IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ティラドの特許一覧

<>
  • 特許-熱交換器 図1
  • 特許-熱交換器 図2
  • 特許-熱交換器 図3
  • 特許-熱交換器 図4
  • 特許-熱交換器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/16 20060101AFI20231003BHJP
   F28F 9/08 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
F28D7/16 A
F28F9/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020533511
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2019029558
(87)【国際公開番号】W WO2020027008
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2018142379
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 喜彦
(72)【発明者】
【氏名】大友 聡
(72)【発明者】
【氏名】小室 朗
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-055711(JP,A)
【文献】国際公開第2006/035986(WO,A1)
【文献】特許第4173817(JP,B2)
【文献】特開2015-055458(JP,A)
【文献】特開2008-275244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/16
F28F 9/08
F28F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の偏平チューブ(1)が、その厚み方向に並列された熱交換器コア(2)と、
その熱交換器コア(2)の外周を被嵌し、横断面が長辺部(3a)と短辺部(3b)とで矩形に形成されると共に、その短辺部(3b)が各偏平チューブ(1)の並列方向に位置するケース(3)と、
そのケース(3)の開口端部の短辺部(3b)の角部を除く平坦部に、その開口の縁に平行に曲折形成された熱膨張吸収用のビード(4)と、
ケース(3)の開口端に接合されるタンク(5)と、を具備する熱交換器。
【請求項2】
前記偏平チューブ(1)は、その長手方向の両端部が前記厚み方向に膨出された膨出部(1a)を有し、その膨出部(1a)で複数の偏平チューブ(1)が積層されて前記熱交換器コア(2)を構成した請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
ケース(3)の内面に環状のインナーフランジ(6)が接続され、そのインナーフランジ(6)とケース(3)との間に環状溝(7)が形成され、その環状溝(7)にシール材(8)を介して前記タンク(5)の開口縁が接合される請求項1または請求項2のいずれかに記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として高温ガスを冷却水によって冷却する熱交換器であって、その高温ガスの入口近傍に生じる熱応力を減少させるものに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の熱交換器は、内部に高温ガスが流通する多数の管と、その管の端部が挿通される管底(ヘッダプレート)を有するハウジングを有し、熱膨張差に起因する熱応力を低減させるために、そのハウジングに膨張要素としてその周方向に複数の条溝を形成し、それを密封する密封手段を設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4006734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、矩形断面を有するハウジングにおいては、矩形角部への条溝の形成は困難であり、また、条溝部の剛性は低下するので、周方向に渡って条溝を設けた場合、耐振強度が低下する欠点があった。
そこで、本発明は矩形断面を有するハウジングにおいても製作性および耐振強度を低下させることなく熱膨張差に起因する熱応力を低下させ、ヒートサイクルに対する耐久性を高めた熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、複数の偏平チューブ1が、その厚み方向に並列された熱交換器コア2と、
その熱交換器コア2の外周を被嵌し、横断面が長辺部3aと短辺部3bとで矩形に形成されると共に、その短辺部3bが各偏平チューブ1の並列方向に位置するケース3と、
そのケース3の開口端部の短辺部3bに、その開口の縁に平行に曲折形成された熱膨張吸収用のビード4と、
ケース3の開口端に接合されるタンク5と、を具備する熱交換器である。
請求項2に記載の本発明の前記偏平チューブ1は、その長手方向の両端部が前記厚み方向に膨出された膨出部1aを有し、その膨出部1aで複数の偏平チューブ1が積層されて前記熱交換器コア2を構成した請求項1に記載の熱交換器である。
請求項3に記載の本発明は、ケース3の内面に環状のインナーフランジ6が接続され、そのインナーフランジ6とケース3との間に環状溝7が形成され、その環状溝7にシール材8を介して前記タンク5の開口縁が接合される請求項1または請求項2のいずれかに記載の熱交換器である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明は、ケース3の開口端部の短辺部3bに、熱膨張吸収用のビード4が形成され、各偏平チューブ1がケース3の短辺方向で、偏平チューブ1の厚み方向に並列されたものである。各偏平チューブ1は、その横断面の長手方向により大きく熱膨張するが、その膨張の大きい方向に配置されたビード4に、その熱膨張が効果的に吸収される。また、ケース3の角部にはビード4を設けていないので、ビードの成形は容易となる。
さらに、ビード4はケース3の周方向の全周に渡ってはいないので、ビード4の形成に伴うケース3の剛性の低下は少なく、耐振強度の低下は抑制される。
