(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】車両の横転防止警報方法、装置、記憶媒体及び車両
(51)【国際特許分類】
B60W 30/04 20060101AFI20231003BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20231003BHJP
【FI】
B60W30/04
B60W50/14
(21)【出願番号】P 2020503687
(86)(22)【出願日】2018-08-17
(86)【国際出願番号】 CN2018100949
(87)【国際公開番号】W WO2019091176
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】201711096800.8
(32)【優先日】2017-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520023927
【氏名又は名称】グリー エレクトリック アプライアンセズ(ウーハン)カンパニーリミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】516089359
【氏名又は名称】グリー エレクトリック アプライアンスィズ,インコーポレーテッド オブ ジュハイ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ ホン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ヨウリン
(72)【発明者】
【氏名】ソン アイ
(72)【発明者】
【氏名】チョン ハイソン
【審査官】竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-507648(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106585625(CN,A)
【文献】Wei Heng; Liu Wei 他,Improved Design of Generalized Dynamic Rollover Threshold of Multi-Axial Vehicle,2017 9th International Conference on Measuring Technology and Mechatronics Automation (ICMTMA),中国,IEEE,2017年01月14日,23-28,https://ieeexplore.ieee.org/document/7832177
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収集モジュールと、処理モジュールと、判定モジュールと、を備える車両の横転防止警報装置によって実行される車両の横転防止警報方法であって、
前記収集モジュールが、車体のロール状態のパラメータを収集することと、
前記処理モジュールが、前記収集された車体のロール状態のパラメータ、及びバネ上質量の遠心力横転モーメントを含む予め設定された荷重伝達比閾値モデルに基づき、車両の横荷重伝達比を算出することと、
前記判定モジュールが、前記算出された横荷重伝達比と予め設定された横転閾値に基づき、車両の横転危険性の有無を判定することと、
を含み、
前記荷重伝達比閾値モデルが車両の横力の釣り合い関係とロールモーメントの釣り合い関係に基づいて形成さ
れ、
前記荷重伝達比閾値モデルのモデル式は、以下の式である、ことを特徴とす
る方法。
【数1】
式中、LTR
gはn軸車の横荷重伝達比であり、nは車両の軸数であり、m
sは車両のバネ上質量であり、h
sは車両の重心からロール軸までの垂直距離であり、h
u=h
ujは各車軸のロール中心から地面までの距離であり、Tは各車軸のトレッドであり、φは車体のロール角であり、K
φ,j,kは各車軸のサスペンションロール剛性及び合成ロール剛性であり、C
φ,j,cは各車軸のサスペンション減衰係数及び合成減衰係数であり、l
i=(i=1,…,n)は各車軸の重心からの縦方向距離である。
【請求項2】
前記車体のロール状態のパラメータは、車体のロール角及びロール角速度を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記横力の釣り合い関係とロールモーメントの釣り合い関係が、2軸以上の車両を含む多軸車両の横力の釣り合い関係とロールモーメントの釣り合い関係であ
る、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
車両のバネ上質量m
sとバネ下質量m
uの大きさ関係がm
s≫m
uであり、且つ各車軸のロール中心の地上高が等しい場合、ダランベールの原理により前記荷重伝達比閾値モデルのモデル式を簡略化し、以下の簡略化モデル式を得
る、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【数2】
式中、m=m
s+m
u、m
uは車両のバネ下質量である。
【請求項5】
前記算出された横荷重伝達比と予め設定された横転閾値に基づき、車両の横転危険性の有無を判定することは、
前記算出された横荷重伝達比の絶対値が予め設定された横転閾値以下である場合、車両の横転危険性が無いと判定することと、
前記算出された横荷重伝達比の絶対値が予め設定された横転閾値よりも大きい場合、車両の横転危険性が有ると判定することと、を含む、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
