(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】冷媒回路
(51)【国際特許分類】
F01P 11/00 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
F01P11/00 C
(21)【出願番号】P 2021033801
(22)【出願日】2021-03-03
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】坂本 博信
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02582543(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0009939(US,A1)
【文献】米国特許第09759123(US,B2)
【文献】特開2017-166347(JP,A)
【文献】特開2016-142136(JP,A)
【文献】特開2017-101573(JP,A)
【文献】特開2020-063686(JP,A)
【文献】特開2019-163762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒回路であって、
リザーブタンクと切換弁を有し、
前記リザーブタンク
が、
第1室と、第2室と、少なくとも1つの中間室とを含む複数の室と、
前記第1室に接続された第1流入口と、
前記第1室に接続された第1流出口と、
前記第2室に接続された第2流入口と、
前記第2室に接続された第2流出口と、
前記複数の室を隔てる複数の隔壁と、
それぞれが対応する前記隔壁に設けられた複数の冷媒流通口と、
を有し、
前記複数の隔壁が、前記第1室と前記少なくとも1つの中間室の間を隔てる第1隔壁と、前記第2室と前記少なくとも1つの中間室の間を隔てる第2隔壁とを有し、
前記複数の冷媒流通口が、前記第1隔壁に設けられた第1冷媒流通口と、前記第2隔壁に設けられた第2冷媒流通口とを有し、
前記少なくとも1つの中間室と前記複数の冷媒流通口とを介して前記第1室から前記第2室へ冷媒が流通可能とされており、
前記複数の隔壁のうちの特定隔壁に設けられた前記冷媒流通口である特定冷媒流通口が、前記特定隔壁を貫通するとともに互いから分離された第1貫通孔と第2貫通孔を有
し、
前記切換弁が、前記第1流入口、前記第1流出口、前記第2流入口、及び、前記第2流出口に流れる冷媒の流路を切り換え、
前記切換弁が、前記第1流入口から前記第1流出口へ冷媒が流れるとともに前記第2流入口から前記第2流出口へ冷媒が流れる第1状態と、前記第1流入口から前記第2流出口へ冷媒が流れる第2状態との間で前記流路を切り換える、
冷媒回路。
【請求項2】
前記第1貫通孔の下部に前記第2貫通孔が配置されている、請求項1に記載の
冷媒回路。
【請求項3】
前記少なくとも1つの中間室が複数の中間室である、請求項1または2に記載の
冷媒回路。
【請求項4】
前記少なくとも1つの中間室が、前記第1室に隣接する第1中間室と、前記第2室に隣接するとともに前記第1中間室に隣接する第2中間室を有し、
前記複数の隔壁が、前記第1中間室と前記第2中間室の間を隔てる中間隔壁を有し、
前記複数の冷媒流通口が、前記中間隔壁に設けられた中間冷媒流通口を有し、
前記第1冷媒流通口が、前記特定冷媒流通口であり、
前記第1貫通孔と前記第2冷媒流通口が、少なくとも部分的に重複する高さに設けられており、
前記中間冷媒流通口が、前記第1貫通孔と前記第2冷媒流通口の少なくとも一方と重複しない高さに設けられており、
前記第1貫通孔と前記第2冷媒流通口の間に前記中間隔壁が存在する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の
冷媒回路。
【請求項5】
前記第2冷媒流通口が、単一の貫通孔により構成されており、
前記中間冷媒流通口が、単一の貫通孔により構成されている、
請求項4に記載の
冷媒回路。
【請求項6】
前記第1状態において、前記第1室内の冷媒の温度が前記第2室内の冷媒の温度よりも高くなる、
請求項1に記載の冷媒回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、リザーブタンクと冷媒回路に関する。
