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  • 特許-ジアミン誘導体を含む顆粒剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】ジアミン誘導体を含む顆粒剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/444 20060101AFI20231003BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20231003BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20231003BHJP
   A61P 7/02 20060101ALN20231003BHJP
【FI】
A61K31/444
A61K9/10
A61K9/16
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/38
A61P7/02
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2020527572
(86)(22)【出願日】2019-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2019025363
(87)【国際公開番号】W WO2020004456
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2018121423
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146581
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 公樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113583
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 範子
(74)【代理人】
【識別番号】100161160
【弁理士】
【氏名又は名称】竹元 利泰
(72)【発明者】
【氏名】シュミット ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】クーリー マレン
(72)【発明者】
【氏名】シュー クリストフ
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/115067(WO,A1)
【文献】特表2009-544674(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0161417(US,A1)
【文献】特開2012-036140(JP,A)
【文献】特開2017-008112(JP,A)
【文献】特表2017-523149(JP,A)
【文献】国際公開第2008/129846(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エドキサバン、またはその薬理上許容される塩
(B)糖アルコール、および
(C)水膨潤性添加剤
を含有する第一顆粒と
(D)製剤総重量に対して0.5~10重量%のカルメロースナトリウム、および
(E)製剤総重量に対して70~90重量%のキシリトール、またはソルビトール
を含有する第二顆粒とを含む顆粒剤であって、
(C)水膨潤性添加剤が部分アルファー化デンプンおよび/または結晶セルロースである、
顆粒剤
【請求項2】
第一顆粒のメジアン径(R1)と第二顆粒のメジアン径(R2)の比(R2/R1)が0.75~1.75である請求項1に記載の顆粒剤。
【請求項3】
第一顆粒のメジアン径(X50)が130μm~240μmであり、第二顆粒のメジアン径(X50)が170μm~240μmである請求項1に記載の顆粒剤。
【請求項4】
製剤総重量に対して0.3~10重量%の(A)エドキサバン、またはその薬理上許容される塩を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の顆粒剤。
【請求項5】
(A)エドキサバンまたはその薬理上許容される塩がエドキサバントシル酸塩一水和物である請求項1~4のいずれか1項に記載の顆粒剤。
【請求項6】
(B)糖アルコールがD-マンニトール、キシリトール、またはエリスリトールである請求項1~5のいずれか1項に記載の顆粒剤。
【請求項7】
(B)糖アルコールがD-マンニトールである請求項6に記載の顆粒剤。
【請求項8】
製剤総重量に対して3~15重量%の(B)糖アルコールを含む請求項1~7のいずれか1項に記載の顆粒剤。
【請求項9】
(C)水膨潤性添加剤が部分アルファー化デンプンである請求項に記載の顆粒剤。
【請求項10】
製剤総重量に対して1~10重量%の(C)水膨潤性添加剤を含む請求項1~のいずれか1項に記載の顆粒剤。
【請求項11】
さらに崩壊剤を含む請求項1~10のいずれか1項に記載の顆粒剤。
【請求項12】
前記崩壊剤が第一顆粒に含まれる請求項11に記載の顆粒剤。
【請求項13】
前記崩壊剤がクロスポビドン、および/またはカルボキシメチルスターチナトリウムである請求項11または12に記載の顆粒剤。
【請求項14】
前記崩壊剤がクロスポビドンである請求項13に記載の顆粒剤。
【請求項15】
さらに結合剤を含む請求項1~14のいずれか1項に記載の顆粒剤。
【請求項16】
前記結合剤が第一顆粒に含まれる請求項15に記載の顆粒剤。
【請求項17】
前記結合剤がヒドロキシプロピルセルロースである請求項15または16に記載の顆粒剤。
【請求項18】
前記顆粒剤が経口懸濁剤用の顆粒剤、またはドライシロップ剤である請求項1~17のいずれか1項に記載の顆粒剤。
【請求項19】
前記顆粒剤が経口懸濁剤用の顆粒剤である請求項18に記載の顆粒剤。
【請求項20】
前記顆粒剤がドライシロップ剤である請求項18に記載の顆粒剤。
【請求項21】
水溶液、または水性懸濁液として使用される請求項1~20のいずれか1項に記載の顆粒剤。
【請求項22】
(A)エドキサバン、またはその薬理上許容される塩、
(B)D-マンニトール
(C)部分アルファー化デンプン
(D)クロスポビドン、および
(E)ヒドロキシプロピルセルロース
を水、または(E)ヒドロキシプロピルセルロースの水溶液を用いて湿式造粒することによって第一顆粒を得る工程;
(F)製剤総重量に対して0.5~10重量%のカルメロースナトリウム、および
(G)製剤総重量に対して70~90重量%のキシリトール、またはソルビトール
を水、または(F)カルメロースナトリウムの水溶液を用いて湿式造粒することによって第二顆粒を得る工程;および、
得られた第一顆粒と第二顆粒を混合する工程を含む顆粒剤の製造方法。
【請求項23】
湿式造粒が流動層造粒である請求項22に記載の製造方法。
【請求項24】
