(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】改良された分散硬化貴金属合金
(51)【国際特許分類】
C22C 5/04 20060101AFI20231003BHJP
C22F 1/14 20060101ALI20231003BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20231003BHJP
【FI】
C22C5/04
C22F1/14
C22F1/00 623
C22F1/00 625
C22F1/00 626
C22F1/00 631B
C22F1/00 650A
C22F1/00 631Z
C22F1/00 681
C22F1/00 683
C22F1/00 682
C22F1/00 684C
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 691Z
C22F1/00 641A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021136485
(22)【出願日】2021-08-24
【審査請求日】2021-10-22
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515131116
【氏名又は名称】ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ヴェグナー マティアス
【審査官】鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-502170(JP,A)
【文献】特開2008-196052(JP,A)
【文献】特開2002-146452(JP,A)
【文献】特開2006-057164(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106111725(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101003192(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/10, 5/04
C22F 1/00, 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金を含む分散硬化白金組成物であって、
前記白金組成物は、
白金を70重量%以上、
ロジウム、金、イリジウム及びパラジウムのうちの1種の金属、又はロジウム、金、イリジウム及びパラジウムのうちの2種以上の金属の混合物を、29.95重量%以下、
非貴金属であるジルコニウム、イットリウム及びスカンジウム、の酸化物を0.05重量%~1重量%
含有し、
残部が不純物
からなり、
前記非貴金属の前記酸化物の8.0mol%~10.0mol%が酸化イットリウムであり、
前記酸化物の0.1mol%~5.0mol%が酸化スカンジウムであり、
前記酸化物の残部がジルコニア及び酸化物不純物
からなる白金組成物。
【請求項2】
前記非貴金属であるジルコニウム、イットリウム及びスカンジウムの前記酸化物が、70%以上完全に酸化されていることを特徴とする請求項1に記載の白金組成物。
【請求項3】
前記非貴金属であるジルコニウム、イットリウム及びスカンジウムの前記酸化物が、90%以上完全に酸化されていることを特徴とする請求項1に記載の白金組成物。
【請求項4】
前記非貴金属であるジルコニウム、イットリウム及びスカンジウムの前記酸化物が、完全に酸化されていることを特徴とする請求項1に記載の白金組成物。
【請求項5】
白金組成物中の不純物の合計割合が1重量%以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の白金組成物。
【請求項6】
白金組成物中の不純物の合計割合が0.5重量%以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の白金組成物。
【請求項7】
前記非貴金属の前記酸化物の50mol%以上が、酸化イットリウム及び/又は酸化スカンジウムで安定化された立方晶ジルコニアであることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の白金組成物。
【請求項8】
前記非貴金属の前記酸化物の80mol%以上が、酸化イットリウム及び/又は酸化スカンジウムで安定化された立方晶ジルコニアであることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の白金組成物。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の白金組成物の製造方法であって、
前記白金組成物が、溶融冶金によって製造され、次いで圧延され、前記白金組成物に含有される前記非貴金属が完全に酸化されるような酸化媒体中での熱処理によって酸化されることを特徴とする白金組成物の製造方法。
【請求項10】