【0002】
特許文献1に開示のリザーブタンクには、外部から冷媒が流入する。冷媒は、リザーブタンク内で滞留した後にリザーブタンクの外部へ流出する。リザーブタンク内で冷媒が滞留している間に、冷媒から気泡が除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書では、内部に複数系統の冷媒を流すことが可能であるとともに、内部で冷媒の流路を切り換え可能なリザーブタンクを提案する。また、この種のリザーブタンクにおいて、内部で異なる系統の冷媒同士が混ざり合うことを抑制可能な技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示するリザーブタンクは、複数の室を有している。前記複数の室は、第1室と、第2室と、少なくとも1つの中間室とを含んでいる。また、前記リザーブタンクは、前記第1室に接続された第1流入口と、前記第1室に接続された第1流出口と、前記第2室に接続された第2流入口と、前記第2室に接続された第2流出口と、前記複数の室を隔てる複数の隔壁と、それぞれが対応する前記隔壁に設けられた複数の冷媒流通口と、を有する。前記複数の隔壁が、前記第1室と前記少なくとも1つの中間室の間を隔てる第1隔壁と、前記第2室と前記少なくとも1つの中間室の間を隔てる第2隔壁とを有する。前記複数の冷媒流通口が、前記第1隔壁に設けられた第1冷媒流通口と、前記第2隔壁に設けられた第2冷媒流通口とを有する。前記少なくとも1つの中間室と前記複数の冷媒流通口とを介して前記第1室から前記第2室へ冷媒が流通可能とされている。前記複数の隔壁のうちの特定隔壁に設けられた前記冷媒流通口である特定冷媒流通口が、前記特定隔壁を貫通するとともに互いから分離された第1貫通孔と第2貫通孔を有する。
【0006】
このリザーブタンクには、第1流入口から第1室を経て第1流出口へ流れる流路(以下、第1流路という)と、第2流入口から第2室を経て第2流出口へ流れる流路(以下、第2流路という)が設けられている。すなわち、このリザーブタンク内には、第1流路と第2流路という複数系統の冷媒を流すことができる。また、このリザーブタンクでは、第1流入口から第1室、複数の冷媒流通口、中間室、及び、第2室を経て第2流出口へ流れる流路(以下、第3流路という)にも冷媒を流すことができる。このように、このリザーブタンクでは、内部で冷媒の流路を切り換えることができる。第1流路に冷媒が流れているとともに第2流路に冷媒が流れている状態において、第1流路の冷媒と第2流路の冷媒が混ざると、第1流路の冷媒と第2流路の冷媒の温度が平均化されてしまい、冷媒による冷却効率が低下する。しかしながら、このリザーブタンクでは、特定隔壁に設けられた特定冷媒流通口が互いから分離された第1貫通孔と第2貫通孔を有することで、第1流路の冷媒と第2流路の冷媒が混ざることが抑制される。すなわち、特定隔壁によって隔てられた2つの室のうちの一方(以下、第1特定室という)に存在する冷媒が第1貫通孔を通って他方の室(以下、第2特定室という)に流入すると、第2特定室に流入した冷媒は第2貫通孔を通って第1特定室へ戻ることができる。このように、特定冷媒流通口が互いから分離された第1貫通孔と第2貫通孔を有すると、第1特定室から第2特定室へ流入した冷媒が第2特定室から第1特定室へ戻る流れが生じ易い。したがって、第1特定室から第2特定室へ流入した冷媒が、短時間で第1特定室へ戻ることができる。このため、第1流路の冷媒と第2流路の冷媒が混ざることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】実施形態のリザーブタンクの横断面図(
図3~6のII-II線における断面図であって、第1循環経路と第2循環経路を示す図)。
【
図3】実施形態のリザーブタンクの縦断面図(
図2、5、6のIII-III線における断面図)。
【
図4】実施形態のリザーブタンクの縦断面図(
図2、5、6のIV-IV線における断面図)。
【
図5】実施形態のリザーブタンクの縦断面図(
図2~4のV-V線における断面図)。
【
図6】実施形態のリザーブタンクの縦断面図(
図2~4のVI-VI線における断面図)。
【
図7】