第一顆粒のメジアン径(R1)と第二顆粒のメジアン径(R2)の比(R2/R1)が0.75~1.75である請求項22または23に記載の製造方法。
【請求項25】
第一顆粒のメジアン径(X50)が130μm~240μmであり、第二顆粒のメジアン径(X50)が170μm~240μmである請求項22または23に記載の製造方法。
【請求項26】
前記顆粒剤が経口懸濁剤用の顆粒剤またはドライシロップ剤である請求項2225に記載の製造方法。
【請求項27】
前記顆粒剤が経口懸濁剤用の顆粒剤である請求項26に記載の製造方法。
【請求項28】
前記顆粒剤がドライシロップ剤である請求項26に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエドキサバンまたはその薬理上許容される塩を含有し、水を加えた際に速やかに溶解または懸濁する性質を有する顆粒剤に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の式(I)
【0003】
【化1】
で表されるN-(5-クロロピリジン-2-イル)-N-((1S,2R,4S)-4-[(ジメチルアミノ)カルボニル]-2-{[(5-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロチアゾロ[5,4-c]ピリジン-2-イル)カルボニル]アミノ}シクロヘキシル)エタンジアミドは一般名:エドキサバンを有する。エドキサバンは血液凝固カスケードにおいて、プロトロンビンからトロンビンを生成し、フィブリン形成を促進することにより血栓を形成する作用のある活性化血液凝固第X因子(activatedbloodcoagulationfactorXまたはFXa)を選択的、可逆的かつ直接的に阻害することにより、血栓形成抑制作用を発現する(特許文献1)。
【0004】
医薬品および食品の分野における経口用固形製剤の剤形として、錠剤、カプセル剤、顆粒剤または散剤など数多くのものが知られている。そのような剤形の中でも近年、高齢者、小児などの嚥下困難な患者にもより服用しやすい剤形として、顆粒剤、ドライシロップ剤、経口ゼリー剤または口腔内崩壊錠などの剤形が注目を集め、盛んに開発が行われている。
【0005】
経口ゼリー剤は水分を多く含み、適度な流動性を有することから嚥下能力が低い、または低下した患者において服用しやすく、携行性に優れ、さらには投与量の調整も可能である。また、経口ゼリー剤は甘味を有し、薬剤がもつ苦味を抑制することから小児にも適した剤形である。しかしながら、経口ゼリー剤は水分を多く含み、製造工程において薬剤を水に溶解、または分散させる必要があり、その結果、長期にわたって薬剤の安定性を保つことが難しいという課題をもつ。
【0006】
口腔内崩壊錠は、口腔内で速やかに崩壊するという特性に加え、通常の錠剤と同じく、製造、輸送、使用に際しては、物理的な衝撃に耐えうる十分な硬度を併せ持つ。上記の理由から口腔内崩壊錠は嚥下能力の低下した患者に対する好ましい剤形として幅広い支持を受けている。しかしながら、上市されている多くの口腔内崩壊錠は成人を対象とした規格で製品化されており、錠剤の一般的な性質として細かな用量調整には適さないことから、小児に適する剤形としては課題が残っている。
【0007】
顆粒剤は粉末または粒状の製剤であることから携行性に優れ、高齢者や小児などの嚥下能力が低い、または低下した患者においても服用しやすく、さらには投与患者の体重に合わせた細かな投与量の調整を行うこともできる。上記の理由から顆粒剤は服薬コンプライアンスの向上に貢献し、嚥下能力の低下した患者、特に小児に対する好ましい剤形として幅広い支持を受けている。さらに顆粒剤は主薬の苦味を低減するために甘味を加えることができる点が好ましい。
【0008】
経口懸濁剤用の顆粒剤およびドライシロップ剤は水を加えるとき、懸濁液または水溶液となる顆粒状の製剤であり、通例、用時溶解または用時懸濁して用いる。経口懸濁剤用の顆粒剤およびドライシロップ剤は顆粒剤が有する携行性という点に加え、水を加えた際に速やかに溶解または懸濁し、溶液または懸濁液として経口投与できる点で優れている。経口懸濁剤用の顆粒剤およびドライシロップ剤は溶解または懸濁した後、経口注射器などを用いて容量を基準に投与され得る。
【0009】
嚥下能力の低下した患者に対する顆粒剤としてはこれまでに以下の報告がある。特許文献2には疎水性薬物であるロラタジン、セルロース類縁体および/または天然高分子を含む顆粒剤に関する発明の記載がある。該発明は疎水性薬物の顆粒剤を製造する際、従来必要とされていた界面活性剤や消泡剤を必要としない特徴を有する。しかしながら、本発明に記載されるエドキサバンまたはその薬理上許容される塩を含有し、水を加えた際に速やかに溶解または懸濁する性質を有する顆粒剤に関する記載はない。
【0010】
特許文献3には難水溶性薬物および20℃における2(w/v)%水溶液の粘度が3.0mPa・s未満であるヒドロキシプロピルセルロースを0.5(w/w)%以上含有する、顆粒剤に関する発明の記載がある。しかしながら、主薬としてエドキサバンまたはその薬理上許容される塩を含有する顆粒剤に関する記載はない。
【0011】
一方、エドキサバンまたはその薬理上許容される塩を含む医薬組成物に関する発明としては以下のものが挙げられる。特許文献4には(a)エドキサバン、またはその薬理上許容される塩、またはそれらの水和物、(b)糖アルコール類および水膨潤性添加剤から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする医薬組成物に関する発明が記載されている。
【0012】
特許文献5にはエドキサバンまたはその薬理上許容される塩の含有量を調節した医薬組成物に関する発明が記載されている。
【0013】
特許文献6にはエドキサバン、またはその薬理上許容される塩を含有し、造粒中の造粒物の最大水分値を10%以下に維持して造粒した造粒物に関する発明の記載がある。
【0014】
特許文献7にはエドキサバンまたはその薬理上許容される塩、および有機酸を含有する医薬組成物に関する発明が記載されている。
【0015】
しかしながら、上記特許文献4~7にはエドキサバンまたはその薬理上許容される塩を含有し、水を加えた際に速やかに溶解または懸濁する性質を有する顆粒剤に関する発明の記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
特許文献1:米国特許第7365205号明細書
特許文献2:米国特許出願公開第2008064713号明細書
特許文献3:国際公開第2005/009474号パンフレット
特許文献4:米国特許第9149532号明細書
特許文献5:米国特許第8449896号明細書
特許文献6:米国特許出願公開第20130022683号明細書
特許文献7:米国特許第9402907号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