それにより製作性、耐振強度を低下させることなく、ヒートサイクルに対する耐久性の高い熱交換器を提供できる。
請求項2に記載の発明は、その熱交換器コア2を構成する偏平チューブ1の長手方向の両端部が厚み方向に膨出され、その膨出部1aで複数の偏平チューブ1が厚み方向に且つ、ケース3の短辺部3bの方向に積層されたものである。
このような熱交換器においては、偏平チューブ1とケース3との間に熱膨張差の緩衝部となるヘッダプレートが存在しないが、本発明におけるビード4により、熱膨張差が効果的に吸収される。それにより、このようなヘッダプレートレス型熱交換器においても、ヒートサイクルに対する耐久性の高い熱交換器を提供できる。
請求項3に記載の発明は、ケース3の内面のインナーフランジ6と、ケース3との間に環状溝7が形成され、それにシール材8を介してタンク5の開口縁が接合されたものである。
このようなインナーフランジ型熱交換器においては、フランジ部がケース外部に曲折形成されているアウターフランジ方式に比べて、フランジ部の剛性が高く、フランジ部の弾性変形によって吸収される熱膨張差は少ない。また、本発明におけるビード4により、熱膨張差が効果的に吸収される。それにより、このようなインナーフランジ型熱交換器においても、ヒートサイクルに対する耐久性の高い熱交換器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1は本発明の熱交換器の分解斜視図。
図2は同熱交換器の熱交換器コア2の要部縦断面斜視図。
図3は同熱交換器のビード4とタンク5との接合状態を示す縦断面図。
図4は同熱交換器のケース3の短辺部3bに設けたビード4の斜視図。
図5は同熱交換器の熱交換器コア2の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
この熱交換器は、主として高温ガスを冷却水によって冷却するチャージエアクーラに最適なものである。その熱交換器コア2は、図5に示す如く、多数の偏平チューブ1をその両端部で積層したものである(下側を省略)。
各偏平チューブ1は、両端に膨出部1aが厚み方向に突出している。そして、その膨出部1aにおいて、各偏平チューブ1どうしがろう付により接合される。偏平チューブ1の内部には、インナーフィン9を挿入することが好ましい。
そして、図1図5に示す如く、偏平チューブ1内の第1流路10に第1流体13である高温ガスが導かれ、偏平チューブ1の外面側の第2流路11に第2流体14である冷却水(図1)が導かれる。偏平チューブ1の集合体からなる熱交換器コア2の端部には、図5において、その両端にインナーフランジ6が被嵌され(一方端のみ記載)、そして、その外側にケース3が被嵌される。
即ち、熱交換器コア2の外周は、インナーフランジ6を介して、図1に図示するケース3が被嵌される。この例では、ケース3は横断面が方形の長辺部3aと短辺部3bとで形成され、その短辺部3b方向に多数の偏平チューブ1が並列される。
また、短辺部3bには、一対のパイプ12が取付けられ、その一方から第2流体(冷却水)14が流入し、他方からそれが流出する。第2流体(冷却水)14は、図5において各偏平チューブ1の外周に形成された第2流路11に導かれる。
前述の如く、熱交換器コア2の端部にはインナーフランジ6が被嵌される。そのインナーフランジ6は図4図5に示す如く、ケース3の内周に整合するスカート部とそれからL字状に立ち上げられたL字状部とを有し、そのL字状部とケース3との間に環状溝7が形成される。その環状溝7には、図3に示す如く、シール材8を介してタンク5の開口端が圧入され、爪部16のカシメによってそれらの間が締結固定される。
ここにおいて本発明の特徴とするところは、ケース3の端部に設けたビード4の存在である。このビード4は、図1に示す如く、ケース3の開口端部の短辺部3bの高温ガスの流入口側の開口の縁に平行に曲折形成されている。
そして、図1において、タンク5から熱交換器コア2の偏平チューブ1に第1流体(高温ガス)13が供給される。すると、偏平チューブ1はその開口の長手方向により長く膨張する。その膨張は、図4において、ケース3の短辺部3bを外側に押し広げると共に、上下方向にも引き延ばされる。そのような熱膨張は、ケース3の短辺部3bの端部に設けたビード4によって効果的に吸収される。
上記実施形態は、タンク5とケース3とが、インナーフランジ6に配置したシール材8を介して、爪部16によりカシメ固定されている熱交換器である。
タンク5とケース3とは、インナーフランジ6及びシール材を介さずに、直接、ろう付又は溶接により接合することもできる。
この実施形態では、コア形状として、各偏平チューブ1は、その両端部が厚み方向に膨出された膨出部1aを有し、膨出部1aで複数の偏平チューブ1が積層されたヘッダプレートレス型のコアを用いたものである。各偏平チューブ1は、図1図5に示す如く、その各開口端がチューブ長辺1bとチューブ短辺1cとで横断面方形に形成されている。
各偏平チューブ1は、次のような構造にすることができる。
そのチューブ短辺1cの端縁は、チューブ長辺1bの平坦部1eよりも突出する。
チューブ長辺1bの端は、チューブ短辺1c側に角状に突出した角部1dが形成されている。チューブ長辺1bの膨出部1aの中間部には、その角部1dより第1流体(高温ガス)13の流通方向の下流側に配置された平坦部1eが形成されている。そして、角部1dと平坦部1eとの間は、湾曲部1fにより滑らかに湾曲して接続されている。
このような構造にするにより、ビード4の効果と相乗して、各偏平チューブ1のチューブ短辺1cに加わる熱応力の集中を回避することができる。
コア形状は、インナーフランジ6に多数の偏平チューブ挿通孔を並列して形成し、そこに偏平チューブを挿通した形状のコアであっても良い。
【符号の説明】
【0009】
1 偏平チューブ
1a 膨出部
1b チューブ長辺
1c チューブ短辺
1d 角部
1e 平坦部
1f 湾曲部
2 熱交換器コア
3 ケース
3a 長辺部
3b 短辺部
4 ビード
5 タンク
6 インナーフランジ
7 環状溝
8 シール材
9 インナーフィン
10 第1流路
11 第2流路
12 パイプ
13 第1流体(高温ガス)
14 第2流体(冷却水)
15 入口
16 爪部
図1
図2
図3
図4
図5