前記白金組成物中の酸化イットリウム対酸化スカンジウムの比が、2.6:1~10:1の範囲であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の白金組成物。
【請求項11】
前記酸化物の8.0mol%~10.0mol%が酸化イットリウムであることを特徴とする、請求項1から請求項8及び請求項10のいずれか1項に記載の白金組成物。
【請求項12】
前記酸化物の8.5mol%~9.5mol%が酸化イットリウムであることを特徴とする、請求項1から請求項8及び請求項10のいずれか1項に記載の白金組成物。
【請求項13】
前記酸化物の1.0mol%~3.0mol%が酸化スカンジウムであることを特徴とする請求項1から請求項8及び請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の白金組成物。
【請求項14】
前記酸化物の1.5mol%~2.5mol%が酸化スカンジウムであることを特徴とする請求項1から請求項8及び請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の白金組成物。
【請求項15】
前記白金組成物が、白金と前記不純物とを合計で80重量%以上含有し、及び/又は
前記白金組成物が、ロジウム、金、パラジウム
及びイリジウム
の1種以上を
合計で1重量%以上含有することを特徴とする請求項1から請求項8及び請求項10から請求項14のいずれか1項に記載の白金組成物。
【請求項16】
前記白金組成物が、金を10重量%以下若しくはロジウムを19.95重量%以下含有し、及び/又は
前記白金組成物が、ロジウムを5重量%以上、金を3重量%以上含有することを特徴とする請求項1から請求項8及び請求項10から請求項15のいずれか1項に記載の白金組成物。
【請求項17】
前記白金組成物が、ロジウムを5重量%~20重量%含有し、不純物を除き金、イリジウム若しくはパラジウムを含有しないか、又は
前記白金組成物が、金を2重量%~10重量%含有し、不純物を除きロジウム、イリジウム若しくはパラジウムを含有しないことを特徴とする請求項1から請求項8及び請求項10から請求項16のいずれか1項に記載の白金組成物。
【請求項18】
前記白金組成物が、ロジウム10重量%と、前記非貴金属であるジルコニウム、イットリウム及びスカンジウムの前記酸化物
を含有し、残部
が白金及び不純
物からなるか、又は
前記白金組成物が、金5重量%と、前記非貴金属であるジルコニウム、イットリウム及びスカンジウムの酸化物
を含有し、残部
が白金及び不純
物からなることを特徴とする請求項17に記載の白金組成物。
【請求項19】
前記白金組成物が、1400℃で20MPaの荷重下で500時間以上のクリープ強度を有することを特徴とする請求項1から請求項8及び請求項10から請求項18のいずれか1項に記載の白金組成物。
【請求項20】
請求項1から請求項8及び請求項10から請求項19のいずれか1項に記載の白金組成物からなるか若しくは請求項1から請求項8及び請求項10から請求項19のいずれか1項に記載の白金組成物を有する、結晶成長用るつぼ、半製品、工具、チューブ、スターラー、ガラス繊維ノズル若しくはガラスを製造若しくは加工するための部品、又は
請求項1から請求項8及び請求項10から請求項19のいずれか1項に記載の白金組成物を有する温度センサ。
【請求項21】
請求項1から請求項8及び請求項10から請求項19のいずれか1項に記載の白金組成物の製造方法であって、以下の時系列的な
A)白金を70重量%以上、
ロジウム、金、イリジウム及びパラジウムのうちの1種の金属、又はロジウム、金、イリジウム及びパラジウムのうちの2種以上の混合物を、29.95重量%以下、
ジルコニウム、イットリウム及びスカンジウムの形態の易酸化性非貴金属を0.05重量%~1重量%
含有し、
残部が不純物
からなる溶融物であって、
前記溶融物中のジルコニウム対イットリウムの比が5.9:1~4.3:1の範囲にあり、前記溶融物中のジルコニウム対スカンジウムの比が少なくとも17.5:1である溶融物を製造する工程と、
B)前記溶融物を硬化して固形体を形成する工程と、
C)前記固形体を加工して、体積体を形成する工程と、
D)前記体積体に含有される前記非貴金属を、酸化媒体中、少なくとも750℃の温度での少なくとも48時間の時間にわたる熱処理によって酸化する工程と
を含む方法。
【請求項22】
前記白金組成物が、溶融冶金によって製造され、次いで圧延され、前記白金組成物に含有される前記非貴金属が完全に酸化されるような酸化媒体中での熱処理によって酸化されることを特徴とする請求項21に記載の白金組成物の製造方法。
【請求項23】
工程D)の酸化の際に
、酸素
が、前記体積体、及び酸化イットリウム及び/若しくは酸化スカンジウムによって安定化された立方晶ジルコニア、を通して拡散され、酸素イオン伝導によって輸送されること、並びに/又は