エドキサバンは、強酸性水溶液では良好な溶解性を示すが、中性の水溶液(中性の緩衝液など)では溶解性(水溶性)が低下することが知られている(特許文献4)。そのような状況下、発明者らは、溶出性が高く、高齢者や小児などの嚥下能力が低下した患者においても服用しやすい顆粒剤を提供するために鋭意検討を行った結果、エドキサバンおよび高含量のキシリトールまたはソルビトールを同一の顆粒に含有する顆粒剤は、キシリトールおよびソルビトールの吸湿性が高く、製造性が悪いため、製造された製剤におけるエドキサバンの含量が低下することを発見した。また、発明者らは、エドキサバンは口腔内で苦味を呈することを発見した。
【0018】
本発明の課題は、エドキサバンまたはその薬理上許容される塩を含有し、水を加えた際に速やかに溶解または懸濁し、優れた溶出性を有し、主薬の苦味が低減された顆粒剤を提供することである。
【0019】
本発明の別の課題は、エドキサバンまたはその薬理上許容される塩および高含量のキシリトールまたはソルビトールを含有し、製造性が良好であり、主薬の含量が低下しない顆粒剤およびその製造方法を提供することである。
【0020】
本発明のさらに別の課題は、エドキサバンまたはその薬理上許容される塩を含有する薬物含有顆粒とそれらを含まない薬物不含有顆粒の2種類の顆粒を混合した際に粒子の粒子径の違いにより、混合粒子が分離すること(以下、本現象を偏析ということがある)がない製剤均一性に優れた顆粒剤およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、(A)エドキサバン、またはその薬理上許容される塩、(B)糖アルコール、および(C)水膨潤性添加剤を含有する第一顆粒と、(D)製剤総重量に対して0.5~10重量%のカルメロースナトリウム、および(E)製剤総重量に対して70~90重量%のキシリトール、またはソルビトールを含有する第二顆粒とを含む顆粒剤が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
【0022】
すなわち本発明は、以下の[1]~[32]に関するものである。
[1]
(A)エドキサバン、またはその薬理上許容される塩
(B)糖アルコール、および
(C)水膨潤性添加剤
を含有する第一顆粒と
(D)製剤総重量に対して0.5~10重量%のカルメロースナトリウム、および
(E)製剤総重量に対して70~90重量%のキシリトール、またはソルビトール
を含有する第二顆粒とを含む顆粒剤。
[2]
第一顆粒のメジアン径(R)と第二顆粒のメジアン径(R)の比(R/R)が0.75~1.75である[1]に記載の顆粒剤。
[3]
第一顆粒のメジアン径(X50)が130μm~240μmであり、第二顆粒のメジアン径(X50)が170μm~240μmである[1]に記載の顆粒剤。
[4]
製剤総重量に対して0.3~10重量%の(A)エドキサバン、またはその薬理上許容される塩を含む[1]~[3]のいずれか1項に記載の顆粒剤。
[5]
(A)エドキサバンまたはその薬理上許容される塩がエドキサバントシル酸塩一水和物である[1]~[4]のいずれか1項に記載の顆粒剤。
[6]
(B)糖アルコールがD-マンニトール、キシリトール、またはエリスリトールである[1]~[5]のいずれか1項に記載の顆粒剤。
[7]
(B)糖アルコールがD-マンニトールである[6]に記載の顆粒剤。
[8]
製剤総重量に対して3~15重量%の(B)糖アルコールを含む[1]~[7]のいずれか1項に記載の顆粒剤。
[9]
(C)水膨潤性添加剤が部分アルファー化デンプン、および/または結晶セルロースである[1]~[8]のいずれか1項に記載の顆粒剤。
[10]
(C)水膨潤性添加剤が部分アルファー化デンプンである[9]に記載の顆粒剤。
[11]
製剤総重量に対して1~10重量%の(C)水膨潤性添加剤を含む[1]~[10]のいずれか1項に記載の顆粒剤。
[12]
さらに崩壊剤を含む[1]~[11]のいずれか1項に記載の顆粒剤。
[13]
前記崩壊剤が第一顆粒に含まれる[12]に記載の顆粒剤。
[14]
前記崩壊剤がクロスポビドン、および/またはカルボキシメチルスターチナトリウムである[12]または[13]に記載の顆粒剤。
[15]
前記崩壊剤がクロスポビドンである[14]に記載の顆粒剤。
[16]
さらに結合剤を含む[1]~[15]のいずれか1項に記載の顆粒剤。
[17]
前記結合剤が第一顆粒に含まれる[16]に記載の顆粒剤。
[18]
前記結合剤がヒドロキシプロピルセルロースである[16]または[17]に記載の顆粒剤。
[19]
前記顆粒剤が経口懸濁剤用の顆粒剤、またはドライシロップ剤である[1]~[18]のいずれか1項に記載の顆粒剤。
[20]
前記顆粒剤が経口懸濁剤用の顆粒剤である[19]に記載の顆粒剤。
[21]
前記顆粒剤がドライシロップ剤である[19]に記載の顆粒剤。
[22]
水溶液、または水性懸濁液として使用される[1]~[21]のいずれか1項に記載の顆粒剤。
[23]
[1]~[21]のいずれか1項に記載の顆粒剤の水溶液、または水性懸濁液。
[24]
[1]~[21]のいずれか1項に記載の顆粒剤の水溶液、または水性懸濁液としての使用。
[25]
(A)エドキサバン、またはその薬理上許容される塩、
(B)D-マンニトール
(C)部分アルファー化デンプン
(D)クロスポビドン、および
(E)ヒドロキシプロピルセルロース
を水、または(E)ヒドロキシプロピルセルロースの水溶液を用いて湿式造粒することによって第一顆粒を得る工程;
(F)製剤総重量に対して0.5~10重量%のカルメロースナトリウム、および
(G)製剤総重量に対して70~90重量%のキシリトール、またはソルビトール
を水、または(F)カルメロースナトリウムの水溶液を用いて湿式造粒することによって第二顆粒を得る工程;および、
得られた第一顆粒と第二顆粒を混合する工程を含む顆粒剤の製造方法。
[26]
湿式造粒が流動層造粒である[25]に記載の製造方法。
[27]
第一顆粒のメジアン径(R)と第二顆粒のメジアン径(R)の比(R/R)が0.75~1.75である[25]または[26]に記載の製造方法。
[28]
第一顆粒のメジアン径(X50)が130μm~240μmであり、第二顆粒のメジアン径(X50)が170μm~240μmである[25]または[26]に記載の製造方法。
[29]
前記顆粒剤が経口懸濁剤用の顆粒剤またはドライシロップ剤である[25]~[28]に記載の製造方法。
[30]
前記顆粒剤が経口懸濁剤用の顆粒剤である[29]に記載の製造方法。
[31]
前記顆粒剤がドライシロップ剤である[29]に記載の製造方法。
【0023】
[32]
(A)エドキサバン、またはその薬理上許容される塩
(B)糖アルコール
(C)水膨潤性添加剤
(D)製剤総重量に対して0.5~10重量%のカルメロースナトリウム、および
(E)製剤総重量に対して70~90重量%のキシリトール、またはソルビトール
