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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】車両用ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/18 20060101AFI20231003BHJP
   B60T 8/00 20060101ALI20231003BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20231003BHJP
   B60T 8/88 20060101ALI20231003BHJP
   B60T 13/138 20060101ALI20231003BHJP
   B60T 13/14 20060101ALI20231003BHJP
   B60T 13/18 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T8/00 Z
B60T8/17 Z
B60T8/88
B60T13/138 A
B60T13/14
B60T13/18
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021034142
(22)【出願日】2021-03-04
(65)【公開番号】P2022134763
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】弁理士法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島崎 美鈴
(72)【発明者】
【氏名】神谷 雄介
(72)【発明者】
【氏名】小林 達史
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-082813(JP,A)
【文献】特開2020-147185(JP,A)
【文献】特開2013-208987(JP,A)
【文献】特開2010-149798(JP,A)
【文献】国際公開第2011/061808(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 17/18
B60T 8/00
B60T 8/17
B60T 8/88
B60T 13/138
B60T 13/14
B60T 13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪に設けられ、液圧により前記車輪の回転を抑制する液圧ブレーキと、
高圧の液圧を供給可能な高圧源と、複数の電磁弁とを備え、前記高圧源の液圧を前記複数の電磁弁のうちの1つ以上の電磁弁である第1電磁弁により制御して前記液圧ブレーキに供給可能な液圧供給装置と、
前記液圧供給装置の制御を含む制御を行うことにより、前記車両に対して運転支援制御を行う制御装置とを含む車両用ブレーキシステムであって、
前記車両が、当該車両用ブレーキシステムに電力を供給する電源である第1電源を含み、
前記制御装置が、前記運転支援制御中に、前記第1電源の電圧が設定電圧より低下した場合には、前記複数の電磁弁のうち前記1つ以上の第1電磁弁とは別の1つ以上の電磁弁である第2電磁弁のソレノイドへの供給電流を0として、前記1つ以上の前記第1電磁弁のソレノイドへの供給電流の制御を行うものであり、
前記液圧供給装置が、
加圧ピストンと、前記加圧ピストンの後方に設けられた背面室と、前記加圧ピストンの前方に設けられた加圧室とを含み、前記加圧室の液圧を前記液圧ブレーキに供給するマスタシリンダと、
前記背面室に接続され、前記背面室の液圧を前記1つ以上の前記第1電磁弁により制御可能な背面液圧制御装置とを含み、
前記背面液圧制御装置が、制御室の液圧により作動させられるレギュレータを備え、
前記1つ以上の第1電磁弁が、前記制御室と前記高圧源との間に設けられた増圧リニア弁と、前記制御室と低圧源との間に設けられた減圧リニア弁とを含み、
前記制御装置が、前記増圧リニア弁のソレノイドへの供給電流と前記減圧リニア弁のソレノイドへの供給電流とを、それぞれ、これらの和が制限電流値を越えないように制御する車両用ブレーキシステム。
【請求項2】
前記車両が、前記第1電源とは別に、前記第1電源の電圧が設定電圧より低下した場合に、当該車両用ブレーキシステムに電力を供給可能な電源である第2電源を含み、
前記制御装置が、前記運転支援制御中に、当該車両用ブレーキシステムに前記第2電源から電力が供給される場合に、前記1つ以上の前記第2電磁弁のソレノイドへの供給電流を0とした状態で、前記増圧リニア弁のソレノイドへの供給電流と前記減圧リニア弁のソレノイドへの供給電流との制御を行う請求項1に記載の車両用ブレーキシステム。
【請求項3】
前記1つ以上の前記第2電磁弁が、前記マスタシリンダと、ストロークシミュレータとリザーバとの少なくとも一方との間に設けられたものである請求項1または2に記載の液圧ブレーキシステム。
【請求項4】
前記マスタシリンダが、ブレーキ操作部材に連携させられ、前記加圧ピストンの後方に入力室を介して、前記加圧ピストンに相対移動可能に設けられた入力ピストンを含み、
前記1つ以上の前記第2電磁弁が、前記入力室と前記ストロークシミュレータとの間に設けられた入力室遮断弁を含み、
前記入力室遮断弁が、前記入力室遮断弁のソレノイドへの供給電流が0である場合に閉状態となり、前記入力室を前記ストロークシミュレータから遮断するものである請求項3に記載の車両用ブレーキシステム。
【請求項5】
前記制御装置が、前記減圧リニア弁のソレノイドに第1設定電流値の電流を供給し、前記増圧リニア弁のソレノイドへの供給電流を、前記制限電流値から前記第1設定電流値を引いた大きさの電流値を越えない範囲で制御する請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
【請求項6】
前記制御装置が、前記第1電源の電圧が前記設定電圧より低くなってからの経過時間が第1設定時間を越えた場合に、前記減圧リニア弁への供給電流を前記第1設定電流値より小さい第2設定電流値に減らす請求項5に記載の車両用ブレーキシステム。
【請求項7】
前記制御装置が、前記第1電源の電圧が前記設定電圧より低くなってからの経過時間が前記第1設定時間より長い第2設定時間を越えた場合に、前記増圧リニア弁のソレノイドへの供給電流の制御と前記減圧リニア弁のソレノイドへの供給電流の制御とを終了する請求項6に記載の車両用ブレーキシステム。
【請求項8】
前記高圧源が、ポンプモータと、前記ポンプモータにより作動させられるポンプと、前記ポンプから吐出された液圧を蓄えるアキュムレータとを含み、
前記制御装置が、前記運転支援制御が開始される前に、前記ポンプモータを作動させて、前記アキュムレータの液圧を予め定められた設定圧より高くするモータ制御部を含む請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両にブレーキ力を付与する車両用ブレーキシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回生ブレーキ装置と液圧ブレーキ装置とを含む車両用ブレーキシステムが記載されている。この車両用ブレーキシステムにおいて、バッテリの電圧が正常範囲内にある場合には、ポンプモータが、アキュムレータの液圧が設定範囲内に保たれるように制御される。この制御を正常時制御と称する。しかし、バッテリの電圧が低く、ブレーキ操作部材が操作状態にある場合には、ポンプモータの作動が継続して行われる。それにより、アキュムレータの液圧の低下が抑制され、液圧ブレーキに供給される液圧の低下が抑制される。なお、回生ブレーキの作動によりバッテリの電圧が高くなった場合、または、ブレーキ操作部材の操作が解除された場合には正常時制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-294146号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、車両用ブレーキシステムにおいて、運転支援制御中に電源の電圧が低下した場合に、電力消費量の低減を図り、液圧供給装置の制御を可能とすることである。
