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特許7359825デジタル表示デバイスを製造する方法及びデジタル表示デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】デジタル表示デバイスを製造する方法及びデジタル表示デバイス
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20231003BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20231003BHJP
   G04G 9/00 20060101ALI20231003BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20231003BHJP
   G09F 9/35 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
G09F9/00 338
G02F1/1335
G02F1/1335 510
G04G9/00 303A
G09F9/00 313
G09F9/30 365
G09F9/35
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021183844
(22)【出願日】2021-11-11
(65)【公開番号】P2022098440
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】20216139.4
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・サガルドワイビュリュ
(72)【発明者】
【氏名】ジーモン・シュプリンガー
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-265862(JP,A)
【文献】特開2016-118538(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0286085(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0274275(US,A1)
【文献】特開2017-001940(JP,A)
【文献】特開2013-137383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/133-1/1335
1/13363
1/1339-1/1341
1/1347
G04B1/00-99/00
G04G3/00-99/00
G09F9/00-9/46
H04M1/02-1/23
H05B33/00-33/28
44/00
45/60
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電極(10)と少なくとも1つの対応する対電極(14)の間に配置される光学活性媒体を含むデジタル表示デバイスを製造する方法であって、
前記少なくとも1つの電極(10)と前記少なくとも1つの対応する対電極(14)の間に電流又は電圧を与えることによって前記光学活性媒体の光学的性質を変えることができ、
前記デジタル表示デバイスには光透過性表示面(34)があり、この光透過性表示面(34)を通してこのデジタル表示デバイスによって表示される少なくとも1つの情報を知覚可能であり、
前記方法は、前記デジタル表示デバイスの前記光透過性表示面(34)に、装飾的かつ/又は機能的な少なくとも1つの第1のパターン(36)及び少なくとも1つの第2のパターン(38)を形成するステップを備え、前記第1のパターン(36)及び前記第2のパターン(38)は、前記光透過性表示面(34)から突出しており、
前記第1のパターン(36)の少なくとも一部の高さ方向の厚みは、前記第2のパターン(38)の少なくとも一部の高さ方向の厚みとは異なることにより、それらのリッジにおける影と周囲光の反射の影響を通して、それらが形成される前記光透過性表示面(34)の面上にボリューム感を与え
前記第1のパターン(36)及び前記第2のパターン(38)は、少なくとも1種類の感光性樹脂の1つ又は複数の層を堆積して構造化することによって、前記デジタル表示デバイスの前記光透過性表示面(34)に直接形成され
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種類の感光性樹脂の層は、フォトリソグラフィーによって構造化される
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のパターン(36)及び前記第2のパターン(38)は、
少なくとも1つの光重合性樹脂層(40)を堆積させ、
型(42)を用いて前記光重合性樹脂層(40)において少なくとも1つの第1のパターン(36)及び少なくとも1つの第2のパターン(38)を複製し、