車両の横転危険性が有ると判定される場合には、前記横荷重伝達比の絶対値の大きさに応じて危険度を分け、前記横荷重伝達比の絶対値が大きい場合には、前記危険度がそれなりに高くなる、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記横荷重伝達比及び/又は前記危険度を含む横転警報提示情報を、表示装置によって表示し、音声装置によってアナウンスし及び/又はメータによって指示すること、及び/又は、
前記危険度を表示灯によって表示することをさらに含む、ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
車体のロール状態のパラメータを収集する収集モジュールと、
前記収集された車体のロール状態のパラメータ、及びバネ上質量の遠心力横転モーメントを含む予め設定された荷重伝達比閾値モデルに基づき、車両の横荷重伝達比を算出する処理モジュールと、
前記算出された横荷重伝達比と予め設定された横転閾値に基づき、車両の横転危険性の有無を判定する判定モジュールと、を備え、
前記荷重伝達比閾値モデルが車両の横力の釣り合い関係とロールモーメントの釣り合い関係に基づいて形成され、
前記荷重伝達比閾値モデルのモデル式は、以下の式である、ことを特徴とする車両の横転防止警報装置。
【数3】
式中、LTR
gはn軸車の横荷重伝達比であり、nは車両の軸数であり、m
sは車両のバネ上質量であり、h
sは車両の重心からロール軸までの垂直距離であり、h
u=h
ujは各車軸のロール中心から地面までの距離であり、Tは各車軸のトレッドであり、φは車体のロール角であり、K
φ,j,kは各車軸のサスペンションロール剛性及び合成ロール剛性であり、C
φ,j,cは各車軸のサスペンション減衰係数及び合成減衰係数であり、l
i=(i=1,…,n)は各車軸の重心からの縦方向距離である。
【請求項9】
前記車体のロール状態のパラメータは、車体のロール角及びロール角速度を含む、ことを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記横力の釣り合い関係とロールモーメントの釣り合い関係が、2軸以上の車両を含む多軸車両の横力の釣り合い関係とロールモーメントの釣り合い関係であるこ
と、ことを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項11】
車両のバネ上質量m
sとバネ下質量m
uの大きさ関係がm
s≫m
uであり、且つ各車軸のロール中心の地上高が等しい場合、ダランベールの原理により前記荷重伝達比閾値モデルのモデル式を簡略化し、以下の簡略化モデル式を得
る、ことを特徴とする請求項8に記載の装置。
【数4】
式中、m=m
s+m
u、m
uは車両のバネ下質量である。
【請求項12】
前記判定モジュールは、
前記算出された横荷重伝達比の絶対値が予め設定された横転閾値以下である場合、車両の横転危険性が無いと判定することと、
前記算出された横荷重伝達比の絶対値が予め設定された横転閾値よりも大きい場合、車両の横転危険性が有ると判定することと、にさらに用いられる、ことを特徴とする請求項8~11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記判定モジュールは、車両の横転危険性が有ると判定される場合には、前記横荷重伝達比の絶対値の大きさに応じて危険度を分けることにさらに用いられ、前記横荷重伝達比の絶対値が大きい場合には、前記危険度がそれなりに高くなる、ことを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記横荷重伝達比及び/又は前記危険度を含む横転警報提示情報を与える表示装置、音声装置及び/又はメータ、及び/又は、
前記危険度を表示する表示灯をさらに備える、ことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
請求項8~14のいずれか1項に記載の装置を備える、ことを特徴とする車両。
【請求項16】
プロセッサ、メモリ及びメモリに記憶され、プロセッサで実行可能なコンピュータプログラムを備え、前記プロセッサが前記
コンピュータプログラムを実行する場合、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法のステップを実施する、ことを特徴とする車両。
【請求項17】
プロセッサによって実行される場合、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法のステップを実施するコンピュータプログラムが記憶されている、ことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年11月9日に中国特許庁に出願した出願番号が201711096800.8であり、発明の名称が「車両の横転防止警報方法、装置、記憶媒体及び車両」である中国特許出願の優先権を主張し、援用によりその内容を全て本願に取り込む。
【0002】
本発明は、スマートカーの分野に関し、特に車両の横転防止警報方法、装置、記憶媒体及び車両に関するものである。
【背景技術】
【0003】
車両の横転は重大な道路交通事故であり、重心の高いバンは横転事故がより発生しやすい。積荷の需要に伴って多軸バンはますます多くなり、高速走行中の旋回や車線変更などの操作時に横転事故が極めて発生しやすい。
【0004】