工程D)の酸化の際に,前記体積体の金属マトリクスから析出した酸化イットリウム安定化ジルコニア粒子及び/若しくは酸化スカンジウム安定化ジルコニア粒子によって,分散硬化が行われることを特徴とする請求項21又は請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金組成物と、この種の白金組成物から作製された結晶成長用るつぼ、半製品、工具、チューブ、スターラー、ガラス繊維ノズル、又はガラスを製造若しくは加工するための部品と、溶融冶金によりこの種の白金組成物を製造するための方法とに関する。この場合、当該白金組成物は、少なくとも70重量%の白金(Pt)からなり、非貴金属であるジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)の酸化物を含有する。
【背景技術】
【0002】
白金製の成形体は、材料が高い耐腐食性を有する必要がある高温プロセスでよく使われる。例えば、ガラス産業では、スターラー(撹拌機)又はガラス繊維ノズルのブッシング等、機械的負荷がかかる部品に白金製のものが使われている。しかしながら、白金の材料としての難点は、高温での機械的強度が低いことである。それゆえ、上記のような高温プロセスには、一般に、分散硬化型の白金組成物が使われる。それゆえ、分散硬化白金組成物は、特に特殊ガラス及びガラス繊維産業で使用されるが、結晶成長にも使用される。
【0003】
この種の分散硬化白金組成物の製造、加工、及び物理的特性は、例えば、英国特許出願公開第1280815A号明細書、英国特許出願公開第1340076A号明細書、英国特許出願公開第2082205A号明細書、欧州特許出願公開第0683240A2号明細書、欧州特許出願公開第0870844A1号明細書、欧州特許出願公開第0947595A2号明細書、欧州特許出願公開第1188844A1号明細書、欧州特許出願公開第1295953A1号明細書、欧州特許出願公開第1964938A1号明細書、米国特許第2636819A号明細書、米国特許第4507156A号明細書、独国特許出願公開第2355122A1号明細書、国際公開第81/01013A1号パンフレット及び国際公開第2015/082630A1号パンフレットから公知である。
【0004】
分散固化白金組成物は、通常、ジルコニウム(Zr)、及び任意にイットリウム(Y)又はスカンジウム(Sc)等の他の非貴金属を合金化することにより、粉末冶金又は溶融冶金によって製造され、これらは後続の酸化プロセスで酸化されて、ジルコニア(ZrO2)、酸化イットリウム(Y2O3)及び酸化スカンジウム(SC2O3)を形成する。
【0005】
分散固化型合金の製造は、複雑で時間のかかるプロセスである。溶融物から得られたコンパクトな体積体(例えば国際公開第2015/082630A1号パンフレットを参照)に、酸素がその体積体に拡散されることによる内部酸化で分散質を形成するためには、酸化時間が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】英国特許出願公開第1280815A号明細書
【文献】英国特許出願公開第1340076A号明細書
【文献】英国特許出願公開第2082205A号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0683240A2号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0870844A1号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0947595A2号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1188844A1号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1295953A1号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1964938A1号明細書
【文献】米国特許第2636819A号明細書
【文献】米国特許第4507156A号明細書
【文献】独国特許出願公開第2355122A1号明細書
【文献】国際公開第81/01013A1号パンフレット
【文献】国際公開第2015/082630A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それゆえ、本発明の目的は、先行技術の欠点を克服することである。特に、費用対効果の高い簡単な方法で製造することができる白金組成物及びそれから製造された部品を提供することが意図される。同時に、白金組成物及びそれから製造された部品は、高温で可能な限り大きなクリープ強度を有することが意図されている。その結果、その白金組成物及びそれから製造された部品は、機械的負荷の下で高温で使用することができる。
【0008】