【課題を解決するための手段および効果】
【0005】
車両用ブレーキシステムにおいて、運転支援制御中に電源の電圧が低下した場合には、液圧供給装置に含まれる複数の電磁弁のうちの少なくとも1つの電磁弁のソレノイドへの供給電流が0より大きい状態から0とされる。それにより、液圧供給装置における電力消費量を低減することが可能となり、液圧供給装置の制御を行うことが可能となる。また、液圧供給装置の制御が可能となるため、運転者がブレーキ操作部材の操作を行わなくても、液圧ブレーキを作動させることができ、車両を停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキシステムの制御装置の周辺を概念的に示す図である。
図2】上記車両用ブレーキシステムの回路図である。
図3】上記車両用ブレーキシステムの切替回路の構造を概念的に示す図である。
図4】上記制御装置の記憶部に記憶されたリモート駐車制御プログラムを概念的に表すフローチャートである。
図5】上記運転支援制御プログラムの一部(異常時制御)を概念的に表すフローチャートである。
図6】上記車両用ブレーキシステムの作動状態を表す図である。6A目標液圧、実液圧の変化を示す図である。6B操作力対応液圧の変化を示す図である。6C増圧リニア弁への供給電流の変化を示す図である。6D減圧リニア弁への供給電流の変化を示す図である。6E入力室遮断弁、リザーバ連通弁への供給電流の変化を示す図である。6F上流側液圧制御機構における消費電流の変化を示す図である。
図7】上記車両用ブレーキシステムの別の作動状態を表す図である。7A目標液圧、実液圧の変化を示す図である。7B操作力対応液圧の変化を示す図である。7C増圧リニア弁への供給電流の変化を示す図である。7D減圧リニア弁への供給電流の変化を示す図である。7E入力室遮断弁、リザーバ連通弁への供給電流の変化を示す図である。7F上流側液圧制御機構における消費電流の変化を示す図である。
図8】上記車両用ブレーキシステムのさらに別の作動状態を表す図である。8A目標液圧、実液圧の変化を示す図である。8B操作力対応液圧の変化を示す図である。8C増圧リニア弁への供給電流の変化を示す図である。8D減圧リニア弁への供給電流の変化を示す図である。8E入力室遮断弁、リザーバ連通弁への供給電流の変化を示す図である。8F上流側液圧制御機構における消費電流の変化を示す図である。
【発明の実施形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキシステムについて図面に基づいて詳細に説明する。また、本車両用ブレーキシステムは運転支援システムと称することができる。さらに、本車両用ブレーキシステムは、電動モータを備えた駆動源を含む車両に搭載されるようにしたり、駆動源としてエンジンを含む車両に搭載されるようにしたりすること等ができる。
【実施例
【0008】
本実施例に係る車両用ブレーキシステムは、図2に示すように、左右前輪8FL,8FRの各々に設けられた液圧ブレーキ12FL,12FR、左右後輪10RL,10RRの各々に設けられた液圧ブレーキ14RL,14RRを含む車両用ブレーキシステムであり、液圧供給装置としての上流側液圧制御機構16と、下流側液圧制御機構18と、コンピュータを主体とする制御装置20(図1参照)とを含む。
【0009】
図2に示すように、上流側液圧制御機構16は、(a)運転者によって操作されるブレーキ操作部材であるブレーキペダル24に連携させられた入力ピストン40および2つの加圧ピストン41,42を備えたマスタシリンダ43と、(b)マスタシリンダ43の加圧ピストン41の後方に設けられた背面室44に接続されたレギュレータ45等を備えた背面液圧制御装置48とを含み、背面液圧制御装置48により背面室44の液圧を制御して、加圧ピストン41,42の前方の加圧室46,47の液圧を制御する。
【0010】
マスタシリンダ43において、ハウジング50に、加圧ピストン41,42、入力ピストン40が互いに直列に、液密かつ摺動可能に嵌合され、加圧ピストン41,42の前方の加圧室46,47には、それぞれ、液通路54,56を介して左右前輪8の液圧ブレーキ12のホイールシリンダ36、左右後輪10の液圧ブレーキ14のホイールシリンダ38等が接続される。また、加圧ピストン41,42はリターンスプリングにより後退方向に付勢されるが、加圧ピストン41,42の後退端位置において、加圧室46,47はマスタリザーバ60に連通させられる。
【0011】
マスタシリンダ43において、加圧ピストン41は、概して段付き形状を成し、(a)前部の前ピストン部62と、(b)中間部の、半径方向に突出した中間ピストン部64と、(c)後部の、中間ピストン部64より小径の後小径部66とを含む。前ピストン部62、中間ピストン部64および後小径部66は、ハウジング50にそれぞれ液密かつ摺動可能に嵌合され、前ピストン部62の前方が加圧室46とされ、中間ピストン部64の前方が環状室70とされる。また、ハウジング50,後小径部66および中間ピストン部64によって形成された中間ピストン部64の後方の室が背面室44とされる。
【0012】
また、加圧ピストン41の後方に入力ピストン40が位置し、後小径部66と入力ピストン40との間が入力室72とされる。入力ピストン40の後部にはブレーキペダル24がオペレイティングロッド(以下、単にロッドと称する場合がある)等を介して連携させられる。
【0013】
環状室70と入力室72とは連結通路74によって接続され、連結通路74に入力室遮断弁76が設けられる。入力室遮断弁(図面においてSGHと記載する)76は常閉の電磁開閉弁である。連結通路74の入力室遮断弁76より環状室70側の部分はストロークシミュレータ78に接続されるとともに、リザーバ通路80を介してマスタリザーバ60に接続される。リザーバ通路80には常開の電磁開閉弁であるリザーバ連通弁(図面においてSSAと記載する)82が設けられる。
【0014】
なお、入力室遮断弁76のソレノイドへの供給電流が0であり、閉状態にある場合には、入力室72はストロークシミュレータ78からもマスタリザーバ60からも遮断される。
【0015】
また、リザーバ連通弁82のソレノイドへの供給電流が0であり、開状態にある場合には、入力室72、環状室70は、ストロークシミュレータ78に連通させられるとともにマスタリザーバ60に連通させられる。そのため、入力室72、環状室70の液圧は、マスタリザーバ60に流出させられ、ストロークシミュレータ78は非作動状態となる。そのため、リザーバ連通弁82は、シミュレータ制御弁と称することができる。
【0016】
また、連結通路74の入力室遮断弁76より環状室側の部分に液圧センサ84が設けられる。液圧センサ84は、環状室70,入力室72が互いに連通させられ、かつ、マスタリザーバ60から遮断された状態において、環状室70,入力室72の液圧を検出する。環状室70、入力室72の液圧は、ブレーキペダル24の操作力に応じた高さとなるため、液圧センサ84を操作液圧センサと称することができる。
【0017】
さらに、ブレーキペダル24の後退端位置からの前進量であるストロークはストロークセンサ26によって検出される。
【0018】
背面液圧制御装置48は、レギュレータ45に加えて、高圧源93、液圧制御弁装置等を含む。高圧源93は、ポンプ86及びポンプモータ88を備えたポンプ装置90、アキュムレータ92等を含み、液圧制御弁装置は、後述する制御室122の液圧を制御する電磁弁を含むものであり、電磁弁として増圧リニア弁(SLA)94および減圧リニア弁(SLR)96等を含む。
【0019】
アキュムレータ92には、ポンプ装置90から吐出された作動液が加圧された状態で蓄えられる。アキュムレータ92に収容された作動液の液圧であるアキュムレータ圧はアキュムレータ圧センサ98によって検出される。ポンプモータ88は、アキュムレータ圧センサ98によって検出されるアキュムレータ圧が、設定範囲内に保たれるように制御されるのが普通であるが、後述するように、リモート駐車制御が行われる前には、設定圧以上になるように制御される。設定圧は、例えば、車両を1回以上停止させるために必要な液圧とすることができる。