横転の問題を検討する際に、横転閾値又は横転指標への検討は不可欠である。従来技術は、主にロール角、横加速度、及び横荷重伝達比LTRという3つの横転閾値に基づく横転問題検討を用いている。横転指標は、自動車の横転発生の有無を示すための判定基準であり、その特定は自動車の横転警報アルゴリズムの良否に直接影響を与える。
【0005】
ロール角、横加速度、荷重伝達比などを横転閾値指標として警報する解決手段の場合、ロール角と横加速度の測定誤差や異なる車種の閾値が異なり正規化が不十分であるため、横荷重伝達比LTR(Lateral-load Transfer Rate、LTR=(FL-FR)/(FL+FR)、即ち、車両の左右タイヤの垂直荷重の差と垂直荷重の和との比)を横転閾値として用いるのが一般的である。
【0006】
従来技術は、動力学モデル(LTR=-2(kφ+cφ')/mgT)及びその派生モデルの閾値警報に基づいたものであるが、バネ上質量の遠心力横転モーメントを無視することにより、算出された荷重伝達比が実際の値よりも低くなるため、実車の横転状態とのずれを招き、ひいては警報の精度に影響を与える。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、上記従来技術の欠陥を解消することを主な目的とし、バネ上質量の遠心力横転モーメントを無視するため警報の精度に影響を与えるという従来技術の問題を解決するための車両の横転防止警報方法、装置、記憶媒体及び車両を提供する。
【0008】
本発明の一態様は、車体のロール状態のパラメータを収集することと、前記収集された車体のロール状態のパラメータ、及びバネ上質量の遠心力横転モーメントを含む予め設定された荷重伝達比閾値モデルに基づき、車両の横荷重伝達比を算出することと、前記算出された横荷重伝達比と予め設定された横転閾値に基づき、車両の横転危険性の有無を判定することと、を含む車両の横転防止警報方法を提供する。
【0009】
前記車体のロール状態のパラメータは、車体のロール角及びロール角速度を含んでもよい。
【0010】
前記荷重伝達比閾値モデルが車両の横力の釣り合い関係とロールモーメントの釣り合い関係に基づいて形成されることをさらに含んでもよい。
【0011】
前記横力の釣り合い関係とロールモーメントの釣り合い関係が、2軸以上の車両を含む多軸車両の横力の釣り合い関係とロールモーメントの釣り合い関係であることをさらに含んでもよい。
【0012】
前記荷重伝達比閾値モデルのモデル式は、以下の式であってもよい。
【0013】
【0014】
式中、LTRgはn軸車の横荷重伝達比であり、nは車両の軸数であり、msは車両のバネ上質量であり、hsは車両の重心からロール軸までの垂直距離であり、hu=hujは各車軸のロール中心から地面までの距離であり、Tは各車軸のトレッドであり、φは車体のロール角であり、Kφ,j,kは各車軸のサスペンションロール剛性及び合成ロール剛性であり、Cφ,j,cは各車軸のサスペンション減衰係数及び合成減衰係数であり、li=(i=1,…,n)は各車軸の重心からの縦方向距離である。
【0015】
車両のバネ上質量msとバネ下質量muの大きさ関係がms≫muであり、且つ各車軸のロール中心の地上高が等しい場合、ダランベールの原理により前記荷重伝達比閾値モデルのモデル式を簡略化し、以下の簡略化モデル式を得ることをさらに含んでもよい。
【0016】
【0017】
式中、m=ms+mu、muは車両のバネ下質量である。
【0018】
前記算出された横荷重伝達比と予め設定された横転閾値に基づき、車両の横転危険性の有無を判定することは、前記算出された横荷重伝達比の絶対値が予め設定された横転閾値以下である場合、車両の横転危険性が無いと判定することと、前記算出された横荷重伝達比の絶対値が予め設定された横転閾値よりも大きい場合、車両の横転危険性が有ると判定することと、を含んでもよい。
【0019】
車両の横転危険性が有ると判定される場合には、前記横荷重伝達比の絶対値の大きさに応じて危険度を分け、前記横荷重伝達比の絶対値が大きい場合には、前記危険度がそれなりに高くなるようにしてもよい。
【0020】
前記横荷重伝達比及び/又は前記危険度を含む横転警報提示情報を、表示装置によって表示し、音声装置によってアナウンスし及び/又はメータによって指示すること、及び/又は、前記危険度を表示灯によって表示することをさらに含んでもよい。
【0021】
本発明の他の態様は、車体のロール状態のパラメータを収集する収集モジュールと、前記収集された車体のロール状態のパラメータ、及びバネ上質量の遠心力横転モーメントを含む予め設定された荷重伝達比閾値モデルに基づき、車両の横荷重伝達比を算出する処理モジュールと、前記算出された横荷重伝達比と予め設定された横転閾値に基づき、車両の横転危険性の有無を判定する判定モジュールとを備える車両の横転防止警報装置をさらに提供する。
【0022】
前記車体のロール状態のパラメータは、車体のロール角及びロール角速度を含んでもよい。
【0023】
前記荷重伝達比閾値モデルが車両の横力の釣り合い関係とロールモーメントの釣り合い関係に基づいて形成されることをさらに含んでもよい。
【0024】
前記横力の釣り合い関係とロールモーメントの釣り合い関係が、2軸以上の車両を含む多軸車両の横力の釣り合い関係とロールモーメントの釣り合い関係であることをさらに含んでもよい。
【0025】
前記荷重伝達比閾値モデルのモデル式は、以下の式であってもよい。
【0026】
【0027】