本発明によって、機械的特性が改善されることが意図され、プロセスコストも削減されることが意図されている。一般に、この種の白金組成物は、主に、例えばスターラー又は他の工具及び部品の形態で、ガラス繊維のノズル若しくはガラス融液用るつぼの形態で、かなりの機械的負荷と組み合わせた腐食性条件で高い適用温度で使用される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、少なくとも70重量%の白金を含む分散硬化白金組成物であって、当該白金組成物は、29.95重量%までの、金属であるロジウム、金、イリジウム及びパラジウムのうちの1種又は金属であるロジウム、金、イリジウム及びパラジウムのうちの少なくとも2種の混合物を含有し、当該白金組成物は、0.05重量%~1重量%の、非貴金属であるジルコニウム、イットリウム及びスカンジウムの酸化物を含有し、当該白金組成物は、残部として、不純物を含めた白金を含有し、上記非貴金属の上記酸化物の7.0mol%~11.0mol%は酸化イットリウムであり、上記酸化物の0.1mol%~5.0mol%は酸化スカンジウムであり、上記酸化物の残部は酸化物不純物を含めたジルコニアである白金組成物によって達成される。
【0010】
当該白金組成物は、好ましくは、白金系合金である。白金系合金は、少なくとも50原子%の白金からなる合金であると理解される。
【0011】
好ましくは、0.1重量%~0.7重量%、特に好ましくは0.15重量%~0.6重量%、最も好ましくは0.2重量%~0.5重量%の上記非貴金属の上記酸化物が、当該分散硬化白金組成物に含有される。非貴金属酸化物の割合が高いと、当該白金組成物から製造された体積体の機械的負荷の下での耐用年数が長くなる。非貴金属酸化物の割合が低い体積体は、体積体の加工性、例えば溶接性又は成形性に関して有利である。用語「体積体」は、本明細書では広義に解釈されるべきである。好ましくは、体積体は、例えば、金属シート、チューブ又はワイヤの形態であってもよい。
【0012】
本発明に係る分散硬化白金組成物は、少なくとも70重量%の白金と、29.95重量%までの金属であるロジウム、金、イリジウム及びパラジウムのうちの少なくとも1種とを含む。従って、当該組成物は、白金と、非貴金属であるジルコニウム、イットリウム及びスカンジウムの上記酸化物とから実質的に構成されていてもよい。それゆえ、当該白金組成物は、通常の不純物又は製造プロセスに起因する不純物を除いて、純粋な白金であって、この白金に非貴金属であるジルコニウム、イットリウム及びスカンジウムの酸化物が分布しているものであってもよい。しかしながら、さらには、当該白金組成物は、他の貴金属、すなわち、ロジウム、金、イリジウム及びパラジウムも含んでいてよく、この場合、当該白金組成物は白金系合金である。
【0013】
上記貴金属及び非貴金属又は酸化物の中の不純物は、設計プロセスに起因して、及び設計プロセスの一部として出発材料に入るか、又は合理的な努力で原料から(完全には)除去できなかった通常の不純物であると理解される。
【0014】
非貴金属であるジルコニウム、イットリウム及びスカンジウムの酸化物が、少なくとも70%完全に酸化されており、好ましくは少なくとも90%酸化されており、特に好ましくは完全に酸化されていることが提供されてもよい。
【0015】
その結果、特に集中的に硬化された白金組成物が達成される。
【0016】
好ましくは、上記非貴金属は、酸素で少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも90%酸化される。この際、非貴金属のすべての酸化状態が考慮され、好ましくは最大で30%、特に好ましくは最大で10%の非貴金属が金属として、すなわち形式的な酸化状態0で存在する。
【0017】
さらには、当該白金組成物中の不純物の合計割合が最大で1重量%、好ましくは最大で0.5重量%であることが提供されてもよい。
【0018】
これにより、当該白金組成物の物理的特性が不純物の影響を受けないか、又は不純物の影響が可能な限り小さくなる。
【0019】
上記非貴金属の酸化物の少なくとも50mol%が、酸化イットリウム及び/又は酸化スカンジウムで安定化された立方晶ジルコニアであり、好ましくは上記非貴金属の酸化物の少なくとも80mol%が、酸化イットリウム及び/又は酸化スカンジウムで安定化された立方晶ジルコニアであることも提供されてよい。
【0020】
これらの対策により、酸化物に沿った酸素拡散性を高めることができることが見出された。その結果、酸化領域を通過する酸素拡散性が高くなり、それゆえ当該白金組成物中の非貴金属であるジルコニウム、イットリウム及びスカンジウムの良好な酸化性が達成される。その結果、当該白金組成物は、酸化的析出により特に短時間で硬化させることができる。
【0021】
好ましくは、当該白金組成物が粉末冶金によって製造されていないことが提供されてもよい。
【0022】
さらには、当該白金組成物が溶融冶金によって製造され、次いで圧延され、その白金組成物に含有される非貴金属が完全に酸化されるような酸化媒体中での熱処理によって酸化されることが提供されてもよい。
【0023】
その結果、特によく硬化した白金組成物が得られる。
【0024】
好ましい展開によれば、当該白金組成物中の酸化イットリウム対酸化スカンジウムの比が2.6:1~10:1の範囲であることが提供されてもよい。
【0025】
この範囲では、非貴金属であるジルコニウム、イットリウム及びスカンジウムの酸化による析出物の形成に要する時間が特に短くなるという驚くべき結果となる。
【0026】