図2と同じ断面において、第3循環経路を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書が開示する一例のリザーブタンクでは、前記第1貫通孔の下部に前記第2貫通孔が配置されていてもよい。
【0009】
この構成によれば、特定隔壁に隣接する室が縦方向に長い形状を有している場合に、その室内に縦方向に長い冷媒の流れを生じさせることができる。これによって、縦方向に長い室の内部で冷媒の淀みが生じることを抑制できる。
【0010】
本明細書が開示する一例のリザーブタンクでは、前記少なくとも1つの中間室が複数の中間室であってもよい。
【0011】
本明細書が開示する一例のリザーブタンクでは、前記少なくとも1つの中間室が、前記第1室に隣接する第1中間室と、前記第2室に隣接するとともに前記第1中間室に隣接する第2中間室を有していてもよい。前記複数の隔壁が、前記第1中間室と前記第2中間室の間を隔てる中間隔壁を有していてもよい。前記複数の冷媒流通口が、前記中間隔壁に設けられた中間冷媒流通口を有していてもよい。前記第1冷媒流通口が、前記特定冷媒流通口であってもよい。前記第1貫通孔と前記第2冷媒流通口が、少なくとも部分的に重複する高さに設けられていてもよい。前記中間冷媒流通口が、前記第1貫通孔と前記第2冷媒流通口の少なくとも一方と重複しない高さに設けられていてもよい。前記第1貫通孔と前記第2冷媒流通口の間に前記中間隔壁が存在してもよい。
【0012】
この構成によれば、第1貫通孔と第2冷媒流通口の間に中間隔壁が存在するので、第1貫通孔と第2冷媒流通口の間に冷媒が流れ難い。したがって、第1冷媒流通口の冷媒の流れと第2冷媒流通口の冷媒の流れが混ざり難い。
【0013】
前記第1冷媒流通口が前記特定冷媒流通口である場合には、前記第2冷媒流通口が単一の貫通孔により構成されていてもよく、前記中間冷媒流通口が単一の貫通孔により構成されていてもよい。
【0014】
また、本明細書が開示する一例の冷媒回路は、上記いずれかのリザーブタンクと切換弁を有していてもよい。前記切換弁は、前記第1流入口、前記第1流出口、前記第2流入口、前記第2流出口に流れる冷媒の流路を切り換えるように構成されていてもよい。前記切換弁が、前記第1流入口から前記第1流出口へ冷媒が流れるとともに前記第2流入口から前記第2流出口へ冷媒が流れる第1状態と、前記第1流入口から前記第2流出口へ冷媒が流れる第2状態との間で前記流路を切り換えてもよい。
【0015】
前記冷媒回路において、前記第1状態において、前記第1室内の冷媒の温度が前記第2室内の冷媒の温度よりも高くなってもよい。
【0016】
図1に示す実施形態のリザーブタンク10は、例えば、車両に搭載されている。リザーブタンク10内には、車両の各部を冷却する冷媒が流れる。リザーブタンク10は、冷媒中から気泡を除去する。以下では、
図1に示すように、鉛直上方向をz方向といい、水平面に平行な一方向をx方向といい、水平面に平行でx方向に直交する方向をy方向という。
図2に示すように、リザーブタンク10は、略矩形の断面形状を有している。リザーブタンク10の内部には、リザーブタンク10の略中心から四方に伸びる隔壁22、24、26、28が設けられている。隔壁22、24、26、28によって、リザーブタンク10の内部空間が4つの室12、14、16、18に区切られている。室12は、室18に対してx方向に隣接している。室12と室18の間に、隔壁22が設けられている。室12は、室14に対してy方向に隣接している。室12と室14の間に、隔壁24が設けられている。室14は、室16に対してx方向に隣接している。室14と室16の間に、隔壁26が設けられている。室16は、室18に対してy方向に隣接している。室16と室18の間に、隔壁28が設けられている。
図3~6に示すように、室12、14、16、18のそれぞれは、z方向に長い形状を有している。
【0017】
図3~6に示すように、室12、14、16、18のそれぞれには、冷媒80が貯留されている。室12、14、16、18のそれぞれにおいて、冷媒80の液面80aは、天井よりも低い位置に存在する。室12、14、16、18のそれぞれにおいて、液面80aよりも上側の空間には空気が存在している。