を含む顆粒剤。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、エドキサバンまたはその薬理上許容される塩を含有し、水を加えた際に速やかに溶解または懸濁し、優れた溶出性を有し、主薬の苦味が低減された顆粒剤が提供された。さらに本発明により、エドキサバンまたはその薬理上許容される塩を含有し、薬物含有顆粒と薬物不含有顆粒の2種類の顆粒を混合した際に偏析がなく、製剤均一性に優れた顆粒剤および、上記顆粒剤の製造方法が提供された。また、本発明により、エドキサバンまたはその薬理上許容される塩を含有し、煩雑な操作を必要とせずに通常の設備を用いて上記のような優れた特性を有する顆粒剤を製造する製造方法が提供された。さらに本発明により、エドキサバンまたはその薬理上許容される塩および高含量のキシリトールまたはソルビトールを含有し、製造性が良好であり、製造後の主薬の含量が低下しない顆粒剤およびその製造方法が提供された。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】:流動層造粒法によって製造した比較例3-1(1顆粒法)および実施例3-1(2顆粒法)の顆粒剤のpH6.0のリン酸緩衝液中におけるエドキサバンの溶出率を示すグラフである。該図において縦軸は溶出率(%)、横軸は時間(分)を示す。
図2】:第一顆粒と第二顆粒の混合に用いられるビン型混合機の模式図である。図中のA~Jは実施例4-1~4-3の混合均一性を評価する際にサンプルを採取する位置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書において経口懸濁剤用の顆粒剤とは、水を加えるとき、経口投与用の懸濁剤を与える顆粒剤であって、通常、用時懸濁して用いる製剤である。経口懸濁剤用の顆粒剤は懸濁した後に適切な投与デバイス(例えば、経口注射器など)を用いて投与することもできる。経口懸濁剤用の顆粒剤の定義は第9版欧州薬局方におけるpowders and granules for oral solutions and suspensionsに記載の定義に準じる。
【0027】
本明細書においてドライシロップ剤とは水を加えるとき,溶液または懸濁液となる顆粒状の製剤であって、通常、用時溶解または用時懸濁して用いる製剤である。ドライシロップ剤は溶解または懸濁した後に適切な投与デバイス(例えば、経口注射器など)を用いて投与することもできる。ドライシロップ剤の定義は第17改正日本薬局方に記載の定義に準じる。
【0028】
本明細書において製剤総重量とは第一顆粒と第二顆粒を用いる製剤においては、第一顆粒、第二顆粒およびその他の添加物の重量を足した製剤の総重量を示す。
【0029】
本発明における「X50」とは、ふるい分け法により測定した累積50%粒子径のことを示す。本明細書においてX50はメジアン径と呼ぶことがある。
【0030】
本発明における甘味剤の甘味度とはショ糖の甘さを1.0としたときの各甘味剤の甘さの強さを示す相対的な値である。一般的には、ヒトによる官能検査により、一定濃度のショ糖溶液と同じ甘味の強さを示す各甘味料の濃度との比較により求めることができる。
【0031】
本発明における「R/R」とは第一顆粒のメジアン径(R)と第二顆粒のメジアン径(R)の比を示す。
【0032】
本発明に用いられるエドキサバンとは下記式(I)
【0033】
【化2】
で表される、N-(5-クロロピリジン-2-イル)-N-((1S,2R,4S)-4-[(ジメチルアミノ)カルボニル]-2-{[(5-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロチアゾロ[5,4-c]ピリジン-2-イル)カルボニル]アミノ}シクロヘキシル)エタンジアミド(以下、化合物Iと記載することがある)である。
【0034】
化合物Iは薬理上許容される塩であってもよく、その薬理上許容される塩には溶媒和物(水和物を含む)も含まれる。上記化合物Iの塩としては、好適には、下記式(Ia)
【0035】
【化3】
で表される、N-(5-クロロピリジン-2-イル)-N-((1S,2R,4S)-4-[(ジメチルアミノ)カルボニル]-2-{[(5-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロチアゾロ[5,4-c]ピリジン-2-イル)カルボニル]アミノ}シクロヘキシル)エタンジアミドp-トルエンスルホン酸塩一水和物(エドキサバントシル酸塩水和物)が挙げられる。
【0036】
エドキサバンまたはその薬理上許容される塩は、血液凝固カスケードにおいて、プロトロンビンからトロンビンを生成し、フィブリン形成を促進することにより血栓を形成する作用のある活性化血液凝固第X因子(Activated Blood Coagulation Factor X、またはFXa)を選択的、可逆的かつ直接的に阻害することにより、血栓形成抑制作用を発現する。
【0037】
エドキサバンまたはその薬理上許容される塩は、日本国内および海外で実施した臨床試験により、膝関節全置換術、股関節全置換術、股関節骨折手術を含む下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制に、また非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制、ならびに静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症および肺血栓塞栓症)の治療および再発抑制に用いられている。
【0038】
エドキサバンまたはその薬理上許容される塩は、非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制、ならびに静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症および肺血栓塞栓症)の治療および再発抑制においては通常、成人には、エドキサバンとして30mg(体重が60kg以下の場合)または60mg(体重が60kgを超える場合)の用量を1日1回経口投与する。なお、腎機能、併用薬に応じて1日1回30mgに減量することもできる。また、下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制においては、通常、成人には、エドキサバンとして30mgを1日1回経口投与する。
【0039】
本発明の顆粒剤に含まれるエドキサバンまたはその薬理上許容される塩の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、製剤総重量に対して好ましくは0.3~10重量%、より好ましくは0.3~5重量%、さらに好ましくは0.3~3重量%である。
【0040】
本発明における(B)糖アルコールとしてはD-マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、またはソルビトールが挙げられ、これらは、1種または2種以上を組み合わせて配合することができる。(B)糖アルコールとしては、好ましくはD-マンニトール、キシリトール、またはエリスリトール、より好ましくはD-マンニトールが挙げられる。D-マンニトールとしては、日本、欧州および米国の薬局方に適合するものを通常、用いることができる。
【0041】