前記型(42)を通して光放射(44)に曝露することによって前記光重合性樹脂層(40)を硬化させ、そして、
前記型(42)を取り外す
ことによって、前記デジタル表示デバイスの前記光透過性表示面(34)に直接形成する
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記光重合性樹脂層(40)を紫外線に曝露する
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの電極(10)と少なくとも1つの対応する対電極(14)の間に配置される光学活性媒体を含むデジタル表示デバイスを製造する方法であって、
前記少なくとも1つの電極(10)と前記少なくとも1つの対応する対電極(14)の間に電流又は電圧を与えることによって前記光学活性媒体の光学的性質を変えることができ、
前記デジタル表示デバイスには光透過性表示面(34)があり、この光透過性表示面(34)を通してこのデジタル表示デバイスによって表示される少なくとも1つの情報を知覚可能であり、
前記方法は、前記デジタル表示デバイスの前記光透過性表示面(34)に、装飾的かつ/又は機能的な少なくとも1つの第1のパターン(36)及び少なくとも1つの第2のパターン(38)を形成するステップを備え、前記第1のパターン(36)及び前記第2のパターン(38)は、前記光透過性表示面(34)から突出しており、
前記第1のパターン(36)の少なくとも一部の高さ方向の厚みは、前記第2のパターン(38)の少なくとも一部の高さ方向の厚みとは異なることにより、それらのリッジにおける影と周囲光の反射の影響を通して、それらが形成される前記光透過性表示面(34)の面上にボリューム感を与え、
光透過性プレート(46)内にレリーフ状の前記第1のパターン(36)及び前記第2のパターン(38)を製造し、次に、光透過性接着剤層(48)を用いて前記デジタル表示デバイスの前記光透過性表示面(34)に前記光透過性プレート(46)を取り付けるステップを備えることを特徴とする法。
【請求項6】
前記レリーフ状の光透過性プレート(46)は、
プラスチック材料を注入する技術、
光重合性樹脂層の光透過性の開始プレート上に堆積させて、次に、型を用いて前記光重合性樹脂層において前記少なくとも1つの第1のパターン及び少なくとも1つの第2のパターンを複製し、次に、型を通しての光放射に曝露させることによって前記光重合性樹脂層を硬化させて、そして最後に、型を除去する技術、
光透過性の開始プレートに対してホットスタンプを行う技術、
型内で2成分接着剤を用いて前記光透過性プレートを成型する技術
のいずれかの技術を用いて製造される
ことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のパターン(36)及び前記第2のパターン(38)の厚みは、1μm~1mmの範囲内である
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記デジタル表示デバイスは、液晶表示セル(1)又は有機発光ダイオード表示セルである
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のパターン(36)及び前記第2のパターン(38)は、ブラシュド仕上げ、サンブラシュド仕上げ、クルードパリ仕上げを模倣するような繰り返すレリーフ構造として作られる
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のパターン(36)及び前記第2のパターン(38)の上面に、研磨仕上げを行う
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のパターン(36)及び前記第2のパターン(38)に、前記光透過性表示面(34)の防眩処理を行う
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のパターン(36)及び前記第2のパターン(38)に、前記光透過性プレート(46)の防眩処理を行う
ことを特徴とする請求項を引用する請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記防眩処理は、前記光透過性表示面(34)のナノメーター的又はマイクロメーター的な構造化によって得られる
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記防眩処理は、前記光透過性プレート(46)のナノメーター的又はマイクロメーター的な構造化によって得られる
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル表示デバイスを製造する方法及びデジタル表示デバイスに関する。本発明は、より詳細には、装飾的かつ/又は機能的なパターンがあるデジタル表示デバイスを提供するための製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、デジタルタイプの表示デバイス、すなわち、グラデュエーション(目盛り)の近くで動く1つ又は複数の針を用いて情報を表示するアナログ表示デバイスとは対照的に情報を英数字の形態で表示することができる表示デバイス、に焦点を当てている。