式中、LTRgはn軸車の横荷重伝達比であり、nは車両の軸数であり、msは車両のバネ上質量であり、hsは車両の重心からロール軸までの垂直距離であり、hu=hujは各車軸のロール中心から地面までの距離であり、Tは各車軸のトレッドであり、φは車体のロール角であり、Kφ,j,kは各車軸のサスペンションロール剛性及び合成ロール剛性であり、Cφ,j,cは各車軸のサスペンション減衰係数及び合成減衰係数であり、li=(i=1,…,n)は各車軸の重心からの縦方向距離である。
【0028】
車両のバネ上質量msとバネ下質量muの大きさ関係がms≫muであり、且つ各車軸のロール中心の地上高が等しい場合、ダランベールの原理により前記荷重伝達比閾値モデルのモデル式を簡略化し、以下の簡略化モデル式を得ることをさらに含んでもよい。
【0029】
【0030】
式中、m=ms+mu、muは車両のバネ下質量である。
【0031】
前記判定モジュールは、前記算出された横荷重伝達比の絶対値が予め設定された横転閾値以下である場合、車両の横転危険性が無いと判定することと、前記算出された横荷重伝達比の絶対値が予め設定された横転閾値よりも大きい場合、車両の横転危険性が有ると判定することと、にさらに用いられてもよい。
【0032】
前記判定モジュールは、車両の横転危険性が有ると判定される場合には、前記横荷重伝達比の絶対値の大きさに応じて危険度を分けることにさらに用いられ、前記横荷重伝達比の絶対値が大きい場合には、前記危険度がそれなりに高くなるようにしてもよい。
【0033】
前記横荷重伝達比及び/又は前記危険度を含む横転警報提示情報を与える表示装置、音声装置及び/又はメータ、及び/又は前記危険度を表示する表示灯をさらに備えてもよい。
【0034】
本発明の別の態様は、前記いずれか1項に記載の装置を備える車両をさらに提供する。
【0035】
本発明の別の態様は、プロセッサ、メモリ及びメモリに記憶され、プロセッサで実行可能なコンピュータプログラムを備え、前記プロセッサが前記プログラムを実行する場合、前記いずれか1項に記載のサーバ側に適用される方法のステップを実施する車両をさらに提供する。
【0036】
本発明の更なる別の態様は、プロセッサによって実行される場合、前記いずれか1項に記載のサーバ側、端末側、又はデバイス側に適用される方法のステップを実施するコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読記憶媒体をさらに提供する。
【0037】
本発明に係る技術案で使用したバネ上質量の遠心力横転モーメントに基づく荷重伝達比閾値モデルは、実車の横転状態により近いものであり、状態指示作用がより正確で、警報の精度が高い。また、本発明に係る技術案は、様々な軸数の車両に適用され、様々な軸数のバンに対して横転警報を行うことができる。さらに、カスタマイズされた閾値設定により、車種別に最適な警報効果を出すことができる。荷重伝達比の特性及び運転者の習慣に応じて、メータ指示などの複数の手段を用いることにより、現在の運転操作による横転危険状態への影響を直観的に示す効果を持たせ、運転者が危険状態に応じて運転操作を修正することを容易にする。
【0038】
本明細書に記載された図面は、本発明をさらに理解するためのものであり、本発明の一部を構成する。本発明の例示的な実施形態及びその説明は、本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、本発明に係る車両の横転防止警報方法の全体構成図である。
【
図2】
図2は、多軸車の横転動力学モデルの模式図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る車両の横転防止警報方法の好ましい実施形態のアルゴリズムの流れ図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る車両の横転防止警報装置の全体構成図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る車両の横転防止警報装置の好ましい実施形態の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下は本発明の具体的な実施形態及び対応する図面を参照しながら、本発明の技術案を明確で完全に説明する。勿論、説明される実施形態は、本発明の一部の実施形態に過ぎず、全部の実施形態ではない。本発明の実施形態に基づき、当業者が創造的な労働をせずに得る全ての他の実施形態は、いずれも本発明の保護範囲内にある。
【0041】
なお、本発明の明細書、特許請求の範囲、及び上記の図面における「第1」、「第2」などの用語は、類似の対象を区別するために用いられるものであり、特定の順序又は順番を記述するために用いられるものではない。このように使用されるデータは、本明細書に記載される本発明の実施形態が、ここで図示又は記載されるもの以外の順序で実施され得るように、適切な場合に入れ替えることが可能であると理解されるべきである。さらに、「含む」や「有する」及びそれらの用語の任意の変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図しており、例えば、一連のステップ又はユニットを含むプロセス、方法、システム、製品又は装置は、必ずしも明確に列挙されたそれらのステップ又はユニットに限定されるものではなく、明確に列挙されていない或いはそれらのプロセス、方法、製品又は装置にとって固有の他のステップ又はユニットを含んでもよい。
【0042】
本発明の一態様は、車両の横転防止警報方法を提供する。
図1は、本発明に係る車両の横転防止警報方法の全体構成図である。