【0020】
レギュレータ45は、(d)ハウジング110と、(e)ハウジング110に、軸線hと平行な方向に、互いに直列に並んで設けられたパイロットピストン112および制御ピストン114とを含む。ハウジング110の制御ピストン114の前方には高圧室116が形成され、高圧源93に接続される。パイロットピストン112とハウジング110との間がパイロット圧室120とされ、制御ピストン114の後方が制御室122とされ、制御ピストン114の前方に出力室としてのサーボ室124が設けられる。また、サーボ室124と高圧室116との間に高圧供給弁126が設けられる。高圧供給弁126は常閉弁であり、レギュレータ45の非作動状態において、サーボ室124と高圧室116とを遮断する。なお、制御ピストン114はリターンスプリング130により後退方向に付勢される。
【0021】
制御ピストン114の内部には、低圧通路128が通り、常時、マスタリザーバ60に連通させられる。また、低圧通路128は、制御ピストン114の前端部に開口し、その開口が高圧供給弁126に対向する。そのため、制御ピストン114が後退端にある場合には、サーボ室124は高圧室116から遮断され、低圧通路128を介してマスタリザーバ60に連通させられる。制御ピストン114が前進させられ、開口が塞がると、サーボ室124がマスタリザーバ60から遮断され、高圧供給弁126が開かれて高圧室116に連通させられる。
【0022】
なお、パイロット圧室120には加圧室46が接続され、これらパイロット圧室120と加圧室46とは、常時、連通状態にある。そのため、パイロットピストン112には、常時、加圧室46の液圧が作用する。
また、サーボ室124には背面室44が接続され、これらサーボ室124と背面室44とは常時連通状態にある。そのため、サーボ室124の液圧であるサーボ圧Psと背面室44の液圧とは原則として同じ高さになる。サーボ室124の液圧であるサーボ圧Psはサーボ圧センサ132によって検出される。
【0023】
増圧リニア弁(SLA)94は高圧源93と制御室122との間に設けられ、減圧リニア弁(SLR)96はマスタリザーバ60と制御室122との間に設けられる。増圧リニア弁94は常閉弁であり、ソレノイドへの供給電流が0の場合に閉となり、供給電流が大きいと、開度が大きくなり、高圧源93の液圧と制御室122の液圧との差圧が小さくなる。減圧リニア弁96は常開弁であり、ソレノイドへの供給電流が0の場合に開となり、供給電流が大きいと、開度が小さくなり、制御室122の液圧とマスタリザーバ60の液圧との差圧が大きくなる。増圧リニア弁94のソレノイドへの供給電流と減圧リニア弁96のソレノイドへの供給電流との制御により、制御室122の液圧が制御される。また、制御室122にはダンパ134が接続され、制御室122とダンパ134との間で作動液の授受が行われる。
【0024】
本実施例においては、レギュレータ45における制御室122の液圧とサーボ室124のサーボ圧Psとの関係はレギュレータ45の構造で決まり、マスタシリンダ43における背面室44の液圧と加圧室46,47の液圧との関係はマスタシリンダ43の構造で決まり、既知である。そのため、加圧室46,47の液圧が目標液圧に近づくように、制御室122の液圧が制御されるようにすることができる。なお、制御室122の液圧、サーボ室124のサーボ圧Ps,加圧室46,47の液圧は同じ高さとなるように、レギュレータ45、マスタシリンダ43が設計されるようにすることができる。
【0025】
下流側液圧制御機構18は、(a)スリップ制御弁装置150、(b)減圧用リザーバ152F,152Rの作動液を汲み上げて、スリップ制御弁装置150の上流側に吐出するポンプ154F,154Rおよびポンプモータ156を備えたポンプ装置158、(c)ポンプ154F,154Rとマスタシリンダ43の加圧室46,47との間に設けられた常開の液圧制御弁160F,160R等を含む。液圧制御弁160F,160Rは、マスタシリンダ43の加圧室46,47の液圧に対して液圧ブレーキ12FR,12FL,14RR,14RLのホイールシリンダ36FR,36FL,38RR,38RLの液圧を制御するものである。
【0026】
下流側液圧制御機構18は前後2系統式とされている。前輪側の系統において、液通路54に、左右前輪8FL,8FRのホイールシリンダ36FL,36FRの各々に接続された個別通路146FL,146FRが接続される。個別通路146FR,146FLの各々には保持弁170FL,170FRが設けられる。また、ホイールシリンダ36FL,36FRの各々と減圧用リザーバ152Fの液室178Fとが減圧通路によって接続され、減圧通路の各々には減圧弁172FL,172FRが設けられる。
【0027】
後輪側の系統において、液通路56に、ホイールシリンダ38RL,38RRの各々に接続された個別通路148RL,148RRが接続され、個別通路148RL,148RRの各々には保持弁170RL,170RRが設けられる。また、ホイールシリンダ38RL,38RRの各々と減圧用リザーバ152Rの液室178Rとの間には、それぞれ、減圧弁172RL,172RRが設けられる。これら保持弁170、減圧弁172、減圧用リザーバ152等により、スリップ制御弁装置150が構成される。
【0028】
以下、前輪側の系統について説明し、後輪側の系統についての説明を省略する。
減圧用リザーバ152Fは、ハウジングと、ハウジングに摺動可能に嵌合された仕切り部材174Fと、ハウジングの仕切り部材174Fの一方に設けられた弾性部材176Fとを含む。ハウジングの仕切り部材174の弾性部材176が設けられた側との反対側が液室178Fとされ、作動液が収容される。
【0029】
液室178Fには、それぞれ、補給弁179Fが設けられる。補給弁179Fは、弁座および弁子と、弁子を弁座に押し付ける向きに弾性力を加えるスプリングと、仕切り部材174Fに設けられた開弁部材175Fとを含む。減圧用リザーバ152Fにおいて、液室178Fに収容された作動液の液量が設定量以上である場合には、弁子が弁座に着座させられ、補給弁179Fは閉状態にある。液室178Fに収容された作動液の液量が設定量より少なくなると、仕切り部材174Fがスプリング176Fの弾性力により移動させられ、開弁部材175Fにより弁子が弁座から離間させられ、補給弁179Fが開状態に切り換えられる。
【0030】
減圧用リザーバ152Fの液室178Fと、液通路54の個別通路146FL,146FRの接続部より上流側の部分(保持弁170FL,170FRより上流側の部分)とは、ポンプ通路180Fによって接続される。ポンプ通路180Fには、ポンプ154Fが設けられる。また、ポンプ通路180Fの、ポンプ154Fの吐出側の部分には、それぞれ、ダンパ、絞り等が設けられ、ポンプ154Fから吐出された作動液の脈動が抑制される。また、ポンプ154Fの吸引側は、吸入弁を介して減圧用リザーバ152Fの液室178Fに接続される。
【0031】
また、液通路54のポンプ通路180Fの接続部より上流側の部分には液圧制御弁160Fが設けられ、液通路54の液圧制御弁160Fより上流側の部分と減圧用リザーバ152Fとは、それぞれ、補給弁179Fを介して補給通路184Fによって接続される。
【0032】
液圧制御弁160Fは、液圧制御弁160Fの上流側の部分の液圧と下流側の部分の液圧との差圧dPを、液圧制御弁160Fへの供給電流に応じた大きさに制御するものである。液圧制御弁160Fへの供給電流が大きくなると差圧dPが大きくなり、マスタシリンダ43の加圧室46の液圧に対するホイールシリンダ36の液圧が高くなる。
【0033】
また、左右後輪10には、それぞれ、電動パーキングブレーキ186が設けられ、図示しない電動アクチュエータにより作動させられる。電動パーキングブレーキ186の作動状態は、電動アクチュエータへの供給電流が0になっても保持される。