【0003】
よく知られているデジタル表示デバイスのファミリーには、液晶表示デバイスがある。この液晶表示デバイスは、伝統的には、観察者側に配置される光透過性の前側基材と、この前側基材に対して平行かつ離れて延在している光透過性又は光不透過性の裏側基材を備える。これらの2つの前側基材と裏側基材は、通常、液晶の組成物が封入される堅密な囲いを形成するシーリングフレームを用いて一緒に連結される。最後に、これとは反対側の前側基材と裏側基材の面は、導電性の光透過性の電極と対電極で被覆される。電極と対応する対電極の間に電場を与えることによって、その電極と対電極の交点において液晶の組成物の光学的性質が変わる。
【0004】
別のよく知られているデジタル表示デバイスのファミリーには、OLEDという名称でも知られる有機発光ダイオードの表示セルがある。これらは、伝統的には、2つの導電性薄膜電極の間に挟まれた一連の有機薄膜を含むモノリシックな半導体コンポーネントである。OLEDコンポーネントに電流が流れると、2つの電極の間に電場が発生し、その影響を受けて、電子と正孔である電荷キャリアが、発光領域において再結合するまで、電極から有機薄膜内を移動する。この再結合は、励起子を形成することによって、すなわち、クーロン力によって結合される電子と正孔の対を形成することによって、行われる。これらの励起子又は励起状態は、形成された後には、光子(エレクトロルミネッセンス)と熱を放出することによって緩和して低いエネルギーレベルになり、これにより、OLEDコンポーネントの出口面に配置された電極における光信号を通して人間の目で知覚することができる光信号が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況で、より一般的には、本発明は、少なくとも1つの電極と対応する対電極の間に配置される光学活性媒体を含むデジタル表示デバイスに焦点を当てている。この光学活性媒体の光学的性質は、少なくとも1つの電極と少なくとも1つの対応する対電極の間に電流又は電圧を与えることによって変えることができる。
【0006】
上記にて簡易的に説明した種類のデジタル表示デバイスは、より詳細には、腕時計のような多くのウェアラブルな物に備えられており、針が上を動く表盤を備える腕時計に対する代替手段となる。
【0007】
デジタル表示デバイスによって与えられる利点のうち、それらの軽さ、それらの非常に低い消費電力、又は英数字形式で情報を表示する能力について言及することができ、これは消費者の大部分、より詳細には最年少の消費者、にとって魅力的となる。
【0008】
しかし、デジタル表示デバイス、より詳細には、液晶表示デバイス、にはいくつかの課題があり、何よりもまず、魅力的ではなく繰り返される外観である。液晶表示デバイスを用いると、針を用いる腕時計の表盤によって提供される外観、色、材料、形状又はその他の組み合わせは、実際に魅力的とはほど遠い。実際に、デジタル表示デバイスはすべて、ほぼ同じ外観となっており、例えば、液晶表示デバイスなどを備える腕時計に、競合する液晶表示腕時計から明確に区別することを可能にするような外観を与えることは難しい。
【0009】
本発明は、独創的な外観を与え競合する液晶表示デバイスに対して目立たせることができるような液晶表示デバイスを製造する方法を提供することによって、上記の課題及び他の課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明は、少なくとも1つの電極と対応する対電極の間に配置される光学活性媒体を含むデジタル表示デバイスを製造する方法に関し、前記少なくとも1つの電極と少なくとも1つの前記対応する対電極の間に電流又は電圧を与えることによって前記光学活性媒体の光学的性質を変えることができ、前記デジタル表示デバイスには下面と上面があり、この上面を通してこのデジタル表示デバイスによって表示される少なくとも1つの情報を知覚可能であり、前記方法は、前記デジタル表示デバイスの前記上面に装飾的かつ/又は機能的な少なくとも1つの第1のパターン及び少なくとも1つの第2のパターンを形成するステップを備え、前記第1のパターンの厚みは、前記第2のパターンの厚みとは異なる。
【0011】
これらの特徴のおかげで、本発明は、デジタル表示デバイスを得ることを可能にする製造方法を提供し、厚みが異なる少なくとも1つの第1及び第2のパターンが面に形成され、この面を通して、このデジタル表示デバイスによって作られ表示される情報を知覚することができる。異なる厚みを有するこれらのパターンは、デジタル表示デバイスの面にレリーフを形成し、パターンの張り出し部(リッジ)における影と周囲光の反射の影響を通して、それらが形成されるデジタル表示デバイスの面にボリューム感を与える。このボリューム感は、パターンの厚みが同じではないため、これらのパターンがあるデジタル表示デバイスの面を見たときに、深さが変わるように感じることによって、一層強調される。したがって、第1のパターンが配置されている領域と第2のパターンが配置されている領域のどちらが観察されているかに応じて、これらの2つの領域のいずれかに表示される情報が、デジタル表示デバイスの光透過性表示面に対して同じ深さにないという印象を観察者に与える。