上記(B)糖アルコールの配合量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、製剤総重量に対して、通常3~15重量%であり、好ましくは3~10重量%である。
【0042】
本発明における(C)水膨潤性添加剤とは、水を添加すると膨潤する医薬用添加物を意味する。本発明における(C)水膨潤性添加剤としては、例えば、水膨潤性を有する賦形剤および基剤等が挙げられる。水膨潤性添加剤の具体例としては、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、結晶セルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロース(カルボキシメチルセルロース)、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム(クロスカルボキシメチルセルロースナトリウム)、大豆レシチン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トラガント末、ベントナイト等が挙げられ、これらは、1種または2種以上を組み合わせて配合することができる。(C)水膨潤性添加剤としては、このうち、部分アルファー化デンプンおよび/または結晶セルロースが好ましく、部分アルファー化デンプンがより好ましい。
【0043】
本発明における(C)水膨潤性添加剤の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、製剤総重量に対して、通常1~10重量%であり、好ましくは1~5重量%である。
【0044】
本発明における(C)水膨潤性添加剤と(B)糖アルコールの配合比は本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、(C)水膨潤性添加剤1重量部に対して(B)糖アルコールが1~10重量部、好ましくは1.5~4重量部である。
【0045】
崩壊剤としては、アジピン酸、アルギン酸、アルファー化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム(以下、CMC-Naと記載することがある)、含水二酸化ケイ素、クエン酸カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、合成ケイ酸アルミニウム、コムギデンプン、コメデンプン、酢酸フタル酸セルロース、ステアリン酸カルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、トラガント末、バレイショデンプン、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、部分アルファー化デンプン、フマル酸一ナトリウム、ポビドン、無水クエン酸、メチルセルロース、リン酸二水素カルシウム等が挙げられ、これらは、1種または2種以上を組み合わせて配合することができる。崩壊剤としては、好ましくはクロスポビドン、および/またはカルボキシメチルスターチナトリウムであり、より好ましくはクロスポビドンである。
【0046】
上記崩壊剤の配合量は本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは製剤総重量に対して0.1~10重量%、より好ましくは0.1~5重量%、さらにより好ましくは0.3~3重量%である。
【0047】
結合剤としては、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ゼラチン、デキストリン、ペクチン、ポリアクリル酸ナトリウム、プルラン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびマクロゴール等が挙げられ、これらは、1種または2種以上を組み合わせて配合することができる。上記結合剤としては、好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0048】
上記結合剤の配合量は本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは製剤総重量に対して0.1~5重量%、より好ましくは0.1~3重量%、さらにより好ましくは0.1~1重量%である。
【0049】
本発明の顆粒剤に含まれるカルメロースナトリウムとしては日本、欧州、または米国の薬局方に適合する製品を通常使用することができる。カルメロースナトリウムは水を加えた際に適度な粘性を示すことから、薬物の懸濁を助ける役割が期待できる。本発明においてカルメロースナトリウムは、キシリトールまたはソルビトールと共に薬物の懸濁を助ける効果を発揮する。(D)成分としてのカルメロースの配合量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは製剤総重量に対して0.5~10重量%、より好ましくは0.5~5重量%、さらにより好ましくは1~5重量%である。
【0050】
本発明の顆粒剤に用いられるキシリトールまたはソルビトールは日本、欧州、または米国の薬局方に適合する製品を通常使用することができる。キシリトールまたはソルビトールは、それらが有する甘みにより主薬の苦味を低減する甘味料としての働きだけでなく、水を加えた際に適度な粘性を示すことから、薬物の懸濁を助ける役割が期待できる。(E)成分としてのキシリトールまたはソルビトールの配合量は本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは製剤総重量に対して70~90重量%、より好ましくは80~90重量%である。
【0051】
本発明の顆粒剤は、本発明の効果に支障のない限り、上記以外にも製剤の製造に一般に用いられる種々の添加剤を含むことができる。
【0052】
添加剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、可塑剤、着色剤、着香剤、甘味剤、矯味剤、流動化剤、発泡剤および界面活性剤等を挙げることができる。
【0053】
賦形剤としては、例えば、糖類、糖アルコール、デンプン類、セルロース類から選ばれる有機賦形剤、ならびに無機賦形剤を挙げることができる。糖類としては、例えば、乳糖、ショ糖、フラクトオリゴ糖、ブドウ糖、パラチノース、マルトース、還元麦芽糖、粉糖、粉末飴、果糖、異性化乳糖および蜂蜜糖から選択される1つまたは2つ以上組み合わせを挙げることができる。糖アルコールとしては、D-マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、ソルビトール等が挙げられる。デンプン類としては、例えば、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプンおよびアルファー化デンプンから選択される1つまたは2つ以上の組み合わせを挙げることができる。セルロース類としては、結晶セルロースに加え、例えば、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウムおよびクロスカルメロースナトリウムから選択される1つまたは2つ以上の組み合わせを挙げることができる。無機賦形剤としては、例えば、合成ヒドロタルサイト、沈降炭酸カルシウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、ケイ酸アルミン酸マグネシウムおよび水酸化マグネシウムから選択される1つまたは2つ以上の組み合わせを挙げることができる。