図2は、多軸車の横転動力学モデルの模式図である。
図1及び
図2に示すように、本発明の車両の横転防止警報方法は、車体のロール状態のパラメータを収集するステップS110と、前記収集された車体のロール状態のパラメータ、及びバネ上質量の遠心力横転モーメントを含む予め設定された荷重伝達比閾値モデルに基づき、車両の横荷重伝達比を算出するステップS120と、前記算出された横荷重伝達比と予め設定された横転閾値に基づき、車両の横転危険性の有無を判定するステップS130と、を含む。荷重伝達比閾値モデルは、バネ上質量の遠心力横転モーメントの横転臨界状態での釣り合い作用を考慮したため、横転臨界状態の実態により近いものとなっている。
【0043】
「バネ上質量」及び「バネ下質量」は、自動車の安全性及び快適性にとって非常に重要である。弾性要素(バネ及びダンパシリンダを含む)によって荷重される質量は、「バネ上質量」と呼ばれ、主にシャーシ骨格及び他の全ての弾性部品によって荷重される質量を含む。一方、サスペンションアーム又は弾性要素から車輪端に延びる部品は、いずれも「バネ下質量」に分類される。簡単に説明すれば、車輪と共にバウンド可能な部品は「バネ下質量」に属し、車体に対して相対的な静止しか保持できない部品は「バネ上質量」に属する。例えば、非独立懸架式の自動車の場合、リアアクスルは車輪のバウンドに伴って傾くことがあるので、「バネ下質量」に該当する。
【0044】
本発明に係る技術案は、異なる荷重伝達比指標が横転状態を示す時の優劣を比較することにより、車両動力学に基づく荷重伝達比閾値モデルを選択し、既存の閾値モデルを改良してなるものである。従来の車両の横転動力学モデルに記述された横転状態は、臨界状態ではなく、依然としてX軸回りの慣性モーメントによる釣り合い作用が残っているが、本発明に係る技術案は、車両のバネ上質量の横加速度によるロールモーメントを釣り合い過程に加えることにより、より横転臨界状態に近づけることになる。バネ上質量の遠心力横転モーメントを考慮したため、本発明に係る汎用荷重伝達比モデルは、従来のモデルよりも実車の横転状態に近くなり、状態指示作用がより正確になる。
【0045】
本発明に係る車両の横転防止警報方法の一実施形態によれば、車両の横力とロールモーメントの釣り合い関係に基づいて前記荷重伝達比閾値モデルを形成することをさらに含む。前記横力とロールモーメントの釣り合い関係は、2軸以上の車両を含む多軸車両の横力とロールモーメントの釣り合い関係である。従来技術の種々の横転閾値は、2軸車両に対する設定であり、本発明に係る技術案は、多軸(2軸を含む)車両の動力学をモデル化することにより、横転警報システムが様々な軸数のバンに広く適用できるようにした。
【0046】
横力とロールモーメントの釣り合い関係、即ち、水平方向力の釣り合いと横転限界状態のモーメントの釣り合い関係に基づいて、
【0047】
【0048】
ロール角が非常に小さい場合、
【0049】
【0050】
さらに、モーメントの釣り合いと荷重伝達比の定義に基づいて、
【0051】
【0052】
それで、n軸車の横荷重伝達比を得、次の通りである。
【0053】
【0054】
式中、LTRgはn軸車の横荷重伝達比であり、nは車両の軸数であり、msは車両のバネ上質量であり、hsは車両の重心からロール軸までの垂直距離であり、hu=hujは各車軸のロール中心から地面までの距離であり、Tは各車軸のトレッドであり、φは車体のロール角であり、Kφ,j,kは各車軸のサスペンションロール剛性及び合成ロール剛性であり、Cφ,j,cは各車軸のサスペンション減衰係数及び合成減衰係数であり、li=(i=1,…,n)は各車軸の重心からの縦方向距離であり、ayは車両の横加速度である。
【0055】
式1は多軸バンの横転危険性をより正確に示すことができるが、実際の使用では複雑になりすぎ、軸数が増えると計算量が大幅に増加すると同時に、変数の測定も大きな手間がかかる。そこで、モデルをある程度に簡略化し、バネ上質量がバネ下質量より遥かに大きく、即ち、ms≫muであり、且つ各車軸のロール中心の地上高が略等しく、地上高がhu=huiである場合、ダランベールの原理により、前記荷重伝達比閾値モデルのモデル式を簡略化する。ダランベールの原理の公式は、次の通りである。
【0056】
【0057】
式中、ΔWi=(i=1,…,n),ΔWは、それぞれ各車軸の荷重伝達量と車全体の荷重伝達量であり、Fi=(i=1,…,n)は、各車軸のタイヤ横力(横力)であり、Mはモーメント(Moment)を表し、添え字X,sprungは、バネ上質量(sprung mass)のX軸回りのモーメントを表し、添え字X,unsprungは、バネ下質量(unsprung mass)のX軸回りのモーメントを表す。
【0058】
また、hu=huiであり、且つ
【0059】
【0060】
であるため、式1に基づいて以下の簡略化モデル式が得られる。
【0061】
【0062】
式中、m=ms+mu、muは車両のバネ下質量である。
【0063】
多軸車の横転動力学モデルの模式図は
図2を参照でき、
図2に示される符号の意味は上記の式と同じである。
【0064】
本発明に係る車両の横転防止警報方法の一実施形態によれば、前記車体のロール状態のパラメータは、車体のロール角及びロール角速度を含む。本発明に係る技術案によって提供される荷重伝達比閾値モデルの要件に基づくと、いくつかの重要なパラメータ及び変数が必要とされ、パラメータは、車両のバネ上質量、バネ下質量、重心からロール中心までの垂直距離、ロール中心から地面までの距離、車両のホイールベース、サスペンションの合成ロール剛性及び合成減衰係数を含む一方、変数はロール角及びロール角速度のみを必要とする。