酸化イットリウム対酸化スカンジウムの比(又は混合比)が少なくとも2.6:1及び最大で10:1というのは、当該白金組成物中の酸化イットリウムのモル数又は分子数が、当該白金組成物の非貴金属の酸化物中の酸化スカンジウムのモル数又は分子数よりも少なくとも2.6倍大きく、当該白金組成物の非貴金属の酸化物中の酸化スカンジウムのモル数又は分子数よりも最大で10倍大きいことを意味する。
【0027】
さらには、上記酸化物の8.0~10.0mol%が酸化イットリウムであることが提供されてもよい。
【0028】
この組成範囲では、酸化イットリウムをわずかに多く又は少なく含む隣接する組成範囲に比べて、材料をより迅速に酸化することができる。
【0029】
さらに、当該白金組成物が、不純物を含めて少なくとも80重量%の白金を含有し、好ましくは当該白金組成物が、10重量%までの金又は19.95重量%までのロジウムを含有することが提供されてもよい。
【0030】
白金の含有量が高いため、当該白金組成物をよりコスト効率よく製造することができる。
【0031】
さらには、当該白金組成物が、ロジウム、金、パラジウム又はイリジウムを少なくとも1重量%含有し、好ましくは当該白金組成物が、少なくとも5重量%のロジウム、及び/又は少なくとも3重量%の金を含有することが提供されてもよい。
【0032】
その結果、当該白金組成物の硬度が向上し、機械的特性を特定の要求事項に適合させることができる。金は、当該白金組成物のガラス融液への濡れ性にも好影響を与える。
【0033】
当該白金組成物が、5重量%~20重量%のロジウムを含有し、不純物を除き金、イリジウム又はパラジウムを含有しないこと、又は当該白金組成物が、2重量%~10重量%の金を含有し、不純物を除きロジウム、イリジウム又はパラジウムを含有しないことも提供されてよい。
【0034】
これらの白金組成物は、その機械的安定性及び化学的安定性のために、高温用途に特に適している。
【0035】
さらには、当該白金組成物が10重量%のロジウムと、非貴金属であるジルコニウム、イットリウム及びスカンジウムの酸化物と、残部として、不純物を含めた白金とからなること、又は当該白金組成物が5重量%の金と、非貴金属であるジルコニウム、イットリウム及びスカンジウムの酸化物と、残部として、不純物を含めた白金とからなることが提供されてもよい。
【0036】
これらの白金組成物は、その機械的安定性及び化学的安定性のために、高温用途に特に適している。
【0037】
さらには、当該白金組成物が、1400℃で20MPaの荷重下で少なくとも500時間のクリープ強度を有していることが提供されてもよい。
【0038】
これらの物理的特性を有する白金組成物は、非貴金属であるジルコニウム、イットリウム及びスカンジウムの酸化によって製造することができる。
【0039】
本発明の目的は、上記請求項のいずれか1項に記載の白金組成物からなる、又は上記請求項のいずれか1項に記載の白金組成物を有する結晶成長用るつぼ、半製品、工具、チューブ、スターラー、ガラス繊維ノズル、又はガラスを製造若しくは加工するための部品、あるいは上記白金組成物のいずれかを有する温度センサによっても達成される。
【0040】
この種の白金組成物から作製されるか又はこの種の白金組成物を有するるつぼ、半製品、ガラス繊維ノズル、スターラー、チューブ、温度センサ、ガラスを製造若しくは加工するための工具若しくは部品は、化学的な高温耐性及び機械的強度のおかげで、ガラス融液を保存、伝導及び処理すること、並びにガラス融液との接触に特によく適している。
【0041】
本発明の目的は、以下の時系列的な
A)少なくとも70重量%の白金、29.95重量%までの、金属であるロジウム、金、イリジウム及びパラジウムのうちの1種又は金属であるロジウム、金、イリジウム及びパラジウムのうちの少なくとも2種の混合物、0.05重量%~1重量%の、ジルコニウム、イットリウム及びスカンジウムの形態の易酸化性非貴金属、並びに残部として、不純物を含めた白金を有する溶融物であって、この溶融物中のジルコニウム対イットリウムの比が5.9:1~4.3:1の範囲にあり、この溶融物中のジルコニウム対スカンジウムの比が少なくとも17.5:1である溶融物を製造する工程と、
B)上記溶融物を硬化して固形体を形成する工程と、
C)上記固形体を加工して、体積体を形成する工程と、
D)上記体積体に含有される非貴金属を、酸化媒体中、少なくとも750℃の温度での少なくとも48時間の時間にわたる熱処理によって酸化する工程と
を含む白金組成物の製造方法によっても達成される。
【0042】
上記固形体を加工して、体積体を形成するとき、固形体の形状を変えて、目的とする体積体が目的に応じて製造される。
【0043】
酸化時間は、酸素の平均拡散長により、酸化される材料の厚さに依存する。材料の厚さが大きいほど、長い酸化時間が必要になる。上記48時間は、厚さ0.5mmの金属シートに関するものである。酸化時間は、金属シートが厚いほど長くなる。同様に、温度の上昇により、酸化時間は短くなる。
【0044】
本発明に係る方法では、本発明に係る白金組成物、又は上述の白金組成物が、その方法によって製造されることが提供されてもよい。