図2~6に示すように、隔壁24、26、28には、冷媒流通口34、36、38が設けられている。冷媒流通口34、36、38は、液面80aよりも下側に設けられている。冷媒流通口34、36、38を介して、室12、14、16、18の間で冷媒80が流れることができる。
図3~6に示すように、隔壁22、24、26、28には、空気流通口42、44、46、48が設けられている。空気流通口42、44、46、48は、液面80aよりも上側に設けられている。空気流通口42、44、46、48を介して、室12、14、16、18の間で空気が流れることができる。空気流通口42、44、46、48が設けられているので、室12、14、16、18内の冷媒80の液位は互いに等しい。
【0018】
図3、6に示すように、冷媒流通口34は、第1貫通孔34aと第2貫通孔34bを有している。第1貫通孔34aと第2貫通孔34bは、互いから分離されている。第1貫通孔34aと第2貫通孔34bのそれぞれは、隔壁24を貫通している。第2貫通孔34bは、第1貫通孔34aの下部に配置されている。第1貫通孔34aは、冷媒80の液面80aの近傍に配置されている。第2貫通孔34bは、リザーブタンク10の底面近傍に配置されている。冷媒流通口34(すなわち、第1貫通孔34aと第2貫通孔34b)を介して、室12と室14の間で冷媒80が流れることができる。
【0019】
図3、5に示すように、冷媒流通口38は、隔壁28を貫通する単一の貫通孔により構成されている。冷媒流通口38を介して、室16と室18の間で冷媒80が流れることができる。
図3に示すように、冷媒流通口38は、第1貫通孔34aと重複する高さに配置されている。
【0020】
図3、6に示すように、冷媒流通口36は、隔壁26を貫通する単一の貫通孔により構成されている。冷媒流通口36を介して、室14と室16の間で冷媒80が流れることができる。
図3に示すように、冷媒流通口36は、第1貫通孔34aの下端よりも下側に配置されている。したがって、第1貫通孔34aと冷媒流通口38の間には、冷媒流通口36が存在せず、隔壁26が存在する。
【0021】
図4に示すように、隔壁22には冷媒流通口が設けられていない。このため、室12と室18の間で直接冷媒80が流れることはできない。但し、
図7の矢印120bに示すように、冷媒80は、冷媒流通口34、室14、冷媒流通口36、室16、及び、冷媒流通口38を介して室12と室18の間で流れることができる。
【0022】
図2に示すように、室12には、冷媒流入口52と冷媒流出口54が設けられている。冷媒流入口52には、冷媒供給管52aの一端が接続されている。冷媒供給管52aの他端は、切換弁70に接続されている。冷媒供給管52aから冷媒流入口52を介して室12に冷媒80が流入することができる。冷媒流出口54には、冷媒排出管54aの一端が接続されている。冷媒排出管54aの他端は、切換弁70に接続されている。室12から冷媒流出口54を介して冷媒排出管54aに冷媒80が流出することができる。
【0023】
図2に示すように、室18には、冷媒流入口62と冷媒流出口64が設けられている。冷媒流入口62には、外部の冷媒供給管62aの一端が接続されている。冷媒供給管62aの他端は、切換弁70に接続されている。冷媒供給管62aから冷媒流入口62を介して室18に冷媒80が流入することができる。冷媒流出口64には、外部の冷媒排出管64aの一端が接続されている。冷媒排出管64aの他端は、切換弁70に接続されている。室18から冷媒流出口64を介して冷媒排出管64aに冷媒80が流出することができる。
【0024】
図2に示すように、リザーブタンク10、冷媒供給管52a、冷媒排出管54a、冷媒供給管62a、冷媒排出管64a、及び、切換弁70によって、冷媒回路90が構成されている。なお、図示していないが、冷媒供給管52a、冷媒排出管54a、冷媒供給管62a、及び、冷媒排出管64aには、冷媒80により冷却される冷却対象のデバイス、冷媒80を冷却する熱交換器、冷媒80を循環させるポンプ等が設けられている。
【0025】
切換弁70は、配管の接続状態を第1状態と第2状態の間で切り換えることができる。
図2は第1状態を示しており、
図7は第2状態を示している。
【0026】
図2に示す第1状態では、切換弁70は、冷媒排出管54aから冷媒供給管52aへ冷媒80を流す。この状態では、