【0065】
本発明に係る車両の横転防止警報方法の一実施形態によれば、前記算出された横荷重伝達比と予め設定された横転閾値に基づき、車両の横転危険性の有無を判定することは、前記算出された横荷重伝達比の絶対値が予め設定された横転閾値以下である場合、車両の横転危険性が無いと判定することと、前記算出された横荷重伝達比の絶対値が予め設定された横転閾値よりも大きい場合、車両の横転危険性が有ると判定することと、を含む。現在算出されている動的閾値に基づき、車両の予め設定された横転閾値と比較し、通常、予め設定された横転閾値は1よりも小さく、照合すべき車両に応じて警報閾値比率を設定でき、例えば、予め設定された横転閾値を50%に設定することができる。
【0066】
図3は、本発明に係る車両の横転防止警報方法の好ましい実施形態のアルゴリズムの流れ図である。
図3に示すように、多軸車の側転閾値モデルに基づき、横転防止警報システムのアルゴリズムの流れ設計を行う。車両のロール角センサをリアルタイムで検出してロール角速度及びロール角を得る。そして、車両のサスペンションの合成減衰係数に基づき、サスペンション減衰のアンチロールモーメントを算出し、サスペンションの合成ロール剛性に基づき、サスペンションの弾性アンチロールモーメントを算出すると同時に、バネ上質量による車体の慣性横転モーメントを算出し、以上のモーメント値に基づき多軸車の横転モーメントを算出する。更に、多軸車の横転モーメント、バネ上質量及びバネ下質量と、式2の汎用荷重伝達比モデルとに基づき、LTR
gを算出する。現在算出されている動的閾値に基づき、車両の設定された横転閾値と比較し、通常、設定された横転閾値は1よりも小さく、照合すべき車両に応じて警報閾値比率を設定できる。
図3に示される50%及び70%という閾値は、参考する設定閾値である。最後に、警報表示部を設定し、荷重伝達比の定義から、ハンドルが右折すると車両の荷重が左側に移動し、LTR
gの指示値が右側を指向することが分かり、操作が激しいほど横転の危険性が高くなり、運転者に提示を直観的に与えることにより、自身の運転行動を規範化させ、横転事故を回避することができる。
【0067】
上記の計算流れでは、多軸車の横転モーメントは合モーメントであり、バネ上質量モーメントの釣り合いからバネ下質量モーメントの釣り合いへ伝達し、最終的には、力とモーメントの関係と、荷重伝達比LTRの定義、即ち、LTR=ΔW/W(バネ下モーメントの釣り合い式における荷重伝達ΔW)と、総荷重W(即ち、ms+mu)と、によって得られる。上式において、ΔWiTi/2は荷重伝達モーメントの釣り合いであり、荷重伝達ΔWが得られ、さらにLTR=ΔW/Wが得られる。msayhscosφは、バネ上質量の遠心横転モーメントである。車体の慣性横転モーメントは、msayhscosφ+ msghssinφである。サスペンション減衰のアンチロールモーメントは、
【0068】
【0069】
である。サスペンションの弾性アンチロールモーメントは、kφである。車体の慣性横転モーメントからサスペンション減衰のアンチロールモーメントを減算し、さらにサスペンションの弾性アンチロールモーメントを減算したものは、多軸車の総横転モーメントである。
【0070】
車両の動力学モデルに基づく横転防止警報方法は、車両のサスペンションロール剛性、減衰係数、ロール角及びロール角速度のみに敏感であり、車両の横転危険状態を動的にリアルタイムで指示することができる。
【0071】
本発明に係る車両の横転防止警報方法の一実施形態によれば、車両の横転危険性が有ると判定される場合には、前記横荷重伝達比の絶対値の大きさに応じて危険度を分け、前記横荷重伝達比の絶対値が大きい場合には、前記危険度がそれなりに高くなる。
図3に示すように、メータ指示における横転危険状態は、安全、2級黄色警報及び3級赤色警報という3種類に分類される。-50%≦LTR
g≦50%である場合は、安全状態であり、50%<LTR
g<70%又は-70%<LTR
g<-50%である場合は、2級黄色警報状態であり、LTR
g≧70%又はLTR
g≦-70%である場合は、3級赤色警報状態である。危険度が高いほど横転の可能性が高いことを意味する。警報の閾値は車種別にカスタマイズされた調整が可能であり、重心が高く、固有横転閾値が低い車両ほどマッチングする時に低い閾値を設定して異なる車種の安全要件を満たすことができる。
【0072】
本発明に係る車両の横転防止警報方法の一実施形態によれば、前記横荷重伝達比及び/又は前記危険度を含む横転警報提示情報を、表示装置によって表示し、音声装置によってアナウンスし及び/又はメータによって指示すること、及び/又は前記危険度を表示灯によって表示することをさらに含む。モデルに示された車両のロール状態をメータ指示という方法で指示することは、運転者の直観的な感覚に合致する。ハンドルを左に回すとき、車両が右に傾き、LTR<0となり、横転危険状態指針は左に傾き、且つ振幅と正の相関がある。逆に、ハンドルを右に回す場合も、車両の横転危険性の激しさは、指針に示されたものと同様である。
【0073】
本発明の他の態様は、車両の横転防止警報装置をさらに提供する。
図4は本発明に係る車両の横転防止警報装置の全体構成図である。
図4に示すように、本発明の車両の横転防止警報装置は、車体のロール状態のパラメータを収集する収集モジュール100と、前記収集された車体のロール状態のパラメータ、及びバネ上質量の遠心力横転モーメントを含む予め設定された荷重伝達比閾値モデルに基づき、車両の横荷重伝達比を算出する処理モジュール200と、前記算出された横荷重伝達比と予め設定された横転閾値に基づき、車両の横転危険性の有無を判定する判定モジュール300とを備える。