【0012】
本発明の特定の実施形態において、前記少なくとも1つの第1のパターン及び前記少なくとも1つの第2のパターンは、少なくとも1種類の感光性樹脂の1つ又は複数の層を堆積して構造化することによって、又はインクジェット印刷によって、前記デジタル表示デバイスの前記光透過性表示面に直接形成される。
【0013】
本発明の別の特定の実施形態において、前記少なくとも1種類の感光性樹脂の層は、フォトリソグラフィーによって構造化される。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態において、前記少なくとも1つの第1のパターン及び前記少なくとも1つの第2のパターンは、
- 少なくとも1つの光重合性樹脂層を堆積させ、
- 型を用いて前記光重合性樹脂層において少なくとも1つの第1のパターン及び少なく- とも1つの第2のパターンを複製し、
- 光放射に曝露することによって前記光重合性樹脂層を硬化させ、そして、
- 光放射に曝露されていない樹脂を除去する
ことによって、前記デジタル表示デバイスの前記光透過性表示面に直接形成する。
【0015】
本発明のさらに別の実施形態において、前記光重合性樹脂を紫外線に曝露する。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態において、前記少なくとも1つの第1のパターン及び前記少なくとも1つの第2のパターンは、光透過性プレートにてレリーフ状に製造され、次に、前記光透過性プレートが前記デジタル表示デバイスの前記表示面に取り付けられる。
【0017】
本発明のさらに別の実施形態において、レリーフ状の前記光透過性プレートは、
- プラスチック材料を注入する技術、
- 光重合性樹脂層の光透過性のプレート上に堆積させて、次に、型を用いて前記光重合性樹脂層において前記少なくとも1つの第1のパターン及び少なくとも1つの第2のパターンを複製し、次に、型を通しての光放射に曝露させることによって前記光重合性樹脂層を硬化させて、そして最後に、光放射に曝露されていない樹脂を除去する技術、
- 光透過性のプレートに対してホットスタンプを行う技術、又は
- 型内で2成分接着剤を用いて前記光透過性プレートを成型する技術
のいずれかの技術を用いて製造される。
【0018】
本発明のさらに別の実施形態において、前記パターンの厚みは、1μm~1mmの範囲内である。
【0019】
本発明のさらに別の実施形態において、前記デジタル表示デバイスは、液晶表示セル又は有機発光ダイオード表示セルである。
【0020】
本発明は、さらに、本発明に係る方法を実行することによって得られるデジタル表示デバイスを備える計時器に関する。
【0021】
添付の図面に関連する本発明に係る方法の実施形態についての以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点が、より明確に現れる。この例は、純粋な形態にて与えられ、これに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】異なる厚みを有する第1及び第2のパターンが転写されている光透過性表示面における液晶表示セルの断面図である。
図2図2A~2Dは、感光性樹脂の層における型を用いる複製によって第1及び第2のパターンを製造する方法のいくつかのステップを示している。
図3図1の液晶表示セルの断面の立面図であり、その表示面には、第1及び第2のパターンが形成される光透過性プレートが取り付けられている。
図4】本発明に係る方法を実行することによって得られた液晶表示セルを備える腕時計を上方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、概して、液晶表示セルや他の表示セルのようなデジタル表示デバイスの光透過性表示面に、厚みが互いに異なる装飾的かつ/又は機能的な少なくとも1つの第1のパターン及び1つの第2のパターンがある有機ダイオードを設けることを伴う発明思想から進展したものである。これらの第1及び第2のパターンは、それらの高さの違いに起因して、光透過性表示面にレリーフを発生させ、この光透過性表示面を通してデジタル表示セルによって作られ表示される情報を知覚することができる。実際に、光は、第1のパターンと第2のパターンの縁において反射することで、向きを数回変え、これによって、第1のパターンと第2のパターンの高さの違いが強調され、デジタル表示セルに表示される情報が別の平面内にあるというような印象を与え、したがって、光透過性表示面に、より豪華で精巧な外観を与える。
【0024】