【0034】
本実施例においては、液通路54にマスタシリンダ圧センサ190が設けられ、個別通路146FL,148RRにホイールシリンダ圧センサ192F,192Rが設けられる。マスタシリンダ圧センサ190は、加圧室46の液圧を検出するものである。加圧室46,47の液圧はほぼ同じであると推測されるため、マスタシリンダ圧センサ190の検出値に基づけば、加圧室47の液圧を推定することができる。ホイールシリンダ圧センサ192F,192Rは、ホイールシリンダ36FL,38RRの液圧を検出するものである。前輪側、後輪側の各々において、ホイールシリンダ36FR,36FLの液圧がほぼ同じである場合、ホイールシリンダ38RL,38RRの液圧がほぼ同じである場合には、いずれか一方の液圧を検出すれば、他方の液圧を推定することができる。
【0035】
また、左右前輪8、左右後輪10の各々には、それぞれ、車輪の回転速度を検出する車輪速度センサ194が設けられる。車輪速度センサ194の各々の検出値に基づいて車両の走行速度が取得される。
【0036】
制御装置20は、図1に示すように、コンピュータを主体とする複数のECU230,232,234,236,238等を含む。これら複数のECU230~238等は、CGW(Central gate way)246、バス248~254等を介して互いに通信可能に接続されている。また、バス248には、デジタルカメラ212、ソナー214等が接続され、デジタルカメラ212によって得られた画像情報、ソナー214によって得られた情報は、ECU230,232等に供給可能とされている。
【0037】
デジタルカメラ212、ソナー214は、車両の複数の部分に設けられる。
【0038】
制御装置20には、照合ECU(electric control unit)218が接続される。照合ECU218は、車外に存在する情報通信端末220との間で情報の通信を行い、情報通信端末220のIDの照合を行ったり、情報通信端末220から供給された情報であるリモート情報を取得したりするものである。リモート情報は、照合ECU200を経て制御装置20に供給される。また、リモート情報に基づいて行われる自動駐車制御をリモート駐車制御と称する。リモート駐車制御は、情報通信端末220を運転者が車外で操作している状態で行われるため、車両に運転者等が乗車していない場合に行われるのが普通であるが、情報携帯端末220の操作者とは別の人が乗車して、運転操作(例えば、ブレーキペダル24の操作)を行う場合がある。
【0039】
ECU230は、PVM(panoramic view monitor)ECU230である。PVMECU230は、車両の周辺の立体物、人、区画線等を認識する画像認識部を備えたものであり、例えば、複数のデジタルカメラ212の撮像画像等に基づいて、パノラマ画像を作成する。
【0040】
ECU232はCSR(clearance sonar)ECU232である。CSREUC232は、経路生成走行計画部、車両制御部等を含む。経路生成走行計画部は、PVMECU230から供給されたパノラマ画像を表す情報、複数のソナー214からの情報等に基づいて画像認識を行い、俯瞰画像を作成し、車両を目標駐車位置へ移動させる場合の、車両の経路、走行計画を作成するものである。車両制御部は、経路生成走行計画部において作成された経路、走行計画等に基づいて、車両用ブレーキシステム等に対する制御指令値を作成して、運転マネジャ242に出力する。
【0041】
ECU234は、SBW(shift by wire)ECU234である。SBWECU234は、シフト位置を運転者の操作によることなく切換可能なものであり、アクチュエータを制御することにより、シフト位置をパーキング位置やバック位置等に切り換える。また、SBWECU234には、シフト位置をパーキング位置に切り換える場合にパーキングロック機構235を作動させる。
【0042】
パーキングロック機構235は、車両を駆動する駆動源の出力を駆動輪(例えば、左右前輪8FL,8FR)に伝達する図示しない駆動伝達軸(例えば、自動変速機の出力軸、減速機構の出力軸等とすることができる)の回転をロックするものである。パーキングロック機構235は、パーキングロック(Pロック)ACT(Actuator)260を含み、パーキングロックACT260により、駆動伝達軸と一体的に回転可能に設けられたパーキングロックギヤに図示しない係合部材が係合させられて、駆動伝達軸の回転がロックされる。それにより、駆動輪8FL,8FRの回転が阻止される。本実施例においては、パーキングロック機構235は、車両用ブレーキシステムの構成要素と考える。
【0043】
ECU236は上流側ブレーキECU236である。上流側ブレーキECU236には、上流側液圧制御機構16が接続される。上流側液圧制御機構16から上流側ブレーキECU236には、上流側液圧制御機構16に含まれるストロークセンサ26、サーボ圧センサ132等の複数のセンサの検出値が供給され、上流側ブレーキECU236から上流側液圧制御機構16には、入力室遮断弁76、リザーバ連通弁82、ポンプモータ88、増圧リニア弁94、減圧リニア弁96等の電磁弁、ポンプモータ88への制御指令値が出力される。
【0044】
ECU238は下流側ブレーキECU238である。下流側ブレーキECU238には、下流側液圧制御機構18が接続される。下流側液圧制御機構18から下流側ブレーキECU238には、下流側液圧制御機構18に含まれるマスタシリンダ圧センサ190等の複数のセンサの検出値が供給されるとともに、下流側ブレーキECU238からポンプモータ156、液圧制御弁160、保持弁170等の電磁弁への制御指令値が出力される。
【0045】
また、運転マネジャ242は下流側ブレーキECU238に含まれるが、運転マネジャ242は、CSREUC232の車両制御部から供給された制御指令値に基づいて下流側液圧制御機構18を制御するとともに、制御指令値等を上流側ブレーキECU236等に供給する。上流側ブレーキECU236は、制御指令値に基づいて上流側液圧制御機構16を制御する。
【0046】
なお、運転マネジャ242は、CSRECU232から供給された制御指令値を、図示しないHV/EFI(hybrid vehicle/electronic fuel injection)ECU、EPS(electronic controlled power steer)ECU等にも供給するが、HV/EFIECU、EPSECU等の制御については、本発明とは関係がないため、説明を省略する。
【0047】
当該車両用ブレーキシステム等には、第1電源としてのメイン電源270と第2電源としてのサブ電源272とが接続される。メイン電源270には、車両の走行時に生じた
電気エネルギ(例えば、回生ブレーキの作動において生じた電気エネルギ)が蓄えられる。また、サブ電源272には、メイン電源270の電圧が降圧されて供給されて、蓄えられる。メイン電源270、サブ電源272は、例えば、リチウムイオンバッテリ等とすることができるが、サブ電源272の充電容量はメイン電源270の充電容量より小さい。
【0048】
CSRECU232,PVMECU230,下流側ブレーキECU238,下流側液圧制御機構18には、メイン電源270が接続される。上流側ブレーキECU236,上流側液圧制御機構16には、メイン電源270とサブ電源272とが接続される。具体的には、ポンプモータ88にはメイン電源270が接続され、入力室遮断弁76,リザーバ連通弁82,増圧リニア弁94,減圧リニア弁96等の電磁弁のソレノイド、ストロークセンサ26,アキュムレータ圧センサ98,操作液圧センサ84,サーボ圧センサ132等のセンサおよび上流側ブレーキECU236には、メイン電源270とサブ電源272とが切替回路274を介して接続される。SBWECU234,シフトロック機構235には、メイン電源270とサブ電源272とが接続され、これらのうち電圧の高い方の電力が供給される。
【0049】