図2の矢印100a~100cに示すように、冷媒供給管52a、室12、及び、冷媒排出管54aによって構成される第1循環経路に冷媒80を循環させることができる。すなわち、第1循環経路においては、矢印100bに示すように、室12内に冷媒流入口52から冷媒流出口54へ向かう流れが生じる。
【0027】
図2に示す第1状態では、切換弁70は、冷媒排出管64aから冷媒供給管62aへ冷媒80を流す。この状態では、
図2の矢印110a~110cに示すように、冷媒供給管62a、室18、及び、冷媒排出管64aによって構成される第2循環経路に冷媒80を循環させることができる。すなわち、第2循環経路においては、矢印110bに示すように、室18内に冷媒流入口62から冷媒流出口64へ向かう流れが生じる。第1状態では、第1循環経路と第2循環経路に同時に冷媒80を循環させることができる。第1循環経路と第2循環経路に同時に冷媒80を循環させている状態では、室12内の冷媒80の温度が室18内の冷媒80の温度よりも高くなる。
【0028】
図7に示す第2状態では、切換弁70は、冷媒排出管64aから冷媒供給管52aへ冷媒80を流す。この状態では、
図7の矢印120a~120cに示すように、冷媒供給管52a、室12~18、及び、冷媒排出管64aによって構成される第3循環経路に冷媒80を循環させることができる。すなわち、第3循環経路においては、矢印120bに示すように、リザーブタンク10内に冷媒流入口52から室12、冷媒流通口34、室14、冷媒流通口36、室16、冷媒流通口38、及び、室18を介して冷媒流出口64へ向かう流れが生じる。
【0029】
以上に説明したように、冷媒回路90では、切換弁70を第1状態とすることによって、リザーブタンク10内に2つの異なる系統(すなわち、第1循環経路と第2循環経路)の冷媒80を流すことができる。また、冷媒回路90では、切換弁70を第2状態に切り換えることで、リザーブタンクの内部の冷媒80の流路を切り換えて、第3循環経路に冷媒80を流すことができる。第1循環経路、第2循環経路及び第3循環経路のいずれに冷媒80が流れている状態でも、リザーブタンク10内で冷媒80中の気泡が液面80aに向かって上昇し、液面80aにおいて気泡が消滅する。これによって、冷媒80中から空気が除去される。
【0030】
上述したように、室12と室18は、冷媒流通口34、室14、冷媒流通口36、室16、及び、冷媒流通口38を介して繋がっている。このため、
図2に示すように第1循環経路と第2循環経路に同時に冷媒80を循環させているときに、室12内の高温の冷媒80と室18内の低温の冷媒80がリザーブタンク10内で混ざる。室12内の冷媒80と室18内の冷媒80とが大量に混ざると、室12内の冷媒80と室18内の冷媒80とで温度差が小さくなる。このように、室12内の冷媒80と室18内の冷媒80とで温度が均一化されると、第1循環経路と第2循環経路のそれぞれにおいて冷却効率が低下する。しかしながら、本実施形態の冷媒回路90では、以下に説明するように、室12内の冷媒80と室18内の冷媒80とで温度が均一化されることが抑制される。
【0031】
上述したように、隔壁24に設けられた冷媒流通口34は、第1貫通孔34aと第2貫通孔34bを有している。
図2の矢印100a、100b、100cのように第1循環経路に冷媒80が循環している状態では、冷媒流入口52から室12内に冷媒80が流入することで、室12内に冷媒80の流れが生じる。室12内の冷媒80の一部は、
図2、3、6の矢印130に示すように、第1貫通孔34aを通って室14内へ流入する。室12から室14へ流入した冷媒80の多くは、室14内で下側へ向かって流れ、第2貫通孔34bから室12内へ戻る。すなわち、第1貫通孔34aでは室12から室14へ流れる冷媒80の流れが安定的に生じ、第2貫通孔34bでは室14から室12へ流れる冷媒80の流れが安定的に生じる。このように、室12から室14へ流れた冷媒80が室12へ戻る流れ(矢印130に示す流れ)が安定的に生じる。したがって、室12から室14へ流れた冷媒80の多くが短時間で室12へ戻ることができる。このため、室12内の冷媒80が、室14を介して、室16、18内の冷媒80と混ざることが抑制される。