液晶表示セルタイプのデジタル表示デバイスに関連して、本発明を具体的に説明する。しかし、本発明は、この特定の例に限定されず、デジタル表示デバイスによって作られる情報を知覚可能である光透過性表示面がある任意のタイプのデジタル表示デバイスに適用することができることを理解することができる。より詳細には、有機発光ダイオード表示セルについて考慮する。
【0025】
図1において断面を立面図にて示している液晶表示セルは、全体を参照符号1によって参照され、この液晶表示セル1には、前側基材2と、この前側基材2と平行に離れて延在している裏側基材4がある。また、前側基材2を通して液晶表示セル1によって作られ表示される情報を知覚可能であり、この前側基材2は光透過性であり、裏側基材4も光透過性であることができ、また、裏側基材4は光不透過性であることができる。図1に示している例において、裏側基材4は光透過性であり、前側基材2と裏側基材4はプラスチック又はガラスによって作られている。
【0026】
前側基材2と裏側基材4は、伝統的には、液晶組成物を閉じ込めるための緊密な囲い8の境界を定めるシーリングフレーム6によって連結される。少なくとも1つの電極10が前側基材2の下面12の隣に構造化されており、少なくとも1つの対応する対電極14が裏側基材4の上面16の隣に構造化されている。前記少なくとも1つの電極10と前記少なくとも1つの対電極14の間に電場を与えることによって、液晶組成物の光学的性質がそれらの電極の交点で変わる。光透過性反射偏光子18は、例えば光透過性接着剤20の層を用いて、裏側基材の内面22上に取り付けられ、黒色フィルム24は、例えば別の光透過性接着剤層26を用いて、光透過性反射偏光子18上に取り付けられる。最後に、光透過性の吸収性偏光子28は、例えばさらに別の光透過性接着剤層32を用いて、前側基材2の上面30に取り付けられる。
【0027】
光透過性の吸収性偏光子28で被覆される前側基材2は、光透過性表示面34を形成し、この光透過性表示面34を通して液晶表示セル1によって作られる情報を観察者が知覚可能である。本発明によると、液晶表示セル1の光透過性表示面34には、装飾的かつ/又は機能的な少なくとも1つの第1のパターン36及び1つの第2のパターン38があり、前記第1のパターン36の厚みは、前記第2のパターン38の厚みとは異なる。第1及び第2のパターン36、38の厚みは、好ましくは、1μm~1mmの範囲内である。
【0028】
本発明の第1の実施形態において、第1及び第2のパターン36、38は、少なくとも1種類の感光性樹脂の1つ又は複数の層を堆積させて構造化することによって、液晶表示セル1の光透過性表示面34にて直接形成される。前記感光性樹脂層は、フォトリソグラフィーによって構造化される。例えば、第1の厚みを有する第1の樹脂層は、第1のパターン36を形成するように構造化され、次に、第1の厚みとは異なる第2の厚みを有する第2の樹脂層が、第2のパターン38を形成するように構造化される。
【0029】
図2A及びその後の図に示している本発明の第2の実施形態において、第1及び第2のパターン36、38は、以下によって液晶表示セル1の光透過性表示面34に直接形成される。すなわち、
- 光重合性樹脂層40を堆積させる(図2A)。
- 型42を用いて光重合性樹脂層40にて第1及び第2のパターン36、38を複製する(図2B)。
- 型42を通して光放射44に曝露することによって前記光重合性樹脂層40を硬化させる(図2C)。
- 型42を取り外す(図2D)。
【0030】
好ましい例(これに限定されない)において、前記光重合性樹脂は、紫外線放射44に曝露される。
【0031】
図3に示している本発明の第3の実施形態において、第1及び第2のパターン36、38を液晶表示セル1の光透過性表示面34にて直接形成する代わりに、第1及び第2のパターン36、38をレリーフ状にて光透過性プレート46内に製造し、次に、この光透過性プレート46を、例えば光透過性接着剤層48を用いて、光透過性表示面34に取り付けることも可能である。
【0032】
レリーフ状にて第1及び第2のパターン36、38がある光透過性プレート46は、以下の技術のうちの1つによって得ることができる。
- 型にプラスチック材料を注入する技術
- 光透過性の開始プレートに対してホットスタンプを行う技術
- 型内で2成分接着剤を用いて成型する技術
- 光透過性のベースプレート上に光重合性樹脂層を堆積させ、次に、型を用いて前記光重合性樹脂層においてレリーフ状の第1及び第2のパターンを複製し、次に、型を通る光放射に曝露することによって前記光重合性樹脂層を硬化させ、そして最後に、型を除去する、技術
【0033】
このようにして、光透過性表示面34に、直接又は光透過性プレート46を介して、異なる厚みを有する第1及び第2のパターン36、38がある液晶表示セル1が得られる。この結果、これらの第1及び第2のパターン36、38のエッジ50にて光が反射するときに、何度か向きを変え、このことにより、第1のパターン36と第2のパターン38の間の高さの違いが強調され、液晶表示セル1の光透過性表示面34に、深さの印象を与え、より豪華で精巧な外観を与える。