切替回路274は、図3に示すように、メイン電源270,サブ電源272と、上流側ブレーキECU236,上流側液圧制御機構16との間に設けられる。切替回路274は、2つの半導体スイッチ素子280,282と、素子284とを含む。2つの半導体スイッチ素子280,282は、メイン電源270の電源線290に設けられ、サブ電源272の電源線292が電源線290の2つの半導体スイッチ素子280,282の下流側の部分に接続される。また、切替回路274は電源線294を介して上流側ブレーキECU236に接続される。
【0050】
一方、メイン電源270の電源線300とサブ電源272の電源線302とが切替回路274に接続され、これらのうちの電圧が高い方が電源線304を介して上流側液圧制御機構16のうちの上述の電磁弁のソレノイド、センサ等に接続される。
【0051】
素子284において、メイン電源270の電圧とサブ電源262の電圧とがそれぞれ検出されて、比較され、比較結果に基づいて電源線290の電力が2つの半導体スイッチ素子280,282のベースに供給される。メイン電源270の電圧がサブ電源272の電圧より高い場合には、半導体スイッチ素子280、282のベースに電圧が印加される。それにより、電源線290が通電可能となり、メイン電源270から電源線290、294を経て上流側ブレーキECU236に電力が供給される。サブ電源272の電圧がメイン電源270の電圧より高い場合には、半導体スイッチ素子280,282のベースに電圧が印加されない。その結果、電源線290が通電不能となり、メイン電源270の電力は電源線290を経て上流側ブレーキECU等に供給されず、サブ電源272の電力が電源線292、294を経て上流側ブレーキECU等に供給される。
【0052】
本実施例においては、素子284が、メイン電源270、サブ電源272の電圧を検出する検出部を含み、半導体スイッチ素子280,282を制御するスイッチ制御部であると考えることができる。
【0053】
以上のように構成された車両用ブレーキシステムにおいて、運転支援制御としてリモート駐車制御が行われる。
リモート駐車制御において、車両の外部における情報通信端末220の操作に基づいて、運転者が乗車していなくても、車両が目標駐車位置へ移動させられて、停止される。リモート駐車制御において、車両に設けられた複数のデジタルカメラ212により取得された撮像画像、複数のソナー214から供給された情報等に基づいて、画像認識が行われ、車両を目標駐車位置へ移動させる場合の、車両の経路が作成され、走行計画が作成される。また、作成された走行計画に基づいて制御指令値が作成されて、運転マネジャ242に供給する。運転マネジャ242は、制御指令値を上流側ブレーキECU236等に供給する。
【0054】
上流側ブレーキECU236は、制御指令値(例えば、液圧ブレーキ12,14の作動要求、目標液圧等)に基づいて、上流側液圧制御機構16を制御する。液圧ブレーキ12,14の実際の液圧である実液圧が目標液圧に近づくように、増圧リニア弁94、減圧リニア弁96等への供給電流を制御する。車両が目標駐車位置に到達した場合に、運転マネジャ242は電動アクチュエータを制御してパーキングブレーキ186を作動させる。
【0055】
なお、車両が目標駐車位置に到達した場合において、運転マネジャ242は、パーキングブレーキ186に加えて、または、パーキングブレーキ186に代えて、パーキングロック機構235を作動させることもできる。
【0056】
上流側液圧制御機構16において、原則として、車両のメインスイッチがONの間、入力室遮断弁76,リザーバ連通弁82のソレノイドには0より大きい電流が供給される。入力室72と環状室76とが連通させられるとともにマスタリザーバ60から遮断され、ストロークシミュレータ78に連通させられる。
【0057】
背面液圧制御装置48において、増圧リニア弁94、減圧リニア弁96の制御により、制御室122の液圧が制御される。制御ピストン114が前進させられ、サーボ室124にサーボ圧が発生し、背面室44に供給される。背面室44の液圧により加圧ピストン41が前進させられ、加圧ピストン42が前進させられる。それにより、加圧室46,47に液圧が発生させられる。また、加圧室46,47とホイールシリンダ36,38とが連通状態にある場合には、加圧室46,47の液圧がホイールシリンダ36,38に供給され、液圧ブレーキ12,14が作動させられる。ホイールシリンダ36,38の液圧は加圧室46,47の液圧とほぼ同じになる。
【0058】
リモート駐車制御は、図4のフローチャートに従って制御される。
ステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、リモート駐車制御が実行中であるか否かが判定され、判定がNOである場合には、S2において、開始条件が成立したか否かが判定される。例えば、開始条件は、照合ECU218を介してリモート駐車を開始するリモート情報が供給されることを含む条件とすることができる。S2の判定がNOである場合には、S1,2が繰り返し実行される。
【0059】
そのうちに、S2の判定がYESになった場合には、S3においてポンプモータ88が作動させられ、アキュムレータ92に設定圧以上の液圧が蓄えられる。
【0060】
その後、S4において終了条件が成立するか否かが判定される。目標位置に到達し、パーキングブレーキ186やパーキングロック機構235が作動させられた場合には、終了条件が成立したと判定される。判定がNOである場合には、S5において、メイン電源270の電圧がサブ電源272の電圧より低くなったか否か、換言すると、メイン電源270が失陥したか否かが判定される。本実施例においては、サブ電源272の電圧が設定電圧に対応する。S5の判定がNOである場合には、S6において、正常時制御が行われ、判定がYESである場合には、S7において、異常時制御が行われる。
【0061】
S6の正常時制御は、当該車両用ブレーキシステムにメイン電源270から電力が供給される状態で行われる。リモート駐車制御において、車両を停止させる場合には、ホイールシリンダ36,38の液圧の目標値である目標液圧が、車両を停止させ得る大きさに決定され、ホイールシリンダ圧センサ192の検出値である実液圧が目標液圧に近づくように、増圧リニア弁94,減圧リニア弁96が制御される。
【0062】
S7の異常時制御においては、当該車両用ブレーキシステムにサブ電源272から電力が供給される状態で、車両が直ちに停止させられる。また、サブ電源272の電力は、下流側ブレーキECU238等には供給されず、上流側ブレーキECU236、上流側液圧制御機構18,SBWECU234、パーキングロック機構235等に供給される。なお、ポンプモータ88にはサブ電源272から電力が供給されることがないため、リモート駐車制御中にメイン電源270が失陥してもアキュムレータ92に液圧を蓄えることができない。そのため、S3において、リモート駐車制御の開始前には、ポンプモータ88の作動によりアキュムレータ92の液圧が設定圧より高くされるのである。
【0063】
このように、サブ電源272の電力が用いられるため、電力消費量を抑制する必要がある。異常時制御において、主として電流が消費されるのは、入力室遮断弁76,リザーバ連通弁82,増圧リニア弁94,減圧リニア弁96等の電磁弁のソレノイドである。そこで、本実施例においては、入力室遮断弁76,リザーバ連通弁82のソレノイドへの供給電流を0とした状態で、増圧リニア弁94,減圧リニア弁96の供給電流の制御が行われるようにした。
【0064】
入力室遮断弁76が閉とされることにより、入力室72はストロークシミュレータ78から遮断されるが、リモート駐車制御において、ブレーキペダル24が操作されることは少ない。また、リザーバ連通弁82が開とされることにより、環状室70がマスタリザーバ60に連通させられるため、仮に、ブレーキペダル24が操作されても、加圧ピストン41,42の前進が許容され、加圧室46,47に液圧が発生する。そのため、運転者が違和感を感じることはない。
【0065】
増圧リニア弁94のソレノイドへの供給電流I(SLA)、減圧リニア弁96のソレノイドへの供給電流I(SLR)は、それぞれ、これらの和I(SLA)+I(SLR)が制限電流値Xを越えない範囲内で制御される。