【0054】
結合剤としては例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ゼラチン、デキストリン、ペクチン、ポリアクリル酸ナトリウム、プルラン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびマクロゴールから選択される1つまたは2つ以上の組み合わせを挙げることができる。
【0055】
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウムおよびタルクから選ばれる1つまたは2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0056】
粉末状の薬物の表面(結晶の表面)または造粒された薬物の顆粒表面を被覆するコーティング剤としては、たとえば、セルロース誘導体:ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等;ポリビニル化合物:ポリビニルアルコール、ポビドン(ポリビニルピロリドン)、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、酢酸ビニル樹脂等;アクリル酸誘導体:アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS,アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液等;及び糖類(糖アルコールを含む):糖衣コーティングに用いられる白糖及びマンニトール等;から選択される1つまたは2つ以上の組み合わせを挙げることができる。
【0057】
コーティング剤と組み合わせる可塑剤としては、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、ステアリン酸、ポリエチレングリコールおよびトリアセチンから選択される1つまたは2つ以上の組み合わせを挙げることができる。
【0058】
着色剤としては、例えば、食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号などの食用色素、食用レーキ色素、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、酸化チタン、β-カロチンおよびリボフラビンから選択される1つまたは2つ以上の組み合わせを挙げることができる。
【0059】
着香剤としては、例えば、オレンジ、レモン、ストロベリー、ハッカ、メントール、メントールミクロンおよび各種香料から選択される1つまたは2つ以上の組み合わせを挙げることができる。
【0060】
甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、グリチルリチン酸二カリウム、スクラロース、ステビアおよびソーマチンから選択される1つまたは2つ以上の組み合わせを挙げることができる。
【0061】
矯味剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、イノシン酸二ナトリウム、L-グルタミン酸ナトリウムおよびハチミツから選択される1つまたは2つ以上の組み合わせを挙げることができる。
【0062】
流動化剤としては、例えば、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸およびタルクから選択される1つまたは2つ以上の組み合わせを挙げることができる。
【0063】
発泡剤としては、例えば、酒石酸および/または無水クエン酸を挙げることができる。
【0064】
界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ポリオキシル40、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート、モノステアリン酸グリセリンおよびラウリル硫酸ナトリウムから選択される1つまたは2つ以上の組み合わせを挙げることができる。
【0065】
以下、本発明の顆粒剤の製造方法について記載する。
【0066】
本発明の顆粒剤は、以下に記載の製造方法によって製造することができる。
【0067】
本発明の顆粒剤の製造には好ましくは、以下に記載する(b)2顆粒法を採用することができる。
(a)1顆粒法による顆粒剤の製造方法
(A)エドキサバンまたはその薬理上許容される塩、(B)糖アルコール、(C)水膨潤性添加剤、(D)製剤総重量に対して0.5~10重量%のカルメロースナトリウム、(E)製剤総重量に対して70~90重量%のキシリトール、およびその他の添加剤等を水、または結合剤の水溶液もしくは分散液を用いて湿式造粒する。湿式造粒法としては一般に用いられる混合撹拌造粒法、高速撹拌造粒法、流動層造粒法、転動造粒法などを用いることができるが、好ましくは高速撹拌造粒法、または流動層造粒法であり、より好ましくは流動層造粒法である。
(b)2顆粒法による顆粒剤の製造方法
1.第一顆粒(薬物含有顆粒)を製造する工程
(A)エドキサバンまたはその薬理上許容される塩、(B)糖アルコール、(C)水膨潤性添加剤、およびその他の添加剤等を水、または結合剤の水溶液もしくは分散液を用いて湿式造粒する。湿式造粒法としては一般に用いられる混合撹拌造粒法、高速撹拌造粒法、流動層造粒法、または転動造粒法などを用いることができるが、好ましくは高速撹拌造粒法、または流動層造粒法であり、より好ましくは流動層造粒法である。
【0068】
得られた第一顆粒は必要に応じ、乾燥および/または整粒してもよい。第一顆粒の粒子径としては本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、好ましくはそのメジアン径(X50)が130μm~240μmであり、より好ましくは130~220μmである。
2.第二顆粒(薬物不含有顆粒)を製造する工程
(D)製剤総重量に対して0.5~10重量%のカルメロースナトリウム、および(E)製剤総重量に対して70~90重量%のキシリトールを、水を用いて湿式造粒する。別の態様として(D)カルメロースナトリウムの一部もしくは全部を水に溶解、または分散した液を利用することによって湿式造粒することもできる。湿式造粒法としては一般に用いられる混合撹拌造粒法、高速撹拌造粒法、流動層造粒法、または転動造粒法などを用いることができるが、好ましくは高速撹拌造粒法、または流動層造粒法であり、より好ましくは流動層造粒法である。
【0069】