【0045】
そして、この方法は、上記白金組成物について示された利点を有する。
【0046】
さらには、工程D)の酸化の際に、酸素が固形体を通して拡散され、酸化イットリウム及び/又は酸化スカンジウムによって安定化された立方晶ジルコニアが、酸素イオン伝導によって輸送されることが提供されてもよい。
【0047】
その結果、非貴金属であるジルコニウム、イットリウム及びスカンジウムの特に迅速な酸化が達成され、それゆえ、当該白金組成物の特に迅速な硬化が達成される。
【0048】
工程D)の酸化の際に、上記固形体の金属マトリクスから析出したイットリウム酸化物安定化ジルコニア粒子及び/又はスカンジウム酸化物安定化ジルコニア粒子によって分散硬化が行われることも提供されてよい。
【0049】
このようにして、当該白金組成物は、(先行技術と比較して)比較的迅速に、有利な形態で、高密度の固形体で硬化される。
【0050】
本発明は、本発明に係る白金組成物が、比較可能な方法を用いて先行技術で製造された白金組成物よりも顕著に迅速に、従ってより費用対効果の高い方法で製造できるという驚くべき知見に基づいている。同時に、白金組成物の機械的高温特性がさらに改善され、特に高温クリープ強度が改善される。本発明の一部として、請求項に係る組成物が驚くべきことに、特に迅速な酸化性を可能にし、それゆえ当該白金組成物における分散質の特に迅速な形成を可能にすることが見出された。この知見が驚くべきものであるという事実は、本発明の一部として検討された、ジルコニアを安定化させるための非貴金属の他の酸化物、例えばスカンジウムとニオブの組み合わせが、そのような組み合わせによって安定化されたジルコニアが特に高い安定性と酸素拡散性を示すにもかかわらず、酸化時間を悪化させる効果を有する理由も説明する。
【0051】
本発明の一環として、酸化物形成剤としてジルコニウム、イットリウム及びスカンジウムを上述の割合で使用することにより、プロセス時間を短縮できること、つまりプロセスコストを削減できることが見出された。
【0052】
本発明は、先行技術と比較して(分散質を形成するための)酸化時間を(先行技術との比較で、例えば、国際公開第2015/082630A1号パンフレットに従って製造されたPtRh10合金との比較で)25%超短縮することに成功した。同時に、本発明に係る白金組成物を用いた、国際公開第2015/082630A1号パンフレット(同表1参照)と比較した高温特性(特にクリープ強度/耐クリープ性)の改善により、1600℃の分散固化型PtRh10合金について、9MPaの機械的負荷の下で1000時間を超えるクリープ強度が達成可能となり、及び/又は、20MPaの荷重下で国際公開第2015/082630A1号パンフレットの例1と同じクリープ強度が達成される。この概念は、同様に他の分散固化型合金にも適用可能であり、同等の付加価値が期待できる。
【0053】
白金マトリクス又は貴金属マトリクスに最初に溶解するジルコニウム、イットリウム及びスカンジウムが酸化される酸化プロセスは、温度又は拡散係数(これは熱的に活性化された、拡散によって制御されるプロセスである)、マトリクス材料への酸素溶解度、酸素分圧、酸化物形成剤の濃度、形成される酸化物の組成、酸化物と金属マトリクスとの界面等、多くの要因に左右される。イオン導電性は、酸化物の組成に影響される。高いイオン伝導性は、酸化プロセスを加速することができるが、これは、酸化性の向上につながりうる数多くのパラメータの1つに過ぎない。
【0054】
酸化物形成剤(すなわち上記非貴金属)のモル組成(モル比)を最適化することにより、本発明は、固形体での酸化時間を短縮すると同時に、高温特性を改善することに成功し、高温特性の改善はさらに、酸化物形成剤の総量をわずかに増加させることにより実施される。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明の例示的な実施形態を、しかしながら本発明を限定することなく、以下に説明する。
【0056】
以下に記載される白金組成物は、10kgの重量を有するインゴットが真空誘導溶解によって溶融物から鋳造されることによって製造された(例示的実施形態1~4)。さらに、それぞれ200gの重量を有する円形のブランクが、アーク溶解によって製造された(例示的な実施形態5~9)。このようにして、10重量%のロジウムを含有する異なる白金組成物が製造された。非貴金属であるジルコニウム、イットリウム及びスカンジウムは、溶解プロセス中に添加された。白金組成物の厚さ3mm又は2mmの金属シートが、圧延と焼き戻しによって製造された。このようにして製造された金属シートに、次に非貴金属を酸化させるための酸化焼鈍を施した。このような処理は、国際公開第2015/082630A1号パンフレットに記載されている(半製品の予備段階の例3で)。続いて、この金属シートに熱機械的処理を施した。この熱機械的処理は、国際公開第2015/082630A1号パンフレットに記載されている(請求の範囲に含まれている)。
【0057】
次に、機械的高温特性を実験によって決定した。これを行うために、異なる荷重状態でのクリープ試験によって、クリープ強度を試験した。