I(SLA)+I(SLR)<X
制限電流値Xは、増圧リニア弁94、減圧リニア弁96によって使用可能な電流値である。制限電流値Xは、例えば、サブ電源272の電圧、サブ電源272の容量等と、サブ電源272の電力により作動させられる構成要素(例えば、SBWECU234、パーキングロック機構235、上流側ブレーキECU236、電磁弁のソレノイド、センサ等)における消費電流値等と、余裕値等とに基づいて決めることができる。制限電流値Xは、予め定められた設定値(定数)とすることができる。
【0066】
また、SBWECU234の制御により、パーキングロックACT260が作動させられ、駆動伝達軸がロックされる。パーキングロックACT260の制御は、液圧ブレーキ12、14の制御とは別個に行われる。なお、メイン電源270の電圧が設定電圧より低くなってからの経過時間がT2より短い間に、駆動伝達軸がロックされる。
【0067】
異常時制御について図5のフローチャートに基づいて説明する。S21において、入力室遮断弁76,リザーバ連通弁82のソレノイドへの供給電流が0にされる。S22において、メイン電源270の失陥が検出された時からの経過時間が時間T1を超えたか否かが判定される。判定がNOである場合には、S23において、減圧リニア弁96への供給電流が第1設定電流値aとされ、増圧リニア弁94への供給電流が制限電流値Xから減圧リニア弁96への供給電流値である第1設定電流値aを引いた値(X-a)より小さい範囲内で制御される。
【0068】
第1設定電流値aは、制御室122の液圧が、運転者によって大きな操作力でブレーキペダル24が操作された場合の高さに制御された場合であっても、制御室122から液圧が減圧リニア弁96を介してマスタリザーバ60に漏れない大きさとすることができる。そして、ホイールシリンダ36,38の液圧である実液圧が車両を停止させるために要求される液圧である目標液圧に近づくように増圧リニア弁94への供給電流が(X-a)より小さい範囲内で制御されるのである。
【0069】
目標液圧、実液圧は、ホイールシリンダ36,38の液圧であるが、ホイールシリンダ圧センサ192は、下流側液圧制御機構18の構成要素であるため、異常時制御において使用することはできない。また、下流側液圧制御機構18に電力が供給されない状態において、ホイールシリンダ36,38の液圧はマスタシリンダ43の加圧室46,47の液圧とほぼ同じである。そのため、本実施例においては、目標液圧Pta、実液圧Pは、マスタシリンダ43の加圧室46,47の液圧とされる。
【0070】
目標液圧Ptaは、正常時制御における場合と同様に、車両を停止させ得る大きさ、例えば、リモート駐車制御が行われている場合の、路面の勾配、車両に加えられている駆動力、車速等に基づいて決定される。換言すると、仮に、運転者によってブレーキペダル24の操作が行われても、そのブレーキペダル24の操作状態に基づいて目標液圧Ptaが決定されるのではない。
【0071】
実液圧Pは、サーボ圧センサ132の検出液圧とストロークセンサ26の検出値との少なくとも一方に基づいて取得することができる。ブレーキペダル24が後退端位置にある場合において、背面室44の液圧と加圧室46,47の液圧との関係は既知である。そのため、サーボ圧センサ132の検出液圧に基づけば、加圧室46,47の液圧を推定することができる。
【0072】
また、ブレーキペダル24が操作された場合には、ブレーキペダル24の前進に伴って加圧ピストン41,42が前進し、加圧室46,47に液圧が発生する。そのため、ストロークセンサ26によって検出されたブレーキペダル24の操作ストロークに基づけば、ブレーキペダル24の操作に起因する加圧室46,47の液圧を推定することができる。以上のことから、本実施例においては、背面室44の液圧で決まる加圧室46,47の液圧と、ブレーキペダル24のストロークで決まる加圧室46,47の液圧との少なくとも一方に基づいて、加圧室47,47の液圧である実液圧Pが取得されるのである。
【0073】
S24において、実液圧Pが目標液圧Ptaより小さいか否かが判定され、判定がYESである場合には、S25において、増圧リニア弁94への供給電流が制御される。目標液圧に対して実液圧が不足する場合には、増圧リニア弁94への供給電流が増やされる。
【0074】
それに対して、S22の判定がYESである場合には、S26において、メイン電源270の失陥が検出された時からの経過時間がT2を越えたか否かが判定される。判定がNOである場合には、S27において、減圧リニア弁96への供給電流が第2設定電流値bとされ、増圧リニア弁94への供給電流が(X-b)を越えない範囲で制御される。第2設定電流値bは第1設定電流値aより小さい(b<a)。メイン電源270の失陥が検出された時(異常時制御が開始された時)から経過時間T1が経過した場合には、車両は停止したと推定される。また、停止している車両を停止状態に維持するために要する制動力は、車両を停止するのに要する制動力より小さい。そのため、減圧リニア弁96への供給電流を小さくしても差し支えないと考えられる。
【0075】
それに対して、S26の判定がYESである場合には、増圧リニア弁94,減圧リニア弁96への供給電流は0とされる。異常時制御が開始されてからT2が経過した場合には、パーキングブレーキ186が作動させられ、車両は良好に停止していると考えられるからである。また、その後、S4の判定がYESとなる。
【0076】
本実施例の具体的な制御例を図6~8に基づいて説明する。図6には、ブレーキペダル24の操作が行われなかった場合(図6B)の一例を示し、図7,8には、ブレーキペダル24の操作が行われた場合(図7B図8B)の一例を示す。
【0077】
図6Aに示すように、時間t0においてメイン電源270の電圧が設定電圧より低いこと(失陥したこと)が検出され、異常時制御が開始される。異常時制御において、目標液圧Ptaが実線が示すように増加させられ、図6Eに示すように、入力室遮断弁(SGH)76、リザーバ連通弁(SSA)82のソレノイドへの供給電流が0とされた状態で、図6C図6Dに示すように、減圧リニア弁96のソレノイドへの供給電流が第1設定電流値aとされた状態で、増圧リニア弁94のソレノイドへの供給電流が(X-a)を越えない範囲で制御される。それにより、図6Aに示すように、実液圧Pが一点鎖線で示すように増加し、時間thにおいて、目標液圧Ptaに近づく。図6Cに示すように、時間thにおいて増圧リニア弁94のソレノイドへの供給電流が0とされ、閉状態とされる。制御室122の液圧は保持される。
【0078】
一方、図6Dが示すように、異常時制御の開始時から時間T1が経過するまでの間、減圧リニア弁96のソレノイドへの供給電流は第1設定電流値aに保持されるが、T1が経過した後には、第2設定電流値bとされ、時間T2が経過すると0とされる。上流側液圧制御機構16において消費される電流は、図6Fに示すように、時間の経過とともに減少させられ、電力消費量(斜線を付した部分)が低減させられる。
【0079】
図7A図7Bに示すように、メイン電源270の失陥が検出されてから時間tiが経過した後に、ブレーキペダル24が操作されることにより、実液圧Pが目標液圧Ptaを越えた。そのため、図7Cに示すように、増圧リニア弁96のソレノイドへの供給電流が0にされ、背面室44の液圧が保持される。一方、減圧リニア弁96のソレノイドへの供給電流は、図7Dに示すように、時間T1が経過すると、第1設定電流値aから第2設定電流値bに減少させられ、時間T2が経過すると、0とされる。図7Fに示すように、増圧リニア弁94,減圧リニア弁96のソレノイドにおける電力消費量は、早期に減少させられ、上流側液圧制御機構16における電力消費量は低減させられる。
【0080】