【0034】
図4に、本発明に係る液晶表示セル1を備える腕時計52の例を示している。この図4を検討するとわかるように、液晶表示セル1の光透過性表示面34には、長方形の第1の表示領域54があり、これは、例えば24時間ベースで継続的に、現在の時刻の表示を与える。この場合、第1の表示領域54は14時であることを観察者に示している。また、光透過性表示面34には、5分ごとに設けられているグラデュエーションを用いて現在の時の分を示すリング状の第2の表示領域56がある。この場合、図4に示している例において、可動マーカー58が「10分」の表示を指している。したがって、腕時計52が示している時間は14時10分であることがわかる。本発明によると、第1の表示領域54は、その全周にわたって第1の境界60によって囲まれており、第2の表示領域56は、その全周にわたって互いに同心である内側境界62aと外側境界62bによって囲まれている。本発明によると、第1の境界60は、内側境界62aと外側境界62bよりも、厚い、すなわち、高い。これらの境界62a、62bのエッジにおける光の多重反射の効果によって、表示領域54及び56に対して深さ効果が得られて、第2の表示領域56が第1の表示領域54よりも低い高さレベルにあるという感覚が発生する。
【0035】
当然、本発明は、ここで説明した実施形態に限定されず、添付の請求の範囲によって定められる本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変更や単純な変異形態を考えることができる。具体的には、本発明について液晶表示セルに関連して説明したが、当然、本発明は、この単一の例に限定されず、他のタイプのデジタル表示デバイス、例えば、特に、光透過性表示面に有機発光ダイオードがある表示セル、にも適用することができ、これにも厚みが異なる少なくとも1つの第1のパターン及び1つの第2のパターンを転写することができる。また、説明した例において、第1及び第2のパターンは、液晶表示セルの前側基材の上面に取り付けられた光透過性の吸収性偏光子にて構造化されているが、この例は、純粋に説明用であって例示的に与えられたものであり、これらのパターンを、例えば光透過性プレート上にて構造化することが可能であり、これは偏光子に取り付けられる。また、周囲光の反射に関連する光学的効果が発生し所望の深さ感を得るためには、異なる厚みを有する少なくとも2つのパターンが必要であることを理解することができる。なお、これらのパターンの数は2よりはるかに大きいことができる。また、デジタル表示デバイスの表示領域に対して前記パターンが適切に整列していることを確実にする必要があることも理解することができる。また、ブラシュド(brushed)表盤仕上げ、クルードパリ(clous de Paris)仕上げ、サンブラシュド(sunbrushed)仕上げのような、携行型時計製造の分野において遭遇する表盤仕上げを模倣するような、繰り返すレリーフ構造として、前記パターンを作ることができる。これらのパターンは、少なくとも1種類の感光性樹脂の1つ又は複数の層を堆積させて構造化することによって作られる。また、これらのパターンの上面に対して研磨仕上げをして、これらのパターンにおいて周囲光の反射を大きくして、他の領域に対して光透過性の表示面の一部の領域を強調することによって、当該デジタル表示デバイスの光透過性表示面にさらにボリューム感を与えることも興味深い。また、光透過性表示面は、その光屈折率が高いほど反射性が高いことも理解することができる。また、前記パターンを光透過性表示面や光透過性プレートの防眩処理と組み合わせることも可能である。これらの防眩処理は、例えば、「蛾の目(motheye)」タイプのものであり、光透過性表示面又は光透過性プレートのそれぞれナノメートル的又はマイクロメートル的な構造化によって得られる。パターンの製造に利用できるもう1つの手法は、デジタル印刷とも呼ばれるインクジェット印刷である。所望のパターンの厚みに応じて、1つ又は複数のインク層を堆積させて風乾したり炉で乾燥させたりする。また、堆積されるインクは、光重合可能なタイプであることもできる。
【符号の説明】
【0036】
1 液晶表示セル
2 前側基材
4 裏側基材
6 シーリングフレーム
8 緊密な囲い
10 電極
12 下面
14 対電極
16 上面
18 光透過性反射偏光子
20 光透過性接着剤層
22 下面
24 黒色フィルム
26 光透過性接着剤層
28 光透過性吸収偏光子
30 上面
32 光透過性接着剤層
34 光透過性表示面
36 第1のパターン
38 第2のパターン
40 光重合性樹脂層
42 型
44 光放射
46 光透過性プレート
48 接着剤層
50 エッジ
52 腕時計
54 第1の表示領域
56 第2の表示領域
58 可動マーカー
60 第1の境界
62a 内側境界
62b 外側境界
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4