【0058】
試験の設定はDIN EN ISO 204に準拠している。規格からの逸脱は、規格にはガイドラインが定められていない、高い試験温度に起因する。試料は、抵抗加熱器の形で接続して加熱され、静的な一軸性荷重がかけられる。温度はパイロメーターで測定され、結果として生じる時間依存的なひずみは光学式伸縮計で測定される。
【0059】
合金の酸化度は、酸素含有量を確認することによって決定することができる。合金の酸素含有量は、LECO製の装置(ONH836)を用いた定量的なIR分光法によって測定される。決められた量のサンプルが黒鉛るつぼで溶解される。材料に含まれる酸素が黒鉛るつぼの炭素と反応し、CO/CO2が生成される。放出されたガスは、不活性ガスによって炉からマスフローコントローラを介して洗い流される。別の工程では、存在するCOが酸化されてCO2が生成される。その後、存在する酸素は、NDIRセンサを用いて、CO2として分光学的に同定される。合金の化学組成の知識があれば、測定された酸素から酸化度を計算することができる。
【実施例】
【0060】
比較例1
10重量%のロジウム、1830ppmのジルコニウム、295ppmのイットリウム、50ppmのスカンジウム、及び残部は通常の不純物を含めた白金。
【0061】
これは、白金組成物の酸化状態にある非貴金属の酸化物のモル分率が、7.5mol%のY2O3(酸化イットリウム)、2.5mol%のSc2O3(酸化スカンジウム)、残部がZrO2(ジルコニア)であることに相当する。
【0062】
厚さ3mmの金属シートの非貴金属の酸化は、900℃の空気中で行う。27日間の酸化時間の後、金属シートの中の非貴金属の90%超が酸化された。その後、この金属シートを1400℃で6時間延性焼鈍し、国際公開第2015/082630A1号パンフレットに開示されているように熱機械的に処理した。その結果、1400℃及び20MPaで3時間のクリープ強度がもたらされ、1600℃及び9MPaで50時間のクリープ強度がもたらされる。
【0063】
比較例2
10重量%のロジウム、1830ppmのジルコニウム、295ppmのイットリウム、50ppmのスカンジウム、及び残部は通常の不純物を含めた白金。
【0064】
これは、白金組成物の酸化状態にある非貴金属の酸化物のモル分率が、7.5mol%のY2O3(酸化イットリウム)、2.5mol%のSc2O3(酸化スカンジウム)、残部がZrO2(ジルコニア)であることに相当する。
【0065】
厚さ3mmの金属シートの非貴金属の酸化は、1000℃の空気中で行う。9日間の酸化時間の後、金属シートの中の非貴金属の90%超が酸化された。その後、この金属シートを1400℃で6時間延性焼鈍し、この金属シートを国際公開第2015/082630A1号パンフレットに開示されているように熱機械的に処理した。その結果、1400℃及び20MPaの条件で0.5時間のクリープ強度がもたらされ、1600℃及び9MPaの条件で3時間のクリープ強度がもたらされる。
【0066】
実施例3(本発明)
10重量%のロジウム、2770ppmのジルコニウム、546ppmのイットリウム、63ppmのスカンジウム、及び残部は通常の不純物を含めた白金。
【0067】
これは、白金組成物の酸化状態にある非貴金属の酸化物のモル分率が、9.0mol%のY2O3(酸化イットリウム)、2.0mol%のSc2O3(酸化スカンジウム)、残部がZrO2(ジルコニア)であることに相当する。
【0068】
厚さ3mmの金属シートの非貴金属の酸化は、900℃の空気中で行う。わずか19日間の酸化時間の後、金属シートの中の非貴金属の90%超が酸化された。その後、この金属シートを1400℃で6時間延性焼鈍し、この金属シートを国際公開第2015/082630A1号パンフレットに開示されているように熱機械的に処理した。その結果、1400℃及び20MPaで500時間超のクリープ強度がもたらされ、1600℃及び9MPaで1000時間超のクリープ強度がもたらされる。
【0069】
実施例4(本発明)
10重量%のロジウム、2770ppmのジルコニウム、546ppmのイットリウム、63ppmのスカンジウム、及び残部は通常の不純物を含めた白金。
【0070】
これは、白金組成物の酸化状態にある非貴金属の酸化物のモル分率が、9.0mol%のY2O3(酸化イットリウム)、2.0mol%のSc2O3(酸化スカンジウム)、残部がZrO2(ジルコニア)であることに相当する。
【0071】
厚さ3mmの金属シートの非貴金属の酸化は、1000℃の空気中で行う。わずか6日間の酸化時間の後、金属シートの中の非貴金属の90%超が酸化された。
【0072】
モル組成、すなわち酸化物形成非貴金属のモル比を最適化し、酸化物形成非貴金属の総量を増加させることにより(2150ppmから3400ppmへ)、本発明は固形体の酸化時間を25%超短縮することに成功し、同時に高温特性を向上させる。
【0073】
実施例5(本発明)
10重量%のロジウム、2710ppmのジルコニウム、511ppmのイットリウム、65ppmのスカンジウム、及び残部は不純物を含めた白金。アーク溶解により、200gの円形ブランクを製造した。