図8A図8Bに示すように、メイン電源270の失陥が検出されてから時間tjが経過した時にブレーキペダル24が操作され、ホイールシリンダ36,38の液圧がΔPj高くなる。実液圧Pは目標液圧Ptaに到達しないが、実液圧Pと目標液圧Ptaとの差は小さくなる。そのため、図8Cに示すように、増圧リニア弁94のソレノイドへの供給電流が減少させられる。そして、時間tkが経過した後に、実液圧が目標液圧にほぼ達したため、増圧リニア弁94のソレノイドへの供給電流が0とされる。以下、同様に、図8Dに示すように、減圧リニア弁96のソレノイドへの供給電流が段階的に減少させられ、時間T2が経過すると、0とされる。図8Fに示すように、上流側液圧制御機構16における電力消費量は低減させられる。
【0081】
なお、図7の異常時制御の開始時から時間tiの経過後、図8の時間tkの経過後において、増圧リニア弁94のソレノイドへの供給電流が0にされると、制御室122が高圧源90、リザーバ82から遮断される。一方、パイロット室120には、加圧室46の液圧が供給される。それにより、パイロットピストン120,制御ピストン114が前進させられ、サーボ室124の液圧が制御され、背面室44に供給される。その結果、制御室122が遮断されても、背面室44の液圧の低下が抑制され、ブレーキペダル24の前進が許容され、加圧室46,47に操作力と背面室44の液圧とに基づく液圧が発生させられる。
【0082】
このように、本実施例においては、リモート駐車制御中に、メイン電源270が失陥した場合にサブ電源272の電力により上流側液圧制御機構16が作動させられるが、入力室遮断弁76、リザーバ連通弁82への供給電流が0とされて、増圧リニア弁94、減圧リニア弁96の制御により、背面室44の液圧が制御され、ホイールシリンダ36,38の液圧が制御される。その結果、消費電力量の低減を図りつつ、上流側液圧制御機構16の制御を行うことができる。また、増圧リニア弁94,減圧リニア弁96の制御により、運転者が乗車していなくても、運転者がブレーキペダル24の操作を行わなくても、液圧ブレーキ12,14を作動させて、車両を停止させることができる。
【0083】
特に、リモート駐車制御が行われている場合には、運転者が不在であるか、また、ブレーキペダル24の操作は行われないことが多い。それに対して、本実施例においては、メイン電源270が失陥して、ブレーキペダル24の操作が行われなくても、液圧ブレーキ12,14を作動させることができるのである。
【0084】
本実施例においては、上流側液圧制御機構16が液圧供給装置に対応し、制御装置20のうちS3を記憶する部分、実行する部分等によりモータ制御部が構成され、S7を記憶する部分、実行する部分等により異常時制御部が構成される。また、SBWECU234が、パーキングロック制御部に対応する。さらに、増圧リニア弁(SLA)94、減圧リニア弁(SLR)96が第1電磁弁に対応し、入力室遮断弁(SGH)76、リザーバ連通弁(SSA)82が、第2電磁弁に対応する。
【0085】
なお、上記実施例においては、上流側液圧制御機構16が液圧供給装置に対応するものであったが、下流側液圧制御機構18を液圧供給装置に対応するものとすることができる。
【0086】
また、制御装置は、複数のECUを含むものに限定されず、ECUを1つ含むものとすることができる。さらに、制御装置は、上流側ブレーキECU2236,下流側ブレーキECU238を含むものとすることができる。
【0087】
また、ブレーキ回路の構造は問わない等本発明は、上述に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0088】
12,14:液圧ブレーキ 16:上流側液圧制御機構 20:制御装置 44:背面室 45:レギュレータ 88:ポンプモータ 92:アキュムレータ 93:高圧源 94:増圧リニア弁 96:減圧リニア弁 76:入力室遮断弁 82:リザーバ連通弁 122:制御室 270:メイン電源 272:サブ電源 274:切替回路 280,282:半導体スイッチ素子 284:素子
【特許請求可能な発明】
【0089】
(1)車両の車輪に設けられ、液圧により前記車輪の回転を抑制する液圧ブレーキと、
高圧の液圧を供給可能な高圧源と、複数の電磁弁とを備え、前記高圧源の液圧を前記複数の電磁弁のうちの1つ以上の電磁弁である第1電磁弁により制御して前記液圧ブレーキに供給可能な液圧供給装置と、
前記液圧供給装置の制御を含む制御を行うことにより、前記車両に対して運転支援制御を行う制御装置と
を含む車両用ブレーキシステムであって、
前記車両が、当該車両用ブレーキシステムに電力を供給する電源である第1電源を含み、
前記制御装置が、前記運転支援制御中に、前記第1電源の電圧が設定電圧より低下した場合には、前記複数の電磁弁のうち前記1つ以上の第1電磁弁とは別の1つ以上の電磁弁である第2電磁弁のソレノイドへの供給電流を0として、前記1つ以上の前記第1電磁弁のソレノイドへの供給電流の制御を行う車両用ブレーキシステム。
【0090】
第1電磁弁、第2電磁弁は、それぞれ、電磁開閉弁であっても、電磁リニア弁であってもよい。例えば、第1電磁弁を電磁リニア弁とし、第2電磁弁を電磁開閉弁とすることができる。また、複数の電磁弁には、1つ以上の第1電磁弁、1つ以上の第2電磁弁の他に1つ以上の電磁弁が含まれていてもよい。
【0091】
第1電源の電圧が設定電圧より低下した場合に行われる制御装置による制御(異常時制御と称することができる)は、運転支援制御において行われるようにしても、運転支援制御とは別の制御(例えば、異常時制御)において行われるようにしてもよい。
【0092】
運転支援制御には、液圧供給装置の制御を含む制御を行うものである。例えば、液圧供給装置の制御により行われる制御(自動ブレーキ制御)や、液圧供給装置と車両に搭載された液圧供給装置とは別の搭載装置(例えば、HV/EFI,EPS等)とを制御することにより行われる制御(自動運転制御、自動駐車制御、リモート駐車制御等)等が含まれる。
【0093】
(2)前記車両が、前記第1電源とは別に、前記第1電源の電圧が設定電圧より低下した場合に、当該車両用ブレーキシステムに電力を供給可能な電源である第2電源を含み、
前記制御装置が、前記運転支援制御中に、当該車両用ブレーキシステムに前記第2電源から電力が供給される場合に、前記1つ以上の前記第2電磁弁のソレノイドへの供給電流を0とした状態で、前記1つ以上の前記第1電磁弁のソレノイドへの供給電流の制御を行う(1)項に記載の車両用ブレーキシステム。
【0094】
(3)前記液圧供給装置が、
加圧ピストンと、前記加圧ピストンの後方に設けられた背面室と、前記加圧ピストンの前方に設けられた加圧室とを含み、前記加圧室の液圧を前記液圧ブレーキに供給するマスタシリンダと、
前記背面室に接続され、前記背面室の液圧を前記1つ以上の前記第1電磁弁により制御可能な背面液圧制御装置と
を含み、
前記1つ以上の前記第2電磁弁が、前記マスタシリンダと、ストロークシミュレータとリザーバとの少なくとも一方との間に設けられた(1)項または(2)項に記載の車両用ブレーキシステム。
【0095】
(4)前記マスタシリンダが、ブレーキ操作部材に連携させられ、前記加圧ピストンの後方に入力室を介して、前記加圧ピストンに相対移動可能に設けられた入力ピストンを含み、
前記1つ以上の前記第2電磁弁が、前記入力室と前記ストロークシミュレータとの間に設けられた入力室遮断弁を含み、
前記入力室遮断弁が、前記入力室遮断弁のソレノイドへの供給電流が0である場合に閉状態となり、前記入力室を前記ストロークシミュレータから遮断するものである(3)項に記載の車両用ブレーキシステム。
【0096】
(5)前記マスタシリンダが、前記加圧ピストンの中間外周部に設けられた環状室を含み、
前記1つ以上の前記第2電磁弁が、前記環状室と前記リザーバとの間に設けられたリザーバ連通弁を含み、
前記リザーバ連通弁が、前記リザーバ連通弁のソレノイドへの供給電流が0である場合に開状態となり、前記環状室を前記リザーバに連通させるものである(3)項または(4)項に記載の車両用ブレーキシステム。
【0097】
第1電源の電圧が設定電圧より低下した場合には、入力室遮断弁とリザーバ連通弁との両方のソレノイドへの供給電流を0としても、いずれか一方のソレノイドへの供給電流を0としてもよい。
