもよい。
○ 位置決め部28の孔形成部28c及びリブ28eは無く、立設面28bだけの構成としてもよい。
【0151】
○ 各固定部21,31,41は樹脂製であってもよい。
○ 各粘着マット121,122,123は、ボルト状部材12の頭部13が収容される孔を有する形状であってもよい。
【0152】
○ ワッシャ65は無くてもよい。
○ 第1固定部21のビード24は無くてもよいし、第2固定部31のビード34は無くてもよい。また、第3固定部41のビード42cは無くてもよい。
【0153】
○ 実施形態において、第1固定部本体22及び第2固定部本体32の長手方向及び短手方向は説明の便宜上、設定しているものであり、第1固定部本体22及び第2固定部本体32の形状は適宜変更してもよい。例えば、第1固定部本体22及び第2固定部本体32は円板状であったり、五角板状、六角板状であってもよい。同様に、第3固定部41の第3固定部本体42は五角板状、六角板状、円板状であってもよい。
【0154】
○ 第1固定部本体22の第1マット貼着面22aには、1枚の粘着マットでなく、複数枚に分割された粘着マットが貼着されていてもよいし、第2固定部本体32の第2マット貼着面32aには、1枚の粘着マットでなく、複数枚に分割された粘着マットが貼着されていてもよい。さらに、第3固定部本体42の第3マット貼着面42aには、1枚の粘着マットでなく、複数枚に分割された粘着マットが貼着されていてもよい。
【0155】
○ 第1マット貼着面22aの形状と第1粘着マット121の形状は一致していなくてもよく、例えば、第1マット貼着面22aは長四角形状である一方で、第1粘着マット121は楕円形状であってもよい。同様に、第2マット貼着面32aの形状と第2粘着マット122の形状は一致していなくてもよく、第3マット貼着面42aと第3粘着マット123の形状は一致していなくてもよい。
【0156】
○ 固定具11は、第1固定部21及び第2固定部31と、連結部材50と、設置部側固定部と、を備える構成としてもよい。この場合、設置部側固定部は、設置部Fの上面Faに固定され、かつ連結部材50の雌ねじ孔50aに螺合される雄ねじを有する構成であれば、特に第3固定部41を有する構成に限定されない。また、第3固定部41において、上面Faへの接合は、第3粘着マット123による貼着以外の方法でもよく、第3固定部41を接着剤、ビス、釘によって設置部Fに接合してもよい。
【0157】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)板厚方向の第1面にマット貼着面を有し、かつ前記板厚方向の第2面に裏面を有する固定部本体を備えるとともに、厚さ方向の第1面及び第2面の両面に粘着面を有しており、かつ前記厚さ方向に圧縮変形する板状の粘着マットの前記第1面が前記マット貼着面に貼着される固定部であって、
前記マット貼着面は、前記粘着マットの前記第1面より広い面積を有するとともに、前記第1面と前記マット貼着面との間には、前記マット貼着面の面方向に沿う一部に隙間が形成されていることを特徴とする固定部。
【0158】
(ロ)前記隙間は、前記固定部本体を前記マット貼着面から凹ませることにより形成されている固定部。
(ハ)前記固定部本体は金属板状であり、前記隙間は前記固定部本体を前記マット貼着面とは反対側に突出させたビードにより形成されている固定部。
【0159】
(ニ)前記隙間内に剥離剤を注入するための注入口が形成されている固定部。
(ホ)板厚方向の第1面にマット貼着面を有し、かつ前記板厚方向の第2面に裏面を有する固定部本体を備えるとともに、厚さ方向の第1面及び第2面の両面に粘着面を有しており、かつ前記厚さ方向に圧縮変形する板状の粘着マットの前記第1面が前記マット貼着面に貼着される固定部であって、
前記マット貼着面は、前記粘着マットの前記第1面より広い面積を有するとともに、前記粘着マットの前記第2面には、当該第2面が貼着される面との間に隙間を形成する隙間形成凹部が設けられていることを特徴とする固定部。
【0160】
(ヘ)前記隙間形成凹部は溝状である固定部。
(ト)前記隙間形成凹部は、前記粘着マットの周縁において開口している固定部。
(チ)固定対象物が設置部の設置面に固定された固定構造であって、前記設置面に、上記(イ)から(ト)のいずれか一項に記載の固定部の前記粘着マットの前記第2面が貼着されるとともに、前記設置面に貼着される前記固定部の前記固定部本体と連結され前記固定対象物に粘着される固定対象物側粘着マットを有する固定対象物側固定部が、前記固定対象物に粘着されていることを特徴とする固定構造。
【0161】
(リ)前記粘着マットは、前記設置面と前記固定部本体との間に前記隙間の少なくとも一部を確保した状態で圧縮変形されている固定構造。
【符号の説明】
【0162】
F…設置部、Fa…設置面及び対向面としての上面、Y…接離方向、10…固定対象物、10a…第1被貼着面、10b…第2被貼着面、11…固定具、21…第1固定部、22…第1固定部本体、22a…第1マット貼着面、23…第1組付部、28…位置決め部、28a…位置決め面、28d…雌ねじ孔、31…第2固定部、32…第2固定部本体、32a…第2マット貼着面、32c…挿通孔、33…第2組付部、41…第3固定部、50…連結部材、50a…移動装置としての雌ねじ孔、59…固定装置、60…ねじ部材、61…ねじ頭、62…雄ねじ部、121…第1粘着マット、121a…第1面、121b…第2面、122…第2粘着マット、122a…第1面、122b…第2面、123…接合部材としての第3粘着マット。
図1
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