【0074】
本発明に係る車両の横転防止警報装置の一実施形態によれば、前記車体のロール状態のパラメータは、車体のロール角及びロール角速度を含む。
【0075】
本発明に係る車両の横転防止警報装置の一実施形態によれば、前記荷重伝達比閾値モデルが車両の横力とロールモーメントの釣り合い関係に基づいて形成されることをさらに含む。
【0076】
本発明に係る車両の横転防止警報装置の一実施形態によれば、前記横力とロールモーメントの釣り合い関係が、2軸以上の車両を含む多軸車両の横力とロールモーメントの釣り合い関係であることをさらに含む。
【0077】
本発明に係る車両の横転防止警報装置の一実施態様によれば、前記荷重伝達比閾値モデルのモデル式は、以下の式である。
【0078】
【0079】
式中、LTRgはn軸車の横荷重伝達比であり、nは車両の軸数であり、msは車両のバネ上質量であり、hsは車両の重心からロール軸までの垂直距離であり、hu=hujは各車軸のロール中心から地面までの距離であり、Tは各車軸のトレッドであり、φは車体のロール角であり、Kφ,j,kは各車軸のサスペンションロール剛性及び合成ロール剛性であり、Cφ,j,cは各車軸のサスペンション減衰係数及び合成減衰係数であり、li=(i=1,…,n)は各車軸の重心からの縦方向距離である。
【0080】
本発明に係る車両の横転防止警報装置の一実施形態によれば、車両のバネ上質量msとバネ下質量muの大きさ関係がms≫muであり、且つ各車軸のロール中心の地上高が等しい場合、ダランベールの原理により前記荷重伝達比閾値モデルのモデル式を簡略化し、以下の簡略化モデル式を得ることをさらに含む。
【0081】
【0082】
式中、m=ms+mu、muは車両のバネ下質量である。
【0083】
本発明に係る車両の横転防止警報装置の一実施形態によれば、前記判定モジュール300は、前記算出された横荷重伝達比の絶対値が予め設定された横転閾値以下である場合、車両の横転危険性が無いと判定することと、前記算出された横荷重伝達比の絶対値が予め設定された横転閾値よりも大きい場合、車両の横転危険性が有ると判定することと、にさらに用いられる。
【0084】
本発明に係る車両の横転防止警報装置の一実施形態によれば、前記判定モジュール300は、車両の横転危険性が有ると判定される場合には、前記横荷重伝達比の絶対値の大きさに応じて危険度を分けることにさらに用いられ、前記横荷重伝達比の絶対値が大きい場合には、前記危険度がそれなりに高くなる。
【0085】
本発明に係る車両の横転防止警報装置の一実施形態によれば、前記横荷重伝達比及び/又は前記危険度を含む横転警報提示情報を与える表示装置、音声装置及び/又はメータ、及び/又は前記危険度を表示する表示灯をさらに備える。
【0086】
図5は、本発明に係る車両の横転防止警報装置の好ましい実施形態の機能ブロック図である。
図5に示すように、本発明に係る車両の横転防止警報装置は、基本となる横転モデル部と実際の横転警報プログラム部という2つの部分を含む。横転モデルの要件に基づくと、いくつかの重要なパラメータ及び変数が必要とされ、パラメータは、車両のバネ上質量、バネ下質量、重心からロール中心までの垂直距離、ロール中心から地面までの距離、車両のホイールベース、サスペンションの合成ロール剛性及び合成減衰係数を含む一方、変数はロール角及びロール角速度のみを必要とする。重要なパラメータは、車両出荷時のパラメータと実際の走行条件とによって決められ、サスペンションに関するパラメータは、特定の試験マッチングを行う必要がある一方、変数は、センサ装置によって取得できる。車載CANバスネットワークを介してセンサデータをECUモジュール(Electronic Control Unit、電子制御ユニット)などの横転警報システムの計算モジュールに伝送し、
図3に示される計算流れ及びアルゴリズムを経て、さらに動的横転閾値に基づき、最終的に車両の横転危険状態を動的にリアルタイムで指示する。動的横転閾値の設定は車によって異なり、現地の具体的な実際の状況に応じて設定される。通常、動的横転閾値の範囲は-1~+1であり、危険度の設定は、異なる車種自身の要件によって異なり、例えば、大型車の場合は±0.5、小型車の場合は±0.6と設定し、極端な危険状態では、大型車の場合は±0.7、小型車の場合は±0.8などと設定することができる。そして、リアルタイムで算出された現在の荷重伝達比と上記動的横転閾値の設定値とを比較する。
【0087】
以上のように、本発明は、車体の動力学モデルを利用し、荷重伝達の問題を力とモーメントの釣り合い問題、横転モーメントとアンチロールモーメントの釣り合い問題とした。
図3に示すような多軸車の横転動力学の汎用閾値LTR
gに基づく横転警報アルゴリズム模式図によれば、車体自身のパラメータの設定により、リアルタイムで検出し、判定して警報を行うことができる。具体的な実施は、実際の状況に応じて
図5の構造模式図を参照して実現できる。横転閾値の設定は、車によって異なり、現地の状況に応じて行われる。また、実施は、CAN(Controller Area Network、コントローラエリアネットワーク)バスネットワークを介してデータを共有し、表示又は警報を行い、独立したモジュールとして用いるか、既存のバスネットワークに組み込むことが可能である。警報の方式も数値の大きさに応じて異なるレベルに設定することができるので、運転者が車両の横転危険状況を直観的に理解するのに有利である。