このように、冷媒流通口34が互いから分離された第1貫通孔34aと第2貫通孔34bを有していることで、室12と室18の間で冷媒80が混ざることが抑制される。さらに、室12から室14へ流れた冷媒80の多くが短時間で室12へ戻るので、室14内の冷媒80の温度が上昇し難い。したがって、室14と室16の間で熱の移動が生じ難い。このため、室12と室18の間で、室14と室16を介した熱の移動が生じ難い。以上のように、室12内の冷媒80と室18内の冷媒80が混ざること、及び、室12内の冷媒80と室18内の冷媒80の間で熱が移動することが抑制される。したがって、リザーブタンク10では、室12内の冷媒80と室18内の冷媒80とで温度が均一化されることが抑制される。
【0032】
また、
図3に示すように、第1貫通孔34aと冷媒流通口38が互いに重複する高さに配置されている一方で、冷媒流通口36が第1貫通孔34aの下端よりも下側に配置されている。したがって、第1貫通孔34aと冷媒流通口38の間に隔壁26が存在する。このため、第1貫通孔34aから冷媒流通口38に向かう冷媒80の流れが生じ難い。これによっても、室12内の冷媒80と室18内の冷媒80が混ざることが抑制される。したがって、室12内の冷媒80と室18内の冷媒80の間での温度の均一化がより効果的に抑制される。
【0033】
また、リザーブタンク10では、室14が上下に長い形状を有している。また、第1貫通孔34aと第2貫通孔34bは上下に分離されて配置されている。このため、
図3、6の矢印130に示すように、室14内に上下方向に沿う流れが生じる。これによって、室14内の冷媒80の一部が室14内に長時間滞留することが抑制される。したがって、室14内の冷媒80の劣化を抑制できる。
【0034】
なお、上述した実施形態では、冷媒流通口34が複数の貫通孔を有していた。しかしながら、冷媒流通口36が複数の貫通孔を有していてもよいし、冷媒流通口38が複数の貫通孔を有していてもよい。この場合、冷媒流通口34が単一の貫通孔によって構成されていてもよい。但し、最も高温となる室12と室12に繋がっている室14の間の冷媒流通口34が複数の貫通孔を有していると、室12内の冷媒80と室18内の冷媒80との間で温度が均一化されることがより効果的に抑制される。
【0035】
また、上述した実施形態では、リザーブタンク10の外部の配管に接続されている室12と室18の間に、複数の室14、18(すなわち、中間室)が設けられていた。しかしながら、室12と室18の間に設けられた中間室が1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。この場合、いずれかの隔壁に設けられた冷媒流通口を、複数の貫通孔によって構成することができる。
【0036】
また、上述した実施形態では、冷媒流通口36が第1貫通孔34aと重複しない高さに設けられている一方で、冷媒流通口36が冷媒流通口38と部分的に重複する高さに設けられていた。しかしながら、冷媒流通口36が第1貫通孔34aと冷媒流通口38のいずれにも重複しない高さに設けられていてもよい。また、冷媒流通口36が、第1貫通孔34aと重複し、冷媒流通口38と重複しない高さに設けられていてもよい。
【0037】
実施形態の室12は、第1室の一例である。実施形態の室18は、第2室の一例である。実施形態の室14、16は、中間室の一例である。実施形態の隔壁24は、第1隔壁の一例である。実施形態の隔壁28は、第2隔壁の一例である。実施形態の隔壁24は、特定隔壁の一例である。実施形態の冷媒流通口34は、特定冷媒流通口の一例である。実施形態の隔壁26は、中間隔壁の一例である。実施形態の冷媒流通口34は、第1冷媒流通口の一例である。実施形態の冷媒流通口38は、第2冷媒流通口の一例である。実施形態の冷媒流通口36は、中間冷媒流通口の一例である。
【0038】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0039】
10 :リザーブタンク
12~18 :室
22~28 :隔壁
34~38 :冷媒流通口
34a :第1貫通孔
34b :第2貫通孔
42~48:空気流通口
52 :冷媒流入口
54 :冷媒流出口
62 :冷媒流入口
64 :冷媒流出口
70 :切換弁