得られた第二顆粒は必要に応じ、乾燥および/または整粒してもよい。第二顆粒の粒子径としては本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、そのメジアン径(X50)が170μm~240μmであることが好ましい。
3.第一顆粒と第二顆粒を混合する工程
得られた第一顆粒と第二顆粒を混合することによって本発明の顆粒剤が得られる。得られた第一顆粒および第二顆粒を混合する際、2種類の顆粒が偏析を起こさないように、第一顆粒のメジアン径(R)と第二顆粒のメジアン径(R)の比(R/R)が選択される。上記、メジアン径の比(R/R)は、好ましくは0.75~1.75であり、より好ましくは0.85~1.70である。混合には一般に用いられる撹拌混合機やV型混合機を用いることができる。
【0070】
上記の工程を経て得られた本発明の顆粒剤は、水を加えた際に速やかに溶解または懸濁し、主薬の苦味が低減される特徴を有している。また、本発明の顆粒剤は2種類の顆粒を混合した際に偏析がなく、製剤均一性、主薬の溶出性に優れる特徴を合わせて有している。さらに上記特徴に加え、本発明の顆粒剤は煩雑な操作を必要とせずに通常の設備を用いて製造することができる。
【0071】
本発明の顆粒剤の溶出性は、例えば、日本薬局方、米国薬局方(USP)および欧州薬局方に記載されている溶出試験法によって評価することができる。本発明の顆粒剤は、欧州薬局方に記載の方法(パドル法;毎分50回転)で溶出試験を行うとき、pH6.0の溶出試験液中におけるエドキサバンの平均溶出率が、溶出試験開始後45分で70%以上であり、好ましくは溶出試験開始後45分で75%以上であり、さらに好ましくは45分で80%以上である。
【0072】
本発明の顆粒剤の製剤均一性は、日本、米国、および欧州薬局方に規定された製剤均一性試験法のなかの含量均一性試験に従って評価することができる。具体的には、本発明の顆粒剤を充填したボトル10個若しくは30個について、製剤中のエドキサバンの含量をHPLCにより測定し、以下の式(a)により判定値(AV)を計算し、AVが15.0%以下(試料10個)または25.0%以下(試料30個)のとき、製剤中の含量は均一であると判定する。
【0073】
【数1】
【0074】
本発明の顆粒剤は水を加えて水溶液もしくは懸濁液にし、経口投与により(経口注射器などのデバイスを用いても良い)、患者に投与することができる。本発明の顆粒剤により、一般の患者だけでなく、嚥下の困難なお年寄りまたは小児の患者においても簡便に服用できる製剤を提供することができる。
【0075】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【実施例
【0076】
本実施例において高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと記載することがある)による測定は以下の条件で行った。
【0077】
HPLC測定条件
カラム:AGILENT Poroshell 120 EC C18(2.7μm,50×4.6mm)
温度:40℃
移動相:A液-pH4.5酢酸緩衝液/アセトニトリル(9/1(v/v))
B液-pH4.5酢酸緩衝液/アセトニトリル(2/8(v/v))
A液:B液=74:26
流速:1mL/min
検出波長:290nm
注入量:5μL(10℃で注入)
【0078】
(実施例1)甘味剤の検討および懸濁液の安定性評価
甘味剤としてスクラロース、キシリトール、またはソルビトールを用いて官能試験および懸濁液の安定性評価を行った。甘味剤の含量は甘味度(スクラロース:600,キシリトール:1,ソルビトール:0.8)を参考に各製剤が同程度の甘みになるように設定した。
(1)顆粒剤の製造方法
流動層造粒乾燥機(S2-B5-F2,Aeromatic Fielder AG社)に表1-1に記載の処方の重量比に従って、エドキサバントシル酸塩水和物、D-マンニトール、部分アルファー化デンプン、クロスポビドン、甘味剤、およびカルメロースナトリウムを投入し、ヒドロキシプロピルセルロースおよびストロベリーフレーバーを精製水に溶解した液を噴霧することによって造粒した後、乾燥することによって比較例1-1および1-2、ならびに実施例1-1~1-3の顆粒剤を得た。
【0079】
(2)評価方法
官能評価:上記方法により製造した比較例1-1および1-2、ならびに実施例1-1~1-3の顆粒剤をヒトに投与し、その味、ならびに投与直後および投与から2~5分後の満足度を5段階(1:とても嫌い,2:嫌い,3:わからない,4:好き,5:とても好き)で評価した。評価の結果、その平均値が4点を越えたものに関して○、下回ったものに関して×を表1-2に記載した。
懸濁液の安定性評価:表1-1に記載の処方に従って25mL褐色ガラス瓶(Code:0755,Gerresheimer社)にエドキサバントシル酸塩水和物、D-マンニトール、部分アルファー化デンプン、クロスポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、甘味剤、CMC-Na、およびストロベリーフレーバーを秤量した後に混合した。エドキサバンの理論含量として6mg/mLとなるように水を加えた。混合物を振とうし、懸濁液を調製した後、調製直後、5分後、15分後、30分後に懸濁液の液面から1cmの位置より1mLのサンプルを採取し、エドキサバンの濃度をHPLC(AGILENT 1100,1200,または1260;AGILENT社)により評価した。濃度の経時変化が全評価時点において90%~110%の範囲内であったものに関しては表1-2に○と記載し、経時変化が上記の範囲を超えたものを×と記載した。
【0080】
(3)結果
官能評価および懸濁液の安定性評価の結果を表1-2に示す。実施例1-1~1-3のように甘味剤としてキシリトールまたはソルビトールを用いた際には官能評価の結果、服用に際して製剤の味が障害とはならないことが分かった。また、実施例1-1~1-3の顆粒剤は懸濁液中のエドキサバンの濃度の変化が90%~110%であることがわかった。すなわち、CMC-Naとキシリトールまたはソルビトールの組み合わせを採用した顆粒剤は懸濁液の安定性が高く、本発明の顆粒剤として適した性能を有することが分かった。
【0081】
【表1-1】
【0082】
【表1-2】
【0083】
(実施例2)製造方法の検討
以下に記載する1顆粒法および2顆粒法による本発明の顆粒剤の製造方法を検討した。
(1)1顆粒法による顆粒剤の製造方法
表2-1に記載の処方の重量比に従って、実施例1と同様の方法により、比較例2-1~2-5の顆粒剤を製造した。
【0084】
(2)2顆粒法による顆粒剤の製造方法
第一顆粒(薬物含有顆粒)の製造:表2-1に記載の処方の重量比に従って、流動層造粒乾燥機(S2-B5-F2,Aeromatic Fielder AG社)にエドキサバントシル酸塩水和物、D-マンニトール、部分アルファー化デンプン、およびクロスポビドンを投入し、ヒドロキシプロピルセルロースを精製水に溶解した液を噴霧した後、乾燥することによって第一顆粒(薬物含有顆粒)を得た。
【0085】