【0098】
(6)前記背面液圧制御装置が、制御室の液圧により作動させられるレギュレータを備え、
前記1つ以上の第1電磁弁が、前記制御室と前記高圧源との間に設けられた増圧リニア弁と、前記制御室と低圧源との間に設けられた減圧リニア弁とを含み、
前記制御装置が、前記運転支援制御中に、前記第1電源の電圧が前記設定電圧より低くなった場合に、前記1つ以上の前記第2電磁弁のソレノイドへの供給電流を0にするとともに、前記増圧リニア弁のソレノイドへの供給電流と前記減圧リニア弁のソレノイドへの供給電流との制御を行うものである(3)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
【0099】
(7)前記制御装置が、前記増圧リニア弁のソレノイドへの供給電流と前記減圧リニア弁のソレノイドへの供給電流とを、それぞれ、これらの和が制限電流値を越えないように、制御する(6)項に記載の車両用ブレーキシステム。
【0100】
(8)前記制御装置が、前記減圧リニア弁のソレノイドに第1設定電流値の電流を供給し、前記増圧リニア弁のソレノイドへの供給電流を、前記制限電流値から前記第1設定電流値を引いた大きさの電流値を越えない範囲で制御する(7)項に記載の車両用ブレーキシステム。
【0101】
(9)前記制御装置が、前記第1電源の電圧が前記設定電圧より低くなってからの経過時間が第1設定時間を越えた場合に、前記減圧リニア弁への供給電流を前記第1設定電流値より小さい第2設定電流値に減らす(8)項に記載の車両用ブレーキシステム。
【0102】
車両を停止させる際には大きな制動力が必要であるが、車両を停止状態に維持するために必要な制動力は、制動時に必要な制動力より小さい。そのため、減圧リニア弁への供給電流を小さくしても差し支えない。
【0103】
(10)前記制御装置が、前記第1電源の電圧が前記設定電圧より低くなってからの経過時間が前記第1設定時間より長い第2設定時間を越えた場合に、前記増圧リニア弁のソレノイドへの供給電流の制御と前記減圧リニア弁のソレノイドへの供給電流の制御とを終了する(9)項に記載の車両用ブレーキシステム。
【0104】
制御が終了させられることにより、増圧リニア弁のソレノイドへの供給電流と減圧リニア弁のソレノイドへの供給電流とが0にされる。制御室は高圧源から遮断されて、リザーバに連通させられ、制御室の液圧は大気圧となる。
【0105】
(11)前記車両が、前記車輪を複数含み、
前記複数の前記車輪が、前記車両の駆動源の出力が伝達される1つ以上の駆動輪を含み、
当該車両用ブレーキシステムが、前記車両の駆動源の出力を前記1つ以上の駆動輪に伝達する駆動伝達軸の回転をロックするパーキングロック機構を含み、
前記制御装置が、前記第1電源の電圧が前記設定電圧より低くなってからの経過時間が前記第2設定時間に達する前に、前記パーキングロック機構を作動させて、前記駆動伝達軸の回転をロックするものである(10)項に記載の車両用ブレーキシステム。
【0106】
第2設定時間に達する前に、駆動伝達軸の回転が阻止されるため、第2設定時間が経過した後に、増圧リニア弁、減圧リニア弁の制御を終了して、液圧ブレーキが解除されても差し支えない。
【0107】
(12)前記制御装置が、前記液圧ブレーキの実液圧が目標液圧に近づくように、前記増圧リニア弁への供給電流を制御するとともに、前記実液圧を、ブレーキ操作部材の操作状態と前記背面室の液圧とに基づいて取得する(3)項ないし(11)項のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
【0108】
目標液圧は、車両を停止させ得る大きさに決定される。ブレーキ操作部材の操作状態に基づいて決定されるのではない。液圧ブレーキの液圧は加圧室の液圧と同じであると推定される。そのため、加圧室の液圧が実液圧とされる。
【0109】
(13)前記高圧源が、ポンプモータと、前記ポンプモータにより作動させられるポンプと、前記ポンプから吐出された液圧を蓄えるアキュムレータとを含み、
当該車両用ブレーキシステムが、前記運転支援制御が開始される前に、前記ポンプモータを作動させて、前記アキュムレータの液圧を予め定められた設定圧より高くする正常時モータ制御部を含む(1)項ないし(12)項のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
【0110】
設定圧は、設定範囲の下限値または上限値としたり、下限値と上限値との間の値としたりすることができる。また、車両が停止するために必要な1回分に対応する液圧とすることができる。
(14)前記運転支援制御が、運転者によりブレーキ操作部材の操作が行われなくても、自動で前記液圧ブレーキを作動させる自動ブレーキ制御を含む(1)項ないし(13)項のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
【0111】
例えば、リモート駐車制御、駐車アシスト制御、自動運転等が該当する。また、ブレーキ操作部材の操作が期待できない状態での制御が該当する。
【0112】
(15)車両の車輪に設けられ、液圧により前記車輪の回転を抑制する液圧ブレーキと、
高圧の液圧を供給可能な高圧源と、複数の電磁弁とを備え、前記高圧源の液圧を前記複数の電磁弁のうちの1つ以上の電磁弁である第1電磁弁を制御して前記液圧ブレーキに供給可能な液圧供給装置と、
前記液圧供給装置の制御を行う制御装置と
を含む車両用ブレーキシステムであって、
前記液圧供給装置が、
加圧ピストンと、前記加圧ピストンの後方に設けられた背面室と、前記加圧ピストンの前方に設けられた加圧室とを含み、前記加圧室の液圧を前記液圧ブレーキに供給するマスタシリンダと、
前記背面室に接続され、前記背面室の液圧を前記第1電磁弁により制御可能な背面液圧制御装置と
を含み、
前記複数の電磁弁のうちの前記第1電磁弁とは別の1つ以上の電磁弁である第2電磁弁が、前記マスタシリンダと、ストロークシミュレータとリザーバとの少なくとも一方との間に設けられ、
前記車両が、当該車両用ブレーキシステムに電力を供給する電源である第1電源を含み、
前記制御装置が、前記第1電源の電圧が設定電圧より低下した場合には、前記1つ以上の前記第2電磁弁のソレノイドへの供給電流を0として、前記1つ以上の第1電磁弁のソレノイドへの供給電流の制御を行う車両用ブレーキシステム。
【0113】
本項に記載の車両用ブレーキシステムには、(1)項ないし(14)項のいずれか1つに記載の技術的特徴を採用することができる。
【0114】
(16)車両の車輪に設けられ、液圧により前記車輪の回転を抑制する液圧ブレーキと、
高圧の液圧を供給可能な高圧源と、複数の電磁弁とを備え、前記高圧源の液圧を前記複数の電磁弁のうちの1つ以上の電磁弁である第1電磁弁により制御して前記液圧ブレーキに供給可能な液圧供給装置とを含む車両用ブレーキシステムと、
前記車両の駆動源の出力を駆動輪に伝達する駆動伝達軸の回転をロックするパーキングロック機構と、
前記車両用ブレーキシステムと前記パーキングロック機構とに電力を供給する電源である第1電源と、
前記液圧供給装置と前記パーキングロック機構とを制御して、前記車両の運転を支援する運転支援制御を行う制御装置と
を含む運転支援システムであって、
前記制御装置が、前記運転支援制御中に、前記第1電源の電圧が設定電圧より低下した場合には、前記複数の電磁弁のうち前記1つ以上の第1電磁弁とは別の1つ以上の電磁弁である第2電磁弁のソレノイドへの供給電流を0として、前記1つ以上の前記第1電磁弁のソレノイドへの供給電流の制御を行うとともに、前記パーキングロック機構を、前記第1電源の電圧が前記設定電圧より低下した時から設定時間が経過するまでの間に、作動させて、前記駆動伝達軸をロックする運転支援システム。
【0115】
本項に記載の運転支援システムには、(1)項ないし(15)項のいずれか1つに記載の技術的特徴を採用することができる。
設定時間は、第2設定時間に対応する。
図1
図2
図3
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図8