【0074】
これは、白金組成物の酸化状態にある非貴金属の酸化物のモル分率が、8.6mol%のY2O3(酸化イットリウム)、2.2mol%のSc2O3(酸化スカンジウム)、残部がZrO2(ジルコニア)であることに相当する。
【0075】
厚さ2mmの金属シートの非貴金属の酸化は、900℃の空気中で行う。わずか10日間の酸化時間の後、金属シートの中の非貴金属の90%超が酸化された。その後、この金属シートを1400℃で6時間延性焼鈍し、この金属シートを国際公開第2015/082630A1号パンフレットに開示されているように熱機械的に処理した。その結果、1400℃及び20MPaの条件で500時間超のクリープ強度がもたらされ、1600℃及び9MPaの条件で1000時間超のクリープ強度がもたらされる。
【0076】
比較例6
10重量%のロジウム、1870ppmのジルコニウム、313ppmのイットリウム、33ppmのスカンジウム、及び残部は通常の不純物を含めた白金。アーク溶解により、200gの円形ブランクを製造した。
【0077】
これは、白金組成物の酸化状態にある非貴金属の酸化物のモル分率が、7.8mol%のY2O3(酸化イットリウム)、1.6mol%のSc2O3(酸化スカンジウム)、残部がZrO2(ジルコニア)であることに相当する。
【0078】
厚さ2mmの金属シートの非貴金属の酸化は、900℃の空気中で行う。20日間の酸化時間の後、金属シートの中の非貴金属の90%超が酸化された。その後、この金属シートを1400℃で6時間延性焼鈍し、金属シートを国際公開第2015/082630A1号パンフレットに開示されているように熱機械的に処理した。その結果、比較例1に類似したクリープ強度が得られる。
【0079】
さらなる比較のために、酸素イオン伝導性の立方晶ジルコニア相を安定化させるために、酸化イットリウム及び酸化スカンジウムの代わりに酸化スカンジウム及び酸化ニオブ(Nb2O5)の組み合わせを白金組成物に導入した3つの追加の比較試験を行った。
【0080】
以下に記載する白金組成物は、それぞれアーク溶解で製造した200gの重量を持つ円形のブランクによって製造した。このようにして、10重量%のロジウム、200ppmのスカンジウム、及び様々な割合のニオブを含有する3種類の白金組成物を製造した。白金組成物の厚さ2mmの金属シートを圧延及び焼き戻しによって製造した。
【0081】
その後、白金組成物中の酸化した非貴金属の割合を、定量的なIR分光法によって決定した。
【0082】
比較例7
10重量%のロジウム、1800ppmのジルコニウム、80ppmのニオブ、200ppmのスカンジウム、及び残部は通常の不純物を含めた白金。
【0083】
これは、白金組成物の酸化状態にある非貴金属の酸化物のモル分率が、2.0mol%のNb2O5(酸化ニオブ)、10.0mol%のSc2O3(酸化スカンジウム)、残部がZrO2(ジルコニア)であることに相当する。
【0084】
厚さ2mmの金属シートの非貴金属の酸化は、900℃の空気中で行う。20日間の酸化時間の後、金属シートの中の非貴金属の39%だけが酸化された。
【0085】
比較例8
10重量%のロジウム、1800ppmのジルコニウム、40ppmのニオブ、200ppmのスカンジウム、及び残部は通常の不純物を含めた白金。
【0086】
これは、白金組成物の酸化状態にある非貴金属の酸化物のモル分率が、1.0mol%のNb2O5(酸化ニオブ)、10.0mol%のSc2O3(酸化スカンジウム)、残部がZrO2(ジルコニア)であることに相当する。
【0087】
厚さ2mmの金属シートの非貴金属の酸化は、900℃の空気中で行う。20日間の酸化時間の後、金属シートの中の非貴金属の42%だけが酸化された。
【0088】
比較例9
10重量%のロジウム、1800ppmのジルコニウム、20ppmのニオブ、200ppmのスカンジウム、及び残部は通常の不純物を含めた白金。
【0089】
これは、白金組成物の酸化状態にある非貴金属の酸化物のモル分率が、0.5mol%のNb2O5(酸化ニオブ)、10.0mol%のSc2O3(酸化スカンジウム)、残部のZrO2(ジルコニア)であることに相当する。
【0090】
厚さ2mmの金属シートの非貴金属の酸化は、900℃の空気中で行う。20日間の酸化時間の後、金属シートの中の非貴金属の36%だけが酸化された。
【0091】
このように、比較例6、比較例7及び比較例8における酸化時間は、実施例5よりもかなり悪かった。このことは、酸化物の酸素イオン伝導性から白金組成物の酸化性又は酸化時間について直接的な結論が得られないことを示す。
【0092】
白金組成物については、イオン伝導性が高い酸化物が酸化プロセスの促進をもたらすというような単純な関係は存在しないことが上記測定結果から示される。従って、本発明に係る白金組成物において、本発明に係る非貴金属を選択することは驚くべき成功をもたらす。
【0093】
以上の説明、並びに特許請求の範囲、図面、及び例示的な実施形態に開示された本発明の特徴は、本発明をその様々な実施形態で実現するために、個別にも任意の組み合わせでも必須となりうる。