第二顆粒(薬物不含有顆粒)の製造:表2-1に記載の処方の重量比に従って、流動層造粒乾燥機(S2-B5-F2,Aeromatic Fielder AG社)にキシリトールおよび全量の約9割のCMC-Naを投入し、残りのCMC-Naおよびストロベリーフレーバーを精製水に溶解した液を噴霧した後、乾燥することによって第二顆粒(薬物不含有顆粒)を得た。
【0086】
2種類の顆粒の混合:タンブルミキサー(Limitec GmbH社)に第一顆粒を14.4重量%、および第二顆粒を85.6重量%の重量比で投入し、15分間混合し、表2-3に記載の実施例2-1~2-4の顆粒剤を得た。
【0087】
(3)評価方法
上記方法で得られた比較例2-1~2-5、および実施例2-1~2-4の顆粒剤をメスフラスコに秤量し、アセトニトリルと水の混合溶媒(3:7(v/v))でメスアップし、振とうおよび超音波を当てることにより完全に溶解させた。得られた溶液から一部を採取し、理論量としてエドキサバントシル酸塩水和物を80.8μg/mL含むように希釈することによって評価用溶液を調製した。別途、エドキサバントシル酸塩水和物の標準溶液を調製し、HPLCを用いて評価用溶液中のエドキサバントシル酸塩水和物の含量を測定し、理論含量に対する実含量の割合(含量%)を算出した。
【0088】
(4)結果
1顆粒法および2顆粒法の製造方法に従って製造した顆粒剤についてエドキサバンの含量を測定した結果を表2-2および表2-3に示した。その結果、1顆粒法で製造した比較例2-1~2-5の顆粒剤においてはエドキサバンの含量が低下することが分かった。この含量低下は、1顆粒法では造粒工程中に原料の大部分を占めるキシリトールが吸湿し、その一部が原薬とともに壁面およびバグフィルターへ付着することに起因する可能性が示唆された。一方、2顆粒法では吸湿性のあるキシリトールと原薬のエドキサバンを別々の顆粒にして製造することにより、原薬の製造機器内部への付着が抑制され、この問題が解決された。すなわち、2顆粒法で製造した実施例2-1~2-4の顆粒剤はエドキサバンの含量が低下しないことが分かった。
【0089】
【表2-1】
【0090】
【表2-2】
【0091】
【表2-3】
【0092】
(実施例3)1顆粒法と2顆粒法で製造した顆粒剤の溶出性能の比較
前記1顆粒法および2顆粒法で製造した顆粒剤について溶出試験を行って製法の異なる顆粒剤の溶出性能を比較した。
(1)顆粒剤の製造方法
実施例2の(1)に記載の1顆粒法による顆粒剤の製造方法、実施例2の(2)に記載の2顆粒法による顆粒剤の製造方法、および表2-1に記載の処方の重量比に従って、比較例3-1(1顆粒法)および実施例3-1(2顆粒法)の顆粒剤を製造した。
【0093】
(2)評価方法
溶出試験法
pH6.0のリン酸緩衝液を用い、欧州薬局方に記載の方法(パドル法:毎分50回転)に従って溶出試験を行った。
【0094】
(3)結果
1顆粒法によって製造した比較例3-1、および2顆粒法によって製造した実施例3-1の顆粒剤の溶出試験の結果を図1に示す。1顆粒法で製造した顆粒剤は高い溶出性を示したが、実施例2の結果から分かるように、エドキサバンの含量が低下しており、溶出率が100%とはならなかった(すなわち理論含量まで到達しなかった)。一方、2顆粒法で製造した顆粒剤は高い溶出性を示し、またエドキサバンの含量の低下がないことから優れた製剤であることが分かった。
【0095】
(実施例4)2顆粒法における第一顆粒および第二顆粒の混合条件の検討
第一顆粒と第二顆粒の粒子径の検討を行い、偏析を起こさない顆粒剤の条件を探索した。
(1)製造方法
実施例2の(2)に記載の2顆粒法による製造方法および表2-1に記載の処方の重量比に従って第一顆粒および第二顆粒を製造した後、整粒機(QC-197s,Quadro Comil,Quadro社)を用いて整粒操作を行うことによって、第一顆粒に関してそのメジアン径(X50)が137、177、もしくは212μmの顆粒を、また、第二顆粒に関してそのメジアン径(X50)が179、181、もしくは234μmの顆粒を得た。上記第一顆粒および第二顆粒の粒度分布はふるい分け振とう機(AS200,Retsch GmbH製)を用いたふるい分け法により測定し、累積50%粒子径(X50;メジアン径)を算出した。
次に顆粒剤の総量が約10kgのスケールで表4-1に記載の第一顆粒および第二顆粒の粒子径の組み合わせに従って第一顆粒と第二顆粒の混合条件の検討実験を行った。第一顆粒が14.4重量%、および第二顆粒が85.6重量%の割合になるように上記方法により得られた顆粒をビン型混合機(Limitec GmbH製)に投入し、毎分6回転で20分間混合することによって実施例4-1~4-3に記載の顆粒剤を製造した。
【0096】
(2)評価方法
・混合均一性
上記の実施例4の(1)に記載の製造方法においてビン型混合機で混合を開始してから10分、15分、20分後に、図2の模式図上に示した採取位置A~Jよりサンプルを採取した。得られたサンプルについてエドキサバンの含量を実施例2の(3)と同様の方法で測定し、その平均値と標準偏差を算出することによって混合均一性を評価した。
【0097】
・製剤均一性
上記実施例4の(1)に記載の製造方法で製造した顆粒剤をボトル充填機(SW703,Collischan GmbH社)を用いて1ボトル当たり2.75g(エドキサバントシル酸塩水和物の理論量として80.8mg)充填した。ボトル充填工程中に時系列的に採取した10サンプルに関して、1ボトルに含まれるエドキサバンの理論含量に対する実含量の割合(含量%)を測定した。測定は実施例2の(3)と同様の方法で行い、平均含量、含量標準偏差を算出した。また、欧州薬局方に従い判定値を算出することで、製剤均一性を評価した。
【0098】
(3)結果
第一顆粒と第二顆粒の粒子径の組み合わせをさまざまに変えて製造した実施例4-1~4-3の顆粒剤について、混合均一性および製剤均一性の結果を表4-1に記載した。実施例4-1は第一顆粒のX50が第二顆粒のX50よりも大きいことを特徴とする顆粒剤である。実施例4-2は第一顆粒のX50が第二顆粒のX50と同程度の大きさであることを特徴とする顆粒剤である。実施例4-3は第一顆粒のX50が第二顆粒のX50よりも小さいことを特徴とする顆粒剤である。実施例4-1~4-3において、10分、15分、20分の時点での標準偏差の値にばらつきが見られるが、これは均一性が定常に達した状態においてサンプリングに起因するばらつきが存在することを示唆している。実施例4-1~4-3における製剤均一性と混合終了時(混合開始から20分後)の混合均一性の標準偏差の値の大きさは同じ順序(実施例4-2<実施例4-3<実施例4-1)になっているが、その値を比較すると製剤均一性の値の方が混合均一性の値よりも小さくなっている。実施例4-1~4-3の製剤均一性の判定値は欧州薬局方の基準であるL1(15%)よりも小さくなっており、その基準を満たすことが分かった。
以上より、本発明により約10kgのスケールで各国の規制当局が求める基準を満たす顆粒剤を製造できることが明らかになった。
【0099】
【表4-1】
図1
図2