【0088】
実施形態では、センサ装置は、統合された共有車両データという形態であってもよく、単独のセンサ装置であってもよい。マイクロプロセッサは、マイクロコンピュータセンタ、マイクロプロセッサ、MCU(Microcontroller Unit、マイクロコントローラユニット)などであってよい。表示ユニットは音声による報知機能を有してもよく、又は表示灯による表示であってもよく、画像表示器による報知に限定されない。
【0089】
本発明の別の態様は、前記いずれか1項に記載の装置を備える車両をさらに提供する。
【0090】
本発明の別の態様は、プロセッサ、メモリ及びメモリに記憶され、プロセッサで実行可能なコンピュータプログラムを備え、前記プロセッサが前記プログラムを実行する場合、前記いずれか1項に記載のサーバ側に適用される方法のステップを実施する車両をさらに提供する。
【0091】
本発明の更なる別の態様は、プロセッサによって実行される場合、前記いずれか1項に記載のサーバ側、端末側、又はデバイス側に適用される方法のステップを実施するコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読記憶媒体をさらに提供する。
【0092】
本発明に係る技術案で使用したバネ上質量の遠心力横転モーメントに基づく荷重伝達比閾値モデルは、実車の横転状態により近いものであり、状態指示作用がより正確で、警報の精度が高い。また、本発明に係る技術案は、様々な軸数の車両に適用され、様々な軸数のバンに対して横転警報を行うことができる。さらに、カスタマイズされた閾値設定により、車種別に最適な警報効果を出すことができる。荷重伝達比の特性及び運転者の習慣に応じて、メータ指示などの複数の手段を用いることにより、現在の運転操作による横転危険状態への影響を直観的に示す効果を運転者に持たせ、運転者が危険状態に応じて運転操作を修正することを容易にする。
【0093】
本明細書に記載の機能は、ハードウェア、プロセッサによって実行されるソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組合せで実施されることができる。プロセッサによって実行されるソフトウェアで実施される場合、機能が1つ又は複数の命令或いはコードとしてコンピュータ可読媒体に記憶されるか、又はコンピュータ可読媒体を介して伝送されることができる。他の例及び実施形態は、本発明及び添付の特許請求の範囲や精神内にある。例を挙げると、ソフトウェアの性質によっては、上記に説明した機能は、プロセッサ、ハードウェア、ファームウェア、ハードワイヤ又はそれらの任意の組合せによって実行されるソフトウェアで実施できる。また、各機能ユニットは、1つの処理ユニットに統合されていてもよく、各ユニットが物理的に別々に存在していてもよく、2つ又は2つ以上のユニットが1つのユニットに統合されていてもよい。
【0094】
本願が提供したいくつかの実施形態において、開示される技術的内容は、他の方法で実現できると理解すべきである。上記に説明した装置の実施形態は、単に例示的なものである。例えば、前記ユニットに関する分割は、論理的機能の分割であってもよく、実際の実施において、他の分割方法が存在してもよい。例えば、複数のユニット又は構成要素が、組み合わせられてもよく、又は、別のシステムに統合されてもよく、又は、一部の特徴は無視されてもよく又は実行されなくてもよい。また、表示または議論される相互結合又は直接結合又は通信接続は、何らかのインターフェース、ユニット又はモジュールを介する間接的な結合又は通信接続であってもよく、電気的又は他の形態のものであってもよい。
【0095】
前記分離部品として説明したユニットは、物理的に分離されていても、分離されていなくてもよく、制御装置としての部品は、物理ユニットでも非物理ユニットでもよく、1つの場所に配置されても、複数のユニットに配置されてもよい。実際の必要に応じてそのうちの一部又は全部のユニットを選択して本実施形態の目的を実現することができる。装置の実施形態については、方法の実施形態と基本的に対応するので、説明は簡単であり、関連する部分は方法の実施形態部分の説明を参照すればよい。
【0096】
前記統合されたユニットをソフトウェア機能ユニットの形態で実施し、独立した製品として販売又は使用する場合には、コンピュータ可読記憶媒体に記憶してもよい。このような理解に基づき、本発明の技術案、又は従来技術に寄与する部分、又は該技術案の全部又は一部は、ソフトウェア製品の形態で具現化でき、該コンピュータソフトウェア製品は、本発明の各実施形態に係る方法のステップの全部又は一部を1つのコンピュータ装置(パーソナルコンピュータ、サーバ、又はネットワーク装置などが挙げられる)に実行させるための複数の命令を含む1つの記憶媒体に記憶される。なお、前記記憶媒体としては、U-ディスク、読み出し専用メモリ(ROM、Read-Only Memory)、ランダムアクセスメモリ(RAM、Random Access Memory)、リムーバブルハードディスク、磁気ディスク、光ディスクなどのプログラムコードを記憶できる種々の媒体を含む。
【0097】
以上の説明は、本発明の実施形態に過ぎず、本発明を限定するためのものではない。当業者にとっては、本発明は様々な変更や変形が可能である。本発明の精神及び原則内で行われる任意の修正、均等な置き換え、改良などは、本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。